製造業等 IT・金融等
暗黙知のモジュラー化
(世界への発信)
形式知(グローバル情報)
の注入による暗黙知の 進化・深化 産業クラスターの特徴:
知の形態: 知の形態:
産業クラスターの特徴:
擦り合わせ
(インテグラル)型
暗黙知 形式知
形式知
(モジュラー)型
(出所)中部大学産業経済研究所及び野中郁次郎氏各種資料を参考に作成
重要な連携機関 東 海 3 県立 地 企 業 (首都圏が中心)その他地域 全 地 域
43.1% 44.1% 43.4%
18.3% 4.5% 14.2%
11.1% 40.8% 11.0%
6.5% 1.8% 5.1%
6.1% 13.5% 8.3%
3.8% 8.1% 5.1%
3.4% 2.7% 3.2%
1.9% 9.0% 4.0%
1.9% 2.7% 2.1%
0.4% 0.9% 0.5%
3.4% 2.7% 3.2%
262(100%) 111(100%) 373(100%)
共 同 開 発 企 業 部 品 ・ 素 材 な ど の 仕 入 先
大 学
研 究 機 関
IT・金融機関以外の専門サービス機関
(プロフェッショナル・サービス・ファーム)
I T サ ー ビ ス
自 治 体
金 融 サ ー ビ ス ベ ン チ ャ ー 企 業 中 央 政 府 機 関
そ の 他
回 答 数
(出所)中部大学調査(平成17年)より作成
また,知のセンターとしての大学への期待もそれなりに強いことが伺える。しかし,
擦り合わせ型中部圏と形式知型首都圏での連携の要に対する期待が大きく異なるとこ ろがある。製造業中心の中部圏では,部品や素材を提供する仕入れ先への期待が,首 都圏に比して極めて大きい。また,逆に世界の知との連携が進んでいる首都圏におい ては,専門サービス機関(プロフェッショナル・サービス・ファーム:以下PSF)36) が連携の要としてその重要性が示され,高い期待が集まっている。
首都圏ではITや金融を含めたPSFを最重要とするものが,全体の30%以上を占 めている。それに対して中部圏では,そのような傾向があまり見られないと言えよう。
この背景には,製造業を中心とした中部圏においては,必要とする専門的知識やサー ビスを外部に求めるのではなく,自社など内部で調達する傾向が顕著に見られる。す なわち,自社内・系列内の人材を前提とした,擦り合わせ型専門サービスに依存して いると言えよう。しかし,こういった閉じた系の中での知の伝達・交換・結合からは,
新しいフロンテイアを開く革新や創造は生じ難いとも言えよう。
以上から,PSFは新製品の開発や事業の革新において,産業クラスターでの連携 の新しい要として期待されていると考えられる。米国のシリコンバレーでも,起業家 を支援し,成功に導くために,PSFは大きな役割を担っているのである(渋谷,鈴木,
11〜12頁)。大学が新しい知を発見・創造する拠点であるとすれば,PSFは知を伝 達したり,組み合わせたり,変換・翻訳したりし,当事者が抱える問題の解決に貢献 する実践的役割を担おうとするものである。
図8 専門サービス機関(PSF)の事業所数
0 5000 10000 15000 20000 25000 30000 35000 40000 45000
東京都 大阪府 愛知県 岐阜県 三重県 東海3県
(出所) 平成16年「サービス業基本調査報告」総務省より作成
注:法律事務所,特許事務所,公証人役場,司法書士事務所,公認会計士事務所,税理士事 務所,獣医業,土木建築サービス業,デザイン・機械設計業,著述・芸術家業,写真業,
その他の専門サービス業が含まれる
表5 専門サービス機関(Professional Service Firm)の 事業所数及び従業者数
図9 日本人の起業意識:
「できれば自分で独立して事業を起こしたい」
PSFは独自性の強い暗黙知を形式知化し,一般化することにより生産性をあげた り,また逆に他(首都圏や世界)から発信される先端的形式知を抽出・伝達し,東海 3県の独自の暗黙知との組み合わせを図り,他に追随を許さない状況を構築したりす
事業所数 従業者数 全 国 191,034 1,142,211 東 京 都 39,351 312,801 大 阪 府 16,416 101,387 愛 知 県 11,357 70,204 岐 阜 県 2,963 15,145 三 重 県 2,076 9,653 東 海 3 県 16,396 95,002 全国シェア 8.60% 8.30%
0 5 10 15 20 25 30 35 40 45
愛知 三重 岐阜 東京 大阪 全国
33.5%
26.1% 26.5%
39.6% 41.8%
34.2%
どちらかといえばそう思う そう思う
起業意識
(単位:%)
主要都道府県
(出所) NRI生活者1万人アンケートのデータ分析より
注:縦軸は「独立して事業を起こしたい」に対して「そう思う」「どちらかといえば そう思う」と答えた比率(起業意識)
(出所) 平成16年「サービス業基本調査報告」総務省より作成
るなど,実践的な専門的サービスを提供する37)。そして,こういった役割を担うPSF の必要性と存在感が中部圏では,首都圏に比し質,量ともに弱いのである。
表5で見るように事業所(機関)の数やそこに勤める従業者(専門家)の数を見て も,中部圏(東海3県)の劣勢が目立っている。オープンで多様性に充ちている組織 ほど革新や創造を生み出すのであるが,PSFはそういった傾向を促進する,触媒的 機能でもあり,さらには主導的(イニシアテイブを取る)存在にすらなっているので ある(舛山,62頁)。したがって,今後はPSFの欠落・弱体は新産業・新事業創造の 推進に当たってのクラスター上の大きなネックになろう。
実際,新産業・新事業創造,技術・事業革新に直接つながる,起業家精神という視 点から見てみると,東海3県の水準は東京等他の地域に比べ,かなり低く,全国平均 よりもさらに低位に位置付いているのである(図9)。
以上,PSFは新産業・新事業創造,技術・事業革新を促す重要な役割の一端を担っ ていると言え,その強化は地域の経済・産業の発展にとって無視できない存在になり つつある。
図 10 産学連携の構図
しかし,これまでこのPSFは,産業として,またクラスターの一員として,その実 態や役割概念が十分に整理・分析されていなかったと言えよう。したがって,PSF
IT イバ オ ノナ クテ
就職
・起業
大 学
研 究
教 育
出口
入口
知の交流 連 携
人 的(講
師等 交流)
人的ニーズ PS提供
大学とPSFとVenture(新産業)
産
再
業
教 育 マネ ジ メン ト 教 育
︵ 起 業 家
・ リ ー ダ ー
・
管 理 者 育 成
︶ 高度・実践 専門教育
V V
Venture
V
V PS
・会計・税務
・法律・特許
・シンクタンク
・コンサルティング
(含 経営,マーケティング,IT etc.)
・人材派遣・研修
・設計・デザイン
・広告・PR etc.
PSF
(出所) 鈴木正慶,相澤吉勝レポート等を参考に作成
にスポットを当て,その実態と特性を明確にすることは,地域の産業力強化を考察・
推進するためには重要な課題と言えよう。そして,今後のPSFの強化を考える場合,
PSFと大学との密なる連携が重要となろう(図10)。PSFと大学の間で,専門性の 高い,実践的人材を互いに受け入れたり,育成・提供したりして地域産業クラスター の新しい要として交流・連携を深めていかねばならないと言えよう。
注
1) 瓦,耐火煉瓦のクラスターは,三河,高浜地域に存在し,瓦は規模の小さな2〜3社で構成 されている。耐火煉瓦は,TYKという比較的大きな企業が存在する。タイルは,笠原町を 中心に存在する。笠原町では戦前,茶碗製造を行っていたのが,戦後タイルに転換した。素 材メーカーのヤマセ(笠原町)などの企業が存在する。最終タイル製品では,INAX(常 滑市)が50%程度のシェア,ダントー(大阪市)がシェア10%程度,TOTO(北九州市)
が数%である。食器は,瀬戸市,多治見市,土岐市,瑞浪市などに集積している。ヤマカ
(多治見市),マルイ(高級食器,多治見市)などの企業がある。ファインセラミックスは,
自動車関連の製品を主に製造している。コア企業である日本碍子,特殊陶業の下請けである。
かつてのファインセラミックス・ブームの時に瀬戸地域の企業が転換した。多治見地域の企 業は転換しなかった。自動車エンジン用などのセンサー需要が拡大している(大学・企業イ ンタビュー)。
2) 例えば,ものづくりクラスターの周辺部分に属すると考えられる春日井市の中堅・中小企業 へのインタビューによると,このようなタイトな垂直的関係は見られなかった。
3) 陶磁器クラスターの構造の特徴としては,製品分野別にクラスターが存在して,製品分野ご とに細分化していることが挙げられる。この個々のクラスターにおいて,機能ごとの分業構 造が定着している。そして,主に小企業で構成されている。分業関係の構成業者は,素材,
上薬,窯屋,最終製品メーカー,装置メーカー,産地問屋,消費地問屋などから構成されて いる。長石,粘土,陶石を粉砕,乾燥し,プレミックス原料を製造する素材メーカーは三社 の寡占状態である。窯屋は生地屋の温度指示で焼く。食器,タイルなどの最終製品メーカー は,成型し,焼成する。焼成炉メーカーは,高砂工業など5社程度ある。産地問屋は多治見 市に集積している。
4) 陶磁器クラスター形成の背景としては,この地域に原料が豊富であって,伝統的に陶磁器産 業が発達したことが挙げられる。原料は,粘土,長石であるが,木曽川水系・矢作川水系に 豊富に存在する。
5) 岐阜県陶磁器産業の低迷の背景には,洋食器などの輸出がアジア製品との価格競争に敗れた こと,バブル崩壊による建設市場の縮小で建設用タイルの需要 が減少したことなどがあげら れる(参考ウェブサイト2,2005年7月18日記事)
6) 笠原町のタイル業界の場合,70年代には円高進行で打撃を受けたが,それでも輸出比率60% 程度あった。85年以降の円高によって輸出不振に陥った。その後,バブル時に外壁の内需急 増で作れば売れた時代を経験し,設備更新を実施した。これがバブル崩壊による内需半減で 裏目にでた。さらに,ユニットバス化で,浴室,トイレの需要が減退した(Aタイル素材メー カー)。
7) ほとんどが小企業であり,二代目の時代にやめる企業が続出していると言われる。例えば,
笠原町には平成2年はタイル70社,茶碗22社あったのが,平成17年にはタイル32社,茶碗 9社になったという(Bタイル・メーカー)。
8)「特集 ソフトが危ない,品質崩壊,クルマも電機も鉄道も」日経ビジネス2005年4月25 日・5月2日号,37ページ。
9) ある地域金融機関によると,中小企業への融資は現状では後ろ向き融資がほとんどだとい う。
10) ものづくり産業における大手最終組立メーカーは,特に電子産業を中心に,部品をますます モジュールとして調達する傾向を強めていると言われる。このようなモジュール生産の輪か ら取り残される中小企業の存在基盤が揺らぐ可能性がある。
11) インタビューによると製造関係は影響を受けているが,トレーディング中心の多治見は困っ ていないと言われる。
12) 旭精機工業(愛知県尾張旭市)は,2006年4月以降,プレス機械の中国向け減少傾向に対応 するための高速トランスファープレス,自動車部品向けのばね成形機などの高付加価値機械 を相次いで投入する(参考ウェブサイト2,2005年12月8日記事)。中部鋼鈑(名古屋市中 川区)は,中国製鋼鈑の品質向上に対抗するために能力増,品質向上,高付加価値化へ追加 投資検討している(参考ウェブサイト2,2005年9月21日記事)。富士プラスチック(小牧 市)は,プラスチック部品のなかでも特に付加価値の高い高性能な製品の製作を行っていく としている(参考ウェブサイト1)。竹内可鍛研究所(豊橋)は,特殊合金のなかで成熟し た既存技術のものは徐々に海外生産にシフトしていくので,今後とも高付加価値の独自製品 を作っていきたいとする(参考ウェブサイト1)。
13) 東洋樹脂(東洋電機(春日井市)の子会社)は,ナイロンくずなどエンプラ廃棄物を東レな どから回収して,道路資材などの用途向けに成型ペレットを製造している。畳リサイクルの ベンチャー企業・三宝(愛知県愛知郡長久手町)は,異分野の事業者と連携し,解体現場か ら発生した廃塩ビ管を,意匠性の高いベンチやデッキに再生するシステムを構築する(参考 ウェブサイト22005年12月7日記事)。菊川鉄工所(伊勢市)は,木材加工場から輩出され る樹皮やオガ粉などを燃料用に圧縮・固形化する機械を発売した(参考ウェブサイト2,