第 4 章 UCD に沿ったアプリ設計の実践 〜 PlayStore で☆ 1 をつけられないために〜 74
4.3 UCD の実践
アプリ設計のライフサイクル
人間中心設計の実践はスパイラル開発の形を取ります。ひとつのスパイラルの中に
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リサーチ•
要求定義•
プロトタイピング•
評価という
4
つのステップが含まれます。UCD
の中心となるのは評価と再設計を繰り返すこ と=反復デザインです。それでは各ステップについて具体的な手法を見て行きましょう。UCD の実践手法
リサーチ(要求分析手法)
UCD
に基づいてアプリを制作するとき、最初に行われるのはニーズの分析です。•
シナリオ法1.
システムの対象ユーザー2.
ユーザーとそのシステムに関する背景情報*1 ISO13407 は2010 年にISO9241-210 として改訂されています http://www.webstore.jsa.or.jp/webstore/
Com/FlowControl.jsp?lang=jp&bunsyoId=ISO+9241-210%3A2010&dantaiCd=ISO&status=1
*2 http://www.hcdnet.org/
*3 http://www.amazon.co.jp/dp/478850362X
3.
ユーザーの目標4.
ユーザーが目標を達成するために行う行動とそこから得られる事象この
4
点を物語の文体で文書に起こし、ユーザーの要求および問題点をリストアップし ます。•
インタビュー法1
対1
、またはグループで、対面にて製品や設定された環境についての質問と回答を行いま す。インタビュアーの技量によって回答の質が左右されやすく、対象者の選定にも手間がかか りますが、ユーザーが引っかかりを覚える部分があった場合その場でヒアリングができるた め、質的に深い分析を行えます。•
ユーザー観察ユーザーが実際に作業している現場に出向いて、目的をどのように達成しているかを観察 し、フローを明らかにします。これにより、目的を達成するのにどの機能が必要であるかの重 み付けが明らかになります。
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アンケート既存の製品に対して、何割のユーザーが満足しているか、などの量的な調査を行います。比 較的調査が容易で仮説に対して検証を行うのには適しているが、リサーチ段階での潜在的な要 求などの質的な調査には向いていません。
要求定義
•
ペルソナペルソナとは設計を支援するために定義する仮想のユーザーです。名前や顔、学歴や趣味ま で作りこみ、すべてのユーザーの要求ではなく、このペルソナ一人の要求を満たすようにアプ リの設計を行います。このとき注意すべきは開発者の都合のいいようにペルソナを作っては いけないということです。
• KA
法ユーザー観察から目的達成の為の行為を抽出し、行為から背景にある価値観を把握します。
• UX
コンセプトツリーコンセプトに対して満足要因
->
実現方法->
提案を整理•
カスタマージャーニーマップこれは長期に渡る利用が想定される製品向けの手法です。たとえば、製品を手にするまで、
製品を使用している最中、製品を使用後などに区切り、各場面での想定される感情の波をグラ フで表現します。
プロトタイピング
プロトタイピングとは日本語では試作品と訳されることが多いですが、
UCD
おいては開発 者が『試しに作ってみるもの』ではなく、『ユーザーに試用してもらうもの』です。UCD
に基 づいた開発フローでなくても、プロトタイピングを取り入れることは有効です。サイトやアプ リにおいてはPhotoshop
やPowerpoint
を使ったUI
のプロトタイプや、Flash
やプロトタ イピング用のツールを使って動きをつけたプロトタイプを作り、ヒューリスティック評価など によってユーザーからのフィードバックを受けます。評価
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ヒューリスティック評価数名の評価者がガイドラインと経験に基づき、実際の製品やプロトタイプを使ってみて使い やすさを評価する方法です。セッション形式で意見交換会を行い、問題点の収集を行います。
•
シナリオ受容性評価•
ユーザビリティテスト• NEM
評価初心者と設計者の操作時間の比較から問題箇所の特定を行います。
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エクスペリエンスフィードバック評価映像で操作状況を記録後、対象者にその映像を見直してもらい、各場面の感情グラフを つけてもらいます。
このような手法を用いたスパイラルのステップを
3
回ほど繰り返すことで、殆どの問題は収束すると言われています。ユーザーテストは
5
名で8
割の問題が洗い出せますが、実際に はもっと多くの問題が潜んでいると言われます。ですが、実際にアプリ制作に導入するには予 算期間が潤沢で大規模なアプリでもない限り、5
名のユーザーテストでも難しいと思います。ここからは特に個人でアプリ制作を行う方でも実践できる