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せん断流とずり粘性

ここでは,(2.13.3 a)式で表される粘性応力𝜎𝛽𝛼ሺviscሻのダイレクター依存性を簡単なずり流れ中で 考える.今,Fig. 2.22(a)に示すような𝑥軸に垂直な面に置いた2枚の平行な板を考える.板の間 のギャップはℎとする.下の板を固定して,上の板を𝑧軸方向に速度𝑣𝑧でスライドさせると Fig.

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2.22(a)に示されるようなずり流れ(せん断流れ)が形成される.このとき,流れの方向は𝑧軸方

向で速度勾配は𝑥方向にあり,速度場𝒗は

𝒗 = ሺ0, 0, 𝛾̇𝑥ሻ (2.14.1)

と表される.この流れ中での粘性応力はダイレクター𝒏の方向に依存する.ダイレクターの方向

をFig. 2.22(b)に示すように角度𝜃, 𝜙で指定する.この方向は強い磁場によって固定されている

と仮定する.即ち,𝒏は場所に依らず,

𝒏 = ሺsin 𝜃 cos 𝜙 , sin 𝜃 sin 𝜙 , cos 𝜃ሻ (2.14.2) と す る .(2.8.14-15)式 よ り𝐴𝑥𝑧= 𝑊𝑧𝑥= 𝛾̇/2, そ の 他 の 成 分 は ゼ ロ で あ る . ま た ,𝑁𝑧 =

− 𝛾̇𝑛𝑥⁄ , 𝑁2 𝑥= − 𝛾̇𝑛𝑧⁄2となる.(2.13.3 a )式の粘性応力𝜎𝛽𝛼ሺviscሻに上式を代入すると,

𝜎𝛽𝛼ሺviscሻ= {ሺ2𝛼1cos2𝜃 − 𝛼2+ 𝛼5ሻ sin2𝜃cos2𝜙 + ሺ𝛼3+ 𝛼6ሻ cos2𝜃 + 𝛼4}𝛾̇/2 (2.14.3 a)

= 𝜂ሺ𝜃, 𝜙ሻ𝛾̇ (2.14.3 b)

となる.(2.14.3 b)式で𝜂は有効粘性率と呼ばれている[2, 10].

ダイレクター𝒏の方向に関してFig. 2.23(a), (b), (c)に示す3つの特別な配置が考えられ,その ときの有効粘性率がMiesowiczにより精密に測定されている.

(a) ダイレクターが流れに垂直な場合ሺ𝜃 = 90 °, 𝜙 = 0 °ሻ,

Fig. 2.22. (a) ダイレクターを表す座標𝜃と𝜙の定義.ダイレクターはこの方向に固定されている.

(b) ずり流れの模式図.

Fig. 2.23. Miesowiczの粘性係数とダイレクターの方向.

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𝜂1ሺ90 °, 0°ሻ =12ሺ−𝛼2+ 𝛼4+ 𝛼5ሻ (2.14.4 a) (b) ダイレクターが流れに平行な場合ሺ𝜃 = 0 °, 𝜙 = 0 °ሻ,

𝜂2ሺ0 °, 0°ሻ =12ሺ𝛼3+ 𝛼4+ 𝛼6ሻ (2.14.4 b) (a) ダイレクターがずり面に垂直な場合ሺ𝜃 = 90 °, 𝜙 = 90 °ሻ,

𝜂3ሺ90 °, 90°ሻ =12𝛼4 (2.14.4 c)

これら,𝜂𝑖はMiesowicz の粘性係数と呼ばれており,Table1に Miesowicz により実際に測定さ れた,p-Azoxyanisolep-Azoxyphenetoleの粘性係数を示す.Table1を見ると直感

Table1 Miesowiczにより測定された,p-Azoxyanisolep-Azoxyphenetoleの粘性係数[18].

𝜂2 𝜂1 𝜂3

p-Azoxyanisole 122 ℃

2.4 mPa s 9.2 3.4

p-Azoxyphenetole 144.4 ℃

1.3 8.3 2.5

的にも想像できるが,流れに平行な方向にダイレクターが向いていると,粘度が低く,流れに対 して垂直な方向を向くと,粘度が大きくなることが見て取れる.ネマチック相では𝜂1> 𝜂3> 𝜂1 である.これら,ずり流れ以外にも Fig. 2.23(d)に示すような伸張・圧縮変形に伴う粘性率𝜂12も ある.有効粘性率はMiesowiczの粘性率を用いて,

𝜂ሺ𝜃, 𝜙ሻ = ሺ𝜂1+ 𝜂12cos2𝜃ሻ sin2𝜃 cos2𝜙 + 𝜂2cos2𝜃 + 𝜂3sin2𝜃 sin2𝜙 (2.14.5) とも与えられる[2].(2.14.3 a)式と(2.14.5)式を比較すると𝜂12= 𝛼1であることがわかる.実際に Gähwiller によって測定された p'-methoxybenzylidene-p-n-butylaniline (MBBA)

p-n-hexyl-Fig. 2.24. 𝜂𝑖の温度依存性[19].(a) MBBAの𝜂𝑖ሺ𝑇ሻ.(b) HBABの𝜂𝑖ሺ𝑇ሻ.𝑇cはネマチック相―等方 相の転移温度を表す.注:1 × 10−2 Poises = 1 mPa ∙ s.

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oxybenzylidene-p'-aminobenzonitrile (HBAB)の𝜂𝑖の温度依存性をFig. 2.26に示す.ネマチック相

―等方相の転移点で𝜂3,即ち,𝛼4/2が連続的につながっていることが見て取れる.

次に,今までの議論では磁場によりダイレクターの方向が固定されていると仮定したが,この ような制約を外した場合を考える.先ほどと同様にずり流れを仮定する.Fig. 2.23(c) ሺ𝜃 = 90 °, 𝜙 = 90 °ሻに示す場合では対称性からも分かるが,粘性トルクの式の(2.10.13)式と(2.14.1),

(2.14.2)式より𝜞ሺviscሻ= 𝟎となる.即ち,ダイレクターにトルクが作用しないため,配向状態は変

化しない.一方,ダイレクターがずり面内ሺ𝜙 = 0ሻのとき,即ち,𝒏 = ሺsin 𝜃 , 0, cos 𝜃ሻのとき,粘 性トルクは,

𝛤𝑦ሺviscሻ= −𝛾1ሺ𝑛𝑧𝑁𝑥− 𝑛𝑥𝑁𝑧ሻ − 𝛾2൫𝑛𝑧𝑛𝜇𝐴𝜇𝑥− 𝑛𝑥𝑛𝜇𝐴𝜇𝑧൯ = −1

2𝛾̇ሺ𝛾1+ 𝛾2cos 2𝜃ሻ (2.14.6) と表される.ダイレクターが回転しない(静止している)ためには上式でトルクがゼロであるこ とが要請されるため,その解は

cos2𝜃0= −𝛾1/𝛾2 (2.14.7) となる.この角度𝜃0は流動配向角[2, 7, 10]と呼ばれており𝛾̇に依存しない.ただし,|𝛾1/𝛾2| > 1 のときには(2.14.7)式をみたす解が存在せず,せん断流下で静止したダイレクターは存在できな

い(tumbling状態).Fig. 2.25に流動配向角の模式図を示す.ただし,壁面の影響(壁面での垂直

配向を仮定)も概念的に示している.

Fig. 2.25. 流動配向角とダイレクター場の模式図.壁面から離れた位置で流動配向角をとる.

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