第2章 偏心荷重が作用する高力ボルト摩擦接合継手のすべり耐力と降伏耐力
3.4 解析結果と考察
3.4.3 すべり/降伏耐力比 β と板厚が降伏耐力に与える影響
49
50
表
3.4 降伏耐力比の一覧
継手
形式 名称
すべり/
降伏耐 力比β
純断面 降伏耐力
(kN)
降伏耐力
(kN) 降伏
耐力比
DF-0.4-w 0.4 1056.2 - -
DF-0.6-w 0.6 724.4 - -
DF-0.8 0.8 503.2 607.7 1.21
DF-1.0-w 1.0 392.6 488.2 1.24
DF-1.2-w 1.2 348.4 449.4 1.29
DF-0.4-t 0.4 934.6 - -
DF-0.6-t 0.6 718.9 - -
DF-1.0-t 1.0 395.4 491.8 1.24
DF-1.2-t 1.2 341.5 438.2 1.28
LJ-0.4-w 0.4 528.1 - -
LJ-0.6-w 0.6 334.6 - -
LJ-0.8 0.8 251.6 232.5 0.92
LJ-1.0-w 1.0 196.3 203.1 1.03
LJ-1.2-w 1.2 174.2 187.0 1.07
LJ-0.4-t 0.4 467.3 - -
LJ-0.6-t 0.6 359.5 - -
LJ-1.0-t 1.0 197.7 194.9 0.99
LJ-1.2-t 1.2 161.8 160.5 0.99
DF
LJ
図3.18 降伏耐力比とβの関係 図3.19 すべり荷重時の応力分布(β=1.2)
0.8 1.0 1.2
0.4 0.6 0.8 1.0 1.2 1.4
DF−w DF−t LJ−w LJ−t
すべり/降伏耐力比β
降伏耐力比
−400 −200 0 200 400
−6
−4
−2 0 2 4 6
応力(N/mm )2 板厚中心からの距離(mm) ←降伏応力←降伏応力 降伏応力→
t=9mm
t=14mm
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3.4.4 継手長さが重ね継手のすべり耐力・降伏耐力に与える影響 (1) 解析モデルと解析方法
解析モデルの形状を図
3.20
に示す.解析モデルは,3.2 節で用いたモデルのうち,すべり/降伏耐力比
β
が0.8
となるようにしたLJ-0.8
のモデルを基本モデルとして用い る.パラメータは,図3.20
に示す接合部端部から試験機のチャック範囲(100mm)ま での距離を継手長さ(L)とし,その距離は80mm,130mm(基本モデル), 180mm
の3
種類とした.他の解析条件および解析方法は3.2
,3.3
節と同じである.図
3.20 継手長さ検討モデル
(2) 解析結果と考察
解析結果からすべり係数を算出し,すべり係数と継手長さの関係を整理した結果を 図
3.21
に示す.継手が長くなるにしたがって,すべり係数が低下しているものの,そ の差は小さい.図3.22
にボルト軸外側の相対ひずみと荷重の関係を示す.相対ひずみ の低下は継手が長いほど顕著になっている.ただし,各継手長さで相対ひずみ-荷重 関係は交差している部分もあるが,これは解析時の変位増分をステップ状に与えてい るためである.このように,すべり係数が低下する原因は,ボルト軸外側のひずみ低 下が一因と考えられる.さらに,ボルト軸外側のひずみが低下する原因は,3.4.1項で 示したようにボルト孔外側の母板の降伏が影響していると考えられる.解析結果から降伏耐力比を算出し,継手長さとの関係を整理した結果を図
3.23
に示 す.継手が長くなるにしたがって降伏耐力比が低くなっている.この低下の原因は,継手が長くなると,板曲げ応力が大きくなるためと考えられる.
継手が長いと板曲げ応力が大きくなる原因は,継手の両端固定部に発生する反力が 影響していると考えられる.図
3.24
(a
)に示すように,重ね継手に引張荷重が作用す ると,偏心荷重によって生じるモーメントのほか固定端に反力が生じる.偏心荷重に100mm
100mm
継手長さL=80,※130,180mm 継手長さL
※L=130mmは,解析モデルLJ-0.8
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よって生じるモーメントは図
3.24
(b)に示すように偏心量が同じであれば一定である.しかし,反力によって生じるモーメントは,図
3.24(c)に示すように継手が長いほど
小さい.偏心荷重によって生じるモーメントと反力によって生じるモーメントの重ね 合わせが重ね継手の接合部に作用する曲げモーメントであり,継手が長いほど曲げモ ーメントが大きくなるため,接合部の曲げ応力が大きくなる.以上のように,重ね継手は継手が長いほどすべり耐力および降伏耐力が低下するも ののその影響は小さい.これらの低下の原因は,継手が長いほど接合部の曲げ応力が 大きくなるためである.
図
3.21 すべり係数μ-継手長さ
図3.22 相対ひずみ-荷重
(すべり発生まで)
図
3.23
降伏耐力比-継手長さ 0.20.3 0.4 0.5 0.6 0.7
すべり係数μ
80 130 180
継手長さ(mm)
0.58 0.56 0.55
L L L
=80mm
=130mm
=180mm
0 50 100 150 200 250 300 0.4
0.5 0.6 0.7 0.8 0.9 1 1.1
荷重(kN)
ボルト軸(外側)相対ひずみ
L L L
=80
=130
=180
0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8 0.9 1.0 1.1
L L
0.94
0.92 0.89
80 130 180
継手長さ(mm)
降伏耐力比
=80mm
=130mm
=180mm L
53
(
a
)荷重の作用状況(b)偏心荷重によって生じるモーメント
(c)反力によって生じるモーメント 図