佐藤 佑介
東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科
口腔機能再構築学系摂食機能回復学講座 全部床義歯補綴学分野
私が卒後入局したのは全部床義歯補綴学教室でした。当時の教授をはじめベ テラン補綴医の診療は、当時の自分にはまさしく神業としか思われないもので、
少しでもその域に近づきたいと義歯だけでなく補綴一般の修行にひたすら明け 暮れていました。義歯外来には、いくら咬合調整しても咬めない、違和感があ る、咬み合わせのせいで全身の状態がおかしい、と執拗に訴える患者が常に一 定数存在し、可撤式スプリントやテンポラリーレストレーションの調整に多大 な時間を割き、ほとんどの場合に患者の満足を得られないまま来院が途絶える という経過を見てきましたが、当時は正直に言えば困った患者だなという感想 しかありませんでした。小康状態で何年も数週間おきのメンテナンスに訪れて は微妙な咬合調整を行い、満足して帰っていく患者もいましたが、それが補綴 学的に説明のつく治療であったかという疑問もありました。そんななか卒後 7 年目に半ば偶然に近い経緯で、頭頚部診療外来(現歯科心身医療外来)で診療 に従事する機会を得ました。システマティックに検査、診断を行い、投薬治療 中心に寛解までのフォローを行う外来診療は、それまで従事してきた補綴診療 とは全くの別世界で、驚くこと学ぶことの多い日々でした。現在は全部床義歯 補綴学教室に戻り、臨床技術のみが重視されがちな補綴中心の診療を行ってい ますが、卒直後でもなく専門領域のベテランになってからでもない、良い時期 に歯科心身症治療に触れることができた、と偶然のタイミングに感謝していま す。今回のシンポジウムでは、他のシンポジストの諸先生方と違う経験の浅い 立場から、自分が経験した臨床例を当時の衝撃や困惑をこめて提示し、ご指導 いただきたいと考えております。また、補綴治療と心身症治療のあり方につい ての若干の考察も行いたいと思います。
― 31 ― 略 歴
平成 15 年 3 月 東京医科歯科大学歯学部卒業
平成 15 年 4 月 東京医科歯科大学大学院摂食機能評価学講座入局 平成 19 年 3 月 東京医科歯科大学大学院摂食機能評価学講座卒業
歯学博士
平成 19 年 4 月 東京医科歯科大学歯学部附属病院義歯外来医員 平成 21 年 4 月 東京医科歯科大学歯学部附属病院頭頸部心療外来医員 平成 21 年 10 月 東京医科歯科大学大学院全部床義歯補綴学分野助教
(現在に至る)
所属学会
日本補綴歯科学会 日本歯科心身医学会 日本咀嚼学会 日本義歯ケア学会 IADR