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3 復興再開発事業における溜池除染による放射性物質の流出防止

3.1 はじめに

2011 年の東日本大震災によって発生した東京電力福島第 1 原子力発電所の事故に起因 して大気中に放出された放射性物質は,広範囲に渡って地表面に沈着した(図 -3.1 ) 。当 事故により放出された放射性物質に関して,健康や環境影響において主に問題となるも のはヨウ素,セシウム 134 ,セシウム 137 ならびにストロンチウムの 4 種類である(表 -3.1 ) 。その他にも様々な物質が放出されたが,いずれもこの 4 種類に比べると半減期が 短いか,放射能が小さいことがわかっている 3-1) 。簡潔に各放射性物質の説明を記述する。

例えば,ヨウ素は,半減期が 8 日と短いのだが,体内に入ると 10 ~ 30 %は甲状腺に蓄積 される。そうなると甲状腺は,しばらくの間, β 線と γ 線の被ばくを受けることになる。

原子力発電所の事故による汚染の場合,問題になる放射性セシウムにはセシウム 134 と セシウム 137 の 2 種類がある。セシウム 137 の半減期は 30 年と長く,環境汚染が長く続 く。放射性セシウムは,化学的性質がカリウムとよく似ているため,体に入った場合は,

カリウム同様ほぼ全身に分布する。ストロンチウムは半減期が長く,化学的性質がカル シウムに似ているため,体に入ると骨に蓄積する。 γ 線を出さないため,セシウム 134 及び 137 ほど簡単にどこにどれだけあるかを調べることはできない。原子力発電所事故 の場合セシウム 134 及び 137 よりも量は少ないながら,核分裂によって発生したストロ ンチウムも存在すると考えられている。福島第一原発事故由来のプルトニウムなども検 出されているが,量的には事故発生前に全国で観測された測定値と同程度である。

環境技術研究所報告, Vol.24 , pp.1-21 , 2006

2-19) 環境省:総合モニタリング計画に基づく水環境の放射性物質モニタリング実施状

況,環境省, 2015

2-20) 環境省:被災地の地下水質のモニタリング調査における放射性物質濃度の測定結

果(第 4 報)及び有害物質濃度の測定結果(第 2 報)について,環境省, 2015

2-21) 独立行政法人産業技術総合研究所:水中の低濃度の溶存態放射性セシウムを簡

易 ・ 迅 速 に 測 定 , http://www.aist.go.jp/aist_j/new_research/2012/nr20120905/

nr20120905.html , 2015

2-22) 原子力規制委員会:放射線量等分布マップ関連研究に関する報告書(第 2 編),

原子力規制委員会, 2015

2-23) 文部科学省:文部科学省によるダストサンプリングの測定結果,文部科学省,

2015

2-24) 林 野 庁 : ス ギ 雄 花 に 含 ま れ る 放 射 性 セ シ ウ ム の 濃 度 の 調 査 結 果 に つ い て , http://www.rinya.maff.go.jp/j/press/hozen/120208.html , 2015

2-25) JAEA :生物圏評価のための土壌から農作物への移行係数の関するデータベース,

JAEA , 2015

2-26) 農林水産省:農地土壌中の放射性セシウムの野菜類及び果実類への移行の程度,

農林水産省, 2015

2-27) 独立行政法人国立環境研究所:北港処分地(夢洲1区)における 広域処理災害

廃棄物焼却灰埋立時の 放射性セシウムの挙動に関する評価報告書,独立行政法 人国立環境研究所, 2015

2-28) Lynn W. Gelhar , Carl L. Axness : Three-Dimensional Stochastic Analysis of Macro-dispersion in Aquifers , Water Resources Research , Vol.19 , pp.161-180 , 1983

2-29) 斎藤公明,青木和弘,谷畑勇夫:土壌中における放射性物質の深度分布の確認,

独立行政法人日本原子力研究開発機構, 2015

2-30) 地盤工学会:土質試験 - 基本と手引き - ,地盤工学会, p.91 , 2010

2-31) 井上頼輝,森澤眞輔:放射性物質の土壌と水との間の分配係数値,日本原子力学

会誌, Vol.18 , pp.524-534 , 1976

2-32) 鈴木和之,小宮由里子,南 弘征,水田正弘:土壌中における放射性セシウムの

深度分布に関する解析,日本計算機統計学会シンポジウム論文集, Vol.27 , pp.11-14 , 2013

2-33) 原子力環境整備センター:土壌と土壌溶液間の放射性核種の分配係数,原子力環

境整備センター, 2015

3 復興再開発事業における溜池除染による放 射性物質の流出防止

3.1 はじめに

2011 年の東日本大震災によって発生した東京電力福島第 1 原子力発電所の事故に起因 して大気中に放出された放射性物質は,広範囲に渡って地表面に沈着した(図 -3.1 ) 。当 事故により放出された放射性物質に関して,健康や環境影響において主に問題となるも のはヨウ素,セシウム 134 ,セシウム 137 ならびにストロンチウムの 4 種類である(表 -3.1 ) 。その他にも様々な物質が放出されたが,いずれもこの 4 種類に比べると半減期が 短いか,放射能が小さいことがわかっている 3-1) 。簡潔に各放射性物質の説明を記述する。

例えば,ヨウ素は,半減期が 8 日と短いのだが,体内に入ると 10 ~ 30 %は甲状腺に蓄積 される。そうなると甲状腺は,しばらくの間, β 線と γ 線の被ばくを受けることになる。

原子力発電所の事故による汚染の場合,問題になる放射性セシウムにはセシウム 134 と セシウム 137 の 2 種類がある。セシウム 137 の半減期は 30 年と長く,環境汚染が長く続 く。放射性セシウムは,化学的性質がカリウムとよく似ているため,体に入った場合は,

カリウム同様ほぼ全身に分布する。ストロンチウムは半減期が長く,化学的性質がカル シウムに似ているため,体に入ると骨に蓄積する。 γ 線を出さないため,セシウム 134 及び 137 ほど簡単にどこにどれだけあるかを調べることはできない。原子力発電所事故 の場合セシウム 134 及び 137 よりも量は少ないながら,核分裂によって発生したストロ ンチウムも存在すると考えられている。福島第一原発事故由来のプルトニウムなども検 出されているが,量的には事故発生前に全国で観測された測定値と同程度である。

環境技術研究所報告, Vol.24 , pp.1-21 , 2006

2-19) 環境省:総合モニタリング計画に基づく水環境の放射性物質モニタリング実施状

況,環境省, 2015

2-20) 環境省:被災地の地下水質のモニタリング調査における放射性物質濃度の測定結

果(第 4 報)及び有害物質濃度の測定結果(第 2 報)について,環境省, 2015

2-21) 独立行政法人産業技術総合研究所:水中の低濃度の溶存態放射性セシウムを簡

易 ・ 迅 速 に 測 定 , http://www.aist.go.jp/aist_j/new_research/2012/nr20120905/

nr20120905.html , 2015

2-22) 原子力規制委員会:放射線量等分布マップ関連研究に関する報告書(第 2 編),

原子力規制委員会, 2015

2-23) 文部科学省:文部科学省によるダストサンプリングの測定結果,文部科学省,

2015

2-24) 林 野 庁 : ス ギ 雄 花 に 含 ま れ る 放 射 性 セ シ ウ ム の 濃 度 の 調 査 結 果 に つ い て , http://www.rinya.maff.go.jp/j/press/hozen/120208.html , 2015

2-25) JAEA :生物圏評価のための土壌から農作物への移行係数の関するデータベース,

JAEA , 2015

2-26) 農林水産省:農地土壌中の放射性セシウムの野菜類及び果実類への移行の程度,

農林水産省, 2015

2-27) 独立行政法人国立環境研究所:北港処分地(夢洲1区)における 広域処理災害

廃棄物焼却灰埋立時の 放射性セシウムの挙動に関する評価報告書,独立行政法 人国立環境研究所, 2015

2-28) Lynn W. Gelhar , Carl L. Axness : Three-Dimensional Stochastic Analysis of Macro-dispersion in Aquifers , Water Resources Research , Vol.19 , pp.161-180 , 1983

2-29) 斎藤公明,青木和弘,谷畑勇夫:土壌中における放射性物質の深度分布の確認,

独立行政法人日本原子力研究開発機構, 2015

2-30) 地盤工学会:土質試験 - 基本と手引き - ,地盤工学会, p.91 , 2010

2-31) 井上頼輝,森澤眞輔:放射性物質の土壌と水との間の分配係数値,日本原子力学

会誌, Vol.18 , pp.524-534 , 1976

2-32) 鈴木和之,小宮由里子,南 弘征,水田正弘:土壌中における放射性セシウムの

深度分布に関する解析,日本計算機統計学会シンポジウム論文集, Vol.27 , pp.11-14 , 2013

2-33) 原子力環境整備センター:土壌と土壌溶液間の放射性核種の分配係数,原子力環

境整備センター, 2015

表 -3.1 原発事故により拡散された放射性物質の特性

放出された放射性物質による環境への影響を評価するため,事故直後から広い面積を 占める森林や農地への放射性物質の集積とその移動に関しての調査が継続的に実施され てきた 3-2) 3-3) 。同時に,放射性物質による汚染の実態解明と除染のための実証的研究が おこなわれ,チェルノブイリ原発事故での研究とも比較されながら,多くの知見が得ら れてきた 3-4)

我が国で定められた除染作業は,農地の除染が先行する一方,溜池から供給される農 業用水を介して農地が放射性物質で再汚染される可能性があるのにも係わらず,溜池の 除染は見送られてきた。これは,溜池の汚染土壌が放射性物質汚染対処特別措置法によ る除染廃棄物とみなされず,受け入れ施設も決まらない状態が長く続いたこととともに,

溜池の水質や底泥の汚染調査において,発電所付近の高濃度汚染地区を除き,平常時の 地下水や河川水,溜池等の環境水中の溶存セシウム濃度がほぼ基準内であったという理 由等 3-5) から,溜池の除染に緊急性が認められなかったことが,溜池の除染見送られてき た背景と考えられる。しかしながら, 2014 年度に方針が転換され,環境省と農林水産省 によって,溜池の除染・溜池の放射性物質対策を実施することが発表された 3-6) 。溜池の 放射性物質対策の流れは図 -3.2 に示す。また,農業用溜池に関しては,放射性物質汚染 対処特別措置法に基づく環境省が行う除染の基準を満たす溜池(住宅や公園に隣接する,

一定期間,水が干上がる溜池(図 -3.3 ) )でなくとも,営農再開・農業復興の観点から対 策が必要と判断されれば,農林水産省の技術支援のもとで,県や市町村による福島再生 加速化交付金での対策事業が可能となった 3-7)

I-131

ヨウ素

Cs-134

セシウム

Cs-137

セシウム

Sr-90

ストロンチウム

Pu-239

プルトニウム

放射線の種類

β

γ β

γ β

γ β α

γ

物理学的半減期

8

2.1

30

29

24,000

実効半減期

8

64

70

15

197

蓄積する器官・組織 甲状腺 全身 全身 骨 骨・肝臓

実効半減期:体内に取り込まれた放射性物質の量が生物学的排泄作用(生物学的半減期)及び放 射性物質の物理的壊変(物理学的半減期)の両者によって減少し半分になるまでの時間.

図 -3.1 福島原発事故による放射性セシウムの沈着量マップ