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24 いる独立方式の後期高齢者医療制度は高齢者の医療問題を緩和することができ、高齢者中

心の農村部医療の都市部との格差も是正できると考えられる。したがって、中国では日本 の後期高齢者医療制度のようなシステムを構築する必要性があると考えられる。

(5)中国における高齢者医療制度の創設―モデル案の提示

本論文では以上の考察をうけて、中国における高齢者のための新医療制度改革案を提示 したい。具体的には図 2 の通りである。すなわち、高齢者を対象とした独立の制度とし、

高齢者保険料以外には、国家の財政支援並びに都市部医療制度及び農村合作医療制度の財 政支援金の三本柱から構成する制度である。

図 2 中国における高齢者医療制度のモデル案

出所:筆者作成

給付費は公費によって賄われ、言い換えれば高齢者の医療費の部分は税金で賄われるこ とにより、現役世代から高齢世代への財政調整が行われるのみならず、高齢世代間の分配 効果もある。そして、都市部保険者からの支援金という形をとるならば、現役世代から高 齢世代への財政調整は合理的になり、その割合も明確となる。さらに、このモデル案は被 保険者である高齢者が保険料を拠出し、高齢者の人数増加に伴い高齢者の負担割合が高く なる仕組みであり、老人保健制度にように拠出金が際限なく増加する問題を解決し、高齢 者間の再分配を行うものである。

この制度により、農村部合作医療制度に属している 80%の高齢者の医療費が分担され、

農村部の「看病難・看病貴」の医療問題が克服できると考えられる。また、独立した高齢 者医療制度には都市部の退職者も加入するため、都市部の若者が支援金を拠出する合理性 が認められ、現役世代から高齢世代への財政調整も可能となる。

6本論文の総括と今後の課題

本論文では中国と日本の医療制度改革の経緯を紹介したうえで、日本の高齢者医療制度

高齢者医療制度 公費・支援金・保険料

都市部 医療制度

新農村 合作医療制度

図 2 中国における高齢者医療制度のモデル案  出所:筆者作成

横浜法学第 22 巻第 2 号(2013 年 12 月)

が分担され、農村部の「看病難・看病貴」の医療問題が克服できると考えられ る。また、独立した高齢者医療制度には都市部の退職者も加入するため、都市 部の若者が支援金を拠出する合理性が認められ、現役世代から高齢世代への財 政調整も可能となる。

6 本論文の総括と今後の課題

 本論文では中国と日本の医療制度を紹介したうえで、日本の高齢者医療制度 の立法過程の分析を中心に、保険制度間・世代間の財政調整システムについて 詳細に検討した。現代中国は、日本が経験してきたのと同様に、制度間の格差 拡大に伴う社会不安の増大、高齢化による高齢者の医療問題の深刻化といった 課題に直面しており、社会保障制度の構築と医療制度における再分配機能の強 化が必要となっている。これら一連の問題を解決し、さらに社会保障制度を充 実していくためには、現在は未完成の社会保障制度の再分配機能を改善する必 要がある。そこで本論文では、日本の医療制度の再分配のシステムを参照しな がら、中国における農民の医療問題を解決するために、高齢者医療制度の創設 可能性を検討し、具体的なモデルを提示した。中国の医療問題の解決に日本か らの示唆を得られたが、高齢者医療制度のモデル案の実施可能性についての研 究もさらに深めることが必要と考えられる。

1) 「健康素養(Health Literacy)」とはヘルス・リテラシー或いは医療リテラシーとのことで ある。本稿で「健康素養」とは①健康に関する正しい理念をもち②健康管理についての 知識をもち③健康を保つために健康管理を実践している状態を指す。WHO によると健康 素養は平均寿命・児童死亡率・妊産婦死亡率などと同じく国民の健康水準評価の指標の 一つと認められている(中国衛生部・中国健康教育センター 2009, p. 5)。

2) 「和諧社会」は調和のとれた社会を意味する。それについての詳しい内容は、①社会主義 民主法制をさらに整備し、法治国家に向けた基本方策を全面的に実行し、人民の権益が 適切に尊重・保障されるようにする。②都市と農村、地域間の発展格差の拡大傾向を段

中国における高齢者医療制度の創設可能性 階的に転換させ、合理的で秩序ある所得分配構造をある程度形成し、家庭資産を増加させ、

人民がさらに豊かな生活を送れるようにする。③社会雇用をある程度満たし、都市と農 村の住民をカバーする社会保障制度を確立する。④基本的な公共サービス制度をさらに 整備し、政府の管理・サービス水準を大幅に引き上げる。⑤民族全体の思想的・道徳的 資質、科学的・文化的資質と健康レベルを顕著に向上させ、良好な道徳的風潮、調和の 取れた人間関係の醸成を進める。⑥社会全体のイノベーション活力を顕著に強化し、革 新型国家をほぼ完成する。⑦社会管理体制をさらに整備し、社会秩序を整える。⑧資源 の利用効率を顕著に向上し、環境問題を顕著に好転させる。⑨十数億人に恩恵のおよぶ、

より高水準の小康社会(いくらかゆとりのある社会)の全面的な建設という目標を実現 し、全人民が各自の能力を発揮し、かつ調和的に共存し合う社会の形成に努める。⑩社 会主義調和社会の構築を進める上での原則として、人民本位・科学的発展観・改革開放・

民主法治・改革発展と安定の関係の正しい処理・党の指導の下での社会全体の共同建設

――を堅持しなければならない、と強調した「人民日報日本語版」2006 年 10 月 12 日<

http://j.people.com.cn/2006/10/12/jp20061012_63833.html >(2013.10.13 参照)。

3) 国務院研究機構は中国国務院直属の研究機関であり、国民経済、社会発展、改革・開放 政策における総合的、戦略的、長期的課題についての研究を行い、党中央、国務院に政 策提言をする研究センターである。

4) 「医薬衛生体制改革の意見」では中国医療システムの枠組みを作り、運行、管理、監督等 の体制を規範化した。「医療衛生体制改革に関する当面の重点実施プラン(2009 - 2011 年)の通知」ではそれを踏まえ国民からの意見を集計し、近年最も大きな社会問題であ る「看病難・看病貴」の問題の解決を目指した。それは、誰もが医療改革のメリットを 享受できるようにするものであった。詳しくは江藤(2011)を参照されたい。

5) 衛生部は 1993 年から全国の衛生服務調査の実施を開始した。1998 年の第二次調査、2003 年の第三次調査を経て 2008 年に第四次の調査を完遂した。Centre For Health Statistics And Information (2008)(NHSS2008)に基づいて、過去 5 年間の衛生改革の成果を評価 するだけではなく、2009 年の新医療制度改革の実施及び評価に資するデータを提供して いる。調査の実施に当たって、国家調査チームは、まず全国 31 省のうち、自治区及び直 轄市のうちから 94 県(市・区)を選出した。そして、その中から 470 の郷鎮(町)及び 940 の行政村(村)の合計 56,400 戸に対して訪問調査を行った。調査の内容は、以下の 4 点から構成されている。①国民の現状(調査対象の社会経済的な特徴、健康状態の自己 評価等)、②医療サービスの利用状況(病気の受診率、医療需要の満足度及び不満の要因、

医療費の給付状況等)、③医療制度の内容(医療保障システムの枠組みと実施体制、医療 保険の給付範囲、医療保険の保障水準等)、④国民の満足度(医療保障システム、医療サー ビスの提供過程、医療保障の普及及び水準についての国民の満足度)である(李 2012, pp. 33 - 34)。

横浜法学第 22 巻第 2 号(2013 年 12 月)

6) 衛生部は中国健康素養の現状を理解するため、中国健康教育センター・衛生部ニュース 宣伝センターに委託し、『中国国民健康素養調査アンケート』を作成した。それは、国内 外の「健康素養」の研究成果と活動経験を参考にしたうえで作成されたものであり、2008 年には全国的な調査が行われた。その調査対象は、全国 31 省(自治区、直轄市)及びウィ グル生産建設兵団を含む 15 歳から 69 歳までの定住している住民、79,542 人であった(中 国衛生部・中国健康教育センター 2009, pp. 4 - 9)。

7) 「中国の社会政策は、都市部における政策(都市社会政策)と農村部における政策(農村 社会政策)にわかれており、二重構造ともよばれている。この二重構造は社会福祉サー ビスの供給体制にも影響を与えおり、都市部の社会保障制度の整備は優先的に行われる 一方で、農村社会の社会保障制度の整備は立ち遅れている」 (添田 2009)と指摘している。

8)三浦(2009)p. 29、舒(2008)p. 82、中国衛生部(2010)より参照。

9) 被用者保険とは、同じ職業の人が保険集団を作る医療保険のことを指し、①健康保険組合、

②船員保険、③共済組合がある(徐 2008, p. 125)。

10) 国民健康保険には、「市町村国民健康保険」と「国民健康保険組合」がある。「市町村国 民健康保険」は、農業を営んでいる人及び自営業と無職の人を対象とするが、「国民健 康保険組合」は、医師、弁護士、理容師など特定の職種の自営業者が加入し、全国単位 及び都道府県別に運営されている(徐 2008, p. 127)。

11)島崎(2011), pp. 255 - 299、野村(2003), p. 20、徐(2008), p. 125 より参照。

12) 臨調行革路線とは、「歳出削減、国営企業の民営化、そして規制緩和など、市場競争の 促進と小さな政府を目指す経済政策である。医療も含めた社会保障全体にたいしては、

税及び保険料の形で過大な負担を強いることは国民経済の停滞を招くと攻撃し、社会保 障給付の抑制を要求した(野村 2003, p. 22)」。

13) 厚労省高齢者医療制度 の 歩 み(1)〈http://www.mhlw.go.jp/bunya/shakaihosho/

iryouseido01/info02d-24.html〉(2013. 10. 13 参照)。

14) 4 つの提案の図A . リスク構造調整方式B . 独立方式 C 突き抜け方式D . 一元化方式の 出所は厚労省高齢者医療制度の歩み(2)〈http://www.mhlw.go.jp/bunya/shakaihosho/

iryouseido01/info02d-24.html〉(2013. 10. 13 参照)。

15)国民健康保険中央会のほか、全国市長会・全国町村会が含まれる。

16)厚労省ホームページ、週刊社会保障 2007a, p. 28、小沼 2003, p. 29 より参照。

17)前掲・注(14)(2013. 10. 13 参照)

18)前掲・注(14)(2013. 10. 13 参照)

19)前掲・注(14)(2013. 10. 13 参照)

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