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Gas oil Ki n emat ic vi sco si ty mm

2

/s @ 40

64 62 60 58 56 54 52 50

0 15 30 45 60 75 90 105

Operation time hours

SME

Gas oil

59

図3-6 SMEおよび軽油使用時のエンジン運転時間に対するCRの変化

3.3 バイオディーゼル燃料混合潤滑油の酸化劣化特性

3.3.1 実験方法および供試試料

ⅰ) 実験方法および酸化劣化指標の測定方法

前節にて,市販のディーゼル発電機にSMEを使用すると,100時間程度で2.8 %の潤 滑油希釈が起きることが明らかになった.そこで,本節ではSMEをさらに高濃度の20 % まで混入させ,強制的に試料を熱酸化させることでバイオディーゼル燃料の混入率が潤 滑油の酸化安定性に及ぼす影響を調査した.

SMEを混合させた潤滑油の熱酸化加速試験は,第2章2.2.2項にて示した過酸化物誘 導期間 IPを測定するための自動油脂酸化加速装置(ランシマット試験機:メトローム・

シバタ製 679型)の加熱部および空気導入部のみを流用して行った.図3-7はその概略図 である.試験条件は試料温度110℃,試料質量4 g,導入空気流量20 L/hとした.酸化 時間は 100時間,124 時間,144時間,192時間の4通りとし,試験終了後回収した試 料の劣化特性値を測定した.なお,測定は試料の不足や注ぎ足しを避けるため,酸化時 間毎に試料を準備し,行った.用いた酸化劣化指標は,潤滑性を示す指標の一つである 動粘度,スラッジやデポジット生成量の目安である100%残留炭素分 CR,酸化劣化によ り生成される有機酸の量を示す酸価AVである.これらの測定方法は,第2章2.1.2項に て既述している.また一般に,潤滑油そのものの劣化の基準として塩基価(BN)が用いら

100%CR mass -%

1.40 1.30 1.20 1.10 1.00

0 15 30 45 60 75 90 105

Operation time hours

SME

Gas oil

60

れるが,今回は潤滑油に混入した FAMEの酸化劣化が潤滑油劣化の主原因と考え,BN の測定は行わなかった.

図3-7 熱酸化加速試験の試験装置図

ⅱ) 供試燃料および潤滑油

表 3-3 に供試燃料および潤滑油の主な性状を示す.供試燃料には,アルカリ触媒方式 で製造した前節と同じ SMEを用いた.潤滑油には,JASO DH-1およびDH-2グレード の2種類を用いた.本節では,それぞれLub-1およびLub-2と称す.なお,粘度グレー ドには両者とも標準的粘度である SAE 10W-30を選んだ.DH-2グレードについては前 出の記述のとおりであるが,DH-1 は,DPF を有していない従来の長期排ガス規制対応 車両やそれ以前の汎用エンジン用に使用される潤滑油グレードである.

Fresh air Vessel

Sample

Heating block Vent

Temperature = 110oC Air flow = 20 L/h Sample amount = 4

61

表3-3 供試燃料および潤滑油の主要性状

3.3.2 実験結果および考察

図3-8,3-9は潤滑油Lub-1に0,5,20 vol-%の割合で SMEを混入させた試料の,酸 化時間に対する AVとCRの変化を示している.Lub-1における AVの傾向は,SME混

入率が 0もしくは5 vol-%の比較的低い場合,100時間程度の強制酸化で値が増加してお

り,有機酸の生成が生じていると考えられる.20 vol-%の場合,100時間までは値がほ ぼ増加せず,100時間以降で増加している.一方,CRにおいては,0および5 vol-%の 試料は 200時間程度強制酸化させてもほぼ変化が見られない.20 vol-%の場合は初期値 が低いものの,200時間まで単調に増加する傾向が見られる.CRは潤滑油が劣化する際 に生じる高分子化合物,すなわちスラッジやデポジットによって増加すると考えられる

ため,SME混入率が20 vol-%まで高くなると,酸化劣化がより進行し,有機酸の生成よ

りもデポジットの生成が支配的になると考えられる.

図3-10,図3-11に潤滑油Lub-2に0,5,10,20 vol-%の割合でSMEを混入させた 試料の,酸化時間に対する AVとCRの変化を示す.Lub-2におけるAVの傾向は Lub-1 と異なり,SME混入率が0,5 vol-%の場合,100時間経過時にはほとんど変化せず,10, 20 vol-%では100時間までに増加し,ピークに達している.CRは0,5 vol-%ではほぼ 変化しておらず,20 vol-%でやや増加傾向を示している.

Fuel, Engine oil

Items

Fuel Engine oil

Lub-1 Lub-2

SME (Soybean Methyl Ester)

JASO DH-1 (SAE10W-30)

JASO DH-2 (SAE10W-30)

Properties

Kinematic viscosity

(40℃) mm2/s 4.43 69.8 61.8

100% Carbon residue mass-% 0.025 1.542 1.165

Acid value mgKOH/g 0.10 1.36 1.68

Density (15℃) g/L 891 879 875

Water content mass-ppm 492 -

-Induction period (EN14112) hours 2.3 -

-Additives

Detergent and dispersant additives

Metal containing detergent

mgKOH/g

(Ca) - BN≒12 BN≒7

Dispersant - - Succinic acid imide

% - 2〜10

Anti-wear agents

(eq. phosphorus) mass-ppm - ZnDTP 800 ZnDTP 1100

Antioxidants % - 0.1~1 from Phenolic/Amine/Mo

Viscosity index improvers mass-% - OCP(Olefin Copolymer) 2~8

Pour point depressants mass-% - 0.05~0.5

Antifoam agents mass-ppm - 1~50

62

また,図3-12は,それぞれLub-1とLub-2の100時間経過後のAVおよびCRの劣 化前からの増加量を示す.なお,自動車エンジン用潤滑油の運転管理項目にある「残留 炭素分増加量CRI」は,200時間経過後のCR値と劣化前の値との差を指すが,ここで は100時間経過後の増加分で示した.図より,Lub-1およびLub-2ともに,SME混入 率5 vol-%におけるCR増加量が最も低くなっている.AV増加量は,Lub-2の場合,低 い値を示しているが,Lub-1では,最も高くなっている.このことは,JASO DH-1グレ ード潤滑油の場合,5 vol-%程度の比較的低いFAME混入率で,酸化劣化初期に有機酸 を生成し,その中和反応によって塩基価 BNが著しく低下することで,潤滑油の劣化が 進行する可能性があることを示唆している.SME混入率20vol-%の場合には,Lub-1で

はAV増加量が5 vol-%の場合よりも大幅に低下し,逆にCR増加量が著しく高くなって

いる.一方,Lub-2では,20 vol-%でAV増加量が急増している.この事から,Lub-2 のJASO DH-2グレード潤滑油では20 vol-%のFAME混入率でBNの低下による劣化が 著しくなると予測される.すなわち,同じFAME混入率であれば, DH-1グレードより DH-2 グレードの方が酸化劣化しにくい潤滑油であると言える.

図3-8 SME混合潤滑油Lub-1の酸化時間に対するAVの変化

AV mg KO H /g

2.0

1.8

1.6

1.4

1.2

1.0

0.8

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