負担 制度 は、 後発 的不 能
108
を基 礎と して わが 国に 根づ い﹂ てい る。 それ ゆえ
、債 務不 履行 責任 説を 採用 する ため には
、﹁ 今日
、慣 用と なっ て いる 多く の法 的常 識︵ たと えば
、過 失責 任と 無過 失責 任の 区別
、原 始的 不能 と後 発的 不能 の峻 別な ど︶ を揺 るが さな け れば なら ない
﹂が
、﹁ 果た して
、そ のよ うな 必要 性が ある のだ ろう か﹂ と
( )
問う
。そ して
、円 谷教 授は
、こ れに
﹁消
109
極的
﹂で あり
、﹁ 瑕疵 担保 責任 の領 域で の一 定の 主張 をす るた めに 民法 全体 に関 わる 制度
、法 概念
、あ るい は法 常 識の 再検 討を 必要 とす ると いう のは
、お かし いの では ある まい か﹂ とし て、 債務 不履 行責 任説 を批 判
( )
する
。
110
⑵
危険 負担 と原 始的 不能円谷 教授 の見 解は
、右 に触 れた よう に、 原始 的一 部不 能論 と特 定物 のド グマ を前 提と する
、伝 統的 な法 定責 任説 であ る。 ただ し、 瑕疵 担保 制度 と危 険負 担制 度の 関連 に着 目す る。 すな わち
、同 教授 は、
﹁起 草者 が瑕 疵担 保責 任 制度 を、 今日 では 原始 的一 部不 能と 評価 でき る瑕 疵︵ 換言 すれ ば、 契約 成立 前に 存在 した 瑕疵
︶と いう 危険 に対 する 危険 負担 的処 理制 度と 考え てい た﹂ と判 断す る。 しか し、 特定 物の ドグ マを 維持 し、 結局 は、
﹁契 約成 立を 基準 と して
、契 約成 立前 の隠 れた 瑕疵 とい う危 険に 対す る処 理制 度
=
瑕疵 担保 制度、契 約成 立後 の危 険に 対す る処 理制 度
=
危 険負 担制 度と 整理 する こと がで きる﹂と
( )
する
。
111
そし て、
﹁瑕 疵担 保責 任制 度と 危険 負担 制度 とが それ ほど 異な った もの でな い﹂ との 認識 のも とに
、効 果の 点で も、 瑕疵 担保 責任 は、
﹁解 除と 代金 減額 を目 的と する
﹂と した
。た だし
、こ のよ うな
﹁瑕 疵担 保責 任の 枠外 で﹂
、売 主の 保証 責任 が考 えら れる と
( )
する
。
112
⑶
若干 の検 討 円谷 教授 によ る瑕 疵担 保責 任の 沿革 的検 討は、今 日に おい ても なお 有用 であ り、 この 問題 を研 究す るう えで は、 必ず 参照 しな けれ ばな らな い研 究で ある とい えよ う。 ただ し、 起草 者が 瑕疵 担保 責任 を危 険負 担と 結び つけ て理 解 して いた かは 疑問 であ り、 むし ろ梅 謙次 郎博 士は
、瑕 疵担 保責 任を 一般 の債 務不 履行 責任 と同 じく
、過 失責 任で あ ると 解し てい たこ とが 明ら かで
( )
ある
。に もか かわ らず
、同 教授 が危 険負 担の 制度 に固 執し たの は、 瑕疵 担保 責任 の
113
効果 を代 金減 額と 解し
、そ の論 拠と して
、加 藤教 授の 危険 負担 的代 金減 額請 求権 説を
﹁高 く評 価﹂ した から であ
( )
ろう
。し かし
、こ れに 対し ては
、前 述し た危 険負 担的 代金 減額 請求 権説 に対 する 批判 が妥 当し よう
。 と 114
ころ で、 円谷 教授 は、 原始 的︵ 一部
︶不 能と 特定 物の ドグ マを 維持 し、 そう しな いと
﹁法 常識
﹂が 覆る こと を 懸念 する
。し かし
、民 法に 規定 のな い、 ドイ ツの 一時 期に おけ る通 説的 見解 にす ぎな かっ た法 定責 任説 が前 提と す る﹁ 原始 的不 能﹂ や﹁ 特定 物の ドグ マ﹂ を維 持す るこ とに
、ど れほ どの 意義 があ るか は疑 わし い。 ただ し、 円谷 教
授が 強調 する 過失 責任
︵
=
債務 不履 行責 任︶ と無 過失 責任︵
=
瑕疵 担保 責任 の︶ 区別 は、 今日 にお いて もな お重 要で あり、こ の問 題を 解決 しな い限 り、 立法 論と して はと もか く、 解釈 論と して の債 務不 履行 責任 説は 成立 しえ ない と 解さ れる
。 五
本款 のお わり に 一九 七〇 年代 から 八〇 年代 初頭 にか けて の学 説を 概観 する と、 債務 不履 行責 任説 が﹁ 学界 の大 勢﹂ であ ると 評さ れた にも かか わら ず、 実際 には 法定 責任 説が なお 多数 であ り、 かつ
、有 力で あっ たこ とが うか がわ れる
。し かし
、 すで に指 摘し たよ うに
、比 較法 的に も、 法定 責任 説を 維持 する 国は 存在 せず
、そ の考 え方 は、 社会 的基 盤を 失っ て いた とい えよ う。 そし て、 この こと を決 定づ けた のは
、一 九八
〇年 にお ける ウィ ーン 売買 条約
︵国 際物 品売 買契 約 に関 する 国際 連合 条約
︶の 制定 であ る。 すな わち
、同 条約 は、 瑕疵 担保 責任 を債 務不 履行 責任 へと 一元 化し た点 で は一 九六 四年 の国 際動 産売 買統 一法 と同 様で ある が、 より 実効 性を 有す るも ので あっ た。 そし て、 その 制定 を契 機 に、 ヨー ロッ パに おい ても 債務 不履 行責 任説 が展 開す る。 そこ で、 次款 以降 にお いて は、 ウィ ーン 売買 条約 とそ れ に触 発さ れた 債務 不履 行責 任説 の進 展を 取り 上げ る。
︵
︶ 加藤 雅信
﹁売 主の 瑕疵 担保 責任
︱︱ 対価 的制 限説 再評 価の 視点 から
﹂森 島昭 夫編
﹃判 例と 学説 ・ 民法
Ⅱ︵ 債権
︶﹄
︵日 本評 論社
、一 九七 七 年 56
︶一 八〇 頁。
︵
︶ 加藤
・前 掲注
︵
︶一 八〇 頁。 57
56
︵
︶ 加藤
・前 掲注
︵
︶一 七九 頁。 58
56
︵
︶ 加藤
・前 掲注
︵
︶一 八〇
︱一 八一 頁。 59
56
︵
︶ 加藤
・前 掲注
︵
︶一 八三
︱一 八四 頁。 60
56
︵
︶ 過失 責任 と無 過失 責任 の一 元化 に対 する 批判 につ いて は、 野澤
・前 掲注
︵
︶三 三六 頁以 下参 照。 61
3
︵
︶ 加藤
・前 掲注
︵
︶一 八四 頁。 62
56
︵
︶ 加藤
・前 掲注
︵
︶一 八五
︱一 八六 頁。 63
56
︵
︶ 加藤
・前 掲注
︵
︶一 八六 頁。 64
56
︵
︶ 加藤
・前 掲注
︵
︶一 八六
︱一 八七 頁。 65
56
︵
︶ 加藤 雅信
﹃新 民法 大系
Ⅳ契 約法
﹄︵ 有斐 閣、 二〇
〇七 年︶ 二一 七頁 は、 瑕疵 担保 責任 の法 的性 質を めぐ って は、 法定 責任 説と 債務 不履 行責 任 66 説と とも に、
﹁双 方の 説に 反対 する 危険 負担 的代 金減 額請 求権 説︵ 私見
︶﹂ が、
﹁三 説鼎 立の 状況 にあ る﹂ とす る。
︵
︶ 森田
・前 掲注
︵
︶三
〇四 頁。 67
41
︵
︶ 野澤
・前 掲注
︵
︶三 三八 頁参 照。 68
3
︵
︶ 加藤
・前 掲注
︵
︶二 三七 頁。 69
66
︵
︶ 森田
・前 掲注
︵
︶三 二︱ 三三 頁。 70
41
︵
︶ Ph .M al au ri ee tL .A yn ès ,L es ob li ga ti on s, 10e éd ., 19 99 ,n
°4 ,p .1 7.
︵ 71
︶ 野澤
・前 掲注
︵
︶三 三八
︱三 三九 頁。 72
3
︵
︶ O. To ur na fo nd ,L an ou ve ll e︽ ga ra nt ie de co nf or mi té
︾d es co ns om ma te ur s, Co mm en ta ir ed el ʼo rd on na nc en
°2 00 5 -13 6d u1 7f év ri er 20 05 t 73 ra ns po sa nt en dr oi tf ra nc ai sl ad ir ec ti ve du 25 ma i1 99 9, Da ll oz 20 05 ,C hr on iq ue ,n
°1 5, p. 15 62
;P h. De le be cq ue et F. -J .P an si er ,D ro it de so bl ig at io ns , 20 06 ,n
°4 32 ,p .2 23 .な お、
①野 澤正 充﹁ 瑕疵 担保 責任 法の 課題 と展 望﹂ 同編
﹃瑕 疵担 保責 任と 債務 不履 行責 任﹄
︵日 本評 論社
、二
〇〇 九年
︶九 頁、
②同
﹃債 権総 論︱
︱セ カン ドス テー ジ債 権法
Ⅱ﹄
︵日 本評 論社
、二
〇〇 九年
︶一
〇頁 参照
。
︵
︶ 国際 動産 売買 統一 法七 四条 三項 やウ ィー ン売 買条 約七 九条 五項 は、 瑕疵 担保 責任 の伝 統的 な効 果で ある 解除 と代 金減 額に つい ては
、不 可抗 力 74 によ る債 務者 の免 責を 認め てい ない
。
︵
︶ 私見 につ いて は、 すで に、 以下 の文 献ま たは 論稿 で明 らか にし てい る。 野澤
・前 掲注
︵
︶① 九頁 以下
、同
﹁瑕 疵担 保責 任の 法的 性質 75
73
︵一
︶︱
︱法 定責 任説 の三 つの 考え 方﹂ 同編
﹃瑕 疵担 保責 任と 債務 不履 行責 任﹄
︵日 本評 論社
、二
〇〇 九年
︶一 五頁
、同
﹃契 約法
︱︱ セカ ンド ス テー ジ債 権法
Ⅰ﹄
︵日 本評 論社
、二
〇〇 九年
︶一 一五 頁以 下、 特に 一二 六頁 以下
、同
﹁瑕 疵担 保責 任と 債務 不履 行責 任﹂ 私法 七二 号一 五五 頁
︵二
〇一
〇年
︶な ど。
︵
︶ 加藤
・前 掲注
︵
︶一 八五
︱一 八六 頁。 76
56
︵
︶ 下森
・前 掲注
︵
︶三 四四 頁。 77
28
︵
︶ 加藤
・前 掲注
︵
︶一 八七 頁。 78
56
︵
︶ 加藤
・前 掲注
︵
︶一 八七 頁の ほか
、加 藤・ 前掲 注︵
︶二 二六
︱二 二七 頁も
、そ の結 論の みを 記し てい る。 79
56
66
︵
︶ 野澤
・前 掲注
︵
︶八 六︱ 八七 頁。 80
49
︵
︶ 野澤
・前 掲注
︵
︶八 八頁 参照
。 81
49
︵
︶ 野澤
・前 掲注
︵
︶三
〇二
︱三
〇三 頁参 照。 82
3
︵
︶ 野澤
・前 掲注
︵
︶三
〇四 頁参 照。 83
3
︵
︶ たと えば
、神 田博 司﹁ 瑕疵 担保 によ る損 害賠 償の 範囲
﹂中 川善 之助
=遠 藤浩 監修
﹃不 動産 法大 系Ⅰ 売買
﹄︵ 青林 書院 新社
、改 訂版
、一 九七
〇 84 年︶ 三八 一︱ 三八 二頁 は、 瑕疵 担保 責任 が、 瑕疵 の存 在に よっ て崩 れた
﹁給 付と 反対 給付 との 等価 的均 衡﹂ を回 復す る制 度で ある から
、そ の 損害 賠償 の本 質は 代金 減額 であ ると する
。し かし
、五 七〇 条が 準用 する
﹁五 六六 条一 項に いう 損害 賠償 はも っぱ ら代 金減 額の 言い 換え に尽 きる もの と解 すべ きで は﹂ なく
、﹁ 目的 物の 瑕疵 なき 状態 を過 失な く信 じた 買主 の被 った 損害 を塡 補す るた めの もの
﹂︵ 信頼 利益
︶も 含ま れる とし た。
︵
︶ 好美 清光
﹁判 批﹂ 金融
・商 事判 例六 五〇 号四 八頁
︵一 九八 二年
︶、 下森 定﹁ 判批
﹂昭 和五 七年 度重 要判 例解 説八
〇頁
︵一 九八 三年
︶。 この ほ か 85
、三 宅正 男﹁ 判批
﹂判 例時 報一
〇四
〇号 一六 九頁
︵一 九八 二年
︶は
、﹁ 指示 数量 の不 足は
﹃学 理上 の性 質﹄ から いえ ば瑕 疵担 保の 問題 であ る﹂ とす る。
︵
︶ 山下 末人
﹁判 批﹂ 判例 タイ ムズ 五〇 五号 八五 頁︵ 一九 八三 年︶
。
︵ 86
︶ 好美
・前 掲注
︵
︶五 一頁
、三 宅・ 前掲 注︵
︶一 六九 頁。 87
85
85
︵
︶ 森田 宏樹
﹁判 批﹂ 民法 判例 百選
Ⅱ︹ 第六 版︺ 一〇 五頁
︵二
〇〇 九年
︶。
︵ 88
︶ 浅生 重機
﹁判 批﹂ 昭和 五七 年度 最高 裁判 所判 例解 説七 六頁
︵一 九八 三年
︶。 なお
、本 判決 の評 釈と して は、 すで に引 用し たも のの ほか
、今 西 89 康人
﹁判 批﹂ 法律 時報 五五 巻七 号一 六八 頁︵ 一九 八三 年︶
、半 田吉 信﹁ 判批
﹂ジ ュリ スト 七九 四号 九四 頁︵ 一九 八三 年︶
、円 谷峻
﹁判 批﹂ 民法 の基 本判 例︹ 第二 版︺ 一四 六頁
︵一 九九 九年
︶が ある
。
︵
︶ 三宅 正男
﹃契 約法
︵各 論︶ 上巻
﹄︵ 青林 書院 新社
、一 九八 三年
︶三 一二 頁以 下。
︵ 90
︶ 三宅
・前 掲注
︵
︶三 四七 頁以 下。 91
90
︵
︶ 三宅
・前 掲注
︵
︶三 六四 頁以 下。 92
90
︵
︶ 三宅
・前 掲注
︵
︶三 一八 頁。 93
90
︵
︶ 三宅
・前 掲注
︵
︶三 一八
︱三 二〇 頁。 94
90
︵
︶ 三宅
・前 掲注
︵
︶三 三四 頁。 95
90
︵
︶ 三宅
・前 掲注
︵
︶三 三七 頁。 96
90
︵
︶ 三宅
・前 掲注
︵
︶三 六五 頁。 97
90
︵
︶ 三宅 正男
﹁債 務不 履行 責任 と瑕 疵担 保責 任と の関 係﹂ 民法 の争 点二 四〇 頁︵ 一九 七八 年︶
。 98