本稿 の冒 頭で
、︽ わが 国の 判例
・通 説は プラ イバ シー 保護 に傾 きす ぎて いる
︾と 述べ た。 この こと を論 証す るた めに
、ア メリ カに おけ る﹁ 私生 活上 の事 実の 公表
﹂事 案の 判例
・学 説を 紹介 して きた
。紙 幅の 関係 で、 私 は日 本に おけ る﹁ 私生 活上 の事 実の 公表
﹂に 関す る判 例・ 学説 を詳 細に は分 析せ ず、 いわ ば所 与の 事柄 とし て扱 っ てき た。 日本 法に 関す る私 なり の分 析は 他日 を期 す。 ここ では
、ア メリ カ法 と比 較し たと き、 日本 法理 論に 顕著 な 特徴 を列 挙す るに とど める
。
① プラ イバ シー に関 する リー ディ ング
・ケ ース であ る﹁ 宴の あと
﹂東 京地 方裁 判所 判決
︵昭 和三 九・ 九・ 二八 判時 三 八五 号一 二頁
︶以 来、
﹁私 的﹂ また は﹁ 個人 的﹂ とい う用 語が 精査 され るこ とな く、 論者 の望 まし い結 論を 誘導 する よ う融 通無 碍に 使用 され て
( )
いる
。﹁ 私的
﹂ま たは
﹁個 人的
﹂な 情報 に該 当す るか どう かが 決定 的で ある かの よう に扱 われ
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てい る。 これ に該 当す ると みら れれ ば、 他の 成立 要件 が絞 りと して 機能 して いな い。
② その ため
、﹁ 私的
﹂ま たは
﹁個 人的
﹂と いわ れる 範囲 は、 外か ら観 察し てす ぐに 判明 する 人の 特徴 のよ うに
、
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に 置か れて いる 人の 情報 をも 含む とこ ろま で拡 大さ れて( )
いる
。こ のこ とは
、日 本法 の理 論が
、﹁ 私生 活上 の
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事実 の公 表﹂ と﹁ 誤認 を生 ぜし める 公表
﹂と の違 い、 さら には
、
i n t e n t i o n a l i n f l i c t i o n o f e m o t i o n a l d i s t r e s s
と の違 いに 神経 質で はな いた めで ある。プ ライ バシ ー侵 害だ と主 張さ れる 事案 にお いて は、
﹁私 生活 上の 事実 の公 表﹂ では ない ケ ース であ っ
( )
ても
、﹁ 宴の あと
﹂判 決の 示し た成 立要 件が 枠組 みと して 漫然 と用 いら れる こと が多 い。 この こと は、 プラ
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イバ シー 侵害 の成 立要 件が 未成 熟の まま 放置 され てい るこ とを 物語 る。
③ プラ イバ シー に関 する 裁判 例は
、﹁ 宴の あと
﹂判 決の いう
﹁要 秘匿 性﹂ およ び﹁ 私事 性﹂ の要 件を 重視 せず
、﹁ 他人 に知 られ たく ない 情報
﹂で あれ ば、 簡単 にプ ライ バシ ーの 保護 領域 に属 する
、と して いる
。言 い換 えれ ば、
﹁私 的﹂ ま たは
﹁個 人的
﹂事 柄と いう フレ ーズ が、
﹁社 会通 念か らみ て他 人に 知ら れた くな い情 報﹂ と相 互互 換的 に用 いら れ、 ア メリ カ法 でい う
d e t a i l s o f o n e Y s i n t i m a c y
と は別 物を 指す よう にま でな って いる。
④
﹁他 人に 知ら れた くな い情 報﹂ が右 の①
~③ のよ うに 理解 され てい るた め、 この 情報 が公 開さ れれ ば、
﹁不 快・ 不安 の念 を覚 えた
﹂と の主 張が 簡単 に成 立す る。 さら に、 正当 な注 意義 務を 払え ば、 他人 に知 られ たく ない 情報 を公 開し 原 告に 不快
・不 安の 念を 覚え させ るこ とは 回避 でき たは ずだ
、と 被告 の過 失が 認定 され てし まう
。こ れは
、日 本法 理論 が プラ イバ シー の保 護法 益を 人格 的利 益、 厳密 にい うと
、精 神的 平穏 さと いう 人格 的利 益を 重視 する ため であ ろう
。こ う なる と、 損害 の発 生と 因果 関係 の要 件が 厳密 に問 われ なく なる
。プ ライ バシ ーを 論ず るに あた って も、 日本 は尊 厳の 国 で
( )
ある
。日 本法 の理 論に は、 プラ イバ シー 不法 行為 が、 異形 では ない か、 とい う迷 いが ない
。﹁ 人格 的利 益﹂ とい う高
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邁な 用語 が人 びと の目 を曇 らせ てい る。
⑤ 日本 法に おけ る﹁ 不快 性﹂ の要 件は
、ア メリ カ法 でい う﹁ 極め て不 快﹂ また は﹁ 重大 な憤 慨の 感覚
﹂と は違 って
、 厳格 では ない
。日 本法 は、 主観 的で 多様 なプ ライ バシ ー選 好の 保護 に拡 張さ れて いる
。こ れも
、﹁ 人格 的利 益﹂ とい う 用語 が精 査さ れな いた めで ある
。
⑥ それ ばか りで なく
、プ ライ バシ ー選 好そ れ自 体を 保護 する 法制 にな った 日本 法が 不思 議が られ ない のは
、一 部は
、 プラ イバ シー とは 自己 情報 コン トロ ール だ、 とい う学 説の 影響 であ る︵ 自己 情報 コン トロ ール 権も
﹁人 格的 利益
﹂だ と
説か れ、 犯罪 に関 する 個人 情報 も人 格的 利益 とな って いる
。こ れで は、 カン トが 泣く だろ う︶
。ア メリ カに おい ては
、 自己 情報 コン トロ ール 権説 は、 通説 でも 有力 説で もな い。 法哲 学者 や﹁ 法と 経済 学﹂ 論者 は、 自己 情報 コン トロ ール 権 は主 観的 権利 論と して は成 立不 可能 と考 えて
( )
いる
。ま して や、 曖昧 な自 己情 報コ ント ロー ル権 が、 表現 の自 由と の対 立
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領域
︵不 法行 為プ ライ バシ ーの 領域
︶で 前面 に出 され るこ とは ない
。こ の新 説が
﹁私 生活 上の 事実 の公 表﹂ 事案 にお い て前 面に 出さ れた とし ても
、ア メリ カの 判例
・学 説は 一瞥 もし ない だろ う。 これ に対 して 日本 にお いて は、 秘匿 性要 件 から 解放 され た自 己情 報コ ント ロー ルと して のプ ライ バシ ー概 念が
、表 現の 自由 と対 立す る事 案に おい ても
、推 奨さ れ てい る。 摩訶 不思 議な こと で
( )
ある
。
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⑦ なる ほど
、日 本法 は、 違法 性阻 却の 段階 で表 現の 自由 への 配慮 を示 そう とす る。 とこ ろが
、免 責事 由に 関す る法 準 則は 確立 され てお らず
、長 良川 リン チ報 道事 件最 高裁 判決 まで は、 相当 数の 判例 は、 名誉 毀損 にお ける
﹁公 共の 利害
﹂ 概念 を援 用し てい た︵ たと えば
、﹃ 逆転
﹄事 件に おけ る東 京高 判平 成元
・九
・五 判時 一三 二三 号三 七頁 をみ よ︶
。こ の
﹁公 共の 利害
﹂が 何を 指す のか
、わ が国 の判 例・ 学説 は明 確な 回答 を与 えて いな い。 さら には
、﹁ 公共 の利 害﹂ とい う免 責事 由に よっ て表 現の 自由 との 調整 を図 ろう とす るこ とに
、懐 疑が ない
。そ れど ころ か、 アメ リカ 法の
p u b l i c i n t e r e s t ,
すな わち﹁公 衆の 関心 事﹂ と、 日本 法に いう
﹁公 共の 利害
﹂と は、 全く 別の 概念 とな って いる
。﹁ 公共 の利 害﹂ で調 整 しな いと する 長良 川リ ンチ 報道 事件 最高 裁判 決は
、こ れま での 道徳 主義 的な
﹁公 共の 利害
﹂の 魔術 から 解放 され てい る とは いえ
、あ まり に個 別的 利益 衡量 とな って いる
。
⑧ わが 国の 判例
・学 説は 名誉 毀損 とプ ライ バシ ー侵 害と の区 別を 曖昧 なま ま残 して いる
。名 誉や プラ イバ シー が、 そ れぞ れ独 立の 権利 であ るこ とを 真剣 に考 えれ ば、 名誉 権侵 害と プラ イバ シー 権侵 害事 案に おけ る成 立要 件︵ たと えば
、 公表 の
( )
要件
︶や 免責 事由
︵た とえ ば、
p u b l i c i n t e r e s t
の( )
中味
︶は
、そ れぞ れ別 個で ある こと が判 明す るは ずで ある
。ま
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た、 右の
②で ふれ たよ うに
、﹁ 私生 活上 の事 実の 公表
﹂事 案と は似 て非 なる
﹁誤 認を 生ぜ しめ る公 表﹂ や
i n t e n t i o n a l i n -f l i c t i o n o f e m o t i o n a l d i s t r e s s
と の違 い、 さら には、信 用毀 損、 名誉 感情 侵害
、著 作権 侵害
、信 頼違 背等 々の 法領 域と の すり あわ せが 十分 では ない
。そ の代 表的 な判 例が
﹁石 に泳 ぐ魚
﹂最 高裁 判決 であ る︵ 最三 小判 平成 一四
・九
・二 四判 時
一八
〇二 号六
〇頁
︶。