⊃N 言
5 1 1 21 1 3 0 0 0
6 4 1 18 0 1 1 2 1
3 7 6 4 1 0 0 0 0
2 1 0 2 0 0 0 0 0
7 4 2 0 0 0 0 0 0
ズ レ 心
4 3
15 8
10 12
19 5
9 6
合 計
心
39 57 43 29 28
表現 形式 より 見た『論 語抄』の 文 体の 考察 章
第 詔9
る平安時代の多くの漢文日記︑記録等の文体で用いられた語であって︑院政鎌倉時代の説話文や戦記文などを経て︑
室町時代に抄物あるいは能の詞章︑狂言などに受け継がれている語であることからわかる︒けれども︑﹃論語紗﹄
での接続表現に﹁アヒダ﹂のみを専用し︑同じ機能を有する﹁ホドニ﹂を殆ど使川していないということは︑その
接続表現に﹁サルホドニ﹂﹁ホドニ﹂を主に用いた講義口調をよく伝え得ている﹃魯論抄﹄などとは全く対照をな
すもので︑それは﹃論語紗﹄の有する文体が漢文の訓み下し的な硬直性を有するが故の﹁アヒダ﹂の使用とも見ら
れるようであるが︑むしろ言語主体の表現意識に起囚するものとみる方が妥当のように思われる︒ただ︑﹁アヒダ﹂
が文語︵或は文語性の強い語︶に承接し︑﹁ホドニ﹂が文語の他に目語性の語にも白山に承接しているところから︑
両者の機能面での差児ハは抄物時代には殆ど無くなっているとしても︑右のごときことは︿表2﹀︿表3﹀に示した
﹁アヒダ﹂﹁ホドニ﹂のL接語の実態を見ることにより窺い知ることができるのである︒
﹃論語紗﹄の文章体が抄物らしがらぬ土間性を有するものであることは︑また一方において︑これが抄された時
代背景のしからしめたことであることも考慮に入れなければならないであろう︒抄物は応仁の乱のあった前後に広
く流行したものであると言われているが︑応仁の乱以前におけるいわゆる初期の抄物は殆どが漢文体で書かれたも
ので︑仮名抄と言っても果してそれが漢文訓読に際しての送り仮名なのか︑本文中の地の文の仮名なのか識別しが
たいものであって︑後の仮名抄などにはかなり遠いものであった︒﹃論語紗﹄の抄された時期は識語にあるごとく︑
図らずもそうした応仁の乱以前であり︑それが一貫した仮名抄であっても︑その性格に右述の事柄が現れることは
十分考えられることである︒しかし︑たとえその抄物資料が︑漢文的文体を有しあるいは講述の要点を書き留めた
覚書に︑何らかの整理改変を加えた統一ある一種の文体をもっかものであったとしても︑やはり︑抄物は講述者の
講義の聞書に出発したものであって︑そこに目語が入り︑俗語︵或は通行語︶が混じり得ることは極めて白⁚然の成
り行きとして考えられることである︒そうした抄物というものの性格を考える時︑﹃論語紗﹄も訓読口調が強いと
491 第三章 表 現 形 式 よ り 見 た『論 語 抄』の 文 体 の 考 察
〈 表3 〉 「魯 論 抄 」 に お け る 「 ホ ド ニ 」 の 上 接 語
士.¬ 接 ホ 語 ド
− の 巻
名
用言 助 動 詞
計
接 続 語
動
詞 形
容
詞 タ タ
ル ヂ
ヤ ヌ
− 打 消 W
ナ ン ダ
ザ ル
マ イ
ベ キ
ら. 可 能 心I
ナ ル
−断 定W
ナ
−断 定
− ル ル
− 受 身
− ル ル
− 淳 敬
−
− フ ル ル
ヘ受 身
−
− フ ル ル
〃 .尊 敬 一
ウ ウ ズ
ン ラ ウ
如 ナ
マ
− フ
ス
ル サ ル ホ ド
−
− ホ
ド
−
− ヂ ヤ ホ ド 一 一
学 而 第 ‥
為 政 第 二
八 伶 第 三
里 仁 第 四
公冶長 第五
雍 也 第 六
述 而 第 七
泰 伯 第 八
子 早 第 九
郷 党 第 十
先進第十・‑一
顔淵第十二
子路 第十三
憲問第十四
衛霊公 第十五
季氏第十 六
陽貨第十七
微子第十 八
子張 第十九
亮曰 第二 十
序 文
11
10
30
17
19
1.11
25
22
20
41
19
12
10
18
8
12
20
9
19
12
11 4
2
11
7
5
8
7
9
13
5
7
6
2
2
4
2
5
2
10
3
8 3
7
10
6
7
6
12
12
10
7
13
4
2
3
18
8
7
20 1
II
10
14
6
7
10
13
6
9
19
18
4
1
1
4 6
5
4
10 3
8 4
2
3
2
7
6
5
9
1 1
4
1
3
2
5
2
1 1
1 1 1
1 1
2
2
1 1
2
1
1
1
1
2 1
1 2
3
1
1
1 1
2
2
1
4
1
1
7
1
3
4
1
2
5
1 1
2
1
1
1
2
1 1
1
1
1
1 1
1
2
1 l 1
1
3
2
3 1
1 1
1
1
1 1
1
1 35
43
73
42
46
45
59
61
72
78
71
34
15
35
19
17
41
42
57
31
52 2
6
9
4
6
4
12
6
3
2
6
10
1
1
2
1
1
2
4
3 1 3
4
1
1
1
1
1 1
1
1
第三篇 論 語 抄 の 国 語 学 的 考 察 佃0
〈表2 〉 『論 語 紗』に お け る 「 ア ヒ ダ 」 の 上 接 語 上¬
接 ア 語ヒ ダ
巻 の
名
用 言 助 動 詞
計
接 続 語 動
詞 形
容
詞 ナ ル ら指 定 心
ベ
キ ザ
ル タ ル パ 完 了 心
ル
八 完 了W
シ
八過 去 心
ン
心 推 量W
シ
ム
ル ル
ル
ー 一 受 ラ ル 身 ルー 一
ケ ル ハ 過 去 心
サ ル ア ヒ ダ
シ カ ル ア ダ
ホ
ド
−
− 学 而 第 一
為 政 第 二 八 伶 第 三 里 仁 第 四 公 冶 長 第 五 雍 也 第 六 述 而 第 七 泰 伯 第 八 子 芋 第 九 郷 党 第 十 先 進 第 十‑‑
顔 淵 第 十二 子 路 第 十三 憲 問 第 十 四 衛霊公 第十 五 季 氏 第 十 六 陽 貨 第 十 七 微 子 第 十 八 子 張 第 十 九 尭 日 第二十
5 6 8 7 10 12 10 5 8 5 6 4 11 19 9 3 5 10 1 4
1
2
3
2 1 1 1 2
1
1 1 2 1
2 6 4
3 3 3 1
7
4 1 1 2 1
1
1 1
3
1 1
1 4 1 1 1 1 2
3
2 1
1 1 1 1 1
! 1 1
1 3 3
1
1
1 1 1 1
1 1
1 7 13 12 8 15 24 16 5 17 13 14 11 13 30 13 11 9 13 4 6
3
1
1 4 4 6 1 12 9 17 5 9 13 13 5 16 15 17 16 18 8 21 8
1
1
493 第三章 表 現 形 式 よ り 見 た「論 語 抄」の 文 体 の 考 察
〈 表6 〉‑1
ブ
学第 而一 公 冶 長第 五 郷第 党十 衛第 十 五霊公 尭第二日十 序 文`/ 也 ソ 也 ゾ 也 ゾ 也 ソ 也 ゾ 也
方
コ ト
ト コ ロ コ コ ロ
モ ノ
ト キ
コ コ
ヒ ト
ユ ヱ
コ レ
ヤ ウ
タ メ
ア ヒ ダ
カ ホ
そ の 他
8 11 0 11 12 0 0 0 0 0 0 0 0 0 11
1 5 1 6 5 0 0 0 1 2 0 0 0 0 0
0 4 3 8 14 0 0 0 0 0 0 0 0 0 24
0 17 0 3 24 0 0 0 3 3 0 0 0 0 23
2 8 2 8 4 5 2 0 3 3 0 0 0 0 14
0 17 4 10 8 2 0 1 3 5 1 7 8 10 21
0 0 0 0 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1
0 5 4 6 14 0 0 0 3 0 0 0 0 0 38
0 7 1 3 6 0 0 0 0 0 0 0 0 0 16
0 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1
2 9 2 20 13 0 0 0 0 0 0 0 0 0 7
0 1 1 0 0 0 0 0 1 0 1 3 0 0 20 ア ル
ー二 ス ル ヨ ム そ の他 ナ イ ヨ イ ヤ ス キ ガ タ キ ハナハダシキ そ の他
16 21 10 2 43 16 0 0 0 0 10
1 20
1 0 15 2 1 1 0 0 0
12 27 8 3 H 17
0 0 0 0 8
1 23 7 0 25 2 1 0 5 1 0
25 21 17 2 49 12 0 0 0 0 6
11 27 31 0 59 1 5 0 0 0 2
1 19 0 0 5 1 0 0 0 0 1
1 14 0 0 36 5 0 0 0 0 2
9 16 8 2 42 8 0 0 0 0 5
0 2 0 0 3 1 0 0 0 0 1
16 14 4 3 22 10 0 0 0 0 5
2 11 1 0 5 0 0 0 0 0 0
/
第三篇 論語 抄 の国 語学 的 考 察492
〈 表4 〉 『魯論 抄』に お ける 文 末助 辞
用 例 数( 篇)
⊇ 二 学 而
第 一
公 冶 長
第 五
郷 党
第 十
衛霊公 第 十 五
尭 日 第二十
序 文
用 言 十
ソ 也
123 41
95 65
レ15 136
27 58
93 7
78 19
体 言 十 ソ
也
78 21
62 147
65 207
10 102
58 7
95 113
助 動 詞 十 ソ`
也
93 27
131 3^
95 35
6 27
62 1
119 4
助 詞 十 ゾ
也
11 12
6 6
9 11
3 10
9 1
10 2
介 計
ソ 也
305 101
295 252
314 389
46 197
222 18
302 138
〈 表5 〉
ヰ
学第 而一 公冶 長第 五 郷第 党十 衛霊公第 十五 尭第二十曰 序 文総 数 ゾ 也 ゾ 也 ソ 也 ゾ 也 ソ 也 ソ 也
305 101 295 252 314 389 46 197 222 1,8 302 138
体 言 に ;
78 25 53
21 0 21
62 9 53
147 74 73
65 14 51
207 104 103
10 8 2
102 32 70
58 25 33
7 5 2
95 40 55
113 86 27 用 言
動 詞 形容詞 形容動詞
123 92 26 5
41 37 4 0
95 64 25 6
65 56 9 0
145 114 18 13
136 128 8 0
27 25 2 0
58 51 7 0
93 77 13 3
7 5 2 0
78 59 15 4
19 19 0 0 助 動 詞 93 27 131 34 95 35 6 27 62 1 119 4
助 詞 11 12 7 6 9 11 3 10 9 1 10 2
第三篇 論 語 抄 の 国 語 学 的 考 察494
〈表6 〉 −9
ブ
学第 ヽ‑‑而 公 冶 長第 五 郷第 党十 衛 霊 公第 十 五 尭第ニミ十日 序 丈ソ 也 ゾ 也 ソ 也 ソ 也 ソ 也 `/ 也
タ ヌ ル ヂ ヤ マ イ タ イ タ ル ゴ ト キ ナ ル ザ ル ベ キ マ ジ キ そ の 他
43 19 1 2 16 0 0 0 0 0 0 0 12
1 0 2 0 0 0 0 2 1 5 11 2 0
86 10 3 1 17 2 2 0 0 0 0 0 10
0 0 12 0 0 0 0 0 0 7 8 2 0
42 30 16 0 4 0 0 0 0 0 0 0 3
2 1 6 0 0 0 0 2 1 9 13 0 0
1 2 0 0 2 0 0 0 0 0 0 0 1
0 0 0 0 0 0 0 3 0 10 7 2 5
31 10 3 1 6 0 0 0 0 0 0 0 11
0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 0 0
101 10 1 2 0 0 0 0 0 0 0 0 5
0 0 0 0 0 0 0 3 0 0 0 0 0 ホ ド( 二)
マ デ バ カ(
ヤ ウ)ニ ト(
ゾ) ト ゾ カ ラ
ノ マ デ ノ ミ ッ ッ(
ト) テ そ の 他
3 0 7 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1
0 0 0 0 0 0 5 3 0 0 0 0 0 3 0
0 0 0 3 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 4
1 0 1 0 0 0 2 1 0 0 0 0 1 1 0
5 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 4
4 0 1 0 0 0 0 1 0 1 4 0 0 0 0
0 0 0 0 1 1 0 0 0 0 0 0 0 0 l
0 0 2 0 0 0 4 0 1 0 1 1 0 1 0
5 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 4
0 0 0 0 0 0 0 1 0 0 0 0 0 0 0
4 2 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 4
1 0 0 0 0 0 1 0 0 0 0 0 0 0 0
より 見た 『論 語抄 』 の 文 体の 考察
は言え︑それはそれなりに口語的性格を有する資料としての役割を担うものであることが理解されるのである︒
二文末辞から見た﹃論語抄﹄の表現性
次に︑書陵部蔵﹃魯論抄﹄における文体を通して︑その表現性について検討する︒﹃魯論抄﹄の文体は先の用例H
で示したごとく︑﹁ナリ﹂﹁ゾ﹂の混体である︒因に﹃魯論抄﹄における文末辞の形式を検討してみた結果︑︿表4
﹀のごとき数値を得た︒この表の﹁ゾ体﹂﹁ナリ体﹂の文末辞の上接語の実態を調査したものが︑︿表5﹀︿表6
﹀である︒
︿表5﹀︿表6﹀を検討してみると︑用言︑助動詞については﹁ナリ﹂辞へは文語的な語が上接し︑﹁ゾ﹂辞へ
は口語的な語が上接するという形をとるのであるが︑それは文語的か口語的かの相異であって︑上接する語性は同
じ傾向のものである︒また︑体言についても﹁ナリ﹂辞も﹁ゾ﹂辞も両者に上接する語は大体同じ性質のものを見
るのであるが︑とりわけ形式名詞が上接する場合には﹁ナリ﹂辞も﹁ゾ﹂辞も﹁コト︵事︶﹂﹁モノ︵物︑者︶﹂が圧
倒的に多く︑T・トハ:∴卜云︶ココロゾ﹁也﹂﹂という引用形式と同様いわゆる抄物の表現形式︑すなわち︑T:
︵トハ∵:︵ノ︶コトゾ︹也︺﹂フ:︵ト︶ハ:∴ノ︶モノゾ︹也︺﹂の共通性を知るのである︒このように考えると︑
土井洋一氏の言われるごとく︑﹁︵抄物文体の︶﹃也﹄は文語であると同時に講述用語なのであり︑﹃ゾ﹄の指定辞と
仏 し て の 論 理 的 用 法 は 講 述 専 用 の 用 語 と い う べ き で あ ろ う ﹂ と い う こ と に な る の で あ る が ︑ こ こ で ﹃ 魯 論 抄 ﹄ に 現 れ 現 表 る ﹁ ナ リ ﹂ 体 ︑﹁ ゾ ﹂ 体 の 意 味 に つ い て ︑ 次 の 用 例 を も と に し て 考 え て み る 必 要 が あ る よ う に 思 わ れ る ︒
495 第三章
︱ ○ 学 而 第 一 唐 本 ニ ハ 命 語 巻 第 一 ト カ イ テ 別 ノ 行 二 学 而 第 一 ト シ タ ソ 摺 本 疏 釈 文 等 ニ ハ 学 而 第 一 ノ 上 二 論 語 ノ 両I
ぐ −1 字 ハ 無 ソ 但 シ 古 本 ニ ハ ア ル 也 何 晏 集 解 ハ 唐 本 ニ ハ 有 ソ 釈 文 ニ ハ 此 四 字 ハ ナ イ ソ 疏 ニ ハ 何 晏 ノ 二 字 ハ ア ツ テ 集 解
ノ 二 字 ナ シ 依 之 術 語 ト 何 晏 ト ノ 四 字 家 説 二 不 読 之 先 ツ 学 而 ノ 篇 ヲ ー 番 二 置 コ ト ハ 人 タ ル 者 ハ 学 文 ヲ シ テ 舜 何 人
論 語抄 の 国 語学的 考察496
篇
−jlツ我何人ット云境界二至ライテハソ礼記学記二玉不い 琢不い 成い 器人不学不知道トアルソ人ト云者ハ生レナカラ
ー性差⁚ヲ目・ハスレ共学文ヲセサレハ事理ノニヲ弁知スルコトヲ得ヌソ玉モ琢ネハ光ヲ生セヌ光カナケレハ瓦傑ニハーー〜ぐ1ぐ劣ルッ去程二学文ヲセイテハチヤソ第ハ諦也諦ハ明也一八数ノハシメソ明ラカニ篇ヲ次ッル始ト云心也︵一13
ウ 心
右の引用文巾に現れている﹁ゾ﹂は明らかに講述口調なるものの反映であり︑この﹁ゾ﹂を文終止にもつ文体に
は目語的要素なるものが多く川いられていることがわかる︒また︑﹁ナリ﹂についても用例は少ないが︑﹁ゾ﹂で文
終止する文体と同じ条件を有したものの文終止に用いられているものもある︒すなわち︑﹁摺本疏釈文等ニハ学而
jレ第︵ノヒニ論語ノ両字ハ無ソ但シ古本二
4 〜J〜ハアル也﹂﹁一八数ノハシメソ明ラカニ篇ヲ次ツル始ト云心也﹂のごとく
ぐぐである︒しかし﹁第ハ諦也諦ハ明也﹂の﹁也﹂はどのように解釈したらよいであろうか︒やはり﹁ゾ﹂﹁ナリ︵也︶﹂
は等しく講述用語なるが故の現れであろうか︒次の引用文を検討してみる︒
ぐぐ〜ミ○里仁第四里ハ隣里也人可ゝ居処也仁ハ人之本心仁義也人ハ仁者アル里ヲ択テ仁二近ツクヘキ也至善ノ人ハ別
ノ
可い居也孟子云居ハ移Ji気養移い体云々前二次ツル心ハ季氏力行跡ノ悪イコトハ仁者二不乙近付 謂ソ程二択い 仁居 ノ・Sjコトッ凡人ハ物二遷り易イッ善二逢ヘハヨウナリ悪ニアヘハワルウナル去程二居処ニハ仁者ノアル里ヲ択テ
カ〜〜タラハ如水氏ニハアルマイソ故二里仁ヲ次テタル也︵66オ︶
右の引川文をみると︑そこに表された文末辞は︑先の例とは逆に︑﹁ナリ︵也︶﹂が多い︒ここでの﹁ナリ﹂はい
わゆる漢文直訳体のごとき場介が主であるが︑それは︑講述者が﹁論語﹂の注釈書をそのまま訓み伝えたものが抄
された形をなしているものである︒また︑ここに表された﹁ゾ﹂は︑﹁ナリ﹂文体の漢文の訓み下し文的なるもの
の中にあっても︑やはり﹁ナリ﹂文体とは違った講述口調をもっており︑﹁前二次ッル心ハ1氏力行跡ノ悪イコト几Ljリカーハ仁者二不〜近付ふ剛ッ程二択レ仁居タラハ如こ季氏﹄ハアルマイソ﹂のごとく︑解釈・説明の内容は︑依拠した注
章 表現 形 式 よ り 見たr 論 語抄 』 の文 体 の 考察
第 497
釈書あるいは先行抄の内容を踏まえてなされているものであることを知るのである︒しかしその際︑説明の事柄に
講述者の主観的判断が積極的に働いた場合に﹁ゾ﹂文体となって現れ︑逆に事柄の解釈・説明が︑依拠した注釈書
あるいは先行抄の説明内容をそのまま受講者に伝達することによって済まされるような場介−すなわち︑この場合
には講述者は注釈書と受講者との媒介者としての存在であるIには︑講述者の客観的なる指定判断が下されること
になり︑それが﹁ナリ﹂文体となって表されているものと考えられるのである︒従って︑﹃魯論抄﹄における文末
助辞﹁ナリ︵也︶﹂を有する文章体は︑﹁ナリ﹂が﹁ゾ﹂とともに講述用語であるということのみで同じ条件ドで用
いられたものではなく︑講述者による注釈書の直訳体なるものの反映として︑あるいは講述者の講義川準備ノート
︵于控︶に基づく講述の際に文章語で書かれていた事柄の説明が︑直接的な形で伝達された結果による反映として
表されたものと考えるのである︒結局︑﹁ナリ﹂体は︑講義用準備ノートに書かれた文がそのまま伝達され︑ある
いは漢文注の単なる直訳的なるものであって︑そこでは注釈二説明される事柄が講述者の客観的な指定判断によっ
てなされているのである︒一方︑﹁ゾ﹂体は講述者の言語意識あるいは表現意識に基づいて講述された目頭語の反
映であり︑講述された事柄の内容は注釈書あるいは先行抄を踏襲したもので︑そうした客観的な事柄に対する講述
抒の主観的指定判断によって表されたものなのである︒
三﹃論語抄﹄の文構造
﹃魯論抄﹄に見られる文章体に︑その文末辞より見て形式卜﹁ナリ体﹂﹁ゾ体﹂が存し︑﹁ナリ体﹂が漢文直訳あ
るいは講義用準備ノートから︑また︑﹁ゾ体﹂が講述者の主観的な指定判断に基づく講述口調からの現れであるこ
とを推察した︒そこで次に︑﹁ナリ﹂﹁ゾ﹂両文体の一丈の長短を比較対照してみると︑﹁ナリ体﹂のものには短文
が井常に多く︑従って文構造も単純︑簡潔である︒反対に︑﹁ゾ体﹂は︒般的に長文である傾向が強く︑しかもそ