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Ⅲ 多機関連携事例

ドキュメント内 中のコピー (ページ 44-54)

最後に,精神疾患だけではない様々な課題を抱える精神障害者に対して,関係機関が情報を 共有し,多機関で当事者を支えている事例を紹介します。

連携を図るには,ケースやその状況に応じて中心機関を決めることが重要です。

< 本 人 > 40代 男性 無職 単身

< 診 断 名 > 統合失調症

飲酒して自宅近くの店の店員に刃物を持って脅迫した。

警察官からの通報により,保健所で事前調査を実施した結果,

気分高揚,興奮,易怒性あり措置診察を経て措置入院となった。

入院後は治療により病状落ち着き,本人は自宅への退院を希 望している。

< 経 路 > 23条注1)通報による保健所事前調査,措置入院対応

(その後,医療保護入院へ移行し入院中)

<社会資源> 計画相談,地域移行支援,介護給付(居宅介護),訓練等給付(就 労継続支援 B 型),訪問看護

☆精神科治療の継続により病状を安定させる。

☆退院に向けて生活環境の整備を行う。

☆退院後の支援体制を整える。

支援の目標

①本人の治療経過確認と治療理解への支援   ・病院との情報交換により本人の状況を確認。

②本人の希望への支援,退院に向けた準備,調整   ・入院前の生活環境の確認

  ・ライフラインや携帯電話の契約

③本人をまじえた退院支援委員会の開催(病院:2回)

  ・計画相談事業所の決定

  ・第1回会議:退院に向けた支援の方針

    地域移行支援を利用したサービスの検討(訪問介護・訪問看護・通所訓 練施設の利用を検討)

  ・第2回会議:本人の希望の確認,支援者の具体的な役割の決定

④外出,外泊にて自宅生活の準備

  ・外出に合わせて,ライフラインや携帯電話の契約手続き   ・部屋の清掃,ゴミ捨ての支援

支援の経過

事例 A

自宅に退院したい本人の気持ちを支え,入院中から生活準備支援に向けて関わっ たケース

連携のポイント 中心機関:精神科病院・保健所

注1)23条通報

措置入院は,P21 で解説したように,患者本人に対して行政が命令して入院させるものです。都道府県 知事への通報により手続きが行われます。精神保健福祉法における通報には,「一般人による申請(22条)」,

「警察官による通報(23条)」,「検察官による通報(24条)」,「保護観察所の長による通報(25条)」,「矯 正施設の長による通報(26条)があります。

注2)退院支援委員会

医療保護入院者退院支援委員会は,病院において医療保護入院者の入院の必要性について審議する体制 を整備するとともに,入院が必要とされる場合の推定される入院期間を明確化し,退院に向けた取組につ いて審議を行うために開催します。

注 3)退院後生活環境相談員

退院後生活環境相談員は,医療保護入院者の退院支援のための取組において中心的役割を果たします。

退院に向けた取組に当たっては,医師の指導を受けつつ,多職種連携のための調整を図ることに努めると ともに,行政機関を含む院外の機関との調整にも努めます。

☆本人の退院したい気持ちをサポートし,入院中から支援機関が関わりを持つことで,本 人が安心感を持ち治療意欲の高まりに繋がった。

☆本人の外出に合わせて支援機関が一同に会したことで,本人と支援者の関係が築け,退 院前に支援ネットワークが構築された。

☆相談支援専門員を中心にきめ細かな支援を行ったことにより,本人の支援機関への信頼 感が高まっており,退院後の治療や訓練の継続に繋がると思われる。

連携の図

退院後

市社会福祉課

A病院訪問看護ステーション 保健所 A精神科病院

退院支援委員会2

*病院(主治医・退院後 生 活 環 境 相 談 員注 3) 病棟看護師)

*計画相談支援事業所

*市社会福祉課

*保健所

市障害福祉課

自立支援医療,認定審査

相談支援事業所(一般,特定)

計画相談,地域移行支援

就労移行支援事業所

就労移行支援

居宅介護支援事業所

ホームヘルパー

本人

< 本 人 > 20代 女性 無職

< 診 断 名 > 統合失調症,アルコール依存症,肝硬変,多臓器不全

中学時代から不登校。通信制高校を卒業後,ひきこもり状態 となり,20才頃より毎日飲酒。食事は不規則,スナック菓 子やファーストフードが主。全身浮腫。発熱。強度倦怠感あり。

精神科治療歴あるが,中断。

家族が本人の体調を心配し受診勧めるも本人拒否。保健師訪 問時,ドア越しに会話はできるが面会拒否。幻覚,妄想等の 発言はないが,人に見られるのを拒否。

両親自体,毎晩飲酒の習慣あり,飲酒に対する問題意識が低い。

身体科病院を退院後,精神症状が出現し自傷他害の恐れがあ るため措置入院となった。

< 経 路 > 社会福祉協議会担当者

相談経路:社会福祉協議会担当者

<社会資源> 精神科デイケア

☆継続飲酒による身体症状があるため,まずは身体面の治療につなげる。

☆身体症状が落ち着いたら統合失調症の治療につなげる。

☆精神疾患とアルコール依存症について,家族への教育的支援を行う。

☆退院に向けて,支援体制を整える。

支援の目標

①身体科病院受診の説得と病院の調整

  ・本人の受診したくない気持ちを受け止めつつ身体症状を確認。救急車利用も考慮しな がら,次回訪問時には部屋に入るという約束を取り付け,2 回目の訪問で同行しての 受診に繋げた。

  ・身体科病院に,本人の精神科疾患を前提に受け入れを依頼。

支援の経過

②精神保健福祉法23条通報による措置入院への対応

  ・身体科病院を退院して数日後,急激な精神症状(幻覚・妄想)による自傷行為があり,

通報となったため,措置診察実施。結果,精神科病院に措置入院となった。

③精神科病院に退院時支援会議の開催を依頼。

  ・本人と家族,支援者(保健所・町・社協)が一同に会して,主治医から本人の病状や 退院後の療法上の注意について説明を受け,支援の方針を共有した。

④関係機関による在宅支援

  ・定期的な訪問により,本人の状態や服薬の確認を行った。

  ・本人・家族の理解度や思いを確認しながら,服薬継続の必要性や食事・飲酒の問題,

家族の本人への関わり方について指導・助言した。

事例B

アルコール依存による身体疾患を抱え,精神科治療から退院後の生活環境を整 えていったケース

連携のポイント 中心機関:保健所・社会福祉協議会

☆本人の人に会いたくない気持ちを受け止めつつ,早期受診を見極めつつ身体科の受け入 れ病院を調整し,本人が安心して受診できるよう,保健所と地域ケアコーディネーター が同行支援した。

☆本人・家族と支援者が,病気や治療に対する共通認識を持てるよう,入院先の精神科病 院で主治医を交えて退院時支援委員会を開催し,支援方針を確認,決定した。

☆その後,社会福祉協議会担当者が身近な相談役となり,保健所保健師と共に定期的な訪 問を行い,支援を継続している。家族に対してはアルコールに対する教育的支援も課題 である。

⑤食事管理と社会復帰に向けた支援

  ・本人と家族に身体科病院の栄養指導を受けてもらうよう病院と調整した。

  ・本人の規則的な生活や他人との関係づくりの支援として病院デイケアに繋げた。

⑥アルコール依存症について,家族教室への参加を促している。

B精神科病院デイケア A精神科病院

通院・入院支援,退院支援委員会

市社会福祉課

自立支援医療,認定審査

C身体科病院

身体管理(肝硬変治療)

C病院栄養科

栄養指導

市社会福祉協議会

訪問(見守り,本人,家族の相談)

保健所

訪問(精神面,身体面の観察,服 薬確認,家族への支援,アルコー ル教室)

連携の図

家族

本人

< 本 人 > 75歳 女性 未診断 無職 持ち家 厚生年金(非課税世帯)

一昨年,夫が死亡してから息子と2人暮らしだが,周囲は独居 と認識

隣人から監視,悪口を言われるなどの被害相談多数

(のちに統合失調症と診断)

< 経 路 > 警察署から保健所への情報提供,市保健師が対応

<社会資源> 計画相談,民生委員

☆病識注1)が欠如している本人と息子への精神科治療開始と継続により,病状を安定させる。

☆精神症状による問題行動への対応について,周囲の共通理解を図る。

☆親戚等からの支援が望めないため,関係機関の連携による支援体制をつくる。

支援の目標

①状況(事実)の整理と把握

  ・関係機関での訪問や情報交換等により,本人の訴えや状況を確認。

支援の経過

②相談・訪問支援の開始

  ・市の来所相談を利用し,精神科医と面接,本人の病状を確認。

  ・本人が健康を案じている息子の受診を同伴ですすめた。〜医療機関への連携。

③関係機関カンファレンスを開催

  ・関係機関での支援方針を確認し,見守り支援の体制をつくった。

④関係機関による在宅支援の継続

  ・警察や民生委員注2)の見守り,市や社協の継続訪問・相談,医療機関等との情報交換 を行った。

⑤生活状況の確認および本人との信頼関係の確立

  ・定期的に関係機関の情報を整理し,本人及び息子の意向および病状確認を行っている。

事例 C

隣人から被害を受けているといった相談を周囲に訴え,精神科疾患が疑われる 息子と同居,近隣の親戚から疎遠になっている親子の見守り支援ケース

連携のポイント 中心機関:市役所

☆本人が,多機関に被害相談を訴えているため,現状把握と問題点の整理をするために,

関係機関が直接話し合える機会を早期に設定し,情報の共有,対応の意思統一を図った。

☆その後,市健康増進課保健師が中心となって支援継続している。

ドキュメント内 中のコピー (ページ 44-54)

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