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要約者と受益者との信頼関係の破綻と『対価関係』

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Academic year: 2023

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【令和4年度 日本保険学会全国大会】

共通論題「生命保険契約における『対価関係』の考察」

報告要旨:長谷川 仁彦

「要約者と受益者との信頼関係の破綻と『対価関係』

―実務の観点からの考察」

神奈川大学 長谷川仁彦

本稿は、「第三者のためにする生命保険契約」における保険契約者と保険金受取人と の「信頼関係」が破綻し、離婚に至ったときに「対価関係」に与える影響を考える。

1.要約者(保険契約者)と受益者(第三者)との信頼関係が破綻したときの「対価関係」

について

保険契約者と保険者との間の契約は、保険約款が契約内容となり、第三者である保険 金受取人は保険者に対し直接請求する権を取得する(補償関係)。一方、保険契約者と 第三者である保険金受取人との間には「何らかの特別関係」を要するとされている(対 価関係)。

そこで、最判昭和58年9月8日民集37巻7号918頁の事案を基に考えてみたい。本 件は、保険金受取人の変更手続き未了の間に被保険者が死亡した。保険証券に表示ある 前妻と現在の妻との間で、保険金受取人は誰かにつき争われ、「氏名をもつて特定され た者」を保険金受取人とすると判示された。本最判は、要約者(保険契約者)と諾約者

(保険者)との間で成立した保険契約(補償関係)であることから、合理的かつ客観的 判断であるとされる。

しかし、本件は、保険契約者と保険金受取人との間には、なお対価関係があるかが課 題となる。

2.生命保険契約継続中に信頼関係(原因関係)に著しく変化があったとき

他の裁判例から婚姻外の関係ある者を保険金受取人に指定・変更することの効力につ き争われた事案は、不倫関係を維持継続することを目的とすることの有無によって公序 良俗に反するかを判断している。本最判は、契約締結当時は保険契約者と当時の妻であ った保険金受取人との間には、正常な家族関係を形成していたので対価関係を有してい た。その後において、妻である保険金受取人の不貞行為によって離婚し、同妻は相手方 と再婚している。

本事案は、有責である不倫行為に基づき生活共同体が破綻をもたらし、離婚に至った ことから、要約者である保険契約者と受益者である保険金受取人との間は、一方の著し い信義則違反により相互の信頼関係が破綻し離婚したが。保険金受取人変更がなされて いない。その結果、生命保険契約は、その本来的機能を要しないこととなるので、対価 関係が消失したとみられる。

本事案のごとき場合は、保険契約者(の相続人)は、保険金を取得した前妻である保 険金受取人に対して不当利得返還請求権を行使できると考えられる。

参照

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