福島大学研究年報 第17号 2021年12月
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災害心理研究所活動報告書
所 長
筒井 雄二
○研究目的
原子力災害による放射線被ばくに対する不 安や恐怖が人々の心理的健康と子どもたちの 発達に及ぼす影響のメカニズムを明らかにす る。これにより,原子力災害が引き起こす心理 的影響をより小さくするために有効な心理学 的対処方略を開発する。
○研究メンバー
<研究代表者(研究所長)>
筒井雄二(福島大学共生システム理工学類・
教授)
<研究分担者(プロジェクト研究員)>
高谷理恵子(福島大学人間発達文化学類・教 授)
富永美佐子(福島大学人間発達文化学類・准 教授)
本多 環(福島大学うつくしまふくしま未来 支援センター・特任教授)
<連携研究者(プロジェクト客員研究員)>
氏家達夫(放送大学愛知学習センター・特任 教授)
木下冨雄(京都大学名誉教授,(財)国際高等 研究所フェロー)
坂田桐子(広島大学大学院総合科学研究科・
教授)
元吉忠寛(関西大学社会安全学部・教授)
○研究活動内容
【科学研究費補助金 基盤研究(B)原発事故に 関連する放射線不安はなぜ消えないのか:精神 影響長期化のメカニズムの解明(研究代表者:
筒井雄二)(課題番号:17H02622)】
本研究課題は東京電力福島第一原子力発電 所における原発事故が福島で暮らす母子に与 えた放射線不安やストレスなど,心理学的影響 について,その心理学的メカニズムを解明する ことを目的として事故直後から開始した当研 究所の研究プロジェクトの一部である。本研究 課題は当初3年間の期限で2017年度に採択さ
れ,本来の最終年度であった 2019 年度末に研 究成果を海外で発表し,終了させる目論見であ った。ところがCOVID-19によるパンデミック の影響で国際発表の機会を失ったため,急遽研 究期間を2020年度まで延期し,2020年度中に 成果公表するため今年度は活動を行った。
COVID-19 の影響は 2020 年度に入ってから
も衰えを知らず,最終的に研究成果を国際会議 で公表することを断念し,それに代えて論文と いう形で以下のとおり公表した。
Tsutsui, Ujiie, Takaya, & Tominaga (2020), Five- year post-disaster mental changes: Mothers and children living in low-dose contaminated Fukushima regions. PLOS ONE, Vol.15, No.12, e0243367, DOI: 10.1371/journal.pone.0243367
【科学研究費補助金 基盤研究(C)乳幼児期に おける低線量汚染地域での生活が子どもの社 会的情動性の発達に及ぼす影響(研究代表者:
筒井雄二)(課題番号:20K03358)】
本研究は2020年度に科研費基盤研究(C)とし て新規に採択された研究課題であり,福島原発 事故直後に福島で乳幼児期を過ごした子ども に,心の発達の問題や多動性障害の問題が増え ている可能性について科学的調査により明ら かにすることを目的に行う。
2020年度は,原発事故の前後3年以内に生ま れた子ども(現在,6歳から12歳)を対象とし,
社会情動性の発達の問題について調査するた めの研究を準備した。具体的には,子どものス トレスや,母親の放射線不安,母親のストレス,
子どものエフォートフルコントロール,多動や 問題行動について母親に質問紙を配布して調 べる。
当該研究は質問紙を準備した上で,学内の研 究倫理審査委員会により調査の許可を得ると ころまで進めているが,COVID-19 による感染 症の拡大が続いている状況下で,原子力災害に 関する心の問題についての調査を行うことは,
調査を実施するタイミングとしてはいくつか の点で適当ではないと判断し,調査の実施を見 合わせている。その一つは調査協力者の負担で
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とCOVID-19に関連した心理的影響を区別する
ことが難しくなる可能性である。今後,ワクチ ン接種が始まり,国内における感染症に対する 不安が軽減した段階で調査を実施することが,
現状では次善の策であると考える。
【福島の母たち・若者たちの心からの声を発信 するプロジェクト:第2期 原発事故からの 10 年と未来の 10 年を語ろう】
当該プロジェクトは2019年度,Yahoo! Japan
「Search for 3.11 検索は応援になる」の寄附を 利用した研究としてスタートし,今年度は第 2 期として,「原発事故からの 10 年と未来の 10 年を語ろう」と題して実施した。
今回は福島大学プロジェクト研究費を利用 し,災害心理研究所のホームページ上でプロジ ェクトへの協力を呼び掛けたところ,福島大学 の学生を中心に,47件の応募があった。現在,
災害心理研究所のホームページで若者たちの 声は公開されている。