日本農芸化学会関西支部会 第 487 回 講演会
講演要旨集
日時:平成 26 年 12 月 6 日(土)
会場:神戸大学大学院農学研究科
支部賛助企業 (50 音順)
関西支部の活動は下記の支部賛助企業様からのご支援により支えられています。
アース製薬(株) 植田製油(株)
(株)ウォーターエージェンシー 江崎グリコ(株)
(株)カネカ
菊正宗酒造(株) 黄桜(株)
月桂冠(株)
三栄源エフ・エフ・アイ(株)
サントリーホールディングス(株) 住友化学(株)
(株)第一化成 大日本除虫菊(株)
東洋紡(株)
ナカライテスク(株)
(株)日本医化器械製作所 日本新薬(株)
ヒガシマル醤油(株) 不二製油(株)
松谷化学工業(株) 三井化学アグロ(株) 安井器械(株)
理研化学工業(株) 和研薬(株)
和光純薬工業(株)
プ ロ グ ラ ム
● 開 会 の 辞(13: 00−13: 05) 水 野 雅 史( 神 戸 大 院・農 、幹 事 校 代 表 )
● 一 般 講 演 (13: 05 〜 15: 35) [講 演 9 分 、 質 疑 応 答 3 分]
(* 印 は 若 手 優 秀 発 表 賞 お よ び 支 部 賛 助 企 業 特 別 賞 対 象 講 演 )
1. (13: 05 〜 13: 17)
6-メ チ ル ス ル フ ィ ニ ル ヘ キ シ ル イ ソ チ オ シ ア ネ ー ト の 細 胞 周 期 開 始 抑 制 機 序 に 関 す る 研 究
○ 小 寺 裕 貴 1、 橋 本 堂 史 1、 石 村 麻 耶 1、 藍 原 祥 子 1、 金 沢 和 樹 1、 三 宅 秀 芳 1、 吉 田 優 2、 水 野 雅 史 1 (1神 戸 大 院 ・ 農 、2神 戸 大 院 ・ 医) *2. (13: 17 〜 13: 29)
チ ョ ウ 目 昆 虫 幼 虫 の 農 薬 感 受 性 リ ズ ム 制 御 機 構 の 解 明
○ 江 木 雄 一 、 坂 本 克 彦
( 神 戸 大 院 ・ 農 ) *3. (13: 29 〜 13: 41)
抗 マ イ コ バ ク テ リ ア 活 性 を 示 す Ramariolide A の 化 学 合 成
○ 八 田 雅 士 、 久 世 雅 樹 、 滝 川 浩 郷
( 神 戸 大 院 ・ 農 ) *4. (13: 41 〜 13: 53)
ヒ ト の ミ ト コ ン ド リ ア NAD キ ナ ー ゼ の リ ン 酸 化 修 飾 に よ る 活 性 制 御
○ 川 畑 豊 1、 阪 井 裕 貴 1、 村 田 幸 作 2、 河 井 重 幸 1
(1京 都 大 院 ・ 農 、2摂 南 大 ・ 理 工 ) *5. (13: 53 〜 14: 05)
Lactobacillus delbrueckii が 産 生 す る 菌 体 外 多 糖 類 の 免 疫 賦 活 性 に 関 す る 研 究
○ 岸 本 真 奈 1、 野 本 竜 平 2、 水 野 雅 史 1、 大 澤 朗 1 (1神 戸 大 院 ・ 農 、2神 戸 大 学 自 然 科 学 系) *6. (14: 05 〜 14: 17)
LysM ド メ イ ン の 構 造 と 機 能 :Receptor 型 LysM と Carbohydrate-Binding Module 型 LysM と の 比 較
○ 北 奥 喜 仁 1、 平 東 紀 2、 沼 田 倫 征 3、 深 溝 慶 1、 大 沼 貴 之 1
(1近 畿 大 院 ・ 農 、2琉 大 農 ・ 亜 熱 生 資 、3産 総 研 ・ バ イ オ メ デ ィ カ ル )
休 憩 18 分 (14: 17 〜 14: 35)
*7. (14: 35 〜 14: 47)
大 腸 菌 に お け る 新 規 チ オ 硫 酸 イ オ ン 輸 送 体 YeeED の 機 能 解 析 と シ ス テ イ ン 発 酵 生 産 へ の 応 用
○ 城 山 真 恵 加 、 河 野 祐 介 、 大 津 厳 生 、 高 木 博 史
( 奈 良 先 端 大 ・ バ イ オ ) *8. (14: 47 〜 14: 59)
*9. (14: 59 〜 15: 11)
脂 質 結 合 ド メ イ ン を 用 い た 新 規 ホ ス フ ァ チ ジ ン 酸 可 視 化 プ ロ ー ブ の 開 発
○ 沖 本 航 、 中 井 寛 子 、 上 田 修 司 、 山 之 上 稔 、 白 井 康 仁
( 神 戸 大 院 ・ 農 )
*10. (15: 11 〜 15: 23)
傷 害 に よ っ て 誘 導 さ れ る(3Z):(2E)-ヘ キ セ ナ ー ル イ ソ メ ラ ー ゼ の 同 定 と 酵 素 学 的 性 質 の 解 明
○ 國 嶋 幹 子 、 山 内 靖 雄 、 水 谷 正 治 、 杉 本 幸 裕
( 神 戸 大 院 ・ 農 )
*11. (15: 23 〜 15: 35)
ア ル フ ァ ル フ ァ 根 粒 菌 に 見 出 さ れ た イ ノ シ ト ー ル 合 成 系 に 関 す る 研 究
○ 本 窪 田 章 博 1、 田 中 耕 生 2、 竹 中 慎 治 1、Laurent Sauviac3、 Claude Bruand3、 吉 田 健 一 1
(1神 戸 大 院 ・ 農 、2神 戸 大 学 自 科 、3LIPM, INRA Toulouse, France)
休 憩 15 分 (15: 35 〜 15: 50)
● 2014 年 度 日 本 農 芸 化 学 会 功 績 賞 受 賞 講 演 (15: 50 〜 16: 35)
食 品 製 造 に お け る 速 度 過 程 が 関 与 す る 現 象 の 工 学 的 解 析
○ 安 達 修 二 ( 京 都 大 院 ・ 農 )
● 特 別 講 演 (16: 35 〜 17: 20)
ヘ リ コ バ ク タ ー ピ ロ リ 感 染 と 胃 が ん
○ 東 健 ( 神 戸 大 院 ・ 医 )
● 若 手 優 秀 発 表 賞 お よ び 支 部 賛 助 企 業 特 別 賞 表 彰 ・ 閉 会 の 辞
(17:20 〜 17:30)
内 海 龍 太 郎 ( 近 畿 大 院 ・ 農 、 日 本 農 芸 化 学 会 関 西 支 部 長 )
● 懇 親 会 (17:50 〜 20:00、 神 戸 大 学 ア カ デ ミ ア 館 3 階 「 さ く ら 」)
神 戸 の 夜 景 を 眺 め な が ら 、 学 生 、 教 員 、 研 究 者 、 産 業 人 を 交 え て 熱 い 忘 年 会 を !
参 加 費 : 一 般 3,000 円 / 学 生 無 料
01. 6-メチルスルフィニルヘキシルイソチオシアネートの
細 胞 周 期 開 始 抑 制 機 序 に関 する研 究
○ 小 寺 裕 貴 1、橋 本 堂 史 1、石 村 麻 耶 1、藍 原 祥 子 1、金 沢 和 樹 1、三 宅 秀 芳 1、 吉 田 優 2、水 野 雅 史 1
(1神 戸 大 院 ・農 、2神 戸 大 院 ・医 )
【 目 的 】 本 わ さ び に 含 ま れ る 6-メ チ ル ス ル フ ィ ニ ル ヘ キ シ ル イ ソ チ オ シ ア ネ ー ト (6-MSITC) は 、 が ん 予 防 効 果 が 報 告 さ れ て い る 。 我 々 は 6-MSITC が 細 胞 周 期 休 止 期 (G0/G1期 ) の マ ウ ス 正 常 表 皮 由 来 JB6 細 胞 に 対 し て S 期 へ の 進 行 に 必 要 な タ ン パ ク 質 の 発 現 を 抑 制 し 、細 胞 周 期 開 始 阻 害 を 引 き 起 こ す こ と を 明 ら か に し て き た 。 本 研 究 で は 、 細 胞 周 期 開 始 阻 害 に 関 わ る 6-MSITC の 標 的 タ ン パ ク 質 の 解 明 を 行 っ た 。
【 方 法 】 G0期 に 細 胞 周 期 を 同 調 さ せ た JB6細 胞 の 細 胞 溶 解 液 を 調 製 し た 。 6-MSITS を 固 定 し た 磁 性 ビ ー ズ を 用 い て 細 胞 溶 解 液 中 の 6-MSITC と 結 合 す る タ ン パ ク 質 を 回 収 し 、nano LC-MS/MS に よ り 解 析 を 行 っ た 。 一 方 、 構 造 が 類 似 し な が ら 阻 害 効 果 を 示 さ な い 6-メ チ ル チ オ ヘ キ シ ル イ ソ チ オ シ ア ネ ー ト(6-MTITC)に つ い て も 同 様 の 解 析 を 行 い 、 こ れ ら の 結 果 を 比 較 す る こ と で 、 細 胞 周 期 開 始 阻 害 に 関 わ る と 考 え ら れ る タ ン パ ク 質 の 候 補 を 選 定 し た 。 ま た 、こ の タ ン パ ク 質 の 分 析 は 、免 疫 沈 降 法 及 び ウ ェ ス タ ン ブ ロ ッ テ ィ ン グ 法 で 行 っ た 。
【 結 果 お よ び 考 察 】 6-MTITC と 比 較 し 、6-MSITC と 強 く 結 合 す る タ ン パ ク 質 と し て グ リ セ ル ア ル デ ヒ ド 3 リ ン 酸 脱 水 素 酵 素(GAPDH)を 同 定 し た 。一 般 に S 期 進 行 に 必 要 な タ ン パ ク 質 の 発 現 は 、Rb タ ン パ ク 質 が 転 写 因 子 E2F か ら 解 離 す る こ と で 誘 導 さ れ る 。 こ の 両 タ ン パ ク 質 に つ い て 測 定 し た 結 果 、 GAPDH は G0/G1期 に お い て Rb お よ び E2F と 複 合 体 を 形 成 し て い た 。 上 皮 細 胞 増 殖 因 子 を 添 加 す る と 、GAPDH は Rb か ら 解 離 し た が 、E2F と は 複 合 体 を 形 成 し た ま ま で あ っ た 。こ の こ と か ら GAPDH は E2F の 転 写 活 性 を 促 進 さ せ る が 、6-MSITC は こ の 促 進 作 用 を 阻 害 す る の で は な い か と 考 え た 。最 後 に GAPDH の 酵 素 活 性 に お よ ぼ す 6-MSITC の 影 響 を in vitro に て 調 べ た が 、 6-MSITCは GAPDH活 性 に 影 響 を お よ ぼ す こ と は な か っ た 。以 上 の こ と か ら 、 6-MSITC は 、GAPDH に 結 合 す る こ と で E2F の 転 写 活 性 を 阻 害 し て い る と 考 え ら れ る が 、こ れ は GAPDH の 酵 素 活 性 を 阻 害 す る こ と に よ る も の で は な い と 考 え た 。
*02.
チョウ目 昆 虫 幼 虫 の農 薬 感 受 性 リズム制 御 機 構 の解 明
○江 木 雄 一 、坂 本 克 彦 (神 戸 大 院 ・農 )
【 目 的 】
い く つ か の 昆 虫 に お い て 、農 薬 感 受 性 に 日 周 性 の リ ズ ム が あ る こ と が 知 ら れ て い る 。農 薬 の 効 率 的 な 使 用 の た め に は 、害 虫 の 農 薬 感 受 性 リ ズ ム を 考 慮 す る こ と は 重 要 で あ る 。チ ョ ウ 目 昆 虫 の 幼 虫 は 主 要 な 農 業 害 虫 で あ る が 、そ の 農 薬 感 受 性 リ ズ ム に 関 す る 報 告 は こ れ ま で な い 。そ こ で 本 研 究 で は 、チ ョ ウ 目 昆 虫 の モ デ ル 動 物 で あ る カ イ コ (Bombyx mori) を 実 験 対 象 と し て 農 薬 感 受 性 リ ズ ム の 解 析 を 行 い 、そ の 制 御 機 構 を 調 べ る こ と を 目 的 と し た 。将 来 的 な チ ョ ウ 目 農 業 害 虫 防 除 へ の 応 用 を 目 指 し て い る 。
【 方 法 】
1 . 農 薬 感 受 性 リ ズ ム の 観 察
雌 雄 鑑 別 が 容 易 な 限 性 品 種 p63 の オ ス 幼 虫 を 実 験 に 用 い た 。5 齢 期 2 日 目 と 3 日 目 に お い て 農 薬 感 受 性 リ ズ ム を 観 察 し た 。ま ず 、明 暗 サ イ ク ル 下 に お い て 、 明 期 の 中 央 時 刻 で 薬 剤 の LD50( 半 数 致 死 量 ) を 決 定 し た 。 そ し て 、 こ の LD50 に 対 す る 生 存 率 を 、1 日 の 4 つ の 異 な る 時 刻 で 測 定 し た 。 ま た 、 作 用 機 序 の 異 な る 薬 剤 間 で 、 感 受 性 リ ズ ム の パ タ ー ン を 比 較 し た 。
2 . 農 薬 代 謝 酵 素 P450 の 遺 伝 子 発 現 パ タ ー ン の 解 析
ピ レ ス ロ イ ド 系 殺 虫 剤 の ペ ル メ ト リ ン の 代 謝 に 関 与 す る と 考 え ら れ て い る P450 遺 伝 子 群 の 発 現 パ タ ー ン を 調 べ た 。5 齢 期 2 日 目 に 、1 日 の 4 つ の 異 な る 時 刻 で の 脂 肪 体 と 中 腸 に お け る mRNA 発 現 量 を リ ア ル タ イ ム PCR で 測 定 し た 。
【 結 果 】
カ イ コ 幼 虫 で は 、農 薬 に 対 す る 感 受 性 リ ズ ム が あ っ た 。ま た 、農 薬 の 作 用 機 序 の 違 い に よ っ て 、 感 受 性 リ ズ ム の パ タ ー ン が 異 な る こ と が 分 か っ た 。 脂 肪 体 と 中 腸 に お い て 、 ペ ル メ ト リ ン を 代 謝 す る と 考 え ら れ る P450 遺 伝 子 の 発 現 に 日 周 性 リ ズ ム が あ っ た 。
*03.
抗 マイコバクテリア活 性 を示 す
Ramariolide Aの化 学 合 成
○八 田 雅 士 、久 世 雅 樹 、滝 川 浩 郷
(神 戸 大 院 ・農 )
【 目 的 】 Ramariolide A は ホ ウ キ タ ケ 属 き の こ (Ramaria cystidiophora) か ら 単 離 さ れ た 天 然 物 で あ り 、結 核 菌 な ど の マ イ コ バ ク テ リ ア に 対 す る 抗 菌 活 性 を 示 す 。1ま た 、天 然 物 と し て は 珍 し い spirooxyrane butenolide 骨 格 を 特 徴 と し て お り 、新 規 抗 マ イ コ バ ク テ リ ア 薬 の リ ー ド 化 合 物 と し て 期 待 さ れ て い る 。 本 研 究 で は ramariolide A の 化 学 合 成 を 目 的 と し た 。
Ramariolide A Spirooxyrane butenolide 骨 格
【 方 法 】 Ramariolide A の spirooxyrane butenolide骨 格 は 、 最 終 段 階 に お け る エ ポ キ シ 化 反 応 に よ っ て 構 築 す る こ と に し た 。 こ の 前 駆 体 と な る butenolide 化 合 物 は 実 際 に 天 然 か ら 単 離 さ れ て お り 、 こ の butenolide 化 合 物 を 当 面 の 合 成 目 標 と し て 設 定 す る こ と に し た 。
butenolide 化 合 物
【 結 果 】 市 販 の 1,2-ド デ カ ン ジ オ ー ル を 出 発 原 料 と し 、3 段 階 で α-ヒ ド ロ キ シ ド デ カ ナ ー ル を 得 た 。向 山 ア ル ド ー ル 反 応 に よ っ て フ ラ ン 環 を 導 入 し た 後 、 脱 水 反 応 お よ び ヒ ド ロ キ シ 基 の 脱 保 護 に よ り butenolide 化 合 物 を 得 た 。 こ の butenolide 化 合 物 に は 幾 何 異 性 体 が 含 ま れ て い た が 、天 然 型 の 幾 何 異 性 体 は 分 離 精 製 が 可 能 で あ り 、 そ の ス ペ ク ト ル デ ー タ は 報 告 値 と 一 致 し た 。
文 献 1 :Centko R, et al., J. Nat. Prod., 75, 2178-2182, (2012).
*04.
ヒトのミトコンドリア
NADキナーゼのリン酸 化 修 飾 による活 性 制 御
○川 畑 豊 1、阪 井 裕 貴 1、村 田 幸 作 2、河 井 重 幸 1
(1京 大 院 ・農 、2摂 南 大 ・理 工 )
【 背 景 】 NAD キ ナ ー ゼ (NADK) は 、NAD+の リ ン 酸 化 に よ る NADP+の 合 成 反 応 を 触 媒 す る 唯 一 の 酵 素 で あ る 。ヒ ト に は 細 胞 質 局 在 性 NADK (cytNADK) と ミ ト コ ン ド リ ア 局 在 性 NADK (mitNADK) が 存 在 す る 。 ミ ト コ ン ド リ ア に お け る NADP(H)の 重 要 性 に も 拘 わ ら ず 、組 換 え 精 製 mitNADK の 比 活 性 は 組 換 え 精 製 cytNADK の 比 活 性 の 約 1/200 と 非 常 に 弱 い 1 )。 近 年 、 ヒ ト 、 マ ウ ス 、 お よ び ラ ッ ト の cytNADK と mitNADK の Ser、Thr、Tyr 各 残 基 の リ ン 酸 化 が フ ォ ス フ ォ プ ロ テ オ ミ ク ス 解 析 に よ り 明 ら か に さ れ て い る 。 し か し 、 こ れ ら の 部 位 の リ ン 酸 化 修 飾 の 生 理 的 な 役 割 、 す な わ ち リ ン 酸 化 修 飾 が 各 NADK の 活 性 や 安 定 性 に 及 ぼ す 影 響 な ど の 詳 細 は 不 明 で あ る 。
【 方 法 】 ヒ ト cytNADK の リ ン 酸 化 部 位 [Ser-381、Thr-127 (Ser-381 の リ ン 酸 化 が フ ォ ス フ ォ プ ロ テ オ ミ ク ス 解 析 に よ り ヒ ト cytNADKで 検 出)] と ヒ ト mitNADK の リ ン 酸 化 部 位 [7 箇 所 の Ser 残 基 、2 箇 所 の Thr 残 基 (Ser-188、
Ser-345、Ser-367、Thr-183 の リ ン 酸 化 が 同 様 に ヒ ト mitNADK で 検 出)] を Asp 残 基 に 置 換 し た 組 換 え 模 倣 リ ン 酸 化 NADK を 作 製 な ら び に 精 製 し 、 各 模 倣 リ ン 酸 化 修 飾 の NADK 活 性 へ の 影 響 を in vitro で 調 べ た 。ま た 、抗 リ ン 酸 化 Ser 抗 体 や 抗 リ ン 酸 化 Thr 抗 体 を 用 い た 、 ヒ ト HEK293A 細 胞 (in vivo) に お け る 各 NADK の リ ン 酸 化 の 検 出 も 試 み た 。
【 結 果 】 模 倣 リ ン 酸 化 cytNADK で は NADK 活 性 に 大 き な 変 化 は 見 ら れ な か っ た 。一 方 、cytNADK と 比 較 し て 活 性 が 非 常 に 弱 い mitNADK で は リ ン 酸 化 に よ る NADK 活 性 の 上 昇 が 期 待 さ れ た が 、 各 模 倣 リ ン 酸 化 mitNADK (mitNADK T183D、S188D、S289D、S289E、S294D、T357D、お よ び S376D) の 活 性 は 低 下 し た (同 S345D、S363D、お よ び S367Dの 活 性 は 変 動 し な か っ た)。
特 に 、mitNADK S188D の 活 性 は 完 全 に 消 失 し た 。 さ ら に 、in vivo に お け る mitNADK の Ser 残 基 の リ ン 酸 化 も 検 出 さ れ た 。 ヒ ト mitNADK Ser-188 の リ ン 酸 化 は 、複 数 の フ ォ ス フ ォ プ ロ テ オ ミ ク ス 解 析 で 検 出 さ れ て い る 。さ ら に Ser-188 は mitNADK の ホ モ ロ グ 間 に 高 度 に 保 存 さ れ て お り 、か つ 同 ホ モ ロ グ に 特 有 な Motif 2 に 存 在 す る た め 、Ser-188の リ ン 酸 化 は 重 要 な 役 割 を 有 す る 可 能 性 が あ る と 推 察 さ れ た 。現 在 、酸 化 ス ト レ ス の 有 無 な ど 様 々 な 培 養 条 件 が Ser-188 や 他 の 残 基 の リ ン 酸 化 修 飾 に 及 ぼ す 影 響 、な ら び に 各 NADK の 安
*05. Lactobacillus delbrueckii
が産 生 する菌 体 外 多 糖 類 の免 疫 賦 活 性
○岸 本 真 奈 1、野 本 竜 平 2、水 野 雅 史 1、大 澤 朗 1 (1神 戸 大 院 農 、2神 戸 大 学 自 然 科 学 系 )
[目 的] 細 菌 が 産 生 す る 菌 体 外 多 糖(Exopolysaccharides: EPS)は 種 属 間 の み な ら ず 株 間 に お い て も 構 造・機 能 な ど が 多 様 で あ る こ と が 知 ら れ て い る 。そ の う ち あ る 種 の 乳 酸 菌 が 産 生 す るEPSはin vitro 実 験 に お け る マ ク ロ フ ァ ー ジ 活 性 化 作 用 や in vivo 実 験 に お け る NK 細 胞 活 性 化 と い っ た 免 疫 賦 活 作 用 に 加 え 、 炎 症 状 態 の 細 胞 に 対 し て の 抗 炎 症 作 用 も 報 告 さ れ て い る 。 し か し 、 一 般 的 に EPS は 高 分 子 体 で あ り 、 胃 腸 粘 膜 を 通 過 し て 生 体 内 で マ ク ロ フ ァ ー ジ や NK 細 胞 に 直 接 作 用 す る か ど う か は 疑 問 で あ り 、そ の 作 用 機 序 は 不 明 な 点 が 多 く 、 腸 管 細 胞 を 介 し た EPS の 応 答 性 に 関 す る 報 告 は 少 な い 。 そ こ で 本 研 究 で は 、 腸 管 共 培 養 モ デ ル を 用 い て 、Lactobacillus delbrueckii の 各 株 が 産 生 す る EPS の 腸 管 細 胞 を 介 し た 間 接 的 な 宿 主 の 免 疫 シ ス テ ム へ の 影 響 を 検 証 し 、 そ の 作 用 機 序 に つ い て 新 た な 知 見 を 得 る こ と を 目 的 と し た 。
[方 法 ・ 結 果 ・ 考 察] 乳 酸 菌 を 使 用 し た 食 品 検 体 か ら 、 粘 性 の あ る コ ロ ニ
ー を 単 離 し 、L. delbrueckii と 同 定 後 10株 を EPS 産 生 株 と し て 供 試 し た 。上 層 に 小 腸 上 皮 様 Caco-2 細 胞 、 下 層 に マ ク ロ フ ァ ー ジ 様 RAW264.7 細 胞 を 配 し た 腸 管 共 培 養 モ デ ル を 用 い た EPS の 免 疫 賦 活 性 試 験 に お い て 、 異 な る 菌 株 由 来 の EPS に よ る 刺 激 で 応 答 す る サ イ ト カ イ ン の 発 現 は 多 様 で あ っ た 。 あ る 一 株 の EPS 処 理 区 で は RAW264.7 細 胞 が 活 性 化 し 、Th1 型 の サ イ ト カ イ ン の 産 生 が 確 認 さ れ EPS の 免 疫 賦 活 性 が 示 さ れ た 。 こ の 実 験 に よ り 、 高 分 子 体 で あ る EPS は Caco-2 細 胞 を 介 し た シ グ ナ ル 伝 達 経 路 に よ り RAW264.7 細 胞 を 活 性 化 さ せ る 事 が 示 唆 さ れ た 。 次 に 、in vitro 腸 管 炎 症 モ デ ル を 用 い 腸 管 炎 症 状 態 に お け る EPS の 抗 炎 症 作 用 を 検 証 し た 。 そ の 結 果 、 い ず れ の EPS も 炎 症 状 態 に お い て は 各 サ イ ト カ イ ン の 発 現 量 に 影 響 を 与 え な か っ た 。 各 EPS の 糖 の 構 成 比 を HPLC に よ り 調 査 し た 結 果 、 免 疫 学 的 応 答 の 傾 向 と の 相 関 性 は 見 ら れ な か っ た こ と か ら 、EPS の 立 体 構 造 や 修 飾 等 が 免 疫 刺 激 に 関 連 す る 可 能 性 が 考 え ら れ た 。
*06. LysM
ドメインの構 造 と機 能
:Receptor
型
LysMと
Carbohydrate-Binding Module型
LysMとの比 較
○北 奥 喜 仁 1、平 良 東 紀 2、沼 田 倫 征 3、深 溝 慶 1、大 沼 貴 之 1
(1近 畿 大 院 ・農 、2琉 大 農 ・亜 熱 生 資 、3産 総 研 ・バイオメディカル)
【 目 的 】Lysin-Motif (LysM)は 多 く の 植 物 に お い て 、 キ チ ン お よ び そ の 関 連 糖 質 を 介 し た 植 物-微 生 物 間 相 互 作 用 に 関 わ る 膜 タ ン パ ク 質 の 細 胞 外 レ セ プ タ ー ド メ イ ン と し て 存 在 す る こ と が 知 ら れ て い る(Receptor型 LysM)。一 方 、 Taira ら は 植 物 キ チ ナ ー ゼ に お い て 、 そ の 触 媒 反 応 を 補 助 す る 糖 質 結 合 モ ジ ュ ー ル(Carbohydrate-Binding Module)と し て 機 能 す る LysM (CBM 型 LysM) を 見 出 し た(Glycobiology, 2008, 18, 414-423)。 本 研 究 で は 、 シ ダ や ス ギ ナ に 見 出 さ れ る CBM 型 LysM の 結 晶 構 造 と キ チ ン 結 合 特 性 を 調 べ 、 異 な る 役 割 を 担 う Receptor型 LysMと の 共 通 性 お よ び 相 違 点 を 明 ら か に す る こ と を 目 的 と し た 。
【 方 法 】 シ ダ (Pteris ryukyuensis) お よ び ス ギ ナ (Equisetum arvense) 由 来 キ チ ナ ー ゼ(PrChiA お よ び EaChiA)に 含 ま れ る CBM 型 LysM(PrChiA-LysM お よ び EaChiA- LysM) を 精 製 し 、 結 晶 化 後 、 分 子 置 換 法 に よ っ て 立 体 構 造 を 決 定 し た 。ま た 、キ チ ン オ リ ゴ 糖 と の 結 合 様 式 を 明 ら か に す る た め に 安 定 同 位 体 で ラ ベ ル さ れ た LysM を 調 製 し 、NMR を 用 い た キ チ ン オ リ ゴ 糖 滴 定 実 験 を 行 っ た 。 オ リ ゴ 糖 滴 定 に 伴 う NMR シ グ ナ ル の 変 化 に 基 づ い て 、 結 合 部 位 を 推 定 し た 。オ リ ゴ 糖 結 合 に 関 わ る ア ミ ノ 酸 残 基 と し て PrChiA-LysM の Tyr 残 基 に 注 目 し 、こ の 部 位 に 変 異 を 導 入 し た 後 、結 合 力 へ の 影 響 を 調 べ た 。
【 結 果 】X 線 結 晶 構 造 解 析 の 結 果 、PrChiA と EaChiA の LysMの 立 体 構 造 を 、 そ れ ぞ れ 1.8 Åと 2.5 Åの 分 解 能 で 決 定 し た 。両 CBM型 LysMの 立 体 構 造 は 、 す で に 決 定 さ れ て い る Receptor型 LysMド メ イ ン の も の と よ く 類 似 し て い た が 、CBM 型 LysM だ け に み ら れ る 特 徴 的 な 構 造 と し て 、 二 つ の ジ ス ル フ ィ ド 結 合 を 見 出 し た 。 得 ら れ た CBM 型 LysM の 立 体 構 造 の 分 子 表 面 に 、NMR 滴 定 実 験 よ り 推 定 さ れ た 結 合 に 関 わ る と 思 わ れ る ア ミ ノ 酸 残 基 を マ ッ ピ ン グ し た と こ ろ 、CBM 型 LysM 分 子 表 面 の ク レ フ ト 末 端 に 存 在 す る Tyr 残 基 の 重 要 性 が 示 唆 さ れ た 。 そ こ で 、PrChiA が も つ こ の Tyr 残 基 に 変 異 を 導 入 し 、キ チ ン オ リ ゴ 糖 と の 結 合 性 を 等 温 滴 定 型 熱 量 計 に よ っ て 調 べ た 。そ の 結 果 、 こ の 変 異 に よ っ て キ チ ン オ リ ゴ 糖 に 対 す る 親 和 性 は 有 意 に 減 少 し 、Tyr
*07.
大 腸 菌 における新 規 チオ硫 酸 イオン輸 送 体
YeeEDの機 能 解 析 と システイン発 酵 生 産 への応 用
○ 城 山 真 恵 加 、河 野 祐 介 、大 津 厳 生 、高 木 博 史
(奈 良 先 端 大 ・バイオ)
【 目 的 】大 腸 菌 は 無 機 性 の 硫 黄 化 合 物 で あ る 硫 酸 塩 や チ オ 硫 酸 塩 を 同 化 す る 2 つ の 経 路 を 有 し 、生 育 に 必 須 な 有 機 性 の 硫 黄 化 合 物 で あ る シ ス テ イ ン(Cys)
を 合 成 す る 。 チ オ 硫 酸 経 路 で は 、 細 胞 内 に 取 り 込 ま れ た チ オ 硫 酸 イ オ ン と O-ア セ チ ル セ リ ン か ら O-ア セ チ ル セ リ ン ス ル ヒ ド ラ ー ゼ B(CysM) に よ り ス ル ホ シ ス テ イ ン を 合 成 し 、チ オ レ ド キ シ ン な ど の 還 元 反 応 に よ り Cys が 生 成 す る 。cysM 破 壊(ΔcysM)株 は チ オ 硫 酸 塩 を 単 一 硫 黄 源 と し て 生 育 で き な い は ず で あ る が 、 実 際 に は 僅 か に 生 育 が 観 察 さ れ る 。 こ の こ と か ら 、CysM 非 依 存 的 な チ オ 硫 酸 イ オ ン 同 化 経 路 の 存 在 が 示 唆 さ れ た 。本 研 究 で は 、そ の 機 能 を 担 う 因 子 の 同 定 と 代 謝 経 路 の 解 析 を 行 っ た 。
【 方 法・結 果 】ゲ ノ ム デ ー タ ベ ー ス を 用 い てチ オ 硫 酸 硫 黄 転 移 酵 素 を 探 索 し 、 10 個 の 候 補 遺 伝 子 を 同 定 し た 。 こ れ ら 候 補 遺 伝 子 をΔcysM 株 に 導 入 し 、 チ オ 硫 酸 塩 を 単 一 硫 黄 源 と し た 最 少 培 地 で 生 育 を 野 生 株 並 み に 回 復 さ せ る 遺 伝 子(glpE, pspE, yeeD, sseA, yceA)を 見 出 し た 。中 で も 機 能 未 知 で あ る yeeD は 9 回 膜 貫 通 型 の 推 定 ト ラ ン ス ポ ー タ ー を コ ー ド す る yeeE と オ ペ ロ ン を 形 成 し て い る こ と が 判 明 し た 。そ こ で 、ΔcysA 株( チ オ 硫 酸 イ オ ン と 硫 酸 イ オ ン の 取 込 み 能 を 欠 く )、ΔyeeE株 、ΔyeeD 株 、ΔcysAΔyeeE 株 、ΔcysAΔyeeD 株 を チ オ 硫 酸 塩 が 単 一 硫 黄 源 の 培 地 で 培 養 し た と こ ろ 、ΔcysA 株 は 良 好 に 生 育 す る も の の 、 二 重 欠 損 株 は い ず れ も 生 育 し な か っ た 。 以 上 の 結 果 か ら 、 YeeE は 新 規 な チ オ 硫 酸 イ オ ン 輸 送 体 で あ る と 示 唆 さ れ 、 大 腸 菌 に お け る チ オ 硫 酸 イ オ ン の 取 込 み 系 は 、CysPTWA と YeeE の 2 つ の み で あ る こ と が 判 明 し た 。 さ ら に 、yeeD、yeeE の ど ち ら か 一 方 が 欠 損 す る と 生 育 で き な い こ と か ら 、YeeE の 機 能 に は チ オ 硫 酸 硫 黄 転 移 酵 素 YeeD が 必 須 で あ る と 考 え ら れ た 。 最 後 に 、YeeD を 介 し た 新 し い 硫 黄 同 化 経 路 が 大 腸 菌 の Cys 生 産 性 に 及 ぼ す 効 果 を 評 価 し た 。そ の 結 果 、従 来 の Cys 生 産 株 は チ オ 硫 酸 を 含 む 培 地 で 約 1 g/L の Cys を 生 産 し た が 、YeeD を 過 剰 発 現 さ せ る こ と で Cys 生 産 量 が 2.3 倍 に 増 加 し た 。 こ の こ と か ら 、YeeD の 過 剰 発 現 が Cys 生 産 性 の 向 上 に 有 用 で あ る こ と が 実 証 で き た( 本 研 究 は 、農 林 水 産 業・ 食 品 産 業 科 学 技 術 研 究 推 進 事 業 の 支 援 を 受 け て 実 施 し た )。
*08.
酵 母 に見 出 したフラボタンパク質
Tah18依 存 的 な
NO合 成 とその制 御 機 構
○吉 川 雄 樹 、那 須 野 亮 、渡 辺 大 輔 、高 木 博 史
(奈 良 先 端 大 ・バイオ)
【 目 的 】
当 研 究 室 で は 、 酵 母 Saccharomyces cerevisiae に お い て 、 高 温 ス ト レ ス に 応 答 し て ア ル ギ ニ ン 依 存 的 に 一 酸 化 窒 素 (NO) が 合 成 さ れ 、 細 胞 の ス ト レ ス 耐 性 に 寄 与 す る こ と 、こ の NO 合 成 酵 素(NOS)活 性 に フ ラ ボ タ ン パ ク 質 の Tah18 が 関 与 す る こ と を 明 ら か に し た 。 し か し 、Tah18 に は NOS 活 性 に 必 須 の オ キ シ ゲ ナ ー ゼ ド メ イ ン が 欠 落 し て お り 、NO 合 成 の 詳 細 な 機 構 は 不 明 で あ る 。 最 近 、Tah18 と の 相 互 作 用 が 知 ら れ て い る Dre2 タ ン パ ク 質 が 酵 母 の NOS 活 性 を 阻 害 す る 可 能 性 を 見 出 し た 。
本 研 究 で は 、 こ れ ま で の 知 見 か ら 「 非 ス ト レ ス 下 で は Dre2 は Tah18 と 相 互 作 用 す る こ と で Tah18 依 存 的 な NOS 活 性 を 抑 制 し て い る が 、 ス ト レ ス に 応 答 し た Tah18-Dre2複 合 体 の 解 離 に よ っ て 遊 離 し た Tah18 が NOS 活 性 に 寄 与 す る 」と い う 仮 説 を 立 て 、酵 母 の 新 規 ス ト レ ス 応 答 的 な NO 合 成 と そ の 制 御 機 構 の 解 析 を 行 っ た 。
【 方 法 ・ 結 果 】
上 記 モ デ ル の 検 証 の た め 、Tah18 と Dre2 そ れ ぞ れ に タ グ を 融 合 し た 共 過 剰 発 現 株 を 作 製 し 、プ ル ダ ウ ン 後 の ウ ェ ス タ ン 解 析 に よ り 、高 温 や 過 酸 化 水 素 処 理 後 の Tah18-Dre2 複 合 体 の 割 合 を 非 ス ト レ ス 下 の も の と 比 較 し た 。 興 味 深 い こ と に 、 高 温 や 過 酸 化 水 素 処 理 後 5 分 で Tah18-Dre2 複 合 体 の 割 合 が 低 下 し た 。ま た 、過 酸 化 水 素 処 理 1 時 間 で そ の 割 合 は さ ら に 減 少 し 、上 記 モ デ ル を 支 持 す る 結 果 と な っ た 。
次 に 、TAH18 と DRE2 各 遺 伝 子 の ノ ッ ク ダ ウ ン (KD) 株 を 作 製 し 、 表 現 型 を 解 析 し た 。そ の 結 果 、両 KD 株 は 野 生 型 株 に 比 べ 、顕 著 な 生 育 遅 延 を 示 し た が 、DRE2 の KD 株 に お い て の み NOS 阻 害 剤 (NAME) の 添 加 に よ っ て 生 育 速 度 が 回 復 し た 。 現 在 、Tah18-Dre2 複 合 体 の 形 成 ・ 解 離 を 介 し た NOS 活 性 の 制 御 モ デ ル を 提 唱 し て お り 、今 回 の 結 果 か ら 、ス ト レ ス 下 で は 遊 離 し た Tah18 依 存 的 に 細 胞 保 護 に 必 要 な レ ベ ル の NO が 合 成 さ れ る が 、非 ス ト レ ス 下 で は Dre2が Tah18 に 依 存 し た NOS 活 性 を 抑 制 す る こ と で 、NO が 過 剰 に 合 成 さ れ な い よ う 制 御 し て い る と 考 え ら れ る 。
*09.
脂 質 結 合 ドメインを用 いた新 規 ホスファチジン酸 可 視 化 プローブの開 発
○沖 本 航 1、中 井 寛 子 1、伊 藤 俊 樹 2、上 田 修 司 1、山 之 上 稔 1、白 井 康 仁 1
(1神 戸 大 院 ・農 、2神 戸 大 ・バイオ)
【 目 的 】 三 大 栄 養 素 の ひ と つ で あ る 脂 質 は 膜 の 構 成 成 分 で あ る だ け で な く 、 様 々 な 酵 素 を 活 性 化 す る 脂 質 シ グ ナ ル と し て 働 く こ と が 明 ら か に な っ て い る 。こ の 脂 質 シ グ ナ ル は 細 胞 内 の 様 々 な オ ル ガ ネ ラ 膜 で 産 生 さ れ 代 謝 さ れ て い る た め 、 そ の 細 胞 内 動 態 を 可 視 化 す る た め 、 脂 質 結 合 ド メ イ ン を 用 い た 様 々 な プ ロ ー ブ が 近 年 開 発 さ れ て き て い る 。 一 方 、 ホ ス フ ァ チ ジ ン 酸(PA) も mTORや Raf-1 kinaseな ど を 活 性 化 す る 重 要 な 脂 質 シ グ ナ ル と 考 え ら れ る が 、未 だ PA を 簡 便 に 可 視 化 す る プ ロ ー ブ は 存 在 し て い な い 。そ こ で 我 々 は 局 所 的 な PA 産 生 を 可 視 化 す る 新 規 プ ロ ー ブ の 開 発 を 試 み た 。
【 方 法 】 PA 可 視 化 プ ロ ー ブ と し て PA 結 合 ペ プ チ ド で あ る tapas に 着 目 し た 。こ れ を 1 連 あ る い は 3 連 に つ な げ 、N 末 端 側 に 緑 色 蛍 光 タ ン パ ク 質(GFP) を 融 合 さ せ た プ ラ ス ミ ド を 作 製 し た(GFP-tapas, GFP-tapas×3)。次 に 、細 胞 内 で の PA 応 答 性 を 確 認 す る た め 、PA を 産 生 す る 酵 素 で あ る DGKα に 赤 色 蛍 光 タ ン パ ク 質(mCherry)を 融 合 さ せ た プ ラ ス ミ ド と GFP-tapas あ る い は GFP-tapas×3 を DDT1-MF2 細 胞 に 共 発 現 さ せ 、DGKα を 活 性 化 す る ビ タ ミ ン E 刺 激 で の ラ イ ブ イ メ ー ジ ン グ を 行 っ た 。さ ら に 、DGK 阻 害 剤 で あ る R59949 を 処 置 し て 同 様 の 実 験 を 行 っ た 。
【 結 果 】 刺 激 前 に は GFP-tapas×3、mCherry-DGKα と も に 細 胞 質 に 認 め ら れ た が 、DGKα が ビ タ ミ ン E 刺 激 に よ っ て 活 性 化 し 細 胞 質 か ら 細 胞 質 膜 へ と ト ラ ン ス ロ ケ ー シ ョ ン す る の に 伴 い 、GFP-tapas×3 も 細 胞 質 膜 へ ト ラ ン ス ロ ケ ー シ ョ ン し た 。 し か し 、tapas が 1 連 で あ る GFP-tapas は 膜 へ の ト ラ ン ス ロ ケ ー シ ョ ン を 示 さ な か っ た 。DGK 阻 害 剤 を 処 置 す る と GFP-tapas×3 の ト ラ ン ス ロ ケ ー シ ョ ン は 見 ら れ な く な っ た 。こ の こ と か ら 膜 移 行 は DGKα に よ る 細 胞 質 膜 で の PA 産 生 を 反 映 し て お り 、tapas を 3 連 に す る こ と で PA 応 答 性 が 上 が っ た も の と 考 え ら れ た 。 ま た 、GFP-tapas×3 の み を 発 現 さ せ た 細 胞 に お い て も 、ビ タ ミ ン E 刺 激 に よ る 細 胞 質 膜 へ の ト ラ ン ス ロ ケ ー シ ョ ン が 弱 い な が ら 認 め ら れ 、DGK 阻 害 剤 の 処 置 で 阻 害 さ れ た 。
以 上 の こ と か ら 、GFP-tapas×3 は 内 在 性 の PA 産 生 を 検 出 す る 可 視 化 プ ロ ー ブ と し て 有 用 で あ る と 期 待 さ れ る 。
*10.
傷 害 によって誘 導 される(3
Z):(2E)-ヘキセナールイソメラーゼの同 定 と 酵 素 学 的 性 質 の解 明
○國 嶋 幹 子 、山 内 靖 雄 、水 谷 正 治 、杉 本 幸 裕
(神 戸 大 院 ・農 )
【 目 的 】 3-ヘ キ セ ナ ー ル と 2-ヘ キ セ ナ ー ル に 代 表 さ れ る C6 化 合 物 群 は 傷 害 を 受 け た 植 物 に お い て 生 成 量 が 増 加 す る オ キ シ リ ピ ン で あ り 、防 御 応 答 遺 伝 子 の 発 現 を 誘 導 す る こ と が 報 告 さ れ て い る 。3-ヘ キ セ ナ ー ル は 、リ ノ レ ン 酸 か ら 酵 素 的 に 変 換 さ れ る こ と に よ っ て 生 じ る 。一 方 、分 子 内 に α,β-不 飽 和 カ ル ボ ニ ル 基 を 持 つ た め 高 い 反 応 性 を 示 す 2-ヘ キ セ ナ ー ル は 、3-ヘ キ セ ナ ー ル の 異 性 化 に よ っ て 生 合 成 さ れ る と 考 え ら れ て い る が 、そ の 詳 細 は 未 解 明 で あ る 。本 研 究 は 、2-ヘ キ セ ナ ー ル の 生 合 成 に 関 わ る ヘ キ セ ナ ー ル イ ソ メ ラ ー ゼ の 同 定 と そ の 酵 素 学 的 性 質 の 解 明 を 目 的 と し て い る 。
【 方 法 と 結 果 】 さ ま ざ ま な 植 物 の ヘ キ セ ナ ー ル イ ソ メ ラ ー ゼ 活 性 を 調 べ 、 最 も 高 い 活 性 を 示 し た パ プ リ カ 果 実 を 材 料 と し て 選 抜 し た 。パ プ リ カ 果 実 よ り 活 性 を 指 標 に 酵 素 を 精 製 し 、 分 子 量 38 kDa の 単 一 の バ ン ド を 得 た 。 キ ネ テ ィ ク ス 解 析 の 結 果 、3-ヘ キ セ ナ ー ル に 対 す る Km値 は 0.73 mMで あ っ た 。 部 分 ア ミ ノ 酸 配 列 を 得 て 、そ れ に 基 づ い て 酵 素 遺 伝 子 を 同 定 し た 。系 統 樹 を 作 製 し 、相 同 性 を 示 し た 遺 伝 子 に つ い て 組 換 え 酵 素 を 作 製 し 活 性 を 測 定 し た 結 果 、ナ ス 科 の ト マ ト と ジ ャ ガ イ モ 由 来 の 遺 伝 子 も 活 性 を 有 す る 酵 素 を コ ー ド し て い る こ と が 明 ら か と な っ た 。点 変 異 を 導 入 し た 組 換 え 酵 素 を 作 製 し 酵 素 活 性 の 評 価 を 行 っ た 結 果 、54 番 目 の ヒ ス チ ジ ン が 重 要 で あ る こ と が 分 か っ た 。反 応 機 構 の 解 明 の た め に 、重 水 中 で 酵 素 反 応 を 行 い 、得 ら れ た 2-ヘ キ セ ナ ー ル の 1H-NMR を 測 定 し た 結 果 、4 位 に 重 水 素 の 導 入 が 確 認 さ れ た 。こ の こ と か ら 、3-ヘ キ セ ナ ー ル へ の 水 の 付 加 と 脱 離 に よ っ て 、二 重 結 合 が 移 動 し て い る こ と が 考 え ら れ た 。ナ ス 科 の モ デ ル 植 物 で あ る ト マ ト に 対 し て 傷 害 ス ト レ ス を 与 え る こ と で ヘ キ セ ナ ー ル イ ソ メ ラ ー ゼ 遺 伝 子 の 発 現 量 の 増 加 が 認 め ら れ た こ と か ら 、本 酵 素 が 傷 害 ス ト レ ス に 対 す る 防 御 応 答 に 関 与 し て い る こ と が 支 持 さ れ た 。
*11.
アルファルファ根 粒 菌 に見 出 されたイノシトール合 成 系 に関 する研 究
○ 本 窪 田 章 博 1、田 中 耕 生 2、竹 中 慎 治 1、Laurent Sauviac3、Claude Bruand3、 吉 田 健 一 1
(1神 戸 大 院 ・農 、2神 戸 大 自 科 、3LIPM, INRA Toulouse, France)
【 目 的 】 Sinorhizobium meliloti は 、 ア ル フ ァ ル フ ァ に 感 染 し て 窒 素 固 定 を 行 う 根 粒 菌 で あ り 、 植 物-微 生 物 共 生 窒 素 固 定 の モ デ ル 微 生 物 と し て 幅 広 く 研 究 さ れ て い る 。我 々 は S. melilotiの ゲ ノ ム に イ ノ シ ト ー ル-1-リ ン 酸 合 成 酵 素 を コ ー ド す る ino1 遺 伝 子 を 見 出 し 、 ま た 当 該 酵 素 が イ ノ シ ト ー ル モ ノ フ ォ ス フ ァ タ ー ゼ と 共 に イ ノ シ ト ー ル 合 成 系 を 構 成 し 得 る こ と を 明 ら か に し た 。そ し て 、ino1 遺 伝 子 が 塩 ス ト レ ス 下 に お い て 誘 導 さ れ る こ と が 判 明 し た た め 、本 研 究 で は S. meliloti に お け る イ ノ シ ト ー ル 合 成 系 の 生 理 的 意 義 に つ い て 浸 透 圧 ス ト レ ス 耐 性 へ の 関 与 を 検 討 し た 。
【 方 法 】 S. meliloti の 主 要 な 浸 透 圧 調 整 物 質 は trehalose、glycine betaine、
お よ び N-acetylglutaminylglutamine amide で あ る 。 そ こ で 、 そ れ ぞ れ の 合 成 に 関 わ る otsA 遺 伝 子 、betB 遺 伝 子 、ngg 遺 伝 子 と ino1 遺 伝 子 を 組 み 合 わ せ て 破 壊 し た 変 異 株 シ リ ー ズ を 作 製 し 、浸 透 圧 耐 性 を 比 較 検 討 し た 。さ ら に 上 記 の 変 異 株 シ リ ー ズ に イ ノ シ ト ー ル の 分 解 に 関 す る idhA 遺 伝 子 の 破 壊 を 加 え る こ と で 、イ ノ シ ト ー ル が 高 度 に 蓄 積 し 得 る 条 件 を 人 為 的 に 作 り 出 し て 検 討 し た 。ま た 、こ れ ら 一 連 の 変 異 株 に つ い て ア ル フ ァ ル フ ァ へ の 感 染 実 験 を 行 い 、 共 生 窒 素 固 定 に 関 し て ino1 遺 伝 子 が 何 ら か の 機 能 を 果 た す か 否 か 可 能 性 を 調 査 し た 。
【 結 果 】 上 述 の と お り 作 成 し た 変 異 株 シ リ ー ズ に は 浸 透 圧 耐 性 の 低 下 が 観 察 さ れ 、ino1 欠 失 の 影 響 は 他 の 3 つ の 浸 透 圧 調 整 物 質 が 失 わ れ た 時 に 最 も 顕 著 に な っ た 。 ま た 、 イ ノ シ ト ー ル 分 解 に 関 す る idhA 遺 伝 子 の 破 壊 を 加 え る と 、 イ ノ シ ト ー ル 存 在 下 で 浸 透 圧 耐 性 が 向 上 す る 傾 向 が 見 ら れ た 。 従 っ て 、 イ ノ シ ト ー ル 自 体 が 浸 透 圧 調 整 物 質 と し て 機 能 し て い る 可 能 性 と 、こ の た め に イ ノ シ ト ー ル 合 成 系 が 機 能 を 果 た し て い る 可 能 性 が 示 唆 さ れ た 。一 方 驚 い た こ と に 、 他 の 浸 透 圧 調 整 物 質 の 合 成 が 不 全 に な っ た 場 合 に ino1 遺 伝 子 の み が 機 能 す る と 共 生 窒 素 固 定 に 悪 影 響 が 観 察 さ れ た の で 、そ の 詳 細 に つ い て も 検 討 を 加 え て い る 。
2 0 1 4 年 度 日 本 農 芸 化 学 会 功 績 賞 受 賞 講 演
食 品 製 造 に お け る 速 度 過 程 が 関 与 す る 現 象 の 工 学 的 解 析
安 達 修 二 (京 都 大 院 ・農 )
食 品 製 造 に お け る 速 度 過 程 が 関 与 す る 現 象 の 工 学 的 解 析
安 達 修 二
( 京 都 大 院 ・ 農 )
1 .は じ め に 着 目 す る 対 象 に 対 し て 有 効 な 多 く の 手 段 を 用 い て ,そ の 理 解 の 深 化 を 図 る 研 究 手 法 が 多 い 農 芸 化 学 分 野 の 研 究 に あ っ て ,演 者 は 物 質 や 熱 な ど の 移 動 速 度 過 程 に 関 す る 移 動 現 象 論 と 化 学 反 応 の 速 度 過 程 を 定 量 的 に 扱 う 反 応 工 学 の 考 え 方 を ,食 品 製 造 プ ロ セ ス の 効 率 化 や 製 造 過 程 で 起 こ る 現 象 の 解 明 に 適 用 す る 手 法 で ,食 品 を 安 価 で 合 理 的 に 製 造 す る た め の 基 礎 的 な 研 究 を 行 っ て き た .主 な 研 究 課 題 は ,1 )連 続 ク ロ マ ト グ ラ フ 装 置 の 設 計 法 の 確 立 と バ イ オ リ ア ク タ ー と の 融 合 に よ る 効 率 化 ,2 )亜 臨 界 水 の 食 品 加 工 へ の 利 用 に 関 す る 基 礎 的 並 び に 応 用 的 検 討 ,3 )粉 末 化 に よ る 脂 質 の 酸 化 抑 制 機 構 の 解 明 ,4 )パ ス タ の 乾 燥 お よ び 茹 で 過 程 に お け る 水 の 移 動 機 構 の 解 明 , に 大 別 で き る . こ こ で は , 1 ) と 4 ) の 課 題 に つ い て 概 説 す る . 2 .連 続 ク ロ マ ト グ ラ フ 装 置 の 設 計 法 の 確 立 と 効 率 化 2 成 分 を 連 続 的 に 分 離 す る 擬 似 移 動 層 型 連 続 ク ロ マ ト グ ラ フ 分 離 装 置 内 に お け る 溶 質 濃 度 の 分 布 を 推 算 す る 二 つ の モ デ ル( 連 続 移 動 層 モ デ ル と 間 歇 移 動 層 モ デ ル )を 提 案 し た .前 者 の モ デ ル に 基 づ い て ,良 好 な 分 離 が 達 成 で き る よ う に 各 ゾ ー ン の 流 速 の 範 囲 を 合 理 的 に 決 定 す る 方 法 お よ び 各 ゾ ー ン の 小 カ ラ ム の 寸 法 と 本 数 を 決 定 す る 方 法( 装 置 の 設 計 法 )を 確 立 し た .ま た ,擬 似 移 動 層 操 作 を 採 用 す る 高 果 糖 異 性 化 糖 の 製 造 装 置 の 一 部 に 固 定 化 グ ル コ ー ス イ ソ メ ラ ー ゼ 反 応 器 を 組 み 込 む こ と に よ り ,分 離 工 程 で 使 用 す る 溶 離 液 の 量 を 大 幅 に 低 減 し て 溶 質 濃 度 の 低 下 を 抑 え る と と も に ,目 的 成 分 で あ る フ ル ク ト ー ス の 回 収 率 を 高 め て ,濃 縮 工 程 の 負 担 を 軽 減 す る 省 エ ネ ル ギ ー な プ ロ セ ス を 提 案 し た . 3 .パ ス タ 内 に お け る 水 の 移 動 機 構 生 パ ス タ を 短 時 間 に 乾 燥 す る 条 件 の 決 定 や 茹 で パ ス タ の 食 感 の 制 御 に は ,パ ス タ 内 の 水 の 移 動 機 構 を 知 る こ と が 不 可 欠 で あ る .安 価 な デ ジ タ ル カ メ ラ を 用 い て ,パ ス タ 内 の 水 分 分 布 を 精 確 に 求 め る 方 法 を 開 発 し た .茹 で 過 程 に お け る パ ス タ 内 の 水 分 分 布 は ,単 純 な 水 の 拡 散 現 象 と 捉 え る 従 来 の 考 え 方 で は 説 明 で き な い こ と を 示 し ,水 分 分 布 を 合 理 的 に 説 明 す る 水 の 移 動 機 構 を 提 案 し た .
4 .お わ り に 課 題 解 決 型 の 研 究 ス タ イ ル で あ る が ,工 学 的 な 手 法 を 適 用 す る こ と に よ り ,課 題 ご と に ,新 規 な 方 法 の 開 発 や 機 構 の 解 明 に つ な が る 知 見 が 得 ら れ ,さ さ や か な が ら 大 学 に 所 属 す る 研 究 者 と し て の 使 命 の 一 端 が 果 た せ た と 各 位 に 感 謝 す る .食 品 科 学 を 志 望 す る 若 手 研 究 者 の 皆 様 に ,こ の よ う
謝 辞 学 生 の 頃 か ら 今 日 に 至 る ま で ご 指 導 と ご 鞭 撻 い た だ き ま し た 松 野 隆 一 先 生 並 び に 中 西 一 弘 先 生 ,工 学 分 野 に 奉 職 す る 機 会 を 与 え て い た だ き ま し た 橋 本 健 治 先 生 ,演 者 が 勤 務 し た 京 都 大 学 工 学 部 化 学 工 学 科 ,新 居 浜 工 業 高 等 専 門 学 校 工 業 化 学 科 ,静 岡 県 立 大 学 食 品 栄 養 科 学 部 食 品 学 科 お よ び 京 都 大 学 大 学 院 農 学 研 究 科 食 品 生 物 科 学 専 攻 で 研 究 を と も に し た ス タ ッ フ や 卒 業 生 並 び に 企 業 の 皆 さ ま に 感 謝 い た し ま す .ま た ,多 大 な ご 支 援 を い た だ き ま し た 日 本 農 芸 化 学 会 関 西 支 部 の 皆 さ ま に 厚 く 御 礼 を 申 し 上 げ ま す .
特 別 講 演
ヘリコバクターピロリ感 染 と胃 がん
東 健 (神 戸 大 院 ・医 )
ヘリコバクターピロリ感 染 と胃 がん
○東 健1
(1神 戸 大 院 ・医 )
1982 年 に ヘ リ コ バ ク タ ー ピ ロ リ が 発 見 さ れ 、1994 年 に WHO よ り 1 群 の 発 が ん 因 子 に 認 定 さ れ 、現 在 で は 、胃 が ん は 子 宮 頚 が ん と 同 じ く 感 染 症 で あ る こ と が 明 ら か に さ れ て き た 。こ れ ま で に 、ピ ロ リ 菌 感 染 に よ る 分 子 メ カ ニ ズ ム と し て 、ピ ロ リ 菌 が 胃 粘 膜 上 皮 細 胞 に 接 着 す る と 、ピ ロ リ 菌 の 4 型 分 泌 装 置 を 介 し て が ん 蛋 白 と 考 え ら れ て い る CagAが ピ ロ リ 菌 か ら 上 皮 細 胞 内 へ と 注 入 さ れ る こ と が 明 ら か に な っ た 。そ し て 、上 皮 内 に 注 入 さ れ た CagAは 、 胃 粘 膜 上 皮 細 胞 内 で チ ロ シ ン リ ン 酸 化 を 受 け 、細 胞 の 分 化 や 増 殖 に 重 要 な 役 割 を 担 う 細 胞 質 内 脱 リ ン 酸 化 酵 素 SHP2 と 特 異 的 に 結 合 し 、細 胞 の 異 常 増 殖 に 作 用 す る こ と が 認 め ら れ た 。 ま た 、CagA の SHP2 結 合 配 列 は 東 ア ジ ア 株 の CagA と 欧 米 株 の CagA 間 で 異 な り 、東 ア ジ ア 株 の CagA は 欧 米 株 の CagA に 比 べ SHP2 と よ り 強 く 結 合 し 、細 胞 内 シ グ ナ ル 伝 達 系 を よ り 強 く 変 化 さ せ る こ と に な り 、東 ア ジ ア 型 の CagA を 有 す る ピ ロ リ 菌 の 感 染 と 胃 が ん と の 間 に 有 意 な 相 関 関 係 が 認 め ら れ た 。 し た が っ て 、CagA の リ ン 酸 化 及 び 引 き 続 い て 生 じ る CagA と SHP2 と の 結 合 に よ っ て 生 じ る 胃 粘 膜 上 皮 細 胞 内 で の シ グ ナ ル 伝 達 系 の 変 化 が 胃 発 が ん に 重 要 な 役 割 を 担 っ て い る と 考 え ら れ る 。 胃 が ん が 感 染 症 で あ る の で あ れ ば 、胃 が ん は 予 防 可 能 な が ん と 考 え ら れ る 。 こ れ ま で に 、ヒ ト に お け る 介 入 試 験 に つ い て 、エ ビ デ ン ス が 次 々 と 報 告 さ れ て き て い る 。日 本 か ら の 報 告 で は 、胃 潰 瘍 患 者 の 除 菌 後 8.6 年 の 経 過 を 観 察 し た と こ ろ 、5 年 後 の 胃 が ん 発 症 の リ ス ク は 除 菌 成 功 群 で 2.00% 、除 菌 不 成 功 群 の 6.41% に 比 べ 有 意 に 胃 が ん の 発 症 が 抑 制 さ れ た 。 ま た 、 除 菌 に よ る 、 早 期 胃 が ん の 内 視 鏡 的 治 療 後 の 異 時 性 二 次 発 が ん の 抑 制 効 果 も 認 め ら れ た 。 以 上 の 結 果 を も と に 、 我 が 国 で は 、2013 年 2 月 に 、 ピ ロ リ 菌 感 染 胃 炎 に 対 す る 除 菌 治 療 が 保 険 適 用 に な り 、ほ ぼ 全 て の ピ ロ リ 菌 感 染 者 が 除 菌 対 象 と な っ た 。今 後 、胃 が ん 撲 滅 を 進 め る 上 に 、ピ ロ リ 菌 除 菌 を 積 極 的 に 実 施 し て い く こ と が 重 要 で あ る 。
<お知らせ>
○ 第 487 回支部参与会は、2014 年 12 月 6 日(土)12:00 より
神戸大学大学院農学研究科 A 棟 3 階大会議室 にて開催いたします。
○ 懇親会を 17 :50 より神戸大学アカデミア館 3 階「さくら」にて 開催します。奮ってご参加ください。 一般:3000 円、学生:無料
○ 次回例会(488 回)予定
日時:2015 年 1 月 31 日(土)
会場:京都大学楽友会館
講演申込締切:2015 年 1 月 6 日(火)
講演要旨締切:2015 年 1 月 13 日(火)正午
問い合わせ先:〒605-8502 京都市左京区北白川追分町 京都大学大学院農学研究科
由里本 博也 Tel: 075-753-6387
E-mail: yury@kais.kyoto-u.ac.jp
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