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日本の製造業における中小・零細企業の 減少について考える

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Academic year: 2025

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日 本 の製 造 業 における中 小 ・零 細 企 業 の      減 少 について考 える

 

 

吉 田   三 千 雄

    はじめに 

 日本の製造業における中小・零細企業 の減少に歯止めがかからない。例えば、

『工業統計表・産業編』(経済産業省)によ れば、製造業の事業所数は、1990 年の 728,853 か ら 2003 年 の 504,472 へ 、 224,381 の減少(−30.8%)をみせた。また、

従業者数も同期間に 314 万人(−26.6%)の 減少を記録しているし、付加価値額も、

1,212 億円から 1,001 億円へ 17.4%の減少 をみせた。本稿では、こうした中小・零細 企業を中心とした事業所数の減少を手掛 りに、日本製造業の今後のあり方を考えて みることとする。 

Ⅰ 

 ここで、90 年から 03 年における事業所 数減少の特徴を示して見れば、以下のと おりである。 

①産業部門別には、繊維工業(減少数 50,418、減少率 64.7%)、衣服・その他繊維 品(同 17,790、同 34.2%)、木材・木製品(同 14,623、同 44.3%)など、いわゆる軽工業部 門における減少が顕著であるが、戦後日 本経済を主導してきた金属・機械部門に おいても、金属製品(同 23,040、同 25.7%)、

電気機械(同 15,159、同 34.1%)、一般機械 (同 15,736、同 20.5%)など減少が目立って いる。 

②従業者規模別では、従業者数1〜3 人 (減少数 82,262、減少率 28.1%)と 4〜9 人 (同 93,413、同 38.3%)という、小零細企業 での減少が著しい。 

 では、こうした中小・零細企業減少の背 景はどのように考えられるで、あろうか。 

 まず、基本的な背景として、第 1 に 1993 年からのいわゆる「長期不況」のなかで、

中小・零細企業が生産額・受注額の減少 を余儀なくされたことである。第 2 に、90 年 代半ば以降、東アジア諸国を中心に大規 模企業の海外現地生産が進展し、階層構 造を形成した日本の中小・零細企業の存 立要因を弱体化させてきていることであ る。 

 こうした基本的な要因を背景として、具 体的には以下のような減少要因が考えら れる。 

①「長期不況」下、金属・機械部門もふく めて、多くの企業倒産や廃業が見られた ことである。例えば、1993 年から 01 年の間 に、製造業のみで 29,039 件の倒産が発生 し(負債総額 1000 万円以上のもの)、そのう ち、金属・機械部門で 11,281 件が占めら

れている。      

②製造業における新規開業率が著しく低 下していることである。例えば、「事業所・

企業統計調査」によれば、製造業におけ

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る 1996 年〜99 年の廃業率は 14.5%である のに対して、開業率は 5.8%である。すなわ ち、そこでは戦後日本経済の「高度成長」

以降 80 年代初頭まで存在したと考えられ る、小零細企業の新規開業の典型的なパ ターン(中小・零細企業を中心とする労働 者が、20 年余にわたって幾つかの企業を 移動する中で、一定の技術と資金、受注 を確保しうる人間関係を形成して開業し、

自らと家族従業者の長時間労働を基礎に 成長してゆく)が、もはや形成しにくくなっ た、そうした基盤が崩れつつあるということ である。 

③中小・零細企業において後継者が存在 しない企業が多いということである。そこに は現在の状況から、後継者を探すほどの 必要性が認識されないケースや、一定の 将来展望はありつつも、後継者が存在し ないケースが想定しうるであろう。もちろん、

そこではいわゆる「若者の製造業離れ」の 一側面を垣間見ることができる。 

Ⅱ 

 こうした状況下、製造業における(とりわ け金属・機械部門における)中小・零細企 業の「復活」の路は、どのように想定できる のであろうか。大きな生産能力と高い技術 水準、強力な輸出競争力をもった日本の 金属・機械部門、それを底辺において支 える中小・零細企業、その生産能力を大き く削減することもやむ得ない(製造業はも はやこれ以上の拡大を必要としない)という 立論に立たないならば、以下のような「復 活」に向けた方向性が考えられる。 

 まず、基本的に若者の「製造業離れ」が 進展しているとするなら、その原因を解明 しなければならないであろう。その際、そ の原因を精神論(根性がない、わがままで ある、教育が必要であるなどの思考)にもと

めてはならないであろう。 

①製造業の現場で働く、「普通」の労働者 の社会・経済的評価を再検討し、それらを 高く処遇することである。大規模量産工場 に典型的に見られるように、派遣労働者・

アルバイト労働者・契約社員など、低賃金 不安定就労者に依拠する労働力編成をと ることなく、正規社員として採用し、教育す ることである。長時間にわたる「立ち労働」、

「単調労働」が中小・零細企業の存立要因 には長期的にはなりえないであろう。小ロ ット・高加工度、そして多様な物造りを進め る必要がある。 

②熟練労働が形成されうる産業部門にあ っては、とりわけそれを後世に継承するよ うな対策が意識的になされるべきである。

確かに今日の熟練労働は、金属切削工 程を例にとっても、旧来の熟練労働とは異 なる要素を含むものであるが、基本はどの ような工具を利用して、いかなる速さでもっ て被加工物を切削してゆくのかという事に ある。それゆえに、個別企業の短期的利 益のみを重視することなく、社会全体とし ても熟練労働を重視する施策が求められ るし、中小・零細企業の存立基盤も基本的 にはそこに存在しよう。 

③今日の状況は、開業資金の調達困難と いうより、売利上げ・受注の不足に開業率 低下の原因があるといえようが、新規開業 に必要な設備投資資金も増大しているた め、地方自治体を含めて、十分な対応が 必要とされよう。 

Ⅲ 

 上記のような前提に立ったとしても、製造 業―とりわけ金属・機械部門―の自動化 が進展し、労働生産性が上昇するとすれ ば、一定の海外市場を前提としても、従前 と同様の生産力と労働力を必要としないこ

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とは想定しうる。その場合、量的には日本 の中小・零細企業は「過剰」であるともいえ ようが、今日進展しつつある事態は、大き な生産能力と高い技術を、いわゆる「構造 転換」の名のもとに捨て去る方向に向かい つつあるように思われる。一度、放棄した 生産力、高い技術などを再生することは困 難である。戦後日本経済の「高度成長期」

がそうであったように、中小・零細企業の 旺盛な族生があってこそ日本製造業の

「活性化」が可能となるし、新たな技術・製 品を生み出す基盤を形成することとなるで あろう。 

   

       

参照

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