Ⅰ 問題と目的
文部科学省初等中等教育局児童生徒課通知「児童生 徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する 調査結果について」(令和元年度)によると,不登校 児 童 生 徒 数 は181,272人( 小 学 校53,350人, 中 学 校 127,922人)であり,前年度に比べて数値が上昇して いる。福島県においても,同通知で不登校児童生徒数 が2,235人(小学校571人,中学校1,684人)であること が示されており(令和元年度),前年度に比べて数値 が上昇している。福島県においても,不登校対応が喫 緊の課題といえる。
不登校対応の1つとして,教室で過ごすことに抵抗 がある児童生徒に学校内の教室以外の場所で過ごさせ る「別室登校」がある。文部科学省初等中等教育局長 通知「不登校児童生徒への支援の在り方について」(平 成15年度)においても,保健室や相談室等の教室以外 の学校の居場所を積極的に活用することが推進されて いる。文部科学省初等中等教育局児童生徒課通知「児 童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関 する調査結果について」(平成28年度)では,「指導の 結果登校する,またはできるようになった児童生徒に 特に効果のあった学校の措置」として小学校では 25.0%,中学校では50.8%が「保健室等特別の場所に 登校させて指導にあたった」と回答している。このこ
とからも,学校内の居場所としての「別室」の有効性 が窺える。
阿部(2016)は福島県県北地域の小中学校における 別室登校の実態調査を行い,小学校では学級担任との 関わりがあり,スクールカウンセラー(以下SC)の 配置がされていること,中学校では教職員が別室に常 駐していることが教室復帰に効果的であることを示し ている。小学校ではSC配置が教室復帰に効果的であっ たことから,SCが個別に話を聞く時間が学校内で安 定した対人関係を促進していることが考えられる。西 村ら(2000,2004)は「外部の人間であり,生徒を評 定しないことへの安心感」「教師間,教師と保護者間,
教師と生徒間のクッション役」等のSCの外部性が学 校システムに介入する意義を論じている。吉井(2004)
は,別室登校生徒がSC面接の中で教職員や親への不 平・不満を言語化していく中で, 自分にも問題があ るかもしれない と自己の振り返りや葛藤を抱くよう になり,少し嫌なことにも挑戦できるようになったこ とを述べている。それに対し,大幡(2014)は様々な 刺激が与えられる別室で,別室登校児童生徒の葛藤を 支える役割としてSCの可能性を述べている。
以上のことから,別室登校児童生徒は自己について 振り返ることで,言語化して自身の不安や心配事を表 現できるようになり,成長や課題解決の糧に繋がると 不登校対応の1つである「別室登校」について,本研究ではスクールカウンセラー(以下SC)
に着目し,質問紙調査,インタビュー調査を実施し,別室登校児童生徒に対するSCの支援を明ら かにし,「別室登校」支援の在り方を考察する。インタビュー調査はKJ法を用いて分析を行った。
SCは<別室に登校していることを認める>ことで児童生徒の葛藤を和らげていた。遊びの中で 登校できない自身について話す児童もおり,プレイセラピーも重要な支援であることが示された。
また,<将来を見据えて今の自分について考えさせる>ことで,「別室登校」が長期化している児 童生徒が主体的な目標をもって別室で過ごすことができると推察された。
SCは保護者や教職員への支援を行う上でも重要な人材であり,児童生徒の評価を行わない【SC の立場】は児童生徒にとって話しやすく,【児童生徒と1対1で向き合う】ことができ,個別性に 対応できる。また,【児童生徒に関わる大人との調整役】ができ,【支援者への支援】【専門性を活 かした助言】を行い,生活の場を共有する保護者や教職員の不安を払拭し,後押しをすることで,
児童生徒だけではなく,児童生徒に関わる支援者にも支援を行うことがSCの役割であることが示 された。
〔キーワード〕不登校 別室登校 スクールカウンセラー
大 塚 文 子 青 木 真 理
*a
*b
「別室登校」支援の在り方について
―スクールカウンセラーの支援に着目して―
*a 医療法人明精会 会津西病院 *b 福島大学人間発達文化学類附属学校臨床支援センター教育相談部門
思われる。加えて,教室復帰へも大きな意味をもつの ではないか。しかし,先行研究は中学校を対象にした 研究が多く,今後は小学校を含めた別室登校児童生徒 へのSCの役割と支援形態を明らかにする必要がある。
そこで,本研究の目的を以下の3つとした。第1は,
福島県県北地域の小中学校を対象に「別室登校」に関 する質問紙調査を行い,教職員の「別室登校」への取 り 組 み, 支 援 の 形 態 を 数 値 的 に 明 ら か に し, 阿 部
(2016)の2015年度の研究で得られたデータと比較を 行うことである。第2は,阿部(2016)の発展的研究 として質問紙調査とインタビュー調査から,特に別室 登校児童生徒に対するSCの関わりに焦点を当て,ど のような過程を経て別室登校児童生徒は葛藤を抱えら れるようになり,成長・教室復帰に繋がっているのか 考察していく。第3は,福島県不登校・いじめ等対策 総合推進事業の1つであるスペシャルサポートルーム
(以下SSR)実践協力校として,「学習支援室」を別室 として運営しているA中学校の取り組みを示し,各小 中学校で取り入れられるような「別室登校」支援の在 り方について考察することである。
本研究では,「別室登校」を「不登校傾向があるため,
別室で常時または所属学級との行き来があり別室で過 ごすことがある児童生徒,終日ではなく短時間だけで も別室に登校する児童生徒がいる状態」と定義し,各 調査を行った。
Ⅱ 質問紙調査
1.調査対象と調査方法
福島県県北地域(福島,伊達,安達)の小学校98校,
中学校41校に質問紙を配布し,各学校で別室の指導に 関わっている者に回答を求めた。回答期間は2020年7 月下旬〜8月20日までである。福島県県北教育事務所 から質問紙配布の許可を得て,各小中学校に郵送し,
回答は返信用封筒で受け取った。
今回使用する質問紙作成にあたっては,京都府教育 委員会(2011)と阿部(2016)の質問項目を基に作成 し,福島県内の小中学校の教職員にも指導を受け,修 正を加えている。対象の期間を2019年度(2019年4月
〜 2020年3月)とし,2019年度での「別室」に関す る情報について回答してもらった。なお,質問紙は小 学校版,中学校版と分けて作成し,質問項目を学校種 に合う形に変えている。
小学校53校,中学校18校から回答があり,回収率は それぞれ53%,43.9%であった。
2.調査結果と考察 ⑴ 別室の全体像
回答があった小学校53校のうち11校(20.7%),中 学校18校のうち10校(55.5%)で別室登校が行われて いた。小中ともに保健室が最も多く使用されており,
特に中学校は保健室を体調不良の生徒や精神的に不安 定な生徒のみに限定する学校が多くあった。小学校よ りも別室登校生徒数が多く,養護教諭だけでは対応し きれず,負担を軽減させるために一時的な別室として いることが考えられる。
別室登校児童生徒に対するSCの関わりとして,小 学校では「関わりがなかった」が中学校より多く,
SCの支援に繋がりにくい現状が示唆された。「児童(生 徒)との定期的なカウンセリング」「保護者とのカウ ンセリング」は中学校の方が多く,別室登校支援に SCが活用されていることが窺える。特に小学校では 関わりがなかったSCもいたため,SC自身が別室登校 児童に積極的に関わり,話しやすい雰囲気作りに努め,
「児童との定期的なカウンセリング」を行うことが教 職員から求められていた。加えて,SCはカウンセリ ングを通じて別室登校生徒や保護者の考えを汲み取 り,教職員へ共有すること,別室登校児童生徒とその 保護者がどのような状態であり,どのような支援が必 要なのか助言を行うことが教職員から求められてい た。
「別室登校」を始めるまでの手続きとして,決めら れた手続きがある学校はなかったことから,別室登校 に至るまでの教職員間の共通認識がなく,求められた 際に随時対応していることが窺える。
以下,阿部(2016)の2015年度の調査からの変化を 述べる。別室指導の特徴として,小学校では学級担任 だけではなく校内全体で支援すること,中学校では教 職員の常駐が挙げられる。特に小学校は,2015年度は 学級担任を中心とした指導が多く記述されていたた め,校内全体で支援する体制は大きな変化であるとい える。課題としては,小中ともに「人的資源の不足」「別 室として使用する部屋の不足」があり,児童生徒が1 人でいる時間ができること,居場所の不足,保健室登 校の限界があるため,SC等相談できる人的資源の拡 充,別室担当職員への期待が挙げられる。
別室登校期間については,半年以上別室に通う児童 生徒が多く,特に中学校は4カ月で別室登校を終えて いる生徒が8人から0人になっていた。頻度は小中と もに「ほとんど毎日」が多く,特に中学校は「週に2
〜3度」から「ほとんど毎日」が最も多くなっている ことが特徴である。滞在時間は,小学校は半日程度の 児童が増え,中学校は「1〜2時間程度」の割合が減 り,「ほとんど全日」の生徒が増えていた。これらの 結果から,別室登校の長期化や,別室を軸に生活して いる児童生徒が増加していることが推察される。
別室登校児童生徒の進路については,全日制の割合 が減り,定時制または通信制の割合が増えていた。欠 席日数や学習の遅れの問題,または選択肢の幅が広が り,定時制や通信制への進学が推進されていることが 考えられる。
⑵ 教室復帰効果得点の算出
別室登校児童生徒の教室復帰傾向を分析するため,
京都府教育委員会(2011),阿部(2016)の方法にな らい,①完全に復帰した②教室登校が増えたを「前進」
として3点,③特に変化はなかったを「停滞」として 2点,④別室登校の回数が減り,不登校傾向が強まっ た⑤不登校になったを「後退」として1点と換算し,
これを教室復帰効果得点とした。その結果,小学校で は別室を経て「前進」した児童が7名(50%),「停滞」
の児童が7名(50%),「後退」の児童が0名であり,
中学校では前進した生徒が5名(20.8%),停滞した 生徒が19名(79.2%),後退した生徒が0名であった。
2015年度の調査と比較すると,小学校では完全教室 復帰した児童の割合が増え,中学校では「停滞」の割 合が増えている。しかし,小学校の半分は「停滞」で あり,小学校から中学校にかけて「別室登校」が継続 していることも考えられる。
⑶ 教室復帰効果得点と各要因との関連
児童生徒の教室復帰に影響を与える要因を調べるた めに⑵で算出した教室復帰効果得点を用い,分析を 行った。分析には t 検定を使用した。
① 学級担任の関わりの有無と教室復帰効果得点との 関連
2015年度の調査では,教科担任制である中学校に比 べ,小学校の学級担任が別室の指導に関わりにくいと いう現状から,学級担任の関わりの有無と教室復帰効 果得点について t 検定を行い,有意な傾向がみられた。
同様の検定を行った結果,学級担任の関わりがない小 学校は14名中2名のみであり,妥当な結果を得ること ができなかった。2015年度の調査では学級担任の関わ りがあったと回答した小学校の割合が29.4%であった が,今回は85.7%であったことから,小学校において 教室復帰効果得点で「前進」の割合が増えていたこと は,学級担任の関わりが増えていることが関連してい るのではないか。
② SC配置の有無と教室復帰効果得点との関連 2015年度の調査では,小学校においてSC配置と教 室復帰効果得点について t 検定を行い,有意な傾向が みられた。今回も同様の検定を行った結果,SCが配 置されていない小学校は10校中2校のみであり,妥当 な結果を得ることができなかった。
③ 教職員の関わりの形態と教室復帰効果得点との関 連
阿部(2016)にならい,「別室に常駐している職員 がいた」「手の空いている教職員が誰かしら常に別室 にいるようにした」と回答した学校を「教職員常駐群」
とした。「別室に教職員がいることはなかった」「その 他」に関しては,別室に教職員が顔を出さず,完全に 放置しているというよりは,教職員がいない時間帯も
あるが,空き時間や休み時間などを利用して様子を見 に行くといった回答が多かったため,これらは「たま に教職員が関わる群」とした。それぞれの児童生徒の 教室復帰効果得点について, t 検定を行った結果,小 中ともに有意な差はみられなかった。小学校では,「教 職員常駐群」の中でも「別室に常駐している職員がい た」と回答した学校がほとんどであったため,中学校 のみ,「教職員常駐群」の中の「別室に常駐している 職員がいた」「手の空いている教職員が誰かしら常に 別室にいるようにした」との間でそれぞれの教室復帰 効果得点について t 検定を行ったが,有意な差はみら れなかった。
Ⅲ SCに対するインタビュー調査
1.調査目的と方法
質問紙調査では把握できなかった具体的な別室当校 児童生徒に対するSCの役割や支援の実態を示すため に,2020年10月〜 12月にインタビュー調査を行った。
福島大学学校臨床支援センターで対面で行う方法と,
ZOOMを用いて非対面で行う方法の2通りで実施し た。1時間〜1時間半程度の半構造化面接を行った。
2.調査対象
別室登校支援に関わっていたSC 5名を対象とした。
対象者の属性を以下の表に示す。
3.結果と考察
KJ法を用いて,筆者を含めた大学院生3名で分析 を行った。< >は小表札,【 】は大表札として示す。
① 別室登校に至るまでの支援
SC面接を別室登校のきっかけや別室登校の前段階 として活用していることが,本調査でも示唆された。
調査の中でSCとの定期的な面接を「別室登校」の1 つとして認めていた学校もあり,「別室登校」の1つ の方法としてSC面接を活用することも,今後の「別
表1 インタビュー対象者の属性
勤務年数 勤務校 勤務形態
A
14年目 小学校2校 1日6時間B
12年目小学校3校,
義務教育学校 1校
小学校2校:週1回6 時間と7時間 義務教育学校:週2回 6時間
C
11年目小学校1校,
中学校1校,
小中一貫校 1校
小学校,中学校:週1 回6時間
小中一貫校:週2回7 時間
D
5年目 小学校3校 1日3時間と6時間と 7時間E
7カ月目 小学校1校,中学校2校
小学校:週1回6時間 中学校:週1回6時間
室登校」支援の在り方として提案する。SC面接へと 繋ぐためには,【SCの相談に繋がりやすいベース作り】
が必要であり,児童生徒や保護者に対して 何か困っ たときに相談する人 として認知されていること,教 職員に対してもSCに相談しやすい関係性ができてい ることが大切である。また,<学級訪問><教職員か らの情報提供>等の【不登校のリスクがある児童生徒 の把握】をすることで,未然に不登校を防ぐことがで き,SC面接や別室登校に繋ぐ等の対応をとることが できると考えられる。保健室には養護教諭が常駐して おり,体調不良の生徒だけではなく,教室に不適応感 を抱えている児童生徒が息抜きにやってくるという
「不調の普遍性」が存在する(青木,2016)ことから,
<保健室に来るようになること>も1つのサインとし て受け取ることが必要であろう。
② 別室登校開始後の支援
別室登校開始後は対象別に支援が行われており,こ れらは同時並行で行われている。
1)児童生徒への支援
教室に行けないという児童生徒の葛藤に対して,<別 室に登校していることを認める>ことは,特に別室登 校初期には大切な姿勢であると考えられる。児童生徒 が別室登校を定着するためには,まずは葛藤を和らげ ることが必要なのではないだろうか。
具体的な支援としては,【スモールステップ】とし て登校時間の固定化,安心できる場の選択などを行っ ていた。面接する時間と併せ,2時間目に設定する,
生活リズムの改善及び学校のリズムに慣れさせる工夫 を行っているSCもいた。小学校では,面接の中でプ レイセラピーを用いた支援を行っているSCが数名い たことが特徴的であった。遊びを介して<一緒に体験 する>ことで,児童生徒は自由な自己表現ができるよ うになり, 自分を表現してもいい人 としてSCとの 関係性が築かれると考えられる。遊びの中で登校でき ない自分について話す児童もおり,プレイセラピーも 重要な支援の1つであると窺える。小中ともに,別室 登校していることを認めながら,【定期的なカウンセ リング】の中で,児童生徒の興味・関心のある話を聞 くことで,葛藤を和らげ,信頼関係を築くとともに,
学校に対する抵抗感を薄めていたと考えられる。
児童生徒が別室登校に慣れてきたら,SCは人との 接点や活動できる場所を増やし,タイミングを見計ら い,体育館や図書館などに誘って活動できる場を広げ ていた。SCが児童生徒と教職員の橋渡しをし,多く の人に見守られている,気にしてもらっているという 意識を持たせ,信頼できる大人を増やしていくことが 重要であると考える。
【個々に合った長期的な目標設定】では,SC自身が 児童生徒に対して,今の自分についてどう思うか,こ れからどうしたいのか,進学,将来何になりたいのか
といった,<将来を見据えて今の自分について考えさ せる>という関わりを行っていた。別室での過ごし方 を見直す時期ともいえるだろう。その上で,児童生徒 自身にどうしたいかを考えさせ,<児童生徒の意思を 尊重する>ということを行っていた。教室に行けない 自分を直面化させることになるため,和らげた葛藤を 再び生じさせることになるが,「力がついてくると,
このままじゃ嫌だとか,このままでいいでしょとか言 う子もいる」という意見から,将来を逆算して共に考 えたり,自分の意思を示すことができるようになった りしていた。別室は安心して過ごせる居場所でなけれ ばならないが,何をしてもいい楽な場ではない(阿部,
2016)ため,「別室」で何を目標として過ごしていく かを見直すことは重要な機会であると考える。
2)保護者への支援
保護者は「登校刺激を与えてもいいのか」「学校に 行かない状況を何とかしたい」等様々な<葛藤>や
<焦燥感>を抱いたり,<別室登校を受け入れられ ない>状態であったりする。そのため,本人の状態 や思いを伝えていきながら,別室登校への理解を促す ことが必要である。また,そういった保護者の思いも 受けとめつつ,共感を示す姿勢も大切である。つまり,
別室登校への理解を促すとともに,<親子関係の調整>
を図っているといえるだろう。【関係調整】は,親子 関係の他に,<学校と保護者の関係調整>もあり,学 校と協力体制が築けるようにSCが両者の間に立ち,
関係調整を行っていた。また,母親が別室登校を受け 入れられたとしても,家庭内で受け入れられず,母親 が孤立してしまったり,プレッシャーを受けたりする こともある。「父親を連れてきてもらって,それぞれ の思いや不安を聞いて,母親のプレッシャーが柔らか くなるようにした」という支援のように,家族全体で 別室登校児童生徒を支えられるよう,<家族関係の調 整>を行うことも重要である。
以上のような過程を踏まえ,保護者は面接の中で反 省的な言葉を発するようになったり,自分のことも併 せて考えるようになったりする等,【保護者の変化】
が生じると思われる。特に小学校の場合は,保護者の 影響が強い時期だと考えられ(神谷・坂本,2011),
保護者の安定により子どもへの良い影響が現れるとい う指摘もある(中野,2006)。したがって,SCが保護 者への支援に関わることで,間接的に別室登校児童生 徒の支援に繋がるということがいえるだろう。
3)学級担任への支援
<別室登校の認識の違い>があり,別室登校を受け 入れる学級担任もいれば,受け入れられない学級担任 もいた。受け入れられない背景として,「部活動は出 れるのに,教室に登校しないことが許せない」「教室 に来ないのは自分がダメだからではないか」等<別室 登校への抵抗>や<自責>があることが考えられる。
そのため,別室登校の初期段階では,保護者への支援 と同様,<児童生徒の理解に繋がる情報提供>を行い つつ,<自責>が和らぐよう労うことで,別室登校へ のマイナスイメージを薄めることが必要である。
児童生徒が別室登校に慣れてきたら,<学級担任と 児童生徒との交流機会の設定>を行う。小学校の場合,
学級担任が空き時間に顔を出すことは難しいため,理 科の授業で他の児童がいない時間に誘ったり,予定表 のファイルにコメントを書いてもらう等の工夫を行っ ていた。
4)支援者同士の連携
別室登校支援を行う前提として【チームで児童生徒 を支える大切さ】がある。Ⅱの別室指導の特徴でみら れた「担任だけではなく,校内全体で支援する」こと は,別室登校支援において欠かせないことといえる。
今回の調査では養護教諭とスクールソーシャルワー カー(以下SSW)がコーディネーターとして挙げら れていた。特にSSWは,貧困や再婚等,家庭的な背 景に問題がある場合に家庭環境に働きかける役割を 担っており,SCと各々の専門性を活かした支援が期 待できる。
【教職員との情報共有・連携体制】は,コーディネー ターだけではなく,他教職員も含めた情報共有・連携 体制のことを指す。<情報共有する教職員とその機会>
としては,学校によって様々であり,「口頭で養護教 諭と学級担任と小さい目標を決めていく」「教育相談 委員会の中で情報共有」があった。また,管理職に参 加してもらった方が支援方針をその場で決めることが できるということから<管理職にコンサルテーション に参加してもらう必要性>も意見としてあった。一方 で,<共通理解の場の不足>が挙げられる。教職員と の情報共有は,児童生徒の支援方針を検討するととも に,共通理解を図る場でもあるため,短時間でも行え ることが望ましい。
SCは【支援方針の調整】を行う。児童生徒が立て た目標を尊重できるよう,現在の児童生徒の状態を伝 えた上で,支援方針を調整していた。また,「先生方 は甘やかしてるんじゃないかって色々揺れ動くと思う んですけど,今は寄り添っていいんだよっていう後押 し」という意見のように,支援方針の調整の際【教職 員への支援】も行っていると思われる。
【学校としての支援方針と課題】では,支援方針に 対し「教室復帰は暗黙の了解としてあるが,場当たり 的になっている」という意見もあり,【個々に合った 長期的な目標設定】で述べたように,児童生徒に対し て<将来を見据えて今の自分について考えさせる>こ とが必要であると考える。
③ 児童生徒の変化
【自己主張】【学校のルールと自分の気持ちとのすり 合わせ】【自分を見つめる】【意欲】【自信】【別室とい
う居場所があることによる安心感】【人間関係】【別室 以外の居場所ができる】【規律性】【学校行事への参加,
進学,就職】がある。児童生徒は別室登校を経て,内 面的な成長,活動性が高まること,学校内の居場所が 増えること,生活リズムの改善,時間を守ること,
SCや学級担任をはじめとする大人との関係性,友人 との関係性が築くことができると思われる。
④ SCが別室登校支援に関わる必要性
【SCの立場】が児童生徒にとって悩みを話しやすい ということが推察される。また,個別性でありながら,
1対1で児童生徒の話したいこと,不安に思っている こと等を拾い上げ,丁寧に聞くことができる人として
【児童生徒と1対1で向き合う】ことができる。学校 の教職員や,保護者を含む【別室登校児童生徒に関わ る大人との調整役】もSCのできる支援であると考え られる。また,【支援者への支援】もSCの力が発揮さ れる支援である。SCは非常勤であるため,別室登校 児童生徒の葛藤を抱えるには限界がある。そのため,
生活の場を共有している教職員や保護者が,葛藤を支 えられるように支援すること,自信をもって児童生徒 に関わることができるように後押しすることが重要で ある。
⑤ SC視点から別室登校支援で難しい点
【児童生徒と関わる難しさ】や,児童生徒への【共 通理解】を図ることが難しい点であった。また,「別 室登校してるからその子への関わりはそこで終わりに ならないかという心配はある。学校としては別室登校 してることで済ませてしまう」等の意見のように,学 校側の別室登校児童生徒へのニーズと,SC側の別室 登校児童生徒へのニーズが異なり,SC自身が葛藤す ることがあった。それは,SCが別室登校児童生徒に 関わる上で「その子なりにどういう経験をさせていく か」ということを考え,「何がこの子にとってゴール になるのかということを一緒に考える」視点から関 わっているため,生じる違いと推察する。
⑥ 別室登校の課題
別室があっても入れない児童生徒がおり,教職員か ら勧められてもそれに応じない児童生徒もいることか ら,【別室登校へ繋ぐ難しさ】がある。別室が安堵の 地となりすぎてしまい,中々教室復帰に繋がらないと いう【教室復帰の難しさ】もみられた。【人的資源の 不足】は,Ⅱの別室指導の課題点で述べられていたこ とと同様,関われる先生が少ない,どうしても離れる 時間ができてしまう等があった。
Ⅳ SSR実践協力校の教職員に対するイ ンタビュー調査
1.調査目的と方法
福島県不登校・いじめ等対策総合推進事業の1つで あるSSR実践協力校として,「学習支援室」の運営を
行っているA中学校の教員,管理職それぞれ1名ずつ にインタビュー調査を行った。SSRとは,不登校児童 生徒,または不登校傾向の児童生徒居場所作り,自己 実現,児童生徒が抱える課題並びに多様なニーズへの 支援を目的とした校内に設置する適応指導教室であ る。Ⅱ・Ⅲで明らかになった支援の実態,課題に対し,
SSRの実践協力校であるA中学校の教職員はどのよう に対応しているのか,別室登校児童生徒に対する支援 の実態を示すために,インタビュー調査を行った。
2020年11月〜 12月に対象者が所属している勤務校,
または福島大学学校臨床支援センターにて1時間〜1 時間半の半構造化面接を行った。
2.調査対象
対象者の属性を以下の表に示す。
3.結果と考察
分析はKJ法を援用している。< >は小表札,【 】 は大表札として示す。
① 学校の運営体制
B教諭と同教科の講師の2名を准専任教職員とし,
【教職員の常駐】をしていた。加えて,2名の授業時 数を減らす【別室担当教職員への配慮】も行っていた。
【別室運営に関わる教職員】は,准専任教職員2名,
養護教諭,特別支援教育コーディネーター教職員,各 学年の教育相談係,サポートティーチャー(大学院生,
退職教職員等が児童生徒の心のケアや学習の躓きをサ ポートする外部の非常勤職員),学生ボランティアで ある。
別室運営を始める前に,A校長が教職員に対し,生 徒指導上の問題であり,解決には人と場所が必要であ ることを説明し,別室担当職員への理解を得るととも に,「他の児童生徒と同じものさしで判断しないこと」
「生徒の自主性を尊重すること」等別室登校生徒への 理解も促していた。また,A校長は別室担当教職員と なる人材について,指導力のある教職員であることを
述べていた。
以上のような運営体制をとることで,<別室登校の 認識の違い>が生じないようにすることができると思 われる。加えて,<別室登校への抵抗>を緩めること ができると思われる。
② 別室登校に至るまでの支援
小学校から継続している児童も多いため,A中学校 では入学する前段階の支援として,「学習支援室」の 存在を知ってもらうために,保護者や本人に向けて春 休み中にオリエンテーションを行っていた。別室への 認知を図り,不登校を未然に防ぐことができると思わ れる。
生徒や保護者向けに「学習支援室」の利用,マナー 等が書かれた紙で説明を行い,登校してから帰宅する までの流れをあらかじめ周知することができるように しており,「学習支援室」のイメージを持ってもらい,
安心して登校ができるようにしていると思われる。加 えて,教職員用の「学習支援室」の対応も周知されて おり,教職員間の共通理解として役立っていると考え られる。
【学校からSCに繋ぐ】際,生活アンケートやQ-Uテ ストの結果から,教職員がSCに繋ぐ<スクリーニン グ>を取り入れていた。一方で,<SCに繋ぐ難しさ>
もある。カウンセリングに対しての敷居が高く,生徒 自らが相談する難しさに加え,教職員から勧められた 際,教職員から自分がどのように見られているのかを 気にする等カウンセリングを受け入れにくい背景が あった。
③ 別室登校開始後の支援 1)生徒への支援
<別室登校していることを認める>という共通理解 のもと,将来・進路に向けて見通しを持てるような自 信の獲得を目指した支援が行われていた。【実際の支 援】としては,<頑張りを認めてもらう機会の設定>
<学習支援><進路に関する情報提供>等がある。ま た,継続的に関わる教職員の他に<非常勤職員も含め た交流>を行っていた。他教職員との交流に繋げるの は,B教諭が中心であり,B教諭が どのタイミング でどの教職員に繋ぐか をコーディネートしていた。
加えて,B教諭は,生徒1人1人のニーズを引き出し たり,教職員の時間割を作成し,生徒が学習支援を求 めたときに,いつでも聞きに行ける体制を整えたりし ていた。
B教諭は学級担任も兼任していたため,行事を活用 し,別室登校生徒に学級の掲示や鉢巻の応援メッセー ジ作り等をさせ,お互いがクラスのために頑張ったこ とを認め合い,メッセージを送り合うエンカウンター を行っていた。また,給食を日直に持ってきてもらう 等,クラス内の色々な人と関わる機会を設定していた。
B教諭は学級と繋ぐ支援が実に巧みであり,「その子 表2 インタビュー対象者の属性
勤務年数 備 考
A
37年A中学校の校長を務める。教育委員 会の指導主事,学校生活健康課の指 導主事,SC担当,複数の小中学校 で管理職の経験がある。前任校で,
校 長 と し てSSRの 指 導 を 行 っ て お り,A中学校でも同様にSSRの指導 に関わっている。
B
16年著者の所属する大学院の福祉領域を 卒業後,A中学校に勤務。学級担任 を持ちながら,「学習支援室」の准 専任教員として別室登校支援に関 わっている。
を見た瞬間にみんな手を振ってくれた」というような 学級の受け入れ体制を築いていたと思われる。B教諭 は「復帰したら終わりじゃなくて,復帰するためにも 同時進行で学級経営。そういう土壌がないとまた戻っ てきてしまう」という意見を挙げていた。このように 児童生徒を受け入れる環境作りは,教室復帰を考える 上では欠かせないことが窺えた。
2)保護者への支援
【実際の支援】では,<保護者会の設定>をし,進 路や,保護者の不安や悩みを話し合うという会を開い ていた。<教育相談>は今後の支援の提案,検討を行 う場であり,2週間に1回程度の頻度で別室での生徒 の様子を電話で伝えたりもしていた。そうすることで,
保護者は <別室登校することによる安心感>から,
<気持ちが落ち着く><子どものペースを尊重できる ようになる><子どもの成長を喜ぶ>という変化が見 られると推察する。
④ 生徒の変化
Ⅲの内容と重なる部分が多かったが,別室登校生徒 同士が「2人でだったら頑張ろう」「お互いに同じ立 場だからこそ安心して話せる」といった「育ち合いの 場」(阿部,2016)として別室が機能していたことが 挙げられる。
⑤ SCによる別室登校支援の必要性
Ⅲの内容に加え,【生徒の見立て】【専門性を活かし た助言】があり,要因がはっきりしない生徒等,何が 原因で足が向かなくなっているのかを見取り,専門性 を活かした助言が求められていた。また,「対応への 不安や迷いを聞いてもらえると安心する」という意見 もあり,【支援者への支援】も重要であることが示唆 された。
⑥ 教職員の視点から別室登校支援で難しい点 【生徒との関わり】【別室登校支援を理解してもらう 環境】【教職員の負担】【生徒の評価】がある。個々の 多様な要因の対応への難しさについては,学校内の
「個」への支援・対応ができることに加え,必要があ れば外部機関へと繋ぐ役割をSCが担うことで,教職 員へのフォローができると思われる。
⑦ 今後の課題
【学校に来れない生徒への対応】として,はがきを 使ったアプローチが話された。自分の気持ちをうまく 話せなかったり,対面で会うことに抵抗がある生徒に とっては,直接会えずとも気にしてもらっていると感 じたり,会ってみようと思うきっかけにもなる可能性 もあるため,取り入れるべきアプローチだと考える。
【春休みの面談】は,別室登校が継続している生徒に 対して今度どうするか考える1つの機会となると考え られる。進路については所属学級の生徒同様,説明会 を受ける機会が設定されることが望ましい。
Ⅴ 総合考察
1.2015年度の研究との比較
中学校において「別室登校」が長期化となっている 現状が示唆された。これは,中学校で教室復帰効果得 点の「停滞」の割合が増えている点と関連していると 考えられる。また,小学校から長期間に渡って不登校 になると,中学校でも教室復帰が難しいことが推察さ れる。一方で,教室復帰効果得点において,小学校の
「前進」の割合が増えていたことは,2015年度よりも,
学級担任の関わる割合が増えていたことが関連してい ると考えられる。このことから,学級担任の関わりの 重要性が示唆されたといえるだろう。忙しい中でも,
高学年であれば学級担任以外の授業の時間もできるた め,そういった時間を利用して,少しでも学級担任と 別室登校児童が関わることが大切である。「前進」に 繋がっていた学級担任の児童への関わりとして,児童 の意思を尊重することに加え,所属学級で過ごしやす くなるよう環境調整を図っている点が結びついてい た。また,インタビュー調査の中で学級担任の児童生 徒を受け入れる環境作りは,教室復帰を目指す上では 欠かせないものであることが述べられていたため,別 室登校支援と同時並行で行われることが望ましいとい える。その他に,進級時前の面談,別室登校児童生徒 と学級担任の予定表を用いた交流も教室復帰に結びつ いていた。進級時前の面談でクラス替えの配慮,進級 時の引継ぎが行われることが教室復帰を目指す上では 効果的であり,たとえ結びつかないとしても,次年度 どうするかを考える節目になり,目標をもって別室で 過ごすことができるという点で効果的であると思われ る。特に「別室登校」が長期化している中学校にとっ ては,有効な方法なのではないだろうか。
学級担任だけではなく,校内全体で支援する指導特 徴は,インタビュー調査でも【チームで児童生徒を支 える大切さ】というカテゴリ名で抽出されており,組 織体制も大きく変化してきていることが示された。
教職員の形態と教室復帰効果得点の間で有意な差が みられなかったことについては,別室に常駐する教職 員1人だけではなく,別室登校児童生徒に関わる支援 者が複数必要であることを指していると考えられる。
SCが児童生徒と教職員の橋渡しをし, 多くの人に見 守られている という意識を持たせたり,A中学校の ように,<非常勤職員も含めた交流><それぞれの専 門性や立場を活かした関わり>を行うことで, この 人になら言いやすい という選択肢を増やし,人のネッ トワークを広げていくことが重要であると推察する。
2.別室登校児童生徒に対するSCの支援について 別室登校児童生徒が葛藤を抱えられるようになるた めには,児童生徒を取り巻く環境の揺れ動きにも目を 向け,関係調整,支援方針の調整,専門的視点からの
支援者への助言,後押しをすることが必要であること が明らかとなった。つまり,SCは別室登校児童生徒 だけではなく,保護者や教職員等の支援者への支援を 行う上でも重要な人材であるといえよう。SCが別室 登校支援に関わる必要性としても【SCの立場】【児童 生徒と1対1で向き合う】【児童生徒に関わる大人と の調整役】【支援者への支援】【生徒の見立て】【専門 性を活かした助言】が示されている。利害関係がなく,
児童生徒の評価を行わない【SCの立場】は児童生徒 にとって話しやすく,【児童生徒と1対1で向き合う】
ことができ,個別性に対応できるという点で,教職員 とは異なる立場で支援ができるだろう。また,【児童 生徒に関わる大人との調整役】ができる。【支援者へ の支援】【専門性を活かした助言】を行い,生活の場 を共有する保護者や教職員の不安を払拭し,後押しを することで,児童生徒に関わる支援者にも支援を行う ことがSCの役割であるといえる。
別室登校児童生徒に対しては,まずは<別室に登校 していることを認める>ことで葛藤を和らげていた。
SCとの遊びの中で登校できない自分について話す児 童もおり,プレイセラピーも重要な支援の1つである と推察する。教職員や保護者が「別室登校」に対して 抵抗感を持っている場合もあるため,別室登校児童生 徒に関わる大人が<別室登校していることを認める>
ことができるよう,保護者との面接や教職員との情報 共有の機会を通じて理解を促すことが重要である。以 上のことから,「別室登校」支援を行う上で,SC面接 は「別室登校」に繋ぐ前段階としてだけではなく,未 然に不登校を防ぐこと,「別室登校」開始後の別室登 校児童生徒の登校動機,フォロー面接としても活用で きる点で,意義があるといえる。
しかし,SC面接へと繋がるためには,児童生徒や 保護者にSCが 何か困ったときに相談できる人 と して認知されていること,教職員からSCに相談しや すい関係性が築かれていることが必要である。そのた めに,給食の時間に各クラスをまわる,学級訪問をす る,SC便りにどんなことを相談できる人か示す等の 広報活動を積極的に行い,【SCの相談に繋がりやすい ベース作り】を整えておくことが不可欠である。また,
生活アンケート等のスクリーニングも,直接的には見 えにくい児童生徒の状態を掴むことができる重要な資 源である。SCと教職員が話すきっかけにもなるため,
そういった資源を活用することも大切である。
Ⅲでは別室登校児童生徒への支援方針が場当たり的 になっている点が課題として述べられていたが,「別 室登校」が長期化することによって児童生徒自身が現 状維持の状態になり,今後どのように別室で過ごし,
次のステップへと進んでいけばよいのかがわからず,
場当たり的に「別室」で過ごすことになってしまって いることが考えられる。また,「別室登校」定着後に,
そのような児童生徒達に対して再不登校にならないよ う,教職員側もどのように一歩を踏み出せばよいのか 苦慮しているのではないだろうか。加えて,各調査の 児童生徒の要因として<要因がはっきりしない><
ゲームやネットによる寝不足><漠然とした不安>
等,1980年代に多く見られた神経症的なタイプだけで はなく,葛藤が見えにくい児童生徒も増えており,更 に対応が難しくなっていることが想像される。特に バーチャルな誘惑やゲームへの依存に関連した不登校 も近年増加傾向にあり,日常生活で 自分を出せない と感じている児童生徒ほど,ゲームの世界に没入し,
依 存 し て し ま う と い う 報 告 も あ る( 藤 田・ 則 定,
2018)。これらを踏まえ,「別室登校」の中で,SCが 自己表現のサポートを行い,児童生徒が抱えている葛 藤を言葉として表出できるようになることで,バー チャルな世界ではなく,他者に頼ることができ,共に 目標を設定したり,現在・未来の児童生徒自身につい て考えたりすることができるようになると考える。
3.今後の「別室登校」支援の在り方について
① 関わる人材
別室登校児童生徒は多様な要因で別室に至ることか ら,指導力のある教職員を別室担当に当てることが望 ましい。質問紙調査から小学校において学級担任が関 わる重要性が示唆されていたため,学級担任が少しで も関わるという努力が必要であろう。教職員の形態と 教室復帰効果得点の間で差がみられなかった点で,中 学校は,入れ替わりで教職員が常駐をするのではなく,
継続的に常駐する教職員,週に数回顔を出しにくる教 職員等が必要なのではないだろうか。常駐する教職員 が生徒との関係性を安定させつつ,たまに関わる教職 員が刺激を与えるという形態を提案する。
小 中 と も に, 学 生 ボ ラ ン テ ィ ア, サ ポ ー ト テ ィ チャー,SC等外部の人材も活用し,別室担当者のよ うな継続的に関わる教職員に加えて,たまに関わる教 職員等,複数人で関わることが必要である。しかし,
やみくもに複数人で関わるということではなく,別室 担当者が1人1人のニーズを引き出し,教職員同士,
児童生徒同士,教職員と児童生徒同士を繋ぐコーディ ネートを行うこと,教職員の空き時間を把握し,繋げ ることができる準備をしておくことが大切である。多 くの教職員に関わってもらえるよう,教職員同士のコ ミュニケーションも職員室等で頻繁に行われているこ とが理想である。また,SCは別室担当教職員と密に 連携を図り,別室担当教職員の対応への不安や悩みを 聞き取ること,助言を行うこと,面接時の児童生徒の 様子をフィードバックし,共に今度の支援方針を検討 すること等が求められる。
② 組織の在り方
別室登校支援を理解してもらう環境がなければ,別
室担当者が他教職員へと繋ぐ際に困難が生じたり,別 室担当教職員だけに負担が集中することになるだろ う。また,児童生徒にとっても関わる教職員の違いに よる混乱をまねくことになる。これらのことから,学 校ごとに何を目標として別室を運営するのか,他児童 生徒と同じものさしで別室登校生徒を判断しないこと 等の理解を周知しておくことで,教職員間で別室の認 識に差が出ないよう,管理職を中心とした別室の位置 づけ,別室運営の共通理解を図ることが必要である。
別室の目的,別室に至るまでの流れが記載されている 用紙をA中学校では共有していたため,共通理解の指 標として用いることも効果的である。
教職員間の情報共有も共通理解ができる重要な機会 であり,Ⅲではその場で支援方針を決定することがで きるため,<管理職を含めたコンサルテーションの必 要性>が意見として出ていた。前回の勤務日に養護教 諭,担任,SCで決めた支援方針が通らず,次回勤務 日に変更となったことを伝えられ,SCやコンサルテー ションに参加した教職員も混乱するという意見もあっ た。教職員間の混乱や負担を軽減させるためにも,忙 しい中でも管理職を含めた教育相談委員会や職員会議 が開かれることが望ましい。加えて,立ち話等口頭で の日々の情報共有が行われていることが大切である。
③ 小中の連携
不登校の継続化を防止するため,中学校に入る前段 階で児童や保護者に別室の認知をしてもらい,安心感 を持ってもらうとともに,予防を図る。特に小学校時 代に不登校となっている児童は,中学校入学後にもリ スクがあると捉え,進学先の中学校でも「別室登校」
のようなサポートする場,繋がることができる場があ ることを伝えておくことが重要であろう。
④ 「別室」に繋がらない児童生徒
手紙や別室への案内の紙を送る等,非対面での交流 を図る。 気にしてもらえている 学校から見放され ていない という感覚を持ってもらうことが大切であ ると考える。場合によっては, 会ってみよう とい う動機づけになったり,手紙でもやり取りが試みられ る可能性もあるため,直接会うことができなくとも,
児童生徒との関わりを切らさず,繋がっていることが 大切なのではないだろうか。
4.本研究の課題
今回行った質問紙調査の回収率は,2015年度の調査 よりも低い結果であり,県北地域の現状を知ることが できたとは言い難い。今後はより多くの小中学校の協 力を得た上で,福島県全体の現状を知ることが必要で あろう。
5.おわりに
インタビュー調査を通じて児童生徒に関わる大人の
理想の目標がありながらも,児童生徒を主体とした目 標を立て,それを実行している教職員やSCの姿が想 像できた。当然のことかもしれないが,支援を検討す る際,「誰のための目標なのか」ということを立ち返 ることはとても大切なことであると調査を通じて実感 した。別室登校児童生徒が「別室登校」を,受動的あ るいは能動的に決めたにせよ,別室でどう過ごしてい くかは自身で決めれるよう,支援を行っていくことが 別室登校児童生徒の成長に繋がることであると,調査 を通じて筆者が感じたこととして伝えたい。
注・引用文献
・青木真理(2016) 別室登校について―効果的な保健室 登校指導についての考察― 福島大学総合教育センター 紀要第21号 17−20
・阿部郁美(2016) 効果的な「別室登校」支援の在り方 について―「別室登校」実態調査からの考察― 福島大 学総合教育研究センター紀要第23号 41−47
・神谷かつ江・坂本真也(2011) 小学校におけるスクー ルカウンセリングに関する一考察 東海学院大学短期大 学部紀要第37号 13−20
・京都府教育委員会(2011) 「別室登校Ⅰ」〜別室登校児 童生徒の実態把握と支援の在り方〜
・文部科学省(2016) 初等中等教育局児童生徒課通知
「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に 関する調査結果について」
・文部科学省(2019) 初等中等教育局児童生徒課通知「児 童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関す る調査結果について」
・中野明人(2006) 小学校におけるスクールカウンセ ラー活動の取り組みについて 長崎短期大学研究紀要第 20号1−9
・西村則昭(2000) 二人の別室登校の女子中学生 ス クールカウンセリングの境界性と社会性 心理臨床学研 究 18,(3)254-265
・大幡雄大(2014) 「中学校における別室登校生徒への支 援についての考察―別室登校児童生徒の人間関係に焦点 を当てて―」 福島大学総合教育センター紀要 17−24
・吉井健治(2004) 別室登校の中学生グループにおける チャム関係 鳴門教育大学研究紀要 第19号 67−74