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分析レポート:オバマ外交と北朝鮮

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<平成24年度研究プロジェクト「2012年の北朝鮮」分析レポート> 

分析レポート:オバマ外交と北朝鮮 

中山俊宏(青山学院大学)

  2009年1月に発足したオバマ政権は、内政上の課題を主軸におきつつも、同時に9.11 テロ攻撃以来のブッシュ外交の軌道修正を重要な課題として掲げていた。アメリカにと っての脅威をすべて「対テロ戦争」との関連で序列化し、それをグローバルなコンテキ ストでとらえたブッシュ政権とは異なり、オバマ政権は個々の問題を個別にとらえ、そ れぞれ個別の地域の問題や具体的なイシューの問題として再定置し、(オバマ政権が考 えるところの)ブッシュ政権の過剰反応を抑制しようとした。「グローバルな対テロ戦 争(Global War on Terrorism: GWOT)」は「暴力的な過激主義との戦い」というかたちで 特殊部隊や無人航空機(UAV)を用いたオペレーションに組み換えられ、すべての政策 が対テロ戦争に従属するようなかたちにならないよう設定された。またブッシュ政権が、

直感的には「対話」よりかは「脅威の物理的除去」という発想に傾斜しがちであったの に対し、オバマ政権はまずは「対話」を模索する姿勢を見せた点もブッシュ政権とは大 きく異なっていた。

  オバマ大統領は、2008 年の大統領選挙の時から、一貫して「ならず者国家」との対 話についても、それを注意深く模索するとはっきりと述べており、このような基本姿勢 は北朝鮮についてもあてはまるものと見られていた。つまり、ジョージ・W・ブッシュ 政権がテロの脅威と関係づけられた大量破壊兵器の拡散という観点から北朝鮮問題を とらえ、2002年の一般教書演説で同国を「悪の枢軸(axis of evil)」を構成する国家と して位置づけ、続いて 2005 年の一般教書演説でも北朝鮮を「圧政の拠点(outposts of

tyranny)」とし、グローバルな文脈で北朝鮮問題を位置づけたのに対し、オバマ政権は

地域的文脈の中で北朝鮮問題をとらえ、核不拡散という軸は維持しつつも、それを個別 の問題として再設定し、硬直する情勢の打開をはかった。しかし、それは政権発足後か なりはやい段階で頓挫し、天安号事件、延坪島砲撃事件を経て、北朝鮮に圧力をかけつ つその出方を見るという「戦略的忍耐(strategic patience)」という立場に後退していく。

  スティーブン・ボズワースを北朝鮮問題担当特別代表に任命したことは、オバマ政権 発足当初の特徴のひとつであった「特使外交」の一環であったが、ボズワースの場合は、

アフガニスタンや中東和平を担当した他の特使と比較して、状況の抜本的な打開を必ず しも期待されたわけではなく、政策調整や感触を探ることを期待されていたに過ぎない。

しかし、そのボズワースも退任し、現在ではグリン・デービースに特別代表のポストが 引き継がれているが、政策に大きな変化はない。その結果、オバマ政権の対北朝鮮政策

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は基本的には、能動的に状況に働きかけていくというよりかは、やむをえず北朝鮮が作 り出した状況への反応という色彩が強くなってしまっている。「戦略的忍耐」がただ「な にもしない」ことに転化し、それが北朝鮮の核保有を既成事実化してしまう危険性がな いとはいえない。また、対北朝鮮政策が政権内で、一本化されていないという見方もあ る。交渉、制裁の実施、人道問題がそれぞれ有機的に連携しているというよりかは分岐 してしまっているという批判もある。オバマ政権は明らかに手詰まりの状態で、この手 詰まりの状態を打開することそれ自体が目的になっているという矛盾に直面している。

北朝鮮のハードランディングという最悪シナリオも念頭に入れながら、核開発のロール バックという最適シナリオを目指し、現実には「放置」と「対話それ自体の自己目的化」

というオプションの間の着地点を模索しつつ、北朝鮮への不信感を高める日韓両同盟国 の信頼を失わず、さらに中国を地域秩序の「ステークホルダー」として巻き込んでいく 方程式を考案することは容易ではないだろう。

  オバマ政権は大胆にアジア太平洋地域重視の方向に舵をきったにもかかわらず、その 政策の中で北朝鮮の場所はない。中国はアメリカにとって、潜在的な脅威であり、アメ リカはその台頭に備えるという意識は確実にあるものの、中国はアメリカにとって大き な可能性でもある。オバマ政権は、依然として米中関係を(対立局面も含め)最重要の 二国間関係と認識しており、その限りにおいては、アメリカのピボットの大部分は「対 中政策」が占めている。しかし、北朝鮮は、アジアにアメリカが自らの将来を投射しよ うとする際に、事態を不安定化させるノイズのような存在としてしか認知されていない。

北朝鮮は、この状態から脱するべく、単なるノイズから明確な脅威としてアメリカに認 識されることによって、アメリカと向き合おうとしている。このような低レベルの心理 戦が続く限り、事態の打開を想定することは難しいだろう。

  ひとつ気になるのは、クリントン政権、ブッシュ政権ともに、政権末期に一気に対話 の方向に舵を切っていることである。オバマ政権は、おそらくクリントン政権、ブッシ ュ政権以上に、直感的には対話を志向する政権であるといえる。ドニロンは、アメリカ は「同じ馬を二度買うことはしない」と言明しつつも、このまま事態が打開せず、北朝 鮮が挑発の度合いを高めていけば、ドニロンが提示した原則が事態に流されるなかで緩 んでいく可能性がまったくないわけではないだろう。というのも、事態がこのまま硬直 していけば、ある時点で「戦略的忍耐」は「戦略的無抵抗」に転化し、オバマ政権とし ても許容できない状況になっていく。北朝鮮が最終的にはアメリカと交渉したいのであ れば、アメリカが交渉カードを切らざるをえなくなるような事態も生じうるだろう。い ずれにせよ、オバマ政権二期目が発足してもアメリカの対北朝鮮政策の輪郭ははっきり とは見えてこないのが現状である。      (2013年3月25日記)

参照

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