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公 害 問 題

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(1)

釜石 におけ る 公害問題

1降下ばいじんによる大気汚染の実態を中心として

晴 山

      目  次

        一 はじめに

        二 大気汚染防止の法体系

         一 大気汚染防止法制の推移

         二 降下ばいじんの定義

         三 降下ばいじんに対する法的規制のしくみ

        三・釜石における降下ばいじんによる大気汚染の実態

         一 はじめに

         二 降下ばいじんの測定のしくみ

         三 降下ばいじん量の経年変化

         四 他都市との比較

         五 まとめ

1釜石における公害問題一三七

(2)

−釜石における公害問題一

        四 降下ばいじんによる被害の実態

         一 被害に関する実態調査の状況

         二 苦情処理状況からみた被害の状況

        一二 松原地区における被害の実態

        五 むすび 三八

はじめに

 本稿は︑降下ばいじんによる大気汚染問題に焦点をあてながら︑岩手県釜石市︵以下釜石という︶における公害問題を

検討しようとするものである︒いうまでもなく︑一般に公害といわれるものの中には多様な種類が含まれており︑釜石に

おいても︑大気汚染による被害とともに︑水質汚濁︑騒音︑悪臭などによる住民生活への被害がたびたび指摘されてきた︒

他方で︑大気汚染だけとってみても︑その原因物質と汚染の態様は極めて多様であり︑これを歴史的推移という観点から

みれば︑降下ばいじんによる汚染はもはや古典的なものとなりつつあり︑最近.︑は︑いおう酸化物や窒素酸化物︑さらに

は自動車排出ガスのような移動発生源による汚染に問題の焦点が移ってきているといわれている︒釜石においても︑降下

ばいじんによる大気汚染の問題は最近ではほとんど関心を引いていないといってよい状況にある.︑それにもかかわらず︑

本稿が︑降下ばいじんによる大気汚染問題に対象を限定して﹁釜石における公害問題﹂というテーマを扱おうとする意図

について︑あらかじめ若干の説明を加えておきたい︒

 本稿が右のように対象を限定をすることの理由は︑釜石研究全体の中での本稿の位置づけとかかわっている︒すなわち︑

(3)

本稿は︑福島大学地域開発研究会による共同研究﹁企業合理化過程における産業都市の経済的社会的変動に関する研究:

i釜石市を事例として一﹂の一環として︑筆者が︑その専門である行政法学の立場から︑公害問題を素材として取り組

んだ釜石市行政分析のひとつをなすものである︒右の共同研究は︑直接的には新日鉄釜石製鉄所︵以下金鉄という︶の合

理化問題が地域社会に与える影響を学際的観点から検討しようとするものであるが︑その前提には︑より広いパースペク

ティブとして・金鉄という巨大企業が存在する代表的な企業城下町である釜石における﹁地域経済﹂︑﹁自治体行財政﹂︑       ハ マ﹁住民生活﹂の相互のかかわり合い11相互の対応関係を多様な側面から解明するという視点が設定されている︒本稿が公

害問題をとりあげようとする意図は︑右のような視.黒に︑砿って︑﹁釜鉄﹂︵地域経済の中︑Oであるという意味での︶︑﹁自治

体行政﹂ ︵市行政および付随的に県行政︑なおここでは財政の問題はとりあげない︶︑﹁住民生活﹂の相互のかかわり合い

と対応関係を︑公害問題という具体的素材を通して検討しようとするためであり︑したがって︑釜石における公害問題そ

れ自体を全般的網羅的に検討することに本稿の主眼があるわけではない.︑

 右のような観点から釜石の公害問題をとりあげようとする場合には︑降下ばいじんによる大気汚染の問題が格好の素材

を提供することになる︒というのは︑後にみるように︑かつて釜石は降下ばいじん量では世界一の都市といわれ︑そ

れによる大気の汚染およびその住民に及ぼす被害の深刻さが︑戦後の釜石における大きな社会問題を形成してきたからで

ある︒釜石において市の公害行政が本格的に発足するのも︑また︑釜鉄が曲りなりにも公害問題を独自の課題として意識

し︑その対策にとりくむのも︑この問題を直接の契機としてである︒また︑とりわけ注目すべきことは︑戦後の釜石にお

ける唯一といってよい公害反対の住民運動がこの問題をめぐって展開されたということである︒いわば︑降下ばいじんに

よる大気汚染問題は︑公害問題に対する行政︑企業︵釜鉄︶︑住民の三者の対応のあり方−従ってまた︑三者相互のか

かわり合い一が最も特徴的典型的に現われてくる問題であるといえる︒

   −釜石にわける公害問題1       三九

(4)

   一釜石における公害問題−      四〇

 筆者が降下ばいじんによる大気汚染問題に対象を限定して釜石の公害問題を取り扱おうとする意図は︑以上にのべた通

りである︒しかし︑右のような観点から釜石の公害問題をとりあげるためには︑まず︑釜石における降下ばいじんによる

大気汚染の実態とそれによってひきおこされた住民の被害の実態を出来るだけ詳しく明らかにしておく必要がある︒そこ

で︑本稿では︑紙数の都合により︑さしあたり右の点︑すなわち釜石における降下ばいじんによる大気汚染およびそれが

もたらした被害の実態を明らかにすることに課題を限定することとした︒本稿で明らかにされるであろう大気汚染とそれ

による被害の実態をふまえたうえで︑降下ばいじんによる大気汚染問題に対する自治体行政︑釜鉄︑住民の対応がいかな

るものであったか︑そして︑それを通して右の三者がどのような具体的なかかわり合いを示すことになるかは︑引き続き

続稿においてとりあげることとしたい︒

 ︵1︶ 福島大学地域開発研究会による釜石研究の課題と視角については︑兼田繁﹁釜石研究の課題と概要﹂ ﹃東北経済﹄七二号︵一

   九八二年一︑一一月︶において明らかにされている︒本稿とのかかわりでは︑とくに一七頁の﹁釜石調査の分析枠組﹂の図を参照され

   たい︒

二 大気汚染防止の法体系

 降下ばいじんによる汚染と被害の実態に入る前に︑そもそも汚染原因物質としての降下ばいじんとは一体どのようなも

のであるのか︑また︑降下ばいじんに対する規制は現行法上どのようなしくみになっているのかという点について︑あら

かじめ概略的にのべておくこととしたい︵二︑三︶︒また︑続稿において釜石における公害行政の歴史を扱う予定にして

いるが︑そのための予備的作業という意味も兼ねて︑少し本題からそれることになるが大気汚染防止に関する戦後の法制

度の歴史についてもここで簡単に触れておくこととする︵一︶︒

(5)

一 大気汚染防止法制の推移

 H ばい煙規制法の制定

 わが国において大気汚染に関する規制を盛り込んだ最初の法律は︑一九六二年︵昭和三七年︶の﹁ばい煙の排出の規制

等に関する法律﹂ ︵以下ばい煙規制法と略す︶である︒それ以前にも︑大都市を中心とする一部の工業地帯における大気

汚染はすでにかなりの進行を示していたが︑当時は︑わずかに東京・大阪など数都府県において公害防止条例に基づく規

制がなされていたにとどまり︑法律による全国的規制の必要性は未だ十分に意識されてはいなかった︒しかし︑昭和三︵一︶年

代前半の重化学工業化に伴うばいじんやいおう酸化物等による大気汚染の激化とその全国的広域化は︑ようやく全国的規

模での規制の必要性を自覚させることとなる︒こうした背景の中で制定されたのが︑右のばい煙規制法である︒同法は︑

大気汚染の著しい地域を政令で﹁指定地域﹂に指定することとしたうえで︑それらの指定地域について︑①厚生大臣およ

び通産大臣がばい煙発生施設の種類ごとに排出基準を定めなければならないこと︑②右の排出基準に適合しない施設の届

出があった場合において知事は施設に関する計画の変更・廃止を命じうること︑③排出基準に適合しないばい煙を発生し

た場合において知事は施設の改善命令.一時使用停止命令を発しうること等を定め︑これらの措置を通じて大気汚染によ

る危害を防止することを期したものであった︒

 ばい煙規制法は︑指定地域について初めて全国一律の規制を加えたものであったが︑大気汚染の効果的防止という観点

からすれば︑その内容は大きな問題を含んでいた︒すなわち︑①同法は︑指定地域のみを対象とし︑それ以外の地域を規

制の対象としていないこと︑②同法による規制は︑個別発生源の排出濃度の規制にとどまり︑地域全体の環境保全という

観点がないこと︑③自動車排出ガスや電気工作物が規制対象外とされていること︑④事後的規制に重点が置かれ︑事前予

防の観点がないこと︑などである︒しかも︑より重大な問題として︑同法の規制の要をなすべき排出基準そのものが︑

   i釜石における公害問題;       四一

(6)

   −−釜石における公害問題一       四一︑

       ヤ  ヤ  ゐ  ヤ  ヤ  ヘ  ヤ  う﹁具体的な環境基準すなわち公衆衛生学上の許容限度から帰納的にきめられたものではなく︑もっぱら企業の経済的負担       ︵1︶ということを考憲して定められたものである﹂という点を指摘しておかなければならない︒排出基準の設定という一見︑画

期的な措置も︑その具体的内容が右のようなものであったとすれば︑それは︑その限度までは排出してもよいという意味

で公害発生の許容基準として機能することになる︒︑総じて︑同法は︑国民の健康の保護という観点よりも﹁産業の健全な

発展﹂ ︵同法一条︶という観点によって支配された産業強化育成法とでもいうべきものであり︑大気汚染の進行に対する       り り効果的歯止めとしての機能はおよそ期待しうるものではなかった・

 口 大気汚染防止法の制定と改正

 一九六︵︶年代の公害問題の深刻化は各地における住民運動の未曽有の高揚と革新自治体における先進的な公害防止行政

の展開を導くこととなる︒こうした背景の下で︑一九六七年︵昭和四二年︶には公害対策基本法が制定されるに至る︒同法

は︑生活環境の保全と経済の健全な発達との調和を請ったいわゆる経済調和条項︵公害対策基本法一条二項︶に象徴され

る基本的欠陥を有しながらも︑公害防止の基本的かっ総合的施策の策定・実施を国の義務として明示した点︵同法四条︶

および大気汚染を初め各種の公害について環境基準という考え方︵後述︶を打ち出した点︵同法九条︶で︑公害法の歴史

における一つの︑画期をなすものであった.︑この公害対策基本法の制定に伴ってばい煙規制法も廃虚され︑新たに大気汚染

に対する規制を定めた大気汚染防止法が制定されることとなった︵昭和四三年︶︒しかし︑この大気汚染防止法は︑汚染の

著しい地域につき特別の排出基準を適用できることとしたこと︑および新たに自動車排出ガスに関する規定を盛り込んだ

こと︑の二点を除き︑旧ばい煙規制法の内容をほとんどそのまま踏襲したものであった︒したがって︑新法の制定にもかか

わらず︑多くの主要都市においてはその後も依然として汚染は強まる傾向を示し︑その後における住民運動の高揚と一連

の公害訴訟における原告側の勝訴は︑公害対策の抜本的強化を求める世論の大きなうねりを作り出すこととなる︒こうし

(7)

て︑一九七ご年︵昭和四五年︶のいわゆる公害国会において︑公害対策基本法の改正をはじめ一連の公害立法の成立をみ︑

大気汚染防止法にも大幅な改正が加えられることとなった︒これらの一連の公害立法の成立は︑公害対策基本法および大

気汚染防止法における経済調和条項の削除に象徴されるように︑従来の経済発展偏重の公害行政から国民の健康保護と環

境の保全を第一義的目的とする公害行政への転換を一一少なくともその理念において一⊥示すものであった︒

 大気汚染防止法は︑その後数度の部分的改定を経て現在に至っており︑現行法上大気汚染を規制するための基本的法律

として位置づけられている︒

二 降下ばいじんの定義

 大気汚染防止法︵以下︑条文の引用の場合には単に法と略す︶は︑その規制対象物質を﹁ばい煙﹂︑ ﹁粉じん﹂︑ ﹁自動

       東排出ガス﹂の三つに大別し︵図1素ア照︶︑そのそれぞれについて規制措置を定めている︒      質       ︑

図1 大気汚染防止法の規制対象物質      …いおう酸化物

一ばい煙一       一降下ばいじん      一ばいじん一:

       一浮遊粒子状物      一有害物質

i一イじん

…一自動車排出ガス

−釜石における公害問題1 ﹁ばい煙﹂とは︑燃料その他物の燃焼や分解に伴って発生する物質であり それには︑①いおう酸化物︑②ばいじん︑③有害物質の三種類が含まれる︵法二条一項︶.︑①は特に説明する必要はない︒③は︑有害物質一般ではなく︑同法および政令によって具体的に定められた特定の有害物質のことであり︑現在はカドミウム︑塩素︑弗化水素︑鉛︑窒素酸化物がそれに指定されている.︑②については後にのべる︒次に︑ ﹁粉じん﹂とは︑物の破砕などの機械的処理に伴い発生する粒子状物質の総合体を指していう︵法二条四項参照︶︒粒子状物質の総合体という点ではばいじんと同じであるが︑ばいじんが物の燃焼に伴って発生するのに対しで\粉じんは物の機械的処理に伴って発生するという点で︑両者は異なる︒

﹁自動車排出ガス については︑特段の説明は要しないであろう︒

       四三

(8)

   1釜石における公害問題一       四四

 本稿でとりあげる降下ばいじんは︑右の﹁ばい煙﹂の中のばいじんの一形態である︒ばいじん︵煤塵︶とは︑物の燃焼

       ヤ  やまたは熱源としての電気の使用に伴い発生するすすその他の粒子状物質をいう︒日常用語としては︑粉じんと同義で用い

られることも多いが︑法律上は両者は異なる概念として用いられている︒ばいじんには︑焼燃等に伴い遊離される未燃炭素

︵すす︶︑焼燃後の残留灰物︵燃えがら︶のほか︑製鋼に伴って発生する酸化鉄の微粒分︑セメントキルンから生ずるダ

スト等多様な物質を含んでいるが︑ばいじんという場合には︑これらの個々の構成物質に着目するのではなく︑それらの

総合体を指していう︒なお︑ばいじんは︑いおう酸化物や有害物質と一緒に排出されることが多いが︑いおう酸化物や有       ハヨレ害物質は︑総合体としてのばいじんとは別個に︑個々の物質ごとに規制を加えられることになる︒ばいじんのうち粒子の

小さいもの︵粒径一〇ミクロン以下のもの︶は大気中に浮遊しており︑これを浮遊粒子状物質と呼んでいる︒これに対し

て︑比較的粒子の大きいものは︑いったん大気中に排出された後に雨水とともにまたは単独で地表に降下して堆積するこ

ととなる︒これが︑一般に降下ばいじんと呼ばれるものである︒

 次に︑降下ばいじんが人体および日常生活に対していかなる被害をもたらすかについて︑簡単にふれておくこととする︒

降下ばいじんをはじめ大気中に排出される種々の物質による大気の汚染が人の健康および生活環境︑さらには自然環境に

対して与える影響は︑極めて多様である︒一般に︑大気汚染が健康に及ぼす影響としては︑慢性気管支炎・気管支ぜん息       ︵4︺・ぜん息性気管支炎・肺気しゅなどの呼吸器系の疾患があげられるが︑以上の他に︑小児の発育不良︑紫外線不足による      ハ リビタミンD欠乏症︵くる病など︶︑トラコーマ罹患率の増大︑一般健康状態の低下が指摘されている︒また︑生活環境への

影響としては︑農作物等への被害︵生育障害・収穫量0低減・品質の低下等︶︑着衣や洗濯物の汚れ︑トタン屋根の腐蝕︑

金属製品の腐蝕︑繊維や皮製品のぜい弱化︑各種建造物外壁ペンキ塗装の変質︑建物自体の耐用年数の縮減等の各種の被

      パ ロ       ロ害があげられる︒これらの被害は︑降下ばいじんのほかに︑いおう酸化物︑窒素酸化物等の有害物質︑自動車排出ガスな

(9)

ど種々の物質の複雑な相乗作用の結果として現われるものである︒したがって︑これらの被害が降下ばいじんのみによる

被害ということはできないが︑ここでは︑降下ばいじんがこれらの被害発生の原因物質のひとつであるということ︑およ

び生活環境への被害については降下ばいじんによる影響が極めて大きい比重を占めているということを確認しておくこと

としたい︒釜石の場合︑釜鉄から排出される﹁赤い煙﹂が多くの被害をもたらしてきたことについては︑後にのべる通り

である︒三 降下ばいじんに対する法的規制のしくみ

 右にのべたように︑大気汚染防止法は︑ ﹁ばい煙﹂︑ ﹁粉じん﹂︑ ﹁自動車排出ガス﹂のそれぞれについて異なった規制

措置を定めているが︑ここでは︑降下ばいじんを含む﹁ばい煙﹂の規制のしくみを概括的にみておくこととしたい︵図2

参照︶︒ H 排出基準の設定

 ばい煙の規制の中核をなすのは︑排出基準の設定である︒排出基準は︑ばい煙の種類毎に総理府令で定められる︵法三

条一項︶︒このうち︑ばいじんの排出基準は︑﹁ばい煙発生施設の種類と規模毎に︑排出ガス一立方メートルに含まれるば

いじん量として定められている︵大気汚染防止法施行規則四条・別表二︶︒この排出基準という概念は︑後にみる環境基

準とは異なり︑それを超えるばい煙を排出してはならないという意味での許容限度であり︑それに適合しない場合には︑

以下にみるような行政上の措置がとられることとされている︒

 ①排出の制限−ぼい煙排出者は排出基準に適合しないばい煙を発生させてはならず︑この義務に違反した者は六ケ月

以下の懲役または一∩︶万円以下の罰金に処せられる︵法二二条一項︑三三条の二︶︒

 ②計画の変更・廃止命令−ばい煙発生施設を設置する場合には知事に届け出なければならないこととされているが

   1釜石における公害問題−       四五

(10)

図2 大気汚染防止法によるばい煙の規制のしくみ

ゴよ︑暗し 硫黄酸化物  (21①)

ばいじん  (21②)

 害物質  (21③)

特定有害物 質(3H④)

 (5の21)

D

ばい煙発生

設(2皿)

・届出義務

(6)(8)

排出制限

(13)

測定義務

(16

(5の21)

出基準f露準計画変更蕉L罰則霊

雄勝騰蝿1

    (3皿)       一       害        問        準遵守勧告

       題 燃料規制地域一燃料使用  (15115の21)  罰則  1 基準等(15) 基準(15)   準遵守命令  (34皿)

      幽

指{ばい煙総量1計画     (5の21,5の3)

   工 、のば一総量規制基準

・垂『塵

      (5の2皿)

L一一」鍵 一    (15の2)

常時監視一公表  (22)(24)

協力要請    (23・1)

緊急措置勧告    (23・3)

緊急措置命令    (23・4)

交通規制の要請    rワq・4、

罰則(34①)

  (35①)

罰則

(33の21②)

粉じん(2N)

 動車排出

ガス(2U) 四山ハ

出所:

注:1.

 環境庁編『環境行政の動向』 (1980,官報通信社)487頁より。

 図に掲げた項目以外に,経過措置(7,18の2・H),立入検査(26),事務の委任   (31),条例との関係(32)等について定めてある・

3.図中の=は,昭和49年6月の大気汚染防止法の一部改正による総量規制制度を意味  する。

2、図中のカッコ書は条文である。例(21②)は,法第2条第1項第2号を意味する。

(11)

︵法六条︑届出を怠った場合の罰則につき法三四条参照︶︑知事は︑届出があった場合において︑当該施設が排出基準に

適合しないと認めるときは︑当該施設の使用方法等に関する計画の変更または当該施設の設置に関する計画の廃止を命ず

ることができる︵法九条︶︒

 ③改善命令等−知事は︑排出基準に適合しないばい煙を継続して排出するおそれがある場合には︑排出者に対して︑

当該施設の使用方法等の改善を命じ︑または使用の一時停止を命ずることができる︵法一四条一項︶︒

 口 上のせ基準および総量規制

 右の排出基準は全国一律に適用されるものであるが︑大気汚染防止法は︑右の基準では不十分な区域について︑都道府

県が条例によりより厳しい基準︵いわゆる上のせ基準︶を定めることを認めている︵法四条︶︒しかし︑ばいじんについ       ︵7︶て上のせ基準を定めているところは全国で六県だけであり︵昭和五二年現在︶︑岩手県は未設定である︒

 他方で︑大気汚染防止法は︑工場密集地域について総量規制基準を定めうる旨規定している︵法五条の二︶︒ これは︑

排出基準が個々の施設毎の基準であるため︑工場密集地域ではいかに個々の施設が排出基準を守っても当該地域における

総ばい煙量の低下につながらないことから︑﹂一九七四年の改正の際に新たに導入された方式である︒しかし︑現在総量一規

制基準が定立されているのは︑いおう酸化物と窒一乗酸化物の二つの物質のみであり︵大気汚染防止法施行令七条の二︶︑

ばいじんには総量規制方式は採用されていない︒

 国 環境基準

 大気汚染防止法・水質汚濁防止法などの各種公害法の基本となる公害対策基本法は︑ ﹁政府は︑大気の汚染︑水質の汚

濁︑土壌の汚染及び騒音に係る環境上の条件について︑それぞれ︑人の健康を保護し︑及び生活環境を保全するうえで維

持されることが望一ましい基準を定めるものとする﹂ ︵九条一項︶としている︒これが環境基準といわれるものである︒こ

   −釜石における公害問題一      四七

(12)

   1釜石における公害問題一       四八

の環境基準は︑それぞれの個別排出源に対する直接的規制を趣旨とする前述の排出基準とは異なり︑一般住民の健康の保

護および生活環境の保全のために達成することの望ましい目標値であるとされている︒それ故︑現在の行政法学にお

いても︑一般に︑環境基準は﹁あくまで行政の努力目標を示す指標にすぎず︑直接国民の具体的な権利義務を定める法規      ︵8︶としての性格をもつものではない﹂と解されている︒しかし︑いったん環境基準が定められれば︑政府は︑その環境基準

の達成のために公害防止に関する諸施策を総合的かつ有効適切に講ずる努力義務を負うこととされており︵同条四項︶︑

環境基準は︑その内容が厳しいものである場合には︑公害防止に大きな役割を果たしうるものということができる︒

 ところで︑現在︑大気汚染に関する環境基準としては︑二酸化いおう︑一酸化炭素︑二酸化窒素︑浮遊粒子状物質︑光

化学オキシダントについて定められている︒ばいじんに関しては︑右にあげたように浮遊粒子状物質についての環境基準

は定められているが︑降下ばいじんについては環境基準は設定されていない︒その理由は定かではないが︑浮遊粒子状物

質についての環境基準の設定の理由として︑それが人の健康上有害な影響を与えることfすなわち︑浮遊粒子状物質は

大気中に長期間滞留し︑かつ粒子が小さいため鼻腔および咽喉頭で補足されずに気道および肺胞に汚着し︑呼吸器系に大      ︵9︶きな影響を与えること一があげられていることから推測すれば︑地表に降下する降下ばいじんについては︑右のような

健巖上の影響がそれ程顕著ではないと政府が判断しているためであろうか︒あるいは︑また︑降下ばいじんによる汚染は

もはや過去のものとなっており︑現時点では環境基準を設定して規制するほどの必要性は薄れてきていると判断している

ためであろうか︒いずれにせよ︑その理由についての説得的説明は見当たらない︒

 このように︑降下ばいじんについては︑環境基準が設定されていないために︑どの程度の汚染に対してどの程度の健康

および生活環境上の影響が生ずるのか︑すなわち汚染度と被害の相関関係は︑十分に明確にされているとはいいがたい︒      ︵10︶ただ︑ごく大まかな汚染の程度を示す目安としては︑次のような区分が用いられている︵数値は一平方キロメートル当た

(13)

りの一ケ月の降下量を示す︶︒

 ・一〇トン未満⁝⁝⁝⁝⁝⁝・−⁝⁝i軽度の汚染

 ・一〇トン以上〜二〇トン未満⁝⁝⁝;中程度の汚染

 ・二〇トン以上〜三〇トン未満⁝⁝:⁝やや高度の汚染

 ・三〇トン以上⁝⁝⁝・⁝⁝⁝・⁝⁝⁝⁝高度の汚染

右の区分は︑汚染の具体的内容が不明確であり︑かつ区分の科学的根拠も必ずしむ明確なものではないが︑以下でとり

あげる釜石における降下ばいじんによる汚染の実態を評価するうえで一応の目安として参考になる︒

 ︵1︶ 野村好弘﹁大気汚染の規制﹂加藤一郎編﹃公害法の生成と展開﹄ ︵岩波書店︑一九六八年︶七一頁︒

 ︵2︶ ばい煙規制法の本文にあげたような性格は︑同法の法律案要綱が当初は厚生省主導の下で公衆衛生上の見地から策定されたに

   もかかわらず︑経団連の強力な反対によって骨抜きにされ︑最終的には通産省主導の下で産業の健全な発達を図るという観点か

   ら法案化され成立した︑という同法の成立過程と深くかかわっているといわれる︒この点も含めばい煙規制法の制定経過につい

   ては︑野村前掲論文五九−六八頁参照︒

       ︑      o︵3︶

︵4︶

︵5︶

︵6︶

︵7︶

︵8︶  以上の点につき 環境庁大気保全局編﹃新訂・大気汚染防止法の解説﹄ ︵新日本法規︑一九七二年︶七五頁︑八三一四頁参照 同前八頁︒ 野村前掲論文五〇頁︒ 環境庁大気保全局編前掲書一一−三頁︒ 環境庁長官官房編﹃最新・環境行政の動向﹄ ︵官報通信社︑一九八○年︶四九六−八頁による︒ 原田尚彦﹃環境法﹄︵弘文堂︑一九八一年︶一〇一頁︒なお︑東京地裁の昭和五六年九月一七日の判決︵﹃判例時報﹄一〇一四

号二六頁以下︶も︑同様の理由から二酸化窒一素に係る環境基準を改定する告示の行政処分性を否定し︑原告住民の訴えを却下し

一釜石における公害問題一       四九

(14)

 −釜石における公害問題;

 た︒︵9︶ 環境庁大気保全局編前掲書四〇三頁︒

︵10︶釜石市民生部環境保全課﹃釜石市の公害調査﹄第一九報︵一九七九年度︶一〇頁︒ 五〇

三 釜石における降下ばいじんによる大気汚染の実態

一 はじめに

 釜石における大気汚染の歴史の中で︑その汚染の程度および被害の大きさの点で最も注目されるのが降下ばいじんによ       パ ロる汚染であった︒かつて釜石は︑ ﹁降下バイジン量では︑世界一の都市﹂とさえいわれ︑その被害の深刻さは古くから注

目されてきたところである︒釜石における公害問題をめぐる行政・住民・企業︵釜鉄︶の対応関係も︑降下ばいじんを素

材とすることによって最もよくみてとることができる︒そこで︑本節では︑釜石における降下ばいじんによる大気汚染の

実態を︑いくつかの資料を参考にしながら歴史的にフォローしてみることとしたい︒

 なお︑釜石において公害行政が市行政の独自の分野として位置づけられるようになるのは︑一九六〇年︵昭和三五年︶

頃からである︒翌一九六一年︵昭和三六年︶には降下ばいじんの測定が開始され︑一九六三年︵昭和三八年︶からは浮遊粉

じん︵浮遊粒子状物質︶と二酸化いおうの測定が加わり︑さらに翌年からは水質汚濁︑騒音等の調査が開始されている︒こ

れらの調査結果は︑毎年一回年報の形で公表されている︵この年報は︑第一報2九六一年︺から第三報畳九六四年︺

までは﹃釜石市における大気汚染﹄︑第四報︹一九六五年︺以降は﹃釜石市の公害調査﹄という標題が付せられている︶︒

この年報︵以下︑公害年報という︶は︑釜石の公害に関する基本的資料としては唯一のものである︒以下の叙述に当たっ

ては︑主にこの公害年報を参考とした︒

(15)

二 降下ばいじんの測定のしくみ

 降下ばいじんによる汚染の実態をみるうえで最も基礎的なデータは︑実際の降下ばいじん量である︒釜石においては︑

右にのべたように一九六一年︵昭和三六年︶からその測量が行なわれているが︑あらかじめ︑釜一石における降下ばいじん

の測定のしくみをのべておく︑一 としたい︒

 日 測定地点

 測定地区は年によって変化がみられるが︑初年度以降毎年測定されている地区として︑①松原町︑②大渡町︑③浜町︑

④東前町︑⑤上中島町︑の五地区がある︵ただし︑④は一九七九年.︵昭和五四年︶以降は測定されていない︶︒これらの各

地区内において測定機が設置されている具体的地点は︑古い時期と最近とでは異なっている地区もあるので︵たとえば︑

松原地区の測定点は一九七〇年以降は大久保鉄工所であるが︑フてれ以前は高勉商店となっている︶︑必ずしも同一地点に

おける測定値とはいえないが︑同一地区における測定値としては年度間および各地区間の比較は可能である︒

 右の測定地点について︑その用途地域をみるならば︑一九八O年︵昭和五五年︶現在で︑①④が準工業地域︑②③が商      ︵2︶業地域︑⑤が工業地域となっている︒ただし︑これは都市計画上の区分であって︑ばい煙発生源との関係をそのまま表わ

すものではない︒釜石におけるばい煙の主要発生源はいうまでもなく高炉・コークス炉・火力発電所などの集中する金鉄

の工場敷地であり︑そこからの距離をみると︑①が七〇〇メートル︑②が五〇〇メートル︑③が一︑一〇〇メートル︑④      ︵3︶が一︑六〇〇メートル︑⑤が二︑一︵︶Gメートルとなっている︵図3参照︶︒

 口 測定方法

 測定は︑デポジット・ゲージ︵降下ばいじん計︶を用いて行なわれる︵図4参照︶︒測定値は︑一ケ月毎に一平方キロ

メートル当たりに降下した重量︵トン︶で示される︵○○叶\厚目憎\泣︵ヨ︶︶︒

   1釜石における公害問題−      五一

(16)

1釜石における公害問題1五二

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(17)

図4 デポジット・ゲージ A

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A:金網 B:ガラス製捕集漏斗 C:ゴム管(粘着テープをまく)

D:逆立漏斗 E:捕集瓶 F:スタンド

出所:庄司光=宮本憲一『恐るべき公    害』(岩波書店,1964年)98頁    より。

三 降下ばいじん量の経年変化

 測定が開始された一九六一年︵昭和三六年︶から一九八○年︵昭和五五年︶までの毎年の降下ばいじん量を示したもの

が表1および図5である︒最高︑最低とあるのは︑その年の中で降下ばいじん量の最も多かった月と少なかった月を︑平

均とあるのは一年間の平均値を示したものである︒

 ここから︑釜石における降下ばいじん量について︑さしあたり以下のことを確認することができる︒

 ①まず最初に︑全体として釜石における降下ばいじん量が極めて多いということが指摘できる︒平均値でみると︑昭和

三六年から昭和四六年までの間で三〇トンを割った年は三九年︑四四年︑四五年だけであり︑あとは三〇トンを超える値

を示している︒前にふれた汚染の目安からすれば︑昭和四六年まではほとんどの年が高度の汚染状況の下にあったこ

とになる︒

 の次に︑各地区間の降下ばいじん量を比較してみると︑五地区の中で松原地区の数値が異常な高さを示していることが

   一釜石における公害問題一       五三

(18)

一釜石における公害問題−

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(19)

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i釜石における公害問題1 象・認

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(20)

r釜石における公害問題1

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注目を引く︒同地区では昭和四六年まではすべて五〇トンを超え︑多いときには九Cトンから一一〇トン以上にまで達し

ている︒ 汚染の目安からは推し測ることのできない文字通り想像を絶する値であるといえる︒全体として下降傾向を

示す昭和四七年以降をみても︑最近の三年間を除き二︹︶〜三〇トンを示しており︑かつてと比較すれば顕著な減少をみせ

てはいるものの︑なお最近に至るまでやや高度な汚染状態の下に置かれていたことがわかる︒これに対して︑上中島︑

浜町︑東前の三地区の降下ばいじん量は︑昭和三六年〜昭和四七年は一Cトン台︑それ以降は一〇トン以下となっており︑

松原地区と比較すれば著しく低い数値を示している︒それにもかかわらず釜石全体の平均値が高くなっているのは︑ひと

えに松原地区の数値の異常な高さのためである︒すなわち︑松原地区の降下量の多さが全体の平均値を大幅に引き上げて

いることになる︒このことは︑釜石における降下ばいじんによる汚染の問題が特定の地域における局地的汚染にあること

を示している︵ただし︑このことは汚染が松原地区のみに集中していることを意味するわけではない︒測定されていない      ︵4︶地点で松原地区と同様の高汚染状態に置かれた地点がある一たとえば︑港町など一と推測されるからである︶︒大渡

地区の数値は松原地区に次いで高く︑釜石の平均値をやや上回っている︒

 ⑥経年変化という点からみると︑まず︑平均値では昭和三六年〜四六年まではかなり高い水準のまま横ばい傾向︵ない

(21)

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1釜石における公害問題一五七

(22)

   1釜石における公害問題一       五八

しはやや下降傾向︶にあるが︑昭和四七年以降は︑降下量が低下しつつあることがかなり明確に読みとられる︒昭和四八

年以降はすべて二︵﹂︶トンを大きく割り︑五三︑五四年には一Cトン以下に下っている︒また︑松原地区をとってみても︑

昭和四七〜四八年から大幅に低下しており︑それ以後の降下ばいじん量は︑他地区とくらべるとなお大きな数値ではある

が︑かつてと比較すれば顕著な減少傾向を示している︒最近の三年間は一Cトン台にまで下っている︒以上のことから︑釜

石における降下ばいじん量は︑昭和四六〜四七年を境に大幅に減少していることがわかる︒

 ㈲金鉄からの距離と降下量との相関関係という観点からみてみると︑金鉄に近い松原︑大渡両地区の降下量が極めて多

く︑釜鉄から比較的離れている他の三地区の数値がかなり低くなっていることがわかる︒この点からも︑主たる発生源が

      釜鉄であることがわかる︒ただし︑降下ばいじん量は風向によっ        E     E     E        N       S        E

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出所:『公害年報』第20報24頁より。

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て大きく左右されるために︑発生源からの距離と単純な比例関係

を示すわけではない︒釜石の年間を通じた風向は︑南←北︑北西

←南東の風向が強く︑松原地区の数値が釜鉄により近接した大渡

地区のそれよりもかなり高くなっているのは︑この風向の影響で

あることがわかる︵図6参照︶︒

 ㈲資料からわかるのは昭和三六年以降の数値であるが︑それ以

前はどうであろうか︒資料がないので正確な数値については解明

しようがないが︑一定の推測は可能である︒すなわち︑昭和三六

年以降全体として降下量が低下してきたことの理由としては︑法

律による規制の強化やそれに伴う釜鉄による施設の改善をはじめ

(23)

として種々の要因をあげることができるが︵この点については︑続稿においてとりあげる予定である︶︑このような要因

が存在しなかった昭和三五年以前一昭和三五年以前は降下ばいじんを規制する法律さえ存在せず︑事実上その排出は野

放し状態にあった一の降下ばいじん量が︑それ以降の降下ばいじん量よりも少なかったという推測は成立しがたい︒し

たがって︑昭和三五年以前は︑昭和三六年時点の降下量に近いかあるいはそれを上回る降下量であったと推測することが

できる︒四 他都市との比較

 右にみた釜石における降下ばいじん量がいかに高度の汚染状態を示すものであるかをみる一つの素材として︑他都市と

の比較を示しておこう︒図7は︑昭和三六年頃における日本および世界の主要都市と釜石との降下ばいじん量の比較を示

したものであり︑図8は昭和四二年までの日本の主要都市と釜一石との降下ばいじん量の比較を示したものである︒資料の

制約でこれ以上の比較はできないが︑この二つの図からでも︑昭和四〇年代初めに至るまでの釜石の降下ばいじん量が他

都市と比較していかに多いものであったかを十分にうかがうことができる︒すなわち︑図7・図8からは︑①昭和三六年頃

の釜石tとりわけ工業地区︵ここでいう工業地区は都市計画法上のものというよりも一般的な意味で用いられていると

思われ︑図に示された降下ばいじん量からみて松原地区を指していることは明らかである︶のi︑降下ばいじん量は︑日

本のみならず世界の主要都市と比較しても群を抜いており︑当時においては文字通り﹁世界一﹂の降下量であったこと︑

吻図8で釜石の比較の対象となっている都市はわが国でも有名な大気汚染都市であるが︑それらと比較しても釜石の降下

ばいじん量はかなり高い数値を示していること︵とりわけ高度の汚染の目安とされている三Cトンを境にして釜石と

それ以外の都市が明確に分かれている点が特徴的である︶︑を読みとることができる︒なお︑図8の釜石の数値は釜石全

体の平均値で示されているが︑極地的汚染の博しい松原地区だけをとり出した場合には︑その降下ばいじん量は図8には

   i釜石における公害問題一      五九

(24)

図7 他都市との比較(その1)

大阪市

横浜市

川崎市

八幡市

10 20 30  40 50 60 70

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阿部野区(住)

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(単位はt/km2/月)

宇部市

札幌市

神戸市

大牟田市

尼崎市

■釜石市

10   20   30   40   50   6じ   70

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田園

中 央 部 周辺部 郊外

郊外

釜石における公害問題1

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Chicago (米〕

Pittsburgh    〔米)

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商・住

商・住

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(豪〕

Sidney (豪)

Sarnia  (力口)

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市街地

郊外 市街地

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釜石市 準工

10  20  30  40  50   60  70

山ハ

出所:r公害年報』第1報(昭36)26−27頁より。

(25)

       降下ばいじん量︵匝/席/月︶

とうてい収まりきれないほどの高い数値を示すことになる︒

 以上は︑降下ばいじん量の多い昭和四〇年頃までの比較であるが︑降下ばいじん量が明確な減少傾向を示す昭和四〇年

代後半以降についてはどうであろうか︒この点について全国の主要都市と比較した資料は手元にはないが︑参考としうる

   1釜石における公害問題−       六一

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図8 他都市との比較(その2)

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釜石(平均)

川崎 大牟田

大阪

北九州

尼崎 北九州

東京

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釜石

(平均)

大牟田

大阪

京戸崎埼京神尼川

出所:環境庁大気保全局編r大気汚染防止法の解説』(昭47・

   新日本法規)19頁に筆者が釜石の分を書き加えた。

四日市

(26)

図9 昭和48年以降の岩手県内他地域との比較(単位t/km2/月)

・哩

東山町野平地区

    40

大船渡市赤崎1地区

    30

釜石市松原地区

20

宮古市藤原地区

    10

盛岡市内丸地区

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昭和48  49  50 51     52     53     54 55年度

出所 岩手県r環境白書』(昭55年度)27頁の表より筆者が作成。

注:数値は年度単位であるため,表1,図4の数値とは若干のくい違いが   みられる。

1釜石における公害問題1

ノ¥

(27)

ものとして︑昭和四八年から五五年までの岩手県内の各地域と松原地区との比較を示した図9がある︒これによれば︑昭

和四八年度以降︑松原地区の降下量は一定の高さの数値を示しつつも︑県内他地域と比較してきわだった降下量であると

はいえない︒このことは︑昭和四〇年代半ばを境にして釜石における降下ばいじん量が大幅に低下してきたというさきに

確認した事実を他地域との比較という側面から裏づける結果となっている︒

五 まとめ

 以上︑資料の制約で必ずしも十分な検討はできなかったが︑二︑三における分析の結果︑全体的傾向としてほぼ次の点

が確認できよう︒

 ①昭和四〇年代前半に至るまでの釜石における降下ばいじん量は︑汚染の目安という点からみても︑また他都市との比

較という点からみても極めて高い数値を示しており︑降下ばいじん量では︑釜石は︑少なくとも昭和四︵︶年頃までは日本

一の一さらに︑比較しうる限りでは世界一の一−都市であった︒この間︑前年よりも低下した年がいくつかみられるが︑

ほぼ高い数値で横ばい状態にあり︑汚染の改善はほとんどみられない︒

 ⑧とりわけ松原地区における降下量が著しく︑同地区における降下量が釜石全体の平均値を大幅に高める結果となって

いる︒同地区における降下量は︑さきにあげた汚染の目安という点からみれば︑文字通り想像を絶するものである︒このこ

とは︑同地区が︑発生源である釜鉄からの距離および風向の関係で最も影響をうけやすい地点にあることを示している︒

 ⑥ところが︑昭和四〇年代半ば以降は︑釜石の降下ばいじん量は顕著な低下傾向を示すことになる︒松原地区でも︑他

地区と較べれば相対的に高い数値を示しているとはいうものの︑かつてと比較すれば大幅な低下となっており︑県内他地

域と比較してもそれほどの高い水準を示してはいない︒たしかに同地区の降下量は昭和五二年に至るまでなお二〇トン〜

四〇トン台の高度な汚染を示しており︑汚染の目安という点からすれば決して低い数値とはいえないが︑かつての異常に

   −釜石における公害問題一       六三

(28)

   t釜石における公害問題一      六四

高い数値からすればやはり昭和四〇年代半ばを境に大幅な減少傾向を示しているといってよい︒

 ︵1︶ 庄司光・宮本憲一﹃恐るべき公害﹄ ︵岩波書店︑一九六四年︶七九頁︒

  ︵2︶ 釜石市﹃公害年報﹄第二〇報︵一九八○年度︶五頁︒

 ︵3︶釜石市﹃公害年報﹄第一一報︵一九七二年度︶一九頁︒

 ︵4︶ たとえば︑昭和四五年三月の釜石市公害防止対策委員会の答申﹁ばいじんの防止対策について﹂は︑ ﹁調査区域外のため数値

   を示すことはできないが港町︵紘瓜へへも転柳原偽勢かかい降下動かかかい⑳ひ檣燈ぎかか﹂としている︵﹃釜石市公害防止対

   策委員会答申集﹄︵昭和四六年三月︶二一頁︑傍点は筆者︶︒港町は松原町と境を接して北側に位置する町であり︑釜鉄に接近し

   ていること︑および風の影響を受けやすい位置にあることからみて︑降下ばいじんとの関係では松原町とほぼ同様の環境に置か

   れている︒

四 降下ばいじんによる被害の実態

一 被害に関する実態調査の状況

 H はじめに

 昭和四〇年代半ばに至るまでの降下ばいじん量の数値の高さ︑とりわけ松原地区におけるその異常なまでの高さは︑住

民の健康および生活環境に対して相当程度の被害を与えたものと推測される︒降下ばいじん量の最も多かった昭和三〇年

から四二年まで釜石市長の座にあった鈴�

図1 大気汚染防止法の規制対象物質      …いおう酸化物
図2 大気汚染防止法によるばい煙の規制のしくみ
図4 デポジット・ゲージ A

参照

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