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傷害保険契約における「外来の」事故該当性の判断基準

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Academic year: 2023

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【平成20年度日本保険学会大会】

第Ⅱセッション 報告要旨:遠山 聡

傷 害 保 険 契 約 に お け る 「 外 来 の 」 事 故 該 当 性 の 判 断 基 準

熊 本 大 学 法 学 部 遠 山 聡

傷 害 保 険 契 約 に お け る 保 険 事 故 は 、 約 款 上 、 被 保 険 者 が 急 激 か つ 偶 然 の 外 来 の 事 故 に よ っ て 身 体 に 傷 害 を 被 る こ と で あ る と 定 義 さ れ 、こ こ か ら「 急 激 性 」「 偶 然 性 」「 外 来 性 」と い う 傷 害 保 険 契 約 の 保 険 事 故 の 三 要 件 が 導 か れ る 。生 命 保 険 契 約 に 付 帯 さ れ る 、 い わ ゆ る 災 害 関 係 特 約 ( 傷 害 特 約 や 災 害 割 増 特 約 な ど ) の 保 険 事 故 は 、 不 慮 の 事 故 を 直 接 の 原 因 と す る 死 亡 ま た は 身 体 障 害 と し 、 不 慮 の 事 故 と は 急 激 か つ 偶 発 的 な 外 来 の 事 故 と 定 義 さ れ る が 、 保 険 事 故 の 三 要 件 に 関 す る 解 釈 に つ い て は 基 本 的 に 異 な ら な い 。

上 記 傷 害 保 険 事 故 の 三 要 件 は 、 言 う ま で も な く 、 疾 病 や 被 保 険 者 の 故 意 に よ る 身 体 障 害 を 保 険 保 護 の 対 象 で あ る 「 傷 害 」 か ら 除 外 す る こ と を 目 的 と す る も の で あ る 。 周 知 の 通 り 、 従 来 、 こ の う ち 偶 然 性 ( 偶 発 性 ) の 要 件 に 関 し て は 、 そ の 立 証 責 任 の 所 在 を め ぐ り 、 判 例 ・ 学 説 上 激 し く 議 論 さ れ て き た と こ ろ 、 最 高 裁 平 成 13 年 4 月 20 日 の 各 判 決 1 に よ っ て 一 応 の 決 着 を み た と い う こ と が で き る 。

外 来 性 の 要 件 は 、 身 体 障 害 が 身 体 の 内 部 的 要 因 ( 疾 病 ) で は な く 、 外 部 か ら の 作 用 に 原 因 が あ る こ と を 要 求 す る も の で あ る が 、 そ の 該 当 性 の 判 断 を め ぐ っ て は 少 な か ら ず 紛 争 が 生 じ て い る 。 傷 害 保 険 の 保 護 の 対 象 と な る 身 体 障 害 は 、 様 々 な 要 因 が 競 合 的 に 作 用 し て 発 生 す る こ と が 少 な く な く 、 ま た 、 身 体 障 害 発 生 の 具 体 的 状 況 が 不 明 で あ る ケ ー ス が 少 な く な い と い う こ と も あ る が 、 そ の 判 断 基 準 に 関 す る 約 款 解 釈 や 保 険 者 の 査 定 実 務 が 一 般 的 顧 客 に と っ て 必 ず し も 明 確 で は な い こ と も あ げ ら れ よ う 。 本 研 究 で は 、 当 該 紛 争 事 例 の 問 題 状 況 を 整 理 し た 上 で 、 外 来 性 や 傷 害 と の 因 果 関 係 の 判 断 基 準 に 関 す る 判 例 理 論 や 学 説 等 の 検 討 を 行 う 。

問 題 状 況 は 、 一 般 に 、 先 行 す る 事 故 を 原 因 と し て 疾 病 等 が 発 生 し 、 結 果 的 に 身 体 障 害 が 発 生 す る ケ ー ス ( 外 来 事 故 先 行 型 ) と 、 既 存 の 疾 病 を 原 因 と し て 事 故 が 発 生 し 、 結 果 的 に 身 体 障 害 が 発 生 す る ケ ー ス ( 疾 病 先 行 型 ) と に 整 理 さ れ る 。 と

1 民 集 55 3 682頁 ( 傷 害 保 険 )、 判 時 1751 171 頁 ( 生 命 保 険 災 害 関 係 特 約 )。

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【平成20年度日本保険学会大会】

第Ⅱセッション 報告要旨:遠山 聡

り わ け 問 題 で あ る の が 後 者 で あ り 、 い わ ゆ る 入 浴 中 の 溺 死 は そ の 典 型 で あ る 。 こ の よ う に 、既 存 の 疾 病 が あ る と こ ろ に 、発 作 や 第 三 者 の 過 失 等 が き っ か け と な り 、 外 来 的 要 因 と 競 合 し て 身 体 障 害 が 発 生 す る 場 合 に は 、 外 来 性 の 不 存 在 、 あ る い は 相 当 因 果 関 係 を 欠 く と の 理 由 か ら 保 険 金 請 求 を 認 め な い の が 裁 判 例 の 一 般 的 傾 向 で あ る 。 し か し な が ら 、 疾 病 に よ る 発 作 だ け で は 通 常 は 死 亡 の 結 果 に 至 ら な い よ う な 場 合 に は 、 傷 害 事 故 の 発 生 を 認 め る べ き で あ る と の 指 摘 も あ り 、 疾 病 等 の 内 部 的 要 因 を 含 む と し て も 、 傷 害 保 険 の 保 護 の 対 象 と す べ き 場 合 が あ り う る こ と は 少 な く と も 否 定 さ れ な い で あ ろ う 。 問 題 は そ れ を ど の よ う に 理 論 的 に 明 確 化 す る か で あ る 。 近 時 の 判 例 に お い て も 、 外 来 性 や 因 果 関 係 の 有 無 の 判 断 に つ き 従 来 の 裁 判 例 の 傾 向 と は 相 当 程 度 異 な る 判 断 を 示 し て お り 2 、 そ の 妥 当 性 を 含 め 検 討 す る 。

な お 、こ の 点 に つ き 、ド イ ツ の 傷 害 保 険 約 款( AUB)に お け る 外 来 性( von außen Wirken) の 解 釈 に つ い て は 、 被 保 険 者 の 身 体 に 作 用 し て 傷 害 を 発 生 さ せ た 直 接 の 原 因 が 外 部 に 存 在 し て い る 限 り 、 外 来 性 の 要 件 を 充 足 し た も の と し 、 そ れ を 実 際 に 生 じ さ せ た 原 因 が 何 で あ る か に つ い て は 、 免 責 事 由 の 有 無 に 関 す る 判 断 で 問 題 と な る に 過 ぎ な い と い う の が 一 般 的 な 理 解 で あ る 。 す な わ ち 、 外 来 性 の 有 無 は 傷 害 の 前 提 条 件 と し て 直 接 的 原 因 で あ れ ば 足 り 、 因 果 関 係 の 有 無 は 約 款 所 定 の 免 責 事 由 該 当 性 の 判 断 に お い て 考 慮 さ れ る の で あ る 。

ま た 、AUBに は 、 被 保 険 者 に 生 じ た 傷 害 な い し そ の 結 果 た る 死 亡 に つ い て 、 被 保 険 者 の 疾 病 が 競 合 的 に 作 用 し た 場 合 に は 、 保 険 給 付 を 疾 病 の 寄 与 分 に 応 じ て 減 額 す る 旨 の 規 定 が あ り 、 わ が 国 の 裁 判 例 に お い て も 、 こ の よ う な 割 合 的 因 果 関 係 に よ る 解 決 を 認 め た も の が あ る 3 。 そ の 是 非 や 判 断 基 準 等 に つ い て は さ ら に 詳 論 を 要 す る が 、 具 体 的 事 案 に お い て は 合 理 的 な 解 決 を 与 え う る 理 論 と し て 重 要 な 示 唆 と な り う る 。

2 最 判 平 成 19 7 6日 民 集 61 5 1955 頁 等 。

3 名 古 屋 高 金 沢 支 判 昭 和 62 2 18 日 判 時 1229 103頁 。

参照

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おわりに おわりに 1 1 (再掲) (再掲) 保険料積立金と保険料の計算基礎が一致する場合 -保険料の計算基準において解約返戻金と解約率に係 る項目がないのは、保険料はそれらの有無に拘わらず 同じ結果となるから -解約返戻金は保険契約者の持ち分として積立てた金 額から一定の控除を行ったもの -つまり、解約返戻金は付随的な給付であったといえる