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会社役員賠償責任保険(D&O 保険)に関する一考察

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Academic year: 2023

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【令和2年度 日本保険学会全国大会】

第Ⅱセッション(法律系)

報告要旨:小野寺 千世

1

会 社 役 員 賠 償 責 任 保 険 ( D&O 保 険 ) に 関 す る 一 考 察

日 本 大 学 法 学 部 小 野 寺 千 世

1 . は じ め に

周 知 の と お り 、 令 和 元 年 会 社 法 改 正 に よ り 、 役 員 等 に イ ン セ ン テ ィ ブ を 付 与 す る と と も に 、役 員 等 の 職 務 の 執 行 の 適 正 さ を 確 保 す る た め 、役 員 等 が そ の 職 務 の 執 行 に 関 し て 責 任 追 及 を 受 け る な ど し て 生 じ た 費 用 等 を 株 式 会 社 が 補 償 す る こ と を 約 す る 補 償 契 約( 会 社 法 430条 の 2)と 、役 員 等 の た め に 締 結 さ れ る 保 険 契 約 に 関 す る 規 定 ( 会 社 法430 条 の 3) が 設 け ら れ る こ と と な っ た 。

本 報 告 で は 、 会 社 役 員 賠 償 責 任 保 険( 以 下「D&O保 険 」と い う )に 関 す る 近 時 の 動 向 を ふ ま え 、D&O 保 険 契 約 の 今 後 の 展 開 に つ い て 考 察 す る 。会 社 法 改 正 に よ っ て 、D&O 保 険 契 約 の 締 結 に ど の よ う な 影 響 が 及 ぼ さ れ る か 、 審 議 会 で の 議 論 を 整 理 し 、会 社 法 の 規 律 の 適 用 範 囲 等 を 確 認 す る 。ま た 、比 較 法 と し て 、ド イ ツ に お け る 近 時 の D&O 保 険 契 約 の ア シ ス タ ン ト サ ー ビ ス に 関 す る 議 論 を 参 照 し 、D&O 保 険 契 約 の 内 容 、 保 険 会 社 の 責 任 等 に つ い て 、 日 本 法 へ の 示 唆 を 得 た い 。

2 .D&O 保 険 に 関 す る 令 和 元 年 改 正 会 社 法 の 規 律

従 来 の 会 社 法 に お い て は 、D&O 保 険 契 約 に 関 す る 規 定 が 置 か れ て い な い こ と か ら 、取 締 役 の 全 員 が 被 保 険 者 と な る と い うD&O保 険 の 構 造 上 の 利 益 相 反 性 、 会 社 に よ る 保 険 料 負 担 等 に 関 し て 、株 式 会 社 が D&O保 険 に 係 る 契 約 を 締 結 す る た め に ど の よ う な 手 続 等 を 経 る 必 要 で あ る か が 議 論 さ れ て き た 。平 成 27 年 に 、 経 済 産 業 省 の コ ー ポ レ ー ト・ガ バ ナ ン ス の 在 り 方 に 関 す る 研 究 会 か ら「 法 的 論 点 に 関 す る 解 釈 指 針 」が 示 さ れ る と 、 株 主 代 表 訴 訟 で 役 員 が 敗 訴 し た 場 合 の 補 償 を 普 通 約 款 と は 切 り 分 け て 特 約 を 設 け て い た 構 造 を 変 更 す る 約 款 の 改 正 が な さ れ た 。

既 に 解 釈 指 針 に 基 づ く 実 務 が 定 着 し て き て お り 、 そ れ で 十 分 で は な い か と い う 経 済 界 か ら の 考 え 方 が 示 さ れ る 中 、D&O 保 険 契 約 の 締 結 に よ り 生 ず る こ と が 懸 念 さ れ る 弊 害 に 対 処 す る と と も に 、当 該 契 約 を 締 結 す る た め の 手 続 等 を 明 確 に し 、 D&O 保 険 が 適 切 に 運 用 さ れ る よ う 必 要 な 規 律 を 整 備 す る と し て 、 令 和 元 年 改 正

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【令和2年度 日本保険学会全国大会】

第Ⅱセッション(法律系)

報告要旨:小野寺 千世

2

会 社 に お い て 規 定 が 設 け ら れ る こ と と な っ た 。 す な わ ち 、 改 正 法 は 、 役 員 等 賠 償 責 任 保 険 契 約 の 内 容 の 決 定 を す る 手 続 と し て 、 取 締 役 会 決 議 ( 取 締 役 会 非 設 置 会 社 で は 株 主 総 会 決 議 ) を 要 す る こ と 、 利 益 相 反 取 引 規 制 を 適 用 除 外 と す る こ と 、 事 業 報 告 に お い て 開 示 す る 旨 を 規 定 す る 1

審 議 会 で の 議 論 を 整 理 し 、 改 正 会 社 法 規 制 が 適 用 さ れ る D&O 保 険 と は ど の よ う な 性 質 を 有 す る も の か 、 改 正 会 社 法 の 規 律 の 適 用 範 囲 を 確 認 す る 。

3 . ド イ ツ に お け るD&O保 険 の 動 向

近 時 、ド イ ツ で は 、D&O保 険 契 約 に お け る ア シ ス タ ン ト サ ー ビ ス に 関 す る 議 論 が な さ れ て い る 。 ア シ ス タ ン ト サ ー ビ ス は 、 成 長 分 野 で あ る D&O 保 険 お よ び サ イ バ ー 保 険 に お い て 特 に 多 様 で あ る と 指 摘 さ れ て い る 。D&O 保 険 の ア シ ス タ ン ト サ ー ビ ス の 例 と し て は 、 外 部 の 第 三 者 に よ る 危 機 管 理 や 風 評 被 害 へ の 対 応 支 援 、 被 保 険 者 に 精 神 的 苦 痛 が 生 じ た 場 合 の 医 療 あ る い は 心 理 的 治 療 の サ ポ ー ト 、 そ の 他 ( 税 務 な ど ) の コ ン サ ル テ ィ ン グ 等 が あ げ ら れ る 。

ア シ ス タ ン ト サ ー ビ ス に 関 し て 、 そ の 提 供 の 法 的 関 係 を 、 提 供 者 が だ れ で あ る か 、 ア シ ス タ ン ト サ ー ビ ス を 現 物 給 付 す る か 、 サ ー ビ ス に 支 出 し た 費 用 を 補 償 す る か に よ っ て 4つ に 分 類 し た う え で 、 保 険 監 督 法(VVG)と の 関 連 を 整 理 す る 。 そ し て 、 提 供 し た サ ー ビ ス に よ っ て 損 害 が 拡 大 し て し ま っ た 場 合 、 人 身 傷 害 ま た は 物 的 損 害 を 引 き 起 こ し た 場 合 の 保 険 会 社 の 責 任 に つ い て 、 他 の 賠 償 責 任 保 険 契 約 に 関 す る 裁 判 例 を 参 考 に 、 保 険 会 社 は 、 サ ー ビ ス 提 供 者 を 選 択 す る に 際 し て 一 定 の 義 務 を 負 い 、 保 険 契 約 者 に 対 し て 責 任 を 負 う 可 能 性 が あ る と の 見 解 が 示 さ れ て い る 。

4 . 日 本 法 へ の 示 唆

D&O 保 険 契 約 の 内 容 は 、 企 業 の リ ス ク の 多 様 化 を 背 景 と し て 、 保 険 業 法 の も と 、 保 険 事 故 の 発 生 後 に 保 険 会 社 が 提 供 す る 追 加 の ア ド バ イ ス 、 情 報 、 組 織 、 サ ポ ー ト サ ー ビ ス に 関 す る 特 約 の 多 様 化 等 さ ら な る 展 開 が 考 え ら れ る と こ ろ 、 そ れ に と も な う 保 険 会 社 の 責 任 に つ い て は 、 ド イ ツ 法 に お け る 議 論 が 参 考 と な る と 思 わ れ る 。

1 会 社 法 制 ( 企 業 統 治 等 関 係 ) の 見 直 し に 関 す る 要 綱 案 10頁 、11頁 、 竹 林 俊 憲 他

「 令 和 元 年 改 正 会 社 法 の 解 説 ( Ⅳ ) 」 旬 刊 商 事 法 務 2225 号 9 頁 以 下 。

参照

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