2.6 Mittag-Leffler の定理
3.1.5 C b に位相を導入
点列の極限や、部分集合上で定義された関数の極限や連続性などを定義するには、位相と呼 ばれる構造を定義する必要がある。
C については、任意の二点 z1, z2 の距離 |z1−z2| を用いて位相を定義した。これは R や Rn のときと同様のやり方で、慣れているので分かりやすいと思われるが、関数論の多くのテ キストでは、無限遠点の “基本近傍系” を新たに定めることでCb の位相を定義している。以 下それを説明しよう (そういう標準的な説明が理解できるようになってほしい)。
Cb の各点 a に対して(後で a の基本近傍系と呼ばれることになる) 集合族 Ua を次式で定 める:
(26) Ua:={U(a;r)|r >0}.
ここでU(a;r) は、a の r 近傍と呼ばれる集合で、次のように定義される。
(a) a∈C(a が複素数) の場合
U(a;r) =D(a;r) ={z ∈C| |z−a|< r} (これはおなじみかも…).
(b) a=∞ の場合
U(a;r) :=Ur :={z ∈C| |z|> r} ∪ {∞}
(|∞|= +∞とみなして、Ur のことを Ur = n
z ∈Cb r <|z| ≤+∞o
とも表す。)
天下りになるが、この Ua を用いて、次のようにCb の開集合、点列の収束 (極限)、関数の 連続性を定義する。
定義 3.6 (Cb の開集合、点列の収束、関数の連続性) (a) Ω⊂Cb が Cb の開集合def.⇔ (∀a ∈ Ω) (∃U ∈ Ua) U ⊂Ω.
(b) Cb 内の点列 {zn}n∈N が、a ∈ Cb に収束def.⇔ (∀U ∈ Ua) (∃N ∈ N) (∀n ∈ N: n ≥ N) zn∈U.
(c) Ω ⊂ Cb, f: Ω → Cb, a ∈ Ω とするとき、f が a で連続 def.⇔ (∀V ∈ Uf(a)) (∃U ∈ Ua) f(U ∩Ω)⊂V.
もともとの C の場合と比べてみよう
上の定義と比べやすくするため、距離の代わりに円盤を使って表現し直してある。
(a) Ω⊂Cが Cの開集合def.⇔ (∀a∈Ω) (∃ε >0)D(a;ε)⊂Ω.
(b) C 内の点列 {zn}n∈N が a ∈ C に収束def.⇔ (∀ε > 0) (∃N ∈ N) (∀n ∈ N: n ≥ N) zn ∈D(a;ε).
(普通|zn−a|< ε と書くところを、zn∈D(a;ε) と書き換えてある。)
(c) Ω ⊂ C, f: Ω → C, a ∈ Ω とするとき、f が a で連続 def.⇔ (∀ε > 0) (∃δ > 0) f(D(a;δ)∩Ω)⊂D(f(a);ε).
(普通(∀z ∈Ω: |z−a|< δ))|f(z)−f(a)|< εのように書くところを、f(D(a;δ)∩Ω)⊂ D(f(a);ε) と書き換えてある。)
このように定義すると、以下が成り立つ。
• 開集合系の公理16が成立する。
16(i) ∅ とCb は開集合, (ii) 二つの開集合の共通部分は開集合, (iii) 開集合からなる集合族 {Uλ}λ∈Λ の合併 [
λ∈Λ
Uλ は開集合.
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• Ω⊂C の場合は、Ωが Cの開集合であることと Cb の開集合であることは同値である。
• zn ∈C(n ∈N), a∈Cであるとき、{zn}が C でa に収束することと、bC でaに収束す ることは同値である。
• zn ∈C (n ∈N)であるとき、{zn} が Cb で ∞ に収束することと (∀R∈R)(∃N ∈N)(∀n ∈N:n ≥N) |zn|> R が成り立つことは同値である。
問 9. このことを確かめよ。
余談 3.7 (きちんとやるには) 一般に、与えられた集合X に対して、その中の点列の極限や、
関数の連続性を考えるには、位相と呼ばれる構造を用いる。X の位相を定義するのは、X の 開集合系 (開集合の全体) を定めるやり方を採用することが多いが、X の各点a に対して、a の基本近傍系と呼ばれる集合族を定めるやり方もある。これについては、位相空間の詳し目の テキスト(例えば定評のある松坂 [13] や、古典的な定番テキストである河田・三村[14])を見 ると良い。
複素数aに対して、bCで a に収束というのは、これまでと同じ意味(Cで a に収束) で、bC で ∞に収束というのは、これまで → ∞ (無限大に発散) と言ってきたことに相当する。
(これまで、普通は「十分小さい ε」だったのに、「十分大きい R」が対応するのは違和感が あると思うが、そもそも ε-δ 論法の論理式に「大きい」、「小さい」という言葉は入っていない ことを思い出そう。)
例 3.8 f(z) = 1
z は、z = 0 で連続である。実際、上の規約により f(0) = 1
0 =∞, limz̸=0
z→0
f(z) =∞ であるから、lim
z→0f(z) =f(0) が成り立つ。同様に f は z =∞ でも連続である。
実はCb =C∪ {∞} は、次式で定義されるd を距離として距離空間になる: (27) d(z, z′) :=φ−1(z)−φ−1(z′).
(ただし、φ:S →Cb は立体射影で、k·k は R3 のベクトルの長さkxk= vu utX3
j=1
x2j を表す。) これは要するに、z, z′ ∈ Cb の距離を、対応するRiemann球面 S 上の二点 φ−1(z), φ−1(z′) の R3 における距離として定義してるわけである。
問 10. 特にz, z′ ∈C の場合は、次のように書けることを示せ。
d(z, z′) = p 2|z−z′|
(1 +|z|2) (1 +|z′|2).
この距離d(·,·) から Cb の位相を定めることが出来るが、それは上の基本近傍系で定めた位 相と同じであることが証明できる(ここでは省略する)。
メモ (別のところに書いたものを持って来た。)
位相を定めるには、開集合を定義する以外に、各点の基本近傍系を定める、というやり方が ある。超駆け足で説明する。
X は空でない集合とし、X の各点 xに対して、X の部分集合族B(x)が定まっていて、以
下の条件(基本近傍系の公理)を満たすとする。
1. (∀x∈X) B(x)6=∅. さらに(∀x∈X) (∀U ∈ B(x)) x∈U.
2. (∀x∈X) (∀U, V ∈ B(x)) (∃W ∈ B(x))W ⊂U ∩V.
3. (∀x∈X)(∀U ∈ B(x)) (∃W ∈ B(x)) (∀y∈W) (∃Uy ∈ B(y)) Uy ⊂U. このとき、X の部分集合 Ωについて
Ωは開集合 def.⇔ (∀x∈Ω)(∃U ∈ B(x)) U ⊂Ω
と定義すると、開集合の全体は位相の公理を満たす(位相空間のテキストを見よ)。 Cにおいては、a∈C に対して、
B(a) := {U(a;r)|r >0}, U(a;r) :=D(a;r) ={z ∈C| |z−a|< r}
と定めると基本近傍系の公理が満たされ、それが定める位相は、通常の C の位相である。
新たにB(∞) を定めて、B(a) (a∈C∪ {∞})が基本近傍系の公理を満たすことを確認すれ ば、bC の位相が定義できる。
B(∞) := {U(∞;R)|R ∈(0,+∞)}, U(∞;R) :={z ∈C| |z|> R} ∪ {∞}.