第 2 章 マグマ、半群、モノイド、群 26
2.4 群
2.4.8 同値関係と部分群
次のように、群の部分集合が与えられたとき、(逆元を用いているので、群でないとできな いような)二項関係の定義をしよう。
定義2.4.34. (G,◦, e)を群とし、H ⊂GをG(の台集合)の部分集合とする。このとき、G(の 台集合)の上の二項関係∼LHを
∀a, b∈G a∼LH b⇔a−1◦b∈H で定義する。Lは左(left)のLである。
同様に、
∀a, b∈G a∼RH b⇔a◦b−1∈H で∼RHを定義する。
例 2.4.35. H ={e}のとき、
a∼LHb⇔a−1◦b∈ {e} ⇔a−1◦b=e⇔b=a.
よってこのときは∼LHは等号と一致する。
次の定理は、∼LH が同値関係であるということと、H が部分群であるということが同値で あることを主張する。
定理 2.4.36. (G,◦, e)を群とし、Hをその部分集合とする。∼LHが同値関係である必要十分 条件は、Hが部分群であることである。
証明. ∼LHを単に∼であらわす。
• ∼が[E2]を満たすことと、Hが[S2]を満たすことが同値であること:
∀a a∼a⇔a−1◦a∈H ⇔e∈H.
• ∼が[E3]を満たすこととHが[S3]を満たすことの同値性:
[E3]を満たせば
e∼a⇔a∼e.
これをHの言葉でかけば
e−1◦a∈H ⇔a−1◦e∈H.
e=e−1よりa∈H ⇒a−1∈H、従ってHは[S3]を満たす。
逆にHが[S3]を満たすならば、
a∼b⇒a−1◦b∈H [E3]
⇒ (a−1◦b)−1∈H ここで問題2.22を使うと
(a−1◦b)−1=b−1◦(a−1)−1=b−1◦a.
これがHに入るのだからb∼a。すなわち[E3]が言えた。
• ∼に[E3]を仮定(または、同値であるHに[S3]を仮定)した上での、∼が[E1]を満た すこととHが[S1]を満たすことの同値性:
∼が[E3]を満たすので、∼が[E1]を満たすとする。a, b∈Hとすると[S3]よりa−1∈H よってe∼a−1。またe∼b。[E3][E1]を使ってa−1 ∼b。よって(a−1)−1◦b∈H、す なわちa◦b∈H で[S1]を満たす。
Hが[S3][S1]を満たすとする。
a∼b, b∼c⇒a−1◦b, b−1◦c∈H [S1]
⇒ (a−1◦b)◦(b−1◦c)∈H ⇒a−1◦c∈H ⇒a∼c.
注意2.4.37. 同様に、∼RHが同値関係となる必要十分条件も、H < Gとなることである。
定義 2.4.38. Gを群とし、H < Gをその部分群とする。定理2.4.36により、∼LHはG上の 同値関係である。この同値関係をHを法とする左合同関係という。
G(の台集合)をこの同値関係で割って得られる商集合を
G/H:=G/∼LH
であらわし、その一つ一つの元をGのHによる左剰余類という。G/Hを「Gを右からHの 作用で割って得られる商」、または「GのH による左剰余類集合」という。
同様に∼RHをHを法とする右合同関係といい、Gのそれによる商集合を H\G:=G/∼RH
であらわし、GのH による右剰余類集合、あるいはGを左からHの作用で割って得られる 集合という。
上の定義の状況で、∼LHに関してa∈Gの属する同値類[a]は
[a] ={g∈G|a∼LH g}={g∈G|a−1◦g∈H}={g∈G|g∈a◦H}=a◦H である。ここで、a◦Hは次に定義する集合である。
2.4. 群 59 定義2.4.39. (G,◦)をマグマとする。S⊂G,a∈Gのとき
a◦S :={a◦s|s∈S}
と定義する。同様にb∈Gに対し
S◦b:={s◦b|s∈S}
である。Gが半群のときは
a◦S◦b:={a◦s◦b|s∈S}
である。
またマグマの場合にもどって、S, T ⊂Gのとき
S◦T :={s◦t|s∈S, t∈T} と定義する。
混乱の恐れの少ない場合、◦はしばしば省略される。a◦bの代わりにab,a◦H◦bの代わり にaHbと書かれる。
上の記法を用いれば、次を示したことになる。
命題2.4.40. Gを群、Hをその部分群とする。a∈Gの属する∼LHに関する同値類、すなわ ちaの属する左剰余類はaHである。
a∈Gの属する∼RHに関する同値類、すなわち右剰余類はHaである。
(特に、どちらの場合でも単位元eの属する同値類は[e] =Hである。)
この事実に定理1.3.8を適用すると次を得る。
系 2.4.41. Gを群、Hをその部分群とする。任意のa, b∈Gに対し、
aH =bH またはaH∩bH=∅ のどちらかが成立する。
GはaHの形の集合に分割される:
G= a
aH∈G/H
aH
注意2.4.42.
G= a
aH∈G/H
aH
の式は少々わかりにくい。G/Hの一つ一つの元は実はaHという形の集合である。aH=a0H となるようなa, a0もあるかも知れないが、そういうものは同じと思って、G/Hの一つ一つの 元を集合と思うと、Gをきれいに交わりなく分割しているということである。
上は左剰余類の場合であるが、右剰余類でも同じことが言える。
問題2.26.
a∼LH b⇔b∈a◦H を示せ。
問題2.27. (Z,+,0)を整数のなす加法群とし、mを自然数とする。H :=mZ:={mx|x∈Z}
をmの倍数の集合とする。(この記法は2.4.39で◦=×の場合を用いている。)
1. Hは部分群であることを示せ。
2. ∼LHは、≡mをmを法とする合同関係(定義1.3.19)と一致することを示せ。
3.
Z= a
a=0,1,...,m−1
(a+mZ) を示せ。(この記法は2.4.39で◦= +の場合を用いている。)