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研究Ⅲ 住民及び支援者の視点による高齢者の地域社会における役割 の見直しに基づく社会参加促進型ヘルスプロモーションプログラムの効果との見直しに基づく社会参加促進型ヘルスプロモーションプログラムの効果と

課題

1.目的

研究Ⅱでは,高齢者の地域社会における役割の見直しに基づくヘルスプロモーションプ ログラムの効果を量的方法により検証した.量的方法の代表的手法であるアンケート調査 は,研究者の仮説に基づき観察項目を設定するため,研究者が想定していなかった効果や 対象者が感じている効果や課題を明らかにすることには限界がある.アクションリサーチ は,さまざまな方法によって,または,さまざまな関与者に対して検討を重ねることによ って,データ解釈の質を高めようとするアプローチに立脚している.その意味で,住民及 び支援者の視点からのプロジェクトの評価は重要である.また,高木121は,自然現象を 研究対象とするのが量的研究,心的存在の中に生起する現象を扱うのが「質的研究」と区 別した上で,共通了解の仕方がその社会に依存する社会的事象を含む研究においては,質 的と量的の Mixed Method の有効性を指摘している.そこで研究Ⅲでは,介入地区の住民及 び支援者の視点による高齢者の地域社会における役割の見直しに基づく社会参加促進型ヘ ルスプロモーションプログラムの効果と課題を質的方法により明らかにすることを目的と する.多様な視点から評価することにより,多面的な効果や課題を浮き彫りにすることが 可能となると考える.

2.方法

1)対象とデータ収集方法

住民及び本研究に携わった行政と地域包括支援センターの保健福祉専門職(以下,支援 者)を対象に取り組み終了後にフォーカス・グループ・インタビュー(以下,FGI)を実 施した.

住民に対しては,2013年10月に地区センターで開催した 3 年後追跡調査の結果報告会 の参加者を対象とした.調査結果説明の前に,研究者がこれまでの活動経過を報告し,そ の後,事前に作成したインタビューガイドに基づいて,「取り組み後の自分や地域の変化」

「今後目指す地域像」について自由に話し合ってもらった.参加者 12 名(図表Ⅲ‐1)は 3つのグループに分かれ,話し合いの所要時間は40分であった.全体及び各グループの司 会を研究者及び行政と地域包括支援センターの保健福祉専門職が担当した.支援者に対し ては,2014年2月に市役所の個室で実施した研究報告会において,調査結果説明の前に,

行政と地域包括支援センターの保健福祉専門職 4名を対象に,FGIを 60分実施した.事 前にインタビューガイドを作成し,「研究を振り返っての感想」「研究の効果」「現場で実施 する場合の課題や不安」について自由に話し合ってもらった.司会は研究者が行った.い ずれも話し合い内容はICレコーダーに録音し,後日逐語録を作成した.

2)分析方法

分析は,安梅122によるFGIの分析方法を参考にして質的帰納的に分析した.分析はテ

ーマに照合して抽出した意味のあるまとまりを要約し,コード化(抽象度の低い概念)し た.そして,共通の意味内容を持つコードを集約化し,「カテゴリー」を作成した.分析は,

地域看護,地域リハビリテーション,社会老年学の研究者が複数で行い,概念の一致が得 られるまで検討を重ねた.

3.倫理的配慮

倫理的配慮として,インタビュー時に,口頭により研究目的,個人情報保護について説 明し,参加協力の同意を得た.なお,本研究は人間総合科学大学倫理審査委員会の承認を 受けた(承認年月日:2011年12月6日,受付番号243号).

4.結果

1)住民の視点による取り組みの効果

取り組み終了後の住民に対するグループインタビューの結果から,住民自身や地域の効 果として5カテゴリー,10コードが抽出された(図表Ⅲ-2).以下≪ ≫はカテゴリー,

< >はコード,「 」は発言内容を示す.カテゴリーは,≪住民のつながりが深まった≫

≪地域ぐるみで高齢者をささえるようになった≫≪安全な地域づくりが促進された≫≪地 域活動への参加が促進された≫≪環境美化が促進された≫であった.

取り組み開始から3年が経過し,住民は「知り合いが増えた」「顔見知りになって,昔 からの知り合いのように挨拶や話ができるようになった」というように<地域の人と親し くなった>,「町内を歩く時は緊張していたが,活動に参加するようになって,町内を安心 して歩けるようになった」と<地域に溶け込めた>ことなど≪地域のつながりが深まった

≫ことを感じていた.また,「自治会で孤独死の本を購入し,自治会役員が勉強した」「全 戸調査により把握した実態を総会資料に掲載した」など<高齢者問題に対する知識・情報 の共有が進んだ>,「となりの1人暮らし高齢者に声かけをしている」「全戸調査により救 急・防災カードを作成した」など<1人暮らし高齢者等の見守りや緊急時対応の体制が整 備された>など≪地域ぐるみで高齢者をささえるようになった≫.「子どもに挨拶をしてほ しくて,防犯パトロールに参加する人がいる」ことや「防犯パトロール活動をしていてよ かった」と<防犯パトロール活動に対するやりがいが高まった>,<住民が防災に関心を 持つようになった>と≪安全な地域づくりが促進された≫と住民は感じていた.「研究開始 前は誰も地域活動に参加していなかった」が<地域活動の参加者が増加した>り,<自治 会行事の参加が地域活動の拡大につながっている>など≪地域活動への参加が促進された

≫ことや<地域がきれいになった>,「自宅前に落ち葉がたまっていると恥ずかしいと思う ようになった」など<環境美化に対する関心が高まった>と≪環境美化が促進された≫こ とを効果として感じていた.

2)支援者の視点による取り組みの効果

一方,支援者が感じている取り組みの効果として,3 カテゴリー,5 コードが抽出され た(図表Ⅲ-3).以下≪ ≫はカテゴリー,< >はコード,「 」は発言内容を示す.カ テゴリーは,≪住民が主体的に行動した≫≪住民と支援者の信頼関係が築けた≫≪地域の

力を再認識した≫であった.

3)住民の視点による取り組みの課題

住民が感じている取り組みの課題として,3カテゴリー,7サブカテゴリー,13コード が抽出された(図表Ⅲ-4).以下≪ ≫はカテゴリー,[ ]はサブカテゴリー,< >は コード,「 」は発言内容を示す.カテゴリーは,≪地域のつながりが不十分≫≪老若男女 が参加しやすいプログラムが必要≫≪地域活動を促進する基盤づくりが必要≫であった.

住民は,地域のつながりづくりを目指して地域活動を実施したが,[孤立死を早期発見で きるまでの近隣関係に至っていない]と≪地域のつながりが不十分≫であると感じていた.

<気軽に参加できる行事が必要>であり,<清掃活動を強化する>ことなどにより[多く の住民が顔を合わせる機会を増やす]ことや健康や歩行機能の低下など[高齢者の特性に 配慮したプログラム]など≪老若男女が参加しやすいプログラムが必要≫だと感じていた.

また,<目指す地域像が曖昧>であり,[住民が地域像や具体策を共有することが必要]で あること,「役員が 1 年で交代する自治会活動に位置付けられているため、継続性が保た れにくい」「今まで活動の中心だった方が、活動できなくなった時、自治会は大変」であり,

「役員だけでなく、役員以外の住民も企画運営に気軽に参加できるような活動に広げてい く」など[住民参加による継続可能な運営体制づくりが必要]であること,「自治会単独で 防災活動に取り組むのは限界」があり,「上意下達でなければ学校は動かない」ため,[行 政の協力が必要]であり,≪地域活動を促進する基盤づくりが必要≫であると感じていた.

4)支援者の視点による取り組みの課題

支援者が感じている取り組みの課題として,5カテゴリー,13コードが抽出された(図 表Ⅲ-5).以下≪ ≫はカテゴリー,< >はコード,「 」は発言内容を示す.カテゴリ ーは,≪取り組みを広めることが必要≫≪地域にはネガティブな反応がある≫≪地域づく りの経験・スキルが必要≫≪関係職種・機関と協働で取り組むことが必要≫≪行政による 介入の限界≫であった.

支援者は<計画的にモデル地区の指定を行う><H地区の活動リーダーが他の地区で講 師となる>ように支援することによって,H地区の≪取り組みを広めることが必要≫だと 感じていた.また,≪地域にはネガティブな反応≫があり,現場で本プログラムのような 取り組みを実施するためには,<地域特性や反応に応じた関わりが必要>であることや,

<地域課題の共有が重要>であり,「ワークショップの声かけ内容や必要物品」などが記載 された「マニュアルが必要」であり,≪地域づくりの経験やスキルが必要≫である.また,

≪関係職種・機関と協働して取り組むことが必要≫である.「地域介入は経過が長いので、

時間と人が必要」であるが,「頻回に関わることはできない」こと,「ボランティアやサロ ンの運営には報酬が必要」であり,<時間・金・人材が必要>である.また,「子どもの見 守りは自分たち(地域包括支援センターや介護保険担当)の守備範囲ではない」なく,地 域介入の「担当部署が不明確」である.また,「自分たちの思いがけない方向にいったら困 る」ため,「やってほしいことを先に言ってしまう」など<行政の意向をおしつける>こと や,行政が介入すると「住民からは要望や苦情ばかり出てくる」「住民はやらされていると 受け取る」ため,<行政の介入により住民主体性を引き出すのは困難>であり,研究にお