1 はじめに 複式学級の有無に関わらず、へき地小規模校においては体育科を複数学年による合同授業 で行うことが多くある。本校においても低・中・高学年別で、それぞれ2学年合同授業を行 っている。AB年度方式の年間指導計画を作成しており、水泳、保健領域を除き、ほとんど の領域で同単元同内容異程度による指導を行っている。この場合、指導者は 、個人差はもち ろ ん で あ る が 学 年差 によ る 指 導 の 重 点 を明 確に し て お く こ とが 重 要で あ る 。 そ こ で学 年 差 、 個人差に配慮するとともに、上学年と下学年の 関わりという合同授業のメリットを生 かして、 次のような実践を行った。 2 実践例 (1) 単元名 小型ハードル走 (2) 評価規準 関心 意欲 態度 3年 ○ 自分のめあてをもち、きまりを守り友達と協力し 、楽しく安全に学習 している。 4年 ○ 自分のめあてをもち、友達と互いに教え合い、支え合いながら 、楽し く安全に学習している。 思考 判断 3年 ○ 自分に合った活動の場や練習方法を見付けて練習している。 4年 ○ 自分の課題に気付き、適切な学習の場や練習方法を工夫している。 技能 3年 ○ 小型ハードルを3歩で調子よく走り越えることができる。 4年 ○ 小型ハードルを3歩で調子よく走り越え、スピードを落とさずに走り 通すことができる。 (3) 指導観 ○ 小型ハードル走は、等間隔に置かれた小型ハードルを、リズミカルに速く走り越す技 能を身に付ける運動である。授業では、ハードリングの技術を身に付ける練習を通し、 速さを競い合ったり、自分の記録に挑戦したりして、楽しみながら技能を高めることが できる。しかし、高度なスピードコントロールや、調整力が要求される 上、ハードルに ぶつかったり、転倒したりすることに対する恐怖心もあり、一般的には苦手とする児童 が多い。また、走力や身長の差が、学習を進める上で大きな影響を与える。 第3学年及び第4学年 では、小型ハードルを 自分に合ったリズムで 走り越すことがで きるように学習する。小型ハードルをリズムよく走り越すための練習の仕方を知り、自 分に必要な練習の方法や場を選び、それぞれの力に応じた課題をもって取り組んでいく ことが必要である。自分自身ではハードリング技術の向上を捉えにくい面があるので、 ビデオ撮影によるVTRの活用を行っている。VTRを利用することにより、友達と互 いのフォームを見合い、教え合いながら共に高め合い、技能の上達を喜び合うこともで き、大変効果的である。 ここでは、30m小型ハードルとして、3歩でリズムよく走り越せるハードル(3台) で、自分に合ったインターバルを見付けさせ、記録の向上を 目指す学習に取り組むこと とした。30mで3台(第1ハードルまで10m)としたのは、鹿屋市立鶴羽小学校、鹿屋 体育大学スポーツトレーニング教育センターの研究レポート「小学生期の発育・発達に 応じたハードル走の授業展開を考える」を参考とし、本学級の児童の実態を考え設定し 実践事例(4) 第3・4学年 体育科 ~小型ハードル走~(同単元同内容異程度による指導)
た。ハードリングの技能向上が記録・結果とし て出やすく、また、繰り返し練習に取り 組みやすいのではないかと考えたからである。 ○ 本時の体育学習に取り組む児童は、第3学年8名(男子5名、女子3名)と第4学年 11名(男子7名、女子4名)の計 19名である。運動や体育学習に対するアンケートの結 果は次に示す通りである。 好き どちらかといえ ば好き どちらかといえ ば嫌い 嫌い 運動やスポーツ 15 3 1 0 体育の学習 16 3 0 0 走ること(短距離) 11 3 4 1 小型ハードル走 14 4 1 0 小型ハードル走 (第1次終了時) うまくできる まあまあうまく あまりできない うまくできない 3 10 4 2 ハードル走の経験 今回が初めて 今年の陸上練習で経験 去年の陸上練習で経験 9 8 2 以上のような児童の実態から、小型ハードル走については児童が全体的にマイナスイ メージをあまりもっておらず、児童に適切な課題や場の設定をすることで、主体的に楽 しく学習ができると考えた。走力については個人差が大きく、また、調整力、体格につ いてもかなり差があるため、個別の支援と適切な学習の場の設定が必要と考える。そこ で、ハードルの高さやハードルのインターバルを個々の力に応じて設定し、ハードリン グの技能を高めていくこととした。児童自身が適切な学習の場や課題を見いだし、主体 的に学ぶとともに、友達と互いに助け合い教え合うことを通して、技能の向上や互いの 進歩を実感できる学習としたい。そのために児童の学習の手掛かりとなるよう視覚的に 捉えられる掲示物資料等の工夫を行い、VTRを効果的に活用したい。また、主運動に つながる補助運動の工夫を行い、ねらいとする動きや技能の習得につなげるようにした い。 ○ 本時は、まず、トレーニングラダーを利用して小型ハードル 走に必要となる基礎的な 動きを習得させるようにする。主運動に入る前には、学習カードを利用して、一人一人 のめあてをグループごとに発表させ、個々に取り組むことを明確にし、互いに協力でき るように確かめ合わせる。互いのよいところを参考としたり、アドバイスや補助をした りして、みんなで協力し合って高め合い、上達を喜び合う学習となるようにしたい。学 習カードへの記入により、しっかりと自分の活動と友達との 関わりについて振り返り、 よさを分かち合うとともに、次のめあてをもたせたい。 (4) 単元計画 (全7時間) 次 学 習 活 動 時 数 1 つかむ ・ 30m走の記録をとる。 ・ 30m小型ハードル(インターバル6m3台)の試走をし て記録をとる。 1 2 ・ 小型ハードル間を3歩で調子よく走り越えることができ るコース(インターバル)を見付け、記録をとる。 1 2 ・ 高める ・ VTRを見て、自分のめあて①を決め練習する。 1 4 ・ めあて①の達成に向けた練習を工夫する。 ・ 練習の成果を確認する。(記録、VTR) 1 (本時) ・ VTRを見て、自分のめあて②を決め練習する。 ・ めあて②の達成に向けた練習を工夫する。 1 ・ 練習の成果を確認する。(記録、VTR) 1 3 確かめる ・ 30m小型ハードルの記録会をする。 1 1
(5) 本時の学習 ① 本時のねらい 3年 ・ 小型ハードルを3歩で調子よく走り越すために、自分に合った活動の場や練習 方法を見付けて練習する。 ・ 友達のよいところやアドバイス、参考資料、VTR等を参考にしながら、協力 し合って練習に取り組む。 4年 ・ 小型ハードルを3歩で調子よく走り越すために、自分の課題に気付き、適切な 学習の場や練習方法を工夫 する。 ・ 互いによいところを参考とし、アドバイスや補助を行うなど、みんなで支え合 って練習に取り組む。 ② 準備 (教師) 小型ハードル(高さ 52cm、44cm、35cm)、ビブス、ラダー、ストップウォッチ、 高跳びスタンド、ソフトバー、掲示物、ビデオカメラ、テレビ、参考VTR (児童)学習カード、筆記用具 ③ 本時の展開 学 習 活 動 ○ 指導上の留意点 ◎ 評価 1 準備運動をする。 ・ 柔軟・ストレッチ ・ 足の振り上げ ・ 踏み切り足相撲 ・ 1・2・3ジャンプ 〔準備運動〕 2 慣れの運動をする。 ○ ラダーコーナーを設け、小型ハードル 走につながるリズム感やバランス感覚な どを養う。 3 本時のねらいを確認する。 ○ 全体のめあてを確認した後、グループ ご とで 一人 一人 のめあて を発 表す る。 自 分 の本 時の 課題 を明確に して おき 、互 い に協力できるように確かめ合う。 ○ 本 時 に 必 要 な 体 の 部 位 を 意 識 さ せ な が ら、ゆっくりと筋肉を伸ばさせる。 ○ 主運動につながる補助運動により、体を 徐々に慣れさせながら、ねらいとする動き の基礎となる運動を取り入れる。 〔 ラ ダ ー ト レ ー ニ ン グ 〕 〔グループごとでのめあて発表〕
4 めあて別に練習する。 〔課題別練習 振り上げ足〕 〔課題別練習 抜き足〕 〔課題別練習 前傾姿勢・踏切位置〕 5 コ ー ス 別 グ ル ー プ で さ ら に 練 習 し 、 成 果を確認する。 〔グループで友達にアドバイス〕 ○ めあてを思い出したり、ポイントを確認 したりと、児童がいつでも活用できるよう に、図や写真を入れた黒板を、よく見える 位置に準備しておく。 〔めあて・学習の流れ・本時のポイント〕 ○ 児 童 の め あ て に 応 じ た 練 習 の 場 や 用 具 等の工夫により、効果的な練習ができるよ うにする。 ○ 必要に応じて図やVTR等を利用して 視覚的に自分の動きを捉えさせる。 (資料1参照) ◎ 自 分 に 合 っ た 活 動 の 場 や 練 習 方 法 を 見 付けて練習できたか。(3年) ◎ 自分の課題に気付き、適切な学習の場や 練習方法を工夫できたか。(4年) ○ 4から5への学習活動の移行は、各グル ー プ の 活 動 状 況 に よ り 順 次 行 う よ う に 助 言する。
6 学習のまとめをする。 〔グループでの振り返り〕 ○ 自己評価カードへの記入を行い、本時の 学習を振り返る。 ◎ 友 達 の よ い と こ ろ や ア ド バ イ ス 、 V T R 等 を 参 考 と し な が ら 、 協 力 し 合 っ て 学 習できたか。(3年) ◎ 互いによいところを参考とし、アドバイ スや補助を行うなど、みんなで支え合って 練習に取り組めたか。(4年) ○ グループごとに、今日の学習の成果や友 達のよかったところなどを発表し合う。ま た、全体でも称揚し合い、次時のめあてを しっかりともてるようにする。 資 料 1 課 題 別 練 習 で の V T R 利 用 や 友 達 の ア ド バ ス に よ る 変 容 事例1 VTRを利用 V T R を 見 て 抜 き 足 が 横 に 開 か な い で、縦にたった状態でハードルを 跳び越 え て い る 上 下 動 の 大 き い 自 分 の フ ォ ー ムに気付くことができた。まずは、ゆっ く り と 歩 き な が ら 抜 き 足 だ け の 練 習 に 取り組み、横に開く感覚をつかんだ。グ ル ー プ の 友 達 に 見 て も ら っ て 抜 き 足 を 確 認 し な が ら 徐 々 に ス ピ ー ド を 上 げ て のハードリング練習に取り組み、抜き足 のフォームを修正することができた。 事例2 グループ児童のアドバイス ○ 踏切の場所がハードルに近い(お手玉を置 いて実際の踏切位置を確認)のでハー ドルを越えるときに上に高く跳び 上がりスピードも落ちている から、もう尐し遠く から踏み切るといいよ。 アドバイスを受けた児童(自己評価カードより) ○ Aさんに踏切場所のアドバイスをしてもらって、自分の踏切場所がハードルに近 いことが分かりました。いい踏切場所に目印のお手玉を置いて練習すると、速いス ピードでハードルを越えることができるようになりました。ハードルの間も5.5 mだったのが6mでできるようになりうれしかったです。 事例3 アドバイスを受けた児童 (学習のまとめでの感想発表) ○ B さ ん が 振 り 上 げ 足 が ハ ー ド ル よ り横から出てきて、まっすぐ前に出て いないと教えてくれました。そして、 振 り 上 げ 足 を ま っ す ぐ 前 に 出 す い い フ ォ ー ム と 横 か ら 出 す 悪 い フ ォ ー ム を見せてくれました。Bさんのまねを してみると、振り上げ足がまっすぐで きるようになったのでよかったです。
番号 氏 名 ビブス ハードル間 本時の練習 ポイント 30m走 ハードル間変更 ハードル間変更 備 考 15 4年 オレンジ3 3.5m ふり上げ足 まっすぐ 7.2 8.2 1 8 1.84m低3台 9.2 2 17 4年 オレンジ1 4 m ふり上げ足 遠くからとぶまっすぐ 6.6 8.5 1.9 3.5m 7.6 1 8.9 2.3グループリーダー 3 3年 オレンジ2 4 m ふり上げ足 前に出す 6.2 8.2 2 3.5m 7.8 1.6 8.6 2.4 1 3年 青 3 4.5m ふり上げ足横からださない 7.2 9.1 1.9 4m 8.5 1.3 9.8 2.6 16 4年 青 1 4.5m ふり上げ足 ピンとのばす足のうら 6.6 7.9 1.3 7.7 1.1 8.6 2グループリーダー 5 3年 青 2 4→4.5m 上半身ちゃんとまげる上半身 6.7 7.8 1.1 4m 7.6 0.94.5m 9.8 3.1 6 3年 青 4 4→4.5m ぬき足 ようにたおす力を入れる ぐぐっと 6.3 7.6 1.3 4m 7.8 1.54.5m 8.4 2.1 4 3年 青 5 4→4.5m 上半身 前にたおす 6.3 なし 4m 8.3 24.5m なし 1~2時は欠席 2 3年 黄 4 5 m 上半身 頭を下げる 5.9 7.3 1.4 7.2 1.3 7.6 1.7 19 4年 黄 1 5 m上半身→ぬき足へ 横にする 6.3 8.1 1.8 4.5m 8 1.7 8.7 2.4 14 4年 黄 2 5 m ふり上げ足 足の裏をだす 6.2 7.8 1.6 4.5m 7.3 1.1 8.8 2.6 9 4年 黄 3 5 m ふり上げ足まっすぐ伸ばす 5.9 7.2 1.3 7.5 1.6 7.7 1.8グループリーダー 7 3年 黄 5 5 m 上半身 ぐっとたおす 5.6 7.3 1.7 7.2 1.6 8.4 2.8 8 3年 黄 6 5 m 上半身 たおす 5.8 7 1.2 6.4 0.6 7.8 2 18 4年 紫 10 5.5m 上半身 たおす 6 7 1 7.1 1.1 7.6 1.6 11 4年 紫 1 6 m 上半身 すぎないたおし 5.6 6.5 0.9 6.4 0.8 7.6 2グループリーダー 10 4年 紫 2 6 m ぬき足 横に開く 7 7.4 0.4 5.5m 7 0.4 8.5 1.5 12 4年 紫 3 6 m ぬき足 横にまげるちゃんと 5.6 6.6 1 7.1 1.5 7.4 1.8 13 4年 紫 4 6 m ふり上げ足 まっすぐ 6.6 7 0.4 7.3 0.7 8 1.4 小型ハードル走 個人支援表 第 4 時 1回目30mH (30mとのタイム差) 本時30mH (30mとのタイム 試走ハードル間6mの 30mH(30mとのタイム差) (6) 考察 ① 事前アンケートや毎時間の自己評価カードにより、個々の実態や意識の把握、分析を 十分行った。それをもとに個人支援表を作成することで、個人差と学年差をしっかりと 把握することができ、場の設定や教具の工夫を進めることができた。また、児童一人一 人に応じためあてを設定させ、具体的に助言をし て手だてを講じることができた。 ② 3台のビデオカメラを用意し、児童に自分自身の小型ハードルを走りこすフォームを 視覚的に捉えさせた。視聴覚機器を活用することで、自分では認識することが難しい体 の動きを、児童が把握することができ、どこをどの ようにしていけばよいのか効果的な 手掛かりとなった。 また、授業後に教師がVTRで振り返ることにより、別グループを見ているときに把 握することができなかったグループの様子や、授業の中では気付かなかった児童一人一 人の技能の向上や、次への課題を把握でき、大変役立った。 ③ グループでの練習や話合いでは、4年生がリーダーシップを発揮して3年生へのアド バイスや手助けなどを行い、主体的に 関わり合い磨き合う学習とすることができた。児 童が何をどうすればよいのか、学習の流れやめあて、それぞれの課題等をしっかり把握 できるようにしておくことが不可欠であった。 3 おわりに 体育科において、合同授業を実施することは、 運動経験、技能の程度、体格・体力などの 学年差があるので下学年児童にかかる負担は大きいと考える。しかし、上学年がリーダーシ ップを取ることで、下学年を思いやり助け合うことができる。下学年は上学年のよい点を見 習い、まねる。上学年の優しさや学び方を受け止め、成長し次年度には上学年として受け継 いだことを次へとつないでいく。このような合同授業のプラスの部分を前向きに 捉え効果的 に実践していきたい。そのために、しっかりと教師が教材研 究を積み、個々の児童理解に努 め、指導の改善と工夫をすることで児童に掛かる負担を軽減し、よりよい授業を展開してい かなければならない。 今後も、合同授業で得られるプラスの部分を生かした授業実践ができように研究を積み重 ねていきたい。 資 料 2 個 人 支 援 表 ( 部 分 )