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「剰余」の産業と「欠損」の産業 -スラッファ体系における賃金変動-

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(1)

―スラッファ体系における賃金変動一

経済学教室 ヽ水

1.は

じめ に

投入行列ズ

=[物

],労

働投入ベクトル ′

=[み

],産

出量ベクトルχ

=脇

]で

代表される生産活

動をおこなっている

個の部門から構成される経済をかんがえよう

(1ち

このとき第 ブ部門では,各

部門の生産物 娩ブ

,・

…・

,し

%か

らなる物的投入と

,み

に等しい労働投入の結果

,第

ブ生産物が

/J・

単位

だけ生産されている。そこで

,価

格ベクトルと賃金率とを,そ れぞれ

,記

号少

=L与

]ぅ

ωであらわ

せば,こ の部門の賃金支払金額 は ″み。これに物的経費Ё ´B・/2・p・を加算 した総額が,第ブ部門の投下資 本額 であるも資本家 は

,こ

の もとでに一般利潤率 γをうわのせ した金額 を

,売

り上 げ収入 ヵ 持か ら 回収 しなければな らないので,

=(1+γ

為十

あるいは

,両

辺 を 々でわったうえで行列表示すれ ば

,ス

ラッファ体系の一般的表示 ´

=(1+7)(ク4+″

α。) (1.1) を得 る。ここで

,記

A,ら

,そ

れぞれ

,投

入係数行列 と労働投入係数ベ ク トルであ り,これ らの 代表元 α "と ηガは,第 ブ生産物 を

1単

位生産す るために心要な,第 ゲ生産物 の物的投入量や労働投入 量 をあ らわす。すなわち

,定

義上 αガ="EJr為 , Ъ =み/1J・ が成 り立つ。 一般 に

,(1. 1)式

で は

,利

潤率 あるい は賃金分配率のかたちであ らわされ る分配パラメーター のうちいずれか と

,価

値基準財 としてのニ ュメレール とがあたえられれば

,解

は一意 に決定 され る。 それで は

,こ

の ときぅか りに賃金率が上昇 した らどうなるであろうか。直感的には

,利

潤率が下落 す るであろうことは容易 に予想で きるだ ろう。 ところが

,こ

とはそれほ ど簡単で はない。 とい うのは

,賃

金率の上昇 自体 はすべての部門 に同等 の影響 をおよぼすわ けで はな く

,価

格が不変 のままとどまれば

,各

部門で使用 され る生産手段 と労 働 との比率の相違 に応 じて

,経

済内に

,平

均 より大 きい利潤率 を生 み出す「剰余」 の産業 と

,そ

れ より低 い利潤率 しか獲得で きない「欠損」の産業 とを同時に並存 させ ることにな り

,利

潤率均等化 を侵す ことになるか らである。 したが って

,こ

のままで は,「剰余」の産業 の生産が拡大 され る一方 で,「欠損」の産業で は生産縮小 を余儀 な くされ

,生

産 の「 くり返 し」としての再生産活動がスムー 聖

(2)

永田聖二:「剰余」の産業 と「欠損」の産業 ズに進行 しな くなる。ふたたび,「 くり返す」価格へ復帰す るためには

,前

者 の産業の生産物価格 は 下落 し

,後

者 のそれ は上昇 しなければな らない。 あるいは

,便

宜上

,前

者で は必要以上の生産拡張 が値 くずれ をひ きお こすのにたい して

,後

者 の生産物 の不足 はその価格上昇 をもた らす とかんがえ て もよか ろう。 ともか く

,利

潤率均等化 をみたすためには

,価

格 自体変化 して しまうわけであるか ら

,は

じめに 変化 した と仮定 した賃金率 もし くは賃金分配率 を測 るニ ュメレールにして も

,よ

ほど慎重 に選択 し ない と

,ニ

ュメレールの価格 自身が変化す ることになって

,価

値基準財 として不適 と判断 され るこ とになろう。 これ はリカー ドをなや ませつづ けた「不変 の価値尺度」問題であるん部分

,こ

の リカー ド の問いかけにたい して

, 1世

紀 あまりのちに

,標

準商品 とい うかたちで

,ひ

とつの解答 を提出 した のがスラッファである。 そ こで

,本

稿で は

,は

じめに

,賃

金率上昇 にさい して部門間の資本一労働比率の相違がいかにし て体系内に「剰余」の産業 と「欠損」の産業 とを生みだすのかを

,ス

ラッファのアイディアにもと づいて

,産

業関連分析 の手法 を利用 しつつ解明 したのちに

,こ

のようにして生 じた産業間ので こぽ こをな らし

,あ

らたな「復元す る」価格水準へ と向か うプロセスを

,平

均利潤率 を計算 して総費用 にうわのせす る手続 きをあ らわす漸化式のかたちであたえよう。 あわせて,「不変の価値尺度」とし ての標準商品の意義 を浮 き彫 りにすることも試みよう。

2.1部

門 経 済 と賃 金 ― 利 潤 フ ロ ンテ ィア 経済内に生産物がただ

1種

類 しか存在 しない ときには,賃金率 と利潤率 とのあいだの相反関係 は, む きだしのかたちであ らわれ る。 とい うの も

,そ

もそも価格 の基本的な機能 は

,さ

まざまな種類 の 生産物 を交換す るさいの交換比率 として役 に立つ ことにあるか ら

,生

産物 の種類がただ

1種

類 にか ぎられ るばあいには

,交

換比率 としての価格 の存在意義 その ものがな くなって しまうか らである。 この とき

,あ

とにの こされ る問題 は

,こ

の唯― の生産物 を資本家 と労働者のあいだで どのように分 配す るのか とい う問題 にす ぎない。両者の利害が まっこうか ら対立す ることは明白である。 この結果 を数式であ らわそう。仮定 によ り

,体

系内の変数 はすべてスカラーのかたちであらわれ るので

,(1. 1)か

ら, 1

7=4+チ

1

が成 り立 つ。ここで

,″

/ク は

,体

系 内の唯― の生産物 をニ ュメ レール として測 った実質賃金率 で あ り

,労

働 提供 の代償 として支払 われ た賃金 で労働 者 が何 単位 の生産 物 を買 い も どす こ とが で きるか をあ らわ してい る。 あ るい は

,労

働 者 が唯一提 供 可能 な労働 力 とよばれ る商 品 と

,資

本 家 が販 売 す る商 品 として の生産物 とのあいだの交換比率 で あ る とい って もよいで あ ろうが

,さ

きにぶれた よう に

,通

常 か んが え られ て い る生産物 相互 間 の交換比率 としての価格 は

,こ

の経済 で は在立根拠 を も た ない。 上 式 か ら

,実

質賃 金 率 初/ρ と利潤率 γとが逆 方向 に動 くことは明 白で はあ るが,のち に体 系 内 に 複 数 の生産物 を認 め るケー スか ら得 られ る結 果 と比較 で きる よ うに

,実

質賃 金 率 に代 えて賃金分配 率 を変数 として登場 させ た

,賃

金 ―利潤 フロ ンテ ィアの形式 で相 反関係 を表示 してみ よう。 │

(3)

そのために

,ま

,純

生産物 ノの定義か らはじめよう。 ノ=χ

-4χ

(2.1)

すなわち,体系内の生産物 χか ら生産活動のために使用 された物的投入 を控除 した残余 を純生産 物 とよぶ。 この純生産物 は人々が最終的に利用可能な生産物の数量 をあらわすが

,体

系内の生産物 が

1種

類 にか ぎられ るときには

,こ

の数量 の物的投入量 にたいする比率 をスカラーのかたちで定義 す ることがで きる。 これ を記号貿であらわ し

,物

的剰余比率 とよべば, 買

=十

三 半

=醤

=+ Q."

が成 り立つ。 したがって

,物

的タームであろうと価格 タームであろうと剰余比率 は同一の数資であ らわ され るが

,こ

の ことは

, 1部

門経済で は価格が実質上意味 をもたない ことか らあきらかであろ う。 そこで

,資

の定義 に注意 して

,労

働者が獲得す る賃金分配率 初*を

,純

生産物価額 に占める賃金総 額 の比率 として定義すれば, ″

*=

″Ъ χ

=

η,。 χ

=

勿Ъ

(2.3)

,ノ

五ψッ4χ

4

となる。 これを

(1. 1)に

代入すれば

,た

だちに

,賃

金―利潤フロンティア γ

=

(1-η

・) 二十″

*R

を得 る。 ここで は

,賃

金―利潤 の相反関係 を手 に取 るよ うに確認 で きる。なお , 潤 率 は最大値

/=R

を とる。 したが って

,最

大利潤率 は物 的剰余比率 に等 しい。

3.す

べての部門をつうじて資本一労働比率が均等なケース

スラッファによれば「労働 と生産手段 の割合がすべての産業において同一であれば

,各

種 の産業 における生産手段 の商品構成の相違が どれほど大 きくて も

,い

かなる価格変化 も生 じえない」0。 たがつて

,こ

のケースで も

, 1部

門経済 とまった く同 じように

,賃

金率 の変動 は

,直

,利

潤率の 逆方向への変化 をもた らす。このような経済 は

,た

とえ

,外

見上

,多

部門経済の様相 をしていて も, 分配問題 にかんす るか ぎ りでは

,あ

たか も

1部

門経済であるかのごとく取 りあつかって もよいわけ である。 このスラッファの命題 を

,産

業連関分析 の手法 をもちいて

,ゎ

か りやす く説明 しよう。 はじめに 「労働 と生産手段 の割合がすべての産業 において同一」であるという条件 は

,い

ゎゅる資本一労働 比率がすべての産業 をつ うじて等 しい ことを意味するので

,こ

の共通 の比率 を記号 たであらわせば

且夕

J物

/み=乃

(ブ

=1, 2,…

,%)

が成 り立つ。 あるい は

,両

辺 を 考でわって

,行

列表示すれば, メ

=娩

(3, 1)

となる。 このような資本一労働比率の定義で は

,未

知数である価格 自体 をすでに利用 したかたちに なっているので

,分

析 をつづ けてぃ くうえで

,は

なはだ

,不

適切であるようにお もえるか もしれな

(2.4)

″・

=0の

とき

,利

(4)

永田聖二 :「剰余」の産業 と「欠損」の産業 い。ところが

,ス

ラッファも注意深 く指摘 しているように “ち じつ は

,の

ちに

,こ

のケースでは価格 は分配パラメーターの動向か らは独立 に不変の ままとどまることが示 され るので

,そ

のような心配 は杞憂であることが判明す る。 ともあれ

,す

でに第

1節

で述べたように

,価

格方程式の一般的な表現 は, 夕

=(1+γ

)(夕

4+″

Ъ) で あ るか ら

,資

本 一労働 比 率 均 等 の条件

(3. 1)を

これ に代入 すれ ば, つ

=(1+7)(力

十 初)ぁ あるいは, 夕

=(1+γ

)(1+″

/乃

),4 (3, 4)

を得 る。

(3. 4)式

,価

格ベ ク トル タが投入係数行列

4の

非負固有ベ ク トルであることを意味す るが

,考

察の対象 となる経済が生産的な基礎的体系か らなるときには

,

この解 はスカラー倍 を除い て一意 に存在す ることが知 られているk51。 したがって,ニ ュメレール として採用 された尺度が同一で あるか ぎり

,分

配パ ラメーターが どの ように変化 しようとも

,価

格 は不変 のままとどまることがわ か る。 このように

,価

格が行列

4の

行固有ベ ク トルであることが半U明したので

,こ

ん どは

,つ

いでに双 対側 の列ベ ク トルのほうにも注 目してみ よう。

(3. 4)に

双対 な方程式 は

9=(1+買

)A●

(3. 5)

になるが

,こ

れ こそスラッファが

,

リカー ド以来の「不変の価値尺度」問題 に取 りくんだすえに発 見 した解答 なのであるが

,そ

の意義 は

,こ

の段階で はさほ どあ りがたみを感 じな くとも

,資

本一労 働比率が不均等なケースで は絶大 な威力 を発揮す ることになる。 この式 をみればわか るように

,す

べての生産物 の物的剰余比率が

Rに

等 しいような

,特

殊 な産出量体系が

,ス

ラッファのいう標準体 系であ り,この体系の純生産物ベ ク トル

RA?を

かれ は標準商品 と名づ けている。も ただ し,このベ ク トル もなん らかの規準化 をほ どこさない とな らないので

,ス

ラッファは

,こ

の体系の労働量が現 実の体系のそれ と一致す るような規準化 Ъ9=αメ

(3.6)

の採用 を提唱 してい る。 ともあれ

,生

産的で基礎的な体系で は

,解

の存在 と一意性 に くわえてその 正値性 も保証 され るので

,(3. 4)に

右か ら

?>0を

か けた もの と

,(3. 5)に

左か らつ

>0を

か けた もの とを比較すれば,

R―

″/々

(3. 7)

1+η

/カ を得る。 ここで

,賃

金分配率 が に注目すれば, 初

*=

初αメ 力 として定義 され ることになるが

,(3. 1),(3. 4)に

注意すれば,

=洗

=+

とな り

,資

本一労働比率が均等 なケースで は

,賃

金分配率 は産 出量水準や価格水準 の変動 に無関係 な数値 としてあ らわせ る。 また

,あ

きらかに

,こ

のばあい

,分

配率の計算 にさい して

,現

実の産 出 量 に代 えて標準体系のそれ を使用 して も結果 はかわ らない。

(3. 2)

(3. 3)

﹁ ︱ ︱ ︱

(5)

そ こで

,(3. 7)に

上式 を代入すれば

,周

知 の賃金―利潤 フロンティア が

=鼎

を得 る。あ きらかに

,こ

の結果 は

1部

門経済 のそれ と軌 を― にす る。 なお

,均

等な資本一労働比率 をもつ体系で は

,じ

つ は

,価

格 は労働価値 に比例す ることを証明で きる。 じっさい

,商

1単

位 にふ くまれ る労働価値 υを

,そ

の生産に直接投下 された労働量 ら と生 産手段 のかたちで間接的に投下 された労働量 泌 との和 に等 しい もの と定義すれば, υ=υAtt Ъ が成 り立 つので, ぁ=υ

(r-4)

(3.8)

これ にたい して

,(3. 1),(3. 3)か

ら, ´

(r-4)=買

娩 となるか ら

,あ

わせて, υ

=穴

r―猟

-411=cX/―

か ‐

=寺 p lr_猟 _D‐ =寺

少 したが って

,こ

のケースで は

,価

値 と価格 とは比例す る。 そうす ると

,資

本一労働比率が均等なケ ース とは

,じ

つ は

,労

働価値 タームで計算 された資本 の価値構成がすべての産業 について同一のケ ースであるとも

,い

いか えることがで きよう。

4.「

剰 余 」 の 産 業 と 「欠 損 」 の 産 業 いったん

,資

本一労働比率 の不均等性 を認 めれば

,こ

れ までの事情 は一変す る。賃金一利潤 フロ ンテ ィアに代表 され る

,資

本一労働間のむ きだ しの利害関係 は

,標

準商品 とい う

,ひ

とくふ うなし には,日の前 にはあ らわれない。とい うの も,リ カー ドがすでに気づいていた ように。),資本一労働 比率が産業間で異 なる場合 には

,生

産方法 それ 自体 は不変であった として も

,賃

金変動 にさい して, 利潤率均等化 の要請 と価格 の不変性 とは両立 しないか らである。 このようにして生 じる問題 を

,ス

ラッファは

,つ

ぎのようにまとめている。 「賃金の変化か ら出て くる相対価格 の動 きを解 く鍵 は

,労

働 と生産手段 とが各種 の産業で使用 され る割合 の不均等性 のなかにひそんでいる。」Kal 「 ある特定 の産業 において

,賃

金引下 げによってセーブされ る額 は

,雇

用 された人数 に依存 し, 一方

,均

― な率で利潤 を支払 うために必要 な額 は

,使

用 された生産手段 の総価値 に依存す るで あろうか ら

,賃

金 と利潤 との支払 において

,生

産手段 に対 して労働 の割合が十分 ひ くい産業 は 欠損 を出すのに反 して

,そ

のような割合が十分高い産業 は剰余 を出すであろう。」

0

それで は

,つ

ぎに

,こ

のようなスラッファ=リ カー ドの流れを くむ

,賃

金変動 と価格 の問題 を, 産業連関分析 の手法 を利用 して

,検

討 しよう。 賃金率が初期値 ″°であたえられた とき

,価

格方程式 ク

=(1+γ

)(´五十″ち) (4。

1)

をみたす解 を,ο,γつとする。いま

,賃

金率が ωlの水準 に上昇 した としよう。この とき

,一

般 に

,産

業 ごとに資本一労働比率が異 なるので,も との価格 そのままで は

,資

本一労働比率の高い部門で は, この経済での平均的な水準 より多額 の利潤が獲得 され るのにたいして

,逆

,こ

の比率が低 い部門

(6)

永田聖二:「剰余」の産業 と「欠損」の産業 の利潤 は

,平

均 的 な利潤 を まか な うに は不足 す る。 この事情 を くわ し くみてゆ こう。 初 期 の利 潤 ベ ク トル を記 号 π°で あ らわせ ば

,定

義 に よ り, π°=夕 °

(r-4)ォ

ータο晩″=γ°(少°五十″°Ъ)″ =γ °(夕°

4+初

lЪ)オーγ°(″1-初°)曳ガ

(4. 2)

ただ し

,記

号 ガは

,第

ゲ生産物 の産 出量 れを第 ゲ対角要素 とす るような対角行列 をあらわす。 一方

,賃

金率が が へ上昇 した とき

,価

格が 少°のままに とどまれば

,利

潤 は, π

(1)=夕

°(r一A)ォ ータ1晩 ガ=π °―(初ユー″°)兌″ にな り

,賃

金上昇の結果

,す

べての部門で利潤 は減少す る。 この式 に

(4. 2)を

代入 して

,左

か ら第 ブ単位ベ ク トル メをかければ

,第

ブ部門の利潤 π(1)ゴ=γ°(ク°五十初lЪ)〆為―

(1+γ

°)(ωl―″°)ぁメち =(γ

°

―(1+γ °

)(″1-初

°

)(力 (0)ブ

+″

1)1}(夕

°

五十η

lЪ)′

(4.3)

を得る。ただし

,記

号 力(0)すは,夕°という価格で評価された

,第

ブ部門の資本一労働比率 々(0)」=´切 つす

メ をあらわす。なお

,第

ブ単位ベク トル メとは

,第

ブ番 目の要素のみが

1で

,の

こりはすべて 0の 要 素をもつ列ベ ク トルのことである

,あ

るいは

,単

位行列

rの

第 ブ列 といってもよかろう。 そうすると

,こ

の部門の利潤率 γ(1)プは, π(1) γ(1)す= これ にたい して, (クο

4+,lЪ

)′ち (4。

3)式

に注意すれば, π(1)1 平均利潤率 は, ア

(1)=

(夕ο

4+″

lЪ)χ =γ°―

(1+γ

)(ωl―″9)(万(0)十 初1) 1 であるか ら

,平

均的な利潤率 ア(1)をあげるためには

,第

ブ部門の利潤 は, 万(1),こア(1)(クο

4+ω

lЪ)ιJ/J・ =(7°

(1+γ

°)(ηl―″°)(万(0)+″1)1}(夕°五十初lЪ)が だけ必要 になる。ただ し

,ベ

ク トル とは

,す

べての要素が

1で

あるようなベ ク そ こで

,価

格が っ°のままとどまるときの

,利

潤 の現実額 (4。

3)と

必要額 すれば π(1),一万(1)ブ=(γ (1)J―ア(1))(夕 °

4+ω

lЪ)メち

=―

(1+γ

°)(ωl―初°)((々 (0)Jtt ω l)I―(万(0)十初1)1)(夕 ο五十ωlЪ)′為

(4. 7)

にな るので

,″

1>初°の ときに は,

)ブ

(0)多

γ

(1)び

妻ア

(1)多

π

(1)ブ

≡万

(1)J すなわち

,賃

金上昇 にさい して

,価

格 夕οのままで は

,平

均 よ り資本集約的な産業で は利潤率や利潤 額 は平均的な水準 よ り大 きい。 これにたい して

,労

働集約的な産業のそれ らは平均値 を下 まわ る。 同様 の推論か ら

,賃

金が下落す るときには

,資

本集約的産業 と労働集約的産業 の立場 は逆転 し

,前

者 は平均以下 の

,そ

して

,後

者 は平均以上 の率で利潤 を獲得す ることがわかる。いずれ にして も, 賃金変動 にさい して は

,こ

の経済のなかで

,平

均的な水準 と比較 して,「剰余」の産業 と「欠損」の 産業 とが並存す ることにな り

,こ

のままで は

,部

門間で資本 の効率が不均等であ り,夕°という価格 は

,生

産 を「復元す る」価格 として は不適切 になる。

(4.4)

(4.5)

(4.6)

トルをあらわす。

(4.6)と

を比較

(7)

このような不都合 を解消す るためには,「剰余」の産業の生産物価格 は下落 し

,逆

に,「欠損」の 産業 の価格 は上昇 しなければな らない。そ こで

,そ

のような価格 のひ とつ として

,旧

価格 ´°で評価 した生産費 に平均率 ア(0)をうわのせ した価格 夕

(1)=(1+ァ

(0))(夕°Att ωlЪ)

(4. 8)

を採用す る。一般 に

,こ

の価格 も

,ま

,不

適切であろうか ら

,こ

ん どは

,価

格 ク

(1)で

評価 した 平均利潤率 ア(1)を ,この価格で評価 した生産費 にうわのせ しよう。以下同様 に,こ のような

,平

均 利潤率のうわのせ と価格改訂のプロセスを くり返せ ば

,の

ちに示す ように

,新

しい賃金水準 ″ に対 応 した

,す

べての部門 に同一の利潤率 γlをもた らす ような価格

´l=(1+γ

l)●

14+η

に収東する。

5.「

復 元す る」価格 への収東

(4. 9)

この節で は

,前

節で証明 を保留 しておいた,「復元す る」価格への収束問題 を検討 しよう。 そのた めには

,前

節で は明示的には触れなかったが

,価

格や賃金 を測 るニ ュメレールを

,あ

らか じめ

,指

定 してお く必要が あろう。第

3節

ですでに予告 しておいた とお り

,ニ

ュメレール としてスラッファ が採用 したのは

,標

準体系

T=(1+賀 )AT, (5. 1)

ЪT=αメ

(5. 2)

の純 生産 物 盈

4?で

あ る。 この

,ス

ラ ッ フ ァの い う

,標

準 商 品 で測 っ た賃 金 総 額 を

,記

号 ″*で あ ら わ せ ば, ″*=汁 =洗 になる。 そうす ると, ″

=

″・

RPAT

αοT とあ らわ され るので

,こ

れ を

,価

格 方程式 ´

=(1+7)lP4+″

Ъ) に代入 すれ ば, ク

=(1+7)夕

左 (5。 3) とい うかたちに書 き換 えることがで きる。 ここで

,あ

らたに登場 した記号И は

,つ

に きのように定 義 され る行列であ り

,労

働力 とい う特殊 な商品の投入 を

,あ

たか も

,そ

の価格である賃金 に相 当す る標準商品の量で擬制 して表現す ることによ り

,労

働投入 までふ くめた広義 の投入係 数行列 をあら わ している。 И

=4+

″句し4豊

% =4(r十

"・R字

%) (5. 6)

Ъ¢

Ъσ この行列 は

,し

ば しば

,増

補 投 入係 数行 列 とよばれ る もの に相 当す る。 なお

,定

義 か らあ き らかな よ うに

,標

準比率 買や標 準商 品 は

,投

入係数行列 か ら一意 に定 まるので

,増

補 投入係 数行 列 自体, 分 配 パ ラメー ター として の賃 金分配率 ″率が ぁた ぇ られれ ば,投 入係数行列 や労働投入係数ベ ク トル に代表 され る

,生

産 技術 的 な関係 か ら一意 に定 まる ことがわか る。 (5。

4)

(5.5)

(8)

永田聖二 :「剰余」の産業 と「欠損」の産業 この増補投入係数行列 を利用すれば

,前

節末で提示 した漸化式 は, ク(チ

+1)=(1+γ

(サ ))ク (チ )И

, (5. 7)

n=

.働

とい うかたちであ らわされ る。ここで

,収

東性 を示すためには

,な

ん らかの規準化が必要であるが, スラッファが

,ニ

ュメレール として標準商品の採用 を提唱 していることを想起 すれば

,か

れの規準 化 は

,標

準国民所得 為盟 σを 1と す る原則であることがわかる。そして,この ときには

,漸

化式 は, ク(サ

+1)=

(1+γ

(サ))夕(サ)И

R(1+γ

(サ))ク(チ)4 49

ι

(サ)β

01

貿う

(サ)】0-二

A?

という

,単

一の方程式に帰着する。ただし,う(サ

),Bは

, 率ベ ク トルならびに確率行列であ り, ズ の

=器

,

B=0-1(1+資

)4‐0, (5。

9)

それぞれ

,つ

ぎに定義 され るよ うな

,確

(5。 10)

また,記号資

,0は

,そ

れぞれ

,増

補投入係数行列夏にかんする標準比率と

,こ

の行列の非負固有

ベクトルσの第ブ要素を第デ対角要素とするような対角行列とをあらわす

(10。 そうす ると

,安

定行列 の性質か ら,ク(テ)の極限 クが存在 し(11上 ´

=

とあ らわせ ることがわか るが

,こ

れ は

,じ

つ は

,価

格体系

(5. 5)の

解である。 じっさい

,固

有 確率ベ ク トルの定義か ら

,あ

きらかに,

0-l=(1+資

)ぅo-1万 が成 り立つが,こ れ は,う0-1が増補投入係数行列 4 の 非負固有ベ ク トルであることを意味す るか ら である。また

,利

潤率 は,この とき

,行

列 И にかんす る標準比率 だ に等 しいので

,増

補投入係数行 列 にかん しての最大利潤率で もあることがわか る。すなわち,

/=資

,

9=(1+だ

)ズσ, 夕

=(1+責

)クA, が成 り立つ。 これ らの結果か ら,標準商品で測 った賃金 ″・ の上昇が利潤率 γにおよぼす影響 は,あ きらかであ ろう。ω*の上昇 は

,(5.6)で

定義 され る増補投入係数行列 のすべての要素の値 を大 き くす るので, フロベニウスの定理か ら,この行列 И の固有値 も大 き くなる

,し

たがって,資 は小 さ くなるか らで ある(1か

6.お

わ りに 本稿では

,資

本一労働比率が不均等な経済で

,賃

金の上昇が生 じたとき

,か

りに価格が もとの水 準のままとどまったならば

,平

均 より資本一労働比率が大 きい産業では利潤 は平均的な水準をうわ

(9)

まわ る「剰余」 を生 みだすのにたいして

,平

均 よ り低 い比率 をもつ産業で は平均的な利潤 をまかな うには「欠損」 をだす こと

,し

たがって

,利

潤率均等条件 を維持するためには

,価

格 の変動 をまぬ がれえない ことを

,ス

ラッファ『商品による商品の生産』のアイディアにもとづいて

,線

形数学の 定理や産業連関分析 の手法 を利用 しつつ

,検

討 した。 その結果

,

リカー ドに起源 を発する「不変の価値尺度」問題 にたいする解答 としてスラッファが 発見 した

,標

準商品 を採用 しさえすれば

,漸

化式

(5. 9)で

あらわされているように

,産

業間に 生 じる「剰余」や「欠損」といったで こぼ こをな らしてい くプロセスをた どることにより

,(5. 5)

をみたす ような

,あ

らたな「復元す る」価格へ収束することがわかった。 しか も

,こ

の とき成立す る利潤率 は

,以

前の水準 より低 くなることが判明 した。 したがって

,た

とえ多数の産業 をぶ くむ経 済であって も

,価

格水準 自体 の変動 にもかかわ らず

, 1部

門経済 とまった く同 じように

,賃

金上昇

,直

,利

潤率の低下をまねくことがわかる。そうぃった意味で

,資

本と労働とのあいだには

, リカー ドが主張 した,「賃金―不U潤の相反関係」が存在するといえよう。 けれ ども,「賃金一利潤 の相反関係」を示すためには

,こ

のように

,こ

むずか しい線形数学 の定理 を援用す る必要 はない。それで は

,わ

ざわざ

,ス

ラッファが「不変 の価値尺度」 として標準商品を 発見 したかいがない。 じつ は

,ニ

ュメレール として標準商品を採用す るだけで

,資

本一労働比率が 均等でない ときにも

,そ

れが均等なケース とまった く同 じように

,賃

金―利潤 フロンティアを導 き 出せ る。 じっさぃ,(5。

1)に

左か ら価格ベ ク トル タをかけた もの と

,(5. 4)に

右か ら標準体 系の産出量ベ ク トル αをかけた もの とを士ヒ較すれば, つ

4?=´

(r-4)9=γ

4?+″

Ъ

T)+″

,。T が成 り立つので

,(5。

3)に

注意すれば

,以

前 とまった く同 じかたちで

,賃

金一利潤 フロンティア γ

=資

(1-″

・) 二十″*買 を導出で きるのである。 したがって

,た

とぇ

,資

本一労働比率が不均等 なケースであって

,分

配パ ラメーターの変化 その ものが価格変動 を引 き起 こす ときにも

,価

格や賃金 を測 るニ ュメレール とし て標準商品 を採用 しさえすれば,あたか も

1部

門経済で もあるかのごとく,「賃金―利潤の相反関係」 を

,む

きだ しのまま

,日

の前 にさらす ことがで きる。 このように

,分

配問題 にかんす るか ぎり

,現

実の体系 を

,あ

たか も

1部

Fg経済 のごとく取 りあつか えるようにで きるとい う点で

,ス

ラッファが あみだ した標準商品 は

,顕

著 な意義 をもつ といえよう(19。 [,ヨE] このような経済で生 じる価格にかんする諸問題については, くわしくは,永田

[4]参

照。 リカー ド

[9]第

1章参照。また,永田

[4]や

ロンカッリア [lo]第 3章 もみよ。 スラッファ[■

]訳

書20ページ参照。 スラッファ[■

]訳

書20∼21ページ参照。 三階堂 [6]第3章,あるいは

,[7]第

2章 参照。なお

,体

系内で , 剰余を生みだしうるとき,すなわち, π>4″ をみたす非負の産出量ベク トルが存在するとき,この経済は生産的であるという。また

,経

済が基礎的体系か ら構成されるとは,体系内のすべての生産物が,どの生産物の生産にも,直接,生産手段 として投入 されるか, もしくは

,生

産手段の生産手段 として間接的に投入されることをいう。 くわしくは,永

[3]参

照。 側 ② ① 側 ⑤ すべての生産物にかんして

,正

の物的

(10)

永田聖二 :「剰余」の産業 と「欠損」の産業 脩

)ス

ラッファ[■

]訳

書33ページ参照。 (7)リ カー ド

[9]第

1章, とくに,第 3節参照。 (8)ス ラッファ [11]訳 書20ページ参照。 (9)ス ラッフア[■

]訳

書21ページ参照。

10

ベク トルを構成する要素の総和が 1に 等 しい非負ベク トルを,確率ベ ク トル という。同様 に

,行

列 を構成す るすべての行ベ ク トルが確率ベ ク トルであるとき, この行列 を確率行列 とよぶ。なお,永田 [2],ならびに,

[4]参

照。

10

ゲール[1]第8章

,三

階堂[7]第2章,あるいは

,Nikaido[8]第

2章参照。また

,永

田[2]や [3] もみよ。 1か 三階堂

[6],[7],あ

るいは

,Nikaido[8]参

照。

10

スラッファの標準体系については,永田

[5]参

照。

参考文献

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[2]永

田聖二「安定行列 と価格 一一Leontief‐Sraffa体 系における価格の収束性 ―一」九州大学『経済学研究』 第52巻第 6号,1987年 。

[3]永

田聖二「Leontief‐Sraffa体 系における非基礎的生産物――「自然価格」の存在 とその収東性 ―一」九州 大学『経済学研究』第53巻第 3号,1987年 。

[4]永

田聖二「スラッファ理論の構造」(時政易,山下正毅編著『現代マクロ経済学 ―一 その基礎 と展開 ――』 第12章,中央経済社,1991年)。

[5]永

田聖二「スラッファ標準体系の収東性について一一 どのようにして現実の体系か ら標準体系をつ くりあ げるのか 一――」『鳥取大学教育学部研究報告 (人文・ 社会科学)』 第42巻第 1号,1991年 。

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階堂副包『現代経済学の数学的方法 一一 位相数学による分析入門 ――』岩波書店,1960年 。

[7]三

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,吉

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波書店,1987年)。

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Sげ

ω 物 諺 鹿

S―

一 物 カ カ αC万効ク♂げ 身 ο″ο″ゲσ ttσοヮ ーー,Cambridge U,P,,196砒 (菱山泉,山下博訳『商品による商品の生産 ―一 経済理論 批判序説

J有

斐閣,1962年)。 (1991年 8月31日受理)

l

参照

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