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対馬海峡から山陰沖における物質輸送過程に関する観測研究 水産大学校海洋生産管理学科滝川哲太郎 愛媛大学沿岸環境科学研究センター森本昭彦 研究目的中国大陸の経済発展や地球規模の温暖化現象が, 東シナ海の海洋環境に影響を与えていると考えられる. この東シナ海の水塊は, 対馬暖流によって対馬海峡を通過し,

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Academic year: 2021

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様式3 愛媛大学沿岸環境科学研究センター 共同利用・共同研究拠点「化学汚染・沿岸環境研究拠点」 共同研究報告書 平成29年 2月28日 化学汚染・沿岸環境研究拠点 拠点長 殿 申請者(研究代表者) 所属機関 長崎大学大学院水産・環境科学総合研究科 職 _准教授_______________ 氏名 _滝川_哲太郎____________ e-mail tetu@nagasaki-u.ac.jp 下記の共同研究について、別紙の通り報告します。 1 研究課題 対馬海峡から山陰沖における物質輸送過程に関する観測研究 2 研究組織 氏名 所属 職 分担研究課題 代表者 滝川 哲太郎 長崎大学大学院水産・ 環境科学総合研究科 准教授 海洋観測とそのデータ解析 拠点対応教員 森本 昭彦 愛媛大学沿岸環境科学研究センター 教授 海洋観測と栄養塩分析 3 研究内容 (別紙)

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対馬海峡から山陰沖における物質輸送過程に関する観測研究 水産大学校海洋生産管理学科 滝川哲太郎 愛媛大学沿岸環境科学研究センター 森本 昭彦 研究目的 中国大陸の経済発展や地球規模の温暖化現象が,東シナ海の海洋環境に影響を与 えていると考えられる.この東シナ海の水塊は,対馬暖流によって対馬海峡を通過 し,そして日本海へ流入する.これまで,2005 年から対馬海峡を通過する栄養塩類 等の物質輸送量を観測から明らかにし(e.g. 森本ら, 2013, 海と空),日本海南西海 域における栄養塩分布を示してきた(Takikawa et al., 2016, JO).しかし,日本海 へ流入した後の山陰沖での対馬暖流の平均的な流路については,未解明な部分を残 している(Ito et al., 2014, PIO).このため,対馬海峡を通過した物質が,どのよう に分布するか議論するのは難しい現状である.本研究では,対馬海峡から日本海南 西海域において,船舶による物理-化学過程に関する継続的な海洋観測と栄養塩分 析を行い,栄養塩輸送量の経年変動を明らかにするとともに,日本海南西海域にお ける栄養塩分布とその変動について研究を進めるためのデータを蓄積する. 船舶観測 対馬海峡から日本海南西海域の対馬暖流域を中心に,水産大学校練習船を用いた CTD・採水等の海洋観測を実施した.観測期間,使用船舶,観測項目を表 1 に示し, 対馬海峡から日本海南西海域にかけての観測点を図 1 に示す.観測海域は,観測目 的から大きく2つに分類される.一つは,日本海に流入する対馬暖流を観測するた めの対馬海峡横断測線(CL 測線)であり,もう一つは,対馬海峡を通過したあとの 分布を捉えるための日本海南西海域である(山口県水産研究センターの定点と同じ 観測点). CL 測線は,博多-釜山間を結ぶフェリー「ニューかめりあ」の航路である.この フェリーの船底には acoustic Doppler current profiler (ADCP) が付いており,対馬 暖流のモニタリングが行われている.この ADCP モニタリングによって,このフェ リー航路上では,1 日 1 回または 2 回といった往復流である潮流成分が既知である

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(Takikawa et al., 2003, JO).そのため,本研究で得られた 1 回の観測結果から, 潮流成分を除去し,東シナ海から日本海に流入する平均的な対馬暖流の流量や物質 輸送量を見積もることができる. 日本海南西海域では,愛媛大学沿岸環境科学研究センターの遠距離海洋レーダに よる表層流のモニタリングが行われている.将来的には,このレーダ表層流と船舶 観測結果を組み合わせ,日本海南西海域における栄養塩分布やその輸送過程につい て研究を進めることが可能となる. 栄養塩分析結果 2014 年から 2015 年の航海で得られた一部のサンプルを用い,栄養塩類の分析を 行った.この分析には,愛媛大学沿岸環境科学研究センター所有のオートアナライ ザーを使用した.分析項目は,硝酸塩+亜硝酸塩(NO3+NO2),亜硝酸塩(NO2), ケイ酸塩(SiO2),リン酸塩(PO4)である. ここでは,2014 年の対馬海峡から山陰沖にかけての栄養塩分布の特徴を報告する. 全観測海域において,表層付近の栄養塩類は枯渇していたため,ここでは,深度 50 m の栄養塩分布について説明する.図 2—4 には,50 m 深の栄養塩(DIN:硝酸+亜 硝酸)の水平分布を示す. 2014 年 6 月(図 2,T223 & KS-14-09 航海)では,対馬海峡東水道から見島付近 にかけて,DIN 濃度 3.5 µM 以上の水塊が帯状に広がっていた.東水道の中央部 (CL04)からは,DIN 濃度 5.0 µM の水塊が日本海に流入していた.西水道の CL08 では,DIN 濃度が 0.9 µM(東水道の最大値)と低い値を示したが,その隣接する測 点(CL07a)では,DIN 濃度 5.1 µM(西水道の最大値)であった.また,STN13 では,DIN 濃度 4 µM 以上の水塊がパッチ状に分布していた. 2014 年 8 月(図 3,T225 航海)では,日本海側の STN11’T から対馬海峡に向か って STN03’まで,DIN 濃度 8 µM 以上の水塊が分布していた.東水道と西水道の DIN 濃度の最大値は, それぞれ 5.0 µM(CL05)と 9.8 µM(CL07a)であった. 日本海から広がっている高 DIN 水は,西水道の高 DIN 水と連続的に分布しておら ず,東水道の DIN 濃度よりも 3 µM 以上が高かった. 2014 年 9~10 月(図 4,T226 航海)では,2 つの海域で,高 DIN 水が北東-南 西方向に帯状に分布していた.一つは,日本沿岸域で DIN 濃度 3 µM 以上の水塊で

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あった.もう一つは,東水道中央部(CL04)から北東方向に分布しており,CL04 では DIN 濃度 7.2 µM であったが,日本海に進入するにつれて低栄養となり,STN03’ では DIN 濃度 3.6 µM であった.西水道からも,高 DIN 水(CL08a:8.8 µM)が 流入していた. 謝辞 現場海洋観測の実施には,水産大学校練習船「耕洋丸」・「天鷹丸」の船長をはじ めとする乗組員の皆様の協力が不可欠でした.ここに,耕洋丸の鎌野忠船長,天鷹 丸の秦一浩船長,観測に協力頂いた水産大学校の若林敏江准教授,そして水産大学 校練習船に関わられた皆様に感謝いたします.さらに,本研究を行うにあたり,愛 媛大学沿岸環境科学研究センターの大西秀次郎氏,柴野良太博士,愛媛大学大学院 理工学研究科の中川美和氏にご協力頂きました. 表 1.船舶観測の期間と項目. 航海 期間(2016 年) 船舶 観測項目 K058 4/18— 5/24 耕洋丸 CTD+採水, 航走 ADCP, 航走連続表層水温・塩分・クロロフィル測定, ノルパックネット T238 5/10— 5/25 天鷹丸 CTD+採水, 航走 ADCP, 航走連続表層水温・塩分・クロロフィル測定, ボンゴネット,トロールネット T239 6/15— 6/20 天鷹丸 CTD+採水, 航走 ADCP, 航走連続表層水温・塩分・クロロフィル測定, GPS 漂流ブイ, ノルパックネット T242 9/ 6— 9/11 天鷹丸 CTD+採水, 航走 ADCP, 航走連続表層水温・塩分・クロロフィル測定, ボンゴネット

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K058 T238 T239 T242 図 1.航海ごとの対馬海峡から山陰沖の対馬暖流域の観測点図. 図 2.2014 年 6 月 14 日から 6 月 19 日にかけての DIN の水平分布(50 m 深).栄 養塩類の採水は,水産大学校練習船「天鷹丸」T223 航海,海洋研究開発機構「新 青丸」KS-14-09 航海で行われた. 見島 東水道 西水道 STN13 CL08 CL04 CL07a

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図 3.2014 年 8 月 20 日から 8 月 23 日にかけての DIN の水平分布(50 m 深).栄 養塩類の採水は,水産大学校練習船「天鷹丸」T225 航海で行われた. 図 4.2014 年 9 月 28 日から 10 月 3 日にかけての DIN の水平分布(50 m 深).栄 養塩類の採水は,水産大学校練習船「天鷹丸」T226 航海で行われた. STN11’T STN03’ CL05 CL07a CL04 STN03’ CL08a

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成果発表 【論文等】

滝川哲太郎, 森本昭彦, 鬼塚剛: 水産大学校練習船による対馬海峡における現場海 洋観測. 海洋水産エンジニアリング, 128, 68-74 (2016)

Inoue M, Shirotani Y, Furusawa Y, Fujimoto K, Kofuji H, Yoshida K, Nagao S, Yamamoto M, Hamajima Y, Honda N, Morimoto A, Takikawa T, Shiomoto A, Isoda Y, Minakawa M: Migration area of the Tsushima Warm Current Branches within the Sea of Japan: Implications from transport of 228Ra.

Continental Shelf Research (Available online 29 August 2016)

Takikawa T, Watanabe T, Senjyu T, Morimoto A: Wind-driven intensification of the Tsushima Warm Current along the Japanese coast detected by sea level difference in the summer monsoon of 2013. Continental Shelf Research

(Available online 8 June 2016)

Takikawa T, Morimoto A, Onitsuka G: Subsurface nutrient maximum and submesoscale structures in the southwestern Japan Sea. Journal of Oceanography, 72, 529-540 (2016) 【学会等発表】 滝川哲太郎,渡辺俊輝,千手智晴,森本昭彦: 長門市青海島と萩市見島の水位差から 見積もられた対馬暖流沿岸分枝流の変動. 日本海及び日本周辺海域の海況モニ タリングと波浪計測に関する研究集会, 九州大学応用力学研究所 (2016.12) 滝川哲太郎, 小針統, 森本昭彦, 渡辺俊輝, 杉谷茂夫, 岩井宏徳, 久島萌人, 藤井智 史, 市川香, 雨谷純, 山田東也: 流動場とプランクトン分布-山陰沖遠距離海洋 レーダ海域における物理・生物観測-. 2016 年度九州沖縄地区合同シンポジウム 「九州沖縄地区における現場海洋観測とその連携研究」, 鹿児島 (2016.12) 滝川哲太郎,森本昭彦,鬼塚剛: 近 10 年間の対馬海峡から山陰沖にかけての海洋観 測結果. 金沢大学・環日本海域環境研究センター共同利用シンポジウム「対馬暖 流系の変動機構の解明に向けて」, 金沢 (2016.11) 滝川哲太郎, 森本昭彦, 久島萌人, 市川香, 伊藤雅, 油布圭: 山陰沖陸棚上における 対馬暖流流軸と内部潮汐に伴う底層水温変動. 研究集会「宗谷暖流を始めとした 対馬暖流系の変動メカニズム」, 北海道大学低温科学研究所, 北海道 (2016.6-7)

参照

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