(1)電力自由化の流れ 2000 年に始まった電力小売事業 の自由化は、4回に渡る大きな制度 改革の議論が行われ、図2に示すよ うに特別高圧(2万 V 以上)から高 圧(6千 V)へ自由化領域が拡大さ れてきました。その中、産声を上げ た新規参入者である特定規模電気事 電力自由化の流れを受け 2000 年 7 月、NTT グループである NTT ファ シリティーズ、東京ガス、大阪ガス の出資により、ICT とエネルギーの 融合により新たな価値を創造し、電 力事業に新風を起こすべくエネット は誕生しました。 表1にエネットの会社概要を、図 1 にエネットの電力事業に対するビ ジョンを示します。 2000 年に始まった規制緩和による電力小売自由化は 10 年を迎え、日本が「低炭素社会」に向け大きく舵を切る 中、エネルギー事業は新たなビジネスチャンスの到来と課題に直面しつつある。ここでは、エネット 10 年の事 業の歩みと新たなビジネス創造への取組みについて紹介する。 株式会社エネット 取締役営業本部長 中村 公雄 自由化済 市場規模 6.7兆円 (46%) 高圧電力 (6,000V) ・中小規模工場/スーパー/中小ビル ・契約数:約74万口 ・電力量:37% 市場規模 5.0兆円 (35%) 特別高圧電力 (20,000V以上) ・大規模工場/デパート /オフィスビル 等 ・契約数:約9,000口 ・電力量:26% 市場規模 2.8兆円 (19%) 2000年3月より特別高圧電力にて自由化開始 2005年4月より高圧全面自由化 市場全体:14.5兆円 (参考:情報通信市場規模=14.6兆円※1、※2) 理由:需要家から見て選択肢が十分でない =PPSが十分に成長していない :自由化した場合にメーターコスト(検針等 の費用)等がかさみ需要家に逆に転嫁 される可能性 競争促進策の推進が不十分・PPSシェア停滞 規制 低圧電力 (100∼200V) 【電灯】 一般家庭等 ・契約数:約7,000万口 ・電力量:31% 【低圧】 町工場/コンビニ等 ・契約数:約640万口 ・電力量:6% 2008年自由化検討 → 自由化見送り ※1:平成20年版情報通信白書より引用 ※2:固定通信+移動通信の合計 図 2 電力小売市場自由化の概要 ■ 社名 : 株式会社エネット(英文名:ENNET Corporation)
ENNET =ENERGY + NETWORK 【ENERGYとNETWORKの融合から命名】 ■ 設立時期 : 平成12年7月7日 ■ 本社所在地 : 東京都港区 ■ 資本金 : 63億円 ■出資会社 : 株式会社NTTファシリティーズ(40%) 東京ガス株式会社 (30%) 大阪ガス株式会社(30%) ■ 事業内容 : ・電力売買事業 ・発電事業 ・熱エネルギー供給事業 ・省エネルギーコンサルタント事業 など 電気事業分野の活性化とお客さまへの新たな価値提供 ●LNG火力発電を主力電源にコスト・ 環境性を配慮した電力供給により 電力市場を活性化 ●全国をカバーする小売事業の展開 ●ICTを活用した新たな付加価値 サービスを創造・提供 表 1 会社概要 図 1 エネットの電力事業に対するビジョン
業者(PPS*1)は 10 社を越え、図3 に示すように電気料金の低減に貢献 してきました。このように電力小売 事業では、高圧以上のお客さまに、 これまでの電力会社とは別の新規参 入者である PPS より、今までと同 等の品質で低コストの電気の供給を 受けることができるようになりまし た。2007 年の第4次制度改革では、 低圧を含めた全面自由化の議論が行 われ、残念ながら競争が十分進展し ていないということで、5年後再度 議論を行うことになりました。 図4に自由化による電力供給のし く み を 示 し ま す 。 新 規 参 入 者 の PPS は、競争力ある自社発電の電 力や全国にある工場等の発電所から 購入した余剰電力をベストミックス し、電力会社の送電網を利用するこ とで、同じ品質の安い電力をお客さ まに供給しています。 (2)エネルギー価格高騰の厳しい事 業環境下でのPPSトップシェア エネットは事業開始以降、図 5 に 示すように自社関係及び株主である 両ガス会社の環境性に優れた LNG 火 力 電 源 等 か ら の 電 気 の 供 給 と NTT グループの需要をベースに東 京 、 関 西 電 力 エ リ ア を 出 発 点 に 、 2005 年に東北、2006 年に中国、北 海道、2007 年には中部、九州電力 エリアでサービスを提供していま す。需要家規模は、2005 年に 100 万 kW を超え、2007 年に NTT グルー プ需要の倍の 200 万 kW を超えると ともに、販売電力量では沖縄電力を 抜き、事業規模 1,000 億円を超える 企業に成長しました。 2008 年の世界の原油価格の先行 指標である原油先物市場の WTI 原 油先物価格が1バレル= 147 ドルと いう化石燃料価格が高騰するといっ た厳しい事業環境の中、調達する電 力及び需要家のポートフォーリオや 電源のオペレーションの見直しによ り収益構造の改善を行い、図6に示 すように他の PPS が電力小売事業 の縮退を行う中、エネットは着実に 事業拡大を進め、PPS の過半数を 占めるトップシェアを堅持してい ます。 (3)システム化により高効率かつ 信頼性の高い業務の提供 電力小売事業において大部分の稼 動を占める料金計算・請求書発行等 の料金関係業務は、<ビリングエネ ット>により各種オペレーション業 務を機能的に結合しシステム化する (円/kWh) 26.00 24.00 22.00 20.00 18.00 16.00 14.00 12.00 24.81 19.38 17.15 平成6年度 7年度 8年度 9年度 10年度 11年度 12年度 13年度 14年度 15年度 16年度 17年度 18年度 19年度 電灯 電力 電灯・電力計 20.78 15.90 13.66 電灯料金は、主に一般家庭部門における電気料金の平均単価。電力料金は、自由化対象需要分を含み、主に工場、オフィスに対する電気料金の平均単価。 平均単価の算定方式は、電灯料収入、電力料収入をそれぞれ電灯、電力の販売量(kWh)で除したもの。 電灯・電力計の料金単価は、平成6年度から平成19年度の間において、年平均1.5%低下し、 平成6年度と平成19年度との単純比較では、18.0%の低下となっている。 出典:資源エネルギー庁 電気事業制度のHPより エネット需要家 (民間オフィス・官公庁ビル等) 一般家庭・商店 等 〔電力会社が独占供給〕 <自由化部門> <規制部門> 電力会社送・配電網 電力会社需要家 日本卸電力取引所 (JEPX) PPSは余剰電力を一般電気事業者よりも高価買取する一方、 効率的な事業運営(=少ない間接費)を通じ、一般電気事業者 より安価な電力販売が可能。これにより需要側・供給側の双方 へのメリット提供を実現。 一般電気事業者 30分単位で需要量 =発電量になるよう に発電所出力を制御 し安定的に電力を 供給(同時同量) 一般営業や入札で 需要家を開拓 様々なソースから 電力を調達 契約余剰発電設備等 (清掃工場・公営水力他) 自社発電設備
*1 PPS : Power Producer and Supplier 図 3 料金制度改定 ∼電力料金単価の推移∼
ギーマネジメントを支援する<いん ふぉエネット>のサービスを提供し ています。図7にその機能の概要を 示します。 (5)グループシナジーを生かした 事業拡大 電力小売事業の低圧電力のお客さ まへの拡大が延期される中、エネッ トと株主である NTT ファシリティ ーズは、図8に示すように電気の供 給、電気設備の保安点検、検針・料 金請求などの業務で連携してマンシ ョン向け電力供給サービスを実現 し、低圧のお客さまにも安価で電力 会社と同等の品質で電力の提供を行 っています。 (6)地球温暖化対策への取組み RPS 法*2により、電力小売事業者 は一定の再生可能エネルギーの義務 量が課せられる中、エネットは株主 である東京ガス、大阪ガス関係の風 力発電約2万 kW、NTT ファシリテ ィーズ関係の太陽光発電所(メガソ ーラ)や自治体の清掃工場などのバ イ オ マ ス 発 電 所 の 電 気 を 調 達 し 、 RPS においては北海道電力と並びト ップランナーとして(2009年度義務 量 1.14%)の義務量を達成し、日本 における再生可能エネルギーの利用 促進に大きく貢献しています。 ことで、4,000 件を越える需要家に 対して高効率かつ高信頼の事務処理 を可能とし、コストダウンとお客さ まの高い信頼を得ております。 (4)ICT を活用した付加価値サービ ス<いんふぉエネット> ICT を活用したサービスとして、 お客さま自ら電気使用量の把握、デ マンド管理や省エネルギー対策など 電気使用量の「見える化」でエネル 400 350 300 250 200 150 100 50 電 源 規 模 ︵ 万 ︶ kW H13 H14 H15 H16 H17 H18 H19 H20 H21 H22(年度) 川崎 天然ガス 発電所 泉北 発電所 扇島パワー 発電所 イースクエア 舞鶴発電所 茨城発電所 卸電力取引所開設 供給お客さま施設件数 700 1600 3500 4100 株主大型電源運開 余剰電源獲得 供給量増強 図 5 エネットの電力供給推移と今後の電源計画 0 10,000 20,000 30,000 40,000 50,000 60,000 70,000 4月 7月 10月 1月 4月 7月 10月 1月 4月 7月 10月 1月 4月 7月 10月 1月 4月 7月 10月 1月 4月 7月 10月 1月 4月 7月 0.0% 1.0% 2.0% 3.0% 4.0% 5.0% 6.0% 7.0% 8.0% 9.0% 10.0% 4月 7月 10月 1月 4月 7月 10月 1月 4月 7月 10月 1月 4月 7月 10月 1月 4月 7月 10月 1月 4月 7月 10月 1月 4月 7月 全自由化領域におけるPPSグループのシェア推移 PPSグループ内の各社シェア推移 出典:経済産業省 資源エネルギー庁 出典:経済産業省 資源エネルギー庁 2004年度 2005年度 2006年度 2007年度 2008年度 2009年度 2004年度 2005年度 2006年度 2007年度 2008年度 2009年度 (GWh) 0.0% 10.0% 20.0% 30.0% 40.0% 50.0% 60.0% 70.0% 自由化領域総需要 PPSシェア 総需要に対する全PPSのシェア 一般電気事業者(電力社会)等 98.30% PPS 1.70% 丸紅 ダイヤモンドパワー 新日鉄エンジニアリング 大王製紙 王子製紙 日本風力開発 エネット エネサーブ サミットエナジー 昭和シェル石油 GTFグリーンパワー イーレックス 新日本石油 出光興産 日本テクノ パナソニック F-Power(旧ファーストエスコ) オリックス PPS販売電力量シェアはエネットが60%以上(2009年3月実績) エネット 60% 他社 図 6 PPS シェアの年度別推移
また 2007 年7月には、「京都議定 書拘束期間である 2008-2012 年度平 均の使用端 CO2排出原単位を 2001 年度実績から3 % 削減するよう努 める」という PPS10 社による環境 行動計画(いわゆる自主行動計画) を策定しました。 電気通信において新規参入者が二 桁台でのシェアを占める中、電気事 業においては図6に示したように、 PPS のシェアは総需要では1%台、 自由化領域の高圧以上では2 % 強に 過ぎない状況です。この要因は図9 に示すようにPPSが電力会社と比べ 原子力、水力といった長期に安定し たベース電源がないことが一因です。 昨年の11月に開始された太陽光発電 の固定買取制度は、新政権下で太陽 光発電以外の風力、バイオマス、水 力といった再生可能エネルギーの全 量買取へと拡大議論が開始 されています。 このようにPPSのゼロエ ミション電源(ゼロエミ電 源)への調達が、ますます 厳しくなってきている状況 です。今後、PPSの事業拡 大により更なる電力事業の 活性化、需要家選択肢の拡 大を進めるためには、水力、 原子力といったゼロエミ電 源のPPSへの利用開放を進 めることが重要であると考 えます。 エネットは、これからの 低炭素社会の実現に向け、 化石燃料の中で最も環境性 の優れた LNG 火力発電を ベースにバイオマス、風力、 太陽光発電といった再生可 能エネルギー電源の開発・ 調達を進めるとともに電力 会社の有する水力、原子力 発電のPPSへの利用開放に ついて継続的に働きかけを 行い、市場原理を活用した 「自由化」と「環境」の両 立の実現を訴求・推進して いきます。
*2 RPS(Renewable Portfolio Standard)法: 2003年4月に施行された「電気事業者による 新エネルギー等の利用に関する特別措置法」 使用電力量の表示 (30分毎・日別・月別・曜日別・昼間/夜間別) 使用電力量をグラフおよび表にて表示します。 30分毎 月別 使用電力データのダウンロード 検索機能 デマンドの監視 使用電力量をデータでダウンロードができます。 指定した期間内における最大電力発生日および指定した電力値を超過した日を 検索し、グラフおよび表に表示します。 設定により、使用電力がお客さまの設定値を超過した時にご指定の宛先(メール、FAX) に通知できます。 お客さまの指定した値 指定値の超越 閲覧を超越いたしました。 ご指定のFAX、メール先にお知らせ 30分毎実績使用電力 図 7 エネットのサービスライン ∼いんふぉエネット∼ マンション向け電力供給サービスイメージ マンション等集合住宅施設内に(株) NTT ファシリティーズが受変電設備を設置。 マンション内で家庭用に変圧して各住戸や共用 部に低圧の電力を分配。 エネットから供給される電力は電力会社の託送 サービスにより供給されるため、電源品質、 信頼性については従来と同等。 更に 更に ※マンション向け電力提供サービスはNTTファシリティーズの提供サービスです。 エネット 提供形態 ㈱ エ ネ ッ ト 特別高圧電力 または高圧電力 需給契約 ㈱NTTファシリテ ィーズが提供する 電力供給システム 共用 施設 システム利用契約 約5%安い電気を全住戸へ提供 システム利用契約 マンション 管理組合 マンション 全住戸者 WHM 分電盤 高圧 受電 変圧器 共用施設用 メータ : 電力会社資産 : 建築主・オーナ資産 : NTTファシリティーズ資産 マンション 電力会社送配電網 凡例 各戸用 メータ 各戸用 メータ 各戸用 メータ 各戸用 メータ 各戸用 メータ 図 8 エネットのサービスライン ∼マンション∼
低炭素社会実現に向け、再生可能 エネルギーの全量買取、排出量取引 など、今後ますます太陽光、風力発 電といった再生可能エネルギーの導 入拡大や、省エネに関する規制強化 といった政策が進むと考えられま す。エネットは、2009年1月にグリ ーン電力証書発行事業者となり、風 力、太陽光、バイオマスといった再 生可能エネルギーの電源調達の実績 を通して、需要家に CO2の削減を義 務化する東京都条例等への対応が可 能なグリーン電力証書の販売を6月 より開始しました。さらに図10に示 すように ICT を活用することにより 供給サイドと需要家が相互の連携 し、コスト低減、CO2削減するとい ったお客さまにエネルギーを含めた 新たな環境価値を提供する事業を創 造して行こうと考えています。 これには、NTTグループの一員と してエネットは、スマートエネルギー ネットワーク、スマートグリッド、ス マートメータといったエネルギー分野 の低炭素社会インフラへのNTTの次 世代ネットワーク(NGN)の利用訴 求と、グループシナジーを生かした環 境・エネルギー分野の新たなビジネス に向け、産官学一体となった実証研究 などへの参画等を進めて行きます。 株式会社エネット 営業本部 TEL : 03-5733-2234 URL : http://www.ennet.co.jp/ お問い合わせ先 エネットのグリーン電力証書発行事業者マーク 一日の時間帯別発電イメージ 0 3 6 9 12 15 18 21 24 (時) 電力会社卸電力 石油等火力 卸電力等(市場取引) LNG火力発電等 需要曲線 バイオマス発電等 他社受電の8割が 契約期間が5年未 満の短い契約 自家発等からの余剰電力やPPS向け 電力、電力会社からの卸電力等の相対 契約による他社受電の比率が高い。 歴史的に原子力や大型水力を持ち 得ず、火力発電が中心の電源ポート フォリオとなっている。 PPS 10年以上の長期 契約が大半 自社発電所による発電及びIPP・ 卸電気事業者からの長期相対契約が 大半 原子力・水力・火力等、全ての電源 ポートフォリオを構成し、それぞれが 持つ特性・役割に応じて発電 電力会社 相対契約期間 ※ 調達形態 ※ 電源ポートフォリオ ※参考)H19.2.3電気事業分科会第5回制度改革評価小委員会資料「卸市場全体の構造把握」 <電力会社> <PPS> 出典)資源エネルギー庁 「原子力2004」 ベース 供給力 ピーク 供給力 ミドル 供給力 6 0 12 18 24(時) 流込式水力発電 原子力発電 火力発電 揚水用動力 需要曲線 需要のピーク 貯水池式 揚水式 水力発電 調整池式 ICT×エネルギー 発電所 送配電 スマートコミュニティ スマートハウス/ビル スマートハウス スマート ビル 風力発電所 蓄電池 太陽光発電所 :エネルギーネットワーク :通信ネットワーク ・ICTを活用した次世代電力ネットワーク −ICT等を活用した送配電網の自動化 −分散型再生可能エネルギー導入への対応
−需要化サイドの多様なマネジメント(DSM:Demand Side Management) 送電網自動化 ・送電ネットワークの状態 の監視と自動的な制御シ ステムを導入実施済 出展:低炭素電力供給システムに関する研究会報告書2009/7を参考にエネット編集 配電自動化 ・停電範囲を最小化する 制御システムをほぼ導入 実施済 スマートグリッドの 技術要素 再生可能エネルギー ・今後大量導入される太陽光発電、ネットワーク側蓄電池と 既存の火力発電・水力発電等との協調制御が今後の課題 需要家との双方向通信(スマートメーター等) ・小口需要家に対する遠隔検針を一部電力会社が試験導入中 ・DSM(需要側管理)は今後の課題 ・スマート家電、プラグインハイブリッド車等との連系は研究開発段階 ビルの省エネ化(BEMS:Building and Energy Management Systemなど) ・ESCO事業として各種事業者が取組み継続中 原子力 水力 火力 図 9 PPS 電力小売用電源(供給力)の特徴 図 10 電気事業と ICT ∼スマートグリッド∼