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なぜ高校生は「お金のため」に働くというのか? : 「働く」ことを学ぶカリキュラム構築の研究

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Academic year: 2021

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Ⅰ.はじめに

 「なぜ人間は働くのだろうか?」  授業中,高校生に質問をすると,多くの生徒が「生 きるために働くのだ」と発言した。1)「お金をもらわな ければ生きていけないではないか」と皆で主張するの だ。これは正しい主張のようにも思えるが,よくよく 考えてみると「働く」という人間にとって最も本質的 な行為は「お金を得るためだけ」のものなのだろうか。 本研究は,高校生が「働く」ということを義務教育で どのように学んできたのか。そして高校では「働く」 ということをどのように学習することが有効なのかを 考察することを中心課題とする。

Ⅱ.研究の目的

1.本研究の目的  本研究の目的は,小中高校を通して「働く」という ことを学ぶにあたって,教師はカリキュラムに共通の 大きな基盤があることを意識する必要があるというこ とを明らかにすることにある。  この目的を達成するための具体的な手立てとして次 の三点をあげる。  第一は,小中高校で「働く」という学びがどのよう に展開されるのかを授業実践を中心に検証したい。  第二に,高校は,小中学校での学びを再構築する場 であることを明らかにしたい。高校は小中学校で身に 付けた学びをもとに新しい学習内容を単に加えるので はなく,小中学校での学びを一度掘り起こして,高校 の学習内容も加えてより大きな学びを再構築するので はないかということを明らかにしたい。  第三に,この再構築を可能にするための学びには, 体験型学習と協働学習が有効であることを明らかにし たい。2) 2.結 論  本研究の結論を先取りしてまとめると次のようにな る。  結論の第一は,児童生徒にとって「働くこと」の意 義は,小中高校と進むにしたがって多様化していると いうことである。  第二は,小中高校のカリキュラムには連続性がある ことを教師が意識することが有効であるというもので ある。教師は,高校生が義務教育で学んだ経済教育の 内容を記憶の底から呼び覚ますことで,高校での学び をさらに充実したものに創りあげることができるとい うのが第二の結論である。  第三は,高校での経済教育には,過去に受けた経済 学習の記憶を呼び起こすために心を大きく動かす協働 学習と体験型学習が有効であるというものである。

Ⅲ.研究の方法

 本研究では,授業実践による生徒の記述分析と,教 科書分析を中心に研究を進めた。  小学校では,高校教師(筆者)がゲストティー チャーとして 4 時間の授業を実践し,児童の自由記述 を分析した。  中学校では,公民科の教科書における「労働」の単 元の記述を分析した。  高校では,約 90 人の生徒を対象に公民科の授業を 実践し,生徒の自由記述を中心に分析した。

Ⅳ.研究の成果

1.小学生にとって「働くとは?」  次の授業は,高校の公民科の教師が,小学校五年生

なぜ高校生は「お金のため」に

働くというのか?

─「働く」ことを学ぶ

カリキュラム構築の研究─

The Journal of Economic Education No.31, September, 2012

Why Are High-School Students Working “for Money” ? : A Study of Curriculum Formulation

Regarding the Learning of “Work”

Kaneko, Mikio

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の社会科でゲストティーチャーとして四時間の授業を 実践した記録である。3)単元は,「産業の発展」である。 前時までにテレビで「自動車工場で働く人々」を見終 わっていた。そこで,本時ではテレビの中で働いてい る人達のように,自分達もモノづくりをしてみようと いう教材を用意した。タイトルは「自動車工場」とい う協働学習・体験型学習であり,次のように展開した。 ①小学生の前で高校教師が授業を行うと宣言する。 ②この時間は,教室を自動車工場にすると言う。 ③「原料の鉄板を配る」と言い折り紙を配付する。 ④「自動車の設計図を配る」と言って折り方を書いた 用紙を配る(図 1)。 ⑤一人ひとりの児童が,設計図を見て自力で自動車を 生産する。4) ⑥一通りできたら「もっとたくさんの自動車をつくり たいが,何かよい方法はないか?」と発問する。 ⑦「グループをつくり作業を分担したらどうだろ う?」という考え方ついて話し合う。5) ⑧五人を基本としたグループに分ける。 ⑨グループ内で,担当する部分を決める。 ⑩各グループに七枚の折り紙を配付して一斉に自動車 を生産する。 ⑪一人ひとりで生産するよりも,作業を分担した方が 多くの自動車ができたことに気がつかせる。 ⑫「もっとはやく生産するにはどうすればよいか?」 と発問する。 ⑬さらに大量生産する方法を各グループで考えさせる。 ⑭実際に考えたアイディアで生産してみる。6) ⑮前回よりも大量に生産できたことを知り,分業と生 産量の関係を理解する。 ⑯「前回はテレビで働く人を見ましたが,実際に労働 を体験してどうでしたか」と発問して話し合う。 ⑰「働くとはどういうことなのか?」というテーマで 図 1 自動車の設計図

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自由に記述する。  作業後の自由記述をまとめると次のようになった (図 2)。  多かった答えは「働くとはたいへんなことである」 「楽しいことである」「協力することである」というも のであった。実践の途中でも,写真資料のような助け 合うという場面が見られた。  全国の小学校五年生は,この単元では「努力するこ と」「協力すること」「工夫すること」を学ぶことに なっている。実際に今回授業実践したクラスの児童た ちは一年生の時に学校探検で学校内の働いている人を 見ており,二・三年生では小売店でお手伝い体験をす る中で「肉屋さんでギョーザの作り方」や「お菓子屋 さんでお菓子の作り方」をインタビューしている。4 年生では,ふれあい環境教室でゴミ収集車を見ており, 5 年生では水産業,稲作,自動車工場の学習をする。 そして次年度の 6 年生では国際協力について学ぶこと になっている。 2.中学生にとって「働くとは?」  この小学生達は,やがて中学校に進学することにな る。それでは全国の中学生は「働く」ことをどのよう に学んでいるのだろうか。この問題を整理するために 中学校公民科教科書の記述内容を分析した(表 1)。  ここから,中学生は第一に働くことを通して労働者 の権利を守ることを学ぶ。その上で,現代の働く環境 には厳しい労働条件を克服しなければならないという 課題があることを労働三法を中心に学習する。とはい うものの,第二番目として,働くことは,お金のため 46 50 (人) 45 40 35 30 25 20 15 10 5 0 働くというのはたいへんなことである 働くというのはどういうこと? 働くというのは楽しいことである 働くというのは協力することである 働くというのは難しいことである 働くというのは工夫すること考えること が大切である 働くというのは疲れるものだ 働くというのはうれしいものである 働くというのは責任のあるものである 働くというのは達成感のあるものである 人のために働く 34 33 21 16 11 10 9 6 6 図 2 小学生にとって「働くとは」 表 1 中学校教科書の記述 【A 社の記述のまとめ】 単元 節 学習内容 働く人たちの 生活向上 労働組合の役割 市場経済で労働力は商品として売買される。弱い立場 の労働者は団結することで 使用者と対等の立場にな る。政府も労働三権を制定 した。労働時間短縮などで 労働災害を未然に防ぐ必要 がある。 人が働くのは収入を得るた めだけではない。社会参加 も重要な目的。 労働条件の改 善 生きがいを求 めて 【B 社の記述のまとめ】 単元 節 学習内容 働きやすい職 場をつくるた めに 労働者を守る 労働三法 労働者の立場は弱いもの。そのために労働者の人権を 守る法律ができた。かつて 労働組合は,労働者のため に大きく貢献した。しか し,現在では組織率が低下 している。労働時間は歴史 と共に短くなっている。 労働組合の役 割と変化 労働時間の短 縮 労働をめぐる 課題 労働市場・雇用形態の変化 成果主義の導入,派遣労働者の増加等働く環境が変化 している。女性の働く環境 を整えるために様々な法が つくられたが,まだ差別は 残っている。働くとはお金 を儲けることや,働かされ ることではない。社会をよ りよいものにつくりかえて いくことだ。これが生きが いや充実感につながる。 女性と職業 働くことの意 義 【C 社の記述のまとめ】 単元 節 学習内容 雇用問題と労 働条件の向上 雇用の促進と安定 雇用の情勢は 2008 年頃から急速に悪化した。国は 様々な雇用対策を実施して いる。ワークシェアリング 等の取り組みも検討してい る。労働条件の最低基準が 法で定められている。一方 で働きすぎが問題となって いる。 労働条件の向 上 労働者の権利 労働者の権利 労働条件を厳しくする使用 者に対抗して労働者は団結 することで労働条件を向上 させてきた。労働組合法を 読みながら労働組合とは何 かを考えてみよう。現在で は労働組合に加入している 人の割合は減ってきている。 労働組合とは 何か

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だけでなく,社会参加や自己実現という大きな目的が あるということを学習することになっている。 3.高校生にとって「働くとは?」  このような義務教育での学習を積み重ねた高校生は 「働く」ということをどのように捉えているのであろ うか。2009 年度に 28 名の生徒を,2011 年度には 81 名 の生徒を対象に公民科の授業で「なぜ人は働くので しょうか?」という質問をして自由に記述してもらっ た。その記述内容を分析した結果,次の七つに類型化 することができた(表 2,図 3)。  この調査から次のことを読み取ることができる。第 一に,高校生にとって「働く」のは「生きるため」 「お金のため」と考えている生徒が6〜7割を占めてい るということである。  学習指導要領では,高校生はここまでに「努力する こと」「協力すること」「工夫すること」そして,厳し い労働条件を克服するために労働者の権利を守る必要 があることや,働くのはお金のためだけではなく社会 参加や自己実現のためであるということを学んでいる のに,その数ヶ月後には「働くのは生きるため」「お 金のため」に変容してしまっているのである。 4.高等学校でのカリキュラム再構築に向けて  このような状況の中,高校における「働く」という ことを学ぶカリキュラムを構築するために次の視点が 必要になる。  第一に,高校生が義務教育でどのようなことを学ん でくるのかを高校教師が認識する必要がある。第二に, 本研究フィールドの高校生においては,小中の学びが 深層部に潜んでしまっており,これをどのように掘り 起こして新たな学びに結びつけるのかを考える必要が ある。第三に,高校生の過去の学びを掘り起こすため には,講義型の授業に加えて協働学習・体験型学習に より心の動きを大きくする授業案を組み立てる必要が ある。この三つの視点をふまえて次のような授業を実 践した。 5.高等学校での協働学習・体験型学習  (1)体験型学習Ⅰ(労働者編)  高等学校での実践は二つ用意した。第一は「労働者 として働く」というもので,第二は「経営者として働 く」というものである。  第一の体験型学習として用意した教材は,前出の 「自動車工場」である。授業のストーリーは,次のよ うに組み立てた。  「分業」すると大量生産につながる。これを他者と 交換することで,便利な世の中ができる。このときに 需要と供給の学びをしようという流れである。  実際の展開は次のように行った。 ①「今日の授業で使うのは折り紙です。これを鉄板だ とします。」と言う。さらに「この教室は自動車工 場です。」と言い,各自に自動車をつくってもらう ことを伝える。 ②ひとりで全ての工程をやると約 10 分で 30 台生産で 表 2 高校生にとって働くとは ①「生きるため型」・・・ 生きるために働く ②「お金探求型」・・・ お金を得るために働く ③「家族重視型」・・・ 家族を守るために働く ④「自己実現型」・・・ 自分の夢を実現するために働く ⑤「社会貢献型」・・・ 人のために,社会のために働く ⑥「豊かな生活探求型」・・・ いい生活をするために働く ⑦「社会とのかかわり型」・・・ 社会との関係を持つた めに働く 図 3 高校生にとっての働く理由 生きるため型 47% お金探求型 21% 家族重視型 7% 自己実現型 7% 社会貢献型 18% 働く理由(2009 年,N=28) 自己実現型 7% 豊かな生活探求型 7% 生きるため型 42% お金探求型 21% 家族重視型 8% 社会貢献型 6% 社会とのかかわり型 3% その他 6% 働く理由(2011 年 6 月,N=81)

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きることを生徒全員で確認する。 ③工場の本日の生産目標を「10 分以内に 100 台生産」 と宣言する。目標達成に向けて話し合いをさせる。 ④グループを作り作業を分担するという意見にまとま る。 ⑤グループごとに役割分担を決める。 ⑥分業による生産開始。しかし,思うように生産量は 伸びない。7) ⑦さらに効率よくするにはどうすべきかを考える。 ⑧ 2 回目の分業による生産開始。目標の 100 台を超え る 112 台の生産に成功。 ⑨分業と生産量の関係を振り返る。  2 回目の作業で高校生は机の位置を直線型・L 字 型・円形と多様に変化させる改善案を出してきた。  授業中の発言や自由記述を見ると「自分の力をグ ループの中で活かすことができてうれしい」,「みんな の役に立つことができてうれしい」といった感想がだ された。このようにして,高校生はアダム ・ スミスが 『諸国民の富』で書いた「分業と交換」について学ぶ ことができた。  小学校での実践で教師は,この教材に「努力」「協 力」「工夫」を学ぶというメッセージをこめて教案を つくった。高校の実践では,同じ教材ではあるが, 「分業」と「交換」という社会の仕組みを理解すると いうメッセージをこめて教案をつくった。同じ体験型 教材でも,児童生徒に応じて教師の編み込むメッセー ジを変えてデザインすることを試みた。  次は,授業後の自由記述である(表 3)。  この記述を読み取る際にポイントとなる用語として は,「効率」「工夫」「分担」「協力」があげられる。  (2)体験型学習Ⅱ(経営者編)  第二の体験型学習は,経営者としてお菓子会社を設 立するというものである。教材は日本証券業協会の (中央空洞型) (直線横並び型) (四角型) (L 字型)

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「みんなで体験!株式会社とお金のしくみ」である。4 〜 5 人のグループが,会社をつくり「事業計画の立 案」「資金調達」「商品の開発・販売」「決算」を行う 教材で,次のように進めた。 ① 4 〜 5 人のグループをつくる。 ②各グループでお菓子会社を作ると教師が宣言する。 ③よく売れるお菓子を作るために,各グループで事業 計画を立てるように指示する。 ④クラス内でプレゼンテーションを行い資金を集め る。8) ⑤商品の開発・販売を行う。9) ⑥クラス内の生徒が消費者役になり商品を購入す る。10) ⑦決算を行う。  以上が大きな流れである。  (3)学習後の自由記述の分析  この二つの協働学習・体験型学習後に「働くとはど ういうことなのか?」と問いかけ,その自由記述の結 果を分析し類型化すると次のようになった(表 4)。  それぞれの割合は次のとおりである(図 4)。  働くということは,「誰かの役に立ちたい」,「競争 に勝つためにはどうしたらよいかを考えること」と捉 えている生徒が多いことが読み取れる。多くの高校生 が,働くことに多様な意義を見いだしたようである。 表 3 高校生の体験型・協働学習後の自由記述 ・みんなで分担して効率よく作業するのはすごく難し かった。ひとりひとりできるところ,できないとこ ろがあるから,そこをよく考え,自分のできるとこ ろまでやるというやり方をしたら時間が半分になっ た。 ・作戦を考えてみんなで協力することは大切だと思い ました。 ・人によって得意なところを分けると効率よくできる からいいと思う。 ・はやく作業をするにはいろいろな工夫をしなければ いけないんだなと思いました。その中で,会社が成 り立っているんだなと思いました。 ・効率のいい方法を考えるのは大変だと思った。 ・限りある時間を使ってみんなで分担し,協力して自 動車をつくることができた! ・分担するのってたいへんだけど,協力して車をつく るのがとっても楽しかった。時間を考えて,素早く つくるのもいいけれど,一つひとつていねいにやる ことの方が大事な気がする。 表 4 協働学習・体験型学習後の高校生にとっての働 く意味 ①社会貢献型 ②競争志向型 ③お金探求型 ④無気力型  ⑤元気重視型 ⑥創造型   … … … … … … 人のために何かをしてあげたい 他社に勝つために工夫するというこ と お金を得るために働く しかたなく働く 元気よく働く 何か創造的なことはできないかと考 えて働く 働くとは? n=90  お金探求型 12% 競争志向型 33% 元気重視型 5% 社会貢献型 41% 創造型 2% 無気力型 7% 図 4 協働学習・体験型学習後の高校生にとっての働 く意味

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 (4)学習前後の生徒の自由記述の比較  「働く」という学びをテーマにした高校での協働学 習,体験型学習授業前と授業後の自由記述を比較する と次のようになった(表 5)。  次に,それぞれの類型の割合を見ると,授業前後の 違いがより明確になる(図 5)。  授業前では多くの高校生は「生きるため」「お金の ため」に働くと考えていた。しかし,授業後には「人 のため」や「競争に勝つために工夫して働く」と考え る高校生が多くなっていることがわかる。  この結果は,小学校や中学校時代の学びの成果の上 に成り立っていると考える。高校生は,間違いなく義 務教育で「努力すること」「協力すること」「工夫する こと」,労働者の権利を守る必要があること,働くの はお金のためだけではなく社会参加や自己実現のため であるということを学んでいるはずである。11)高校の 協働学習・体験型学習でクラスの仲間と心や体を動か すことで,それまでの学びが掘り起こされ新しい知識 と共に再構築されたのではないか。12)

Ⅴ.おわりに

 本研究をまとめると次のようになる。  第一に,「働く」ということを学ぶにあたって,教 師は小中高校のカリキュラムに共通する大きな基盤の 存在を意識する必要があるという研究目的を示した。  第二に,本稿では研究方法として授業実践の結果得 られたデータを分析することと,教科書の記述を分析 する方法を採用するということを示した。  第三に,小中高校で児童生徒が「働く」ということ をどのように学び取るのかということを概観した。  第四に,高校生の多くが「働くのはお金のためであ る」という意見を持つ中,義務教育での学びを掘り起 こすことに意義があるのではないかという問題を提起 した。  第五に,高校生がそれまでに学んできた学習内容を を掘り起こすために体験型・協働学習が有効であるこ とを提唱し,授業実践から得られたデータから立証を 試みた。その結果,高校の授業での体験型・協働学習 により「働くとは」どういうことなのかという類型が 大きく変わったということを認識することができた。 表 5 生徒の自由記述の変化 ①生きるため型 ②お金探求型 ③家族重視型 ④自己実現型 ⑤豊かな生活探求型 ⑥社会貢献型 ⑦社会とのかかわり型 授業前 ①社会貢献型 ②競争志向型 ③お金探求型 ④無気力型 ⑤元気重視型 ⑥創造型 授業後 図 5 授業前と授業後の生徒の記述の変化 自己実現型 7% 豊かな生活探求型 7% 生きるため型 42% お金探求型 21% 家族重視型 8% 社会貢献型 6% 社会とのかかわり型 3% その他6% 働く理由(2011 年 6 月,N=81) 授 業 前 働くとは? n=90  授 業 後 お金探求型 12% 競争志向型 33% 元気重視型 5% 社会貢献型 41% 創造型 2% 無気力型 7%

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 本研究では「働く」ということにこだわって,小中 高校に大きなカリキュラムの基盤があるのではないか ということを意識して授業実践を試みた。経済教育の カリキュラムを構築する上で,一つひとつの単元にこ のような小中高に共通の基盤があるのではないかと考 える。本研究が小中高校の経済教育を見る際のささや かな各論の一つになることができれば幸いである。以 上で本稿を閉じる。 註 1) 複数のクラスで同じような発言が繰り返されるので,教 室内にいる高校生全員の考えはどのようなものなのかを 可視化するために,調査票を配付し,そのデータ分析を 試みることにした。 2) 教師の講義だけで高校生の過去の学びを掘り起こすこと は難しいと考える。 3) 同じ授業内容を四クラスで実践した。 4) わからないところはお互いに教えあい学び合うことにす る。 5) この実践では,すべてのクラスから「作業を分けるべき だ」という意見が出た。 6) この段階で出たアイディアには,「皆が必ず手を動かすよ うにする」「一度にできる作業はまとめてやる」「苦手な ところは得意な人が助ける」というものがあった。 7) 約 10 分で 49 台の自動車を生産できた。 8) 事業計画案を見ながら,クラスのメンバーが投資家とし て各会社に投資する。 9) お菓子の特色を考え,パッケージやポスターを作成する。 10) 生徒一人ひとりが購入したいと思う商品をカードで購入 する。 11) 「人のために役立ちたい」とか「工夫」という概念を高校 生になってから初めて身に付ける新しい感覚だと考える のは不自然である。義務教育の段階で身に付けつつある ものだと考える。 12) 本研究は,高校生が「お金を得るために働く」のはよく ないのだということを主張するものではない。「働く」と いう行為には多様な意味があるということを気づかせる ことに意義があると考える。

参照

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