日本認知・行動療法学会 第44回大会
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-ワークショップ概要
WS-23 学校・施設で活用できる行動コンサルテーション:
コンサルテーションのツールと手法
加藤 哲文
上越教育大学
本ワークショップでは、学校、幼稚園・保育所、療
育施設等において、主として行動面や情緒面で問題の
生じている子どもの支援を行っている方々への「コン
サルテーション」の方法や技術を提供することを目的
としています。受講の対象は、心理職や教員等の方々
をはじめ、将来、このような場で仕事を希望する大学
院生の方々も役に立つかと思います。
ここでは、コンサルテーションの中でも、応用行動
分析をベースとして開発された「行動コンサルテー
ション」の考え方、手法や技術、そしてそれを補う
ツールなどを紹介します。行動コンサルテーションの
基礎と応用については、1990年代にアメリカを中心と
して多くの論文や著書が発表されてきましたが、わが
国で紹介されることは少なく、2004年、2011年と私ど
ものグループが書籍を出したり、学会等でシンポジウ
ムを開催したり実践事例を発表してきたものが端緒と
いえると思います。
本ワークショップでは、幼児期や学齢期の子どもの
事例を紹介し、ワークシートに基づいて、受講者自身
がコンサルタントになった場合に、どのような手順で
コンサルテーションを進めていくかについて体験して
もらいたいと考えています。
参考図書
加藤哲文・大石幸二編著「特別支援教育を支える行動
コンサルテーション:連携と協働を実現するためのシ
ステムと技法」学苑社 2004年
加藤哲文・大石幸二編著「学校支援に活かす行動コン
サルテーション実践ハンドブック:特別支援教育を踏
まえた生徒指導・教育相談への展開」学苑社 2011年
WS-24 精神科日常臨床での行動分析〜うつ病の 3 症例から
芝田 寿美男
福岡赤十字病院精神科
ごくふつうの精神科臨床で役立つ認知行動療法がご
紹介できればと考えています。医療現場が活動領域と
いう会員は少なくないはずで、かく言う演者もその一
人です。精神科臨床とは、身体疾患の合併症がごく普
通にあり、精神疾患における器質因や内因性精神障害
の関与も無視できない領域です。その上で、毎日数十
人単位での患者さん(クライアント)に対応せねばな
りません。精神科薬物治療がおこなわれることが前提
で、ときにはECT(無痙攣電気ショック療法)や物理的
行動制限も医療行為として選択されうる中で、治療成
績は求められます。
そのような精神科臨床の現場で、認知行動療法はど
のように役立てられるのでしょう。演者は今回、うつ
病としての診断治療を受けた 3 症例を通じて、その可
能性を考えてみたいと思います。
うつ病に対する認知行動療法と言えば、認知療法の
立場から認知再構成法の出番だと考えられています。
しかし慌ただしい精神科臨床で、充分なセッション時
間を設定した認知療法は難しいと痛感してしまいま
す。それならば、精神科臨床には認知行動療法を用い
る余地はないのでしょうか。
例えば、うつ病とみなされた症状群や問題相互を行
動分析して、治療対象を明確に患者さん(クライアン
ト)と共有していく操作だけでも、充分に認知行動療
法を用いた有効な治療介入だと考えられます。行動分
析を通じて治療対象とその指標を明確にしながらおこ
なえば、薬物治療でも認知行動療法的な治療介入たり
得ます。
今回提示する 3 症例はどれも60歳前後の壮年期男性
で、 2 型糖尿病が合併したうつ病です。医学的診断で
は「糖尿病の合併したうつ病」でしかありません。しか
し各症例を行動分析すれば、同じ「糖尿病の合併した
うつ病」でも治療介入の仕方や予後は異なります。行
動分析を用いれば、個々の症例の違いをきめ細かく認
識でき、治療方針や予後の推測に役立てられるのです。
今回のワークショップでは、そのように行動分析を
活用した精神科日常臨床を紹介しようと考えているの
です。