医学教育の動向
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(2) 646. 理学療法学 第 42 巻第 8 号. 図 4 日本の医学教育の全体像 図 3 世界の医療専門職教育の動向. 日本の医学教育の全体像 3)方略のまとめ. 次に,日本の医学教育の全体像をご紹介しておきましょう. ここで強調しておきたいのは,学習方略は工夫次第でいくら. (図 4)。医学教育は 6 年間で,国内の 80 の大学医学部・医科. でも創造的な構築が可能であるということです。上級生で優秀. 大学では「医学教育モデル・コア・カリキュラム」に準拠した. な人を選んで下級生の学習援助者になってもらう,というよう. 教育が行われています。具体的には,全体の 3 分の 2 の時間数. な方略は非常に有用です。. でコア・カリキュラムを履修し,残りの 3 分の 1 は,各大学独. 4.評価. 自の選択プログラムを履修することを推奨しています。. 評価については詳述は避けますが,『評価なくして改善な. 多くの大学では最後の 2 年間が実習に充てられていますが,. し』,『評価は隠されたカリキュラム(hidden curriculum)で. 実習へ行く前に「共用試験」で基本的臨床能力が身について. ある』など,評価は「学習/教育のプロセス」な中でももっと. いるか否かを確認します。CBT(Computer-based testing)は. も大切なものです。関心のある方は,詳細はぜひ参考図書にあ. 知 識 の 試 験 で,OSCE(Objective Structured Clinical Exami-. たってみてください. 2). 。. nation)は「客観的臨床能力試験」と訳され実技試験です。. 世界の医学教育─ 100 年の変遷. 卒業後は,今は 2 年間の臨床研修が義務化され,将来どのよ うな専門領域にいく人も皆 8 年間で基本的な臨床能力を身につ. 次に,世界の医学教育がどのように変遷してきたかについ. けるようなシステムになっています。. て概略を紹介しておきます(図 3)。2010 年の英雑誌ランセッ. その後のキャリアパスについて紙面の都合で省略します。. トにエポック・メイキングな論文 3) が掲載されました。図の 中で,‘instructional’というのは,「どのようなことを,どの. おわりに─多職種連携の時代. ように学ぶか」ということで,‘institutional’とは,「どうい. 今,医学教育は大きな転換を迫られています。これにはいく. う場で学ぶか」ということです。1900 年代の初頭までは,医. つかの背景がありますが,情報通信技術(ICT)の発達,人口. 学教育は現場で経験的に学ぶ徒弟制度で伝えられてきました. の高齢化,医学・医療の専門細分化,医療関連職種の多様化. が,それを一変させたのが 1910 年に米国で出された‘Flexner. の 4 つが主たる背景要因といってよいでしょう。今日の超高齢. report’でした。この報告では,医学教育は科学的に実践すべ. 社会において,安心して生活できるような体制を維持するため. きで,大学医学部をその教育拠点とすることを推進するととも. には,いろいろな職種が,それぞれの専門性を発揮しながら,. に,当時の米国の医学部における教育の質の悪さを指弾し,そ. チームとして医療現場に参画することが必須となっています。. の数を半減させました。. そのためには,これまでの医療者教育の在り方にも大きな変革. その後の医学教育に大きな変革をもたらしたのが,1960 年. が求められており,これは世界的な動向であり,それが前述の. 後半から McMaster 大学を中心に展開された PBL(Problem-. 『‘transprofessional’な教育』です。. based Learning)カリキュラムです。それまでの学体系教育か. 今後は,大学病院,センター病院など最先端医療を担う機関. ら,現場での問題解決に即した,問題発見→情報収集→問題解. では,学問の進歩という歴史をみると,さらに専門細分化が進. 決へと推論する学習を推奨したのです。また,教育のフィール. んでいくことは間違いありません。一方で「可能な限り住み慣. ドとして,大学病院だけではなく,関連施設も活用した教育へ. れた地域で,自分らしい暮らしを人生の最期まで続けることが. と転換をめざしました。. できるような地域の包括的な支援・サービス提供体制」が社会. 今,医学教育は第 3 の転換点にさしかかっているとこの論文. の喫緊のニーズとなっています。. では指摘しています。すなわち,医学教育は社会が求めるニー ズを勘案しながら,最終的に医学生が身につけるべき臨床能 力(コンピテンス)を勘案して,体系的に医学教育カリキュラ ムを構築することが求められています。そのためには,大学附 属病院やその関連施設のみならず,地域の病院や診療所なども その教育フィールドとして考慮し,医療関係の多職種のみなら ず,住民をも巻きこんだ‘transprofessional’な教育の構築が 求められていると述べています. 3). 。. 文 献 1) Whitman NA, Schwenk TL:臨床の場で効果的に教える:「教育」 というコミュニケーション.伴信太郎,佐野 潔(監訳),南山堂, 東京,2002. 2) 日本医学教育学会(監修):医療プロフェッショナル ワーク ショップガイド.日本医学教育学会 FD 小委員会(編),篠原出版 新社,東京,2008,p. 50. 3) Frenk J, Chen L, et al.: Health professionals for a new century: transforming education to strengthen health systems in an interdependent world. Lancet. 2010; 376(9756): 1923–1958..
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