資
料
出産にかかわる医療過誤により児を喪失した女性の
次子出産への支援
―望ましいケアに対する助産師の認識と関連要因―
Support for women during the subsequent childbirth
after losing a child due to childbirth related malpractice
―Relevant factors and midwives' awareness in the desirable care of women―
山 﨑 由美子(Yumiko YAMAZAKI)
*加 藤 良 子(Ryoko KATO)
* 抄 録 目 的 出産にかかわる医療過誤により児を喪失した女性(以下,児を喪失した女性とする)の心理やニーズ に対する助産師の認識,施設での支援の現状と課題を明らかにし,児を喪失した女性への望ましいケア に対する助産師の認識に関連する要因を検討する。 対象と方法 分娩を取り扱っている全国の施設から145施設を無作為抽出し,調査協力の依頼をした。承諾が得ら れた18施設に勤務する助産師全員(251人)に,自記式質問紙調査を実施した。調査内容は,児を喪失 した女性に対する知識,経験,理解度および認識などの支援に関するものとした。本研究は量的記述研 究デザイン,関係探索型横断研究であり,Spearmanの順位相関係数,共分散構造分析を用い分析した。 結 果 139人(回収率55.4%)から回答が得られた。児を喪失した女性に対する知識や経験は少なく,次子出 産ケア経験のある助産師は7人(5.0%)であった。児を喪失した女性の次子出産に必要な支援の理解は, 全員が肯定的な認識をもつ項目がある一方,「医療過誤や喪失した児のことをよく知っている医師,助 産師が立ち会う」という項目は,68人(51.5%)が否定的な認識をもっていた。児を喪失した女性への望 ましいケアに対する助産師の認識に関連する要因については,「ネガティブな心情」よりも「必要な支援 の理解」で「望ましいケアに対する認識」の標準化係数(各々−0.12,0.67)が高かった。 結 論 児を喪失した女性の心理やニーズに対しては,「医療過誤や喪失した児のことをよく知っている医師, 助産師が立ち会う」という項目において,過半数以上の助産師が否定的な認識をもっていた。このよう な認識に至る助産師の心理について要因を含め検討する必要がある。児を喪失した女性の次子出産に対 2016年5月16日受付 2017年4月24日採用する助産師の知識や経験は少ないという現状が明らかとなり,今後はその少ない知識や経験を最大限に 活かし,対象理解に努めていくことが課題である。児を喪失した女性の次子出産に「必要な支援の理 解」の向上が児を喪失した女性への「望ましいケアに対する認識」につながることが示唆された。 キーワード:医療過誤,出産,次子,支援,助産師 Abstract Objectives
This study aims to elucidate midwives' awareness of the psychology and needs of women during childbirth after losing a previous child (hereinafter, “women who lost a previous child”) due to childbirth related malpractice, to elucidate the current situations and issues of support at facilities, and to examine the relevant factors for awareness of midwives in supporting the desirable care of women who lost a previous child.
Materials and Methods
A total of 145 facilities among the hospitals in Japan that handle childbirth were contacted at random, and were asked to participate in this survey. Self-administered questionnaires were distributed to 251 midwives working at 18 facilities who consented to participate in our study concerning the following points: knowledge, experience, under-standing, and awareness about subsequent childbirth in women who had lost a previous child. This is a quantitative descriptive, and a relationship exploratory cross-sectional study. Analysis was performed using Spearman's rank-cor-relation coefficient and analysis of covariance structure.
Results
We obtained 139 responses (55.4% collection rate), of which there were a few midwives who had knowledge and experience about women who lost a previous child, and 7 midwives (5.0%) who had the experience of caring for women during subsequent childbirth. With regard to the understanding of necessary support for the subsequent childbirth in women who lost a previous child, although there were categories for which all the respondents shared affirmative awareness, 68 midwives (51.5%) indicated negative awareness for the following category:“physicians or midwives who are well-acquainted with malpractice or the cases where children were lost due to malpractice attend the subsequent childbirth”. Concerning the relevant factors of midwives' awareness in the desirable care of women who lost a previous child,“more than negative feeling,” the standardized coefficient from “understanding of necessary support” to “awareness of the desirable care” of women who lost a previous child was as high as −0.12 and 0.67, respectively.
Conclusion
With regard to midwives' awareness of the psychology and needs of women who lost a previous child, more than half indicated negative awareness for the following category:“physicians or midwives who are well-acquainted with malpractice or the children who were lost because of malpractice attend to the subsequent childbirth.” It is necessary to perform an investigation including factors related to the psychology of midwives that led to such an awareness. As for the current situations and issues of support at facilities for subsequent childbirth in women who lost a previous child, midwives' knowledge and experience about women who lost a previous child and experience in subsequent childbirth care are limited. Thus, midwives must make efforts to understand the issues by utilizing their knowledge and experience. Regarding the relevant factors related to midwives' awareness in the desirable care of women who lost a previous child, the results suggest that improving the“understanding of necessary support” for women who lost a previous child would lead to“awareness in the desirable care.”
Key words: malpractice, delivery, subsequent child, support, midwives
Ⅰ.緒 言
リスクマネジメントマニュアル作成指針によれば, 医療過誤は医療事故の一類型であって,医療従事者が 医療の遂行において,医療的準則に違反して患者に被 害を発生させた行為をいう。 年間1000件を超えた医事関係訴訟件数(既済:処理 済み件数)は平成18年ころから減少傾向にあり,平成 26年は792件であった(医事関係訴訟事件統計)。その 中でも産婦人科は大幅に減少し,平成 18 年は 161 件 あった訴訟件数が,平成 26 年は 60 件となった(医事 関係訴訟事件(地裁)の診療科目別既済件数)。この背 出産にかかわる医療過誤により児を喪失した女性の次子出産への支援体的,精神的,経済的負担が大きいにも関わらず,過 失が認められるケースは約 20% と低いことや,ADR (裁判外紛争解決手続)が整備され,これにより解決 される紛争が増えてきたこと,紛争の防止・早期解決 などを目的として創設された産科医療補償制度などが 存在していると推測され,訴訟件数が減少したからと いって医療過誤そのものが減少したと判断することは できない。 出産にかかわる医療過誤は児に被害が及ぶことが多 く,女性に与える苦痛は計り知れない。高島,中島 (2013,p.7)は,助産事故により死産し紛争に至った 女性は,不可抗力で子どもを亡くした母親たちとの相 違を自覚し,被害の現実を再認識すると述べており, 周産期の死に含まれる存在として理解することの限界 を示唆している。 また,現時点では統計的な把握はできていないが, 出産にかかわる医療過誤により児を喪失した女性(以 下,児を喪失した女性とする)の中には,喪失した児 をもう一度産みたいという思いや,本来の自己の価値 を取り戻したいという思いなどから次子出産を希望す る人がいる。しかし,次子出産に至る過程において医 療過誤が繰り返されるのではないかという強い恐怖心 を抱くことや,それは出産が近づくにつれ強まってい くことなどが先行研究により明らかとなっている(山 﨑,2013,p.3-4)。 他の研究によれば,出産にかかわる医療過誤により 児に被害が及ぶ経験をした女性は,次子出産において 安全な出産への支援,医療過誤に遭った子に対する女 性の思いに寄り添うかかわりなどを望んでいることが わかった。また,医療者から受けた支援が多いほど出 産満足度が高まると推測されており,出産時における 医療者の積極的なかかわりの重要性が示唆されている (山﨑,2016,p.727)。しかし,児を喪失した女性の 次子出産への支援に関する研究は今までほとんど行わ れておらず,医療者の認識に言及する研究もみあたら ない。そこで本研究は,前述の先行研究から明らかと なった児を喪失した女性の心理やニーズに対する助産 師の認識,施設での支援の現状と課題を明らかにし, 望ましいケアに対する助産師の認識に関連する要因を 検討することを目的とする。 1.対象 分娩を取り扱っている施設に勤務する助産師を対象 とした。日本産科婦人科学会が運営する周産期医療の 広場により,分娩を取り扱っている全国の施設 2577 から地域に偏りがでないよう地域別に6ブロックに分 け,乱数表を用い145施設を無作為抽出し,調査協力 の依頼をした。承諾が得られた 18 施設(12.4%)に勤 務する助産師全員(251人)に調査依頼書及び自記式質 問紙調査票を郵送した。 2.研究デザイン 量的記述研究デザイン,関係探索型横断研究 3.用語の定義 望ましいケア:出産にかかわる医療過誤により児を 喪失した女性の多くが望むケア 4.調査項目と各項目の関連 文献検討により(Arsenault ・ Donate,550-557;高 島・中島,2013,p.1-9;山﨑,2013,p.5-7;山﨑, 2016,p.721-728),調査項目を作成した。 児を喪失した女性の次子出産への支援には,周産期 の死に共通するものと,特有な配慮を必要とするもの があると推測されており,周産期の死を体験した女性 に対する知識や経験なども重要な要因であると考え, 調査項目を作成した。 調査項目の内容妥当性は,周産期医療過誤に精通し た研究者および周産期の死に精通した研究者数名が個 別に検討し,それぞれの意見を得て内容を吟味するこ とにより行った。調査項目は以下のとおりである。 ① 対象の属性(表1参照) ② 周産期の死を体験した女性に対する知識や経験 ③ 児を喪失した女性に対する知識や経験 ④ 児を喪失した女性の次子出産に対する思いの理 解(14項目,表4参照) (文献検討により明らかとなった次子出産に対す る思いを「全く思わない」から「非常に思う」の4 段階リッカート評定とした) 本 研 究 の 対 象 者 に お け る Cronbach α 係 数 は, 0.76であり,尺度の信頼性を検証した。 ⑤ 児を喪失した女性の次子出産に必要な支援の理 解(14項目,表5参照)
(文献検討により明らかとなった次子出産に必要 な支援を「全く思わない」から「非常に思う」の4 段階リッカート評定とした) 本 研 究 の 対 象 者 に お け る Cronbach α 係 数 は, 0.90であり,尺度の信頼性を検証した。 ⑥ 児を喪失した女性の次子出産にかかわる時の助 産師の心情(7項目,表3参照) このうち,女性とのかかわりで発生する不安や 戸惑い,逃避といった否定的な感情をネガティ ブな心情,それ以外をポジティブな心情に分類 する。 ⑦ 児を喪失した女性への望ましいケアに対する助 産師の認識(10項目,表6参照) (筆者の先行研究により明らかとなった望ましい ケアを「全く行わない」から「十分に行う」の4段 階リッカート評定とし,望ましくないケアを逆 転項目として 3 項目設けた。これらは逆転処理 をし,望ましいケアをするほど高得点になるよ う設定した) 本 研 究 の 対 象 者 に お け る Cronbach α 係 数 は, 0.72であり,尺度の信頼性を検証した。 5.調査期間 調査期間は,平成27年1月~3月であった。 6.分析方法 全ての調査項目に対し記述統計を行い,各項目の関 連については Spearman の順位相関係数(rs)を用い た。児を喪失した女性の次子出産に対する思いの理 解,児を喪失した女性の次子出産に必要な支援の理 解,児を喪失した女性への望ましいケアに対する助産 師の認識は主成分分析を行い,合成変数(総合的特 性)(対馬,2015,p.235-236)として他の関連要因とと もに共分散構造分析を行った。統計処理はSPSS22.0, Amos23.0を使用し,検定の有意水準は 5% 未満とし た。共分散構造分析の適合度指標はCFI(0.95以上)お よびRMSEA(0.05以下)を用いた。 7.倫理的配慮 調査は,調査協力の承諾を得た施設を通して行っ た。対象者には依頼書により研究の主旨を説明すると ともに,調査票への記入は自由意思であり,回答がな い場合にも不利益を被ることはないこと,調査は無記 名で行い,データは統計的に処理するため個人が特定 することはないこと,研究結果は学術的な目的以外に 使用しないことなどを説明した。また,調査票が返送 された段階で調査への同意が得られたと判断すること も説明した。本研究は,川崎市立看護短期大学研究倫 理審査委員会の承認を得て行った(第R51号)。
Ⅲ.結 果
回答は139人(回収率55.4%)から得られた。対象の 属性は表 1 に示す。対象者の年齢は 22 歳から 64 歳, 平均36.6±9.6歳であった。助産師経験年数は1年から 40年,平均 10.8±8.2 年であり,職位としては一般職 員が98人(70.5%)と多かった。 1.周産期の死を体験した女性に対する知識や経験 書物などを読んだ経験がある 111 人(79.9%),周産 期の死を体験した女性の次子出産ケア経験がある114 人(82.0%)であり,経験例数(助産師一人当たり)は 平均4.8±5.0件であった(表2)。 2.児を喪失した女性に対する知識や経験 書物などを読んだ経験がある53人(38.1%),児を喪 失した女性の次子出産ケア経験がある 7 人(5.0%)と 少なかった(表2)。 表1 対象の属性 基本属性(n=139) n(%) 年齢 ~29歳 39(28.1) ~39歳 47(33.8) ~49歳 36(25.9) ~59歳 14(10.1) 60歳以上 1(0.7) 無回答 2(1.4) 助産師としての経験年数 ~4年 36(25.9) ~9年 28(20.1) ~14年 22(15.8) ~19年 18(12.9) ~24年 12(8.6) ~29年 9(6.5) 30年以上 1(0.7) 無回答 13(9.4) 職位 看護副部長 1(0.7) 看護師長 8(5.8) 副看護師長・主任 32(23.0) 一般職員 98(70.5) 分娩介助件数 ~299件 77(55.4) ~499件 27(19.4) ~999件 21(15.1) 1000件以上 9(6.5) 無回答 5(3.6) 出産にかかわる医療過誤により児を喪失した女性の次子出産への支援3.児を喪失した女性の次子出産にかかわった経験の ある助産師 児を喪失した女性の次子出産ケア経験のある助産師 は7人であり,心情としては,「医療過誤や喪失した児 の話をどのように切りだしたらいいのか悩む」という 人が5人(71.4%)と多かった(表3)。ネガティブな心情 の項目数は,助産師一人当たり平均2.9±1.3であった。 児を喪失した女性の次子出産に対する思いの理解 は,「自分の出産のリスクの度合いを考慮したり,施 設の情報収集をするなどして次子出産施設を慎重に選 択する」など 6 項目において,「非常に思う・思う(以 下,肯定的な認識とする)」と全員が回答した(表4)。 児を喪失した女性の次子出産に必要な支援の理解 は,「医療過誤により喪失した児の存在を尊重するよ うにかかわる」という項目において,全員が肯定的な 認識をもっていた。一方,「医療過誤や喪失した児の ことをよく知っている医師,助産師が立ち会う」は, 「全く思わない・思わない(以下,否定的な認識とす る)」と回答した人が4人(57.1%)であった(表5)。 児を喪失した女性への望ましいケアに対する助産師 の認識は,「出産に対する恐怖心が強いと思うので, できるだけ側にいる時間を作る」という項目において 全員が「十分に行う・行う(以下,肯定的な認識)」と 回答し,他の 4 項目もほぼ全員が肯定的な認識を や経験 (n=139) 周産期の死を体験 した女性に対する 知識や経験 n(%) 出産にかかわる医療過誤 により児を喪失した女性 に対する知識や経験 n(%) 書物等を読んだ経験の有無 (複数回答) ない 28(20.1) 86(61.9) ある 111(79.9) 53(38.1) 手 記 53(38.1) 10(7.2) ルポルタージュ 11(7.9) 4(2.9) 新聞記事 38(27.3) 12(8.6) 医学・助産学関連の書籍 78(56.1) 21(15.1) インターネット 47(33.8) 12(8.6) 裁判判例 17(12.2) 医療事故関連の書籍 10(7.2) 講演会・セミナーの受講 経験の有無 ない 97(69.8) 125(89.9) ある 42(30.2) 14(10.1) 体験者の会の存在・活動 内容に関する知識 全く知らない 24(17.3) 60(43.2) あまりよく知らない 78(56.1) 66(47.5) 知っている 34(24.5) 13(9.4) よく知っている 3(2.2) 0(0.0) 次子出産ケア経験 ないある 11424(17.3)(82.0) 1327(85.5)(5.0) 無回答は除く 表 3 出産にかかわる医療過誤により児を喪失した女性の次子出産にかかわるときの助産師の心情(複 数回答) 出産にかかわる医療過誤により児 を喪失した女性の次子出産ケア 経験あり (n=7) n(%) 経験なし (n=132) n(%) ネガティブな心情 1.医療過誤や喪失した児の話をどのように切りだし たらいいのか悩む 5(71.4) 115(87.1) 2.自分が行ったことに対し,クレームを付けられる のではないかと不安である 3(42.9) 44(33.3) 3.説明したことを聞き返されたり,メモに書かれた りすると不安である 3(42.9) 53(40.2) 4.できるだけかかわりを避けようと思う 1(14.3) 9(6.8) 5.医師に代わってほしいと思う 1(14.3) 20(15.2) 6.経験豊富な他の助産師に代わってほしいと思う 0(0.0) 46(34.8) ポジティブな心情 7.いつもと変わらない 2(28.6) 32(24.2)
もっていた。一方,逆転項目は「全く行わない・行わ ない」割合が肯定的な認識を示すため,「原因はどうあ れ,児を喪失した女性が次子を出産する時と同じよう にかかわる」「医療過誤や喪失した児について,自分 から聞かないようにする」は,肯定的な認識をもたな い助産師が多いことがわかった(表6)。 4.児を喪失した女性の次子出産にかかわった経験の ない助産師 児を喪失した女性の次子出産にかかわった経験のな い助産師は132人であり,次子出産にかかわると仮定 した場合の心情は,「医療過誤や喪失した児の話をどの ように切りだしたらいいのか悩む」が 115 人(87.1%) と多かった(表3)。ネガティブな心情の項目数は,助 産師一人当たり平均2.2±1.4であった。 児を喪失した女性の次子出産に対する思いの理解 は,「二度と同じ体験(医療過誤)をしたくないという 思いが強い」という項目において,全員が肯定的な認 識をもっていた(表4)。 児を喪失した女性の次子出産に必要な支援の理解 は,「次子との新たな母子関係を確立させるための援助 を行う」「医師と助産師が情報を共有し,一貫した対応 ができるようにする」という項目において全員が肯定 的な認識をもっており,「妊娠時から助産師が継続的に かかわる」「妊娠・分娩の経過や処置,児の状態など は,わかりやすく説明する」「次子の出産が,満足感 の高い出産体験となるようにかかわる」においても, 100%近くが肯定的な認識をもっていることがわかっ た。一方,「医療過誤や喪失した児のことをよく知って いる医師,助産師が立ち会う」は,68人(51.5%)が否 定的な認識をもっていた(表5)。 児を喪失した女性への望ましいケアに対する助産師 の認識は,「些細な質問にも繰り返し対応する」など 5 項目において,90% 以上が肯定的な認識をもってい た。一方,「医療過誤や喪失した児について話す場を 作る」は,肯定的な認識をもつ助産師が半数程度にと どまった。逆転項目である「原因はどうあれ,児を喪 失した女性が次子を出産する時と同じようにかかわ 表4 出産にかかわる医療過誤により児を喪失した女性の次子出産に対する思いの理解 出産にかかわる医療過誤により児を喪失した女性の次子出産ケア 経験あり(n=7) n(%) 経験なし(n=132) n(%) 全く 思わない 思わない 思う 非常に思う思わない 思わない全く 思う 非常に思う 1. 医療過誤により喪失した児をもう一度産みたい と思い妊娠を希望する 0(0.0) 2(28.6) 2(28.6) 2(28.6) 8(6.1) 76(57.6) 43(32.6) 4(3.0) 2. 自分の出産のリスクの度合いを考慮したり,施 設の情報収集をするなどして,次子出産施設を 慎重に選択する 0(0.0) 0(0.0) 2(28.6) 5(71.4) 0(0.0) 3(2.3) 50(37.9) 79(59.8) 3. 医療過誤に遭ったことを,次子出産施設の医療 者に伝えるのをためらう 0(0.0) 2(28.6) 4(57.1) 1(14.3) 6(4.5) 47(35.6) 71(53.8) 7(5.3) 4. 次子の健診時,健康そうにみえる母子をみるの が辛い 0(0.0) 2(28.6) 2(28.6) 2(28.6) 1(0.8) 39(29.5) 77(58.3) 14(10.6) 5. 次子の出産が近づいてくると,医療過誤のこと ばかり思い出す 0(0.0) 0(0.0) 3(42.9) 4(57.1) 1(0.8) 15(11.4) 85(64.4) 29(22.0) 6. 医療者への不信感により,恐怖心に苛まれなが ら次子の出産に臨む 0(0.0) 0(0.0) 4(57.1) 3(42.9) 1(0.8) 21(15.9) 84(63.6) 25(18.9) 7. また同じこと(医療過誤)が繰り返されるのでは ないかという恐怖心が強い 0(0.0) 0(0.0) 3(42.9) 4(57.1) 1(0.8) 5(3.8) 83(62.9) 43(32.6) 8. 二度と同じ体験(医療過誤)をしたくないという 思いが強い 0(0.0) 0(0.0) 0(0.0) 7(100.0) 0(0.0) 0(0.0) 33(25.0) 99(75.0) 9. 次子が元気に生まれた喜びを強く感じる 0(0.0) 0(0.0) 1(14.3) 6(85.7) 0(0.0) 5(3.8) 46(34.8) 80(60.6) 10.次子を出産した後,医療過誤により喪失した児 への思いが強く湧いてくる 0(0.0) 2(28.6) 4(57.1) 1(14.3) 0(0.0) 25(18.9) 78(59.1) 29(22.0) 11.医療過誤により喪失した児も,次子と同じよう に元気に生まれるはずだったと悔しさを感じる 0(0.0) 1(14.3) 3(42.9) 3(42.9) 2(1.5) 25(18.9) 76(57.6) 28(21.2) 12.医療過誤により喪失した児といつまでもつな がっていたいと思う 0(0.0) 2(28.6) 3(42.9) 2(28.6) 1(0.8) 20(15.2) 80(60.6) 30(22.7) 13.医療者から適切な支援を受けることで,次子の 出産満足度が高まる 0(0.0) 1(14.3) 2(28.6) 4(57.1) 1(0.8) 3(2.3) 80(60.6) 48(36.4) 14.次子の出産満足度が高まると,次子に続く出産 (次々子の出産)に対する意識も高まる 1(14.3) 0(0.0) 2(28.6) 1(14.3) 1(0.8) 8(6.1) 82(62.1) 41(31.1) 無回答は除く 出産にかかわる医療過誤により児を喪失した女性の次子出産への支援
る」は,106 人(80.3%)が肯定的な認識をもっていな かった(表6)。 5.児を喪失した女性への望ましいケアに対する助産 師の認識と関連要因 児を喪失した女性の次子出産ケア経験のある助産師 出産にかかわる医療過誤により児を喪失した女性の次子出産ケア 経験あり(n=7) n(%) 経験なし(n=132) n(%) 全く 思わない 思わない 思う 非常に思う 思わない 思わない全く 思う 非常に思う 1. 妊娠時から医師が継続的にかかわる 1(14.3) 0(0.0) 4(57.1) 2(28.6) 0(0.0) 5(3.8) 75(56.8) 51(38.6) 2. 妊娠時から助産師が継続的にかかわる 1(14.3) 0(0.0) 1(14.3) 5(71.4) 0(0.0) 1(0.8) 75(56.8) 56(42.4) 3. 次子の健診や出産時は,女性と家族が共に過 ごせる環境を整える 1(14.3) 0(0.0) 1(14.3) 5(71.4) 0(0.0) 8(6.1) 76(57.6) 48(36.4) 4. 家族と積極的にかかわり,共に女性を支える 1(14.3) 0(0.0) 1(14.3) 5(71.4) 0(0.0) 8(6.1) 73(55.3) 50(37.9) 5. 女性と胎児の健康を保持増進させるための方 法を指導する 1(14.3) 0(0.0) 1(14.3) 5(71.4) 1(0.8) 9(6.8) 91(68.9) 30(22.7) 6. 妊娠・分娩の経過や処置,児の状態などは, わかりやすく説明する 0(0.0) 1(14.3) 0(0.0) 6(85.7) 0(0.0) 1(0.8) 56(42.4) 75(56.8) 7. 医療過誤や喪失した児のことをよく知ってい る医師,助産師が立ち会う 0(0.0) 4(57.1) 1(14.3) 2(28.6) 6(4.5) 62(47.0) 48(36.4) 15(11.4) 8. 次子の出産が,満足度の高い出産体験となる ようにかかわる 0(0.0) 1(14.3) 2(28.6) 4(57.1) 0(0.0) 1(0.8) 68(51.5) 63(47.7) 9. 信頼関係を築き,医療者への不信感を払しょ くさせる 0(0.0) 1(14.3) 2(28.6) 4(57.1) 1(0.8) 12(9.1) 73(55.3) 46(34.8) 10.医療過誤や喪失した児について話す場をつく り,思いを傾聴する 0(0.0) 1(14.3) 2(28.6) 4(57.1) 0(0.0) 20(15.2) 78(59.1) 34(25.8) 11.医療過誤により喪失した児の存在を尊重する ようにかかわる 0(0.0) 0(0.0) 0(0.0) 7(100.0) 0(0.0) 6(4.5) 77(58.3) 49(37.1) 12.次子との新たな母子関係を確立させるための 援助を行う 0(0.0) 1(14.3) 1(14.3) 5(71.4) 0(0.0) 0(0.0) 79(59.8) 53(40.2) 13.心理面の専門家(カウンセラーなど)を紹介 する 0(0.0) 2(28.6) 1(14.3) 4(57.1) 0(0.0) 28(21.2) 75(56.8) 29(22.0) 14.医師と助産師が情報を共有し,一貫した対応 ができるようにする 0(0.0) 1(14.3) 0(0.0) 6(85.7) 0(0.0) 0(0.0) 41(31.1) 90(68.2) 無回答は除く 表6 出産にかかわる医療過誤により児を喪失した女性への望ましいケアに対する助産師の認識 出産にかかわる医療過誤により児を喪失した女性の次子出産ケア 経験あり(n=7) 経験なし(n=132) n(%) 全く 行わない 行わない 行う 十分に行う 行わない 行わない全く 行う 十分に行う 1. 原因はどうあれ,児を喪失した女性が次子を 出産する時と同じようにかかわる(逆転項目)4(57.1) 3(42.9) 0(0.0) 0(0.0) 72(54.5) 34(25.8) 3(2.3) 18(13.6) 2. 不安軽減を目的とした情報提供を行う 0(0.0) 1(14.3) 3(42.9) 3(42.9) 0(0.0) 6(4.5) 66(50.0) 60(45.5) 3. 出産に対する恐怖心が強いと思うので,でき るだけ側にいる時間を作る 0(0.0) 0(0.0) 4(57.1) 3(42.9) 0(0.0) 7(5.3) 71(53.8) 54(40.9) 4. 些細な質問にも繰り返し対応する 1(14.3) 0(0.0) 2(28.6) 4(57.1) 0(0.0) 0(0.0) 58(43.9) 74(56.1) 5. 医療者に不信感を抱いていると思うので,い つも以上に言動に気を付ける 1(14.3) 0(0.0) 1(14.3) 5(71.4) 0(0.0) 5(3.8) 57(43.2) 70(53.0) 6. 医療過誤や喪失した児について,自分から聞 かないようにする(逆転項目) 5(71.4) 1(14.3) 1(14.3) 0(0.0) 79(59.8) 6(4.5) 6(4.5) 38(28.8) 7. 医療過誤や喪失した児について話す場を作る 1(14.3) 1(14.3) 5(71.4) 0(0.0) 4(3.0) 60(45.5) 53(40.2) 14(10.6) 8. 家族と積極的にかかわる 1(14.3) 1(14.3) 2(28.6) 3(42.9) 1(0.8) 13(9.8) 82(62.1) 36(27.3) 9. 次子の出産が,肯定的な出産体験となるよう にかかわる 1(14.3) 0(0.0) 1(14.3) 5(71.4) 0(0.0) 1(0.8) 57(43.2) 74(56.1) 10.医療過誤や喪失した児については早く忘れ, 次子との母子関係を第一に考えられるように かかわる(逆転項目) 2(28.6) 1(14.3) 4(57.1) 0(0.0) 21(15.9) 6(4.5) 48(36.4) 57(43.2) 無回答は除く 注)逆転項目は処理済み
が少ないことに加え,次子出産にかかわった時と調査 時とで時間的な経過があり,これが助産師の個人的要 因や児を喪失した女性の次子出産に対する思いの理 解,児を喪失した女性の次子出産に必要な支援の理解 などに影響を与える可能性があると考えられたため, 児を喪失した女性の次子出産ケア経験のある助産師7 名を除いて分析を行った。また,助産師の個人的要因 (基本属性)および児を喪失した女性の次子出産にか かわる時の助産師の心情(ポジティブとネガティブな 心情にわけ助産師一人が回答した項目数を量的データ として処理)についてはすべての項目において分析を 行った結果,児を喪失した女性の次子出産に対する思 いの理解と有意な相関がみられたものは,「周産期の 死を経験した女性の次子出産ケア経験」(経験数) (rs=0.21, p=0.04),児を喪失した女性の次子出産に 必要な支援の理解(rs=0.50, p=0.01)であった。また 分析方法で示したように,児を喪失した女性の次子出 産に対する思いの理解,児を喪失した女性の次子出産 に必要な支援の理解,児を喪失した女性への望ましい ケアに対する助産師の認識は主成分分析を行い,合成 変数(各々第 1 主成分はすべて正の値であり,主成分 負荷量は0.5以上となっていることから総合指標を表 すと解釈し,児を喪失した女性の次子出産に対する 「思いの理解」,児を喪失した女性の次子出産に「必要 な支援の理解」,児を喪失した女性への「望ましいケ アに対する認識」とした)として分析を行った。本研 究の対象者における Cronbach α 係数は,それぞれ 0.80,0.90,0.84 であり,信頼性を検証した。児を喪 失した女性への望ましいケアに対する助産師の認識に 関連する要因を検討するため,共分散構造分析を 行ったところ,5% 水準で全て有意である推定値(標 準化推定値)が得られた。関連要因としては,「ネガ ティブな心情」よりも「必要な支援の理解」で「望まし い ケ ア に 対 す る 認 識」の 標 準 化 係 数(各 々 −0.12 , 0.67)が高かった。「ネガティブな心情」は標準化係数 が低いが,適合度指標はCFI=1.000 RMSEA=0.000で あり,良好と判断した(図1)。
Ⅳ.考 察
1.周産期の死を体験した女性および児を喪失した女 性に対する知識や経験 周産期の死を体験した女性に対する知識や経験は, 書物などを読んだ経験が多く,80%以上の助産師に次 子出産ケア経験があった。これに対し,児を喪失した 女性に対する知識や経験は全体的に少なく,次子出産 ケア経験も5% と少なかった。現時点では統計的な把 握はできていないが,前述の産婦人科訴訟件数を鑑み ると,児を喪失した女性の次子出産そのものが少ない ことが推測される。それに加え,医療過誤に遭ったこ とを次子出産施設の医療者に伝えるのをためらう女性 の存在があることも考えられる。このような場合,医 療過誤を経験したかどうかは再受診でない限り把握 が難しいと考えられるが,先行研究(山﨑,2016, p.725)によれば,児を喪失した女性は,次子出産施設 を自分の出産のリスクの度合いを考慮し,情報収集を ὀ㸧ᛮ࠸ࡢ⌮ゎ㸸ඣࢆ႙ኻࡋࡓዪᛶࡢḟᏊฟ⏘ᑐࡍࡿᛮ࠸ࡢ⌮ゎ ᚲせ࡞ᨭࡢ⌮ゎ㸸ඣࢆ႙ኻࡋࡓዪᛶࡢḟᏊฟ⏘ᚲせ࡞ᨭࡢ⌮ゎ ࢿ࢞ࢸࣈ࡞ᚰ㸸ඣࢆ႙ኻࡋࡓዪᛶࡢḟᏊฟ⏘ࢃࡿࡢຓ⏘ᖌࡢᚰ ࡢ࠺ࡕࢿ࢞ࢸࣈ࡞ࡶࡢ ᮃࡲࡋ࠸ࢣᑐࡍࡿㄆ㆑㸸ඣࢆ႙ኻࡋࡓዪᛶࡢᮃࡲࡋ࠸ࢣᑐࡍࡿຓ⏘ᖌࡢㄆ㆑ ඣࢆ႙ኻࡋࡓዪᛶࡢḟᏊฟ⏘ࢣ⤒㦂ࡢ࠶ࡿຓ⏘ᖌ ྡࢆ㝖࠸ࡓ ྡᑐࡋศᯒࢆ⾜ࡗࡓࠋ &), 506($ 図1 出産にかかわる医療過誤により児を喪失した女性(児を喪失した女性)への 望ましいケアに対する助産師の認識と関連要因 出産にかかわる医療過誤により児を喪失した女性の次子出産への支援は再受診するケースは少ないと考えられる。した がって,医療過誤により児を喪失したかどうか把握で きぬまま次子出産にかかわることも少なからず存在す ると推測される。Vincent(2010/2015,p.182)は,医 療行為による傷害は大きな信頼を置いていた人に危害 を加えられたことで感情的な反応が強くなり,対処が 困難になりやすいなどといった心理面への影響が特に 複雑であると述べている。このことから,助産師は知 識や経験を最大限に活かし,対象理解に努めることが 課題である。 2.児を喪失した女性の次子出産への支援 児を喪失した女性の次子出産にかかわる時の助産師 の心情は,ネガティブな心情を抱きやすく,とくに 「医療過誤や喪失した児の話をどのように切り出した らいいのか悩む」が多かった。岡永(2005,p.56)は, 流産・死産・新生児死亡にかかわる助産師が難しいと 感じたケアとして,「どのように接すればよいのかわ からない」という女性とのコミュニケーションに関す るものが多く,これにより母親と心理的な距離が生じ ると述べている。また,これに対しては,対象者がお かれた心身の状況や気持ちの変化への知識を深めるこ とや,助産師自身の感情への戸惑いと向き合う必要性 を示唆しており,このことは児を喪失した女性の次子 出産においても重要なことと考える。 児を喪失した女性の次子出産に対する思いの理解 は,ほとんどの項目において過半数以上が肯定的な認 識をもっており,理解を示していることがわかった。 児を喪失した女性の次子出産に必要な支援の理解 は,全員が肯定的な認識をもつ項目がある一方,「医 療過誤や喪失した児のことをよく知っている医師,助 産師が立ち会う」という項目は,過半数以上が否定的 な認識をもっていた。先行研究(山﨑,2016,p.726) によれば,出産にかかわる医療過誤により児に被害が 及ぶ経験をした女性の多くは,医療過誤や医療過誤に 遭った子のことをよく知っている医師や助産師が出産 に立ち会うことを望んでいる。また,要因は明らかに されていないが,医療過誤や医療過誤に遭った子のこ とをよく知っている医師や助産師が立ち会うことで, 出産満足度が高まることが示唆されている。本研究で は,このような支援を望む女性と助産師の認識に違い があることがわかったため,否定的な認識に至る助産 師の心理について要因を含め検討する必要がある。 の認識は,望ましくないケアとして設定した3項目の うち2項目で,肯定的な認識をもっていなかった。先 行研究(山﨑,2016,p.726)によれば,出産にかかわ る医療過誤により児に被害が及ぶ経験をした女性の多 くは,次子出産後に医療過誤に遭った子の出産を悔や む傾向があり,医療過誤や医療過誤に遭った子のこと を話す場を作り,思いを傾聴してほしいというニーズ をもっている。しかし,医療過誤に遭ったことを次子 出産施設の医療者に伝えるのをためらう女性が少なか らず存在することもわかっており,「医療過誤や喪失 した児について,自分から聞かないようにする」など といったかかわりでは,女性のニーズに応えられない ケースが生じることがわかった。一方,望ましくない ケアとして設定した「医療過誤や喪失した児について は早く忘れ,次子との母子関係を第一に考えられるよ うにかかわる」は,肯定的な認識をもつ助産師が多 かった。この項目は医療過誤に限らず,周産期の死を 体験した女性に共通するところであり,本研究では, 周産期の死を体験した女性に対する知識や次子出産ケ ア経験のある助産師が多いことが関係していると推測 される。 児を喪失した女性への望ましいケアに対する助産師 の認識に関連する要因については,児を喪失した女性 の次子出産に対する「思いの理解」から児を喪失した 女性の次子出産に「必要な支援の理解」への標準化係 数が0.54であることから,「思いの理解」の向上が「必 要な支援の理解」に影響を与えることが確認できた。 また,「ネガティブな心情」よりも「必要な支援の理 解」で「望ましいケアに対する認識」の標準化係数が 高いことから,「必要な支援の理解」の向上が「望まし いケアに対する認識」につながることが示唆された。 結果で示したように,児を喪失した女性の次子出産に 対する思いの理解と有意な相関がみられたのは「周産 期の死を体験した女性の次子出産ケア経験」のみであ り,この項目を含めたパス図を鑑みると,児を喪失し た女性の次子出産に対する思いの理解に弱いながらも 影響を及ぼしていると思われる。児を喪失した女性を 周産期の死に含まれる存在として理解することの限界 は,前述のとおりである。しかし,児を喪失した女性 への支援には,周産期の死に共通するものがあること や,「周産期の死を体験した女性の次子出産ケア経験」 が増えることで様々な背景をもつ女性にかかわること になり,女性の心理やニーズの理解が深まる。このこ
とが結果として,児を喪失した女性の次子出産に対す る思いの理解につながったのではないかと考える。 最後に,本研究の限界について述べる。本研究 テーマは先行研究が少なく,調査項目や各項目の関連 における信頼性,妥当性について一定の評価は得られ たものの,共分散構造分析における「ネガティブな心 情」は標準化係数が低く,関連がなかった。しかし, 適合度指標が良好であることから,何らかの要因が存 在していると考えることもできる。本研究では,ネガ ティブな心情を助産師一人当たりの項目数として分析 したため,どのような心情が「望ましいケアに対する 認識」に影響するのか,ネガティブおよびポジティブ な心情の分類方法に問題はなかったかなどの検討を行 い,調査項目を精選させる必要がある。次に,研究方 法で述べたように対象は無作為抽出を行ったが,承諾 が得られた施設が12.4%と少なく,結果を一般化する には限界がある。また,次子出産ケア経験のある助産 師が少ないことに加え,次子の出産にかかわった時と 調査時とで時間的な経過があるため,因果関係を検討 することや,経験のない助産師との違いを明らかにす ることができなかった。そのため,これからも研究を 積み重ね検証を進めていく必要がある。しかし,今ま でほとんど研究されていなかった児を喪失した女性の 次子出産における助産師の認識について研究できたこ とは,看護のあり方を見直すうえで大変意義のあるこ とだと考える。
Ⅴ.結 語
1.児を喪失した女性の心理やニーズに対する助産師 の認識 「医療過誤や喪失した児のことをよく知っている医 師,助産師が出産に立ち会う」という項目において, 過半数以上の助産師が否定的な認識をもっていた。こ のような認識に至る助産師の心理について要因を含め 検討する必要がある。 2.児を喪失した女性の次子出産に対する施設での支 援の現状と課題 児を喪失した女性の次子出産に対する助産師の知識 や経験は少ないという現状が明らかとなり,今後はそ の少ない知識や経験を最大限に活かし,対象理解に努 めていくことが課題である。 3.児を喪失した女性への望ましいケアに対する助産 師の認識と関連要因 「ネガティブな心情」よりも「必要な支援の理解」で 「望ましいケアに対する認識」の標準化係数が高いこ とから,「必要な支援の理解」の向上が「望ましいケア に対する認識」につながることが示唆された。 謝 辞 本研究にご協力くださいました医療機関ならびに助 産師の皆様に心より感謝いたします。なお本研究は, 科学研究費助成事業(課題番号 15k11743)を受けて 行った。 文 献Arsenault, D. C. & Donate, K. L. (2007). Restrained expecta-tions in late pregnancy following loss.J Obstet Gynecol Neonatal Nurs, 36(6), 550-557. Charles Vincent(2010)/相馬孝博,藤澤由和訳(2015).患 者安全.181-202,東京:篠原出版新社. 医 事 関 係 訴 訟 事 件 統 計 http://www.courts.go.jp/saikosai/ vcms_lf /2016053101ijikankei.pdf [2016-7-20] 医事関係訴訟事件(地裁)の診療科目別既済件数 http:// www.courts.go.jp / saikosai / vcms_lf /20160603ijikankei4. pdf [2016-7-30] 岡永真由美(2005).流産・死産・新生児死亡にかかわる 助産師によるケアの現状.日本助産学会誌,19(2), 49-58. リスクマネジメントマニュアル作成指針 www1.mhlw.go. jp / topics / sisin / tp1102-1_12.html [2016-7-20] 周産期医療の広場 http://shusanki.org/index.html [2014-7-11] 髙島葉子,中島通子(2013).助産事故により死産し紛争に 至った女性の体験.新潟県立看護大学紀要,2,1-9. 対馬栄輝(2015).SPSS で学ぶ医療系データ解析.235-236,東京:東京図書株式会社. 山﨑由美子(2013).出産にかかわる医療過誤により児を 喪失した女性の心的傾向.川崎市立看護短期大学紀 要,18(1),1-9. 山﨑由美子(2016).出産にかかわる医療過誤により児に 被害が及ぶ経験をした女性の次子の妊娠・出産時に 必要とされる支援.母性衛生,56(4),721-728. 米田昌代(2007).周産期の死の「望ましいケア」の実態お よびケアに対する看護者の主体的評価とその関連要 因.日本助産学会誌,21(2),46-57. 出産にかかわる医療過誤により児を喪失した女性の次子出産への支援