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全文

(1)

考察 : 潜在的労働力としての高年齢者

著者

加藤 巌

雑誌名

和光経済

52

2

ページ

1-13

発行年

2020-02

URL

http://id.nii.ac.jp/1073/00004766/

(2)

〈自由論文〉

日本の生産年齢人口の減少と潜在的労働力に関する考察

―潜在的労働力としての高年齢者―

Study on Declining Working Age Population and Not Fully Utilized Human

Resource in Japan

-Focusing on Elderly Labor Force

Analysis-

加 藤   巌

Iwao Kato

Abstract】

Japan’s working age population has been declining. This decreasing trend of workforce is unlikely to reverse. For this reason, there is concern that the domestic labor supply will decline in the future. Unless the inflow of workers from overseas increases rapidly, it is getting more important to introduce human resources that are not fully utilized in the country into the labor market as a means of dealing with labor shortages. Therefore, this paper considers on the possibility of middle-aged and elderly people (employment)expected as a potential work force.

【キーワード】 生産年齢人口,高年齢者雇用,潜在的労働力 1. は じ め に  労働市場の状況は景気動向により変動し得る。 ただし,少子高齢化に基づく構造的問題が簡単に 除去されるとは考えにくい。これからも日本の生 産年齢人口が総人口に占める比率は低下していく。 その分だけ労働力の希少性が高まっていく。  日本企業は今後(これまで以上に)労働力の確 保とその質的向上の両方を図っていかねばならな い。このため,労働市場の状況や潜在的労働力の 調査・分析が求められる。  まず、次節では,生産年齢人口の減少の状況と 今後の見通しを確認する。そして,潜在的労働力 がどの程度,実際の労働力人口(就業者)として 期待され得るのかを分析する。こうした研究成果 は将来的に高齢化していく各国の労働環境の整備 にも役立つと考えられる。 2. 日本の人口推移  日本の少子化と高齢化は,小峰(2015)が指摘 したように世界最速で進んでいる1)。その進行に 伴い,生産年齢人口の減少も始まっている。  生産年齢人口は日本経済団体連合会(2008)が 訴えるように「社会の活力の源」であり,「経済 社会のシステム,中でも年金財政を支える」存在 である2)。以下,その状況および将来予測を明ら かにする。  まず,2017 年に厚生労働省が今後 50 年先まで

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の「将来人口推計」を公表した3)。それによると, 合計特殊出生率(女性が生涯に生む子どもの数) の 50 年後の見通しは 1.44 である4)。2012 年の前 回調査よりも回復した(2060 年の推計値で 1.35 だった)ものの,それでもなお人口維持水準であ る 2.07 には遠く及ばない。  また,50 歳まで一度も結婚したことのない人 の割合である「生涯未婚率」は,2017 年に 53 歳 になる女性では 12.0%だが,晩婚化などの影響も あり現在の 17 歳女子の未婚率は 18.8%まで上昇 すると見込まれる5)。これらの指標を加味して計 測すると,2065 年の新生児の出生数は 55 万 7000 人ほどとなり,2015 年から半減するとされる6)  上記の結果,2015 年に 1 億 2709 万人だった総 人口は 2053 年には 1 億人を割り込み,2065 年に は 8808 万人になると予測される7)。これは 2015 年からの 50 年間で総人口が 3 割強も減ることを 意味している。  生産年齢人口の増減についても,先の「人口推 計(詳細統計)」によれば,1995 年に 8716 万人 でピークに達してから徐々に減り始め,2016 年 には 7656 万人となった8)。つまり,過去約 20 年 間で,日本の生産年齢人口は 1060 万人あまりも 減少しているのである。  一方,平均寿命は 2015 年の男性 80.75 歳,女 性 86.98 歳 か ら,2065 年 に 男 性 84.95 歳, 女 性 91.35 歳に伸長する(中位推計)。そこで,図表 1 に示されるように,高齢化率(老年人口の割合) は 2015 年の 26.6%から 2065 年には 38.4%へと上 昇する。ちなみに,65 歳以上の高齢者人口数が ピークを迎えるのは,第 2 次ベビーブーム世代が 高齢者になった後の 2042 年の見通しである。こ の年の高齢者数は 3935 万人に達すると見込まれ る。  さらに,14 歳以下の子どもの割合は現状の 12.5%から 2065 年には 10.2%へ,生産年齢人口 (15 歳から 64 歳)の割合は 60.8%から 2065 年に 51.4%に下落する見通しである。これらのことは, 厳しい人口オーナスの発生を予測させる。  すなわち,年金や医療,介護などの社会保障費 を(主として)負担する生産年齢人口が絶対数で も相対比率でも減っていく。これからやって来る 後期段階の高齢化社会を支える「社会の担い手」 が減少していくのである。  繰り返すが,これからも生産年齢人口の減少傾 向は続く。一方で高齢者数が増加するため,人口 オーナスをもたらす「老年人口指数」が高まると 予測される9)。生産年齢人口が絶対数としても 0.0 (年) 5.0 10.0 15.0 20.0 25.0 30.0 35.0 40.0 高齢者(65 歳以上) 高齢化率 45.0 (%) (千人) 0 20,000 40,000 60,000 80,000 100,000 120,000 140,000 1950 55 60 65 70 75 80 85 90 95 2000 05 10 15 20 25 30 35 40 45 50 55 2060 生産年齢人口 (15 ∼ 64 歳) 14 歳以下人口 図表 1 日本の人口推移と高齢者比率 (出所)厚生労働省(2017)「将来人口推計」および総務省統計局「人口推計」から作成。

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(高齢者に対する)比率としても減少していくこ とが,社会的な扶養負担の増大をもたらすと危惧 されるのである。  総務省「人口推計」によれば,2015 年は生産 年齢人口の 2.3 人が高齢者 1 人を支える「騎馬戦 型社会」だが,2065 年には 1.3 人の生産年齢人口 が 1 人の高齢者の暮らしを支える「肩車型社会」 になっていくと推測される10)  今後,生産年齢人口の減少に歯止めが掛からな ければ,将来的な労働力不足が不安視される。こ うした懸念に対処するには,国内にある潜在的な 労働力を丁寧に掘り起こしていく必要がある。そ の中心は家庭に眠る女性労働力と高年齢者労働力 とされる。中でも,より実現性の高い対策として 注目されるのが,高年齢者労働力の活用である。 3. 日本の労働力不足の発生  前述のように,日本は人口減少に伴う生産年齢 人口の漸減といった構造的な問題を抱えている。 加えて,昨今の持続的な景気回復もあって,労働 市場では人手不足が訴えられるようになっている。  例えば,労働政策研究 ・ 研修機構(2016)が 30 人以上規模の企業 1.2 万社(産業・規模別に層 化無作為抽出/有効回答は 2406 社)に対して 「人手(人材)の過不足状況」を尋ねたところ, 「人手(人材)不足を生じている」と回答した企 業は 43.1%(「大いに不足」6.7%と「やや不足」 36.4%の合計)に達している(図表 2)11)  上記で「人手不足」と回答した企業は,人手不 足が生じている原因(複数回答)について「人材 人材獲得競争の激化 慢性的な人手不足産業 離職の増加 景気の回復に伴う事業の拡大 完全退職者の増加 定年退職者や再雇用も終えた 過去の採用抑制の影響 少子高齢化 休職者や短時間勤務者の増加 育児・介護や私傷病等に伴う 都市部への人口移動 など規制の見直し 資格・免許制度や配置基準 進学に伴う高卒等人材の減少 その他 分からない 無回答 0.0 10.0 20.0 30.0 40.0 50.0 60.0 70.0 (%) 66.6 40.9 34.0 24.3 17.3 14.8 14.1 9.8 7.8 7.3 5.8 6.9 0.3 0.4 図表 3 企業が考える労働力不足の原因 (出所)図表 2 に同じ。 大いに不足 6.7 やや不足 36.4 適当39.2 大いに過剰 0.3 やや過剰 4.6 0 20 40 60 80 100 (%) 無回答 12.8 図表 2 労働力の過不足状況(企業調査) (出所)労働政策研究 ・ 研修機構(2016)「人材(人手)不足の現 状等に関する調査」JILPT 調査シリーズ No. 162 から作 成。

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獲得競争の激化」66.6%,「慢性的な人手不足産 業」40.9%,「離職の増加」34.0%,「景気の回復 に伴う事業の拡大」24.3%,「定年退職者や再雇 用も終えた完全退職者の増加」17.3%,「過去の 採用抑制の影響」14.8%,「少子高齢化」14.1%, 「育児・介護や私傷病等に伴う休職者や短時間勤 務者の増加」9.8%,「都市部への人口移動」7.8% などと回答している(図表 3 参照)。  上記のような人手不足の原因として企業が回答 したものは,単独で存在するというよりも互いに 影響を与え合っているといえる。とくに人口動態 と結びつくものが多い。回答上位にある「慢性的 な人手不足産業」や「完全退職者の増加」などと 「少子高齢化」を結びつけて人材不足の複合的な 原因として説明することもできる。こうした長期 の構造的要因と短期の景気変動が複合的に絡み 合って「人材獲得競争の激化」をもたらしている。  また,人手(人材)不足を生じている企業に 「人手不足が企業経営に及ぼしている影響につい て」尋ねたところ,何らかの影響があると回答し た企業の割合が 66.2%に達している。具体的な回 答(複数回答)の中には,「需要の増加に対応で きない」や「技術・ノウハウの着実な伝承が困難 になっている」「事業運営上に支障を来している」 「募集賃金の上昇や既存人材の処遇改善,時間外 労働の増大等で人件費が増加している」といった ものが多く含まれている。  さらに,同調査から人手の過不足感別に今後の 見通しを見ると,人材(人手)が「大いに不足」 している企業の 54.7%,「やや不足」している企 業の 31.1%が「人材(人手)の不足はいっそう深 刻化すると思う」と回答している。また,同順に 24.2%,39.7%が「現状程度の人材(人手)の不 足が,慢性的に継続すると思う(緩和・解消の見 通しはない)」などと回答した。総じて,人材 (人手)の不足を生じている企業の 72.0%が,一 層の深刻化や慢性的な継続を予想している。 4. 日本の潜在労働力の存在  上述のような人手不足に対処するには,労働供 給量を増やすことが求められる。長期的には出生 率を引き上げて生産年齢人口を増やすことや外国 人労働者をより積極的に受け入れることなどが考 えられる。と同時に,喫緊の労働力不足へ対処す るには,「いまは就業していないが働く意思を持 つ人々」を労働市場へ招き入れることが必要であ る。つまり,社会に埋もれた潜在的労働力を活用 すべく検討することが望まれる。  ここで,国内にある潜在的労働力として想定で きるものは,以下の 3 者である。  ①一時的に失職している人たち(完全失業者)  ② 非労働力人口の中で就業を希望する人たち (就業希望者)  ③ 労働力人口の中でも働く時間を伸ばしたいと 考えている人たち(追加的就業希望者)  ①から③に分類される人々がどのくらい存在す るのかについては,総務省統計局の「労働力調 査」から明らかにできる12)  まず,「労働力調査」の 2017 年 3 月公表分(詳 細集計)によれば,2016 年(10-12 月期)の完全 失業者は 195 万人であった。これは前年同期に比 べて 8 万人の減少であり,その減少傾向自体も 2016 年 12 月期でみて 79 か月連続となっている。 このように完全失業者が長期的に減少しているこ とは,雇用環境の改善を示す,新たな証左といえ る。  つぎに,就業希望者は 369 万人(2016 年 10-12 月期)であった。このうちの 45 万人が 65 歳以上 の高齢者である。すなわち,就業希望者の 8 人に 1 人が高齢者となっている(この点は後段で補足 説明する)。  上記から完全失業者(195 万人)と就業希望者 (369 万人)の合計は 564 万人となる。やや乱暴 な議論ながら,完全失業者と就業希望者の全員に 就業機会が与えられるならば,2016 年末の実際 の 就 業 者 数 で あ る 6462 万 人 が 8.7% 増 加 し て 7024 万人に達する。  また,追加的就業希望者は「いま仕事をしてい るが,もっと働く時間を増やしたい」と希望する

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人々で,その総数は 282 万人(2016 年 10-12 月 期)である。そこで,彼らが現実に働く時間を伸 ばしていくならば,1 人あたり労働時間の延長は 限られたものであっても,総数が 282 万人と大き なものだけに,労働需給の逼迫状況を一定程度緩 和すると期待できる。  結局のところ,完全失業者,就業希望者,追加 的就業希望者の 3 者が持つポテンシャルを上手く 引き出す仕組みができあがれば,喫緊の労働力不 足の解消だけでなく,マクロの労働投入という側 面から,人口動態に起因する構造的要因の痛みを 和らげる効果を持ち得るといえる。 5. 日本の潜在的労働力の特徴  前述のように,日本国内における潜在的労働力 は完全失業者と就業希望者,そして追加的就業希 望者の 3 者である。3 者を適切に活用することが 大切であることは上述のとおりである。そこで以 下では,さらなる分析の土台とするため,それぞ れの特徴を総務省統計局(2017)の「労働力調 査」から明らかにしていく。  潜在的労働力を男女別に分類すると,追加就業 希望者と就業希望者では女性の方が男性よりも 2 倍強多くなっている(図表 4 参照)。一方,完全 失業者では男性の方が 1.5 倍程度多くなっている。 このことは,日本の雇用慣行として男性就業者の 長期雇用が継続していることを示している。すな わち,男性が学校を卒業後に働き始めると長期雇 用になる一方で,結婚や子育てなどの理由で(一 旦)退職し非労働力人口(ないしは一時的雇用) となっていた女性が子育ての終わった段階であら ためて働くことを選択していると(図表 4 から) 読み取れる。  ついで,日本の潜在的労働力を年齢階層別に分 類すると,追加就業希望者と就業希望者では 35 〜 44 歳層が最も多くなっている。これに対して, 完全失業者では 25 〜 34 歳の若い世代が多くなっ ている(図表 5 参照)。この点も,やはり日本の 雇用慣行から生じていると考えられる。完全失業 者の中で若い世代が多くなるのは,やや逆説的な がら言葉を飾らずに述べると,中高年世代の雇用 が守られる傾向にあることと,中高年従業員の転 職が概して一般的ではないことの表れである。  また,就業希望者の中でも 15 〜 24 歳の最も若 い層も 79 万人と大きな塊となっているが,これ は(大学生などの)新卒者を対象とした企業の一 括採用人事が影響していると考えられる。すなわ ち,高校や大学,大学院の卒業 ・ 修了を間近に控 えた生徒や学生が一斉に就職活動するという日本 の採用(雇用)慣行が,就業希望者に若い世代を 増やしている理由である。この点は,図表 6 で明 らかなように,男性の就業希望者のうち 15 〜 24 歳の若い世代が突出して大きいことからも理解で きる。  さらに,潜在的労働者として期待できる高齢者 0 50 100 150 200 250 300 (万人) 追加就業希望者 就業希望者 完全失業者 男 女 90 101 120 192 268 75 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 (万人) 15 ∼ 24 歳 25 ∼ 34 歳 35 ∼ 44 歳 45 ∼ 54 歳 55 ∼ 64 歳 65 歳以上 追加就業希望者 就業希望者 完全失業者 30 79 24 43 70 50 67 86 41 61 51 36 40 37 29 40 45 15 図表 5 日本の潜在的労働力(年齢階層別) (注)人数表記は千人単位の区切りで四捨五入した。このため文 書中の数値と必ずしも一致しない。 (出所)総務省統計局「人口推計」から作成。 図表 4 日本の潜在的労働力(男女別) (出所)総務省統計局「人口推計」から作成。

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数は,追加就業希望者の中の 40 万人,就業希望 者中の 45 万人,完全失業者の 15 万人の合計で 100 万人に達している。2016 年末に高齢者の就業 者数は 777 万人となっているが,統計的にはさら に数十万人もの高齢者を(追加的に)労働市場に 呼び込める可能性がある。とくに,就業希望者の 中の 65 歳以上層が 55 〜 64 歳層よりも多いこと は,法定の定年年齢を超えても働きたいと願う高 齢者が一定数いることを示している。  すでに働いている高齢者の中でも「労働時間を 増やしたい」と考えている追加就業希望者の 40 万人を加えて,今後も高齢者が国内の労働供給に 与え得る絶対的および潜在的な効果は大きいとい える。  最後に,日本の潜在的労働力を男女別 ・ 年齢別 に分類すると,完全失業者を除いて,どの世代も 女性の潜在的労働力が男性のそれよりも多いこと が分かる。また,女性の棒グラフが 3 者ともほぼ 35 〜 44 歳層を頂点とした山形になっていること に気がつく(図表 7 参照)。これは,先にも触れ たように子育てが一段落した女性たちが職場に復 帰する,いわゆる M 字効果の表れと考えられる。 同効果は薄れてきたとされるが,潜在的労働力の 統計を見る限り,いまだに一定の影響を残してい ることが分かる。  一方,男性の棒グラフには凸凹が出現している。 特徴的な点は(既述のとおり)就業希望者で 15 〜 24 歳の若い層が突出していることである。日 本企業の採用慣行に則ったものである。  同じく図表 6 からは,65 歳以上男性の就業希 望者と完全失業者の合計が 35 万人に達すること が読み取れる。とくに,就業希望者では若い世代 についで大きな 24 万人が高齢者グループとなっ ている。この点からも,定年後も働きたいと願う 高齢者が数十万人単位で存在すると分かる。 6. 日本の潜在的労働力の特徴  ここまで総務省統計局の「人口推計」および 「労働力調査」を基にして,昨今および近未来の 生産年齢人口の減少とそれを補う可能性として国 内に眠る潜在的労働力が存在することを概観して きた。  既述のごとく,総人口の減少と生産年齢人口の 減少はこれからも長く日本社会を覆う構造的要因 である。このため今後も労働需給が逼迫する傾向 は続くと予測される。減り続ける生産年齢人口に 社会保障の負担が寄り掛かることも大きな懸念材 料である。  このため,これからも生産年齢人口の減少と労 働需給の推移を注視する必要がある。同時に,上 記のような就業の可能性を持つ人々へ労働参加を 促し,現実の労働力人口(年齢に関わらず労働に 従事している人々)に組み込むことを考えていか ねばならない。 0 5 10 15 20 25 30 35 40 45 (万人) 15 ∼ 24 歳 25 ∼ 34 歳 35 ∼ 44 歳 45 ∼ 54 歳 55 ∼ 64 歳 65 歳以上 追加就業希望者 就業希望者 完全失業者 13 40 15 13 12 32 11 8 23 12 7 20 14 10 20 27 24 11 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 (万人) 15 ∼ 24 歳 25 ∼ 34 歳 35 ∼ 44 歳 45 ∼ 54 歳 55 ∼ 64 歳 65 歳以上 追加就業希望者 就業希望者 完全失業者 17 40 10 30 58 19 56 79 18 50 44 15 26 27 9 13 21 4 図表 7 日本の潜在的労働力(女性・年齢階層別) 図表 6 日本の潜在的労働力(男性・年齢階層別) (注)人数表記は千人単位の区切りで四捨五入した。このため文 書中の数値と必ずしも一致しない。 (出所)図表 6,7は総務省統計局「人口推計」から作成。

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 以上から,本節では,厚生労働省(2016)『労 働経済の分析』が示した 4 つのケースから将来の 労働力需給の状況を捉えていく13)。まず,図表 8 は,今後の経済成長と労働参加が適切に進んだ場 合と(逆に)進まなかった場合の未来の就業者数 を示している。  図表 8 では,経済成長と労働参加が適切に進む 場合には,2020 年の就業数は 6380 万人となり, 2014 年の実績値より増加する。とくに,30 〜 59 歳層と 60 歳以上層で 2014 年の実績値を上回る。 また,2030 年でも就業者数は 6169 万人となり, 2014 年より総数は減るものの,60 歳以上層の増 加は持続する。このシミュレーション結果からも, 高年齢者層は今後の貴重な労働供給源として期待 される。前述の潜在的労働力の中の就業希望者に 高齢者が 45 万人含まれていたことと合わせて, 定年年齢を超えた高年齢者層は,今後の労働力確 保に向けた現実的な対象として有望視されるので ある。  一方,経済成長と労働参加が適切に進まない場 合は,就業者数は 2020 年に 6047 万人,2030 年 に 5561 万人まで減少すると予測される。いずれ もすべての年齢階層で就業者数は 2014 年を下回 る。とくに,29 歳までの若い層の就業者は 2014 年の実績値よりも 2030 年時点で 14.9%の減少と なる。  以上のことから,高年齢者層の労働参加率を引 き上げることが今後の労働力確保にとって大切で あることがあらためて分かる。  さて,ここで近隣諸国に目を転じてみる。すな わち,アジア各国においても少子高齢化に伴う生 産年齢人口の減少が見込まれる。今世紀の半ばご ろにかけて人口オーナスが発生することも確実視 される。したがって,アジアの人々も,日本と同 様に生産年齢人口が減少することを前提とした対 処策として,潜在的労働力の活用,とくに高年齢 者の労働参加率を引き上げていく必要に迫られる こととなる。この意味から,いま,彼らにとって は,日本がいかにして生産年齢人口の減少に対処 していくのかについて注意を払い,その成否をも たらす要因を学んでいくことは将来の貴重な知的 財産となり得る。  上記を踏まえて,次節では,日本の高年齢者の 現状の就業実態と今後の見通しを概観する。こう した分析が今後のアジア各国に益するものと想定 している。 7. 日本の高年齢者雇用の状況  ここまで,日本では生産年齢人口が減少し続け ていること,その状況を改善するために潜在的労 働力に注目すべきこと,中でも高年齢者の就業希 望者と完全失業者を労働市場へ取り込むことが大 切だと述べてきた。そこで,本節では実際の高年 齢者の就業状況はどのようになっているのかを確 認していく。 図表 8 日本の就業者数の将来推計 (注 1)経済成長と労働参加が適切に進むケースは「日本再興戦略」を踏まえた高成長(名目 3%程度,実質 2%程度の成長)が実現し, かつ労働市場への参加(男性の 25 〜 59 歳層で 90%超)が進むケース。 (注 2)経済成長と労働参加が適切に進まないケースは復興需要を見込んで 2020 年までは一定程度の経済成長を想定するが,2021 年 以降は経済成長率がゼロ,かつ,労働市場への参加が進まないケース(2014 年から労働力率固定)。 (出所)厚生労働省(2016)『労働経済の分析』から作成。 経済成長と労働参加が適切に進まないケース 経済成長と労働参加が適切に進まないケース 経済成長と労働参加が適切に進むケース 経済成長と労働参加が適切に進むケース 実績値 2030 2020 2030 2020 2014 15 ∼ 29 歳 30 ∼ 59 歳 60 歳以上 888 977 978 1020 1044 3544 3932 3783 4081 4074 1129 1138 1408 1279 1234 5561万人 6047万人 6169万人 6380万人 6352万人

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 図表 9 は,1968 年以降の日本の就業者数の推 移を年齢階層別に積み立てグラフで表している。 就業者の全体数は 1990 年代半ばに一旦ピークア ウトした後,近年再び増加傾向にある。2016 年 には 6465 万人に達した。こうした就業者の増加 に寄与しているのが,高年齢の就業者の増加であ る。この高年齢就業者の増勢を確かめるのが図表 10 である。同図表は,55 歳以上の就業者数を 5 歳区分で示している。  図表 10 からも過去半世紀の間に 60 〜 64 歳層 と 65 〜 69 歳層,そして 70 歳以上層の就業者数 が増加してきたことが分かる。とくに,65 〜 69 歳層の就業者数は 2016 年に 438 万人となり, 1968 年(136 万人)に比べて 3.2 倍に拡大,同様 に 70 歳以上層の就業者数も 2016 年に 332 万人に 達して,1968 年(93 万人)の 3.6 倍に増加して いる。  さらに,図表 11 からは,近年,高年齢者の就 業率が上昇に転じていることが分かる。例えば, 60 〜 64 歳層では就業率が 2000 年の 51.0%から 2016 年の 63.6%へ上昇している。また,65 〜 69 歳層でも 2005 年の 33.8%から 2016 年の 42.8%へ, 70 歳 以 上 層 も 2010 年 の 12.8% か ら 2016 年 の 13.7%まで上昇している。 70 歳以上 65 ∼ 69 歳 60 ∼ 64 歳 55 ∼ 59 歳 50 ∼ 54 歳 45 ∼ 49 歳 40 ∼ 44 歳 35 ∼ 39 歳 30 ∼ 34 歳 25 ∼ 29 歳 20 ∼ 24 歳 15 ∼ 19 歳 0 1,000 2,000 3,000 4,000 5,000 6,000 7,000 1968 1970 1975 1980 1985 1990 1995 2000 2005 2010 2015 2016 (万人) 70 歳以上 65 ∼ 69 歳 60 ∼ 64 歳 55 ∼ 59 歳 0 200 400 600 800 1,000 1,200 1,400 1,600 1,800 2,000 1968 1970 1975 1980 1985 1990 1995 2000 2005 2010 2015 2016 (万人) 図表 9 日本の就業者数の推移(年齢階級別) 図表 10 日本の 55 歳以上の就業者数の推移 (出所)総務省統計局(2017)「労働力調査」から作成。 (出所)総務省統計局(2017)「労働力調査」から作成。

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 ただし,留意すべき点もある。例えば,図表 10 では,2005 年あたりまで順調に増えてきた 55 〜 59 歳層の就業者数が減少し始めている。また, 60 〜 64 歳層の就業者数の増勢にも衰えが見える。 これらは,人口減少の影響を受けて,高年齢者層 の中でも比較的若い層が減り始めているからであ る。例えば,60 〜 64 歳人口は 2011 年に 1058 万 人であったものが,2015 年には 858 万人にまで 減っている。  したがって,今後,日本で高年齢者雇用を促進 していくには,これまでよりも(より)高い年齢 層,例えば,65 〜 69 歳層の人々が対象となる可 能性がある。こうした 65 歳以上層や場合によっ ては 70 歳以上層を雇用する際,企業にはきめの 細かい対応が求められる。当然,企業にとっては あらたな費用負担となる。  しかしながら,高齢化や人口減少といった構造 的要因が緩和されず,外国人労働者の受け入れも 進まない中では,日本企業は高年齢者向けの人事 施策,そして,これまでの雇用慣行の変更を含め た見直しを迫られることなるだろう。 8. 日本の高年齢者の潜在的就業率(有業率)  上述のように,現在の日本では高年齢の就業者 が増えている。しかも,より年齢の高い就業者数 が着実に増えている可能性がある。実際,1960 年代から長期間にわたり下降し続けていた高年齢 者の就業率が今世紀に入り,上昇に転じている。 こうした傾向は 2013 年施行の「改正高年齢者雇 用安定法」によって拍車がかけられている。同法 によって,企業は(継続的雇用を)希望する従業 員を 65 歳まで雇い続けるように義務付けられる からである。さらに,昨今では,高年齢者の職業 分布が若者のそれに重なってきており,いわゆる 労働市場におけるミスマッチの影響は薄れてきた。  そこで,以下では「現在は働いていないが就業 を希望する」高年齢者の人たちが働き始めた場合, 高年齢者の就業率(有業率)がどのくらい改善し 得るのかを見ていく。  ここでは計測される(実現可能性のある)就業 率のことを高年齢者の「潜在的就業率」ないしは 「潜在的有業率」と称する。名称としては,「潜在 的労働力率」でも良いと考えられるが,「労働力 人口」の定義では「働く意思を持つが失業してい る」人たちも含まれるので,本節ではできるだけ 実際に「仕事をしている」人たちの絶対数とその 人口比率を表すものとして「潜在的就業率(有業 率)」という用語を使うことにする。  さて,前掲の図表 8 の基礎データー(総務省統 計局(2017)「労働力調査詳細分析」)では,2016 年の 55 〜 59 歳層の就業者数は 603 万人,60 〜 0.0 10.0 20.0 30.0 40.0 50.0 60.0 70.0 (%) 58.4 55.7 54.1 51.1 53.4 53.4 51.0 52.0 57.1 62.2 63.6 45.5 41.9 40.2 38.2 38.7 38.9 36.2 33.8 36.4 41.5 42.8 22.1 18.4 17.2 16.6 16.5 16.2 15.4 13.6 12.8 13.7 13.7 1970 1975 1980 1985 1990 1995 2000 2005 2010 2015 2016 60 ∼ 64 歳 65 ∼ 69 歳 70 歳以上 (出所)総務省統計局(2017)「労働力調査」から作成。 図表 11 日本の高年齢者の就業率の推移

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64 歳層が 523 万人,65 〜 69 歳層で 443 万人,そ して 70 歳以上層が 332 万人となっている。  また,前掲の図表 9 からは,年齢階層ごとの就 業 率 が 55 〜 59 歳 層 で 79.9%,60 〜 64 歳 層 は 63.6%,65 〜 69 歳層で 42.8%,そして 70 歳以上 層が 13.7%となっている。前述のごとく,いずれ の就業率も上昇傾向を示している。  ただし(当然ながら),年齢階層別の就業率を ごく単純に並べてみると,55 〜 59 歳層と 70 歳 以上層の間には大きな隔たりがある。そこで,法 定の定年年齢である 65 歳を区切りとして就業者 数と就業率を捉え直してみたい。すると,55 〜 64 歳層の就業者数は 1126 万人で就業率は 71.4%, 65 歳 以 上 の 就 業 者 数 は 775 万 人 で 就 業 率 は 22.4%となる。定年年齢をはさんでその前後の年 齢階層で就業率は 3.2 倍ほどの開きがあると分か る。  こうした高年齢者の就業者数および就業率を現 時点の日本ではどのくらい上昇させることが可能 であろうか。ここでは年齢上昇や健康寿命の伸長 なども考慮に入れることが望ましいが,以下の分 析では,静学的に(前節で取り上げた)年齢階層 別の「就業希望者」と「完全失業者」のみを用い て確認していく。  前節の図表 5(および図表 6 と図表 7)から, 55 〜 64 歳層の就業希望者が男女合計で 37 万人, 同じく完全失業者が 29 万人であることが分かる。 つまり,同年齢階層で新たな労働力として期待で きるのは 66 万人である。この 66 万人を上記の 55 〜 64 歳層の就業者である 1126 万人に加えて, あらためて就業率を計算すると 75.6%となる。こ の数値が同年齢層の潜在的就業率(有業率)であ る。  換言すると,55 〜 64 歳層の就業希望者と完全 失業者をすべて労働力として取り込めれば,同年 齢層の就業率を 4.2%程度引き上げることができ る。同様に,65 歳以上層でも計算すると,同年 齢層の就業希望者と完全失業者の男女合計は 60 万人であり,この人数を就業者に加えた場合の就 業率は 24.1%となる。したがって,この時,就業 率を 1.7%程度押し上げることができる。  上記の分析からは,法定の定年年齢を境にして 高年齢者の潜在的就業率に 3 倍を超える乖離が生 じる(55 〜 64 歳層の就業率は 75.6%である一方, 65 歳以上層では 24.1%である)ことが示された。 また,分析結果を非就業者の観点から見ると,貴 重な気付きが得られる。つまり,潜在的就業率が 完全に満たされたとしても,非就業者が 55 〜 64 歳層で(同年齢人口比)25%弱,65 歳以上層で は 75%超存在するのである。  ここまで本節では,生産年齢人口の減少に対す る現実的な対処策として高年齢者の活用に可能性 が見い出せると数値データーを基にして述べてき た。誤解を怖れずに言及するならば,55 〜 64 歳 といった比較的若い年齢階層を含む高年齢者層の 一角に未開拓の労働力人口が眠っているのである。 そして,今後,仮に定年年齢を 66 歳,67 歳と引 き上げていくならば,定年年齢よりも若い年齢階 層の就業率および潜在的就業率が高まると期待で きる14)  こうした点から,いまだ定年年齢の若いアジア 各国(例えば,マレーシアでは 2013 年に法定の 定年年齢が 60 歳になった)では,これから高年 齢者の就業率と潜在的就業率を引き上げていく余 地の大きいことを日本の事例を通じて学ぶことが できる。 9. 日本の高年齢者雇用の可能性  前節まで,日本の高年齢者の就業者数が増加し ていること,中でもより高い年齢層(65 歳以上) の就業者が増加傾向にあることを明らかにした。 さらに,高年齢者層でも「いまは仕事をしていな いが就業意欲のある人たち(潜在的労働力)」が 一定数存在しており,今後さらに高年齢者の就業 率(有業率)が引き上げられる可能性を示した。  それでは日本で過去 10 年ほどの間に「働く高 年齢者が増えた」結果,彼らの就業形態はどのよ うなものになったのか。実は,アジアの研究者や 高齢者らと高年齢者雇用について話し合う時にも, この点についての質問されることが多い(補足説 明は後述)。

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 図表 12 と 13 は,高年齢の就業者がどのような 就業形態で働いているのかを示している。同図表 で取り上げているのは 65 歳以上の男女である。 年齢層を 65 歳以上としたのは,2013 年の改正高 年齢者雇用安定法の施行に伴って 60 〜 64 歳層の 人々が(とくに企業で働く人々が継続的に同じ職 場で)働くことが「当たり前」になったからであ る。  本節では定年年齢を超えた人々の就業形態を捉 えることで,一般にもイメージされやすい「高齢 者雇用=退職年齢に達した人があらためて働き始 める」の就業形態を明らかにしたい。  図表 12 からは,男性の高齢者労働力人口 472 万人(完全失業者を含む)のうち,正規雇用は 「雇用者のうち役員」の 75 万人と「正規の職員・ 従業員」の 62 万人の合計 137 万人で,その(同 年齢層の)労働力人口に占める割合,すなわち, 男性高齢者の正規雇用参加率は 29.2%(16.0%+ 13.2%)であると分かる。換言すると,男性の 65 歳以上労働力人口のうち,約 3 割弱が正規雇用で あると確認できる。  同様に図表 13 からは,女性の高齢者労働力人 自営業主(内職者含む) 151 万人(32.1%) 家族従業者 7 万人 (1.5%) 雇用者のうち 役員 75 万人 (16.0%) 派遣社員 9 万人(1.9%) 契約社員 29 万人(6.2%) 嘱託 25 万人(5.3%) その他 11 万人 (2.3%) 完全失業者 12 万人(2.6%) 正規の職員・従業員 62 万人(13.2%) パート・アルバイト 89 万人(18.9%) 自営業主(内職者含む) 50 万人 (16.1%) 家族従業者 54 万人 (17.4%) 雇用者のうち役員 27 万人(8.7%) 正規の職員・従業員 37 万人(11.9%) パート・アルバイト 115 万人(37.1%) 派遣社員 5 万人(1.6%) 契約社員 7 万人(2.3%) 嘱託 5 万人(1.6%)その他 6 万人(1.9%) 4 万人(1.3%)完全失業者 図表 12 日本の高年齢者の就業形態(男) 図表 13 日本の高年齢者の就業形態(女) (出所)図表 12,13 とも総務省統計局(2017)「労働力調査」から作成。

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口 311 万人(完全失業者を含む)のうち,正規雇 用は「雇用者のうち役員」の 27 万人と「正規の 職員・従業員」の 37 万人の合計 64 万人で,その (同年齢層の)労働力人口に占める割合,すなわ ち,女性高齢者の正規雇用参加率は 20.6%(8.7% + 11.9%)であると分かる。つまり,女性の 65 歳以上労働力人口のうち,約 2 割強が正規雇用で あると確認できる。  さらに,総務省統計局「労働力調査」では「自 営業者(内職者含む)」と「家族従業者」も正規 雇用に含んで統計的処理を行なっている。そこで, 図表 12 と 13 でも両者を正規雇用に含めて再計算 すると,上記の正規雇用者数および正規雇用参加 率も統計上大きく膨らむ。  男性高齢者の正規従業者の人数は 295 万に達し, 高齢者労働力人口に占める比率も 62.3%と 6 割を 超える。女性のそれは 168 万人となり,同比率も 54.0%まで上昇する。  また,日本の労働力人口の総数は 6639 万人 (2016 年)であることから,65 歳以上の労働力人 口(男性 472 万人 + 女性 311 万人)が同総数に 占める割合は 11.8%と分かる。こうした高齢者労 働力人口の比率から,「日本では労働力人口の 8 人に 1 人が高齢者」などと紹介されることがあ る15) 10. お わ り に  上記のような日本の高年齢者の就業率の高さは, 世界各国の現状とは異なっている。日本の事例を アジアの人々へ伝えると驚かれることが多い。  例えば,マレーシア政府統計局の労働力調査 (LFS と呼ばれる)によれば,2014 年に同国の 60 〜 64 歳層の就業者数は 37 万 6000 人にすぎず, その就業率は 37.3%であった16)。また,そもそ もマレーシアの労働力人口の定義では,上限年齢 を 64 歳までとしている。一方で,日本の労働力 人口の定義に年齢上限はない。つまり,日本では 何歳であっても就業している限りは「労働力人 口」に含まれる一方で,マレーシアでは 65 歳を 超えて働くことが(少なくともマレーシア政府統 計局では)想定されていないのである。  実は,マレーシアの定年年齢が 60 歳に引き上 げられたのはようやく 2013 年であり,それまで は 55 歳定年が一般的であった。こうした経緯も あって,上述のように日本の高年齢者の就業率が 高いことについては驚きの対象になる。  ただし,逆説的ながら,いまだ高年齢者の就業 率が高くないマレーシアでは,将来にわたって日 本の経験を受け入れる余地が大きく残されている といえる。余地があるというのは,有効に使われ ていない高年齢者のストックがあるということで あり,今後もその供給量は増えると考えられるか らである。  実際,マレーシアの出生時平均余命(平均寿 命)は伸び続けている。2015 年には男性が 72 歳, 女性は 77 歳に達した17)。今後は大泉(2012)が いうように,マレーシアなどでは先進国から医療 や保健衛生の後発性の利益を得ながら,健康寿命 も伸ばしていくことになる。  さらに,これから高齢化していく東南アジア各 国が日本の高年齢者の就業(状況)から学べるの は,人口動態に伴う高年齢者就業(雇用)の段階 的な進行過程であろう。例えば,日本の経験から, 高齢化のどの段階で,どの程度の高年齢者が働い ていたのか,その中身はどのようなものであった のかを知り,自らの高齢化の段階に応じた対策を 考えることができるだろう。  また,労働市場における労働力不足はいつどの ような規模で発生し得るのかについても日本の経 験から知見を得ることができる。就業率がどのく らいの期間でどのように推移するのか,その期間 にどのような政策的支援策があるべきかについて も,日本の経験を土台にして議論することが可能 となる。  さらに,日本の経験に倣って潜在的有業率を計 測することで,アジア各国は将来の生産年齢人口 の減少にどの程度対応できるのかについても検討 を加えることができるだろう。今後,高齢化が進 行する中でどのくらい就業者を増やせるのか,そ の可能性について日本の経験は議論の土台となり 得る。当然,日本の経験がそのまま,アジア各国

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で発生するわけでも,かつ,その対処法も日本と 他国でまったく同じというわけでもないだろう。 つまり,日本では平均余命と健康寿命が伸びてい る。また,高年齢者の就労意欲も高い。そこで, 日本の経験を貴重な知見として受け入れ,各国の 研究者はじめ関係各位が各国で受け入れ可能な形 で活かしていくことが肝要である。  例えば,先述のようにマレーシアでは労働力人 口の定義が日本と異なっており,65 歳以上の人々 が働くことを想定していないが,高齢化社会の到 来や人口オーナスの発生も見込まれる中,65 歳 以上も含めた形で労働力人口の定義を組み直して 政府統計データーを公表しても良いだろう。同様 に,各国では今後の(更なる)定年年齢の改定に あわせて就業率や潜在的就業率を引き上げる方策 を検討する必要が生まれる。さらには,加藤 (2018)が主唱したような高齢化社会の後期段階 の設定,進行速度の新しい基準18)なども学んで いくことが大切である。 【注】 1) 小峰隆夫・21 世紀制作研究所(編)『実効性のある少子化対 策のあり方』経団連出版,p. 7 を参照。 2) 日本経済団体連合会(2008)「人口減少に対応した経済社会 のあり方」pp. 2-10 を参照。 3) 厚生労働省(2017)「日本の将来推計人口」を参照。 4) 国立社会保障・人口問題研究所(2017)「将来人口推計」を 参照。 5) 同上。 6) 同上。 7) 同上。 8) 2016 年 10 月 1 日付けの人数。総務省統計局「人口推計」 (2017 年 4 月 14 日発表分)を参照。 9) 日本の人口オーナスは歴史上最も大きな数値を示し続けて いる。この点も国立社会保障・人口問題研究所(2017)「将 来人口推計」および総務省統計局「人口推計」から確認で きる。 10) 朝日新聞 2017 年 4 月 10 日「減る人口 見えぬ備え」を参照。 11) 労働政策研究 ・ 研修機構(2016)「人材(人手)不足の現状 等に関する調査」JILPT 調査シリーズ No. 162 を参照。同 調査では 30 人以上規模の企業 1.2 万社(産業・規模別に層 化無作為抽出)に対して調査票を配付して 2,406 社より有 効票を回収している。 12) 総務省統計局(2017)「労働力調査」(2017 年 3 月公表)を 参照。 13) 厚生労働省(2016)『労働経済の分析』p. 158 では以下が論 じられている。「今後我が国の人口の減少が見込まれる中で も,高年齢者は一層の増加が見込まれる。高年齢者には, 就業している方々も多いが,一方で就業には至っていない が就業意欲のある方々も多くいる。高年齢者の活躍は労働 力の供給制約緩和に資するものであり,高年齢者の就業意 欲をいかし,就労へつなげることが重要である。これらの 取組は所得を通じた消費拡大につながる。高年齢者がその 能力を十分に発揮してもらうには,やりがいを感じつつ就 業することが重要であるが,勤務時間が長くなるにつれて, 仕事に対する満足度が低下する傾向がある結果が得られた ことから,柔軟な労働時間の設定が必要と考えられる」。 14) ここでの議論は誤解を生む可能性があるので補足説明をす ると,本稿では高年齢者をすべて働かせるべきであると いった主張は行なっていない。働くということは様々な個 人的な理由や取り巻く社会環境によるものである。あくま でも働く人の個人的希望に沿うものであると考える。 15) 内閣府(2016)『平成 28 年版高齢社会白書』を参照。 16) マ レ ー シ ア 政 府 統 計 局(2014)Labour Force Study,

Bilangan tenaga buruh mengikut kumpulan umur, Malaysia, 1982–2014 お よ び 国 連 人 口 局(2015)World Population Prospects を参照。 17) 共同通信グループ NNA ASIA アジア経済ニュース 2016 年 3 月 8 日「マレーシア人の平均寿命男性 72 歳,女性 77 歳 に」を参照。 18) 加藤巌「高齢化社会の定義に後期段階を付け加える提案」 和光大学社会経済研究所『和光経済』第 51 巻第 1 号,pp. 23-32 を参照。

2019 年 11 月 8 日 受稿

2019 年 12 月 4 日 受理

参照

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