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Ⅰ. 海外拠点長の後継候補人材が常に見当たらないのはなぜか? はじめに日本企業においては 日本本社の上級管理職 (ex. 部長 ) を海外拠点長として現地に駐在させることが多い その場合 海外事業の成長に伴って海外拠点の数 規模が拡大すると 拠点長を担える本社人材が足りなくなる傾向にある 現職拠点長

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三菱 UFJ 銀行 国際業務部

June 1, 2018

・ 本資料は情報提供を唯一の目的としたものであり、金融商品の売買や投資などの勧誘を目的としたものではありません。 本資料の中に銀行取引や同取引に関連する記載がある場合、弊行がそれらの取引を応諾したこと、またそれらの取引の 実行を推奨することを意味するものではなく、それらの取引の妥当性や適法性等について保証するものでもありません。 ・本資料の記述は弊行内で作成したものを含め弊行の統一された考えを表明したものではありません。 ・本資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成されていますが、その正確性、信頼性、完全性を保証するものでは ありません。最終判断はご自身で行っていただきますようお願いいたします。本資料に基づく投資決定、経営上の判断、 その他全ての行為によって如何なる損害を受けた場合にも、弊行ならびに原資料提供者は一切の責任を負いません。実 際の適用につきましては、別途、公認会計士、税理士、弁護士にご確認いただきますようお願いいたします。 ・本資料の知的財産権は全て原資料提供者または株式会社三菱UFJ 銀行に帰属します。本資料の本文の一部または全部 について、第三者への開示および、複製、販売、その他如何なる方法においても、第三者への提供を禁じます。 ・本資料の内容は予告なく変更される場合があります。

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Ⅰ.海外拠点長の後継候補人材が常に見当たらないのはなぜか?

三菱UFJ リサーチ&コンサルティング株式会社 シニアマネージャー 石黒 太郎

Ⅱ.ミャンマー:商業省が外資企業による卸売業・小売業を解禁

森・濱田松本法律事務所

Ⅲ.フィリピン:外資出資比率規制の解釈に関する最高裁判決

長島・大野・常松法律事務所

Ⅳ.海外赴任に際し、赴任者と本社担当者が知っておくべきこと

5)海外勤務中に確定申告が必要な場合

三菱UFJ リサーチ&コンサルティング株式会社 チーフコンサルタント 藤井 恵

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Ⅰ.海外拠点長の後継候補人材が常に見当たらないのはなぜか?

はじめに 日本企業においては、日本本社の上級管理職(ex.部長)を海外拠点長として現地に駐在させること が多い。その場合、海外事業の成長に伴って海外拠点の数・規模が拡大すると、拠点長を担える本社人 材が足りなくなる傾向にある。現職拠点長の任期延長、拠点長の拠点間ローテーションなどによって人 材不足をしのいでいるのが実態ではないだろうか。本稿では、三菱UFJ リサーチ&コンサルティング ヒ ューマンキャピタル部のグローバル人事コンサルティングチームが 2017 年末に実施した『大手企業に おけるグローバル経営人材の育成に関する実態調査』から調査結果を四つ紹介し、日本の大手企業110 社の現状から、海外拠点長を担える人材確保の難しさについて論じたい。 (調査の概要はhttp://www.murc.jp/thinktank/rc/report/consulting_report/cr_180404 を参照) 調査結果(1):海外拠点長を担える人材が量・質の両面で足りていない 当調査では、海外拠点長の確保・育成に関する中長期的な問題意識として「海外の会社・事業をリー ドできる人材が足りない」(量的不足)を選択した企業が9 割弱、「現職者・候補人材のさらなる育成が 必要」(質的不足)を選択した企業が8 割強の結果となった。ほとんどの企業において、海外拠点長を 担える人材が量的にも質的にも足りていない状況にある、といえそうだ。 【海外拠点の社長・副社長クラスの充足に関する問題意識】 出所:大手企業におけるグローバル経営人材の育成に関する実態調査(三菱UFJ リサーチ&コンサル ティング実施)[日本の大手企業110 社による複数選択] 海外拠点長候補の量的不足について、企業の人事担当者に話を聞くと「海外拠点長候補の確保・育成 について、何もしていないわけではない。ただ、海外事業の伸びに対して、人材育成のスピードが到底 追い付かない」という声が多い。人材育成のスピードが追い付かず、海外拠点長に求められる要件を満 たしていない人材を派遣した結果、質的不足の問題意識につながっていることが想定される。

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3 調査結果(2):海外拠点長にはさまざまな経験・知識・スキルが必要 では、なぜ海外拠点長候補の育成スピードが海外事業展開に追い付かないのか?それは、海外拠点長 にはさまざまな知識・経験・スキルが要件として求められ、それらの習得に時間を要するからだ。調査 では、海外拠点長に必要な経験として、営業・製造・技術・経理といった「複数機能の経験」を求める 企業が7 割弱、「海外の勤務経験」を求める企業が 8 割弱の結果となった。「複数事業の経験」を求める 企業も4 割弱ある。これらを全て経験するには、少なくとも 10 年の歳月が必要だろう。 【海外拠点の社長・副社長クラスが保有すべき経験】 出所:大手企業におけるグローバル経営人材の育成に関する実態調査(三菱 UFJ リサーチ&コンサル ティング実施)[日本の大手企業110 社による複数選択(三つ以内)] また、重視する知識・スキルに関する調査では、選択が多かったものから順に「異文化コミュニケーシ ョンスキル」「英語スキル」「組織マネジメントスキル」「担当する地域・国の理解」「自社のバリュー・ウ ェイなどに対する理解」という結果となった。これらの多くは、日常の国内業務経験を通じて身に付ける ことが難しく、習得を支援する何らかの施策が必要だ。

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4 【海外拠点の社長・副社長クラスにとって重要な知識・スキル】 出所:大手企業におけるグローバル経営人材の育成に関する実態調査(三菱 UFJ リサーチ&コンサル ティング実施)[日本の大手企業110 社による複数選択(三つ以内)] 経験という視点でも、知識・スキルという視点でも、海外拠点長に求められる要件の習得には中長期の 計画的育成が必要だ。来年の拠点長交代を本社が今年考えているようでは、到底間に合わない。海外拠点 長の多くが「年単位で駐在任期が延長されている」「そもそも帰任時期が決まっていない」「海外拠点長の ポジションはこれで2 回目」といった状況に当てはまる場合、その企業においては海外拠点長候補の計画 的育成が行われていない可能性が高い。 調査結果(3):海外拠点長候補の育成ゴールが明らかになっていない 育成を計画的に行うためには、海外拠点長の役割・ミッションを果たすために必要な経験・知識・スキ ルなどを人材要件=育成ゴールとして定義する必要がある。ゴールを設定せずして、計画を立案すること は不可能だ。人材要件を育成のゴールに据えることで、個々の候補者の現状と人材要件のギャップを埋め る育成施策を計画的に展開することが可能になる。しかしながら今回の調査では、人材要件の「定義が明 文化されている」という企業は、わずか1 割強にとどまる結果となった。

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5 【海外拠点の社長・副社長クラスの人材要件の有無】 出所:大手企業におけるグローバル経営人材の育成に関する実態調査(三菱UFJ リサーチ&コンサル ティング実施)[日本の大手企業110 社による選択回答] ただし別の設問では、7 割を超える企業が、人材要件の「定義の明文化が必要」と答えている。つま り、海外拠点長の人材要件の必要性を認識しつつも実際には明文化していない、ということになる。 ここで単純な疑問が浮かび上がってくる。それは「人材要件の明文化が必要と分かっているのに、な ぜそれに取り組まないのか?」という疑問だ。失礼は承知の上で、幾つかの企業の人事担当者に対し、 この疑問をストレートにぶつけてみた。すると、その回答は多くの企業で似通うものだった。それは「事 業部門やグループ会社管理部門に人事権が握られており、人事部からは海外拠点長人事に手を出せない」 「人事部門トップにグローバル人事に対する課題認識がなく、目前の国内人事の課題だけを意識してい る」「売り上げ増・利益増といった、経営指標に直接的に結び付くものではないため、予算を確保でき ない」といった声だ。これらの声に対しては、現職の海外拠点長の方々から事業部門トップ・人事部門 トップに後継人材の計画的な育成の必要性について意見具申や支援依頼することで、新たな動きにつな がると考えられる。 調査結果(4):海外拠点長へのローカル人材の登用が想定されていない ここまで、海外拠点長を日本本社から駐在員として派遣する前提で話を進めてきた。しかしながら、 海外拠点長を担える人材は日本人駐在員に限定されない。当然ながら、ローカル人材もその候補になり 得る。取り扱う製品・サービスを現地の市場ニーズに適合させる必要があれば、なおさらだ。ただし、 下表の調査結果を見ると、そう考えている企業は多くはなさそうだ。計画的な育成対象者の所属会社・ 国籍について、日本本社の日本人社員を選択した企業が約8 割であるのに対し、海外グループ会社の外 国籍社員を選択した企業は 3~4 割の結果となった。つまり、多くの企業は海外グループ会社の外国籍 社員を本社による計画的育成の対象とは見なしておらず、ローカル人材の育成は個々の海外拠点に委ね られていることになる。

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6 【計画的な人材育成の対象者の所属会社・国籍】 中堅層(33 歳以上 42 歳以下) シニア層(43 歳以上) 日本人社員 外国籍社員 日本人社員 外国籍社員 日本本社 81% 34% 80% 25% 国内グループ会社 29% 14% 31% 10% 海外グループ会社 30% 39% 29% 32% 出所:大手企業におけるグローバル経営人材の育成に関する実態調査 (三菱UFJ リサーチ&コンサルティング実施)[日本の大手企業 109 社による複数選択] ローカル人材を海外拠点長まで育成・登用するとなると、個々の海外拠点に閉じた取り組みでは非常 に困難だ。なぜなら、海外拠点の規模は本社よりも圧倒的に小さいことが多く、保有している組織・機 能も少ないため、海外拠点長として必要な経験の機会を独力では用意できないことが多いからだ。また、 海外拠点の人事部門の人員・予算は限定的であり、十分な研修プログラムも提供できない。海外拠点と いう一つのたこつぼの中だけで、海外拠点長の人材要件を満たせるような育成の仕組みを整備すること は極めて難しいだろう。 終わりに

人材育成体系において、OJT(On the Job Training)を主たる手法に位置付けている日本企業は多い。 しかし、OJT は現職務での経験に基づく育成手法であり、今後果たす役割(海外拠点長)に必要な、よ り幅広く深い経験・知識・スキルの習得には向いていない。海外拠点長を担える人材が偶発的に育つケ ースもまれにあり得るが、それはOJT による育成の成果というよりは、元々のポテンシャルが高く、成 長すべくして自ら成長したという人材がほとんどだ。多くの場合は、海外拠点長が担えるように意図的 かつ中長期的に成長支援する必要があり、通常のOJT だけで全てをカバーすることは難しい。 海外拠点長候補の不足を海外事業計画実現のボトルネックにしないためには、海外拠点長を担える人 材がたまたま育つのを待つのではなく、育成ゴールを明確にした上で、人材を必要な数だけ意図的に育 てていく、つまり計画的に人材をつくり込んでいくアプローチに転換する必要がある。 記事提供:三菱UFJ リサーチ&コンサルティング株式会社 コンサルティング事業本部 シニアマネージャー 石黒 太郎 (2018 年 5 月 18 日作成)

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Ⅱ.ミャンマー:商業省が外資企業による卸売業・小売業を解禁

概要

ミャンマー商業省(Ministry of Commerce)は、2018 年5 月9 日付のNotification No.25/2018(以 下「本Notification」)を公表しました。本Notification は、これまで外資企業(外資が1 株でも株式を 保有する企業)に対して事実上禁止していた卸売業・小売業を解禁する内容となっています。

1) これまでの状況

ミャンマー投資法(Myanmar Investment Law)によれば、卸売業・小売業を営むためには商業省の 承認が必要とされていました。これまで商業省は自動車・農薬・肥料などの個別品目ごとに一定の条件 を定めた上で、外資企業による卸売業への進出を認めてきました。しかし、外資企業による小売業や上 記品目以外の卸売業の実施については、商業省の承認を得ることは事実上困難という状況が続いていま した。

2) 本 Notification の概要および位置付け

本Notification は輸出入法(Export and Import Law)13 条(b)に基づく商業大臣の規則制定権に 基づいて公布されています。しかし内容としては、輸出入に関する規制よりも、外資100%企業、外資 内資合弁企業およびミャンマー内資企業が卸売業・小売業を営む条件を規定する条項が中心となってい ます。 具体的には、外資100%企業、外資内資合弁企業およびミャンマー内資企業に対して卸売業および小 売業が許可されることが明確に規定されています。また、取り扱うことができる商品にはミャンマー国 内で生産・調達された商品のみならず輸入されたものも含まれること、ミャンマー国内のあらゆる地域 で営業が可能であることも明記されています(本Notification 4 項)。なお、本 Notification には外資 企業が輸出入を行うことができる旨が正面から規定されているわけではありません。しかし、本 Notification が輸出入法に基づいていることや、輸入に際して所定の手数料を納めるべきとの規定(本 Notification 11 項)があることからすると、これまで一定の例外を除き原則として認められてこなかっ た外資企業による輸入も、本Notification に基づく運用の下では認められることになるものと思われま す。 (3) 最低投資額その他の制限 もっとも、本Notification によれば、外資 100%または外資内資合弁企業による卸売業・小売業の実 施に当たっては、幾つかの条件が課されています。主要なものとしては、外資の出資割合に応じて最低 投資額が決まっています。なお、ここでいう投資額には土地代金を含まないことに注意が必要です。 卸売業

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8 小売業 ただし、外資企業による小規模な小売業(店舗床面積929 平方メートル未満)については禁止 (4) 手続き要件 全ての外資100%企業および外資内資合弁企業ならびにミャンマー内資企業(既に卸売業・小売業を 実施している投資額が70 万米ドル以下の事業者を除く)は、卸売業・小売業を営もうとする場合には、 商業省に対する登録が必要になります。この登録に際しては、①設立証明書、②ミャンマー投資委員会 (MIC)による許可や是認(Endorsement)(これらが必要な場合に限る)、③都市開発委員会(ヤンゴ ン市開発委員会(YCDC)など)または各州・管区のタウンシップ開発委員会による推薦状、④取扱品 目リストおよび⑤当初投資額および事業場所や規模を含むビジネスプランを提出することが必要とな ります(本Notification 7 項)。また、登録後に事業を拡大する場合には、90 日前までに商業省に対し て通知を行う必要があります(本Notification 17 項)。 (5) 評価と今後の課題 本Notification はこれまで事実上禁止されていた外資企業による卸売業・小売業について、最低投 資額による制限はあるとはいえ、ほぼ全面的に解禁する内容となっており、大幅な規制緩和が行われた と評価できます。また、外資企業による輸出入も認められるものと思われ、この点においても画期的で す。 今後の課題としては、商業省に対する登録、特に開発委員会などによる推薦状の取得がスムーズに進 むのかという点があります。ミャンマーではこうした手続き上の要件を通じて事実上の外資規制が行わ れることがありました。この点については、今後の実務動向を見守る必要があります。他方、本 Notification では登録義務はミャンマー内資企業に対しても課されていること、外資 100%企業や外 資内資合弁企業が卸売業・小売業を営むことができる旨が繰り返し規定されていることからすると、商 業省に対する登録を通じて事実上、外資企業を規制するという意図は存しないのではないかと期待され るところです。また、実務上の課題としては、通常の小売業・卸売業を想定した場合には、最低投資額 を満たすことは必ずしも容易ではないとも思われます。こうした点についてもさらなる規制緩和が進む ことが望まれます。 記事提供:森・濱田松本法律事務所 弁護士 武川 丈士 弁護士 井上 淳 弁護士 眞鍋 佳奈 (2018 年 5 月作成) ※本稿は法的助言を目的とするものではなく、個別の案件については当該案件の個別の状況に応じ、 弁護士の適切な助言を求めて頂く必要があります。

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Ⅲ.フィリピン:外資出資比率規制の解釈に関する最高裁判決

フィリピンと言えばアセアン諸国のなかでも進出が難しい国というイメージをお持ちの方が多いの ではないだろうか。実際、外国投資法・ネガティブリストに基づく外資規制に加えて、会社設立時の発 起人及び設立後に就任する取締役がいずれも最低 5 名必要でそのうち過半数がフィリピン居住者でな ければならず、さらに各発起人及び各取締役が会社の株式を最低1 株は保有しなければならない等の会 社法上の制約もあり、外国企業がフィリピンで現地法人を立ち上げるのは制度上容易ではない。他方で、 フィリピンでは若くて安い英語ネイティブの労働力を安定的に調達することが可能で労働集約型産業 の成長余地は十分に残されており、また1 億人超の人口を抱え経済成長とともに消費市場としての魅力 を増しつつあり、種々の規制が緩和されれば進出を具体的に検討する外国企業は増加すると思われる。 そのような状況下で、昨年フィリピンの最高裁判所が外資の出資比率規制に関する新しい解釈を示し、 これにより、外国投資家による投資ストラクチャーの設計の選択肢の幅が広がることが期待される。そこ で本稿では、フィリピンの外資規制の枠組みを概観するとともに、上記最高裁判決の内容とその意義につ いて紹介したい。 1.フィリピンの外資規制

フィリピンの外資規制は、1991 年外国投資法(Foreign Investment Act of 1991)に規定されており、 同法では、事業分野を以下の3 つに分類している。 ①内資のみに認められた事業(外資保有は一切認められない事業) ②一定の割合に限り、外資保有が認められる事業(外資による保有割合につき一定の上限が設定され ている事業) ③全面的に外資保有が認められる事業(外資保有100%が認められる事業) そして、外国投資法の一部を構成するネガティブリストのなかで、①外資保有が一切認められない事 業と②外資による一部保有が認められる事業が列挙されている。このネガティブリストは、リスト A とリスト B の 2 種類のリストによって構成されており、リスト A では、憲法又は特別法により外資に よる出資が制限されている事業分野が、リストB では、安全保障、防衛、公衆衛生、倫理及び中小事業 主の保護という国益のために外資による出資が制限されている事業分野が、その制限の内容とともに列 挙されている。

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10 2.外資規制上の「出資比率」の計算 ネガティブリスト上の外資規制の多くは、外資による出資比率の上限を設定するものであるところ、 この場合の出資比率が何を基準に計算されるのかについては、国によって異なるルールが採用されてお り、大別すると、①出資額ベースで比率を計算する法制と、②保有する株式の議決権ベースで比率を計 算する法制がある。 この点に関して、フィリピンでは法文上明確には規定されていなかったものの、2011 年の最高裁判 決(Gamboa Decision)において、②の議決権ベースで計算されるという原則ルールが示された。これ は、フィリピン憲法第12 条第 11 項で電気・水道・ガス等の公益事業を行うフィリピン法人の資本の少 なくとも 60%はフィリピン人が保有しなければならないとする規制に関連して 60%の計算の基準が争 われた事案で、最高裁は、ここで言う「資本」とは、「取締役の選任に関する議決権を有する株式」で あると判示した。したがって、より正確には議決権のなかでも取締役選任に関する議決権を有する株式 の保有数に基づき計算するというのがフィリピンで適用されるルールということになる。フィリピンの 最高裁が取締役の選任に関する議決権を特に重視していることは、外資規制の趣旨が会社の経営に対す るコントロールを制限することにあると考えていることが窺われる判断と言えよう。 3.2017 年最高裁判決(Roy Decision) 上記の 60%の上限規制を遵守しているかどうかについては、会社が(議決権付きの)普通株のみ発 行している場合には、単純に普通株式の保有割合で判定できるが、議決権株式と無議決権株式の2 種類 の株式を発行している場合に、その計算方法が問題となり最高裁まで争われたものである。そして上述 の最高裁判決を受けて、フィリピンのSEC(証券取引委員会)は 2013 年に新たな通達を発行し、外資 の出資比率の上限規制を遵守しているかどうかは、(ア)取締役選任に関する議決権を有する株式数の 割合及び(イ)議決権の有無を問わず、全ての発行済み株式数の割合の2 つの割合について、法が定め る外資出資比率の上限を満たしているかどうかで判断するというより具体的なルールを提示した。 この SEC の通達に対しては、出資比率の上限規制については(ア)及び(イ)の条件を満たすだけ では十分ではなく、(ウ)各種類株式に関してそれぞれ出資比率の上限規制を満たしていなければなら ないという主張が提起され、上述の2011 年最高裁判決の補足意見(obiter dictum)でも同趣旨の意見 が述べられていたこともあり、この解釈論争は最終的に最高裁まで争われた。その結果、2017 年に最 高裁でこの論点に関して改めて判断が下され(Roy Decision)、結論としては SEC の提示したルールの 適法性が支持され、一連の解釈論争に終止符が打たれた。 4.まとめ 上述の最高裁判決の意義を、以下の事例①乃至事例④を例に検討してみると分かりやすい。外資出資 比率の上限が 40%と設定されている場合に、以下の事例のうちいずれの資本構成が適法かについて検 討すると、(ア)及び(イ)のルールを適用した場合と、(ウ)のルールを適用した場合とで、それぞれ 以下のような帰結が導かれる。

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11 事例①: 事例②: 事例③: 事例④: これら4 つの事例に(ア)乃至(ウ)のルールを当てはめると以下の帰結となる。 すなわち、もっとも厳格な(ウ)のルールを適用すると事例①のみが適法という結論になるところ、 最高裁判決に従えば、事例①、事例③及び事例④が適法という結論になり、種類株式を使った投資スト ラクチャーについてより柔軟な設計が許容されることになる。 この一連の最高裁判決は、電気・ガス・水道等の公益事業に適用される外資規制に関連して判示され たものであるものの、出資比率の上限規制が課せられている他の事業分野に対しても同様のルールが適 用される可能性は高く、フィリピンへの投資を行うに際しては認識しておくべき重要な最高裁判決であ る。

*本稿はフィリピンの大手法律事務所SyCip Salazar Hernandez & Gatmaitan の Vicente D. Gerochi IV 弁護士の協力を得て作成したものです。 記事提供:長島・大野・常松法律事務所 パートナー 福井 信雄 (2018 年 5 月作成) 6,000株:フィリピン株主(60%) 4,000株:外国株主(40%) 6,000株:フィリピン株主(60%) 4,000株:外国株主(40%) 普通株式(議決権有り):10,000株 優先株式(議決権無し):10,000株 普通株式(議決権有り):6,000株 6,000株:フィリピン株主(100%) 優先株式(議決権無し):4,000株 4,000株:外国株主(100%) 6,300株:フィリピン株主(70%) 2,700株:外国株主(30%) 優先株式(議決権無し):1,000株 1,000株:外国株主(100%) 普通株式(議決権有り):9,000株 (ア) (イ) (ウ) 事例① 適法 適法 適法 事例② 適法 不適法 不適法 事例③ 適法 適法 不適法 事例④ 適法 適法 不適法 6,000株:フィリピン株主(60%) 4,000株:外国株主(40%) 優先株式(議決権無し):10,000株 10,000株:外国株主(100%) 普通株式(議決権有り):10,000株

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Ⅳ.海外赴任に際し、赴任者と本社担当者が知っておくべきこと

5)海外勤務中に確定申告が必要な場合

(前回のレポートは、以下のURL をクリックして本文をご参照ください。) http://www.bk.mufg.jp/report/insasean/AW20180518.pdf 海外勤務中に確定申告が必要となるのはどのような場合でしょうか。例えば、所有する不動産を賃 貸(貸付)したことによって生じた所得など、赴任した年に給与所得以外に 20 万円超ある場合は確定 申告が必要になります。今回は海外勤務中の確定申告についてまとめました。 Q6:海外勤務中に確定申告が必要な場合 海外勤務中に確定申告書の提出が必要な場合について教えてください。 確定申告をしないと、不利益が生じることはあるのでしょうか。 1. 出国した年に確定申告が必要なケース~給与以外の国内源泉所得が 20 万円超ある場合~ 海外に赴任する年の1 月 1 日から出国時までに生じた所得が給与所得のみであれば、通常は出国時に 年末調整が行われているので、確定申告は不要です。 しかし、例えば不動産を賃貸(貸付)したことよる所得など、給与以外の所得が20 万円超ある場合 は、確定申告が必要です。 確定申告書の提出時期は【図表 6-1】の通り、納税管理人(「海外勤務者にかかる税金と保険(3) 海外勤務中の給与所得以外にかかる税金と納税管理人」(2017 年 12 月 22 日付 BTMU Global Business Insite 掲載)を選任しているか否かで異なります。

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13 また、出国した年に確定申告を行う際、適用対象となる所得控除は【図表6-2】の通りです。 【図表6-2】確定申告に際して適用できる所得控除 (*)配偶者に38 万円を超える所得があるとき、配偶者控除の適用が受けられないときでも、配偶者の所得金額に応 じて一定の金額の所得控除が受けられる場合がある。これを配偶者特別控除という。なお、配偶者特別控除の適用を受 けるためには一定の要件を満たす必要がある。 2. 海外勤務中の年に確定申告が必要なケース~給与以外の国内源泉所得が 38 万円超ある場合~ 海外勤務者として赴任した翌年以後(帰国年を除く)の各年に確定申告が必要なのは、毎年その年の 1 年間に生じた一定所得(【図表 6-3】参照)の金額が基礎控除額(38 万円)を超えるときです。 この場合、翌年の2 月 16 日から 3 月 15 日までにこれらの所得について確定申告をする必要がありま す(非居住者期間に確定申告を行う際、適用される所得控除は「基礎控除」「雑損控除」「寄附金控除」 のみになる)。

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14 3. 非居住者の確定申告書はどこに提出するか? ~海外勤務者の直近の居住地もしくは資産がある所在地~ 海外に1 年以上の予定で勤務する非居住者の確定申告書の提出先は【図表 6-4】の通りです。 【図表6-4】非居住者の確定申告書の提出先 出所:国税庁ウェブサイトを基に筆者作成 記事提供:三菱UFJ リサーチ&コンサルティング株式会社 チーフコンサルタント 藤井 恵

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~アンケート実施中~

(回答時間:10 秒。回答期限:2018 年 6 月 14 日)

https://s.bk.mufg.jp/cgi-bin/5/5.pl?uri=M6Aj3s

(編集・発行) 三菱 UFJ 銀行 国際業務部 (照会先)松山 昭浩 松山 佳奈枝 (e-mail): [email protected] 本レポートのバックナンバーは、以下のURL からご覧いただけます。 http://www.bk.mufg.jp/houjin/kokusai_gaitame/report/index.html

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