ISSUE BRIEF
情報セキュリティの現状と課題
国立国会図書館 ISSUE BRIEF NUMBER 443 (Mar.10,2004)はじめに
Ⅰ 情報セキュリティとは
Ⅱ わが国の情報セキュリティ侵害の状況
1 発生状況(届け出ベース)
2 発生状況(監視ベース)
3 サイバーテロの脅威
Ⅲ 情報セキュリティ対策の現状
1 取り締まり
2 情報収集
3 技術
4 運用
5 人材育成
6 国際連携
Ⅳ 今後の課題
1 省庁間の調整
2 普及啓発
おわりに
略称表
経済産業課
(
よこうち横内
律子)
りつこ調査と情報
第
443 号
はじめに
現在、わが国では、ブロードバンドの整備・普及が目覚しく、政府や企業においても IT 化 が急 速 に 進 んで い る 。 こう し た 中 で重 要 性 を 増し て い る のが 、 情 報 セキ ュ リ テ ィの 問 題 で ある 。 今 後 、電 子 政 府 の構 築 、 電 子商 取 引 の 活発 化 等 、 社会 の IT 化が更に進めば、ウ イ ルス 等 の 情 報セ キ ュ リ ティ へ の 脅 威が も た ら す影 響 は 、 一層 強 ま る もの と 考 え られ る 。 そ こで 、 そ の 対策 と し て は、 高 度 で 幅広 い 対 応 が求 め ら れ てい る 。 本稿は、こうした状況に鑑み、わが国の情報セキュリティの現状についてまとめたもの で ある 。 ま ず 、情 報 セ キ ュリ テ ィ と は何 か を 整 理し た 上 で 、我 が 国 に おけ る 情 報 セキ ュ リ テ ィへ の 脅 威 の現 状 と 現 在の セ キ ュ リテ ィ 対 策 につ い て 述 べ 、最 後 に 今後 の 課 題 を挙 げ た 。 なお、情報セキュリティ関連の組織名や用語等は、通常アルファベットの略称で表記さ れ る場 合 が 多 い。 本 稿 で も正 式 名 称 は初 出 の み 併記 し て い るが 、 一 見 した だ け で は分 か り に くい 場 合 も ある た め 、 文中 の 略 称 とそ の 正 式 名称 を 巻 末 に一 括 し て 挙げ た 。 適 宜参 照 し て いた だ き た い。Ⅰ
情報セキュリティとは
情報セキュリティとは、データや情報システム等を、正当な利用者のみが必要な時に利 用 でき る よ う 、正 確 で 完 全な 状 態 に 保つ こ と で ある1。こ の 情報 セ キ ュ リテ ィ を 脅 かす 主 な 原 因を 、 表 1 にまとめた。まず、外部からの脅威として、不正アクセス、サービス妨害、 コ ンピ ュ ー タ ・ウ イ ル ス 等が あ る 。 これ に 加 え て、 ソ フ ト ウェ ア の セ キュ リ テ ィ 上の 脆 弱 性 等、 被 害 者 側に 内 在 す る要 因 も あ る。 近年、情報セキュリティに対する脅威として「サイバー攻撃」「サイバーテロ」という言 葉 もし ば し ば 使わ れ る 。「 サイ バ ー 攻撃 」と い う用 語 は 、一 般 に 、不 正ア ク セ ス やサ ー ビ ス 妨 害、 コ ン ピ ュー タ ・ ウ イル ス 等 の 、情 報 シ ス テム や ネ ッ トワ ー ク を 使っ た 電 子 的な 攻 撃 が 、特 に 政 治 的な 意 図 を 持っ て 行 わ れた 場 合 に 用い ら れ る こと が 多 い 。 「サイバーテロ」についても、現時点で明確な定義はない2。 一 般 に 、 情 報 通 信 、 金融 、 航 空 、鉄 道 、電 力 、ガ ス 、政 府・行 政サ ー ビ ス3とい っ た「 国 家 又 は 社 会の 重 要 な 基盤 」に 対 して 不 正 ア クセ ス や サ ービ ス 妨 害 等を 行 い 、 国民 生 活 や 社会 経 済 に 深刻 な 被 害 を与 え る 行 為を 「 サ イ バー テ ロ 」 と呼 ぶ 。 サ イバ ー テ ロ の特 徴 は 、 ①地 理 的 ・ 時間 的 制 約 がな い 、 ② 専門 的 技 術 者さ え い れ ば十 分 で 、 攻撃 の コ ス トが 低 い 、 ③匿 名 性 ・ 無痕 跡 性 が あり 、 罰 則 等に よ る 抑 止が 困 難 で ある 、 ④ 経 済・ 社 会 に 多大 な 影 響 を与 え る 、 等で あ る4。 1「OECD(経 済協力 開発 機 構)情 報セ キ ュリテ ィの た めのガ イド ラ イン」(1992)では 、「 情 報の機 密性(Confidentiality)、完 全 性 ( Integrity) 及 び 可 用 性 ( Availability) を 保 護 す る こ と 」 と 定 義 さ れ て い る 。
2 警 察 庁 「 情 報 セ キ ュ リ テ ィ 政 策 大 系 」 2000.2. < http://www.npa.go.jp/hightech/sec_taikei/taikei.htm> で は 、「 コ ン ピ ュ ー タ・ネ ッ ト ワ ー ク を 通 じ て 各 国 の 国 防 、治 安 等 を は じ め と す る 各 種 分 野 の コ ン ピ ュ ー タ ・ シ ス テ ム に 侵 入 し 、デ ー タ を 破 壊 、改 ざ ん す る 等 の 手 段 で 国 家 又 は 社 会 の 重 要 な 基 盤 を 機 能 不 全 に 陥 れ る テ ロ 行 為 」 と 述 べ ら れ て い る 。 ど の よ う な 程 度 ・ 性 質 の 攻 撃 を 言 う の か 等 は い ま だ 明 確 に 定 ま っ て い な い 。 3 情報 セキ ュ リティ 対策 推 進会議 「重 要 インフ ラの サ イバー テロ 対 策に係 る特 別 行動計 画」 2000.12. <http://www.kantei.go.jp/jp/it/security/taisaku/2000_1215/1215actionplan.html> では 、当面 これ ら の分 野 を 重 要 イ ン フ ラ と す る こ と が 述 べ ら れ て い る 。 4 警察 庁技 術 対策課 「サ イ バー犯 罪の 現 状と課 題」 2002.12.19.
表 1 : 情 報 セキュリティへの脅 威 名 称 定 義 ・ 内 容 引 き 起 こ さ れ る 被 害 の 例 特 徴 不 正 ア ク セ ス シ ス テ ム 利 用 者 が 、 与 え ら れ た 権 限 に よ っ て 許 さ れ て い な い 行 為 を 、 ネ ッ ト ワ ー ク を 通 じ て 意 図 的 に 行 う こ と 。 な り す ま し 、 改 ざ ん 、 盗 聴 、 破 壊 、 不 正 プ ロ グ ラ ム の 埋 め 込 み サ ー ビ ス 妨 害 外 部 か ら サ ー バ へ の 攻 撃 DoS 攻撃( サーバ に大 量 のデ ー タ を 送 り 過 大 な 負 荷 を か け る ) に よ る パ フ ォ ー マ ン ス の 極 端 な 低 下 や サ ー バ ダ ウ ン 。 他 の コ ン ピ ュ ー タ か ら の リ ア ル タ イ ム の 攻 撃 で あ る こ と 。 ウ イ ル ス ( 広 義 ) 他 者 の プ ロ グ ラ ム や デ ー タ ベ ー ス に 意 図 的 に 被 害 を 及 ぼ す よ う に 作 ら れ た プ ロ グ ラ ム で 、 ① 自 己 伝 染 、 ② 潜 伏 、 ③ 発 病 機 能 の う ち 、1 つ 以上 を持つ もの ウ イ ル ス ( 狭 義 ) ① ∼ ③ の 機 能 を す べ て 持 つ 。 ワ ー ム ② ∼ ③ の 機 能 を 持 つ 。 プ ロ グ ラ ム 等 の 媒 体 に 寄 生 せ ず 、 単 独 で 増 殖 す る 。 外 部 か ら の 加 害 ト ロ イ の 木 馬 ② ∼ ③ の 機 能 を 持 つ 。寄 生・増 殖 せ ず 、 有 用 な プ ロ グ ラ ム を 装 い 裏 で 被 害 を 起 こ す 。 情 報 の 消 失 、 改 ざ ん 、 漏 洩 、 パ ソ コ ン の 操 作 不 能 、 起 動 不 能 セ キ ュ リ テ ィ ホ ー ル ソ フ ト ウ ェ ア の セ キ ュ リ テ ィ 上 の 問 題 点 ( 脆 弱 性 ) 等 メ ー ル ソ フ ト の 脆 弱 性 を 突 い た ウ イ ル ス 攻 撃 攻 撃 対 象 と さ れ る こ と で 、 被 害 の 原 因 と な る 。 内 在 す る 要 因 セ キ ュ リ テ ィ 概 念 ・ モ ラ ル の 欠 如 情 報 漏 洩 ( 出 典 )IPA/ISEC「 情 報 セ キ ュ リ テ ィ 読 本 」 2002.6. < http://www.ipa.go.jp/security/awareness/management/dokuhon.pdf> な ど を も と に 作 成 。
Ⅱ わが国の情報セキュリティ侵害の状況
1 発生状況(届け出ベース)
● コン ピ ュ ー タ・ ウ イ ル ス 情報処理推進機構5セ キ ュ リ テ ィ セ ン タ ー (IPA/ISEC)によると、コンピュータ・ウイ ル スの 発 見 ・ 届出 件 数 は 、90 年代を通じて増加傾向にあったが、平成 13 年の 24,261 件 を ピー ク に 減 少に 転 じ て いる 。 ま た 、発 見 ・ 届 出件 数 の う ち実 際 に 感 染被 害 が あ った 割 合 も 、年 々 減 少 して い る 。 これ は 、 ワ クチ ン ソ フ トの 導 入 等 、セ キ ュ リ ティ に 関 す る意 識 の 向 上が 見 ら れ るた め と さ れて い る6。 企業 ・ 自 治 体の 状 況 を みる と 、 平成 14 年に一度でも ウ イル ス に 感 染し た 割 合 は 35.4%であり、発見のみのケースを含めた遭遇率は 80.2% に 5 経済 産業 省 の関係 機関 。 平成 16 年 1 月、独 立行 政 法人へ 移行 し た。 6 情報 処理 推 進機構 セキ ュ リティ セン タ ー(IPA/ISEC)「 2003 年 ウイル ス届 出 状況」 2004.1.8. <http://www.ipa.go.jp/security/txt/2004/2003-all-virus.pdf>上 る7。企 業 に おけ る ウ イ ルス の 被 害 総額 は 、約 3,027 億円8とも 約 4,400 億円9と も推 計 さ れ てい る 。ま た、個 人 の イン タ ー ネ ット 利 用 者 の被 害 総 額 は 約 384 億円10と み ら れて い る 。 ウイルスは不特定多数を標的とするため、件数・被害額が多大になる傾向がある。ウイ ル スの 攻 撃 手 段は 近 年 、多 様 化・高 度化 し て お り、メ ー ル 機能 を 悪 用 し感 染 を 広 げる も の 、 ソ フト ウ ェ ア のセ キ ュ リ ティ 上 の 欠 陥を 悪 用 し て感 染 さ せ るも の が 目 立っ て い る 。ま た 、 ウ イル ス が 、 不正 ア ク セ スや サ ー ビ ス妨 害 の 手 段と し て 使 われ る よ う にな っ て き てい る 点 も 近年 の 傾 向 であ る 。 ● 不正 ア ク セ ス 警察活動11及 び 警 察 へ の 届 け 出 等 に よ る 不 正 ア ク セ ス の 認 知 ( 不 正 ア ク セ ス 行 為 の 事 実
が 確認 さ れ た )件数 、及 び関 係 団 体(IPA/ ISEC 及び JPCERT コーディネーションセンタ
ー (JPCERT/CC)12) へ の届 け 出 状 況を み る と 、い ず れ も 平成 13 年までは増加傾向にあ り 、14 年は減少または横ばいとなっている。警察の 14 年の認知件数は 329 件で、13 年に 比べ 924 件の大幅減となった。この原因は、13 年に多発したセキュリティホールの攻撃 に よる 不 正 ア クセ ス が 、 修正 プ ロ グ ラム の 普 及 等に よ っ て 激減 し た た めと さ れ て いる13。
2 発生状況(監視ベース)
これまでに挙げた件数は、警察又はセキュリティ関係団体への届け出等に基づく数字で あ り、 実 際 の 件数 は 更 に 多い と 考 え られ る 。 攻 撃の 状 況 を より 正 確 に 把握 す る た め、 警 察 庁 は 、平 成 14 年 7 月から、全国の警察施設のインターネット接続点 57 ヵ所に侵入検知装 置 を設 置 し 、24 時間体制で特定の侵入パターンを対象にサイバー攻撃の監視を行っている。 これによる検知件数は、ほぼ 3 ヶ月につき 5 万件台で推移していたが、平成 15 年 4∼6 月 には 、当 時 流行 し た ワ ーム の 被 害 もあ り 、3 ヶ月で約 12 万件、1 日当たり約 1,300 件に 達 し 、 以 後 ほ ぼ 同 水 準 を 維 持 し て い る14。 な お 、 攻 撃 内 容 と し て は 、 不 正 ア ク セ ス 、 サ ー ビ ス妨 害 、ウ イル ス 等 に 加え 、攻 撃 初期 の 準 備 段階 も 含 ま れて お り 、平 成 15 年 7∼9 月に は、ウ イ ル ス( ワ ー ム )と ポ ー ト ス キャ ン( 侵 入の 予 備 行 為)が、全 体の 約 8 割を占めた。 不 正ア ク セ ス やサ ー ビ ス 妨害 を 意 図 した 本 格 的 な攻 撃 は 、全 体 の 1 割強程度と見られる15。 7 IPA/ISEC「『国内 にお け るコン ピュ ー タウイ ルス 被 害状況 調査 』 報告書 」 2003.3. 8 総務 省『 情 報通信 白書 平成 15 年版 』2003,p.121. 9 IPA/ISEC「『被害 額算 出 モデル 』報 告 書」 2003.3. <http://www.ipa.go.jp/security/fy14/reports/current/2002-calc-model.pdf> 10 前掲 注( 8) 11 イン ター ネ ット上 を巡 回 し、違 法な 行 為を発 見す る サイバ ーパ ト ロール や、 被 疑者の 取り 調 べ等。 12 経済 産業 省 の支援 を受 け た民間 の非 営 利団体 。平 成 15 年には 、イン ター ネ ット定 点観 測 システ ムを 導 入 して いる 。 13 国家 公安 委 員会・ 総務 省 ・経済 産業 省 「不正 アク セ ス行為 の発 生 状況」 2003.2.20. <http://www.soumu.go.jp/s-news/2003/030220_2.html#01> ここ での 不 正アク セス 件 数には 、ウ イ ルス( ワー ム )、サ ービ ス 妨害等 の一 部 も含ま れる と みられ る。 14 警察 庁「 我 が国に おけ る インタ ーネ ッ ト治安 情勢 の 分析に つい て 」 <http://www.cyberpolice.go.jp/detect/index.html> 15 「コ ンピ ュ ーター への 攻 撃 3 ヵ月 で 5 万 8000 件」『日本 経済 新 聞』 2003.2.6,夕刊3 サイバーテロの脅威 確実にサイバーテロと呼ぶべき被害は、世界的にみても、いまだ発生していない。しか し 、平 成 12 年に起きた中央省庁等の Web ページ改ざん事件は、サイバーテロの脅威を示 唆 する も の で あり 、政 府 によ る セ キ ュリ テ ィ 対 策の 推 進 に 影響 を 与 え たと い わ れ てい る16。
Ⅲ 情報セキュリティ対策の現状
情報セキュリティに関する対策の主なものは、以下のように分類できる。 ① セキ ュ リ テ ィを 脅 か す 犯罪 の 「 取 り締 ま り 」 や緊 急 時 の 対応 ② セキ ュ リ テ ィ関 連 の 情 報を 把 握 す る「 情 報 収 集」 ③ セキ ュ リ テ ィ関 連 「 技 術」 の 評 価 、研 究 ④ 情報 シ ス テ ムの 適 切 な 「運 用 」 ⑤ 情報 セ キ ュ リテ ィ に 資 する 「 人 材 育成 」 の 推 進 ⑥ 国境 を 越 え て広 が る セ キュ リ テ ィ 上の 脅 威 に 対応 す る た めの 「 国 際 連携 」 これらは、おおよそ次のような体制で進められている。コンピュータを悪用した犯罪の 取 り締 ま り は 警察 庁 、 サ イバ ー 攻 撃 への 対 処 手 法の 研 究 等 は防 衛 庁 、 技術 的 対 策 は経 済 産 業 省や 総 務 省 、運 用 基 準 の作 成 ・ 評 価は 経 済 産 業省 が 主 に 行っ て い る 。そ し て 、 省庁 横 断 的 な企 画・調 整や 緊 急 時 の対 策 支 援 等は 、内 閣 官房 情 報 セ キュ リ テ ィ 対策 推 進 室( 以 下「 推 進 室」 と い う 。)が 担 当 して い る 。 推進 室 は 、IT 戦略本部に置かれた全省庁の局長級から 成 る情 報 セ キ ュリ テ ィ 対 策推 進 会 議 の事 務 局 で もあ る 。 な お、 各 省 庁 自体 の セ キ ュリ テ ィ 対 策や 管 轄 下 の重 要 イ ン フラ 企 業 と の連 携 は 、各 省庁 が 個 別に 行 い 推 進室 が 統 括 して い る 。 以下では、上記①∼⑥の対策の概略について述べる。1 取り締まり
不正アクセス等の犯罪の取り締まりや、サイバーテロ等の緊急事態への対応など、主に、 事 後的 な 対 策 とし て は 、 次の よ う な もの が あ る 。 ● 法律 ・ 条 約 不正アクセスについては、「不正アクセス行為の禁止等に関する法律」(平成 11 年法律 第 128 号)により、権限のない者のアクセスやコンピュータ侵入とそれらを助長する行為 が 、規 制 さ れ てい る 。 侵 入後 に 業 務 妨害 や な り すま し 等 を 行っ た 場 合 は、 刑 法 に より 処 罰 の 対象 と な る 。ウ イ ル ス に関 し て は 、現 在 、 ウ イル ス 自 体 を規 制 す る 法律 は 存 在 しな い 。 ウ イル ス に よ って 業 務 妨 害や 破 壊 行 為を す れ ば 、刑 法 が 適 用さ れ る が 、現 行 法 で はウ イ ル ス の作 成 等 の 行為 を 取 り 締ま る こ と は困 難 で あ る。 国際的な枠組みとしては、サイバー犯罪(不正アクセス、ウイルスの他、コンピュータ を 利用 し た 詐 欺等 の 犯 罪 も含 む 。)に 関す る 国 際 的な ガ イ ド ライ ン や 協 力関 係 の 原 則を 示 す 、 「 サイ バ ー 犯 罪に 関 す る 条約 」が あ る 。この 条 約は 欧 州 評 議会 に お い て検 討 さ れ 、平 成 13 16 IPA/ISEC「 情報セ キュ リ ティの 現状 2002 年版 個 別詳細 編」 2002. <http://www.ipa.go.jp/security/fy13/report/security_state/sec2002detail.pdf>年 に、 わ が 国 を含 む 31 カ国が署名している。現在、わが国では、条約批准に向けた国内 法 の整 備 の 一 環と し て 、 刑法 等 の 改 正が 検 討 さ れて い る 。 改正 が 行 わ れれ ば 、 ウ イル ス の 作 成や 配 布 等 も処 罰 の 対 象に な る 見 込み で あ る 。な お 、 こ の条 約 に 関 して は 、 プ ライ バ シ ー の侵 害 等 に つな が る こ とを 懸 念 す る意 見 も あ る17。 ● ガイ ド ラ イ ン 通商産業省(当時)等は、不正アクセスやウイルスについてシステム管理者やユーザが 行 う べ き 対 策 等 の ガ イ ド ラ イ ン を 定 め て い る18。 情 報 セ キ ュ リ テ ィ 対 策 推 進 会 議 等 は 、 政 府 の シ ス テ ム の セ キ ュ リ テ ィ 確 保 や サ イ バ ー テ ロ 対 策 の 行 動 計 画 等 の 策 定 を 進 め て き た19。 ● 具体 的 対 応 の体 制 警察庁は平成 13 年、サイバーテロ等の犯罪捜査支援のため、機動的技術部隊であるサ イ バー フ ォ ー スを 設 置 し た。 現 在 、 中心 的 施 設 のサ イ バ ー フォ ー ス セ ンタ ー を 始 め、 全 国 に 約 60 名が配置されている。Ⅱの 2 で述べたように、全国の警察施設に設置した検知装 置 によ っ て 監 視を 行 い 、 攻撃 手 法 等 の情 報 の 収 集・ 分 析 、 防御 手 段 の 開発 ・ 研 究 を行 っ て い る。 技 術 的 支援 や 助 言 等を 通 じ た 重要 イ ン フ ラ事 業 者 と の連 携 強 化 も図 っ て い る。 また、平成 14 年には、情報セキュリティ対策推進室に緊急対応支援チーム(NIRT)が 設 置さ れ た 。NIRT は、官民の専門家 17 名から成る非常勤チームで、サイバーテロ等に際 し て、 被 害 の 状況 を 正 確 に把 握 し 、 拡大 防 止 や 復旧 の た め の技 術 的 対 応策 を 検 討 し、 実 施 を 支援 す る 。 平成 16 年には、インターネットの常時監視チームを、内閣官房に設立する 動 きも あ る 。 さら に 、 経 済産 業 省 は 、サ イ バ ー テロ 等 を 想 定し 、 重 要 イン フ ラ に 関し て 実 践 的な 模 擬 演 習を 、 平 成 16 年度から行う予定である。
2 情報収集
情 報 セ キ ュ リ テ ィ 上 の 事 故 や 事 件 に 早 期 に 対 応 す る た め に 、 被 害 等 に 関 す る 情 報 を 収 集 ・共 有 し 、 分析 を 行 う 、各 種 の 組 織が 設 立 さ れて い る 。 ●IPA/ISEC と JPCERT/CC わが国の代表的な情報収集機関としては、ウイルス対策を中心に行ってきた IPA/ISEC と 、不 正ア ク セス 対 策 を 中心 に 行 っ てき た JPCERT/CC とがある。これらの機関は、情報 セ キュ リ テ ィ 関連 の 被 害 や対 策 に つ いて の 情 報 を収 集 し 、 分析 ・ 蓄 積 ・研 究 を 行 い、 結 果 を 一般 に 提 供 する こ と で 、普 及 啓 発 の役 割 も 果 たし て い る 。 ●ISAC( 情 報 共有 ・ 分 析 セン タ ー ) ISAC は、元々は米国の重要インフラを担う各業界で組織された、セキュリティ情報の 共 有と 緊 急 時 の連 絡 窓 口 の役 割 を 果 たす 非 営 利 団体 で あ る。わ が 国 も これ に 倣 い、平 成 14 年 、 総 務 省 の 主 導 で 、 初 の ISAC で あ る イ ン シ デ ン ト 情 報 共 有 ・ 分 析 セ ン タ ー 17「 批 准 作 業 進 む サ イ バ ー 犯 罪 条 約 」Mainichi INTERACTIVE 2003.9.2. <http://www.mainichi.co.jp/digital/coverstory/archive/200309/02/1.html> 18 郵政 省「 情 報通信 ネッ ト ワーク 安全 ・ 信頼性 基準 」 <http://www.soumu.go.jp/joho_tsusin/whatsnew/kokuji/network_0203.html> 通商 産業 省 「情報 シス テ ム安全 対策 基 準」「 コン ピ ュータ ウイ ル ス対策 基準 」「コン ピュ ー タ不正 アク セ ス 対策 基準 」 <http://www.meti.go.jp/policy/netsecurity/law_guidelines.htm> 国家 公安 委 員会「 情報 シ ステム 安全 対 策指針 」<http://www.npa.go.jp/hightech/antai_sisin/kokuji.htm> 19 内閣 官房 情 報セキ ュリ テ ィ対策 推進 室「情 報セ キュ リティ 施策 の 展開 」<http://www.bits.go.jp/sisaku>(Telecom-ISAC Japan)が設立された。情報通信業者によって組織された Telecom-ISAC Japan は、通信サービスを妨げるセキュリティ上の事故情報を収集・分析・共有すること で、情 報 通 信 基盤 の 安 全 性確 保 を 目 指し て い る。ま た、他 の対 応 組 織(NIRT・IPA/ISEC・ JPCERT/CC 等、及び海外の類似組織)との連携も重視している。米国では 10 以上の業 種 に ISAC が置かれているが、わが国の状況は極めて手薄で、現在、他業種での設立が検 討 され て い る 。 ● 今後 の 体 制 強化 わが国では、セキュリティ情報を収集・分析する体制が弱く、IPA/ISEC 等も、米国の 専 門機 関 等 か らの 情 報 を 基に ウ イ ル スの 危 険 性 など を 判 断 して い る の が現 状 で あ る。 そ こ で 総務 省 は 、 国内 ネ ッ ト ワー ク を 常 に監 視 し 、 セキ ュ リ テ ィ情 報 を 収 集す る 「 広 域モ ニ タ ー シス テ ム 」を 平 成 16 年度内に構築し、Telecom-ISAC Japan によって運用することを計 画 して い る 。 経済 産 業 省 も、 平 成 16 年 1 月に、ソフトの欠陥やウイルスの攻撃手法、対 策 手段 等 を 分 析・ 提 供 す る「 情 報 セ キュ リ テ ィ 技術 ラ ボ ラ トリ 」 を IPA 内に設置した。
3 技術
技術的対策としては、電子署名・暗号等のセキュリティ技術や攻撃に強いシステムの利 用 が考 え ら れ る。そ の た めに は 、そ れら の 安 全 性の 評 価 や、研 究・開 発を 行 う 必 要が あ る 。 ● 電子 署 名 の 普及 電子署名とは、従来の捺印や手書き署名と同様のものを電子的に実現する技術であり、 安 全な 電 子 商 取引 の 基 盤 とな る 。平 成 13 年には、「電子署名および認証業務に関する法律」 ( 平成 12 年法律第 102 号)が施行された。この法律は、電子文書等に本人による一定の 電 子署 名 が あ れば 、 手 書 き署 名 と 同 様に 通 用 す ると 定 め て いる 。 ま た 、署 名 が 本 人の も の で ある こ と 等 を証 明 す る 認証 業 務 の うち 、 一 定 の基 準 を 満 たし た も の は、 国 の 認 定が 受 け ら れる こ と に なっ て お り 、こ れ が 認 証業 務 の 信 頼性 判 断 の 目安 と な っ てい る 。 ● 暗号 技 術 の 評価 総務省、経済産業省、通信・放送機構(TAO)及び IPA/ISEC は、セキュリティの基盤 技 術で あ る 暗 号技 術 の 安 全性 を 客 観 的に 評 価 す る、暗 号 技 術評 価 事 業(CRYPTREC)を共 同 で行 っ て い る。CRYPTREC の一環として、平成 15 年には、電子政府での利用を推奨す る 暗号 の リ ス トと 、 調 達 のた め の ガ イド ブ ッ ク が作 成 さ れ た。 各 府 省 は可 能 な 限 り、 リ ス ト 上の 暗 号 を 利用 す る 方 針で あ る 。 ●IT 製 品 の 技術 評 価 経済産業省は、「IT セキュリティ評価・認証制度」を平成 13 年から開始した。これは、 IT 製品やシステムの セキュリテ ィについて 、国際的な 技術基準に 基づく評価 ・認証を行 う 制度 で あ る 。制 度 の 利 用を 促 進 す るた め 、 各 省庁 は 、 こ の制 度 で 認 証さ れ た 製 品や シ ス テ ムを 優 先 的 に調 達 す る こと で 合 意 して い る 。 ● オー プ ン ソ ー ス OS 導 入の 検 討 オープンソース OS とは、ソフトウェアの設計図であるソースコードが公開され、改良 し て利 用 す る こと が 可 能 な OS20の こ とで あ る 。中 身 が明 ら かで あ る た め 、セキ ュ リテ ィ 上 の 問題 に 対 応 しや す い と 見ら れ て い る。現 在 わ が国 で 使 わ れて い る OS は、Windows が大 20 Operating System の 略 。ハー ドウ ェ アと応 用ソ フ トの仲 介を し 、ユー ザが コ ンピュ ータ を 利用で きる よ う に す る と い う 、 基 本 的 な 機 能 を 持 つ ソ フ ト ウ ェ ア の こ と 。Windows や Mac OS な どが ある 。半 を占 め て い るた め 、Windows にセキュリティ上の欠陥があった際には被害が大きくなる 可 能性 も あ る 。オ ー プ ン ソー ス OS の導入には、多様な OS の利用促進の意味もある。経 済 産業 省 は 、 オー プ ン ソ ース OS 等の利用状況の調査結果と導入検討のガイドラインを公 表 し21、 セ キ ュ リ テ ィ 強 化 の 技 術 や 電 子 政 府 で の 採 用 に 必 要 な 機 能 に つ い て の 調 査 研 究 も 計 画し て い る 。総 務 省 も 、電 子 政 府 等へ の オ ー プン ソ ー ス OS の導入に関するセキュリテ ィ 上の 利 点 ・ 問題 点 等 に つい て 、 研 究22して い る 。 ● 研究 ・ 開 発 の推 進 現在、電子署名・暗号等の技術については多様な研究がなされているが、ネットワーク や ソフ ト ウ ェ ア等 に 関 す るセ キ ュ リ ティ 技 術 の 研究 は 遅 れ てい る と い われ る 。 こ うし た 研 究 は TAO、IPA/ISEC、通信総合研究所(CRL)、産業技術総合研究所(AIST)、大学等で 行 われ て い る が、こ れ ら 機関 の 強 化 と連 携 、中 核的 研 究 開 発拠 点 の 整 備等 が 進 ん でい る23。
4 運用
セキュリティ維持のため、企業等は、システム全体を適切に運用する必要がある。具体 的 には 、対 策 方針 や 実 施 計画 の 作 成 、それ に 基 づく 管 理 を 継続 的 に 行 わな く て は なら な い 。 平成 14 年、「情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)適合性評価制度」が開 始 され た 。 こ れは 、 第 三 者が 国 際 的 な規 格 を も とに 、 企 業 のセ キ ュ リ ティ 管 理 が 適切 か 評 価 する 制 度 で あり 、 日 本 情報 処 理 開 発協 会 (JIPDEC)が運営している。 経済産業省は、企業や政府のセキュリティ対策を専門家が客観的に評価する情報セキュ リ ティ 監 査 を 普及 さ せ る ため 、 監 査 の方 法 や 内 容の 基 準 と 監査 を 請 け 負う 企 業 の 登録 リ ス ト を柱 と す る 「情 報 セ キ ュリ テ ィ 監 査制 度 」 を 、平 成 15 年に開始した。この制度は、企 業 等の 部 門 全 体で は な く 、特 定 の 業 務の み へ の 適用 も 可 能 であ る し 、 評価 の み な らず 助 言 的 な監 査 も 重 視し て い る 。ま た 、 現 状で は 、 政 府の 情 報 セ キュ リ テ ィ を対 象 と し た監 査 の 具 体的 な 指 針 がな い た め 、「電 子 政 府に お け る 利用 モ デ ル 」を提 示 し てい る の も 特徴 で あ る 。 現在、これらの制度については、実施体制の強化や利用促進が図られている。経済産業 省 は、 情 報 セ キュ リ テ ィ 監査 制 度 を ベー ス に 、 企業 等 に お ける セ キ ュ リテ ィ 対 策 のレ ベ ル を 評価 し 、 格 付け す る 制 度も 検 討 中 であ る 。5 人材育成
情報セキュリティの維持には、専門的な知識や技術を持つ人材が不可欠である。しかし 現 状で は 、企 業に お い て、セ キ ュ リ ティ 分 野 の 専門 的 な 人 材は 、約 12 万人不足している。 21 経済 産業 省 「オー プン ソ ースソ フト ウ エアの 利用 状 況調査 /導 入 検討ガ イド ラ インの 公表 に ついて 」 2003.8.15. <http://www.meti.go.jp/kohosys/press/0004397/> 22 総務 省「 セ キュ ア OS に 関する 調査 研 究会」 <http://www.soumu.go.jp/joho_tsusin/policyreports/chousa/s_os/index.html> 23 総 合 科 学 技 術 会 議 「 情 報 セ キ ュ リ テ ィ の 課 題 と 方 向 性 」 < http://www8.cao.go.jp/cstp/project/export/ ITPT-B/ITPT1/shiryo.1-1-4.pdf>;「通 信総合 研究 所 情報セ キュ リ ティセ ンタ ー の設置 につ い て」 <http://www2.crl.go.jp/pub/whatsnew/press/031225/031225.html>中 でも 、 特 に 高度 な 専 門 性を 持 っ た 人材 の 不 足 は 約 9 万人に上るといわれる24。 多く の 企 業 は 、セ キ ュ リテ ィ の 高 度な 知 識 と 技術 を 持 っ た人 材 の 不 足を 感 じ て いる 。「 セ キュ リ テ ィ 確 保の た め に 、どの よ う な人 材 が 必 要か 明 確 に でき な い 」、「人 材 評 価 の方 法 が 分 から な い 」 な ど、 人 材 を 確保 す る 上 での 問 題 を 抱え て い る 企業 も 多 い25。 このような現状に鑑み、IPA/ISEC は、人材の評価・教育への利用を想定し、情報セキ ュ リテ ィ に 携 わる た め に 必要 な 知 識 や技 術 を ま とめ た 「 ス キル マ ッ プ 」を 作 成 し た。 経 済 産 業省 は 、 セ キュ リ テ ィ 管理 の 現 場 責任 者 に 必 要な 知 識 や 技術 を 養 う 国家 試 験 「 情報 セ キ ュ リテ ィ ア ド ミニ ス ト レ ータ 試 験 」を 行 っ て い る。総 務 省 も、民 間 の 研修 を 強 化 する た め 、 多 額の 初 期 投 資が 必 要 な 施設 整 備 や 教材 開 発 へ の支 援 等 を して い る 。 なお、現在、情報セキュリティ学科を持つ大学はないが、中央大学、筑波大学、早稲田 大 学、 大 阪 大 学等 で 、 セ キュ リ テ ィ に関 す る 研 究・ 教 育 環 境を 強 化 す る動 き が 見 られ る 。
6 国際連携
情報セキュリティへの脅威は、国境を越えて広がるという特徴があるため、国際的に連 携 して 対 策 を 進め る こ と が不 可 欠 で ある 。現 在、行 わ れ て いる 取 組 み を、表 2 に まと め た 。 表 2 : 国際連携に関する取組み 関 係 省 庁 ・ 団 体 内 容 警 察 庁 、 総 務 省 、 法 務 省 、 外 務 省 、 経 済 産 業 省 G8リヨ ング ループ ハイ テ ク犯罪 サブ グ ループ に参 加 、ハ イテ ク 犯 罪 か ら の 重 要 イ ン フ ラ の 保 護 に つ い て 、 各 国 と 情 報 交 換 内 閣 官 房 、警 察 庁 、総 務 省 、 外 務 省 、 経 済 産 業 省 等 OECD の 1992 年 情報 シ ステム セキ ュ リティ ガイ ド ライン 見直 し 作 業 に 参 加 警 察 庁 ア ジ ア 各 国 の ハ イ テ ク 犯 罪 の 技 術 対 応 担 当 者 を 対 象 と す る 国 際 会 議 を 実 施 、 ネ ッ ト ワ ー ク を 活 用 し て 情 報 を 共 有 ・ 交 換 防 衛 庁 2000 年 度よ り、米 国国 防 総省等 と、政 策協議 や情 報 交換を 行う た め のIT フ ォーラ ムを 開 催 取 り 締 ま り・緊 急 対 応 内 閣 官 房 2002 年 3 月 、米国 の情 報 セキュ リテ ィ 対策担 当者 と の日米 政府 間 討 議 を 開 催 。 将 来 の 連 携 も 目 指 し て い る 。 2003 年 、ア ジア太 平洋 コ ンピュ ータ 緊 急対応 チー ム(APCERT) 設 立 情 報 収 集 JPCERT/CC 世 界 の CSIRT(コ ンピ ュ ータセ キュ リ ティ問 題対 応 チーム )の 連 携 を 目 的 と す る 国 際 フ ォ ー ラ ム に 加 盟 ア ジ ア 太 平 洋 電 気 通 信 共 同 体 (APT) の 研 究 会 に お い て 、 情 報 セ キ ュ リ テ ィ 分 野 で の 協 力 体 制 の 強 化 で 合 意 総 務 省 国 際 電 気 通 信 連 合 電 気 通 信 標 準 化 部 門(ITU-T)に お ける、情報 セ キ ュ リ テ ィ に 関 す る 標 準 化 活 動 を 推 進 情 報 シ ス テ ム 関 連 企 業 、商 社 等 ( 経 済 産 業 省 が 支 援 ) ア ジ ア 地 域 の 国 々 に 対 す る 統 括 的 な PKI( 公 開 鍵 暗 号 方 式 に よ る 暗 号 技 術 ) を 実 現 す る た め 、 ア ジ ア PKI フォ ーラ ムを設 立 技 術 製 品 評 価 技 術 基 盤 機 構 (NITE)、経 済産業 省 IT 製 品や ソ フトウ ェア の 安全性 を評 価 ・認証 する 国 際基準 、共 通 基 準 相 互 認 証 制 度 (CCRA)へ の加 盟 ( 出 典 )総 務 省 情 報 通 信 ソ フ ト 懇 談 会 セ キ ュ リ テ ィWG「 中 間 報 告 書 」2003.7.25、情 報 セ キ ュ リ テ ィ 対 策 推 進 会 議「『 重 要 イ ン フ ラ の サ イ バ ー テ ロ 対 策 に 係 る 特 別 行 動 計 画 』 の フ ォ ロ ー ア ッ プ 等 に つ い て 」2002.3.28.な ど を も と に 作 成 。 24 情報 通信 ソ フト懇 談会 「 人材育 成ワ ー キング グル ー プ中間 報告 書 」2003.7.25. <http://www.soumu.go.jp/s-news/2003/030725_5a.html> 25 IPA/ISEC「 情報セ キュ リ ティプ ロフ ェ ッショ ナル 育 成に関 する 調 査研究 」 2003.4. <http://www.ipa.go.jp/security/fy14/reports/professional/ikusei-seika-press.html>Ⅳ
今後の課題
これまでに、IT 戦略本部、総合科学技術会議、情報通信ソフト懇談会等は、セキュリテ ィ に関 す る 課 題の 検 討 や 対応 策 の 提 言を 行 っ て きた 。ま た 、産 業構 造 審議 会 は 平 成 15 年、 わ が 国 初 の 包 括 的 な 「 情 報 セ キ ュ リ テ ィ 総 合 戦 略 」 を 答 申 し て い る26。 こ れ ら の 提 言 を 表 3 にま と め た 。Ⅲ で み た よう に 、 そ の多 く は 既 に取 組 み が 始め ら れ て いる が 、 各 種対 策 を 横 断す る 課 題 とし て 、 省 庁間 の 調 整 、セ キ ュ リ ティ 意 識 の 啓発 等 が 挙 げら れ て い る。 表 3 : 情 報 セキ ュ リ テ ィに 関 す る 提言 IT 戦 略 本 部 総 合 科 学 技 術 会 議 情 報 通 信 ソ フ ト 懇 談 会 情 報 セ キ ュ リ テ ィ 総 合 戦 略 省 庁 間 の 調 整・体 制 整 備 政 府 の 体 制 整 備 対 策 を 統 括 す る 組 織 の 設 置 又 は 拡 充 内 閣 機 能 の 強 化 、 統 一 的 な 推 進 体 制 の 整 備 普 及 啓 発 セ キ ュ リ テ ィ 文 化 定 着 の た め 、啓 発 や 注 意 喚 起 セ キ ュ リ テ ィ 文 化 を 定 着 さ せ る た め の 啓 発 の 強 化 ネ ッ ト ワ ー ク 利 用 者 の 教 育 ・ 啓 発 義 務 教 育 段 階 か ら の 教 育 の 実 践 等 に よ る 、 意 識 の 向 上 緊 急 時 対 処 体 制 強 化 。関 係 者 間 の 連 携 強 化 関 係 者 間 の 情 報 共 有 体 制 見 直 し 。 ガ イ ド ラ イ ン 整 備 取 り 締 ま り 不 正 行 為 の 取 り 締 ま り セ キ ュ リ テ ィ 関 連 の 不 正 行 為 対 策 推 進 。法 整 備 の 検 討 セ キ ュ リ テ ィ 関 連 の 法 制 度 上 の 問 題 点 に 係 る 検 討 。 犯 罪 対 策 の 推 進 情 報 収 集 情 報 収 集・分 析 能 力 の 強 化 Telecom-ISAC Japan の 活 動 強 化 セ キ ュ リ テ ィ 情 報 収 集 ・ 分 析 体 制 の 強 化 セ キ ュ リ テ ィ 技 術 の 研 究 開 発 国 に お い て も 、先 導 的 基 盤 技 術 の 研 究 開 発 を 推 進 研 究 開 発 の 強 化 。攻 撃 の 防 御・対 処 に 加 え 、ネ ッ ト ワ ー ク 自 体 の 安 全 性 向 上 サ イ バ ー テ ロ 対 策 技 術 ・ ネ ッ ト ワ ー ク 自 体 の 安 全 性 向 上 等 の 研 究 推 進 、 体 制 の 充 実 技 術 開 発 の 促 進 安 全 な 製 品 ・ サ ー ビ ス セ キ ュ リ テ ィ に 配 慮 し た 多 様 な 製 品 等 の 提 供 促 進 安 全・信 頼 性 の 高 い ソ フ ト ウ ェ ア の 開 発 安 全 性 向 上 に 向 け た 技 術 ・ 製 品 ・ サ ー ビ ス の 開 発 オ ー プ ン ソ ー ス の 検 討 オ ー プ ン ソ ー ス ソ フ ト ウ ェ ア の 評 価 等 オ ー プ ン ソ ー ス ソ フ ト ウ ェ ア の 開 発 ・ 利 用 促 進 単 一 の OS に 依 存 す る リ ス ク 回 避 の た め の 代 替 案 確 保 技 術 評 価 情 報 セ キ ュ リ テ ィ 評 価 ・ 認 証 制 度 の 普 及 技 術 評 価 の 促 進 技 術 運 用 関 連 制 度 の 普 及 促 進 セ キ ュ リ テ ィ マ ネ ン ジ メ ン ト の 促 進 人 材 育 成 十 分 な 知 識・技 術 を 持 つ 専 門 家 の 育 成 高 度 な 人 材 の 育 成 ・ 流 動 化 の 促 進 専 門 的 ・ 高 度 な 人 材 の 育 成 高 度 人 材 の 育 成 ( 出 典 )IT 戦 略 本 部 「 e-Japan 重 点 計 画 -2003」 2003.8.8、 総 合 科 学 技 術 会 議 ソ フ ト ウ ェ ア 懇 話 会 「 ソ フ ト 的 な 分 野 に お い て 推 進 す べ き 事 項 」2003.7.1、 セ キ ュ リ テ ィ WG「 中 間 報 告 書 」、「 情 報 セ キ ュ リ テ ィ 総 合 戦 略 」 を も と に 作 成 。1 省庁間の調整
わが国の情報セキュリティ対策は、分野ごとに複数の省庁が推進しており、一部には、 省 庁に よ る 「 主導 権 争 い 」と も い え る状 況 が 見 られ る 。 例 えば 、 オ ー プン ソ ー ス OS の導 入 につ い て は 、経 済 産 業 省と 総 務 省 が、事 前 の 調整 な し で 似た よ う な 政策 を 行 っ てい る27。 こ の一 因 は 、 省庁 横 断 的 なセ キ ュ リ ティ 関 連 組 織は 推 進 室 のみ で あ る こと 、 し か も推 進 室 26 経済 産業 省 「情報 セキ ュ リティ 総合 戦 略」 2003.10.10. <http://www.meti.go.jp/policy/netsecurity/strategy.htm> 27「 国 の 情 報 セ キ ュ リ テ ィ ー 政 策 『船 頭 』定ま らず 迷走」『日 経 新聞』 2003.11.8.が 非常 勤 職 員 中心 の 小 規 模な 組 織 で あり 、 企 画 ・調 整 を 行 うの み で 実 効性 に 乏 し いこ と に あ る。 現 在 様 々な 組 織 が 担当 し て い る電 子 政 府 のセ キ ュ リ ティ 維 持 、 情報 収 集 、 技術 ・ 運 用 の評 価 や 開 発等 を 一 元 的に 行 う 独 立の 組 織 を 新設 す べ き であ る28と の 指摘 も あ る 。 こうした現状の改善に向けて、情報セキュリティ総合戦略の検討段階には、内閣官房、 内 閣府 、 警 察 庁、 防 衛 庁 、総 務 省 が オブ ザ ー バ ーと し て 参 加し て い る 。ま た 、 戦 略は 、 推 進 室を 強 化 し 、政 策 の 推 進体 制 間 の 総合 的 な 調 整・ 進 捗 管 理を は じ め 、情 報 収 集 体制 の 構 築 や各 省 庁 へ のセ キ ュ リ ティ 監 査 等 を行 わ せ る こと を 提 言 して い る 。IT 戦略本部も、内閣 官 房に 、 セ キ ュリ テ ィ 対 策の 助 言 を 行う 補 佐 官 を平 成 16 年に置くことを発表している。
2 普及啓発
これまでの様々な取組みにもかかわらず、依然として企業や個人ユーザのセキュリティ 意 識は 低 い う え、 実 際 の 対応 も 充 分 では な い 。 企業 等 を 対 象と し た 調 査に よ れ ば 、セ キ ュ リ ティ 管 理 部 署を 設 置 し てい る 割 合 は 約 60%だが、専従の担当者の設置は約 5%、教育の 実 施は 約16%、セキュリティポリシーの策定は約 28%にとどまっている29。別 の 調査 で も 、 ウ イル ス 対 策 部門・担 当 者を 設 置 し てい る 割 合 、及 び 対 策 教育 を 行 っ てい る 割 合 は 約 6 割 で あり 、 米 国 の 約 8 割に比べ対策が遅れていることが分かる30。 ま た 、総 務 省 の 調査 に よ る と、個 人 の イン タ ー ネ ット 利 用 者 の 約 3 割がセキュリティ対策を行っていないという31。 政府の政策や対策の方法についての企業等の知識不足も問題である。企業・自治体対象 の 調査( 平 成 15 年調査)では、通商産業省(当時)の「コンピュータウイルス対策基準」 を 「知 ら な い 」と す る 回 答 が 3 割以上を占める32。届 け 出 機関 と し て の IPA/ISEC の認知 度 は 約 60%だが、近年ほとんど増加しておらず、ウイルス被害を届け出ない理由は「方法 が 不明 な た め 」が 約 45%に上る。また、前述の総務省の調査では、対策を行っていない個 人 ユー ザ の 約 65%が、その理由を、具体的な方法が分からないためとしている。 このような現状への対策として、情報セキュリティ総合戦略では、企業関係者への研修 や 、個 人 利 用 者に 対 す る 義務 教 育 段 階か ら の セ キュ リ テ ィ 教育 の 実 践 等を 提 言 し てい る 。おわりに
以上のように、IT 化が進む現代において、情報セキュリティの確保は危急の課題である。 し かし 、 そ の 対策 に は 様 々な 要 素 が 絡み 、 一 朝 一夕 に は 大 幅な 向 上 は 期待 で き な い。 Ⅳ で 触 れた 情 報 セ キュ リ テ ィ 総合 戦 略 に つい て も 、 全て の 対 策 の実 現 は 難 しい と い う 見方 も あ る33。セ キ ュ リ ティ 促 進 の ため に は 、 今後 さ ら に 、継 続 的 に 力を 注 ぐ こ とが 求 め ら れる 。 28「『 電 子 』 安 全 保 障 を 整 備 せ よ 」『 日 経 コ ン ピ ュ ー タ 』572 号,2003.4.21,pp.42-57; ソフ トウ ェ ア懇話 会「 ソ フト的 な分 野 におい て推 進 すべき 事項 」 29 警察 庁「 不 正アク セス 行 為対策 の実 態 調査」 2003.5. 30 IPA/ISEC「『海外 にお け るコン ピュ ー タウイ ルス 被 害状況 調査 』 報告書 」 2003.3. 31 総務 省 前 掲 注( 8),p.122. 32 IPA/ISEC 前掲注 ( 7) 33「 政 府 が 包 括 的 な 情 報 セ キ ュ リ テ ィ 戦 略 」『 日 経 コ ン ピ ュ ー タ 』585 号,2003.10.20,pp.16-17; 「壮 大な 計 画、ど こま で 実現で きる か 」 Mainichi INTERACTIVE 2003.10.17. <http://www.mainichi.co.jp/digital/coverstory/archive/200310/17/1.html>略称表(アルファベット順)
略 称・略 語 日 本 語 名 称 英 語 名 称 関 係 省 庁
AIST 産 業 技 術 総 合 研 究 所 National Institute of Advanced Industrial Science and Technology
経 済 産 業 省 APT ア ジ ア ・ 太 平 洋 電 気 通 信 共 同 体 Asia-Pacific Telecommunity 総 務 省 APCERT ア ジ ア 太 平 洋 コ ン ピ ュ ー タ 緊 急
対 応 チ ー ム
Asia Pacific Computer Emergency
Response Team 経 済 産 業 省
CCRA 共 通 基 準 相 互 認 証 制 度(共 通 基 準 承 認 ア レ ン ジ メ ン ト)
Common Criteria Recognition
Arrangement 経 済 産 業 省 CRL 通 信 総 合 研 究 所 Communications Research Laboratory 総 務 省 CRYPTR EC 暗 号 技 術 評 価 事 業 ( 経 済 産 業 省 、総 務 省 及 び 関 係 団 体 が 、暗 号 技 術 検 討 会 と 暗 号 技 術 評 価 委 員 会 ( =CRYPTREC) で 行 っ て き た 事 業 を 指 す 。)
Cryptography Research and Evaluation Committees
経 済 産 業 省 、 総 務 省
CSIRT コ ン ピ ュ ー タ セ キ ュ リ テ ィ 問 題 ( イ ン シ デ ン ト ) 対 応 チ ー ム
Computer Security Incident Response Team IPA/ISEC 情 報 処 理 推 進 機 構 セ キ ュ リ テ ィ セ ン タ ー Information-technology Promotion Agency/ Information-technology Security Center 経 済 産 業 省 ISAC 情 報 共 有 ・ 分 析 セ ン タ ー Information Sharing and Analysis
Center ISMS 情 報 セ キ ュ リ テ ィ マ ネ ン ジ メ ン ト シ ス テ ム Information Security Management System ITU-T 国 際 電 気 通 信 連 合 電 気 通 信 標 準 化 部 門 ITU(International Telecommunication Union) Telecommunication Standardization Sector 総 務 省
JIPDEC 日 本 情 報 処 理 開 発 協 会 Japan Information Processing
Development Corporation 経 済 産 業 省 JPCERT/
CC JPCERT コ ー デ ィ ネ ー シ ョ ン セン タ ー
Japan Computer Emergency Response Team / Coordination Center
経 済 産 業 省
NIRT 緊 急 対 応 支 援 チ ー ム National Incident Response Team 内閣府
NITE 製 品 評 価 技 術 基 盤 機 構 National Institute of Technology
and Evaluation 経 済 産 業 省
PKI 公 開 鍵 基 盤 Public Key Infrastructure
TAO 通 信 ・ 放 送 機 構 Telecommunications Advancement
Organization 総 務 省 Telecom-I SAC Japan イ ン シ デ ン ト 情 報 共 有・分 析 セ ン タ ー Telecom-ISAC(Information
Sharing and Analysis Center) Japan