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歩行者検知用ミリ波レーダ

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Academic year: 2021

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歩行者検知用ミリ波レーダ

Millimeter-Wave Radar for Detecting Pedestrians

あ ら ま し 近年,IT(Information Technology)を活用した車両の安全システムの進化により,車 両事故による死亡者数は大きく減少している。しかし,歩行者などの交通弱者を保護する安 全技術は未確立であり,その実用化が求められている。富士通グループでは,これまでに蓄 積してきた技術を基に1970年代よりミリ波レーダの開発を開始しており,この分野におけ る高い技術やノウハウを有している。これらの技術を更に発展させ,上記社会的要求に対応 するために高分離分解能化と検知能力を向上させたミリ波レーダおよび横断歩行者検知アル ゴリズムの開発を進めている。本稿では,現在開発中の歩行者検知用ミリ波レーダの概要・ 性能・特性を紹介し,つぎに横断歩道上の歩行者検知への適用例について説明する。そして, 最後にITS(Intelligent Transport Systems)の安全・安心分野における本技術を活用した 他システムへの具体的適用検討事例について述べる。

Abstract

Recently, major advances have been made in vehicle safety systems using information technology (IT), resulting in a significant decrease in traffic fatalities. No safety system is available, however, to specifically protect pedestrians and bicycle riders. Consequently, there is an urgent demand in Japan to put such a safety system to practical use. The Fujitsu Group has been developing millimeter-wave radar since the 1970s and possesses cutting-edge radar technology and the latest detection technology using millimeter waves. We have now developed algorithms to detect pedestrians at road crossings and an advanced wave radar for this purpose. This paper gives an overview of the millimeter-wave radar we have developed to detect pedestrians and describes its performance and features. It also describes the radar’s application to detecting pedestrians at road crossings and cites specific cases. Lastly, it describes application examples of the radar technology to other systems in the fields of the Intelligent Transport Systems (ITS).

梶木淳子(かじき じゅんこ) 次世代IT・ITSプロジェクト室セン サープロジェクト 所属 現在,道路などに設置するミリ波 レーダの開発に従事。 石井 聡(いしい さとし) (株)トランストロン ASV開発部開 発第二グループ 所属 現在,車載画像処理装置の開発に 従事。

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歩行者検知用ミリ波レーダ

ま え が き 近年,IT(Information Technology)を活用し た車両の安全システムの進化により,車両事故によ る死亡者数は,大きく減少している。しかし,事故 数そのものは減少しておらず,とくに歩行者や自転 車などの交通弱者を保護する安全技術は未確立であ り,その実用化が求められている。著者らは,道路 などインフラに設置したセンサで,車両からは死角 になりやすい横断歩道上の歩行者を検知し,車両に 情報を伝えることにより,インフラと車両が協調し て事故を未然に防ぐ安全システムの実現を目指して いる。そのため,横断歩行者の状況をリアルタイム に計測・検知する技術の開発と実用化が重要な課題 となっている。 富士通グループでは,これまでの蓄積技術を基に 1970年代よりミリ波レーダの開発を開始し,76~ 77 GHz帯の電波を用いた車載レーダを実用化する など,(1) この分野における高い技術やノウハウを有 している。ミリ波レーダは,昼夜,雨,霧の影響を 受けにくい耐環境性と,周波数が高いため減衰しや すく広域まで到達しないというレーザや可視光とは 違う特徴を持っており,交通などの屋外局所の事象 の計測・検知に適している。 著者らは,上記社会的要求に対応するためにこれ らの技術を更に発展させ,FM-CW(Frequency Modulated-Continuous Wave)方式(1),(2)の高分離 分解能化と検知能力を向上させたレーダの開発,お よび歩行者の検知アルゴリズムの開発を進めた。そ の結果,一般にミリ波レーダでは困難とされている 歩行者検知可能な高感度ミリ波レーダおよび横断歩 道上の歩行者検知センサの原理試作機を完成させた。 図-1 ミリ波レーダの外観 Fig.1-Outline of millimeter-wave radar.

本稿では,現在開発中の歩行者検知用ミリ波レー ダの概要・性能・特性を紹介し,つぎに横断歩道上 の歩行者検知への適用例について説明する。そして, 最後にITS(Intelligent Transport Systems)の安 全・安心分野における本技術を活用した他システム への具体的適用検討事例について述べる。 ミリ波レーダの概要・性能 (1) ミリ波レーダの外観と構成 ミリ波レーダの外観を図-1に示す。インフラに用 いるレーダの大きさは幅130 mm×奥行230 mm× 高さ160 mmであり,インフラの機材としては,ほ かのシステムと比べても十分コンパクトである。 レーダの基本構成を図-2に示す。レーダは,アンテ ナ部,ミリ波送受信部,制御部,アナログ部,デジ タル信号処理部,外部インタフェース部から成る。 アンテナ部・ミリ波送受信部は,アンテナを通して ミリ波電波を送信し,対象物からの反射波を受信し, ビート信号を生成する。アナログ部では,不要な信 号を濾ろ波し,アナログ信号をデジタル信号に変換し, デジタル信号処理部に渡す。制御部は,送信信号を 三角型(2)に周波数変調するための制御信号を生成し, ミリ波送受信部を制御する。デジタル信号処理部は, 得られた信号から対象物までの距離と速度を算出し, 外部インタフェース部より出力する。 (2) ミリ波レーダの仕様と性能 歩行者検知を実現するためにレーダに要求される 性能としては,ガードレールや信号のポールなどの 構造物と歩行者を分離すること,横断歩道領域を極 力少ないレーダで網羅すること,および歩行者のミ リ波レーダでの検知特性が挙げられる。 車載用レーダでは車両の分離を目標としているた め分離分解能が数m程度であり,約3~4 mの車線 幅の歩行者を検知するには不十分である。歩行者用 には,最低でも車線の中央にいることを検知するた め,車線幅の半分にあたる1.5 m以下での構造物と 歩行者の分離が必要である。今回,分離分解能を高 めるため,周波数変調範囲を車載用に比べ広げ,要 求を満たした。また,少ないレーダで必要な検知領 域を網羅するため,測定範囲を広げる必要がある。

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歩行者検知用ミリ波レーダ

そこで,横断歩道の幅を4 m,奥行を5車線(1車 線3.7 m×5=約20 m)と仮定した。図-3(a)に示 すように2台のミリ波レーダで上記横断歩道全体を 網羅する場合,ビーム角を約15°測定範囲20 m以 上という仕様を策定した。 車載では,一つのアンテナを切り替えてミリ波の 送受信を行っている。その長所は小型軽量であり, 短所は歩行者のようなミリ波の反射波が弱いター ゲットを検知しにくいことである。しかし,車載へ の要求は,ミリ波の反射波が強い車両の検知であり, とくに上記短所は問題とならない。今回のシステム では,切替え時のロスをなくすため,送信・受信そ れぞれにアンテナを設け,ミリ波の反射波が弱い人 なども検知できるようにしたが,その分,形状は大 きくなる。しかし,この短所は,インフラ用である ため車載ほど小型軽量の要求は強くない。 歩行者を検知する上では歩行者反射特性を知る必 要がある。歩行者からの反射は,多点からの反射と 考えられ,マルチパスのある通信路の確率密度分布 に準ずると考えた。マルチパスのある通信路での確 率密度分布には,直接波強度の強いときの仲上-ラ イス分布と直接波とマルチパスなどの反射波の強度 とが同様な場合のレーリー分布がある。(3) どちらの 分布に近いかを検証するため,一定時間本レーダで 人を検知し,受信電力の確率密度分布を計測した。 確率密度分布を図-4に示す。歩行者の平均受信電力 を0 dBとし,横軸は,相対的な受信電力値を,縦 軸は確率密度を表す。また,仲上-ライス分布と レーリー分布の確率密度関数グラフもこの図に重畳 する。この図からも分かるとおり,レーリー分布の グラフ(スワーリングの変動モデル(2))と実データ による確率密度分布の傾向はほぼ一致することが分 かる。これより,今後は,歩行者からの反射特性は レーリー分布であることを利用し,検知範囲の設計, レーダの設置設計,検知処理アルゴリズムのシミュ レーションなどを行うこととした。 ここまで紹介したミリ波レーダの仕様と性能を 表-1にまとめた。 ミ リ 波 送 受 信 部 外部イ ン タ フ ェ ー ス 部 アナ ロ グ 部 制御 部 デジ タ ル 信 号 処 理 部 電源 アン テ ナ 部 ミリ波 外部処 理装置 へ 図-2 ミリ波レーダの構成

Fig.2-Block diagram of millimeter-wave radar.

歩行者検知用ミリ波レーダの横断歩道への適用 (1) 横断歩道歩行者検知システムの概要 本システムでは,具体的な交通システムへの適用 を考え,24時間365日どのような環境でも横断歩道 上の歩行者を検知することを目標とした。そこでほ かのセンサに比べて耐環境性が高く,歩行者の検知 可能なレーダを用いた横断歩行者の検知システムの ミリ波レーダ ミリ波レーダ ミリ波 レーダ ミリ波 レーダ 歩行者検知 処理装置 LAN LAN 歩行者検知 アルゴリズム 外部機器へ (a)使用イメージ (b)原理試作システムの概要 LAN 図-3 使用イメージと横断歩行者検知センサの原理試作システムの概要 Fig.3-Image of setting up radar and outline of first trial system.

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歩行者検知用ミリ波レーダ

0 0.05 0.1 0.15 0.2 0.25 0.3 -30 -25 -20 -15 -10 -5 0 5 10 15 20 相対的受信電力(dB) 確 率密度 人の実データによる確率分布 レーリー分布 仲上-ライス分布 図-4 歩行者の確率密度分布 Fig.4-Probability density function of walker. 表-1 仕様・性能 項目 仕様・性能 備考 レーダ方式 FM-CW 周波数 76.5 GHz これを中心に±200 MHz 送信出力 10 mW以下 水平ビーム半値幅 15° 垂直ビーム半値幅 4° アンテナゲイン 24 dBi 分離性能 1.5 m以下 歩行者の測定範囲 2~20 m 開発を進めた。 本システムの処理概要は,まず図-3(a)に示す ように横断歩道全域をカバーするために2台のレー ダを対向させ,それぞれのレーダの検知データを一 つの情報に統合すること,つぎに車線幅のエリアご とに歩行者の有無・進行方向などの情報を生成する ことである。この情報を無線通信で車両に定期的に 通信し車内で注意喚起を行うか,または路上の表示 板に注意喚起の表示を行うシステムを想定している。 レーダ自体の距離精度性能は,文献(4)などと同様 な性能を有している。出力情報を車線幅エリアごと としたのは,ドライバへの注意喚起に用いる情報と しては,詳細な位置は不要であることと,通信を考 慮すると情報量を減らす必要があると考えたためで ある。 (2) 原理試作システムの概要 横断歩行者を検知する原理試作システムの概要を 図-3(b)に示す。原理試作システムの構成は,2台 のミリ波レーダ,歩行者検知処理装置および通信用 のLANからなる。ミリ波レーダでは,横断歩行者, 通過車両,背景にある構造物など検知領域内のあら ゆる対象物からの距離・速度・受信電力を得る。 LANを通してその情報を歩行者検知処理装置に送 り,歩行者検知処理装置では,新たに開発した検知 アルゴリズムにより,歩行者の有無,進行方向,車 線ごとの位置に変換する。LANを用いた理由は, リアルタイム性には欠けるが無線などに置換えが簡 単であり,道路を横断するケーブル設置の必要がな く,手軽にデータを取得できるためである。 (3) 検知アルゴリズム 図-5に示すようにアルゴリズムの処理は,背景差 分,時系列処理,レーダ融合処理と並列に行う背景 生成からなる。 背景差分は,背景にある構造物などの背景データ と入力データとで差分をとり,背景を取り除く処理 である。これにより,ガードレールや信号ポールな どの構造物の情報を除去し,横断歩道上に新たに現 れた歩行者・通過した車の情報を得る。しかし, レーダから得られる情報には,閾いき値処理で除去し きれなかったランダムノイズもまだ含まれている。 時系列処理は,背景差分で得られた情報とその前 に検知した歩行者の情報から推定された距離・進行

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歩行者検知用ミリ波レーダ

レーダよりデータ取得 背景差分 時系列処理 レーダ融合処理 背景生成 横断歩行者検知 データ出力 図-5 アルゴリズムの処理フロー Fig.5-Processing flow of detection algorithm.

歩行者の有無と進行方向

図-6 イメージ図と検知結果例 Fig.6-Image and example of detection result.

方向・受信電力を比較し,追跡を行う処理である。 横断歩道上に現れた歩行者や通過した車は一般的に 追跡できるが,ランダムノイズは追跡できない。一 般的にランダムノイズの抑制は,閾値処理であるが, この処理を加えることにより,ランダムノイズをよ り強力に抑制している。また,ここで歩行者と通過 した車両との分離は受信電力の違いによって行って いる。 レーダ融合処理とは,2台のレーダ検知範囲の重 複した部分で同時に検知した同一物体の情報を一つ にまとめる処理である。 背景生成では,入力データを距離ごとの平均化を 行う。これにより,常に存在するガードレールや信 号ポールなどの構造物の情報は生成されるが,歩行 者や通過車両などのような定常的にそこに存在しな い物体の情報は生成されない。 (4) 検知結果 検知結果の一例を図-6に示す。この例は,横断歩 道の幅として4車線あるテストコースで横断歩行者 の原理試作システムを用いたものであり,そこで二 人の歩行者が歩いてくるシーンを示している。二人 の歩行者の有無・進行方向・車線幅のエリアごとの 位置が検知されていることが検知結果例から分かる。 む す び 本稿では,今回開発した歩行者検知用ミリ波レー ダの概要・性能・歩行者検知の特性について紹介し, 横断歩道上の歩行者検知システムへの適用について 述べた。 ほかのアプリケーションへの展開として,踏切の 障害物検知への応用を進めている。(5) 踏切障害物検 知とは,鉄道運行の安全を確保すべく,踏切に存在 する自動車などの障害物を検知し,列車へ警報を促 すものである。従来は列車への衝突時のダメージが 大きい自動車を対象として,レーザを用いた装置を 配備していたが,近年は歩行者,車椅子,自転車な どの交通弱者も検知対象とし,それらを保護する要 望が高まってきている。これらに対応するには, レーザの線的検知では難しく,踏切内全体を漏れな くカバーする面での検知が必要であり,今回開発中 のミリ波レーダがその耐環境性もあり最も適してい ると考えられる。現在,実際に横断歩行者の検知シ ステムの開発と並行して,踏切障害物検知システム を提供する企業と共同で踏切にこのミリ波レーダを 設置し,実証実験を行っており,近い将来実配備を 行う予定である。 ミリ波レーダを用いた歩行者検知の技術はまだ前 例がなく様々な課題も存在する。そのため,実道路 での実証実験を積み,課題の洗出しと対応策の実施 などを繰り返すことにより,早期実用化を実現し, ITSにおける安全・安心に貢献していく所存である。

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歩行者検知用ミリ波レーダ

(3) 桑原守二ほか:デジタルマイクロ波通信.初版, 東京,企画センター,1986. 参 考 文 献 (1) 堀松哲夫ほか:実用化を迎えたミリ波レーダシス テム.電子情報通信学会誌, Vol.87,No.9,p.756-759(2004). (4) 山野眞市ほか:シングルチップMMIC応用自動車 用76 GHzミリ波レーダ.富士通テン技報,Vol.22, No.1,p.12-19(2004). (2) 吉田 孝ほか:改定レーダ技術.初版,東京,電 子情報通信学会,1996. (5) 堀松哲夫:鉄道踏切の安全を高めるITSセンサ. FUJITSU,Vol.57,No.5,p.545-550(2006).

参照

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