幼児の足裏形態および足圧中心への草履式
鼻緒サンダル活用の効果
宮口 和義
1)出村 慎一
2)Effects of wearing Japanese-style Sandals on sole shape and
center of foot pressure in preschool children
Kazuyoshi Miyaguchi
1and Shinichi Demura
2abstract
This study aimed to clarify the effects of wearing Japanese-style sandals, which was conducted as a part of barefoot education on sole shape and position of the center of foot pressure(CFP)in preschool children. The subjects were 81 healthy children ages 4 to 5(sandal group:28;control group:53). Both groups were conducting indoor barefoot education. The sandal group wore sandals when commuting to school, going for a walk and playing outdoors for four months. The control group wore casual shoes in that time. The ground contact area of the soles and CFP were measured before and after four months(run-in period)in both groups. In the sandal group, the ground contact area of the foot became smaller with the formation of arch of foot. Specifically, a marked effect was found in the five-year-old children. As for CFP, there were significant changes in both groups. However, a change in the CFP towards the front of foot in the sandal group was large and the position of CFP varied from negative to positive along the Y-coordinate in the five-year-old children. From this, it is inferred that the effects of using Japanese-style sandals on changes in childrenʼs feet are large, even in preschools that use barefoot education.
Key words:preschool children, Japanese-style Sandals, center of foot pressure, sole shape, sandal thong 幼児,草履,足圧中心,足裏形態,鼻緒 Ⅰ 緒 言 近年,動きのぎこちなさに加え,身体をうまく コントロールできない子どもが増えている(佐々 木,2007;中村ほか,2008).その原因として,生 活全般の利便性の向上とともに,都市化による遊 び場の減少,少子化による遊び仲間の減少,ある いはテレビゲームの普及により子どもが体を動か して遊ぶ機会が減少していることが考えられる (宮口ほか,2012). 文部科学省を中心とした体力向上施策では,現 代の子供たちの運動不足を補うために,体操やス ポーツ等の運動機会を増やすことによって体力向 上を目指してきた.しかし,近年の文部科学省の 調査結果(平成 22 年度全国体力・運動能力調査結 果)を見る限り,体力合計点は小・中学生ともに 緩やかな向上傾向は見られるものの,望むような 成果をあげることができていないのが実状にあ る.特に「活動的で体力のある子」と「非活動的 で体力のない子」の二極化傾向は,運動機会の拡 1) 石川県立大学教養教育センター 2) 金沢大学大学院自然科学研究科 1
Ishikawa Prefectural University, Liberal Arts Education Center
2
大にのみ力点を置いた体力向上施策では掬いきれ ない問題が残る可能性がある.最近は軽い合成樹 脂製サンダル(クロックス etc.)等,様々な履物 が幼少年期でも見られるようになり,その是非が 幼児関係者において問題になっている.また,上 履きあるいは登下校の履物として草履やビーチサ ンダルなど鼻緒付きの履物を素足に履かせると いった「裸足教育」に絡めた健康教育を行ってい る学校がある.鼻緒がある履物は,これを趾で一 歩ごとに挟まないと歩けない.この趾の使用が 様々な効果をもたらすと考えられている.原田 (1982,2012)は草履を履くことで土踏まずが形成 され,趾力が向上するとともに重心が前よりの良 い 姿 勢 に な る と 報 告 し て い る.ま た 福 山 ほ か (2005)は,成人を対象に調査を行い,草履を履く ことで,重心位置が前方に移動し,第 1 趾および 第 5 趾の把持力が高まると報告している.しかし 「ミサトっ子」や「スクールサンダル」に代表され る草履式鼻緒サンダルは,その流通量にも関わら ず,幼少年期の人体へ及ぼす影響についての研究 は少なく,具体的な効果については十分明らかに されていない. また,最近の保育施設は,ピータイルやモザイ ク板などのクッション性がない反発力の強い床が 多くなっている.このような緩衝作用が無い床で は,足趾が使用されにくいため土踏まず形成が促 進されないのみならず,踵骨骨端核を傷め,踵痛 やアキレス腱痛の原因となりうる(原田,2012). よって,裸足保育を実践している園でも,クッショ ン性及び足趾の活用を備えた草履式鼻緒サンダル の活用も今後検討すべきかもしれない.そこで本 研究では「裸足保育」の一環として取り組む,草 履式鼻緒サンダルの活用が,園児の土踏まず形成, および足圧中心位置にどのような影響を及ぼすか 明らかにすることを目的とした. Ⅱ 方 法 1 .被験者 被験者は A 保育園(サンダル導入園)の 4 歳児 および 5 歳児の計 28 名と B 保育園(対照園)の 4 歳児および 5 歳児の計 53 名であった.被験者の 身体的特性は表 1 に示した通りである.被験者の 体格特性は日本の全国的な平均値と類似し,一般 的な幼児期の子どもと同様な発育状態にあると考 えられる(首都大学東京体力標準値研究会,2007). 両園とも運動遊び(鬼ごっこ,サッカー遊び等) 及び散歩(週 1〜2 回)を積極的に導入しているが, カリキュラム上大きな違いは認められなかった. 両園における各測定項目について性差は認められ なかった.よって,本研究では男女統一して統計 解析を行った. なお両園とも裸足保育(屋内)を実践しており, これまで園児のほとんどがシューズを履いて登園 していた.測定・調査に当たり,被験者の保護者 には書面により趣旨を説明し,測定参加に対して の同意を得た.本研究の実験プロトコルは金沢大 学人間科学系ヒトを対象とする研究倫理委員会 (2012-05)にて了承されている. 2 .測定方法 足裏の接触面積(接地面積)および足圧中心位 置の測定には,フットビュークリニック(図 1: ニッタ株式会社製)を用いた.この装置は,対象 者を一定時間直立させることにより,立位時の圧 力分布,荷重中心の位置等を測定し,各時間での 荷重の前後・左右バランスを計算,視覚的に表示 する.発育発達段階にある幼児においては,立位 姿勢の静止状態,いわゆる「気をつけの姿勢」を 測定することは困難なことが多く,特に 3,4 歳で は静止状態を続けられないことが多い(新宅, 2012).先行研究(松田ほか,2012)では 10 秒間 で実施しているものもあるが,本測定に先駆け実 施した予備測定でも特に 4 歳児で安定した数値は 得られなかった.よって,本研究では 5 秒間で実 施した. 被験者には,5 秒間の「気をつけの姿勢」の保持 する際,できるだけ動かないことを指示し,2 m 前方の目の高さに固定した目標を注視することを 求めた(図 2).サンプリング周波数は 20 Hz で あった.測定は 2 回行い,良い方(足圧中心動揺 が小さい方)の数値を採用した. 上記装置を用いて 2012 年 6 月に両園で,接地 面積および足圧中心位置を計測した.計測は午前 9 時 30 分〜10 時に行なった.なお,足圧中心位 置については,全てのフレームにおける足型の最
も前,最も後ろ,最も左,最も右の矩形の中心を 基準とした足圧中心の変位(Y 軸[前後]方向動 揺の平均値)を採用した(図 3).また,上記はい ずれも 5 秒間のムービーデータの平均値を採用し た.その後,4 カ月間に渡り A 保育園では図 4 の 草履式鼻緒サンダル(スクールサンダル:ラッキー ベル社製)を,登園時および外遊び時(散歩,園 庭での自由遊び,マラソン,遠足 etc.)に着用し た(図 5).園児の足長は 15 cm から 20 cm の範 囲であったが,サンダルの 0 号(16-17 cm),1 号 (18-19 cm),2 号(20-21 cm)の中から対応する サイズを保護者が選択した.B 保育園では普段の シューズを着用した.休日の着用については自由 とした. 4 カ月後の 10 月中旬に,上記同様の方法で両園 の園児の接地面積および足圧中心位置を計測し た. 図 1 フットビュークリニック 図 2 足裏接地面積および足圧中心位 置測定の様子 10 5 0 −5 −10 Y 軸 方 向 足 型 短 形 Y 軸 中 心 図 3 足圧中心の変位記録の一例 図 4 草履式鼻緒サンダル スクールサンダル(ラッキーベル社) 図 5 スクールサンダル着用での活動の様子
3 .統計解析 A 保育園と B 保育園の園児における身体的特 性の差は 2 要因分散分析(園×年齢)により検定 した.なお,フットビュークリニック計測値の試 行間信頼性には級内相関係数(Intra-class Corre-lation Coefficients:ICC)を算出した.両園の 4 カ月間の接地面積,足圧中心位置の変移を調べる ために,年齢(4 歳児,5 歳児)ごとに 2 要因分散 分析(導入前後×園)を行った.本研究における 統計的有意水準は 5%とした. Ⅲ 結 果 表 1は被験者の身体的特性(初回測定時)およ び 2 要因分散分析の結果を示している.両園の園 児の体格特性(身長・体重)に差は認められなかっ た. 接地面積および足圧中心位置の ICC はそれぞ れ 0.96,0.77 とともに高く,両園間に有意差は認 められなかった.なお,年齢差は体格特性および 接地面積に認められたが,足圧中心に認められな かった. 図 6は年齢別にサンダル導入前後の足裏接地 面積(平均値,標準偏差)の変化および 2 要因分 散分析の結果を示している.4 歳児及び 5 歳児共 に,有意な交互作用が認められた.多重比較検定 の結果,5 歳児のサンダル園では導入前後に有意 な変化が認められ,接地面積が約 13 cm2減少し 145.4±10.6 4 歳児 身長 (cm) 分散分析 B 保育園(n=53) 4 歳:16 名 5 歳:37 名 対照園 A 保育園(n=28) 4 歳:12 名 5 歳:16 名 サンダル園 4 歳児 −1.4±0.8 −1.7±0.6 接地面積 (cm2) 4 歳児 足圧中心 (cm) 表 1 被験者の身体的特性 数値は平均値±標準偏差を示す F1:園 F2:年齢 F3:交互作用 *:P<0.05 −1.5±0.9 −1.2±1.0 F1 0.14 F2 12.63 * F3 0.02 5 歳児 111.1±4.5 109.9±3.9 144.6±8.8 5 歳児 F1 1.02 F2 23.05 * F3 0.02 106.1±4.2 105.2±3.7 158.0±16.9 5 歳児 F1 1.49 F2 9.90 * F3 0.00 17.1±2.2 16.5±1.5 4 歳児 体重 (kg) F1 0.04 F2 1.48 F3 1.72 18.7±2.2 18.1±2.1 5 歳児 156.3±15.6 180 170 160 150 140 130 120 5歳児 接地面積の変移 cm 158.0 156.3 対照園 サンダル園 * * 153.2 145.2 導入前 導入後 F1:21.9* F2:0.5 F3:8.2* 180 170 160 150 140 130 120 4歳児 接地面積の変移 cm 145.4 144.6 対照園 サンダル園 * 146.4 140.0 導入前 導入後 F1:1.4 F2:0.5 F3:6.1* 図 6 サンダル導入による足裏接地面積の変異(年齢別)
た.また,導入 4 カ月後には両園の平均接地面積 間に有意差が認められた.4 歳児では,サンダル 園に低下傾向が認められ,導入 4 カ月後に両園の 平均接地面積間に有意差が認められた.図 7 は A 保育園における代表園児の,画像データによる サンダル導入前後の足裏接触面の変化を示してい る.接地面積の減少は土踏まず形成によるところ が大きいことが窺える. 図 8はサンダル導入前後の両園の足圧中心位 置(平均値,標準偏差)の変移および 2 要因分散 分析の結果を示している.5 歳児で有意な交互作 用が認められた.多重比較検定の結果,両園とも 4 カ月後に有意に前方へ変移したが,4 カ月後の 両園の足圧中心位置間に有意差が認められた.特 に,サンダル園では前方変移が約 4.6 cm 認めら れ,足圧中心が足型矩形中心を超え Y 座標でマイ ナスからプラスへ転じた.4 歳児では,有意な交 互作用は認められず,導入前後にのみ有意な主効 果が認められた.多重比較検定の結果,サンダル 園にのみ有意な変移が認められた. Ⅳ 考 察 草履式鼻緒サンダル導入に先立ち,A 保育園(サ ンダル園)と B 保育園(対照園)の園児の体格(身 長・体重),接地面積,および足圧中心位置につい て平均値の差の検定を行った.結果,いずれも両 園間に有意差は認められなかった.よって,形態 的には同質の集団と判断された. A 保育園ではサンダル導入後,接地面積の減少 が認められた.特に 5 歳児における減少は顕著で あった.代表例を図 6 に示したがサンダル履きを 導入したことにより,A 保育園の多くの園児にお いて土踏まず形成が進んだと推測される.本研究 の被験者は両園ともに裸足保育を経験しており, 上履きを着用している園児に比べ,日常生活にお ける足裏への刺激はかなり大きいと判断される. しかし,草履式鼻緒サンダルの着用により,さら に足趾や足趾間に力学的な刺激や運動の拘束を与 えたと推察される.草履の場合,1 趾と 2 趾で鼻 緒を挟み,つまむようにして歩くため,Toe break (靴が曲がる位置)時に足趾で床を踏み込むよう になり,下腿三頭筋や足趾屈筋の筋活動量が増加 する(福山ほか,2005).結果として土踏まず形成 被験者 K.M. (5歳男児) 被験者 A.W. (5歳女児) 導入前 導入後 導入前 導入後 足圧中心 図 7 足裏接地面の変化(A 保育園の代表例) 6 5 4 2 3 1 −2 −1 0 −3 5歳児 足圧中心の変移 cm −1.23 −1.46 対照園 サンダル園 * 3.41 −0.23 導入前 導入後 F1:120.8* F2:34.8* F3:40.9* 足型矩形Y軸中心 * * 6 5 4 2 3 1 −2 −1 0 −3 4歳児 足圧中心の変移 cm −1.44 −1.75 対照園 サンダル園 −0.08 −0.64 導入前 導入後 F1:13.2* F2:0.1 F3:1.7 足型矩形Y軸中心 * 図 8 サンダル導入による足圧中心位置の変異(年齢別)
が促されたと考えられる. A 保育園には 4 カ月間,4 歳児も 5 歳児と同様 にサンダル着用を依頼し,実施を確認した.しか し,本研究結果では,4 歳児に比べ 5 歳児の土踏 まず形成に及ぼすサンダル効果が大きいことが明 らかにされた.丹羽(1979)は,4 歳児では大筋運 動が中心で,運動機能間の連絡や協応が十分でな く,全体として運動に不調和を招きやすいが,5 歳児では複雑で高度な巧緻的運動を獲得し,均衡 や統一ある運動能力へと発展すると述べている. 宮口ほか(2009,2010)もラダー運動を通して, 4 歳児に比べ 5 歳児の方が難度の高いフットワー クが可能であると報告している.よって,サンダ ルを履いている時間は同程度でも,動きの質その ものに年齢差が生じ,土踏まず形成に年齢差が認 められたのかもしれない.また,今回採用したス クールサンダルは元来小学生用に開発されたもの で,後に幼児用サイズが追加された.足サイズで 16-17 cm(0 号)が最小であり,年中児の数名に おいては適切なサイズではなく幾分大き目のサン ダルであった可能性がある.原田(2012)は大き すぎる草履を履いた場合,踵が草履の内側につく 斜め履きになり,足趾の使用が半減するため,足 趾の強化が期待できないと報告している.この点 も年齢差が生じた理由の一つと考えられる. 新宅ほか(2003)は,発育発達に従って重心位 置が踵から足先方向に変移すると報告している. 実際,サンダル非導入園の B 園でも 3 カ月後に有 意な前方への変移が認められた.ただし,新宅ら は 5 歳児を対象に測定を行い,重心動揺の中心位 置が前より(Y 座標で値が 0 以上)であったもの は 59 名中 0 名で,平均値は−4.6 cm であったと 報告している.本研究では非導入園の 5 歳児でも 平均が−0.2 cm で,サンダル導入園の 5 歳児の 平均は 3.4 cm とかなり前方であった.測定機器 が異なるため単純な比較は難しいが,新宅らの被 験者はおそらく上履きを履いていたと推察され る.裸足生活を行うことで立位の重心位置はより 足先に位置することが報告されている(臼井, 1995)が,本研究結果から草履式鼻緒サンダルを 履くことにより,より前方へ変移することが示唆 された. 足圧中心は大きな動きのない立位姿勢において は,重 心 線 と ほ ぼ 一 致 す る と 考 え ら れ て い る (Murray et al., 1967).よって,立位姿勢の安定性 を規定する大きな要因として,足部における足圧 中心位置をあげることができる(藤原ほか,1981). Okada(1972)は足圧中心位置を矢状(前方)方向 に移すと,活動する抗重力筋の種類と筋活動量が 変化すると報告している.福山ほか(2006)は成 人女性を対象に草履 3 カ月間着用による裸足歩行 時の筋活動変化について検討している.その結 果,足趾まで体重が移動し十分な蹴り出しが可能 となり,股関節が伸展し骨盤の前傾が矯正され, 大臀筋,脊柱起立筋の筋活動が減少し,大腿四頭 筋,下腿三頭筋,足趾屈筋の筋活動量が増加した と報告している.これによって姿勢も矯正され腰 痛効果も期待できるとしている.本研究において もサンダル導入 4 カ月後には,5 歳児で平均 4.6 cm の前方変移が認められ,骨盤,腰椎のアライ メントが矯正され,全般的に姿勢が良くなったと 推測される.また,三村ほか(2009)は幼児の転 倒頻度と接地足蹠の関係を検討し,よく転倒する 幼児は後方重心が多かったと報告している.サン ダルによる足圧中心の前方変移は姿勢矯正のみな らず転倒予防にも貢献できることが考えられる. 今後,姿勢評価や転倒頻度も含め詳細な検討が必 要だろう. 2012 年,文部科学省の『幼児期運動指針』策定 により,健康づくりを方針の一つに掲げる幼稚 園・保育園も多くなってきた.しかし,今日の子 どもを取り巻く環境を考えると,カリキュラムと しての運動機会の拡大に加え,生活習慣の中に運 動をいかに組み込むか,積極的に検討していく必 要がある.以前に比べ,路面整備が進み,凹凸あ る地面が減り,バランスを保ちながら動く機会が 減少している.また,日中の靴下と靴の着用は足 趾の動きを制限し,靴下と靴あるいは靴下と足と の間の滑りが足趾の動きを阻害する可能性もある (原田,2011).よって,毎日活用する履物に対し ても十分な配慮が必要だろう.特に最近では,流 行およびファッション性から合成樹脂製のスリッ パ式サンダル(クロックス etc.)を子どもに履か せる親も多い.しかし,足趾の動きが制限される 履物の着用は,成長著しい幼児期には弊害が多い ことも知っておく必要があろう.
運動教育の立場から,永田(1986)は,裸足教 育は足底形態の発達に役立ち,重心動揺の観点か らも,直立姿勢の保持バランスがよくなること, 裸足で運動を行う子どもは,抗疲労性が高まり, 動揺面積が少なくなることを報告している.ま た,臼井(1995)も裸足生活を行うことで立位の 重心位置はより足先に移動し,成人に近い値を示 すことを報告している.しかし,裸足保育を実践 している園であっても,草履式鼻緒サンダルを活 用するとその効果もさらに高まる可能性があるこ とが本研究結果から示唆された. Ⅴ まとめ 本研究では「裸足保育」の一環として取り組む, 草履式鼻緒サンダルの活用が,幼児の土踏まず形 成および足圧中心位置にどのような影響を及ぼす か検討した.サンダル導入園(4 カ月後)では対 照園に比べて,土踏まず形成が促進され,足裏の 接地面積が減少した.また,足圧中心位置につい ても前方への変移が認められた.特に 4 歳児に比 べて 5 歳児において顕著な効果が確認された.裸 足保育実践園であっても,草履式鼻緒サンダルを 活用することでその効果もさらに高まることが期 待される. 謝 辞 本研究の一部は,平成 24 年度科学研究費補助基金 研究(C)(宮口,課題番号 24500681)および平成 24 年度石川県立大学地域貢献プロジェクトの助成に よって行われたものである. 文 献 福山勝彦,小山内正博,関口由佳,上野詠子,根岸康 至,矢作毅,二瓶隆一(2005)浮き趾治療用草履 着用による歩行時の筋活動,理学療法学,32,11 福山勝彦,小山内正博,上野詠子,矢作毅,二瓶隆一 (2006)浮き趾治療用草履の効果:3 カ月間着用に よる筋活動より,理学療法学,33,169 藤原勝男,池上晴夫(1981)足圧中心位置と立位姿勢 の安定性との関係について,体育学研究,26,137-147 原田碩三(1982)幼児の土踏まずと運動能力,保健の 科学,24,654-659 原田碩三(2011)足指の使用と子どもの生きる力,子 どもと発育発達,8,295-297 原田碩三(2012)趾が働くはき物ミサトっ子と趾・足・ 姿勢・健康,體研究会,1-46 松田繁樹,出村慎一,春日晃章,竹本康史,田口隆, 出村友寛(2012)幼児の静的平衡性の性差,年齢 差および体格との関係,岐阜聖徳学園大学短期大 学部紀要,44,95-101 三村寛一,織田恵輔,北野祐大,上田真也,臼井達矢, 喜多宣彦,三村達也,安倍恵子(2009)幼児期に おけるピドスコープを用いた接地足蹠測定,大阪 教育大学紀要第Ⅳ部門,58,213-222 宮口和義,出村慎一,蒲真理子(2009)幼児における ラダー運動の成就度と運動能力との関係,発育発 達研究,43,1-10 宮口和義,出村慎一,蒲真理子,鵜沢典子(2010)幼 児におけるラダー運動の成就度の年代差・性差お よび走能力との関係,スポーツパフォーマンス研 究,2,1-11 宮口和義,出村慎一(2012)幼児の敏捷性に対するテ レビゲームおよび運動あそびの影響,発育発達研 究,55,23-32
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人の体力標準値Ⅱ,不昧堂出版,24-26,74-77 臼井永男(1995)重心動揺の発達的変化,理学療法科 学,10,167-173 (受付:2013 年 2 月 13 日,受理:2013 年 7 月 4 日) 1964 年石川県金沢市生まれ.金沢大学教育学部卒業,金沢 大学大学院自然科学研究科博士課程修了.専門は身体運動 学・体力トレーニング論.SSC(反動動作)利用による筋 パワー発揮を研究.ジュニア選手育成(オールラウンドな アスリート養成)のために,地元で Jr.アスレチッククラ ブ(小立野 JAC)を設立,監督を務める.最近は,鬼ごっ こや縄跳びを運動学的視点で研究中. 宮口 和義(みやぐち かずよし) 現職:石川県立大学生物資源環境学部 教授