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目次 Ⅰ. 外資規制 外資規制の動向 外資規制業種... 1 (1) 国家に留保される戦略的分野 ( 外資法第 5 条 )... 1 (2) メキシコ人または会社定款に 外国人排除条項 を定めるメキシコ籍の法人に留保される規制業種 ( 外資法第 6 条 )... 2

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メキシコにおける会社設立と清算

の基本

2016年3月

日本貿易振興機構(ジェトロ)

メキシコ事務所

(2)

目次

Ⅰ.外資規制 ... 1 1. 外資規制の動向 ... 1 2. 外資規制業種 ... 1 (1)国家に留保される戦略的分野(外資法第 5 条) ... 1 (2)メキシコ人または会社定款に「外国人排除条項」を定めるメキシコ籍の法人に留 保される規制業種(外資法第 6 条) ... 2 (3)外資参加率規制業種(外資法第 7 条) ... 2 (4)外資参加率が 49%を超える場合、外資委員会の承認が必要とされる規制業種(外 資法第 8 条) ... 3 Ⅱ.現地法人の設立 ... 4 1. 会社形態 ... 4 2. 会社の組織 ... 6 3. 会社設立の手順 ... 7 4. 各手続きの概要 ... 8 (1)定款及び創立総会決議事項の準備 ... 8 (2)経済省社名使用許可取得 ... 11 (3)会社設立公正証書署名代行者宛委任状公正証書の作成 ... 12 (4)商法上の会社設立(会社設立公正証書の署名) ... 12 (5)連邦納税者登録(RFC)の取得 ... 13 (6)商業登記 ... 13 (7)経済省外国投資登録 ... 14 (8)各種帳簿の手配、株券発行 ... 14 (9)その他の主な手続き ... 14 Ⅲ.外国会社の支店・駐在員事務所の開設 ... 17 1. 現地法人と支店・駐在員事務所の相違 ... 17 2. 支店と駐在員事務所の主な相違 ... 18 3. 支店または駐在員事務所開設の手順 ... 19 4. 各手続の概要 ... 19 (1)支店長または駐在員事務所長および弁護士等宛代表権授権公正証書作成、登記用 定款の準備 ... 19 (2)対経済省外資局、支店・駐在員事務所開設通知 ... 20 (3)上記(1)及び(2)の編纂 ... 20 (4)商業登記 ... 20 (5)RFC の取得... 21

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(6)外資登録 ... 21 (7)その他の主な手続き ... 21 Ⅳ. 不動産の取得 ... 21 1. 規制地帯 ... 21 2. 外国人による不動産取得 ... 21 3. メキシコ法人による不動産取得 ... 22 (1)外国人排除条項を有するメキシコ法人 ... 22 (2)外資参入を認めるメキシコ法人 ... 22 4. 不動産取得の手順... 22 (1)物件の選定... 22 (2)所有者との交渉、及び予約の締結 ... 22 (3)公証人の選定... 23 (4)公証人による調査、並びに公正証書の準備 ... 23 (5)当事者による売買契約公正証書の署名 ... 23 (6)登記 ... 23 Ⅴ. 企業結合審査手続き... 24 1. 企業結合の概念 ... 24 2. 企業結合の事前審査制度 ... 24 Ⅵ.日本企業の出向者及び出張者の在留許可 ... 26 1. 日本人に該当しうる在留許可証(在留カード)の種類 ... 26 (1)ビジターカード(Tarjeta de Visitante、通称 FMM) ... 26

(2)テンポラリーレジデントカード(Tarjeta de Residente Temporal、通称 TRT) ... 27

(3)パーマネントレジデントカード(Tarjeta de Residente Permanente、通称 TRP) ... 27

2. 入国査証(Visa)... 27

3. 雇用主登録(Constancia de Inscripción del Empleador) ... 28

(1)概念 ... 28 (2)新規登録 ... 28 (3)年次更新、変更通知 ... 28 4. テンポラリーレジデントカード(TRT)の取得方法 ... 28 (1)インテルナシオン手続き ... 28 (2)メキシコ在外公館での手続き ... 29 (3)ビジターカード(FMM)からの直接切り替え ... 30 5.テンポラリーレジデントカード(TRT)取得の効果 ... 30 6.テンポラリーレジデントカード(TRT)の更新手続き ... 31

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7.臨時出入国許可(Permiso de Salida y Regreso) ... 31 8.登録事項変更通知... 31 9.帰任時のテンポラリーレジデントカード(TRT)の扱い ... 31 10.未成年者の渡航 ... 31 Ⅶ.会社の清算 ... 33 1.現地法人の解散・清算 ... 33 2.現地法人の解散・清算手続きの手順 ... 33 (1)解散決議の採択〜登記・通知 ... 34 (2)清算事務開始〜結了 ... 34 (3)清算最終貸借対照表の公告 ... 34 (4)清算事務と清算最終貸借対照表の承認 ... 35 (5)残余財産の分配 ... 35 (6)会社の消滅... 35 (7)清算人による書類保管義務履行 ... 35 3.外国会社の支店・駐在員事務所の閉鎖 ... 35 本報告書の利用についての注意・免責事項

本報告書は、日本貿易振興機構(ジェトロ)メキシコ事務所が現地法律事務所 Takimoto, Cortina, Farell y Asociados.S.C. に作成委託し、2016年3月に入手した情報に基づくものであり、その後の法律改正などによって変わる 場合があります。掲載した情報・コメントは作成委託先の判断によるものですが、一般的な情報・解釈がこのとおりで あることを保証するものではありません。また、本稿はあくまでも参考情報の提供を目的としており、法的助言を構成 するものではなく、法的助言として依拠すべきものではありません。本稿にてご提供する情報に基づいて行為をされる 場合には、必ず個別の事案に沿った具体的な法的助言を別途お求めください。

ジェトロおよび Takimoto, Cortina, Farell y Asociados S.C.は、本報告書の記載内容に関して生じた直接的、間接的、 派生的、特別の、付随的、あるいは懲罰的損害および利益の喪失については、それが契約、不法行為、無過失責任、あ るいはその他の原因に基づき生じたか否かにかかわらず、一切の責任を負いません。これは、たとえジェトロおよび Takimoto, Cortina, Farell y Asociados S.C.が係る損害の可能性を知らされていても同様とします。

本報告書に係る問い合わせ先: 日本貿易振興機構(ジェトロ) お客様サポート部・貿易投資相談課 E-mail : CSB@jetro.go.jp ジェトロ・メキシコ事務所 E-mail : MEX@jetro.go.jp

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Ⅰ.外資規制

1. 外資規制の動向 メキシコは 1980 年代まで、長期間に渡って国内産業保護の見地から閉鎖的な経済政策が 採用されていたため、外国資本のマジョリティー(出資比率が 49%を超える投資)「禁止」 を原則とする外資規制が採られていた。しかし、1980 年代後半から経済政策が自由化に転 じ、外資規制に係る法制にもそれが反映された。その顕著な例が 1994 年の北米自由貿易協 定(NAFTA)発効、経済開発協力機構(OECD)への加盟に伴い実行された旧外資法廃止と新 外資法(Ley de Inversión Extranjera、以下「外資法」という)の制定である。

外資法下では、外国資本によるマジョリティーが、原則として自由化され、一部の特殊 な分野(後述)を除き、100%外資による現地法人の設立、あるいは既存法人への資本参入 ができるようになった。また、外資規制対象業種の数を減らすと同時に、旧法制下で課せ られていた規制の撤廃・軽減により、外資に対する内国民待遇すなわちメキシコ人と同等 の扱いをする体制が概ね確立された。そして外国企業のメキシコ支店・駐在員事務所開設 のルールも一定程度明確化された。 なお、現行法制における外資規制の具体例としては、後述の「外国投資登録制度」、「外 国会社の支店・駐在員事務所開設認可制」、「外国人による不動産取得に対する規制」があ る。 2. 外資規制業種 下記の規制業種を除く一般業種では、無条件で 100%まで外資参入が可能だが、一般業種 であっても既存企業の資本金の 49%を超えて外資が参加する場合で、その会社の資産総額 が 36 億 190 万 5,682.86 メキシコペソ(2015 年 4 月 23 日に連邦官報に公示された経済省決 定第 16 号)を上回る場合には外資委員会の事前承認が必要となる。 なお、外資参加比率に上限のある業種で「外資」の出資比率を算定する場合、メキシコ 資本がマジョリティーを有するメキシコの会社を通じた間接的投資は「外資」とみなさな い。ただし、外資がマイノリティーでありながらも支配権を有する会社の場合その限りで はない。 2013 年、メキシコは画期的なエネルギー改革に係る憲法改正を断行したが、これを受け て翌 2014 年の 8 月 11 日には、外資法を含む関連法令の改正並びに新法制定を実施した。 この改正によって外資規制業種は以下の様に更に減少した。 (1)国家に留保される戦略的分野(外資法第 5 条) ・憲法第 27 条第 9 パラグラフ及び第 28 条第 4 パラグラフ、並びに当該施行法に規定する 石油及びその他の炭化水素の開発並びに採掘。 ・憲法第27条第6パラグラフ及び第28条第4パラグラフ、並びに当該施行法に規定する、 国家電力系統の計画及び統制、並びに電力の送配電公共サービス。

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・原子力エネルギー。 ・放射性鉱物 ・電報サービス ・無線電信サービス ・郵便 ・紙幣発行 ・貨幣鋳造 ・港湾・空港・ヘリポートの管制・管理・監督 ・その他適用法令が言明的に定める分野 (2)メキシコ人または会社定款に「外国人排除条項」を定めるメキシコ籍の法人に留保さ れる規制業種(外資法第 6 条) ・関連法に基づく開発銀行 ・適用法の規定する専門・技術サービスの提供 ・旅客・観光・貨物国内陸上輸送(宅配便サービスを除く) 外資法附則第6条の規定に基づき、国際輸送の一環として実施する国内の複数地点間を結 ぶ旅客・観光・貨物陸上輸送業務およびバスターミナル運営業務は、2004年1月1日から外 資が100%出資できるようになった。 (3)外資参加率規制業種(外資法第 7 条) ・10%まで:協同組合 ・25%まで:国内航空輸送、エアタクシー輸送、特別航空輸送 ・49%まで:爆発物・花火・銃火器などの製造と販売等(鉱・工業活動のための爆発物 購入または使用および混合物の製造を除く)、国内のみ流通の新聞の印刷と発行、森林・ 牧畜・農業用の土地を所有する会社の T シリーズ株式、排他的経済水域漁業・沿岸漁業・ 淡水漁業(養魚業を除く)、港湾総合管理業(API)、海運法に基づく国内航路の水先案内 港湾サービス、観光用クルーザーを除く内国海運会社(沿岸・内航路で商業用船舶操縦に 従事、または港湾の建設・維持・運営に従事するもの)、船舶・飛行機・鉄道機器の燃料・ 潤滑油供給、ラジオおよび地上波テレビ放送(ただし、投資相手国内法で同業種に対し投 資比率規制を行っている場合は相互主義として 49%を超えない範囲で同率とする。

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<金融機関への外資参入> 商業銀行への外資出資比率制限は、外資法第7条改正(1999年1月19日)により撤廃され た。ただし、新規に子会社方式で設立する場合は、金融機関法により、自由貿易協定また は類似の取り決めがなされている国の居住者である銀行のみに限られる。保険会社、補償 会社、両替商、年金運用会社の出資比率は2013年までは49%となっていたが、2014年1月10 日付官報で公布された外資法の改正により、外資規制は撤廃された。 (4)外資参加率が 49%を超える場合、外資委員会の承認が必要とされる規制業種(外資法 第 8 条) 曳航、係留、用船などの港湾サービス。遠洋運輸の船舶操業に従事する海運会社。公共 飛行場の認可またはコンセッション会社。幼稚園、小学校、中学校、高校、上級学校の私 立学校サービス。法務サービス。公共鉄道サービスの提供と鉄道の建設・操業・管理。

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Ⅱ.現地法人の設立

現地法人設立手続きの主要な根拠法は、商事会社一般法(Ley General de Sociedades Mercantiles)(以下「会社法」という)、外国投資法(Ley de Inversión Extranjera)(以 下「外資法」という)とその施行規則、商法(Código de Comercio)である。また法人、 人の属性といった私法上の基本概念については連邦民法(Código Civil Federal)が重要 な法源である。

1. 会社形態

会社法の定める会社形態は次の 7 つである。

・合名会社(Sociedad en Nombre Colectivo) ・合資会社(Sociedad en Comandita Simple)

・合同会社(Sociedad de Responsabilidad Limitada : S. de R.L.) ・株式会社(Sociedad Anónima : S.A.)

・株式合資会社(Sociedad en Comandita por Acciones) ・協同組合(Sociedad Cooperativa)

・簡易式株式会社(Sociedad por Acciones Simplificada)

メキシコの会社形態で最も一般的なのは株式会社(Sociedad Anónima:S.A.)である。 ただし、メキシコでは会社定款を改定せずに資本金を増減できる可変資本( Capital Variable:C.V.)制度が認められており、これが盛んに利用されるため、採用事例が圧倒 的に多いのは可変資本株式会社(Sociedad Anónima de Capital Variable:S.A. de C.V.) である。これは日本からの企業進出についても当てはまることであり、その理由としては、 親会社が多くの場合、株式会社であることから、日本の親会社、経営陣にとって株式会社 形態が制度の類似性ゆえに扱い易いことが挙げられる。

なお、米国からの進出において、米国親会社にとっての米国での税務上の恩典(注 1)を利 用する目的から、日本の合同会社や米国の LLC(Limited Liability Company)に相当する合 同会社(Sociedad de Responsabilidad Limitada)の形態が採用される場合がある。既述の 可変資本制度は合同会社にも適用可能であり、これを適用した場合は可変資本合同会社 (Sociedad de Responsabilidad Limitada de Capital Variable =S. de R.L. de C.V.) となる。

(注 1) 米国親会社の投資先メキシコ現法(子会社)が米国税法上の人的会社であれば、子 会社に損失が発生した場合、税務の連結により米国親会社の課税所得を圧縮できるという もの。メキシコ子会社が合同会社(S. de R.L.))であれば同恩典の活用が可能とされる。

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ただし、これはあくまでも米国親会社にとっての米国における税務上の恩典であり、これ によってメキシコ子会社がメキシコの税務申告を免れることができるわけではなく、米国 内で起こるいわゆる「パススルー効果」はない。また、親会社が日本の企業である場合は これに類する恩典はない。 また、米国での活動実績がある企業は、メキシコへの進出検討時、米国の専門家にメキシ コでの会社設立について相談することがあるが、その場合、前述の税務上の理由によらず とも、合同会社の設立を勧められるケースが多い印象である。 これは、米国では LLC が使い勝手の良い制度として認知されているために、これに相当 するとされるメキシコの合同会社であれば同じく使い勝手が良いとの単純な論理によるも のと考えられる。確かにメキシコの会社法が規定する合同会社は、株式会社に比べれば会 社組織が極めて単純であるが故に、資本構成が閉鎖的で実質的機能が支店のそれである会 社にとっては便利な印象を与える。この点、米国ではこのように単純な会社組織の利便性 が際立つであろう一人会社の設立が認められていることも影響しているといえよう。しか しメキシコでは一人会社の設立は原則認められていない(注 2)上、メキシコの合同会社制 度は、株式会社に所属または株式会社出身の日本人経営者にとっては極めて馴染み難い概 念やルールが多く、結果として何らかの事情から合同会社形態を採用した会社では日本人 経営者が不便している事例が目立つ。また、定款内容をわざわざ株式会社のそれに似せた 組織構成・運用ルールにしてあるといった奇妙な現象も見られる。結論として、理由の如 何を問わず、株式会社出身の日本人経営者にとっては、合同会社形態の採用にはそれなり の割り切りが必要であろう。 会社法の規定する会社形態のうち、株式会社と合同会社のみが、株主・社員の責任が出 資の範囲に限定される有限責任会社であり(注 2)、それがこれらの会社形態の採用事例が 圧倒的に多い理由であると言える。しかし、2005 年に公布された新証券市場法(Ley de Mercado de Valores)によって新しい形態の有限責任会社が加えられた。これは投資促進 株式会社(Sociedad Anónima Promotora de Inversión : SAPI)という形態であり、基本 的組織は従来の株式会社と同じでありながら、種類株式の発行や扱いに対する規制緩和や 脱退・除名ルールの簡素化等、従来の株式会社制度では認められないか、あるいは扱い 辛い短期的投機資金の受け入れをしやすくした会社制度であると言える。日本からのメキ シコ投資案件においてはこの新会社形態の採用事例は極めて少ない。 (注 2)2016 年 3 月 14 日、会社法改正が公布され、新たな会社形態として Sociedad por Acciones Simplificada(簡易式株式会社)が追加された。この会社形態では、株主の責任 について(議論の余地はあるが)第一義的には有限責任となっている。またこの形態での み一人会社の設立が認められており、これは当地の伝統的社団概念が複数の株主または社 員の存在を成立要件としている状況からすれば画期的なことである。ともあれこの会社形

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態では、唯一自然人(個人)のみ株主になることができ、また年間の売上げが 500 万ペソ を超過してはならないといった制約があることによって、日本企業の当地進出事案におい ては利用価値に乏しい制度となっている。 2. 会社の組織 株式会社を構成する機関と各機関の関係は図 1.のとおりである。 図 1.株式会社における各機関の関係概略(注 3) (注 3)↓は任免権を示す。 (注 4)メキシコでは、経営機関について独任制の採用が可能。この場合、取締役会に代え て「唯一代表取締役(Administrador Único)」となる。 一方、会社法の規定する合同会社の組織は、既述の通り極めて単純であって、図 2.のもの が基本形である。ただし、任意で支配人や監査役を置くことができる。 図 2.合同会社の組織 株主総会(最高意思決定機関) 取締役会(注 4) (経営意思決定機関) 監査役 (監督機関) 社長(執行) 副社長以下その他のオフィサー (執行) 監 督 社員総会 (意思決定) 執行役員(会) (経営意思決定と執行)

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3. 会社設立の手順 ここでは一般業種の株式会社を例にとって、その設立手続きの手順を解説し、また会社 立ち上げに必要なその他の各種手続きの概要を紹介する。 なお、メキシコにおいて会社設立は一種の契約行為だが、方式としては公正証書にする 必要がある。すなわち公証人に依頼して会社設立契約を内容とする公正証書を作成しても らい、公証人立会いの下で当事者(発起人株主)がそれに署名し、同様に公証人も署名す る。法的にはこれにより会社が成立、すなわち誕生する(「商法上の会社設立」)。 また、会社設立は登記が対抗要件であるから、会社設立公正証書の謄本を使用し商業登 記を行う。

さらに、会社は「連邦納税者登録(Registro Federal de Contribuyentes : RFC)がなけ れば行政手続きを含む対外行為が原則として一切執り行えない制度となっており、RFC を取 得することも不可欠である。 これらは会社設立手続きの重要な要素であり、その法的確証である「会社設立公正証書 謄本(商業登記の証明書付き)」並びに「RFC 登録証」の 2 つの書類は、会社の設立を証明 する上で欠かせない最重要書類であって、会社の ID の役割を持つ。なお、商業登記の証明 書は後述のとおり会社設立公正証書の謄本に添付される。 会社設立手続きの項目と流れを図式化すると図 3 のようになる。手続きは矢印の向きに 進展する。横並びで記載する手続きは同時並行で実施することが可能である。 図 3.会社設立の基礎的手続チャート (1) 定款及び創立総会 決議事項準備 (2) 経済省 社名使用許可取得 (3) 次(4)の署名代行者宛 委任状公正証書作成 (4) 商法上の会社設立(会社設立公正証書の署名) (5) 連邦納税者登録 (RFC)取得 (6) 商業登記 (7) 経済省 外国投資登録 (8) 各種帳簿の手配、 株券発行 - - - ( (9) そ の 他 )

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4. 各手続きの概要 図 3 のチャートを構成する各手続きの概要は以下の通りである。 (1)定款及び創立総会決議事項の準備 図 3 のチャートの(4)商法上の会社設立を公証人に依頼するに際しては、後述の(2) 及び(3)と併せて、会社設立公正証書の中核を成す定款(Estatutos Sociales)のドラフ ト、並びに会社設立当初の資本構成や役員構成、オフィサーの代表権などの創立総会決議 事項(Acuerdos de la Asamblea Constitutiva)を確定し、公証人に提出する必要がある。 ア.定款 定款では以下の事項を扱う。 a. 商号(社名)と会社形態 b. 事業目的 c. 存続期間 2011 年の会社法改正以降は、「無期限」とするのが一般的。 d. 本店所在地(Domicilio Social) 市単位で指定。RFC 取得時に登録する税務上住所(Domicilio Fiscal)と分けて考える必 要がある。 e. 国籍およびびいわゆるカルボ条項 会社の国籍はメキシコになる。カルボ条項とは、新会社の設立や既存会社への資本参入 との関係において外国人排除条項を設けない会社、すなわち外資参入を認める会社につい て、定款に盛り込むことが一律義務付けられている条項を指す。主旨は、同条項を受け入 れた会社の外国人株主等は、その出資及び同出資から派生する権利一切に関して内国民と 同等の扱いを受けること、並びにそれに関して自国政府の保護を求めないこと、そしてこ れに違反した場合には当該権利等をメキシコ国に没収されることに同意するというもの。 f. 資本金額、出資方法、増減資の方式、株式・株券の取扱い、およびその登録のルール等 資本金額については、かつては株式会社 5 万メキシコペソ、合同会社 3 千メキシコペソ の法定最低資本金が存在したが、2011 年 12 月の会社法改正で法定最低資本金は廃止された。 可変資本制採用の場合には最低固定資本を定款に定める必要がある。

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g. 株主総会関連事項(成立要件、議決要件等) 株主総会は通常株主総会と特別株主総会の 2 種類を置く。ここにいう「通常(Ordinaria)」 と「特別(Extraordinaria)」は、株主総会の開催時期によって区別されるのではなく、取 り扱い事項による。端的にいえば、定款の改定を伴う事項、または特別な定足数を要する 事項を扱うものが特別株主総会であり、その他の事項(決算の承認、役員変更、代表権の 授権・撤回、可変資本の増減等)は通常株主総会で扱う。 h. 会社の経営形態と経営機関(役員構成、選任方法、任期、権限等) 株式会社の経営機関は取締役会(Consejo de Administración)であるが、独任制、すな わち一人の取締役に全権を委ねる唯一代表取締役(Administrador Único)による経営も認 められている。 取締役会を置く場合の取締役の役職名として、筆頭は議長(Presidente)であり、これ は必須である。これ以下の取締役の役職名は任意だが、次席を秘書役(Secretario)とす るのが一般的である。役職名を付けない取締役は単に取締役(Vocal)と称する。なお、前 記 2 役職の英語訳「President」、「Secretary」は、米国ではオフィサー(執行役員)の役 職名として使用されることから混同が生じることがある。メキシコの習慣上、これらの役 職名はあくまでも取締役の取締役会内での役職名として使うものであって、オフィサーの 役職名とすることは稀である。なお取締役の人数に関し法律上制限はない。 メキシコ進出日本企業現地法人の多くは、既述の便宜から株式会社形態を採用している が、制度上それに付随する事項として取締役会を置くことが一般的となってはいる。しか し、それら現地法人の実質的機能は支店のそれである場合が多く、そのような現地法人に おいて経営意思は、親会社より直接に現地法人責任者に伝えられ同人による執行に反映さ れる体制である。一方で昨今の日本企業(とりわけ上場企業)のコーポレート・ガバナン ス強化の流れを受けて、メキシコ現地法人の経営にもそれを適用せんと、取締役会運営ル ールの厳格化・複雑化を推進する動きが親会社サイドに目立ってきている。これは親会社 としてはそれなりの必要に迫られてのことであろうが、メキシコ現地法人の実質的機能が 既述の支店のそれである場合に限っては、取締役会関連ルールの厳格化・複雑化は社内執 行プロセスの遅延の原因となるばかりでどれほどの意義があるのか疑問の生じるところで ある。 i. 監督機関 株式会社の場合、監督機関としての(社内)監査役(Comisario)を置くことが必須であ る。 なお、法定の欠格事由は以下の通りである。 (i)商行為について行為能力を欠く者。 (ii)会社の使用人(従業員)、又は会社資本金の 25%を超過して資本参加している株主

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(いわゆる親会社等)の使用人、会社が資本金の 50%を超過して資本参加している他の会 社(いわゆる子会社)の使用人。 (iii)会社取締役の血族の内直系の者については無制限、また傍系については四親等以 内の者、二親等以内の姻族。 j. 会計年度、決算報告、損益処分、法定準備金 現在、メキシコの(通常)会計年度は、商法上も税法上も一律 1 月 1 日開始 12 月 31 日 終了である。 k. 解散・清算に関する事項(会社清算手続は第Ⅶ章を参照のこと) イ.創立総会決議事項 創立総会決議事項は以下のとおりである。 a. 設立当事者(発起人)の名称または氏名、その代表者または代理人の氏名 メキシコでは株式会社の場合、会社株主が最低二名いることが会社設立・維持の要件で ある。 b. 会社設立当初の資本金額、その構成、各株主の引受け・払込み状況 c. 第一会計年度(会社設立日が元旦でなければ特別会計年度となる) d. 経営機関(取締役)の任命とその権限内容 e. 監督機関(監査役)の任命 f. 執行機関(社長以下のオフィサー)の任命並びに代表権授権 執行機関は、株主総会と取締役会の決議(または意思)に従い、会社の業務を執行する。 執行機関職は取締役職との兼任が可能。メキシコでは日本でいう「代表取締役」という考 え方は存在せず、兼任は可能であっても経営機関(取締役会とその構成員たる取締役)と 執行機関(日常において代表権を行使する社長以下のオフィサー)は分けて捉える制度で ある。

執行機関の役職名としては、社長(Director General)、副社長(Subdirector General)、 財 務 部 長 (Director de Finanzas) 、 総 務 部 長 (Director de Administración) 、 工 場 長 (Director de Planta)などが一般的である。また下級オフィサーの役職名に支配人を意味 する「Gerente」や、さらに下級のオフィサーにはチーフを意味する「Jefe」といった用語

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を使用することもある。 執行機関は、日々の業務を執り行う上で然るべき内容と範囲の権限を有していることを 要する。日本の株式会社制度では、代表取締役の任命を受けた者は、法令の規定によって 会社の総括的代表権(裁判上、裁判外の一切の代表行為を行う権限)を付与される仕組み であって、任命時に有すべき権限の全項目を具体的に根拠法規まで含めて明記するような 制度・実務習慣ではないが、メキシコではそれが要求される点、注意を要する。例えば「全 権」に相当する権限を有すオフィサーの場合であれば、下記のように大別して 2 種類ある 複数の権限(一定カテゴリーの範囲で不特定多数の行為を行うことができる、いわゆる「総 括的代表権」)を付与しなければならない。 1つは一般的権限と称される権限のグループであり、これには「財産処分権」「経営管理権」 「訴訟取立て権」の 3 つのカテゴリーがあり、これら全てが揃って完全な「全権」となる。し かし 1 つ目の「財産処分権」は日常的会社経営において使用することは稀である上、会社の 重要な資産の処分権を含むため極めてデリケートなものであるから、社長に対してさえ授 権せずに「経営管理権」と「訴訟取立て権」の 2 つのみで済ます会社が少なくない。 もう 1 つのグループは、特別委任または特別条項を要する総括的代表権であり、すなわ ち、執行権を与える行為の類型とその根拠法規を具体的に言明する形での付与が要求され る。これに当たるのは、一部の訴訟行為(訴えの取下、裁判官の忌避、和解、裁判におけ る自白・尋問等)、第三者への代表権授権並びにその撤回、小切手等有価証券の取り扱い等 である。 ウ.定款と創立総会決議事項準備作業の所要時間 ア.定款とイ.創立総会決議事項の準備作業に要する時間は、設立当事者の都合によっ て差異が生じ得るが、実務経験豊かな弁護士等専門家が提供するひな型に基づく作業の場 合で、人事決定等が迅速に行われるということであれば 2 週間程度で済む。 (2)経済省社名使用許可取得 設立する会社の商号(社名)の使用について、経済省から事前認可を得る必要がある。 使用を希望する社名について事前調査を行い、認可の可能性を確認した上で、正式な申請 を行う。 申請の審理においては、当該使用希望社名全体と同一か、または相当程度に類似する既 存社名の存否、または同社名に含まれる固有名称部分(例えば「JETRO」)の社名としての 使用前例が存在するか否か、更には同固有名称からなる登録商標の存否も審査される。使 用前例が皆無であり、且つ商標権侵害の疑いもない場合、申請提出より 1〜2 日で許可を取 得することができる。しかし、同一または類似社名の存在、商標権侵害の疑い等の理由で 手続きが複雑化した場合には、多くの手続き時間が必要となる。

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(3)会社設立公正証書署名代行者宛委任状公正証書の作成 図 3 のチャート(4)の商法上の会社設立(会社設立公正証書署名)の代行をメキシコの 弁護士等に委任するための書類。公正証書とする必要がある。 会社設立当事者が、外国の会社である場合には不可欠な手続である一方、自然人につい ては当事者本人が公証人の面前に出頭し、図 3 のチャート(4)会社設立公正証書への署名 を実行できる場合は不要である。 ア.日本での手続き(法人) 在京メキシコ大使館領事部に作成を依頼する。会社の商業登記現在事項全部証明書や定 款にアポスティーユ(注5)等の証明書類及びスペイン語訳を付したものを提出書類として 準備する必要があるため、準備開始から成果物(委任状公正証書の謄本)を受け取れるま で 2 ヶ月程度を所要時間として考慮する必要がある。 イ.米国での手続き(法人) 米国での手続きも、既述の要領でメキシコ在外公館(大使館または領事館)に依頼する ことが好ましいが、手続きを受け付けないことがあるため、その場合には米国の公証人に 依頼することになる。所要時間は経験的に大きな差異があり予想が難しい。 ウ.自然人の手続 自然人についての手続きは極めて簡単である。メキシコの在外公館、現地(日本または 米国)の公証人、あるいはメキシコの公証人のいずれに依頼しても問題なく手続できる。 準備期間を含め 1〜2 週間を考慮すれば充分である。 (注 5)アポスティーユ証明とは、公文書の(それが然るべき権限を持つ政府機関によっ て発給されたものであるという意味での)有効性を第三国の政府等に対して証明するため の手段として、取得に手間と時間のかかる領事査証に代えて、当該公文書の発行された国 の当該政府機関が発給する証明(「アポスティーユ証明」)があれば充分とすることを当該 条約(1961年ヘーグ条約)加盟国間で相互に認め合う制度、並びにこの制度に則って発給 される証明を意味する。日、米、墨三国はいずれも締約国であるから同三国間では有効。 なお、当該公文書の記載内容を証明するものではないため、スペイン語訳は別途手配しな ければならない。日本の公文書(例えば、会社の商業登記現在事項全部証明書、公証人の 資格証明書、戸籍謄本等)の場合、アポスティーユ証明発給は外務省が行っている。米国 では当該州の内務省(Secretary of the State)が発給する。

(4)商法上の会社設立(会社設立公正証書の署名)

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の提出を受けた後、会社設立(契約)の合法性や当事者の資格といった必要事項を審査し て問題がないと判断した場合は、それらを盛り込んだ会社設立公正証書 (Escritura Constitutiva)原本を作成し、当事者に署名させた上で、公証人本人も署名を行う。これ によって会社設立契約(Contrato Social)の締結が然るべき方式において実行されたこと になり、法律上会社が誕生する。公正証書原本は公証人が保管する制度であり、行為当事 者(株主)には謄本(Testimonio)が証拠として発給される。 会社設立公正証書の署名によって会社が誕生した後の手続きは全て新しい会社名で、か つ然るべき権限を有す代表者を介して行わなければならない。また税務申告義務も原則は 会社設立の時点から生じる。 然るべく準備作業を行った上で公証人への依頼を起こした場合、通常、必要書類提出の 1 週間から 1 週間半で公正証書署名を実行でき、それから数日内には謄本を受け取ることが できる。 (5)連邦納税者登録(RFC)の取得 連邦納税者登録(RFC)は、日本で 2016 年より使用が開始された通称マイナンバー制度 に相当。本来は税籍登録に過ぎないが、かつてより同登録によって国税庁(SAT)から付与 される番号(RFC 番号)が、会社の背番号の役割を果しており、この登録なくしては、各種 行政手続きや銀行口座の開設、正規インボイスの発行等を行うことができない。また、そ のような事情から、登録時に指定する税務上住所(Domicilio Fiscal)は国税庁のみなら ず、原則としてあらゆるメキシコ政府当局、第三者に対して会社の正規住所として使用さ れるため、正確に記載する必要がある。 現行制度において、新会社の RFC 登録は、会社設立公正証書作成を担当した公証人に依 頼して、そのオンラインシステムを通じて手続きする。この方法によれば、通常は会社設 立公正証書署名の当日またはその翌日には登録証を取得できる。 なお、RFC 手続き時には、業態・経営形態に応じて、会社が負う税務上の義務の項目を特 定しなければならない。 (6)商業登記 契約としての会社設立は既述の通り会社設立公正証書の署名によって成立するが、それ が当事者間で有効になるばかりでなく、第三者に対しても万全な効力を持つようにするに は商業登記が必要である。登記を欠く会社は不規則な会社と看做され、例えば、商業登記 のない会社では株主の有限責任は第三者に対抗することができない、すなわちそのような 効果は生じないから、株主は無限責任を負わされることになる。 商業登記は会社の本店所在地(Domicilio Social)に該当する登記所で会社設立公正証 書の謄本を使用して手続きする。手続き完了後、申請者には会社設立公正証書謄本に登記 証明の公文書を付したものが返却される。これは手続き地によっては完了に相当な期間(数

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ヶ月)を要することもあるため、商業登記証明の提出(または提示)を要件とする各種手続 きにおいては多くの場合、登記「申請」の確証の提出、または提示をもって充分とする実 務習慣である。この登記申請の確証については、会社設立公正証書の謄本受領日より 1 週 間半から 2 週間で入手可能である。 (7)経済省外国投資登録 外国資本の参入する会社は一律、外資法並びに同法施行規則の定めるところに従い、外資 参入日より 40 営業日以内に外国投資登録(通称「外資登録」)を取得し、以降は四半期報 告および年次報告提出によって登録を維持しなければならない。経済省外資局が所轄庁で ある。外資登録を有しない外資会社は、原則として各種法律行為を有効に実行することが できない。 (8)各種帳簿の手配、株券発行 会社には会社組織に係る帳簿として、株主総会議事録簿、取締役会会合議事録簿、株式 登録簿、また可変資本会社であれば資本金増減登録簿を備え置かなければならない。また 株式会社は法定要件を充たす株券を発行する。現行法制において株券は一律、記名式とし なければならない。 (9)その他の主な手続き 現地法人の設立・立ち上げにおいて、上記の基礎的手続き以外に実行すべき手続きの主 なものを以下に掲げる。なお、これらの一部はあらゆる会社にとって必須であるが、それ 以外は各社の業種・業態、経営方針に応じてその要否を判断する。またこれらの手続きは、 図 3 のチャートに示す通り、(5)RFC 取得、並びに(6)商業登記の申請または完了の後に 実行するものが多いが 例外もあるため、それぞれの実施のタイミングも要確認・検討事項 である。 ア.社屋関係 a. オフィス・倉庫・工場の賃貸借等契約 b. 工場用地買収 c. その他:信託契約、建設許可取得、建設工事契約、土地・社屋の取得・使用に関する各 種許認可類(開設通知、消防関係、衛生関係、環境アセスメント等)、地租 納付、災害保険契約等

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イ.会計・税務関係

a. FIEL/(通称)CIEC 取得(注 6) b. 連邦税申告開始

c. 地方税納税者登録、および申告納付開始

(注6)FIEL とは Firma Electrónica Avanzada の略語で対国税庁重要手続きで使用する電 子署名を意味する。一方、通称 CIEC は、連邦税の申告実務等を国税庁のポータルで処理す る際に求められるパスワードであり、現在のものはこのように呼称されたものとは若干異 なり、正式には単に Contraseña(パスワード)と称されるが、習慣上は CIEC の呼称も根強 く残っている。 ウ.会社資本金関係 a. 銀行口座開設契約 b. インターネットバンキングサービス等契約 c. 増資手続き・株式譲渡、等 エ.日本人出向者等、外国人スタッフの在留許可(在留許可手続きに関しては第Ⅵ章を参 照のこと) a. 国家移住庁(INAMI)雇用主登録 b. 各スタッフの在留許可取得:通称「インテルナシオン」、等 オ.労務関係 a. 労働契約(個人) b. 労働協約(組合) c. 社内就業規則および職能訓練、安全・衛生、勤続年数管理、PTU の各テーマに係る 5 つの労使委員会の設置、並びに必要に応じ当該プログラム等の制定・登録 d. 労働者消費推進保証基金(INFONACOT)登録、等 カ.社会保障関係 社会保険庁(IMSS)使用者及び被用者登録 キ.通関関係、輸入税に係る優遇措置 a. 輸入業者登録 b. 通関士登録 c. 通関代理店の選定および契約 d. IMMEX/PROSEC/レグラ・オクターバ/IMMEX 認定取得

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e. 輸入在庫管理システムの構築 f. 認定企業登録(AEO・準 AEO)取得 g. RFE(戦略的保税地域)ユーザー認可取得、等 ク.外国人出向者本人の手続き a. CURP b. RFC/FIEL c. AFORE 契約 d. 家財道具の輸入通関 e. 個人名義の銀行口座開設 f. 自動車運転免許証取得 g. 住居の賃貸借契約、等 ケ.契約関係 a. 専門家:法律事務所、会計事務所、監査法人等 b. 各種サービス:電気、水道、ガス、インターネット、警備、クーリエ、清掃、倉庫・運 輸、給食等 c. 事業関連:代理店契約、フランチャイズ契約、技術援助契約、人材派遣契約、産業財産 権(特許・商標等)使用許諾等契約、金銭消費貸借契約、等 コ.個人情報保護制度関係(対経済省) 適正な情報管理システムの構築、および「プライベート通告(Aviso de Privacidad)」 の実施等 サ.マネーロンダリング防止関係(対大蔵省) マネーロンダリングに対して脆弱な営業行為の対象顧客等の特定業務、並びに通知義務 の履行等 シ.経済競争法関係 a. 一定規模・類型の企業結合に関する事前認可取得(概要を後述) b. 競争者間情報交換に伴う法律違反リスク回避のための管理システム構築 ス.その他 企業ダイレクトリ(SIEM)登録、対 INEGI 企業情報提供、産業財産権 (特に商標、著作 権)関係手続き、通信・厚生・運輸・国防・環境等特殊分野の許認可類

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Ⅲ.外国会社の支店・駐在員事務所の開設

メキシコでは外国会社の支店・駐在員事務所の開設も認められている。一般業種の場合、 そのための手続きの主要根拠法は、会社法、及び外資法、商法、連邦民法である。 1. 現地法人と支店・駐在員事務所の相違 メキシコに進出しようとする外国会社がメキシコでの活動の礎として組織し得る法的受 け皿には大別して、現地法人といわゆる支店・駐在員事務所の二つがあり、どちらも法定 要件を充たす形で設立または開設され、必要許認可類を具備すれば、原則は問題なくメキ シコでの活動を展開することができる。 しかしこれら二者には以下のような決定的な相違がある。まず、現地法人がその親会社 とは独立した法人格を有す別法人であるのに対して、支店・駐在員事務所は法人格につい ては親会社と同一である。この差は親会社の責任の範囲に如実に現れる。例えば外国会社 である A 社がメキシコにその子会社として株式会社(有限責任の会社)形態の現地法人を 有する場合、同メキシコ子会社の活動に関して生じる外国会社 A 社の責任は、その株主と しての出資(額)を限度とする。一方外国会社 A 社のメキシコにおける活動の受け皿が支 店または駐在員事務所である場合は、メキシコでの活動の主体は法律上同外国会社 A 社自 身であるから、メキシコで展開する活動一切に関し外国会社 A 社は無限責任を負うことに なる。 会社設立にあたっては、余程特殊な事情のない限り無限責任の会社形態が選択されるこ とがないことと同様、メキシコ進出に際して現地法人設立より支店・駐在員事務所開設が 好まれるケースは、特に活動範囲の広い支店の場合稀であるといえる。 次に、外資法上、外資参入現地法人に対しては概ね内国民待遇となっているのに対し、 支店・駐在員事務所の場合は、行為・登録登記主体は既述の通りあくまで外国会社自身、 すなわち外国人であることから、相対的に不利な差別待遇が避けられない。 さらに、メキシコでの裁判手続き(民・商・労等訴訟)において、裁判の相手にとって は、こちら(支店・駐在員事務所)の訴訟代理人の権限の無効を勝ち取れば、本案を争う までもなく勝訴に漕ぎ着けることから、相手の訴訟戦略上真っ先に攻撃の対象にされる事 項の 1 つが代表権(証書)の有効性であることは注意を要する。外国会社の支店・駐在員 事務所の場合、後述のとおり、その訴訟代理人を含め会社代表者の権限の大元となる代表 権の授権は、当該本国において同国の法に則って行われるが、それが法律およびそれにま つわる文化、習慣ともメキシコとは著しく異なる日本のような国となれば、メキシコでの 使用に堪え得る代表権証書を作成すること自体、本来大変ハードルの高い作業なのである。 日本で作成された代表権証書も、係争絡みでない一般の行為・手続に使用する上ではさほ ど問題にならないが、裁判での使用を考えるととても万全とは云い難いものしか作り得て いないケースが目立つのが実情であり、これは、特に活動範囲が広く裁判に係る可能性が 相対的に高い支店の開設を検討するに際しては、必ず考慮すべきリスクである。なお、設

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立の段階から会社代表権を含めすべての事項がメキシコ法に基づき執り行われる現地法人 についてこのような事は起こらない。 最後に、日本または米国の会社の支店・駐在員事務所の場合、本来身軽なはずの駐在員 事務所でさえ、その社会一般における認知度の低さ故に、後述のような手続上の障害が付 き纏うため、進出形態としての採用にはかなりの割り切りが必要である。 2. 支店と駐在員事務所の主な相違 支店と駐在員事務所は、実は日墨それぞれの法制上明確な定義が確立されているかとい えば甚だ疑問である。少なくともメキシコの場合、一部の特殊業種(金融、保険等)を除 いては、我々が普通認識するような概念でこれら二つを明確に区別して定義し、それぞれ の開設や運営のルールを規定するような制度にはなっていない。そこで日本的通念に基づ く誤解を避けるためにも、本稿では外資法の分類に従い「メキシコにおいて常態で商行為を 営むかを否か」を基準として、それを営む活動拠点を「支店= Sucursal」とし、そうでないも のを「駐在員事務所= Oficina de Representación」と認識することとする。なお、例えば実 施期間が 183 日を超過する建設工事の監理業務について起こるように、税法の規定によっ て所謂、恒久施設(Establecimiento Permanente = 通称「PE」)が存在すると看做される が故に、当該外国企業がメキシコで取得しなければならないステータスは、ここにいう支 店である。

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3. 支店または駐在員事務所開設の手順 ここでは、日本、または米国の会社のメキシコ支店または駐在員事務所開設に係る一連 の手続きを概説する。同手続きの流れは以下のチャートに示す通りである。 図 4.支店・駐在員事務所の開設手続のチャート 4. 各手続の概要 (1)支店長または駐在員事務所長および弁護士等宛代表権授権公正証書作成、登記用定款 の準備 支店または駐在員事務所開設の第 1 歩は、開設手続きおよび開設後の経営・管理を誰に 委ねるかを本国のルールに則り決定した上で、その者に対してその目的に適う内容の権限 (総括的代表権)を授権するための公正証書を作成することである。これは、当該外国会 社の所在する土地を管轄するメキシコの在外公館に作成を依頼する。 なお、米国での手続きの場合でもメキシコの在外公館に依頼するのが好ましいが、これ に代えて現地の公証人に依頼するオプションも存在する。 ここで支店長等のメキシコでの代表者に授権する総括的代表権は、その行使の目的を「支 店(または駐在員事務所)の開設及び運営」に限定するのが一般的である。 また、当該外国会社がメキシコにおいて常態で商行為を営むか否か(即ち、支店/駐在員 事務所の別)を言明することは必須である。同時に、開設手続の代行を委ねる弁護士等の 専門家に対して委託業務の内容に応じた総括的代表権を授権する。 前記の代表権授権公正証書と並んで手配が不可欠な書類に「登記用定款」がある。外国 会社はその定款を商業登記所に登記した時点から合法的にメキシコで活動することができ (1) 支店長または駐在員事務所長、及び弁護士等宛 代表権授権公正証書及び、登記用定款準備 (2) 対経済省外資局、支店・駐在員事務所開設通知 (3) 上記(1)及び(2)の編纂 (5) 連邦納税者登録 (RFC)取得 (6)外資登録 (支店のみ) (4) 商業登記 - - - ( (7) そ の 他 )

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るルールなので、登記用定款を正しく手配することが極めて重要である。具体的には、ア ポスティーユ証明等の証明書類取得に加え、メキシコの公認翻訳士によるスペイン語訳を 作成する。 このステップの所要時間としては、手続き地によって差があるものの最低 2 ヶ月は考慮 すべきである。 (2)対経済省外資局、支店・駐在員事務所開設通知 外国の会社がメキシコで活動するには、商業登記手続に先立って、メキシコ経済省より 支店または駐在員事務所開設許可を得るのが原則である。 しかし、2012 年 8 月に連邦官報で公示された経済省決定により、米国、カナダ、チリ、 コスタリカ、コロンビア、ニカラグア、エルサルバドル、グアテマラ、ホンジュラス、ウ ルグアイ、日本、ペルーのいずれかの法律に則って設立された会社は、前記開設許可取得 義務を免除され、これに代えて同経済省決定に基づく通知手続さえ踏めば事が済むことに なった。 このステップは、前記(1)で作成した書類に基づき、開設通知書簡を作成し代表者が署 名した上で経済省に提出。その写しに受領印を得ることで完了する。(1)の書類が万全で あれば提出書簡の準備を含め 1 週間程度での完了が可能。 日本または米国の会社は、右新ルールによって、この対経済省手続ステップの所要時間 がある程度節約できるようになった。 (3)上記(1)及び(2)の編纂 ここでは、支店・駐在員事務所開設という行為を公正証書化するのではなく、単に、当 地公証人に依頼し図 4 のチャート(1)公正証書と(2)開設通知の確証を 1 つの公正証書 に編纂してもらうに過ぎない。法律上義務付けられている手続ではないが,実務上は現地 法人の「会社設立公正証書」に相当する、支店または駐在員事務所の合法的開設を証明す る証書として極めて重要にして有用である。作業時間は 1週間程度。 (4)商業登記 メキシコにおいて常態で商行為を営む活動拠点である支店は、商業登記がなければ合法 的に商行為を行うことができない。一方、駐在員事務所の場合、法律上、登記の要否は議 論の分かれるところである。しかし実務上は支店同様必須である。 また、法律上登記の対象は当該外国会社の定款のみとされるが、実務上は上記(3)で編纂 した公正証書の謄本を用いて本件登記を実行することで、同時に会社代表者とその代表権 の登記を得る。

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(5)RFC の取得 支店・駐在員事務所にとっても RFC の取得は大変重要である。任意の税務署に予約を入 れた上で代表者自らが出頭し取得手続きを実行する必要がある。 また、税務署との予約もほんの数日内に取れる場合と 2〜3 週間待たねばならない場合と があり、不確定要素となっている。 (6)外資登録 支店の場合に限り外資登録を行う。 (7)その他の主な手続き 図 4 のチャートの(1)から(6)までの手続き完了の後、その他の手続きを執り行う。 手続の具体的項目は、本稿のⅡ.4.(9)ア~シと基本的には同じであるから割愛するが、 支店・駐在員事務所のステータスでは取得できない許認可類が存在することは注意を要す る。当地への進出形態を検討する際に精査すべきポイントである。

Ⅳ. 不動産の取得

不動産取得の主な法的根拠は、憲法第 27 条と民法の関連条文だが、外資の参加するメ キシコ法人や外国人(自然人および法人)によるメキシコ国内での不動産取得に関しては、 これらの法令に加えて外資法、およびその施行規則の関連諸規定を考慮しなければならな い。なお、外国会社の支店・駐在員事務所は法人格が親会社と同一なので、不動産取得に 関しても外国人として扱われる。 1. 規制地帯 国家安全保障の見地から、国境沿いの幅 100 キロメートルの地帯、および海岸線沿いの 幅 50 キロメートルの地帯における外国人の不動産の購入は憲法により禁止されている。こ の地帯は外資法によって規制地帯(Zona Restringida)として定義されている。 国立統計地理情報院(INEGI)は、区画の一部が規制地帯にかかる市町村、および全てが規 制地帯に入る市町村を随時見直して不定期に公表している。 2. 外国人による不動産取得 外国人は規制地帯外の不動産を取得することができる。この場合、事前に外務省の許可を 得なければならず、またその際、取得する不動産に関してカルボ条項を受け入れることが 求められる。 外務省による許可は、申請受理から 5 営業日以内に同省が申請棄却を官報に公告しない

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場合には許可されたと看做される。なお、一部の規制地帯の市町村にかかる不動産の購入 については、外務省は 30 営業日以内に許可を付与するか否かの裁決を下す。 なお、前述のとおり、外国人は規制地帯内の不動産に関しては所有権を取得できないも のの、信託(Fideicomiso)の活用によって当該不動産を利用する権利を得ることができる。 これには外務省の事前許可を要する。ここで言う信託とは、受託者が、委託者(外国人)より 支払いを受けた金員を用いて不動産を購入し、委託者自身を受益者として、その利用を享 有させることを目的とする信託を指す。受託者は受託銀行である。 3. メキシコ法人による不動産取得 メキシコの法人による不動産取得については以下のとおりである。 (1)外国人排除条項を有するメキシコ法人 規制地帯を含め、全ての地域において不動産の所有権を取得できる。 (2)外資参入を認めるメキシコ法人 ア.規制地帯外 規制地帯外においては不動産の所有権を取得できる。 イ.規制地帯内 a. 居住以外の活動を目的とする場合は、規制地帯内でも不動産を購入することが可能 だが、購入後 60 営業日以内に外務省に届出を行わなければならない。 b. 居住を目的とする場合、規制地帯内において不動産の所有権を取得できないが、外 務省の事前の許可を得て信託契約に基づき当該不動産を利用することができる。 4. 不動産取得の手順 不動産の取得は以下の手順で行うのが一般的である。 (1)物件の選定 規制地帯のルールを考慮の上、物件を選定する。 (2)所有者との交渉、及び予約の締結 選定した物件について所有者(売主)と売買条件を交渉した後、売買本契約に先立って予 約を締結する。 予約は、目的物(対象物件)について一定期限内に売買契約を締結することを約定するの が目的であるため、本契約に係る情報を全て盛り込む必要がある。例えば契 約 当 事 者 ( 売

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主、買主)の情報、目的物の情報、価額と代金の支払い方法、手付の有無とその扱い、目的 物引渡しの時期などである。なお、工場用地の買収で売主負担のインフラ工事を含めた契 約とする場合、工事の質や納期の不履行が起こることも少なからずあるため、予約に罰則 条項を設けることは極めて有効である。 なお、予約締結に先立って土地の地目証明書(Uso de Suelo)を確認することが不可欠であ る。例えば、地目が住宅地である土地を工場用地として買収しても工場の建設は認められ ない。 整備の行き届いた工業団地内の工場・倉庫用地買収や住居用不動産の購入においては、 上記の予約に代えていわゆるレター・オブ・インテント(LOI)の締結で済 ま せ る 場 合 も あ る。これは習慣上、予約ほど厳格に当事者の権利義務を規定し得ない簡単な形式であるた め法的効力は相対的に低いが、簡便性に優れる。 (3)公証人の選定 予約締結後、売買本契約(売買契約公正証書)の作成を依頼する公証人を選定する。不動 産売買契約は、公正証書(Escritura Pública de Compraventa Definitiva)にする必要があ る。 (4)公証人による調査、並びに公正証書の準備 不動産売買契約の公正証書化を引き受けた公証人は、目的物に関する調査(不動産登記の 状況、地籍登録の状態、担保の有無、地租の支払い状況、地籍上の査定額等)を実施する。 また契約当事者の資格、契約諸条件の有効性を審査の上、問題がなければ公正証書を作成 する。 (5)当事者による売買契約公正証書の署名 契約当事者は、公証人から指定を受けた期日に売買契約公正証書に署名する。その際、 買主は約定内容に従って代金(手付金支払いがあれば残額)を支払う。また、手続き費用を 公証人に支払う。手続き費用は、公証人手数料、不動産登記・地籍登録関連政府手数料、 不動産取得税、査定費用等からなる。通常は物件代金の 3~8%が支払い合計額の目安である。 買主負担とするのが一般的。 不動産取得税は地方税で、当該不動産の取引額と査定額の内、高額な方の 2%程度が目安で ある。しかし州によっては投資インセンティブとして減免措置があるため事前確認を要す る。地租納付義務は原則、この公正証書署名の日より買主(新所有者)に移転する。 (6)登記 登記は不動産売買契約の対抗要件であるから手続きが不可欠である。売買公正証書署名 の後、通常は同じ公証人が当該公正証書の謄本を用いて不動産登記を執り行う。登記完了

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後、その証明書の付された売買契約公正証書謄本が買主に渡される。買主にとってはこれ が当該不動産の権利書となる。同時に公証人は地籍登録に関わる手続きを行う。会社設立 公正証書の場合と同様、売買契約公正証書の原本は公証人が保管する制度である。

Ⅴ. 企業結合審査手続き

メキシコでの会社設立、企業買収や他社との合併に際しては、いわゆる独占禁止法分野 の規制に配慮する必要がある。基本法は、憲法第 28 条、並びにその施行法としての連邦経 済競争法(Ley Federal de Competencia Económica、以下「経済競争法」という)である。 同法に基づくメキシコの経済競争法制は、欧米のそれをモデルとしたものであり、規制 の対象項目、内容、手法など欧米のものに類似すると言える。またメキシコは、その連邦 経済競争委員会(Comisión Federal de Competencia Económica、通称 COFECE、日本の公正 取引委員会に相当 )を介して ICN(国際競争ネットワーク)にも参加しており、この分野 での世界の潮流に合わせた制度の拡充が進められてきた。2014 年 5 月 23 日に既述の現行法 が公布され、同名の旧法との比較では規制色が一段と濃厚になり、また COFECE の機能強化 を目的とした組織改変と権能拡張が行われたのもその現れとして捉えることができる。 1. 企業結合の概念 経済競争法の規制対象の 1 つに企業結合(Concentración)がある。経済競争法によれば企 業結合とは、競合者、供給者、顧客等の事業者(Agente Económico)間で行われる、企業や 株式・持分、信託その他の資産の集中を招くような、合併、支配権取得等の行為を意味す る。そして同等、或いは類似するか本質的に関連する商品またはサービスの競争と自由な 市場参加を低迷させ、阻害し、または妨害する企業結合は違法と見做し、COFECE による調 査と制裁の対象とすると同法は規定する。 2. 企業結合の事前審査制度 企業結合に対する規制手段としては、事前審査制度が近年、世界標準になりつつあると 言えるが、メキシコでは現行の経済競争法によって厳格な制度が確立された。具体的には、 経済競争法第 86 条の規定する三類型に該当する企業結合は、原則として(注 1)実行に先 立って COFECE の認可を得なければならない。このルールに反する行為は、法的効力を有さ ない上に、これらに関与した事業者、並びに公証人に対しては、行政上、民事上、刑事上 の責任追及が為されることとなる(同 86 条)。また同条文は、当該 COFECE 認可取得以前、 もしくは経済競争法の定める審査期限満了までは、当該事前審査対象企業結合に係る法律 行為を会社帳簿に記帳し、公正証書化し、または商業登記に登記することを禁じている。

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(注 1)経済競争法第 93 条は、同一企業グループ内での資本再編など、同法第 86 条の類型 に該当する企業結合ではあっても、COFECE の事前審査を免除されるケースを複数規 定している。 COFECE による事前審査対象である企業結合の類型は以下の通りである。 (1) その契約地とは無関係に、メキシコでの価額規模が UMA(注 2)の 1,800 万倍相当 額を超過する企業結合。それが単一の行為によるものか連続する複数の行為による ものかを問わない。 (2) そのメキシコにおける年間売上高、またはメキシコにおける資産額のいずれかが UMA(注 2)の 1,800 万倍相当額を超過する事業者の資産、または株式の 35%以上の 集中を引き起こす企業結合。それが単一の行為によるものか連続する複数の行為に よるものかを問わない。 (3) 複数の事業者による企業結合であって、UMA(注 2)の 840 万倍相当額を超過する規 模の資産、または会社資本金の集中をメキシコ国内で引き起こすもの。ただし、当 該複数の事業者の単体または合計のメキシコでの年間売上高、もしくはメキシコで の資産が UMA の 4,800 万倍相当額を超過する場合に限る。また、それで単一の行為 によるものか連続する複数の行為によるものかは問わない。 (注 2)既述の経済競争法第 86 条に示される事前審査対象企業結合の金銭的規模は現在で も従前のまま「メキシコ連邦区の現行一般最低賃金一日分」の xx 倍との文面表記が 残っているが、これらの各種法定額(何らかの行為や取引の金銭的規模や過料、罰 金、制裁金類の価額等)の算定係数として最低賃金を使用することは、2016 年1月 27 日に連邦官報で公布された「最低賃金の非係数化に係る憲法関連条文改正に関す る法律」によって翌 1 月 28 日より廃止され、最低賃金に代わるものとして法定額算 定係数(Unidad de Medida y Actualización、通称 UMA)が制定された。そしてこ れは同日より前記改正法による読み替え規定が適用開始されたが、このことによっ て上記(1)~(3)のごとき記載となる。また同改正法では UMA には日額、月額、 および年額が設けられており、当該法改正時点以降 2016 年 2 月末日現在の価額(初 期額)は、法改正時点の最低賃金と同額の$73.04 ペソが日額、これの 30.4 倍が月 額、さらにその 12 倍が年額となっている。原則は日額 UMA であるため本稿で UMA と記す場合にも日額 UMA を意味する。

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Ⅵ.日本企業の出向者及び出張者の在留許可

メキシコでは 2012 年 11 月 9 日より、新しい在留許可手続き制度が開始された。新制度 では、在留資格の分類、各種手続きの要件や手順、在留許可証の体裁が大幅に変更された。 在留許可手続きにおける主務官庁は内務省外局の国家移住庁(Instituto Nacional de Migración、通称 INAMI または INM)である。

在留許可手続き制度の主な関連法令としては以下のものがある。 ・出入国管理法(Ley de Migración)

・出入国管理法施行規則(Reglamento de La Ley de Migración)

・入国査証発給ガイドライン(Lineamientos generales para la expedición de visas que emiten las Secretarías de Gobernación y de Relaciones Exteriores)

・在留許可手続きガイドライン(Lineamientos para trámites y procedimientos migratorios) ・在留許可証並びに国家移住庁宛手続き書式および統計用書式に関する通達(Circular referente a los Documentos Migratorios y los Formatos de Solicitud de Trámite y Estadísticos del Instituto Nacional de Migración)

・メキシコ外交法(Ley del Servicio Exterior Mexicano)

1. 日本人に該当しうる在留許可証(在留カード)の種類 日本人に該当しうる在留許可証は主に以下の 3 種類である。 (1)ビジターカード(Tarjeta de Visitante、通称 FMM) 空港のカウンターや機内で無料配布される FMM を使用して入国審査を経ることで与えら れる在留カード。該当する在留資格は就労許可なしのビジター。従って、報酬を得る活動 に従事してはならない。

FMM はスペイン語の「Forma Migratoria Múltiple」の略称であり、この「Múltiple」は 「マルチ=複合」の意味である。下記対象者のビジターカードとして使用される他、外国 人の出入国統計用紙としても使用されている。 <ビジターカードの主な日本人対象者> ① 在留期間が 180 日を超過しない出張者(メキシコで所得を得ない者) ② 在留期間が 180 日を超過しない旅行者 ③ Ⅵ.4.の(1)および(2)の査証(Visa)の発給を受けた後に入国する者(在留期間 30 日) ④ テンポラリーレジデントカード(TRT)取得目的で入国する帯同家族

参照

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