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民事判例研究一五  不動産所有権の取得時効と登記の要否(消極) 利用統計を見る

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民事判例研究一五  不動産所有権の取得時効と登

記の要否(消極)

著者

三和 一博

雑誌名

東洋法学

13

1

ページ

145-150

発行年

1969-09

URL

http://id.nii.ac.jp/1060/00006132/

Creative Commons : 表示 - 非営利 - 改変禁止 http://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/3.0/deed.ja

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民 事 判

例 研 究

一五 不動産所有権の取得時効と登記の要否︵消極︶        ︵噺鮪雌勝転鐙欄瀞驚騙慰離噺瀞牲副徽畢騰徽魏細殖蹄飾○骨︶判例時報五五五号六一頁  ︻事実図 ABCの三名が大正九年ごろ本件山林を共同で買受け、各自持分三分の一づつの共有地としていたが、右Aの共有持分 について、数次の家督相続が行われたのちに第三者、︵Y︶に譲渡され、勉方で時効取得が行われやはり第三者︵X︶に譲渡されて おり、かかる両者の関係が本件の問題である。すなわち、 一方で、 A︵昭和三年八月九日死亡︶←D︵昭和一五年九月七日死亡︶ ←E︵昭和一七年四月二五日死亡︶←Fと家督相続が行われ、 そして、Fが昭和四一年一〇月一欝本件持分をY︵筏告・被控訴人︶ に売渡し、同年一〇月四日右持分について家督相続登記をなしたうえ、 Yに対し所有権の移転登記手続をなし、現在Yが登記名義 人となっている。他方、Aの長男であるDは病弱でかつよそに出ていたため、Aの家業である製陶業を継がず、次男であるGがこ れを継いだ。そして、昭和初年ころより、Gを筆頭にX︵原告・控訴人︶ら五名が本件山林等を前記所有巻より賃借し、登り窯を 築いて製陶業を営み、世人はこれを﹁連中窯﹂あるいは﹁謹一窯﹂ ︵Gの名︶と呼んでおり、毎年大晦賑に右五名がG宅に寄り、 ﹁年貢﹂名下に地代を集め、これをGを通じてBCに納めAの持分に相当する地代はG自身が受取っていた。このような連中窯 は、昭和︷八年ころまでつづき、終戦前後より、Xが本件山林を、GおよびB・Cの持分承継人より賃借し、単独で製陶業を始め ていた。そして、紹和二六年三月心日にGより本件持分を買受け、その後前記登り窯の使用を廃止したが、現在にいたるまで占有 をつづけている。その間、右昭和四一年一〇月四臓に、本件持分に関し、Fの家督相続登記およびYへの所有権移転登記手続がな されるまで、なんらGおよびXの本件山林の占有に異議をなさなかった。  右のような事情の下で、Gは、昭和三年八月九日以降本件山林の本件持分を占有した結果、昭和二三年八月九購にこれを時効取 得し、Xが昭和二六年三月一βこれを買受けて所有者となった︵あるいは、 Xは、嗣β以降一〇年間その始め無過失で占有した結

    民事判例研究       

一四五

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    東洋法学       

一四六 果、昭和三六年三月一臼にこれを時効取得した︶として.XからYに対して所有権移転登記手続を請求したのが本件である。  第一審ではXの講求は認められなかったため控訴し、第二審において.原判決は取消され、Xの講求が認容された。  囲判濤瞬 ﹁1 本来、取得時効捌度は.長期間にわたる占有の継続を法的権利として保護すると共に、古い事実についての立証 の困難を救済する疑的で存在するものである。そうとすれば.占有の継続が長ければ長い程、保護されるべきである﹂.また、取 得時効の起算点・完成時点︵善意の時効取得者は.通常. これらを認識していないものと思われる︶および.真正の権利嚢の何人 たるかを探索することは無用のことであるといわなければならない。従って.旧所禽者から不動産を譲り受けた者がある場合に譲 鯵受けの時期が取得時効完成の前である場合と、以後である場合とを区別し.前者の場合には時効取得者は譲受人に対し登記なく して所有権の取得を主張でき、後奢の場合には登記なくして所有権の取得を主張でき欺いとする従来の理論は.︵1︶取得時効の起算 点・完成時点を探索している点.⑳時効完成と嗣時に.登記を要求することによって占有の効ガを弱めている点、鋤占有の始め善 意であったことを主張すると、第三嚢として登記なくしては所有権の取得を主張でぎないが.悪憲であったことを主張すると.登 記なくしてこれを主張できる場合が考えられる点.⑳取得時効完成前ならば﹁当事者﹂たるべぎ者が.取得時効完成以後であれば ﹁第三者しとなり.更に占有を時効取得に必要な期間、継続すると、右第累著が再び当事者に転化するという理論的に無理な点で. いずれも疑聞がある。  2 不動産のすべての物権変動が登記されることは、登記法上の理想ではあるが.民法は不動産物権変動のすべてを対抗間題と しているので捻ない。すなわち.登記に公信力を与え、       すべての不動産の物権変動につき登 記を基準としている外購の法綱と異なり.我が羅においては、意思表示による不動産の物権変動についてのみ対抗要件を要求して いるのであり.このことは民法一七六条と一七七条の位置関係からしても明らかである。右両条が別異の関係を規定するものであ るとの従来の解釈は.生前相続制度が廃止された今摂.その理論的基礎を失ったものというべきである。  3 これを要するに、照権利者およびその一般承継入は、不動産上の物権を、或る老によって時効取得された場合、幣、の時効期 聞の起算βに遡って絶対的無権利者となるのであゆ、これらの者から右物権を譲受け、 その移転登記手続を了しても. これは登記 原因を欠く、無効の登記という外はない。不動産上の物権の時効による取得者と、購権利者からの譲受人との聞には.何ら対抗間

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題を論ずべき余地はない。  して見れば、本件持分は、昭和二三年八月九藏を以って、Gが時効取得し.Xは厨人より、昭和二六年三月一鷺、買受けたもの であって、これを現在の登記名義人であるYに対し、何ら登記を要せず、主張し得るものである。﹂  ︻硬究︼ 一 時効取得と登記の要否についての従来の判例の態度は、周知のように、大正一四年の連合部判決︵獣燵 駈無羅糖眺胴訊飾︶において登記要求を宣言して以来、.︶の線にヲてっていわゆる判例理論なるものを形成し、 ほとんど確定 したかの観を呈している。このような判例理論よりすれば、本件事案のごとき時効取得者本人ないし同人より不動産 所有権を承継取得した者︵X︶は、時効完成後に従前よりの所有者から所有権を譲り受けた者︵Y︶に対しては﹁対抗関 係﹂︵裂鯨脚徽﹁第︶にあるから、時効取得の登記を具備しないかぎり、右の新譲受人︵Y︶には所有権の取得を対抗でき ないことになる。  かかる判例理論は、占有を基礎とする時効取得︵一蘇︶と公示制度の要請︵セ鮭︶との妥協をはかるものとして、一見巧妙 に思えるが、それにはいくつかの欠陥が存し、実際上も難点をもつだけでなく、理論上も問題の多いものである。ー この点で、今回の戦決の示す従来の判例理論に対する批判はきわめて明快である。  今回の判決は、従来の判例理論に対して、真向から反対し、その再検討を迫る下級審段階での先例として大いに価 値をもつものである。  二 右のような判例理論に対する批判が、学説を発展させたのであるが︵灘磁恥駅諏撚智旋昆挟翼蘇雌顛臓ト鰍雄醸︶、 それは 占有と登記のうちいずれにウェイトをかけるかという形であらわれているといえるが、その背後にはより深く時効制

   民事判例研究       一四七

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   東 洋法 学      輔四八 度の本質ないし機能についての理解の仕方に存しているといえる。そして、その点が、登記による公示要請といいな がら、意思主義の立場にたち.登記を対抗要件とするわが民法の制度からみて、どの範囲まで登記が要求せられるか という問題とかかわってくる。  三 判例理論は.時効取得者と時効完成後の譲受人との関係を、従来の所有者からのコ一重譲渡﹂の関係としてと らえるのである越、ほんらい二重譲渡の場合は.二重譲受人のいずれが先に譲撃受げようと.鋳転れとは関係なく﹁対 抗﹂関係を生じ.お互いに﹁第三考﹂の関係になるのであって、第三取得者の譲受が時効取得嚢の取得の先であれば      になウ.後であれば﹁第三巻﹂になるというのとはまったく異なるものである、判例が時効完成前の譲受 人を﹁第三者﹂ではなく﹁当事者﹂であるとするのは.第三巻制限説の原則からくるのではなく.時効取得が時効完 成時の所有者が誰であれこれに対して主張しうるという時効制度特有の性質の現われにすぎない、登記と関係なく占 有のみによって時効取得の可能なわが民法の時効制度の下では.もともと﹁対抗﹂問題を生ずる余地はありえないの である。  判例が時効完成後の譲受人に対して時効取得を主張するために登記を要求するのは.むしろ﹁対抗﹂間題をとびこ えて.取引安全ないし第三者保護のために導かれるものである。ーー明治四一年の相続登記連合部判決︵状漣麗噸礁躍貯辮 一藤噸甦︶において.登記要求が第三者保護のためである以上. 第三者の側からみて物権変動が意思表示によって生じ ようと.法律の規定にもとづいて生じようとその問に区馴を設ける理由がないとし、これが﹁意思表示によらざる物 権変動もすべて登記を要す﹂と理解され.そして.大正一四年の時効取得登記連合部判決の﹁時効取得にも登記を要

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する﹂という命題の基礎となったのである。しかし、物権変動の意思主義的構成︵山短︶の下でのみ生ずる登記の対抗力 という平面で考えた場合には、第三者制限の原則に従って、 ﹁第三者﹂出現の可能性、つまり﹁対抗﹂問題を生ずる 可能性がない場合には、登記は不要というべきである︵縣隅勲酬簾鷺さ。  ほんらい時効完成後の第三取得者は無権利者とみられるべきであり、かかる第三取得老の保護は、むしろ登記の公 信力の問題として考えられるべきものである。しかるに、これを解釈論上﹁対抗間題﹂として構成し、登記の有無を もって決することは、悪意の第三者をも保護する結果となり、登記の公信力が立法によって認められた場合以上に、 しかも不要な保護を第三取得者に与えることになる。このように、ばくぜんと取引の安全や第三者保護という一般理 論から﹁登記要求﹂を導き出すとすれば、事実上、登記名義にもとづく処分と登記の可能性のあるところには、つね に﹁対抗問題﹂、﹁第三者﹂問題を生ずることになってしまい、わが民法の対抗要件主義や登記に公信力を認めない基 本的な前提から大きく逸脱してしまうことになる︵蘇瀞翻燭駕批靴︶。  四 さらに他方、時効取得による登記は移転登記の方法によるのであるが︵鞘蝿鍬肛薇昨蹴髄欄鞠歓鋪瑠鄭、︸︶、 登記につき 相手方︵従来の所有者︶の協力を得ることは通常の場合は期待できず、訴を提起するほかないのみならず、今回の判 決のいうとおり、時効取得者はそもそも時効そゐものを、したがって時効完成を、紛争発生まで気にしない場合が多 いのである。そのため、時効完成後の登記を占有者に要求することは、事実上、永年のあいだ時効完成を待ち構えて いた悪意の占有者か、さもなくば、売買や贈与などの法律行為がなされ、そのとき登記もすませ、かつ不動産を占有 してきたのに、法律行為の相手方が無権利者、無権代理人・無能力老であっとき、相手方に錯誤があったときなどに、

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はじめて登記をもってその後の第三取得者に対抗できることになり、わが民法の取得時効ほんらいの翻度がきわめて 限定されてしまうことになる︵噸鵡鍵蝋膿、一︶。  五 いずれにせよ、学説の動向が、登記を要すべき物権変動について.次第にこの問題を対抗間題を生ずる場合に 還元する方向︵開蹴綱謬に推移してきており.また時効取得と登記の要否についても.近時むしろ登記不要説が主流であ るかの観を量するにいたコー、いることから.従来の判例理論は根本的に再検討せられるべきであ夢.今後の判例の勤 向が注羅せむれ︸驚       三和一博

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