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無線電力伝送におけるRF-DC変換

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(1)

無線電力伝送における

RF-DC

変換

野木

茂次

a)

藤森

和博

佐薙

RF to DC Conversion for Wireless Power Transmission

Shigeji NOGI

†a)

, Kazuhiro FUJIMORI

, and Minoru SANAGI

あらまし 無線電力伝送が,従来から研究されてきた宇宙太陽発電をはじめとする送電電力の比較的大きな応 用だけでなく,RFID,センサ,低電力照明など小電力の伝送への応用も広がってきて,再び脚光を浴びつつある. マイクロ波を用いた無線電力伝送での受電部のキーデバイスである,受電アンテナとマイクロ波–直流(RF-DC) 変換回路とが一体的に構成された,レクテナについて概観した.レクテナの基本構成とRF-DC 変換回路の基本 動作を示した後,いろいろな応用における受電波の偏波,電力レベル,ビームの広がりなどの様々な状況に対応 するための,ダイオード実装,受電アンテナ,アンテナからの再放射抑制,レクテナアレーなどの各種の方式に ついて,構成と特徴を記した. キーワード マイクロ波,無線電力伝送,アンテナ,RF-DC 変換,レクテナ

1.

ま え が き

近年,電磁波,電磁誘導,または磁界あるいは電界 の共振結合により無線で電力伝送を行う技術が再び脚 光を浴びつつある.無線電力伝送については,1904年 にN. Teslaが最初にその実験を行った[1]が,多くの 注目を集め出したのは,1960年代にアメリカでマイ クロ波を用いた無線電力伝送実験によりその有用性が 示され[2],1968年にP.E. Graserにより宇宙太陽発 電衛星(SPS)が提唱[3]されてからである.SPSは, 静止軌道上の人工衛星に約2 km角の巨大な太陽電池 パネルを広げ,得られた直流電力をマイクロ波に変換 して地上へ送り,地上では受電のためにレクテナを直 径約4 kmの範囲に敷き詰めて,マイクロ波を直流に 再変換し送電網に接続する構想のシステムである[4]. ここで,レクテナは,受電用アンテナと高周波から直 流(RF-DC)への変換回路(整流回路)とが一体的に 構成されたデバイスである.1基で,原子力発電所の 1基当り発電量に匹敵する約100万kWのシステムと することが計画され,CO2排出量が,太陽電池製作時 岡山大学大学院自然科学研究科,岡山市

Graduate School of Natural Science and Technology, Okayama University, 3–1–1 Tsushimanaka, Kita-ku, Okayama-shi, 700–8530 Japan a) E-mail: [email protected] での排出を考慮しても,原子力発電所と同程度,石炭 火力発電所の1/60程度と試算されている[5]. マイクロ波を用いた無線電力伝送については,地上 の2箇所の間や,地上から飛行体へなどの送電実験[2] も行われ,大電力伝送のために極めて大きなレクテナ アレーについての実験[6]や,宇宙でアクチュエータ を使用するための50 Vの給電用のレクテナの開発[7] も行われている.使用される周波数としては,ISMバ ンドに含まれる,2.45 GHzと5.8 GHzが多いが,二 つの周波数用のレクテナ[8], [9],更にミリ波を用いた 35 GHz [10]や,ミリ波集積回路構成の約94 GHzの レクテナ[11]も発表されている.レクテナの変換効率 は,周波数,ダイオード,及び入射電力などに依存す るが,発表されている最高値は,2.45 GHzで90.6%, 5.8 GHzで80%,35 GHzで72%,など[12]である. 受電波の偏波についても,直線偏波は勿論,円偏波用 のレクテナも数多く発表されている[10], [12].また, 受電波の方向が変化しても影響を受けにくいように, 自動的に追尾できるレトロディレクティブの円偏波レ クテナアレーの研究もなされている[13]. 一方,近年の電子デバイスの低消費電力化により, mW程度の電力で動作するディジタル集積回路やセン サが開発された.これらのデバイスを用いて,RFID や,橋,建物や原子力発電所などのアクセス困難な部 分の強度をモニタするためのセンサなどを,バッテリ

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レスで無線電力伝送により動作させるためのレクテナ の開発[14], [15]や,部屋内のパソコンなどを無線電力 伝送を用いたユビキタス電源により使用できるように する研究[16]も進んでいる. 放送や通信などで放射された低電力密度の電磁波を 再利用する形で,レクテナにより充電を行い,低電力 の照明,無線センサなどに用いるRFエナジー・ハー ベスティングのためのレクテナの発表もなされてい る[17].通常の無線電力伝送では単一周波数を用いる ことが多いが,RFエナジー・ハーベスティングでは, 広い周波数範囲の相当低い電力密度の電磁波から電力 を得るように,任意の偏波に対応できる広帯域のアン テナと低電力用整流回路を開発する必要がある. また,2006年にMITからなされた,Q値の二つの 高いコイルを磁界共振結合させ,約10 MHzの周波数 を用いて,1∼2 mの距離で60 Wの電力を比較的高い 効率で,非放射型の無線電力伝送を行うことに成功し たという発表[18]が注目を集め,研究が盛んになって いる. 電磁波によるこれらの無線電力伝送において,受電 側で用いるレクテナは最も重要な部分の一つであり, その中でのキーとなる構成要素は,入射電磁波に対応 した周波数,偏波と指向性をもち,用途に相応しい大 きさと形状のアンテナと,マイクロ波など高周波の受 電波をダイオードを用いて直流に変換する回路である. ダイオードは非線形の電圧–電流特性をもつので,入 力波振幅及び直流出力電圧の変化が変換効率に影響す るとともに,入力の高調波が発生しアンテナからの再 放射を抑制する必要があるので,レクテナの解析と設 計は必ずしも容易ではない.以下では,マイクロ波に よる無線電力伝送用のレクテナについて,ダイオード 回路の構成と基本的動作,及びアンテナについて述べ, 用途,環境に応じた選択の指針を示す.

2.

レクテナの構成と基本動作

2. 1 レクテナの基本構成 レクテナの構成を図1に示す. 高周波–直流(RF-DC)変換にはショットキーバリ アダイオード(SBD)を用いるが,非線形の電圧–電 図 1 レクテナの構成要素 Fig. 1 Rectenna element components.

流特性により発生する高調波成分がアンテナから放射 されるのを防ぐために,アンテナと整流回路の間に基 本波は通過させて高調波を阻止する低域通過フィルタ をおく.ただし,高調波の放射を抑制する機能をもつ アンテナを用いる場合[19]には,このフィルタを省略 することができる.整流回路の出力側には,直流出力 を取り出す負荷抵抗の方へ基本波及び高調波が漏れる ことを防ぐために,低域通過または帯域阻止フィルタ をおく.レクテナの代表的な基本構成例を図2に示す. (a)は半波長ダイポールアンテナにコプレーナ・スト リップ線路(CPS)を用いて構成した整流回路を接続 したもの[20]である.CPSなどの平衡線路を用いる場 合には,ダイオードは線路間に並列に実装されている. (b)は,マイクロストリップ線路(MSL)で回路を構 成し,多層構造にしてアンテナとは窓を介して結合す るもの[21]であり,これに用いられているRF-DC変 換回路部分のみを取り出して見やすくするために,同 図 2 レクテナの代表的な基本構成例 Fig. 2 The typical basic constitution of rectennas.

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等な回路(5.8 GHz用)を(c)に示している[22].(a) では,アンテナと回路部を同一平面上に配置でき,(b) では,受電電磁界が直接には回路に入射しないので, 回路への影響を小さくすることができる. MSLのような不平衡線路においては,線路に対して 並列,あるいは直列にダイオードが実装される.平衡 線路型は,ダイオードの一方の端子の電位が接地にな るなど拘束されるため,もう一方の端子に適切な電圧 がかかるよう調整すればよく,設計がやや容易になる ので比較的よく用いられている.一方,非平衡線路型 は,ダイオードの出力側部分によりダイオードの動作 が左右されることを考慮した設計が必要であるが,最 大変換効率は遜色がないとしてよい.また,ダイオー ドペアを用いた整流回路も提案されているが,基本動 作は1個のダイオードを用いた整流回路と変わらない. 2. 2 RF-DC変換回路の基本動作[22] レクテナで用いられる整流回路では,ダイオードを 1個用いている例が多い.1個のダイオードでは基本的 に半波整流動作になるが,入力部にスタブなどを用い ることにより,入力基本波の反射を抑制し,ダイオー ドに対する印加電圧振幅を入力波電圧振幅より大きく することができるので,結果として全波整流動作に匹 敵するRF-DC変換効率を得ることが可能となる. 図2 (c)のRF-DC変換回路を例にとる.ショット キーバリアダイオードのアノード側ではキャパシタC1 により入力線路と直流的に遮断し,先端短絡の短い線 路により直流的な短絡とともに入力の整合を行ってい る.カソード側では,キャパシタC2は高周波短絡用 であるが,マイクロ波帯では十分な短絡特性を得にく いので,更に基本波と第2高調波の阻止フィルタをお いている.直流出力は負荷抵抗RLにより取り出す. この回路の定常状態における非線形動作を,図3の ダイオードの静特性に重ねたダイオード端子間電圧 VDの時間変化をもとに示す. 受電波電圧により,VDがダイオードの立上り電圧 Vthを超える時間のみ,ダイオード電流IDが順方向 に流れVDはほぼ一定値をとる.VDVthよりも小 さくなると,ID はほぼ無視できる程度の値となる. VDが負になって,受電波電圧振幅が大きくVDがブ レークダウン電圧Vbr以下になる場合には,その時 間のみIDがブレークダウン電流として逆方向に流れ る.ダイオード直流出力電流Io,DCは,パルス状の 順方向電流とブレークダウン電流(VD < Vbrになり 得る場合のみ)の和の時間平均になる.直流出力電圧 図 3 ダイオードの静特性と電圧の時間変化 Fig. 3 Static current-voltage characteristic of a diode

and the time variation of the diode junction voltage.

Vo,DCは,Vo,DC= RL· Io,DC,直流出力電力PO,DC

PO,DC = Vo,DC· Io,DCとして与えられる.ダイ オードは,アノード側が直流的に短絡されているので, カソード側の直流出力電圧Vo,DCが逆バイアス電圧と して加わることになる. ダイオード端子間電圧VDが立上り電圧Vthを超え ないと直流を生じないので,入力電力が小さいときに は変換効率は低い.入力電力が大きくなると,ある程 度までは変換効率が高くなるが,ブレークダウンを生 じるようになると直流出力電流と逆方向の電流も流れ るので,変換効率が低下する(図5参照).変換効率 が最大になるのは,直流出力によるダイオードバイア ス電圧Vo,DCが,立上り電圧Vthとブレークダウン 電圧Vbrの中央値(Vth+ Vbr)/2にほぼ等しくなり, 入力によるダイオード電圧振幅がこれらの差の半分 (Vth− Vbr)/2に,ほぼ等しくなるときである. 実際のダイオードでは,図3の静特性に寄生容量Cj, 更にパッケージの容量CpやインダクタンスLpを考慮 する必要があり,図4のような等価回路により表現さ れる.表1は,周波数5.8 GHzの場合に,M/A-COM 社製ショットキーバリアダイオードMA4E2054-1141T の静特性とSパラメータを実測し,フィッティングに より求められた各パラメータの値である. 図 2 (c)のRF-DC変換回路の変換効率について, ダイオードに図4の等価回路を用い,集中定数素子と 電磁界の相互作用をも計算可能なLE-FDTD法によ るシミュレーションにより求められた結果と測定結果 を図5に示す.最大変換効率時での電力損の計算結果 は,表2のように,入力反射10%,ダイオードでの

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図 4 ダイオードの等価回路モデル Fig. 4 Equivalent circuit model of a diode.

表 1 ダイオードパラメータのフィッティング値 Table 1 Typical parameter values of a diode

ob-tained by fitting for the measured charac-teristic.

図 5 RF-DC変換回路の入出力特性と変換効率 Fig. 5 Input-output characteristic and conversion

ef-ficiency of the RF-DC conversion circuit.

損失14%,放射損4%などとなっている.

3.

レクテナの要素行列

3. 1 ダイオードの実装 レクテナに実装されるダイオードの個数は,これま での説明から分かるように一整流回路に対して1個が 基本的である.本節では,一整流回路上に複数のダイ オードが実装された整流回路とその目的について説明 する. 表 2 RF-DC変換回路での変換効率と損失 Table 2 Computed conversion efficiency and power

losses of the RF-DC conversion circuit.

図 6 コッククロフト–ウォルトン昇圧整流回路 Fig. 6 Cockcroft-Walton voltage multiplier circuit.

複数のダイオードを用いた整流回路としては,コッ ククロフト–ウォルトン回路を用いたものが挙げられ る[23].この回路は低周波領域において昇圧整流回路 として知られており,図 6において,例えば正半波 が入力された際にダイオードを介してキャパシタに チャージされ,負半波に切り換わった際に正半波同様, 次段のダイオードを介してキャパシタにチャージされ るとき,正半波入力時にチャージされていた電荷が重 畳された形で電流が流れる.すなわちダイオード–キャ パシタペアの段数分だけ昇圧されることになる.この 回路はRFIDチップのウェイクアップ電圧を得るため に用いられている.昇圧整流動作から分かるように, 一つのダイオード–キャパシタペアで整流効率が決ま るため,見かけの出力電圧は大きくできるものの,全 体として見た整流効率が向上するわけではない. 複数のダイオードが用いられたレクテナの別例とし ては,図7に示すような高入力電力下で動作するよう 設計されたものが挙げられる[6].市販されているダイ オードは,ミクサ用や検波用ダイオードに代表される 小電力用のものが立上り電圧が小さく,整流効率を大 きくすることができるものの,耐圧も小さいため,高 入力電力下で単体使用することができない.そこで, ダイオードをすき間なく直並列に実装することにより, ダイオード単体に印加される電圧が耐圧を超えないよ

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図 7 16個のダイオードが実装された大電力用整流回路 Fig. 7 RF-DC conversion circuit mounted on 16

diodes for large microwave power.

う分割されることをねらったものである. 3. 2 ア ン テ ナ これまで報告されているレクテナに使用されたアン テナの種類はそれほど多くなく,ほとんどがダイポー ルアンテナ,パッチアンテナ,スロットアンテナであ る.整流回路に用いられる伝送線路を平衡線路形(レッ ヘル線路,CPS),不平衡線路形(MSL,CPW)に分 類し,それぞれの伝送線路においてよく用いられるア ンテナについて紹介する. まず,平衡線路形ではほとんどの場合,ダイポール アンテナが用いられている.これは,ダイポールアン テナが平衡給電されるアンテナであり,アンテナ–回 路間にバラン等の平衡–不平衡変換回路が不要である ことが理由として挙げられる.ダイポールアンテナは ビーム幅が広いため,送受電系の伝送軸がずれても安 定した出力が得られる,一般的な平面アンテナに対し て帯域が広いという利点もあり,アレー化を前提とし たレクテナでは扱いやすい.一方,指向性利得が小さ いため,パッチアンテナやその他の高利得アンテナに 対して受信電力が小さいという欠点もある. CPSは地板を有し,レッヘル線路を用いた場合に も,実用的には,レクテナ受電面裏面への電力透過を 抑えるための反射板が配されることになるため,これ らの効果によりわずかながら利得向上が見込める.ま た,専有面積や電気的体積の増加を伴うが,無給電素 子を設けることで高利得化や周波数共用化[8]も容易 である. 平衡線路形レクテナにおいて,ダイポールアンテナ 以外のアンテナが用いられた稀な例としては,図 8 に示すようなデュアルロンビックアンテナを用いたも のが提案されており,平衡線路を用いた整流回路と 10.7 dBの高利得円偏波アンテナを組み合わせること で,80%を超える変換効率を達成している[12].また, 図 8 デュアルロンビックアンテナを用いたレクテナブロッ ク図

Fig. 8 Rectenna block diagram using the dual rhombic loop antenna.

図 9 スパイラルアンテナを用いた広帯域レクテナ

Fig. 9 Broadband Rectenna using the two arm equiangular spiral. 文献[17]ではスパイラルアンテナを用いたレクテナが 報告されている.図9のように,広帯域円偏波スパイ ラルアンテナの給電点に,フィルタ等の帯域を制限す る回路を設けずダイオードを実装することによって, 28 GHzにおいて整流動作を行うことが示されている. 次に不平衡線路形の整流回路によく用いられるアン テナについては,平衡線路形の場合と同様に,不平衡 給電を許すアンテナが選択され,中でもパッチアンテ ナ,スロットアンテナが多くを占めている. パッチアンテナは単体の指向性利得が69 dBiにで きるため,ダイポールアンテナを用いたレクテナに対 して,小電力密度下での使用や,アンテナ素子数を削 減したい場合に適している.また,励振できる偏波の 自由度も高く,単一直線偏波対応のレクテナ[6], [24], 直交する2偏波共用レクテナ[7],縮退分離,あるい は摂動装荷により円偏波に対応したレクテナ[14], [25] など,平衡線路形のレクテナに対して多様なレクテナ が提案されている. スロットアンテナを用いたレクテナについてもパッ チエレメントとの組合せを含め,パッチアンテナの場 合と同様に多様なレクテナが提案されており,中でも,

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周波数共用円偏波レクテナはアンテナと回路部の結合 が誘電体基板を積層(図 2 (b)参照)することなく実 現できることから,スロットアンテナの利点を生かし た特徴的なレクテナであるといえる[10]. 3. 3 再放射の抑制法 レクテナにおける再放射とは,アンテナにおいてそ の表面で再放射するもの,受信後の回路の不整合によ り反射してしまうものに加え,整流時にダイオードの 非線形性により発生する高調波をアンテナから放射す るものを指している.電力伝送に用いる基本周波数の 再放射を抑制するためには,レクテナそのものでの不 整合を極力小さくする必要があるが,受電電力が変化 するとダイオードの非線形性から一般には回路の反射 が変わるので容易ではない. 一方,高調波の放射の抑制には様々な方法が検討さ れている.最も基本的な方法は,アンテナ–整流回路 間に帯域フィルタを配し,伝送に用いる周波数のみが 透過できるようにする方法である.これは,アンテナ で受信された所望周波数以外の電磁波を遮断し,整流 回路の動作を安定させる働きを兼ねることになる.ダ イポールアンテナや方形パッチアンテナを用いる場合, アンテナが半波長の整数倍で共振してしまい,ダイ オードで発生した高調波が空間に放射される条件を満 足してしまうため,帯域フィルタは不可欠となる.一 方,フィルタ及び接続線路分だけレクテナが大きくな ることを許容できない場合には,帯域フィルタを排し, アンテナにこの機能をもたせたレクテナも提案されて いる.最も簡易な方法として方形パッチアンテナでは なく,円形パッチアンテナを用いることが挙げられる. これは,円形パッチアンテナの共振周波数が半波長の 整数倍とはならないことを利用し,高調波周波数に対 しては非共振とするものである.この円形パッチアン テナにおいて,高調波周波数に対して積極的に非共振 となるよう設計された円形セクターアンテナを用いた レクテナも提案されており[19],このレクテナ形状を 図10に示す.高調波の再放射を良好に抑制する特性 が示されている. レクテナよる高調波の再放射抑制法とは別のアプ ローチとして,レクテナの小型化,レクテナアレーに おけるレクテナの高密度化を勘案し,レクテナの整流 回路より前段にフィルタは設けず,アンテナで受信さ れる電磁波の周波数を選択し,発生する高調波を内部 に閉じ込める目的から周波数選択板をレクテナアレー の受電面表面に設ける方法がある[24], [26].文献[26] 図 10 円形セクターアンテナを用いたレクテナ Fig. 10 Rectenna with a microstrip circular-sector

antenna.

図 11 周波数選択板の構造

Fig. 11 Geometries of a gridded- and double-square FSS arrays. では,図 11に示す2種類の周波数選択板について, 周波数特性,角度特性が報告されている. また,周波数選択板とは若干目的が異なるが,文 献[27]では回路で発生する熱対流や,電流及びレクテ ナからの再放射により発生する熱を緩和するため,レ クテナアレー表面に円形スロットを配列した構造が提 案されている.

4.

レクテナアレー

レクテナのアレー構成に関しては,送電電力と送電 アンテナの指向性,送受電間距離によって決まる電力 密度の強い制約を受ける.電力密度の高いレクテナア レー中心部では大入力電力用に,電力密度の小さいレ クテナアレー周辺部では小入力電力用に設計されたレ クテナが要求される.一般には,電力密度がある面積 内で一定と考え,その領域をカバーするサブアレーを 構成し,これらの合成によるレクテナアレーが想定さ れている.本節ではこのサブアレーについて説明する. RFID等,送電電力が小さいアプリケーションが認 知される以前は,大入力電力用に設計されたレクテナ アレーの報告がほとんどであった.これらのレクテナ アレーは,図12に示すようにダイポールアンテナに 整流回路を組み込んだレクテナを並列に接続し,レク テナからの直流出力を合成した後,これらのレクテナ

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図 12 直流出力を合成する基本的なレクテナアレーの構成 Fig. 12 Schematic of basic rectenna array with

combining their DC output.

アレーから得られる直流出力を更に直列に合成するも のである[2]. レクテナは実装されるダイオードの立上り電圧を超 える入力が与えられなければ動作しないため,この構 成は十分な電力密度が確保できる環境下で使用される 必要があるが,レクテナがそれぞれ単独で動作し,直 流出力が合成されることからアンテナ指向性が合成さ れることはなく,ダイポールアンテナ単体の指向性が レクテナアレーの指向性となる.一方,レクテナへの 入力電圧がダイオードの立上り電圧を超えない電力密 度環境下では,この構成を使用することができず,必 然的に高利得アンテナを用いたレクテナ,あるいはア ンテナアレーに整流回路を組み合わせたレクテナを用 いる必要がある.例えば,文献[28]では2 × 2のパッ チアンテナアレーを用いたレクテナが報告されており, アンテナアレーを用いたレクテナの最も基本的な例 といえる.文献[29]では,レクテナアレーにおける総 レクテナ数を減らしながらも,大きな出力を得るため の手段として,図 13のように5素子のデュアルロン ビックアンテナの直流出力を並列合成するサブアレー を構成し,これらをハニカム状に配列するレクテナア レーを提案している.また,図9の広帯域レクテナを 提案する文献[17]では,このレクテナを64素子配列 した図 14に示すレクテナアレーをエナジー・ハーベ スティングに適するものとして提案しており,右旋円 偏波,左旋円偏波それぞれに対応するレクテナを配列 することによって,広帯域特性に加え,任意偏波特性 を得ようとしたものである.

5.

む す び

いくつかの無線電力伝送技術の中で,マイクロ波 ビームを用いたものは比較的長い距離を大きな電力ま で送ることを可能とする技術,という位置付けをもっ 図 13 ハニカム状に配列したデュアルロンビックレクテ ナアレー

Fig. 13 Dual rhombic rectenna array using a honeycomb lattice.

図 14 広帯域スパイラルレクテナを用いた任意偏波レク

テナアレー

Fig. 14 Arbitrary polarized rentenna array using broadband spiral rentennas.

ている.従来は,宇宙太陽発電など送電電力の比較的 大きな応用に主な関心がもたれていたが,近年になっ て,RFID,センサ,低電力照明など小電力の伝送へ の応用も広がってきている. 本論文では,マイクロ波を用いた無線電力伝送での 受電デバイスとしてのレクテナに関して,基本的な構 成と動作を述べ,いろいろな応用における受電波の電 力レベル,ビームの広がりなどの様々な状況に対応す る,各種のアンテナ及びRF-DC変換回路の構成と特 徴を概観した. RF-DC変換回路に用いるダイオードの非線形電圧

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電流特性や高周波特有の寄生キャパシタンス・インダ クタンス,更に電磁波放射などの影響をも考慮した正 確な回路設計のためには,引き続き研究が必要であ る.高いRF-DC変換効率を得るのに適したダイオー ド特性パラメータ値を明らかにし,そのような特性を もつダイオードの実現すること,また,特に大電力用 のRF-DC変換に適した素子として,GaNなどのワ イドバンドギャップ半導体を用いたダイオードの開発 も期待されるところである.無線電力伝送という,自 由度が高く利便性に優れた技術が,世の中に早く普及 して役立つことが望まれる. 最後に,本論文の作成にあたり,文献資料の御提供 を頂いた京都大学生存圏研究所篠原真毅教授に感謝致 します. 文 献

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図 5 RF-DC 変換回路の入出力特性と変換効率
Fig. 8 Rectenna block diagram using the dual rhombic loop antenna.
図 11 周波数選択板の構造
図 14 広帯域スパイラルレクテナを用いた任意偏波レク テナアレー

参照

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