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『落窪物語』における人物像の検討
老師ヰ・領域教育専攻 言語系コース(国語) 戎 田 優 本稿は,~落窪物語』の登場人物の造型を分析 し,検討するものである。 第一章は,侍女あこぎに関する考察である。 これまで,あこぎが重要人物として指摘されて きたが,本章ではより詳細な分析を行うことに よってあこぎの人物像を検討した。 まず,第一節では先行研究を整理し,あこぎ の人物像の課題を指摘した。 第二節では,女君に対応する場面でのあこぎ の描写を抽出した。ここでは,女君の幸せを願 うことから継母北の方への報復へと目的の重心 が移っていることを挙げた。 第三節では,その他の人物に対応する場面で のあこぎの描写を抽出し,分析した。その結果, あこぎが報復に対して耕幼な願望を抱いている ことを読み取り,当時にみられる一員賄句な女房 像からはるかに逸脱していることを明らかにし た。また,男君と同じ性質である「し、みじき御 心」が備わっていることに着目し,女君に対す る言動からは決して表出することのない,あこ ぎの欲望に言及することができた。これは,あ こぎに平安時代の女性の思想像が込められたと する従来の論とは異なるものである。 第二章は,男君の人物像の検討である。男君 は,第一章で検討したあこぎと共に物語におい て重要な役割を担っている。ここでは,心情描 写や行動描写を分析・考察することで男君の人 物像を探った。 指導教員 小 島 明 子 まず顎一節では先行研究を整理しこれに対す る疑問を提示した。 第二節では,男君の人物像を二点挙げること ができた。一点目は,共感性の欠如であり、二 点目は自己中心的な性質である。これらの男君 の人物像は,従来の先行研究では言及されてい なかったものである。 第三節では,報復対象である継母北の方と中 納言に対する男君の描写から,噌虐性を読み取 ることができた。これは,男君が噌虐的な性向 を持っとする従来の論を補強するものである。 第四節では,男君の性質を表す,r
いみじき御 心Jという言葉を検討した。これまでの研究に おいては,物語の中で,他の登場人物が男君の 性質について言及する箇所に注目することはな かったが,その一例が九、みじき御心」である。 これは実は,男君の性質を検討する上で男君の 恐ろしさが集約された言葉で、あった。しかも男 君の恐ろしさは,場合によっては女君にも向け られてしも点が鞘蜘句であるとし、える。 第三章はあこぎと男君以外の人物の検討をし た。本章で取り上げたのは,継母北の方と女君 の実父,そして女君である。 第一節では,~落窪物語』の上記の人物に関す る先行研究を挙げた。 第二節は,同じ継子諦である『住吉物語』と 『落窪物語』を比較した。それによって, ~落窪 物語』の独自性を二点挙げることがきた。一点− 176 − 目は,登場人物の行動描写の具体性である。『住 吉物語』は,登場人物の行動は詳細に描写され ていないが,陪窪物語』では,女君が中納言邸 から脱出する場面と報復場面においては,出来 事が具体的に描かれている。二点目は,陪窪物 語』が詳細な人物設定をしていることである。 『落窪物語』の女君をはじめとする主要な人物 は,容姿,行動描写,心情描写を含めて綿密に 造型されているといえる。 第三節では,