問題と目的
日記とは、自分の心の内や日々の思い出を書き 残すなど、「自己開示の一形態」であると考えら れている。従来、日記は自己を振り返るなど自分 しか見ないことを前提に書かれているものが多 かったが、近年ウェブログなどを利用して他者に 日記を公開する人が増えている。本論文では、自 分しか見ないことを前提に書く日記を「非公開日 記」、ウェブ日記などを利用してウェブ上に公開 し、他者が閲覧することが可能な日記を「公開日 記」と定義し、論を進める。 非公開日記について、依田 (1963) は日記その ものの性格として二つの矛盾性が見られると指摘 している。1 つは「聞き手」を予想すると同時 に、絶対に他人に知られたくないという「告白性 =秘密性」の矛盾性である。もう 1 つは自らの真 実を告白しようとしながら、告白に伴う暴露を恐 れて常に若干の虚飾を加えるという「真実性=虚 飾性」の矛盾性である。日記そのものの持つこの 二種の性格が、青年期における日記特徴を示唆し ている。また、佐々木 (1994) は大学生・大学院 生を対象に、中高生の頃の日記行動について面接 法で調査を行い、青年の日記の特徴とその意義に ついてのモデルを提示している。書き手は、日常 生活を過ごし (プロセス 1 )、その現実で出来事や 心情を抱える (プロセス 2 )。体験や心情をいった ん自分の外に出すために日記に記し、言語化・視 覚化、抽象化する (プロセス 3 ) ことで、こなし 味わうなどの手応えを得る (プロセス 4 ) という ものである。つまり、「否定的な気持ちを日記に 吐き出し、それによってその気持ちはすっきりと青年が日記を書く意味
−日記の公開・非公開が及ぼす自己開示の違いと意義−
福田 尚美・三浦 香苗
Meaning and effects of keeping public, or closed diaries on
self-disclosure of adolescents
Naomi FUKUDA and Kanae MIURA
Recently, a growing number of people are opening their diaries to the public, by using weblogs and other methods. The authors investigated self-disclosure and its significance, based on whether diary writers publicized their online diaries. In Study I, we examined the modality of disclosing the self in diaries and its relationship with self-consciousness. A questionnaire survey was conducted with university student participants ( N=255), which indicated that approximately 60% of participants have kept some sort of a diary. Results indicated that those with diaries that were either public, or closed, had a high private self-consciousness, the degree to turn attention to the inside of the self. It was also suggested that the content of disclosures differed according to whether the diary was publicized, or not. In Study 2, we asked university students ( N=20) to keep a private diary for three weeks and examined the meaning of keeping the diary. In the process of keeping the diary, participants showed resistance towards disclosing the self in their diaries. Moreover, keeping the diary increased their introspection.Key words : adolescence(青年期),diary(日記),open to the public(公開),
落ち着く」「肯定的な気持ちを日記に記し、それ によってその気持ちを追体験できる」「自らの意 見や思想を記し、それによってそれらを整理し、 新たな気づきを得る」などの意義を持つとした。 このように、非公開日記は青年期において重要な 意義を持っていると考えられる。 しかし近年、インターネットの普及からウェブ ログなどを利用して他者に日記を公開するように なった。 山下・川浦・川上・三浦 (2005) はウェブ 日記やウェブログには、情報発信かつ自己表現と してのウェブサイトの特徴が端的に表れていると した。また、コメント機能などがあることから、 日記をコミュニケーションの手段の一つであると 位置づけられるとした。また、川浦・山下・川上 (1999) は、ウェブ日記における自己開示の効用 を、自分にとってのメリットとなる「対自己効 用」、読者との関係におけるメリットとなる「対 関係効用」に分けられるとし、ウェブ日記を継続 する意向はこれら 2 つを軸としたプロセスがある からだと報告している。これらのことから、読み 手である他者の存在は大きな影響を及ぼしている ことが予想される。さらに、大学生を対象として ウェブ日記について検討した梅田・内藤・野崎・ 江島 (2008) は、実際の友人とのコミュニケー ションを主目的とする Social Networking Service (SNS) 独自のコミュニケーション形態があるこ とを示唆している。 一方、非公開日記と公開日記のどちらも並行し て行っている人も見られる。福田 (2008) では、 非公開日記では普段他者に見せない自分の側面な どの内容を、公開日記では他者との関係が深まる 内容や自分の主張などの内容を開示する傾向があ ることが示唆された。さらに、両方の日記を書い ている人は、それぞれの特徴を利用して使い分け を行っており、中でも公開日記においては限定さ れた側面だけを開示している可能性が示唆された。 日記では思い出や感情などを記すことから、自 分 自 身 に 注 意 を 向 け や す い と 考 え ら れ、 福 田 (2008) は自意識との関連についても検討してい る。自意識とは、外から見える自己の側面に注意 を向ける程度を示す公的自意識と、自分の内面・ 気分など、外からは見えない自己の側面に注意を 向ける程度を示す私的自意識の 2 種類がある (菅 原,1984)。非公開日記のみを書く人は他者から の評価や外から自分がどのように見えているのか という点に注目しやすく、公開日記のみを書く人 は他者からの評価に注目しやすく、自分自身の内 面にも目を向けやすい傾向が示された。また、両 方の日記を書いている人は双方の日記によって外 側から見える自分自身と自分自身の内面や気分に 注目しやすい傾向が、日記を書かない人は自分自 身に注意を向きにくい傾向があることが示唆され た。 また、どの日記でも自分の内面や出来事をすべ て開示しているわけではないことも示唆された (福田,2008)。非公開日記では、依田 (1963) は、 誰かに見られることを強く意識することで、赤 裸々に書くことを躊躇したり、若干の虚飾をした り、故意に書かないことがあるなど、「日記に書 けないこと」について報告している。このことか ら、非公開でありながら自己開示が抑制される、 もしくは事実や心情に若干の虚飾が加えられる可 能性があると考えられる。また、公開日記では情 報の送り手としての配慮や責任から、書く内容を 制御している可能性が考えられる。このことか ら、個人情報の取り扱いを意識したり、読み手で ある他者との関係性を考慮することで、開示内容 が抑制される可能性がある。このように、日記で は必ずしも自己のすべてを開示しているとは限ら ない。むしろ、開示する内容が抑制されたり、自 身で制御している可能性が高いと考えられる。 そこで、本研究では、福田 (2008) の調査から 2 年間でインターネットが急速に盛んになったた め、日記行動や開示状況に変化がみられるかを検 討し、2 年前の調査と比較することと、非公開日 記を実験協力者に実際に書いてもらうことによっ て、どのようなことが生じているかを時系列的に 捉え、佐々木 (1994) のプロセスモデルの検討を 行なうことの 2 つを目的とする。具体的には、研 究Ⅰでは福田 (2008) の追試を行うと同時に、研 究Ⅱの被験者の募集を行う。2 年間で日記行動や 開示状況に変化がみられるかを検討し、同時に日 記行動と自意識との関連についても検討する。研 究Ⅱでは、実験協力者に非公開日記を書いてもら う実験を行い、日記への開示状況の開示プロセス についての検討を行う。大学生の非公開日記経験 率は半数以上であり、自発的に行う場合が多い (福田,2008) という点に着目し、実際に非公開日
(4)研究Ⅱの調査協力者の募集アンケート 研究Ⅱの調査内容、個人が特定されないことな どを明記した上で、ご協力頂ける方に記述を求め た。 結 果 現在の日記行動を、Ⅰ:非公開日記のみを書い ている、Ⅱ:公開日記のみを書いている、Ⅲ:両 方の日記を書いている、Ⅳ:日記を書いていな い、の 4 群に分けた(以下、日記行動群をⅠ∼Ⅳ 群で表記する)。有効回答数 255 名のうち、日記 を書いていないⅣ群が 111 名 (43.5%) と最も多 く、次に公開日記のみを書いているⅡ群が 95 名 (37.3%)、 両方を書いているⅢ群が 27 名 (10.6%)、 非公開日記のみを書いているⅠ群が 22 名 (8.6%) と最も少なかった。福田 (2008) と比較すると、 Ⅰ・Ⅲ群は同様の割合であった。また、日記を 行っているⅠ∼Ⅲ群の中で、Ⅱ群が一番割合が高 い点も同様であり、公開日記を行っている割合が 高いことが示された。
1
.自意識の検討 自意識尺度の信頼性分析を行った結果、公的自 意識尺度α= .87、私的自意識尺度α= .83 であっ た。したがって、下位尺度に関していずれも信頼 性があると判断し、既存の尺度をそのまま使用し た。 自意識に対する日記行動群別の一元配置の分散 分析を行ったところ、公的・私的共にⅣ群だけ有 意に低く、他に有意な差が得られなかった(F (3,249)= 3.85, p<.01;F (3,246)= 3.17, p<.05)。 そこで福田 (2008) のデータと今回のデータを結 合し、2 要因の分散分析を行ったところ(Table 1)、 年度間の主効果は見られなかった。一方、日記行 動群の主効果が公的自意識、私的自意識いずれに ついても有意であった (それぞれ F (3,522)= 6.97, p<.01;F (3,518)= 6.76, p<.01)。多重比較(HSD 法)の結果、公的自意識においてⅠ群とⅡ群はⅣ 群よりも高く、私的自意識においてはⅢ群とⅡ群 はⅣ群よりも高いことが示された。2
.日記タイプ別の検討 各日記の特徴を見るためⅣ群をはずし、日記形 態を「Ⅰ群の非公開日記=ⅰ」「Ⅱ群の公開日記 →ⅱ」「Ⅲ群の非公開日記→ⅲ」「Ⅲ群の公開日記 →ⅳ」にタイプ分けをした(以下、日記タイプを 記を書くときに、どのような過程が生じているか を実験的な検討する意味があると考えたからであ る。研究Ϩ<質問紙調査>
目 的 福田 (2008) の追試を行い、日記行動や開示状 況に変化がみられるかを検討する。また、日記行 動と自意識の関連においても福田 (2008) と同様 の傾向が示されるかを検討する。同時に研究Ⅱの 被験者の募集を行う。 方 法1
.調査対象者 調査対象者は首都圏大学 2 校の大学生の計 430 名。うち、有効回答数は 255 名 (平均 19.6 歳、男 性 66 名・女性 189 名) であった。2
.調査時期と手続き 2010 年 5 ∼ 6 月に質問紙による調査を行った。 講義担当者に調査協力を依頼し、講義時間あるい は講義後に質問紙を配布・回収を行った。3
.質問紙構成 (1)フェイスシート 性別・学年・年齢の記入と、現在の日記状況の 選択回答を求めた。 (2)自意識尺度 菅原 (1984) の自意識尺度の全 21 項目を用い た。公的自意識尺度 11 項目、私的自意識尺度 10 項目で構成され、「全くあてはまらない」∼「非 常にあてはまる」の 7 件法による回答を求めた。 (3)日記別の質問項目 佐々木 (1994) を参考に、①公開日記について の質問項目、②非公開日記についての質問項目、 ③日記を書いていない人への質問項目を作成し、 日記状況別にそれぞれ該当する箇所を選択回答し てもらった。①②については、日記の「書き始め た年齢」「きっかけ」「理由」「良かったと思うこ と」について自由記述による回答を求めた。日記 に記す内容は佐々木(1994)を参考に全 18 テー マを選出し、日記に書く頻度を「1 . 全く書かな い」∼「4 . 毎回書く」の 4 件法で回答してもらっ た。③については、過去の日記歴や書かない理由 を自由に記述してもらった。度が高かった。 非公開日記間 (ⅰとⅲ) の比較では、ⅲの方が 「 自 分 の 性 格 (p<.01)」 に つ い て 書 く 頻 度 が 高 く、ⅰの方が「日常生活 (p<.05)」について書く 頻度が高かった。一方、公開日記間の比較 (ⅱと ⅳ) では有意差は見られなかった。 (2)きっかけ・理由・良かったと思うこと 日記を書く「きっかけ」においては、8 カテゴ リーに分類してクロス集計 (Table 3)を行った。 公開日記であるⅱ、ⅳでは他者からの働きかけな どを示す「他者勧誘 (ⅱ= 36.1%、ⅳ= 27.3%)」 が多く、非公開日記であるⅰ、ⅲでは思い出や気 持ちを残すための「記録手段 (ⅰ= 31.8%)」や手 帳を買ったなど事物からの影響を受けた「誘発: 事物 (ⅰ= 31.8%、ⅳ= 32.0%)」などが多い傾向 が見られた。 日記を書く「理由」においては、9 カテゴリー に分類してクロス集計を行った (Table 4)。非公 開日記であるⅰとⅲでは、「記録手段(ⅰ= 40.9%、 ⅲ= 42.3%)」が最も多く、次いで自己の内面を 整理するなどの「自己内省 (ⅰ= 27.3%、ⅲ= 19.2%)」が多い傾向が見られた。一方、公開日 記であるⅱやⅳでは、他者と交流したり近況報告 を行いたいなどの「他者交流 (ⅱ= 15.1%、ⅲ= 25%)」が特に多い傾向が示された。 日記の「良かったと思うこと」において、7 カ ⅰ∼ⅳで表記する)。次に「書き始めた年齢」「日 記 内 容 の 18 テ ー マ の 頻 度 」 は、 ⅰ × ⅱ、 ⅰ × ⅲ、ⅱ×ⅳについては対応のない t 検定を、ⅲ× ⅳについては対応のある t 検定を行い、平均値の 差を検定した。また、自由記述による「きっか け」「理由」「良かったと思うこと」の回答は、意 味の類似性等を考慮した上で研究者自身がカテゴ リー化を行った。カテゴリー数が多く統計的な検 定を十分に行えなかったため、クロス集計の結果 とその傾向を示すが、今後再検討する必要があ る。 (1)書き始めた年齢・内容テーマ 「書き始めた年齢」 (Table 2) においては、ⅰと ⅱ (p<.01)、ⅰとⅲの間 (p<.05) で有意差が見ら れた。したがって、ⅰの非公開日記は他に比べて 書き始める年齢が早いことが示された。 日記に書く内容の 18 テーマ (Table 2) につい て、どの日記でも「友達」「学校生活」「日常生 活」は書く頻度が高かった。一方、非公開日記と 公開日記の比較 (ⅰとⅱ、ⅲとⅳ) では、ⅰの方 が「 人 間 関 係 (p<.05)」「 漠 然 と し た 気 分 (p< .01)」について書く頻度が高く、「趣味 (p<.01)」 についてはⅱの方が書く頻度が高かった。また、 ⅲ の 方 が「 自 分 の 性 格 (p<.01)」「 自 分 の 能 力 (p<.05)」「恋愛 (p<.05)」について書く頻度が高 く、「趣味 (p<.01)」についてはⅳの方が書く頻 Table 1 自意識に対する日記行動群別に関する 2 要因分散分析 自意識 年度 日記行動群 F 値 多重比較 Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ 公的 2008 平均 5.58 5.33 5.29 5.00 日記群別 Ⅳ<Ⅰ=Ⅱ SD .74 .95 .86 1.00 F =6.97** N 26 130 29 92 年度別 2010 平均 5.20 5.27 5.24 4.87 F =2.26 SD .88 .80 .83 .99 日記群別×年度別 N 22 93 27 111 F =.44 私的 2008 平均 4.97 5.16 5.37 4.84 日記群別 Ⅳ<Ⅱ=Ⅲ SD .79 .90 .71 .89 F =6.76** N 26 130 29 91 年度別 2010 平均 5.06 5.10 5.42 4.90 F =.13 SD .89 .83 .72 .83 日記群別×年度別 N 22 92 27 109 F =.23 ※*p<.05,**p<.01
Table 2 年齢と日記に書くテーマの平均値と標準偏差、検定結果 対応のない t 検定 対応のあるt 検定 ⅰ ⅱ ⅲ ⅳ ⅰ×ⅱ ⅰ×ⅲ ⅱ×ⅳ ⅲ×ⅳ 年 齢 平均(SD)N 15.05(3.12)22 17.22(1.58)94 17.19(2.62)26 17.19(1.74)26 t =−4.69** t =−2.59* t = .07 t =−.16 性 格 平均(SD)N 2.00( .69)22 1.80( .62)91 2.73( .78)26 1.89( .70)27 t = 1.23 t =−3.45** t =− .58 t = 4.67** 容 姿 平均(SD)N 1.41( .59)22 1.37( .68)91 1.73( .87)26 1.48( .58)27 t = .25 t =−1.51 t =− .84 t = 1.36 能 力 平均(SD)N 1.95( .79)22 1.58( .60)91 2.12( .86)26 1.63( .63)27 t = 2.08* t =−.68 t =− .35 t = 2.13* 家 族 平均(SD)N 1.95( .49)22 1.77( .65)91 2.19( .90)26 1.78(1.77)27 t = 1.25 t =−1.11 t =− .07 t = 2.03 友 達 平均(SD)N 2.55( .60)22 2.41( .70)92 2.46( .91)26 2.56( .64)27 t = .91 t = .37 t =−1.00 t =− .62 恋 愛 平均(SD)N 2.09( .92)22 1.77( .83)91 2.15(1.01)26 1.85( .99)27 t = 1.50 t =− .22 t =− .40 t = 2.06* 人間関係 平均(SD)N 2.62( .81)21 2.12( .74)92 2.58( .90)26 2.30( .87)27 t = 2.61* t = .17 t =−. 96 t = 1.14 学校生活 平均(SD)N 2.86( .71)22 2.61( .83)92 2.5( .86)26 2.63( .93)27 t = 1.46 t = 1.60 t =− .11 t =− .96 日常生活 平均(SD)N 3.00( .87)22 2.87( .83)92 2.5( .81)26 3.07( .73)27 t = .64 t = 2.04* t =−1.24 t =−2.98** アルバイト 平均(SD)N 1.86( .89)22 1.88( .82)92 1.68( .80)25 1.81(1.88) 27(25) t =− .08 t = .74 t = .36 t =−1.41 将来の進路 平均(SD)N 1.95( .72)22 1.75( .72)92 2.28( .93)25 1.81( .79)27 t = 1.19 t =−1.32 t =− .38 t = 1.59 勉 強 平均(SD)N 1.91( .61)22 1.84( .69)91 2.12( .88)25 1.74(1.80) 27(25) t =. 46 t =− .94 t = .58 t = 1.78 趣 味 平均(SD)N 1.95( .58)22 2.63( .97)92 2.08( .86)25 2.85( .82)27 t =−3.14** t =−. 58 t =−1.08 t =−4.94** 金 銭 平均(SD)N 2.00( .87)22 1.67( .67)90 1.80( .76)25 1.70( .82)27 t = 1.68 t = .83 t =− .21 t = .53 空 想 平均(SD)N 1.73( .88)22 1.63( .76)91 1.96(1.04)24 1.85( .82)27 t = .49 t =− .81 t =−1.28 t = .17 漠 然 と した気分 平均(SD) N 2.68( .89) 22 2.1 ( .94) 91 2.73(1.08) 26 2.52(1.12) 27 t = 2.72** t =− .17 t =−1.94 t = 1.23 一般社会 平均(SD)N 1.45( .51)22 1.47( .71)90 1.48( .71)25 1.70( .82)27 t =− .09 t =− .14 t =−1.35 t =−1.54 ※*p<.05,**p<.01 Table 3 「きっかけ」の日記タイプ別クロス集計表(人数) 記録 発散 自己 情緒的 誘発 他者 他者 その他 未回答 合計 手段 衝動 内省 行動 a . 事物 b . 他者 勧誘 交流 ⅰ 7 − 1 − 7 3 1 − 3 − 22 ⅱ 4 1 3 2 12 16 30 7 8 12 95 ⅲ 1 4 2 1 8 1 − − 8 2 27 ⅳ 3 1 − 3 3 1 6 1 4 5 27
非公開日記のみを書いているⅠ群では、日記を 書いていない群より公的自意識が高かった。この ことから、他者からの評価や外から自分がどのよ うに見えているのかという点に注目しやすいと思 われ、書き手が常に他者の存在を気に掛けていな がらも、見られたくない自分を持っているのでは ないかと考えられる。 公開日記を書いているⅡ群では、公的自意識が 高く、私的自意識も高い傾向が見られた。他者か らの評価に注目しやすく、自分自身の内面にも目 を向けやすいと考えられる。これは日記を公開す ることで既に他者への意識があり、他者にどのよ うに思われるか自分の外側に注意を向けやすいと 思われる。さらにウェブ日記の特徴である自己表 現という側面により、自分の内面により注目しや すいのではないかと考えられる。 両方の日記を書いているⅢ群では私的自意識が 高かったため、自分自身の内面や気分に注目しや すい傾向があるのではないかと思われる。非公開 日記だけでは他者の目線を注意しながらも実際に 他者にどう思われているか分からない。しかし、 公開日記を書くことによって他者からの評価をう かがうことができるため、双方の日記によって外 側から見える自分自身と、内面の自分自身への関 心が高い傾向があるのではないかと考えられる。 テゴリーに分類してクロス集計を行った(Table 5)。 非公開日記であるⅰとⅲでは、「記録手段 (ⅰ= 40.9%、ⅲ= 29.2%)」、「自己内省 (ⅰ= 36.8%、 ⅲ 33.3%)」の他に、書くことによって落ち着く などの「情緒的変化」 (ⅰ= 22.7%、ⅲ= 29.2%)」 が多い傾向が見られた。一方、公開日記であるⅱ とⅳではコメントをもらうなど「他者反応 (ⅱ= 35.7%、ⅳ= 42.3%)」が特に多い傾向が示され た。
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.日記を書かない人(Ⅳ群)の検討 Ⅳ群の日記を書かない人 111 人の中で、日記経 験のある人は 67 人 (60.4%) で、日記を経験したこ とがない人は 44 人 (39.6%) であり、福田 (2008) とほぼ同割合であった。日記を書かない理由とし て、日記経験者では「面倒くさい (41.5%)」と回 答した人が最も多かったのに対し、未経験者は 「必要性を感じない (43.6%)」が最も多かった。 考 察1
.日記行動と自意識の検討 現在、対象者の約 6 割の人が何らかの日記行動 を行っていた。自意識の検討では、福田 (2008) と今回の調査で共通して日記行動の違いによって 自意識の高さに違いがみられ、日記行動の差異に は自意識が影響している可能性が示唆された。 Table 4 「理由」の日記タイプ別クロス集計表(人数) 記録 回顧 発散 自己 自己 理解・共感 他者 習慣化 その他 未回答 合計 手段 手段 衝動 内省 表現 欲求 交流 ⅰ 9 5 1 6 − − − − 1 − 22 ⅱ 24 3 5 10 7 11 13 − 13 9 95 ⅲ 11 − 5 5 − − − 1 4 1 27 ⅳ 3 − 1 3 1 4 6 − 6 3 27 Table 5 「良かったと思うこと」の日記タイプ別クロス集計表(人数) 記録手段 情緒的変化 自己内省 他者反応 共感・理解 他者交流 その他 未回答 合計 ⅰ 9 5 8 − − − − − 22 ⅱ 14 3 11 30 14 8 4 11 95 ⅲ 7 7 8 − − − 2 3 27 ⅳ 4 1 4 11 3 1 2 1 27係や自己表現の場として利用できるなどを理由に 書いている人が多い傾向が見られた。日記を読む 他者を「読者」として意識することで、開示内容 のフィードバックを期待したり、その効果を実感 していると考えられる。また、これらは他者によ り自己を確かめる作業であるとも言える。榎本 (1997) は最も親しい友人に対して 「自分の気持ち を理解してほしいとき」に自己開示する人が大学 生に多いと示しており、これらの理解や共感を求 める行為は青年的な特徴として位置づけられると 考えられる。これらのことから、公開日記では他 者との関係性を重視する傾向があると考えられ る。 (3)日記への開示内容 日記に書く内容に関しては、開示する内容頻度 が日記タイプに関わらず共通するものと日記タイ プによって異なるものがあった。 共通して高い頻度で開示していた内容テーマ 「日常生活」「学校生活」「友達」は、福田 (2008) と同じ結果であり、これらは日記に開示する中心 的な内容であると考えられる。調査対象者が大学 生ということから、学校生活や友人との付き合い などが日々の生活の大半であろうと予想される。 また、日記を書く理由としても、日々の出来事の 記録的な手段、日々の生活で感じたことを誰かに 伝える手段などが挙げられていたことを踏まえる と、これらの内容は非公開、公開に関わらず、高 い頻度で書かれる内容であると考えられる。 一方、日記タイプの中でも非公開であるⅰ・ⅲ と公開であるⅱ・ⅳの間で開示する内容頻度に大 きな違いがみられた。非公開日記では、多くの テーマで公開日記よりも高い頻度で書かれている 傾向が見られた。非公開日記は他者の視線がない 場であるのに対し、公開日記では誰に知られるか 分からないという危険が伴う。そのため非公開日 記は青年期の日記の特徴である「秘密性=告白 性」 (依田,1963) という側面が強く現れ、公開日 記よりも幅広い内容が開示されるのではないかと 考えられる。一方、公開日記では、「学校生活」 や「趣味」などが高い頻度で開示されている。こ れは福田 (2008) と同様の結果であり、自分と他 者に関係している共通の話題が多いと推測され る。梅田ら (2008) で示されたようにコミュニ ケーションの一環としての話題が開示されている 日記を書かないⅣ群では、他のグループよりも 公的・私的自意識が低かった。このことから、自 身の内面を客観的に見ようとしたり、自分に対す る他者の存在を気にする傾向が、日記を書く人に 比べて低い傾向があると考えられる。
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.日記タイプ別の検討 (1)日記を書き始める時期と動機 日記を書き始める年齢は、非公開日記であるⅰ が他に比べて早いことが示された。また、書き始 めたきっかけに関しても、非公開日記と公開日記 では異なる傾向が示された。 非公開日記を書き始めるきっかけとして「手帳 を買ったから」などの事物的な影響を受けている 人が多かった。書き始める年齢の制限もないため 低年齢でも気軽に始められると考えられる。一 方、公開日記では、高校生∼大学生時期に他者か らの働きかけがきっかけで書き始めている人が多 かった。高校生・大学生になるにつれて交友関係 が広がりをみせるため、友人からの誘いから始め る人が多かったと思われる。さらに、現在の大学 生が高校生だった時期は、携帯電話などが普及し 簡単に Web 日記を利用できるようになり始めた 時期であると考えられる。また、福田 (2008) よ りも今回の調査で書き始める年齢が早まっている ことから、ネット利用が容易になるなど環境的な 影響もあるのではないかと考えられる。 (2)日記の効果 日記を書く理由や良かったと思うことでは、タ イプⅰ・ⅲ(非公開)とタイプⅱ・ⅳ (公開) の 間では大きく違う傾向が見られた。このことから 非公開日記と公開日記では書く理由やその効果に 違いがあるのではないかと考えられる。これは、 福田 (2008) でも同じ傾向が見られた。 非公開日記では、記録手段などの自分自身の思 い出や、自身を振り返るためなどの理由で書いて いる人が多く、心情を整理したり反省したりでき るなどの自分自身への効果を得ている人が多い傾 向であった。これは、佐々木 (1994) のモデル図 で示された日記の意義や特徴に一致することから 青年期の日記の特徴が示され、日記への自己開示 によって自己を客観的に見るなどの自己への効果 が示唆されたと考えられる。 一方で、公開日記では「近況報告」「何かを伝 えたい」「他者と交流できる」など、他者との関の質問であった。実験協力者には事前に同意書を 署名してもらった。この同意書は、秘密性の高い 非公開日記の一部の内容を結果資料として報告し てもらうにあたり、倫理的配慮として事前に行っ たものである。その内容として、調査内容の記 載、実験結果を資料としてのみ使用すること、個 人が特定されないこと、研究者以外には公開せず 実験終了後は破棄することなどを明示した。また 実験中に使用した個人の日記に関しては、実験実 施中及び実験終了後に研究者が回収したり、閲覧 したりしないことを事前に明示した。 実際の実験では、日記 1 週間の単位を「月∼日 曜日」までとし、実験協力者にはそれぞれ非公開 日記を 1 週間で必ず 2 日以上、3 週間継続しても らうようにお願いした。各週ごとに、1 週間の日 記への開示状況についての質問紙Ⅱ−①の回答を お願いし、心理学科の BOX 回収かメールでの回 収を行った。3 週間終了後に、第一著者立ち合い のもと質問紙Ⅱ−②を回答してもらった。その 際、3 週間分の質問紙Ⅱ−①を、回答するための 資料として対象者に提示した。
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.質問紙構成 佐々木 (1994) と研究Ⅰで使用した質問紙調査 を参考に作成した。 (1)質問紙Ⅱ−① 1 週間の日記への開示状況 ①フェイスシート ID、調査開始から何週目かの記入を求めた。 ②日記に書いた内容の質問項目 日記に書いた内容に関して、月∼日曜日の 1 週間の概要を 1 日ずつ自由記述で回答しても らった。 1 日に複数の内容がある場合、対象者 にとって重要だった順に 3 つまで記述しても らった。また、日記を書かなかった場合や記載 したくない内容がある場合には、概要欄に×記 入をお願いした。 ③ 日記に書かなかった印象的な出来事の質問項 目 印象に残っているが、日記には書かなかった 出来事に関して、②の項目同様、自由記述で回 答してもらった。さらに 1 つの概要につき、日 記に書きたかったことには○を、書きたくな かったことには×で回答を求めた。 (2)質問紙Ⅱ−② 3 週間の振り返り ①日記に書いた内容に関する質問項目 可能性が考えられる。さらに、Ⅲ群においては 9 割が日記の使い分けを行っていた。非公開日記を 私的なもの、公開日記を公的なものとして捉えて 使い分けをし、公開日記では限定された側面だけ を開示している可能性が考えられる。3
.日記を書かない人についての検討 現在日記を書いていない人の中でも日記歴のあ る人は 6 割を上回っており、多くの人が青年期ま でに何らかの日記行動をしていると考えられる。 一方、日記経験者のほとんどが、面倒くさい、持 続しないと報告していることから、日記を続ける ことに何かしらの困難を感じていると考えられ る。また、日記を必要と感じたり、興味を持つこ とはあっても、常に必要としているわけではない と考えられる。さらに、日記未経験者に関して は、日記そのものに意義を感じない人も多い傾向 が示された。ゆえに、日記以外の手段で自己内省 やコミュニケーションを行っている可能性が考え られる。研究ϩ<実験>
目 的 実験協力者に 3 週間非公開日記を書いてもらう 実験を行い、日記への開示状況と開示プロセスに つ い て の 検 討 を 行 う。 開 示 プ ロ セ ス は 佐 々 木 (1994) のプロセスモデルを参考に検討を行う。 方 法1
.実験協力者 研究Ⅰ質問紙時に募集を行った際、26 名が協力 の意思を示した。そのうち、連絡のやり取りを行 うことができ、同意書に署名して下さった女子大 学生 20 名に協力をお願いした。自意識尺度の値 は公的・私的自意識それぞれ特に逸脱していな かった (それぞれ M = 5.11, SD = .85, 得点可能範 囲 3.18∼6.45 点;M = 5.43, SD = .63, 得点可能範 囲 3.8∼6.5 点)。2
.実験時期と手続き 2010 年 6∼ 7 月 に 実 験 を 行 っ た。 実 施 に お い て、実験内容の概要説明を対象者それぞれに個別 に行った。その内容は、実験の手順の説明、注意 事項、実験結果の取り扱いと、匿名性を保証する こと、同意書への署名のお願い、実験協力者から究Ⅰで使用した内容カテゴリーに基づいた上で 18 カテゴリーに分類した。また、日記を書いた日 数及び印象に残った出来事の日数のそれぞれ合計 数、一週間の日数平均を算出した。また、質問紙 Ⅱ−②について、自由記述による「書きたいと 思った理由」「書いてよかったと思うこと」の回答 を、それぞれ研究Ⅰで行った「理由」「良かったと 思うこと」のカテゴリー分類に基づき分類した。 さらに、「書き残さなくてよかったこと」に関し て、「ある/ない」の理由をそれぞれ意味の類似性 等を考慮した上で、研究者自身がそれぞれ 9 カテ ゴリーと 6 カテゴリーに分類した (Appendix 1)。
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.日記に書いた内容検討 日記を書いた 3 週間の合計日数平均は非公開群 = 12.80 (SD = 6.30)、 公開群= 10.71 (SD = 2.69)、 未利用群= 14.25 (SD = 5.65) で、日記行動群間で 有意差は見られなかった (F (2,17)= .94, n.s.)。 また 3 週間の変化をみるために、日記行動群 (被 験者間)×各週 (被験者内) の 2 要因分散分析を 行った (Table 6)。有意差は得られなかったが、 未利用群は 1 週目より 2・3 週目の方が書く日数 が減る傾向がみられた。 日 記 に 書 い た 内 容 で は 全 体 で「 日 常 生 活 (29.5%)」が最も多かった。また、「容姿 (0.2%)」 「金銭 (0.2%)」「一般社会 (0.9%)」に関してはど の日記群でも少なかった。日記状況別に明確な差 は得られなかったがそれぞれの傾向を示す。非公 開群は 「学校生活 (24.5%)」「勉強 (10.8%)」が 多 く、 公 開 群 は「 友 達 (14.3 %)」「 ア ル バ イ ト (14.3%)」が多かった。未利用群は、「学校生活 3 週間の日記に書いた内容に関して、「書き たいと思った理由」「書いてよかったと思うこ と」について自由記述による回答を求めた。ま た「日記に書き残さなくて良かったこと」があ るかについて「はい/いいえ」で回答後、その 理由を自由記述で回答を求めた。 ② 日記には書かなかった印象的な出来事の質問 項目 3 週間の日記には書かなかった印象的な出来 事に関して、日記に〈書きたかったもの〉と 〈書きたくなかったもの〉について質問した。 〈書きたかったもの〉に関して、「なぜ日記に書 きたいと思ったか」について自由記述で回答 を、「日記に書き残さなくて良かったこと」が あるかについて「はい/いいえ」で回答後、そ の理由を自由記述で回答を求めた。〈書きたく なかったもの〉に関してその理由を自由記述 で、「日記に書き残さなくて良かったこと」が あるかについて「はい/いいえ」で回答後、そ の理由を自由記述で回答を求めた。 結 果 実験協力者を現在の日記状況別に、非公開日記 を行っているⅠ・Ⅲ群を非公開群、公開日記のみ を行っているⅡ群を公開群、日記を行っていない Ⅳ群を未利用群と 3 群に分類した。また検定は行 うが、被験者数が少なかったため統計的に有意で なかった場合にもその傾向も同時に示す。 まず、質問紙Ⅱ−①について「日記に書いた内 容概要」「印象に残った内容概要」について、研 Appendix 1 「書き残さなくてよかったこと」の理由カテゴリー分け 書き残さなくてよかったこと ある ない 1 後で読み返したときに不快になる 1 満足いくように書いた 2 思い出したくない 2 どのような出来事も自分自身である 3 書かないほうが整理できる 3 自己内省できる 4 必要性がない 4 自分だけが読むから 5 日記の主旨とあわない 5 書き残したくないことは書かなかった 6 他に書きたいことがあった 6 記録に残したかった 7 言語化したくない 8 書く時間がなかった 9 忘れていた多 く、 非 公 開 群・ 公 開 群 で は 70 % 以 上 で あ っ た。一方、未利用群では「発散衝動 ( 2 名)」「懐 古手段 ( 1 名)」「自己内省 ( 1 名)」といくつかの 理由に分散した。「書き残さなかった理由」とし ては、「書く時間がなかった ( 7 名)」が全体で最 も多く、次いで「他に書きたいことがあった ( 5 名)」が多かった。また、約 20%の内容に関しては 書き残したくないと積極的な意志を示した。その 理由として全体で「読み返したときに不快になる ( 6 名)」「言語化したくない ( 5 名)」が多かった。 考 察
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.日記への開示状況の検討 日記への開示状況は、どの日記状況群でも 3 週 間で平均して 10∼14 日ほど日記を書いていたこ とが示された。ゆえに毎日日記を書くのではな く、個人の生活スタイルに合わせて日記を書く傾 向が示唆された。3 週間の変化において日記状況 群別に明確な差は見られなかったが、公開群は 1 週目から 2 週目にかけて特に少なくなっている傾 向が示された。また、未利用群は週を重ねるうち に書く日数が減る傾向が見られた。さらに、日記 に書かなかった印象的な出来事では、日記状況群 別に違いが見られ、特に未利用群では出来事の報 告数が少なかった。 日頃日記を書いている非公開群・公開群は無理 に毎日書こうとせず、必要なときや書きたいと 思ったときに書いていると予想され、自己開示の (15.7%)」「アルバイト (10.8%)」が多かった。 書きたいと思った理由として、「記録手段 (12 名)」が最も多く、次に「自己内省 ( 4 名)」、「回 顧手段 ( 2 名)」「発散衝動 ( 2 名)」であったが、 その他のカテゴリーの出現は見られなかった。書 いてよかったことについては「自己内省 (12 名)」 が最も多く、「記録手段 ( 4 名)」「情緒的変化 ( 4 名)」であったがその他のカテゴリーの出現は見 られなかった。一方、書かなければ良かったこと は公開群 2 名と未利用群 1 名が「ある」と回答し 「読み返したときに不快になる」という理由を挙 げていた。2
.日記に書かなった印象的な内容検討 日記に書かなかった印象的な出来事の 3 週間の 合計日数平均は、非公開群が 15.00 (SD = 5.70) と最も多く、公開群は 9.29 (SD = 3.99)、未利用群 が 6.88 (SD = 5.89) と最も少なかった (F (2,17)= 3.73, p<.05)。また、3 週間の変化をみるために、 日記行動群 (被験者間)×各週 (被験者内) の 2 要 因分散分析を行った (Table 6)。各週の主効果は 有意であり (F 2,34)= 3.79 ,p<.05)、第 1 週が最 も多く報告し、第 1 週よりも第 2 週が、第 2 週よ りも第 3 週が少なかった。 記述内容は、日記に書いた内容同様全体で「日 常生活 (30.9%)」が最も多かったが、日記状況別 に明確な差は得られなかった。また、内容の約 50%以上を日記に書き残したいとしている。その 理由としては「記録手段 (12 名)」が全体で最も Table 6 日記に書いた日数、および書かなかった印象的な出来事の日数の3週間の変化に関する日記状況群別の2要因の分散分析 日記状況 N 第 1 週 第 2 週 第 3 週 F 検定 多重比較 平均 (SD) 平均 (SD) 平均 (SD) 書いた 日 数 非公開 5 4.20(2.28) 4.40(2.07) 4.20(2.17) <被験者内> 各週 F =.49 公開 7 3.57(1.27) 3.43(1.27) 3.71 (.76) 各週×日記別 F =.95 未利用 8 5.25(1.98) 4.50(2.20) 4.50(1.77) <被験者間> 日記別 F =.94 印象的な 出来事 日 数 非公開 5 5.00(2.35) 5.00(1.58) 5.00(2.00) <被験者内> 各週 F =3.79* 1>2>3 公開 7 4.29(2.29) 2.57(1.13) 2.43(1.27) 各週×日記別 F =1.80 未利用 8 2.63(2.33) 2.25(2.19) 2.00(1.77) <被験者間> 日記別 F =3.73* 非公開 =公開 >未利用 ※*p<.05,**p<.01省」「記録手段」「情緒的変化」が報告されたこと から、日記により言語化・視覚化・象徴化したこ とで得られた手応えを示すプロセス 4 が支持され たと考えられる。特に普段は非公開日記を書かな い公開群・未利用群では「自分を振り返れる」な どの自己内省の側面が多く報告されたことから、 この側面は非公開日記における重要な意義である と考えられる。 一方、公開群と未利用群で書かなければ良かっ たことがあると報告されている。これらは否定的 な感情の想起が予想されたり、否認したい心情を 味わってしまうなど、日記に開示したことによっ て不快な影響を受けてしまうためと考えられる。 これらは、日記における自己開示のマイナス側面 と考えられる。一方、非公開群では、そういった ことを回避するために書き残さないようにした り、どんな出来事も自分自身のことであると受け 止め、自己内省を深めようと日記を利用している 人も見られた。こういった内容選別や否認したい ことに向き合おうとする作業は、青年期の発達課 題である自己確立において重要な作業ではないか と考えられる。 また、印象的であっても日記に書き残さなかっ た出来事が報告されていることから、日記への開 示プロセスには抑制要因があるのではないかと考 えられる。書き残したい動機があったにも関わら ず、時間的な要因や書き残したいものへの優先順 位があったことが報告されており、開示するに至 るまでの内容選別過程があるのではないかと考え られる。一方、積極的な意思を持って書き残さな かったものも報告され、「読み返したときに不快 になる」などの否定的な感情の想起が予想される 内容の回避傾向や、言語化への抵抗や困難がある ことが示唆された。 以上のことから、佐々木 (1994) のプロセスモ デルが支持されたと同時に、日記へ開示する際に 発生する抑制要因と日記における自己開示のマイ ナス側面が存在する可能性が示唆されたと考えら れる。
総合考察と今後の課題
今回の研究では、非公開日記と公開日記の日記 行動を、自意識との関連と開示内容という視点か 頻度を適度に保っていると考えられる。一方、普 段日記を書いているはずの公開群で示された傾向 は、他者の存在の有無が影響しているのではない かと考えられる。川浦ら (1999) は、常に聞き手 となる他者の存在がいることが日記を書き続ける ことの大きな要因でもあるとしており、他者の存 在が日記継続への動機づけを高めている可能性が ある。ゆえに、他者の存在を除いた非公開日記で は、ある程度の自分にとってのメリットや日記へ の意義が明確に認識されていなければ、日々の生 活の中で印象的な出来事を注意深く捉えようとす ることが難しいのではないかと考えられる。 さらに普段日記を書かない未利用群は、印象的 な出来事が少ないのではなく、出来事のほとんど を日記に書き記していた可能性が考えらえる。ゆ えに、実験開始当初は日記を書く事への動機付け が一時的に高まり開示頻度が多くなったが、日を 重ねるにつれ日記への自己開示を継続することに 対して困難が生じ、開示頻度が減少した可能性が 予想される。 日記に書いた内容は、研究Ⅰと同様に「日常生 活」や「学校生活」が最も多く、これらが日記の 主要な内容であると思われる。日記状況別には明 確な差は得られなかったが、個々の生活状況に即 した内容が書かれることが多く、個人の生活形態 の違いが日記への開示内容に差を及ぼした可能性 が高いと思われる。 印象的な出来事でも同様に、個々の生活状況に 応じた出来事が報告されている。日記状況群に関 わらず、約 50%以上の内容に関して日記への開示 動機が高いことが窺えた。これは、非公開日記の 「聞き手」としての側面が影響し、自身の思いを 開示したい、自己内省を深めたいという動機に結 びついたと考えられる。一方、約 20%の内容に 関して積極的な意思を持って日記への開示抵抗を 示した。これらは否定的感情や否認したい内容で ある可能性が高く、開示することを自身で制御し ていた可能性が高いと考えられる。2
.佐々木(1994
)のプロセスモデルの検討 まず、書きたいと思った理由として 「記録手段」 「自己内省」、「発散衝動」が報告されたことか ら、日常生活の中での体験や味わった心情を日記 に書き出すプロセス 3 が支持されたと考えられ る。また、書いてよかったことについて「自己内ていると予想されるため、そういった関連を検討 することも日記の意義を捉えるには重要であると 思われる。