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踏み台の安全性(全文)

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1. 目的 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1 2. テスト実施期間 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1 3. テスト対象銘柄 ・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2 4. 各部の名称 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3 5. 概要 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 4 6. 危害情報システムより・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 5 7. テスト結果 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 6 1) 基本的強度 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 6 2) 天板の外側に荷重が集中した場合の強度 ・・・・・・・・・・・・・・・ 8 3) 手や指を挟むおそれ等の調査 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 11 4) 滑りやすさ及び安定性の調査 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 15 5) 表示の調査 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 17 8. 消費者へのアドバイス ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 19 9. 業界への要望 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 20 10. テスト方法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 21 11. テスト結果一覧 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 26 12. テスト対象銘柄 仕様一覧 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 28

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1.目 的

一般家庭において、高い場所のものを取る作業などに使用する台として、脚立や踏み 台注1)、洗車等にも用いられる足場台などがある。 このうち踏み台について、「踏み台を購入して使用したところ、天板が沈んで転倒し 右足首、膝、右手首をけがした。強度等に問題がないか調べてほしい。」という原因 究明テストの依頼があった。 また、国民生活センター危害情報システム注2)には、踏み台や足場台でけがをした事 例が2001 年度以降で 79 件注3)寄せられていた。内容としては、「踏み台に登って物を 取ろうとしていたら、バランスを崩して転倒。」、「左足を踏み台に乗せたところ、バ ランスを崩し転倒。」「足場台に乗り作業をしていたら突然足場台の脚が曲がり落下。」 など多くが転倒・転落の事故であり、けがの内容として骨折(19 件)など重篤な事例 もあった。さらに、2歳の幼児が折りたたみ式の踏み台を開く際に指を切断した事例も 報告されている。年齢別に見ると、70 歳以上の高齢者の事故が 23 件と3割近くを占め ている一方で、10 歳未満の幼児や児童がけがをした事例も 10 件あった。 そこで、家庭で用いられる踏み台と足場台について、強度等に問題がないか調べると ともに、事故の再発防止のため、事故事例を参考に想定される日常的な使用方法によっ て本体が変形したり手や指を挟むおそれがないか調べた。また、形状・機構や材質の違 いにより脚部の滑りやすさや安定性など安全性に違いがないか調べ、消費者へ情報提供 することとした。 注 1) 現行の SG 認定基準では脚立と踏み台を以下のように区分している。 脚 立:天板面までの垂直高さが 800mm を超え 2000mm 以下のものをいう。専用脚立とはしご 兼用脚立がある。 踏み台:天板面までの垂直高さが 800mm 以下で、はしごとして兼用できないものをいう。 注 2) 商品やサービス等により生命や身体に危害を受けたり、そのおそれがあった情報を全国の消費 生活センター及び危害情報収集協力病院からオンラインで収集し、それを分析し、消費者被害の 未然防止・拡大防止に役立てることを目的として作られたシステムである。 注 3) 2001 年度~2006 年度受付、2007 年 3 月 20 日までの登録。

2.テスト実施期間

検 体 購 入 :2006 年 12 月~2007 年 3 月 テスト期間:2007 年 1 月~3 月 1

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3.テスト対象銘柄

金属製踏み台には支柱が開閉(折りたたみ)のできるものとできないものがある。さ らに、昇降面が両面式のものと片面式のものがあり、片面式の中には上わくが付いてい るものが存在する。 以上の中から、支柱が開閉できる両面式5銘柄と片面式(上わく付)3銘柄の計8銘 柄をテスト対象とする。 さらに、金属製踏み台と同様に主に屋内で使用される木製踏み台2銘柄と樹脂製踏み 台2銘柄、さらに、最大使用荷重と天板の高さが同じで、天板の長さがあり洗車等に用 いられる足場台3銘柄を加えた計15 銘柄(形状例を写真1~4に示す)をテスト対象 とする(表1)。 写真1.金属製踏み台 (左から両面式(天板幅狭)、両面式(天板幅広)、片面式(上わく付)) 天板 上わく 写真2.木製踏み台 写真3.樹脂製踏み台 写真4.足場台 2

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表1.テスト対象銘柄一覧 タイプ 銘柄 No. 銘柄名 (型番) 製造者又は 販売者 天板 高さ (㎝) 最大使 用荷重 (㎏f) *1 原産国 表示 表示 マーク 購入 価格 (税込) 備考 1 オリビアmini (CC‐60As) アルインコ㈱ 57 100 中国 ― \1,580 開閉機構有 2 アルミ踏台 (SE-6) 長谷川工業㈱ 56 100 中国 ― \1,380 開閉機構有 天 板 幅 狭 3 アルミ合金製踏台 (PFC-57B) ㈱ピカコーポレイション 57 100 中国 Aマーク *2 \1,980 開閉機構有 4 アルミ踏台 (SEW-6) 長谷川工業㈱ 56 100 中国 SGマーク Aマーク*2 \2,480 開閉機構有 金 属 製 両 面 式 天 板 幅 広 5 アルミ合金製踏台 (PFW-57) ㈱ピカコーポレイション 57 100 中国 Aマーク *2 \5,100 開閉機構有 6 ラクステ2段 (KLH10-5108) コーナン商事㈱ ― 80 中国 ― \1,480 開閉機構有 7 コンビステッププラ (KSP-2) マツ六㈱ 46 100 台湾 ― \2,480 開閉機構有 天板,踏ざん樹脂製 金 属 製 片 面 式 上 わ く 付 8 ピッコロスタンダード (73401) ライフハイトアーゲー日本支店 46 100 ドイツ GSマーク *3 \7,329 開閉機構有 9 木製踏台2段 (KSY-6961) コーナン商事㈱ 54.5 90 タイ ― \3,580 開閉機構有 木製 10 フリーチェア2段タイプ (FRX-501) ㈱ナカジマ 46.5 100 中国 ― \7,875 開閉機構有 11 2段踏み台 (NF-560) アイリスオーヤマ㈱ 56.5 100 中国 ― \1,780 開閉機構なし 樹脂製 12 DESQ roll-a-step (―) ㈱ダーレー・ジェーピーエヌ 41.8 150 ドイツ GSマーク *3 \6,980 開閉機構なし 脚部キャスター付 13 アルミ合金製足場台 (PXGV-507D) アルインコ㈱ 53 100 中国 Aマーク *2 \2,980 開閉機構有 14 アルミ足場台 (DRX-0752) 長谷川工業㈱ 52 100 中国 ― \2,980 開閉機構有 金 属 製 足 場 台 15 折りたたみ式足場台 (DWD-K606) ㈱ピカコーポレイション 60 100 中国 Aマーク*2 \7,600 開閉機構有 *1:銘柄によって耐荷重(kg)等の表示もあったが、本報告書では最大使用荷重(kgf)で統一した *2:軽金属製品協会はしご脚立部会の制定する業界自主規準に適合した製品に付けられるマーク *3:ドイツの機器安全法にもとづいて検査され、安全性が認証された製品に付けられるマーク -:表示なし *このテスト結果はテストのために購入した商品のみに関するものである。

4 . 各 部 の 名 称

踏み台各部の名称を写真5に示す。 写真5.踏み台各部の名称 天板 支柱開き止め金具 支柱 踏ざん 3

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5 . 概 要

様々な踏み台及び足場台について、基本的強度、天板の外側に荷重が集中した場合の 強度、手や指を挟むおそれや安定性等を調査した。 ●高齢者の事故が目立つが、一方で幼児や児童がけがをした事例もあった 踏み台及び足場台でけがをした事例が2001 年度以降で 79 件寄せられていた。け がの内容としては骨折や指切断という重篤なものもあった。年齢別に見ると、高齢者 の事故が目立つが、一方で10 歳未満の幼児や児童がけがをした事例もあった。 ●天板や踏ざんに荷重を加えたとき、形状・機構や材質の違いにより基本的強度に大き な差異はなかったが、支柱端部の曲げ試験で支柱の変形が大きいものが2銘柄あった JIS 及び SG 認定基準を参考に基本的強度を調べた結果、天板や踏ざんに荷重を加 えたときの強度に問題のあるものはなく、形状・機構や材質の違いにより大きな差異 はなかったが、支柱端部の曲げ試験において支柱の変形が大きいものが金属製踏み台 で2銘柄あった。 ●天板の外側に荷重が集中すると大きく変形するものが2銘柄あった 実際に使用者が天板の上に乗って姿勢を変えたときの荷重分布を調べた結果、天板 上での姿勢によって天板の外側に荷重が集中することが確認された。このような状況 を考慮して、天板の外側に荷重が集中した場合の強度を調べた結果、天板が大きく変 形するものが金属製踏み台で2銘柄あり、そのうち1銘柄は支柱と天板の結合部に変 形が生じ、荷重を除いた後の変形も大きかった。 ●可動部で手や指を挟むおそれのあるものが目立った 開閉機構のあるものの中に、持ち上げた際に自重で支柱が開いてしまうものが 12 銘柄あり、持ち運びの際など、持ち方に注意しないと予期せず支柱が開いてしまう可 能性が考えられた。さらに、使用時に支柱が閉じるのを防止するロック機構が小さい 力で閉じてしまい、有効に機能していないものが1銘柄あった。事故事例を参考に、 手や指を挟むおそれがないか調べた結果、開閉機構のある金属製の踏み台及び足場台 の中に、使用者が開閉時に不意に手の皮膚等を挟むおそれのあるものが2銘柄あった ほか、危険性を認識できない幼児が板状の可動部で指を挟むおそれのあるものが9銘 柄あった。 ●脚部が滑りやすいものがあった 滑りやすいものや安定性の悪いものがないか調べた結果、支柱端具の摩擦係数が小 さく滑りやすい金属製踏み台1銘柄と支柱端具のない木製踏み台2銘柄が比較的滑 りやすかったほか、脚部にバネ式のキャスターが付いていて、17kgf 以上の荷重が加 わらないと本体が十分に接地せず動いてしまうものが1銘柄あった。また、支柱端具 が外れやすいものが1銘柄あった。 ●本体の表示が不十分なものがあった 本体に製造者や販売者等の住所又は電話番号が記載されていないものが5銘柄あ った。また、「幼児に使用させないこと」という旨の表示をしていたものはなかった。 4

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6 . 危 害 情 報 シ ス テ ム よ り

国民生活センター危害情報システムには、踏み台及び足場台でけがをした事例が 2001 年度以降で 79 件寄せられていた。 1)けがの内容 けがの内容としては、「擦過傷・挫傷・打撲傷」が38 件(48.1%)で最も多かった。 次いで「骨折」が19 件(24.1%)あったほか、指を切断した事例も1件あった(図1)。 図1.けがの内容別件数 2 1 1 1 1 2 5 9 19 38 0 10 20 30 40 その他 筋・腱の損傷 内蔵損傷 頭蓋(内)損傷 指切断 神経・脊髄の損傷 脱臼・捻挫 刺傷・切傷 骨折 擦過傷・挫傷・打撲傷 件数 2)年齢別 年齢別に見ると、70 歳以上の高齢者の事故が 23 件(29.1%)で最も多く、次いで 60 歳代の事故が 20 件(25.3%)であった。一方、10 歳未満の幼児や児童がけがをし た事例も10 件(12.7%)あった(図2)。 図2.年齢別件数 1 23 20 10 9 0 5 1 10 0 5 10 15 20 25 不明 70歳以上 60歳代 50歳代 40歳代 30歳代 20歳代 10歳代 10歳未満 件数 5

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7 . テ ス ト 結 果

1)基本的強度 「作業中に踏み台が折れ、転倒しけがをした。」など危害情報システムには踏み台 や足場台を使用中に破損・変形したために転倒・転落したという事例が複数寄せられ ている。 そこで、強度に問題のあるものはないか、形状・機構や材質の違いにより強度に違 いがあるか調べるため、JIS注1)及びSG認定基準注2)を参考に強度試験を実施した。 注1) JIS S 1121 (アルミニウム合金製脚立及びはしご) 注2) 住宅用金属製踏み台の認定基準及び基準確認方法(CPSA0066) 及び 住宅用金属製脚立の認定基準及び基準確認方法(改正案) (1)支柱端部の曲げ試験を実施した結果、支柱の変形が大きいものが2銘柄あった 支柱の強度を調べるため、支柱端部に横方向から最大使用荷重の0.9 倍の荷重を1分 間加えた後の残留たわみを調べた(支柱端部の曲げ試験)。 その結果、支柱の変形が大きく、残留たわみが基準値の2mm を超える銘柄(No.7、 No.8)があった(写真6、表2)。いずれの銘柄も材質や形状が JIS や SG 認定基準で 規定しているものと異なるため基準の対象外であり、JIS マークや SG マークが表示さ れているものではなかった。 写真6.支柱の変形の例(No.8) 変形 ①試験前の支柱 ②試験後の支柱 6

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表2.支柱端部の曲げ試験結果 支柱端部へ最大使用荷重の0.9倍荷重 タイプ 銘柄 No. 銘柄名(型番) 残留たわみが2mm以下であること 1 オリビアmini (CC‐60As) ○ 2 アルミ踏台 (SE-6) ○ 天 板 幅 狭 3 アルミ合金製踏台 (PFC-57B) 4 アルミ踏台 (SEW-6) ○ 金 属 製 両 面 式 天 板 幅 広 5 アルミ合金製踏台 (PFW-57) ○ 6 ラクステ2段 (KLH10-5108) ○ 7 コンビステッププラ (KSP-2) 内曲げ:2.46mm 外曲げ:○ 金 属 製 片 面 式 上 わ く 付 8 ピッコロスタンダード (73401) 内曲げ、外曲げとも2mmを超えるたわみ (0.9倍未満の荷重で変形したためテ ストを中断した) 9 木製踏台2段 (KSY-6961) ○ 木製 10 フリーチェア2段タイプ (FRX-501) ○ 11 2段踏み台 (NF-560) 形状の関係でテスト対象外とした 樹脂製 12 DESQ roll-a-step (―) 形状の関係でテスト対象外とした 13 アルミ合金製足場台(PXGV-507D) ○ 14 アルミ足場台 (DRX-0752) ○ 金 属 製 足 場 台 15 折りたたみ式足場台(DWD-K606) ○ (2)垂直方向強度試験を実施した結果、全ての銘柄で破損・変形等はなかった 天板及び支柱の強度が十分でない場合、天板の上に乗ったときに天板や支柱が変形す る可能性がある。そこで、天板に加わる荷重に対する強度を調べるため、天板中心部に 最大使用荷重の4倍の荷重を1分間加えた(垂直方向強度試験)。 その結果、全銘柄とも破損・変形等は認められず、天板の中心に荷重が加わっている 場合、表示されている最大使用荷重に対し十分な強度があることがわかった。 (3)踏ざんの強度試験を実施した結果、全ての銘柄で破損・変形等はなかった 踏ざんの強度が十分でない場合、昇降時に踏ざんが破損したり変形する可能性がある。 そこで、踏ざんの強度を調べるため、踏ざん中心部に最大使用荷重の2.2 倍の荷重を1 分間加えた(踏ざんの強度試験)。 その結果、全銘柄とも破損や変形は認められず、踏ざんの強度に問題はなかった。 7

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(4)開き止め金具の強度試験を実施した結果、全ての銘柄で開き止め金具や開閉機構に破 損等はなかった 開き止め金具は踏み台の剛性を確保するために必要な構造部品であって、安定性に対 し大切な機能を持っている。そこで、開き止め金具や開閉機構の強度を調べるため、踏 み台をローラコンベア上に設置し、天板に最大使用荷重の2倍の荷重を加えた(開き止 め金具の強度試験)。 その結果、開閉機構のある全銘柄とも開き止め金具や開閉機構に破損や変形は認めら れず、強度に問題はなかった。 2)天板の外側に荷重が集中した場合の強度 「踏み台を購入して使用したところ、天板が沈んで転倒し右足首、膝、右手首をけ がした。強度等に問題がないか調べてほしい。」という原因究明テストの依頼があっ た。 そこで、想定される日常的な使用方法によって天板への荷重分布がどのように変化 するのか調べるとともに、天板の外側に荷重が集中した場合の強度を調べた。 (1)天板上での姿勢によって、天板の外側に荷重が集中する場合があった 取扱説明書では、「天板の上で作業するときは、体が踏台から乗り出さないようにし てください。」、「天板に立つときは、身体が天板中央にくる位置で、図3のように立っ てください。」と表示されていた。そこで、実際に使用する場合にどのような荷重が天 板に加わるかモニター3 名に天板を模した測定器上で、取扱説明書のとおり足裏全面を 天板に接した状態(図3 正しい使い方)で、前後方向に姿勢を変えた場合(乗り出さ ない程度)の荷重分布を調べた。 その結果、天板上での姿勢によって、体重の 70%以上の荷重が天板の外側に加わる 場合があることがわかった(表3)。 図3.取扱説明書による表示 8

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表3.荷重分布の 10 秒間の平均値(モニター3 人の平均) 前傾時 後傾時 平 均 体 重 に 対 す る割合(%) 平 均 体 重 に 対 す る割合(%) ①前面外側 63.0 3.5 ②内側 31.2 25.3 ③後面外側 5.8 71.1 (2)天板の外側に荷重が集中した場合、大きく変形するものがあった 天板の外側に荷重が集中した場合の強度を調べるため、天板の外側に最大使用荷重に 相当する荷重を5分間加え、天板や天板取付部などに変形等がないか確認した。 その結果、荷重が加わっている間に大きく変形するものが2 銘柄(No.3、No.7)あ った。さらに、このうち1 銘柄(No.3)は天板と支柱の結合部に変形が生じ、荷重を除 いた後の残留たわみも大きくなった(写真7、写真8、表4)。 写真7.天板が変形する様子の例(No.3) ②荷重を加えている状態 ①荷重を加える前の状態 写真8.天板と支柱の接合部(No.3) 変形 9

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表4.天板の外側に荷重が集中した場合の強度 (単位:mm) 天板端部への荷重 天板の外側に、最大使用荷重に相当する荷 重を5分間加える タイプ 銘柄 No. 銘柄名 (型番) 最大たわみ 残留たわみ 1 オリビアmini (CC‐60As) 3.64 1.48 2 アルミ踏台 (SE-6) 4.65 2.93 天 板 幅 狭 3 アルミ合金製踏台 (PFC-57B) 9.89 4.65 4 アルミ踏台 (SEW-6) 2.83 0.78 金 属 製 両 面 式 天 板 幅 広 5 アルミ合金製踏台 (PFW-57) 4.31 2.75 6 ラクステ2段 (KLH10-5108) 3.41 0.53 7 コンビステッププラ (KSP-2) 8.57 1.98 金 属 製 片 面 式 上 わ く 付 8 ピッコロスタンダード (73401) 2.54 0.60 9 木製踏台2段 (KSY-6961) 2.32 0.28 木製 10 フリーチェア2段タイプ (FRX-501) 3.12 0.30 11 2段踏み台 (NF-560) 4.43 0.62 樹脂製 12 DESQ roll-a-step (―) 2.32~5.51 * 0.27~0.51* 13 アルミ合金製足場台 (PXGV-507D) 5.05 1.51 14 アルミ足場台 (DRX-0752) 5.87 2.92 金 属 製 足 場 台 15 折りたたみ式足場台 (DWD-K606) 4.00 1.80 *:天板が円形であり下に支柱が3本あるため、場所によりたわみが異なる 10

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(3)天板の外側に立つと転倒・転落のおそれがある 天板の外側に立つと、バランスを崩して転倒や転落のおそれがある。そこで、実際に 天板の外側に立ち、どのように転倒・転落するか再現した。 その結果、使用者は天板の外側に立つとバランスを崩しやすくなり、転倒・転落の危 険性が増すことが確認できた(写真9)。 写真9.天板の外側に立ち転倒・転落する様子 ①天板の端に立つ ②バランスを崩して転倒・転落 3)手や指を挟むおそれ等の調査 危害情報システムには「リビングに立てかけていた折りたたみ式の踏み台を2歳の 幼児が開く際に左手薬指を切断した。」という事例があった。 そこで、形状・機構の違いにより簡単に支柱が開閉してしまうものはないか、開閉 の際に可動部で手や指を挟むおそれがないか調べた。 (1) 支柱が自重で開いてしまうものが 12 銘柄、使用中に小さな力で支柱が閉じてしまう ものが1銘柄あった 使用時や運搬時に予期せず開閉することがないか確認するため、支柱が閉じた状態で 踏み台及び足場台を持ち上げ、自重で支柱が開いてしまうことがないか調べるとともに、 支柱開き止め金具をロックした状態で前後方向(支柱が閉じる方向)から力を加え、小 さい力で支柱が閉じてしまうことがないか調べた。 その結果、閉じた場合にもロック機構があり支柱が開かない構造になっている銘柄 (No.7)を除き、開閉機構のある銘柄は自重で支柱が開いた。保管してある踏み台を幼 児がいじったり使用しようとした場合、予期せず支柱が開いてしまう可能性や、大人で も持ち運びの際など、持ち方に配慮しないと予期せず支柱が開いてしまう可能性が考え られた。特に、木製踏み台は開閉時ともにロック機構がないため、使用時や運搬時に予 期せず開閉する可能性が考えられた(写真10、写真 11)。さらに、使用時に支柱が閉 じるのを防止するロック機構が小さい力で閉じてしまうものが1銘柄(No.3)あり、有 効に機能していなかった。予期せず開閉することで思わぬ事故になる可能性もあるので、 11

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閉じた支柱が予期せず開かないように改善したり、支柱を開いた場合にロック機構が有 効に機能するよう改善することが望ましい。 写真 10.支柱の開閉 ロ ッ ク 機 構 支柱が自重で開く様子(No.3) 閉じてロック可能な銘柄(No.7) 写真 11.木製踏み台の支柱の開閉(No.9) 支柱閉 支柱開 (2)使用者が開閉時に不意に手の皮膚等を挟むおそれのあるものが2銘柄があった 開閉時に可動部で手や指を挟むとけがをする可能性があり、特に、厚みがない板状の 可動部に挟まれた場合、裂傷を負うおそれがある。そこで、使用時や運搬時に使用者が 手を触れやすい場所に手や指を挟むおそれのある板状の可動部がないか調べた。 その結果、金属製踏み台の中で、天板に近い位置にある金属金具の上部にすきまがあ り、支柱を開く際にその部分で手の皮膚等を挟むおそれがあるものが2銘柄(No.2、 No.5)あった(写真 12)。これらは使用者が危険を予見しにくい箇所であり、他の銘 柄の開閉金具には同様のすきまが生じない形状のものもあることから改善が望まれる。 12

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写真 12.手の皮膚等を挟む可能性のある開閉金具の例(No.2) ①金具上部にすき間がある(支柱閉時) ②金具上部が閉じる(支柱開時) (3)幼児が板状の可動部のすき間で指を挟むおそれのあるものが9銘柄あった 大人の使用者が構造を理解して使用すれば手や指を挟む可能性が少ない箇所であっ ても、幼児は危険性を認識せずに手や指を近づけてしまうことが考えられる。特に、厚 みがない板状の可動部のすき間などに挟まれると、最悪の場合、指を切断した事故事例 のような重篤な事故になるおそれがある。そこで、事故事例を踏まえ、幼児の指を想定 した直径5mm の丸棒が板状の可動部で挟まれるすき間などがないか調べた。 その結果、金属製の踏み台及び足場台の9銘柄で板状の可動部のすき間で指を挟むお それがあった。使用者側に注意が必要な点は当然であるが、重篤な事故を未然に防止す るため、板状の可動部には鋭利な部分が生じないよう特に仕上げに留意するなど、製品 側にも対策が望まれる。一方、板状の可動部がない木製踏み台、開閉機構のない樹脂製 踏み台には該当する箇所は存在しなかった(写真13、表5)。 写真 13.幼児が指を挟む可能性のある可動部のすき間の例 側面のヒンジ部(No.13) 開き止め金具(No.1) 側面金具(No.6) 側面金具(No.8) 13

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表5.手や指を挟むおそれの調査 開閉機構の調査① 開閉機構の調査② 使用者が手や指を挟 む可能性 幼児が手や指を挟む 可能性 タイプ 銘柄 No. 銘柄名 (型番) 支柱を閉じた状態で 持ち上げ、自重で支 柱が開かないか 支柱を開き、開き止 め金具をロックした 状態で前後方向に50 Nの力を加えて閉じ ないか 板状の可動部で使用 時や運搬時に使用者 が手や指を挟まれや すい箇所 板状の可動部で直径 5mmの丸棒が挟まれ るすき間 1 オリビアmini (CC‐60As) 開く ○ なし 開き止め金具 2 アルミ踏台 (SE-6) 開く ○ 開閉金具 開閉金具 開き止め金具 天 板 幅 狭 3 アルミ合金製踏台 (PFC-57B) 開く 19.4Nで閉じる なし 開き止め金具 4 アルミ踏台 (SEW-6) 開く ○ なし 開き止め金具 金 属 製 両 面 式 天 板 幅 広 5 アルミ合金製踏台 (PFW-57) 開く ○ 開閉金具 開閉金具 開き止め金具 6 ラクステ2段 (KLH10-5108) 開く ○ なし 側面金具 7 コンビステッププラ (KSP-2) ロック機構があり開 かない ○ なし なし 金 属 製 片 面 式 上 わ く 付 8 ピッコロスタンダード (73401) 開く ○ なし 側面金具 9 木製踏台2段 (KSY-6961) 開く 閉じる* ロック機構なし なし なし 木製 10 フリーチェア2段タイプ (FRX-501) 開く 閉じる* ロック機構なし なし なし 11 2段踏み台 (NF-560) 開閉機構なし 開閉機構なし 開閉機構なし 開閉機構なし 樹脂製 12 DESQ roll-a-step (―) 開閉機構なし 開閉機構なし 開閉機構なし 開閉機構なし 13 アルミ合金製足場台 (PXGV-507D) 開く ○ なし 側面のヒンジ部 14 アルミ足場台 (DRX-0752) 開く ○ なし なし 金 属 製 足 場 台 15 折りたたみ式足場台 (DWD-K606) 開く ○ なし 側面のヒンジ部 *:支柱(踏ざん)が閉じる方向に荷重を加えた 14

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4)滑りやすさ及び安定性の調査 危害情報システムには転倒・転落の事例が多数寄せられており、中には「木製踏み 台を購入したところ、安定が悪いためひっくり返り、みぞおちを打ち胸骨を骨折し た。」という事例があるなど安定性の悪いものが存在する可能性がある。さらに脚立 でけがをした事例として、「ビニールシートの上に、脚立を立てて上ろうとして、脚 立が滑り、転落した。」、「土手に脚立をかけて杭を打っていたところ、脚立が滑り 1.5m 位の高さから転落し頭部・腰部・足を強打した。」という事故があることから、 踏み台も脚立と同様に滑りやすいと転倒・転落事故につながる可能性がある。 そこで、形状・機構や材質の違いにより滑りやすさや安定性に違いがないか調べた。 (1)支柱端具の摩擦抵抗が小さく、滑りやすいものがあった 天板に質量5kg の重りを置いた状態で、厚さが 2mm で表面が平滑なステンレス鋼板 上での支柱端具の摩擦係数を調べた。 その結果、金属製踏み台の1銘柄(No.6)、支柱端具のない木製踏み台(No.9、No.10)、 バネ式のキャスターが付いている樹脂製踏み台(No.12)は基準値の 0.3 に照らすと、 比較的滑りやすかった(写真14、表6)。バネ式のキャスターが付いている銘柄(No.12) については、天板に17kgf 以上の荷重が加わらないとキャスターが収納されない構造で、 体重の軽い幼児が乗った場合や、大人でも十分に体重を掛けない場合には本体が十分に 接地せず動いてしまう可能性が考えられた。なお、床面の保護のために踏み台の下にカ ーペットを敷く使い方(写真 15)をした場合、カーペットの裏面の材質によっては滑 りやすくなる場合があることがわかった(No.1 でテストした結果、摩擦係数は 0.38→ 0.28 に減少)。 写真 14.脚部にバネ式のキャスターが付いている銘柄(No.12) 下:荷重が加わった状態(本体が接地) 上:荷重が加わらない状態(キャスターで動く) 15

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写真 15.踏み台の下にカーペットを敷いた状態 (2)支柱端具が外れやすいものが1銘柄あった 使用過程で支柱端具が外れた状態で使用すると、高さのバランスが崩れて不安定にな ったり、滑りやすくなることが予想される。そこで、支柱端具が容易に外れることはな いか調べるため、100N(約 10kgf)の力で支柱端具を引っ張った。 その結果、支柱端具が外れやすい銘柄(No.11)があった(写真 16、表6)。 写真 16.支柱端具が外れやすい銘柄(No.11) ②支柱端具が外れた後の状態 ①支柱端具が外れる前の状態 16

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表6.滑りやすさと支柱端具の固定状態の調査 摩擦抵抗 支柱端具の固定 タイプ 銘柄 No. 銘柄名 (型番) 5kgの重りを乗せた ときの摩擦係数 (基準値 0.3) 100Nの力で引っ張っ たとき外れないか 1 オリビアmini (CC‐60As) 0.38 ○ 2 アルミ踏台 (SE-6) 0.36 ○ 天 板 幅 狭 3 アルミ合金製踏台 (PFC-57B) 0.41 ○ 4 アルミ踏台 (SEW-6) 0.43 ○ 金 属 製 両 面 式 天 板 幅 広 5 アルミ合金製踏台 (PFW-57) 0.37 ○ 6 ラクステ2段 (KLH10-5108) 0.27 ○ 7 コンビステッププラ (KSP-2) 0.52 ○ 金 属 製 片 面 式 上 わ く 付 8 ピッコロスタンダード (73401) 0.31 ○ 9 木製踏台2段 (KSY-6961) 0.28 支柱端具なし 木製 10 フリーチェア2段タイプ (FRX-501) 0.26 支柱端具なし 11 2段踏み台 (NF-560) 0.58 外れる 樹脂製 12 DESQ roll-a-step (―) 0.12 (0.32 :荷重 17kgf 時) ○ 13 アルミ合金製足場台 (PXGV-507D) 0.45 ○ 14 アルミ足場台 (DRX-0752) 0.43 ○ 金 属 製 足 場 台 15 折りたたみ式足場台 (DWD-K606) 0.59 ○ (3)基準を参考にした安定性試験で問題のあるものはなかった 天板に75kg の重りを置いた状態で、天板に水平方向に 50N (約 5kgf)の力を加え て安定性を調べた。その結果、全銘柄とも転倒したり支柱が浮き上がることはなかった。 5)表示の調査 (1)本体に製造者や販売者等の住所又は電話番号が表示されていないものがあった 製品の取扱いに不明な点が生じたり万一不具合が発生した場合は、製造者や販売者等 に問い合わせる必要がある。そこで、本体に連絡先等について表示されているか調べた。 また、使用に関する適切な表示があるかについても調べた。 その結果、本体に連絡先等の表示がない銘柄(No.6、No.8、No.10、No.11、No.12) 17

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や最大使用荷重の表示がない銘柄(No.11)があった。また、「幼児に使用させないこ と」という旨の表示をしていたものはなかった(表7)。 写真 17.本体表示の例(No.1) 表7.本体表示の調査 タイプ 銘柄 No. 銘柄名 (型番) 製 造 業 者 等 の 名 称 及 び 住 所 並 び に電 話番 号 最大使用 荷重 安 定 し な い 場 所 や 滑 り や す い 場 所 に は 設 置 し な いこと 変 形 し た も の は 使用し な いこと 可 動 部 等 で 手 を 挟 ま な い よ う に 注意する こと 幼 児 に 使 用 さ せ ないこと 1 オリビアmini (CC‐60As) 有 有 有 有 有 なし 2 アルミ踏台 (SE-6) 有 有 有 有 有 なし 天 板 幅 狭 3 アルミ合金製踏台 (PFC-57B) 有 有 有 有 有 なし 4 アルミ踏台 (SEW-6) 有 有 有 有 有 なし 金 属 製 両 面 式 天 板 幅 広 5 アルミ合金製踏台 (PFW-57) 有 有 有 有 有 なし 6 ラクステ2段 (KLH10-5108) 住所、電話 番号なし 有 有 有 有 なし 7 コンビステッププラ (KSP-2) 有 有 有 有 有 なし 金 属 製 片 面 式 上 わ く 付 8 ピッコロスタンダード (73401) 住所なし 有 有 なし なし なし 9 木製踏台2段 (KSY-6961) 有 有 有 有 有 なし 木製 10 フリーチェア2段タイプ (FRX-501) 電話番号 なし 有 有 なし なし なし 11 2段踏み台 (NF-560) 全てなし なし なし なし 該当しない なし 樹脂製 12 DESQ roll-a-step (―) 全てなし 有 なし なし 該当しない なし 13 アルミ合金製足場台 (PXGV-507D) 有 有 有 有 有 なし 14 アルミ足場台 (DRX-0752) 有 有 有 有 有 なし 金 属 製 足 場 台 15 折りたたみ式足場台 (DWD-K606) 有 有 有 有 有 なし 18

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8.消費者へのアドバイス

1)天板の端部に立ったり、身を乗り出して作業をするような使い方をしない 事故事例を参考に、天板への荷重分布を調べた結果、使用者の天板上での姿勢によ って、天板の外側に荷重が集中することが確認された。さらに、天板の外側に荷重が 集中した場合の強度を調べた結果、一部の金属製踏み台で天板が大きく変形するもの があった。踏み台や足場台でけがをした事例の多くが転倒・転落の事故であり、天板 の端部に立ったり、身を乗り出して作業をするなどの使い方をした場合にはバランス を崩しやすくなり、転倒・転落の危険性が増すので注意が必要である。また、使用前 には各部を点検し、異常や変形のある場合には使用しないこと。 2)幼児の手の届かない場所に保管し、幼児には使用させないこと 開閉機構のある銘柄の中には、持ち上げた際に自重で支柱が開いてしまうものや、 使用中に小さな力で支柱が閉じてしまうものがあった。保管してある踏み台を幼児が いじったり使用しようとした場合、予期せず支柱が開閉してしまう可能性が考えられ た。また、使用者が構造を理解して使用すれば問題ないものの、危険性を認識しない 幼児だと開閉時に板状の可動部で手や指を挟むおそれのあるものがあった。さらに、 キャスター付きのものの場合、ある程度の荷重が加わらないと安定しないことから体 重の軽い幼児が乗ると動いてしまう可能性が考えられた。以上のことから、使用しな いときは幼児の手が届かない場所に保管するなど、危険性を認識できない幼児には使 用させないよう注意が必要である。 3)最大使用荷重を超えるような使用、滑りやすい場所や傾斜した場所での使用を しないよう注意 安全に使用するために、体重と荷物の合計が最大使用荷重を超えるような使用や下 に滑りやすいものを敷く使用など不適切な使用をしない。地面や床が滑りやすい場所 や傾斜した場所には設置しないよう注意が必要である。なお、踏み台を購入する際に は安全性の基準に適合しているJIS マークや SG マークがあるか否かも一つの目安と なる。 4)高齢者の事故が目立つので慎重に使用する必要がある 危害情報システムに寄せられた事例のうち、70 歳以上の高齢者の事故事例が3割近 くを占めていた。個人差はあるが、加齢とともにバランス感覚が衰えてくるので、高 齢者が踏み台を購入する際には安定性の良いものや必要以上に天板が高くないものを 選び、使用する際には自分を過信せずに慎重に使用する必要がある。 19

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9.業界への要望

1)基準適合品の強度と同等以上の品質を確保するよう要望する JIS 及び SG 認定基準を参考に強度試験を実施した結果、支柱端部の曲げ試験で基 準値に照らし変形が大きいものがあった。これらの銘柄は材質や形状がJIS や SG 認 定基準で規定しているものと異なるものの、基準適合品の強度と同等以上の品質を確 保するよう要望する。 2)より安全性に配慮した製品作りを行うよう要望する 天板の外側に荷重が集中した場合、天板が大きく変形するものがあった。また、予 期せず開閉してしまうものや、板状の可動部で手や指を挟む可能性があるものもあっ た。さらに、脚部が滑りやすいものや、バネ式のキャスターが付いていて、ある程度 の荷重が加わらないと安定しないものもあった。思わぬ事故を未然に防ぐため、より 安全性に配慮した製品作りを行うよう要望する。 ○要望先 軽金属製品協会 ○情報提供先 内閣府 国民生活局 消費者調整課 経済産業省 商務情報政策局 消費経済政策課 20

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10.テスト方法

1)基本的強度 (1)支柱端部の曲げ試験 「JIS S 1121(アルミニウム合金製脚立及びはしご)」及び「住宅用金属製踏み台 の認定基準及び基準確認方法(CPSA0066)」を参考に、支柱端具に最大使用荷重の 0.9 倍の荷重(最大使用荷重が 100kg の場合は 900N(約 90kgf))を1分間加えた後 の残留たわみを測定するとともに、力を除去した後、破損、外れ及び使用上支障のあ る変形がないか確認した。 踏み台等は踏ざんが垂直になるように支持金具の上に置き、支柱を2箇所で固定し た。このとき、踏ざんの中心と支持金具の端を一致させた。力点は支柱端部から75mm 離れた支柱幅の中央とした。 図4.支柱端部の曲げ試験例(SG認定基準より引用した脚立での試験) (2)垂直方向強度試験 「JIS S 1121(アルミニウム合金製脚立及びはしご)」及び「住宅用金属製踏み台 の認定基準及び基準確認方法(CPSA0066)」を参考に、天板に幅約 100mm、厚さ約 20mm の木製あて板を置き、静かに最大使用荷重の 4 倍の荷重(最大使用荷重が 100kg の場合は4000N(約 400kgf))を加え、1分保持し安定させた後、各部に破損、外れ 及び使用上支障のある変形がないか確認した。床面は厚さ 2mm のステンレス鋼板と した。 図5.垂直方向強度試験 a)側方から b)上方から × × あて板 最大使用荷重の 4倍の荷重 21

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(3)踏ざんの強度試験 「住宅用金属製脚立の認定基準及び基準確認方法(改正案)」を参考に、踏ざんに、 幅約100mm、厚さ約 20mm の木製あて板を置き、垂直方向下向きに最大使用荷重の 2.2 倍の荷重(最大使用荷重が 100kg の場合は 2200N(約 220kgf))を1分加え安定 させたとき後、各部に破損、外れ及び使用上支障のある変形がないか確認した。床面 は厚さ2mm のステンレス鋼板とした。 図6.踏ざんの強度試験 a)側方から b)上方から (4)開き止め金具の強度試験 「JIS S 1121(アルミニウム合金製脚立及びはしご)」及び「住宅用金属製踏み台 の認定基準及び基準確認方法(CPSA0066)」を参考に、ローラコンベア上に 200mm 角の敷き板を置き、その上に踏み台を設置した。天板上に幅約200mm、厚さ約 25mm の木製あて板を介して静かに最大使用荷重の2倍の荷重(最大使用荷重が100kg の場 合は2000N(約 200kgf))を1分加え安定させたとき後、支柱開き止め金具、開閉機 構等に破損、外れ等がないか確認した。 図7.開き止め金具の強度試験例(SG認定基準より引用した脚立での試験) あて板 × 最大使用荷重の 2.2 倍の荷重 22

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2)天板の外側に荷重が集中した場合の強度 (1)天板の荷重分布 天板を模した測定器上(写真)で、足裏全面を天板に接した状態で、前後方向に姿勢 を変えた場合(乗り出さない程度)の荷重分布をモニター3名で調べた。測定は、各天 板の外側及び内側から10mm の位置(計 4 箇所)で荷重を測定できるようロードセル (荷重計)を設置し、各姿勢を10 秒維持した場合の各位置の平均値を求めた(図、写 真参照)。 写真 18.天板の荷重分布測定器 前面 後面 図8.天板の荷重測定位置 ③後面内側 ①前面外側 ②前面内側 端から10mm ④後面外側 前面 後面 荷重測定位置置 写真 19.天板の荷重分布測定時のモニターの姿勢 a)直立時 b)前傾時 c)後傾時 23

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(2)天板外側の強度試験 天板の外側に、最大使用荷重に相当する荷重(最大使用荷重が 100kg の場合は 1000N(約 100kgf))を 5 分間加えたときの最大たわみを測定するとともに、50N の 荷重を残したときの残留たわみを測定した。さらに、荷重を除去した後、破損、外れ 及び使用上支障のある変形がないか確認した。測定は、天板の外側中央部に幅 100× 奥行き20×厚さ 20mm のあて板を設置し、天板の外側に荷重が集中するようにした。 床面は厚さ2mm のステンレス鋼板とした。 図9.天板の外側に荷重が集中した場合の強度試験 a)側方から b)上方から × 3)手や指を挟むおそれ等の調査 (1)開閉機構の調査 支柱が閉じた状態で踏み台及び足場台を持ち上げ、自重で支柱が開いてしまうこと がないか調べた。 また、「住宅用金属製踏み台の認定基準及び基準確認方法(CPSA0066)」に関す る「住宅用金属製踏み台の検査マニュアル」を参考に、支柱の一端を固定し、他端の 支柱端具直上部の箇所に前後方向から50N(約 5kgf)の荷重を加え支柱が閉じてしま うことはないか確認した。床面は厚さ2mm のステンレス鋼板とした。 (2)手や指を挟む可能性 使用時や運搬時に使用者が手を触れやすい場所に手や指を挟むおそれのある板状の 可動部がないか調べるとともに、幼児の指を想定した直径 5mm の丸棒が板状の可動 部で挟まれるすき間などがないか調べた。 4)安定性及び滑りやすさの調査 (1)摩擦抵抗 「住宅用金属製踏み台の認定基準及び基準確認方法(CPSA0066)」を参考に、天 24

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25 板中央部に質量5kg の重りを載せ、支柱端部の直上部を静かに水平方向に引っ張り、 滑り始めるまでの最大力を測定し、以下の計算式により摩擦係数を算出した。なお、 床面は厚さ2mm のステンレス鋼板とし、その表面は JIS G 4305(冷間圧延ステンレ ス鋼板)に規定する表面仕上げNo.2B とした。キャスター付の銘柄については、重り の重量を段階的に変化させて測定を行った。 μ=F/(9.81×W) μ:摩擦係数 F:引張力の平均値(N) W:重り及び踏み台等の総重量(kg) (2)支柱端具の固定 「住宅用金属製踏み台の認定基準及び基準確認方法(CPSA0066)」に関する「住 宅用金属製踏み台の検査マニュアル」を参考に、支柱端具を100N(約 10kgf)の力で 引っ張ったとき、外れないか確認した。 (3)安定性の調査 「住宅用金属製脚立の認定基準及び基準確認方法(改正案)」を参考に、端部が滑 らないように設置し、天板に質量 75kg の重りを載せ、踏ざんに水平方向昇降面横向 きに50N (約 5kgf)の力を加えても、支柱が設置面より浮き上がらないことを確認 した。 5)表示の調査 (1)本体表示の調査 本体に以下の事項が表示されているか確認した。 ・ 製造業者、輸入業者又は販売業者の名称及び住所並びに電話番号 ・ 最大使用荷重 ・ 安定しない場所や滑りやすい場所には設置しないこと ・ 変形したものは使用しないこと ・ 可動部で手を挟まないように注意すること ・ 幼児に使用させないこと

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11.テスト結果一覧

1)テスト結果一覧(1) 支柱端部の曲げ試験 垂直方向強度試験 踏ざんの強度試験 開き止め金具の強度試験 支柱端部へ最大使 用荷重の0.9倍荷重 天 板 中 央 へ 最 大 使 用荷重の4倍荷重 踏ざん中央へ最大使用 荷重の2.2倍荷重 天 板 中 央 へ 最 大 使 用荷重の2倍荷重 開閉機構の調査① 開閉機構の調査② 使用者が手や指を 挟む可能性 幼児が手や指を挟 む可能性 残留たわみが2mm以下で あること 各部に破損、外れ及び 使用上支障のある変形 がないこと 各部に破損、外れ及び 使用上支障のある変形 がないこと 支柱開き止め金具、ピ ン等に破損、外れ等が ないこと 最大たわみ (mm) 残留たわみ (mm) 支柱を閉じた状態で持 ち上げ、自重で支柱が 開かないか 支柱を開き、開き止め金具 をロックした状態で前後方 向に50Nの力を加えて閉じ ないか 板状の可動部で使用時や運 搬時に使用者が手や指を挟 まれやすい箇所 板状の可動部で直径5mm の丸棒が挟まれるすき 間  内曲げ:2.46mm  外曲げ:○ なし 側面のヒンジ部 手や指を挟むおそれの調査 なし なし 開閉機構なし 開閉機構なし なし なし 開き止め金具 開閉金具 開き止め金具 開き止め金具 開き止め金具 開閉機構なし 開閉機構なし なし 開閉金具 開き止め金具 側面金具 なし 側面金具 側面のヒンジ部 ○ ○ なし 開閉金具 なし なし 開閉金具 なし なし なし 開く 開く 開く 開く 開く 開く 開く ロック機構があ り開かない ○ ○ ○ 開く ○ ○ ○ 19.4Nで閉じる ○ 2.32 1.80 天板端部への荷重 天板の外側に、最大使用 荷重相当の荷重 4.31 3.41 8.57 2.54 3.64 4.65 9.89 2.83 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ *1: 0.9倍未満の荷重で変形したためテストを中断した *2: 天板が円形であり下に支柱が3本あるため、場所によりたわみが異なる *3: 支柱(踏ざん)が閉じる方向に荷重を加えた 3.12 4.43 2.32~ 5.51*2 5.05 5.87 4.00 ○ 形状の関係でテス ト対象外とした ○ 1.48 2.93 4.65 0.78 2.75 0.53 1.98 0.60 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ タイプ 金 属 製 両 面 式 天 板 幅 狭 1 2 3 銘柄 No. 天 板 幅 広 4 ○ 5 ○ 金 属 製 片 面 式 上 わ く 付 6 ○ 7 ○ 8 内曲げ、外曲げとも2mmを超えるたわみ*1 ○ 閉じる*3 ロック機構なし 10 ○ なし ○ 0.28 開く 開く ○ ○ 木 製 9 ○ ○ ○ なし 樹 脂 製 11 形状の関係でテスト対象外とした ○ 0.62 0.27~ 0.51*2 開閉機構なし 12 閉じる*3 ロック機構なし 開閉機構なし 金 属 製 足 場 台 13 ○ 15 ○ ○ ○ 14 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 1.51 2.92 開く 開閉機構なし 開閉機構なし 0.30 開く ○ ○ ○ ○ ○ 26

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2)テスト結果一覧(2) 摩擦抵抗 支柱端具の固定 安定性試験 5kgの重りを乗せたとき の摩擦係数 (基準値 0.3) 100Nの力で引っ張った とき外れないか 75kgの重りを乗せた天板に 水平方向に50Nの力を加え て転倒しないか 製 造 業 者 等 の 名 称 及 び 住 所 並 び に 電 話番号 最大使用質量 安 定 し な い 場 所 や 滑 り や す い 場 所 に は設置しないこと 変 形 し た も の は 使 用しないこと 可 動 部 で 手 を 挟 ま な い よ う に 注 意 す ること 幼 児 に は 使 用 さ せ ないこと 0.59 0.52 0.31 0.12 (0.32:荷重17kgf時) 0.45 電話番号なし 全てなし 全てなし 0.43 有 有 有 有 有 有 なし なし 有 有 有 ○ ○ 住所なし 金 属 製 足 場 台 13 15 ○ 14 ○ 滑りやすさ及び安定性の調査 支柱端具なし 支柱端具なし 7 ○ 8 ○ 0.38 0.36 0.43 樹 脂 製 11 0.58 なし 12 ○ 外れる 有 ○ 木 製 9 0.28 0.26 10 0.37 金 属 製 片 面 式 上 わ く 付 6 タイプ 金 属 製 両 面 式 天 板 幅 狭 1 2 3 銘柄 No. 天 板 幅 広 4 5 ○ ○ 0.41 ○ 有 有 以下の旨が本体に表示されているか確認した 0.27 なし 有 有 有 有 有 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 有 ○ ○ ○ ○ 有 なし 有 なし 有 有 有 有 有 有 有 有 有 有 有 有 有 有 有 有 有 有 有 住所、電話番号 なし 有 有 有 有 有 有 有 有 有 有 有 なし 有 なし なし なし なし なし なし 該当しない 該当しない なし なし なし なし 有 有 有 有 有 有 なし なし 本体表示の調査 なし なし なし なし 有 有 なし 27

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12.テスト対象銘柄 仕様一覧

スチール ポリプロピレン スチール ポリエチレン 天然木 天然木 アルミ アルミ アルミ アルミ タイプ 備考 金 属 製 両 面 式 天 板 幅 狭 1 アルインコ㈱ 57 100 中国 ― \1,580 開閉機構有 2 長谷川工業㈱ 56 100 中国 ― \1,380 開閉機構有 3 アルミ合金製踏台 ㈱ピカコーポレイション 57 100 (PFC-57B) 中国 Aマーク *2 \1,980 開閉機構有 天 板 幅 広 4 長谷川工業㈱ 56 5 ㈱ピカコーポレイション 57 100 中国 SGマーク \2,480 開閉機構有 Aマーク*2 100 中国 アルミ Aマーク*2 \5,100 開閉機構有 金 属 製 片 面 式 上 わ く 付 6 ラクステ2段 コーナン商事㈱ 80 中国 ― \1,480 (KLH10-5108) 開閉機構有 7 マツ六㈱ 46 100 台湾 ― \2,480 天板、踏ざん樹脂製開閉機構有 スチール ポリエチレン 8 ライフハイトアーゲー日本支店 46 100 ドイツ GSマーク*3 \7,329 開閉機構有 \3,580 木 製 9 コーナン商事㈱ 54.5 開閉機構有 10 ㈱ナカジマ 46.5 100 中国 ― \7,875 開閉機構有 90 \1,780 樹 脂 製 11 2段踏み台 アイリスオーヤマ㈱ 56.5 ポリプロピレン (NF-560) DESQ roll-a-step (―) 強化ポリプロ ピレン 12 ㈱ダーレー・ジェーピーエヌ 41.8 150 金 属 製 足 場 台 13 アルインコ㈱ 53 15 ㈱ピカコーポレイション 60 開閉機構有 100 中国 アルミ Aマーク*2 \2,980 アルミ 14 長谷川工業㈱ 52 100 製造者又は販売者 開閉機構有 100 中国 Aマーク*2 \7,600 開閉機構有 中国 ― \2,980 3.5 4.1 1.7 1.6 2.1 ― <4.1> ― <2.1> 4.33 4.0 100 中国 ― タイ ― 開閉機構なし 脚部キャスター付 最大使用 荷重 (㎏f) *1 原産国表示 材質 表示マーク 購入価格 (税込) 開閉機構なし ドイツ GSマーク*3 \6,980 銘柄名(型番) 銘柄 No. ― <4.6> 天板高さ <実測値> (cm) 重量 <実測値> (kg) ― <1.6> ― <2.7> ― <4.6> ― <47> ― <4.5> オリビアmini (CC‐60As) アルミ踏台 (SE-6) アルミ踏台 (SEW-6) アルミ合金製踏台 (PFW-57) コンビステッププラ (KSP-2) ピッコロスタンダート (73401) 木製踏台2段 (KSY-6961) フリーチェア2段タイプ (FRX-501) アルミ合金製足場台 (PXGV-507D) アルミ足場台 (DRX-0752) 折りたたみ式足場台 (DWD-K606) *1: 銘柄によって耐荷重(kg)等の表示もあったが、本報告書では最大使用荷重(kgf)で統一した *2: 軽金属製品協会はしご脚立部会の制定する業界自主規準に適合した製品に付けられるマーク *3: ドイツの機器安全法にもとづいて検査され、安全性が認証された製品に付けられるマーク ―: 表示なし 4.8 アルミ <title>踏み台の安全性(全文)</title> 28

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