〔
J. Soc. Cosmet. Chem. Jnn.
報 文 38 (3) 211-219 (2004)
〕
カ チ オ ン 性 高 分 子 と 界 面 活 性 剤 の コ ア セ ル ベ ー トに 関 す る 研 究
-シ
ャン プ ー使 用 感 へ の コ ア セ ル ベ ー トの影 響-*
樋 渡 佳 子**, 吉 田 克 典**, 圷 隆 宏***, 薮 桃***, 岩 井 滋*** 株 式 会 社 資 生 堂 基 盤 研 究 本 部 マ テ リア ル サ イ エ ンス研 究 セ ン ター**, 製 品 開発 本 部 ヘ ア ケ ア 製 品 開発 セ ン ター*** カ チ オ ン性 高 分 子 と界 面 活 性 剤 を含 む シ ャ ン プ ー を希 釈 す る と, あ る 特 定 の 濃 度 領 域 で 液-液 相 分 離 現 象 が 観 察 さ れ る 。 粘 稠 な下 層 は カ チ オ ン性 高分 子 と ア ニ オ ン性/両 性 混 合 界 面 活 性 剤 に よ っ て形 成 さ れ る水 に不 溶 の複 合 体 の相 で あ り, 一般 に, この相 分 離現 象 を コア セ ル ベ ー シ ョン と呼 び, 下 層 を コ ア セ ルベ ー トと称 して い る 。 この コ ア セ ル ベ ー トが シ ャ ンプ ー の使 用 感 に強 く影 響 を与 え る こ とは 経 験 上 知 られ て い る もの の, 詳 細 につ い て は, 不 明 な 点 を多 く残 して い る 。 我 々 は コ アセ ル ベ ー トが シ ャ ン プ ー の使 用 感 へ 及 ぼ す 影響 を調 べ る た め, カ チ オ ン化 度 や 主 鎖 骨 格 の 異 な る カチ オ ン性 高 分 子 を配 合 した シ ャ ンプ ー を調 製 し, 生成 す る コア セ ル ベ ー トの 性 質 (生成 領 域, 生 成 量, レ オ ロ ジー 特 性, 毛 髪 へ の 付 着) とシ ャ ンプ ー の使 用 感 に つ い て検 討 した 。 そ の 結 果, シ ャ ン プー 希 釈 過 程 にお け る コ アセ ル ベ ー ト の生 成 領 域 や 生成 量 に よっ て, シ ャ ンプ ー す す ぎ時 の 使 用 感 が 大 き く変 化 す る こ と を見 出 した 。 また カ チ オ ン化 度 や 主 鎖 骨 格 を変化 させ る こ と に よ って, コ アセ ル ベ ー トの レ オ ロ ジ ー特 性 お よ び毛 髪 へ の 付 着 を コ ン トロ ー ル す る こ とが で き, シ ャ ン プー の使 用 感 も ま た変 化 させ る こ とが で き る こ とが 示 唆 さ れ た 。1. 緒
言
一般 に シ ャ ン プー 中 で は カチ オ ン性 高 分 子 と ア
ニ オ ン/両 性 界 面 活 性 剤 混 合 ミセ ル が 共 存 して お
り, 洗 浄 や す す ぎ に伴 う シ ャ ン プー の 希 釈 に よ っ
て, あ る特 定 の 希 釈 倍 率 で カチ オ ン性 高 分 子 と界
面 活 性 剤 が 水 に不 溶 性 の 複 合 体 を形 成 す る こ とが
知 られ て い る1),
2)。
こ の と き, サ ン プ ル を 数 日 間
静 置 す る か, も し く は 遠 心 分 離 (6000Orpm×2
時 間) す る とFig. -1左 に 示 す よ う に 上 下 と も透
明 な液 体 に二 相 分 離 す る こ とが わか っ た。 サ ンプ
ル を傾 け る と (Fig.
-1右), 上 の 相 は 粘 度 が 低 く
水 の よ うに流 れ る液 体 で あ る の に対 し, 下 の相 は
非 常 に 粘 稠 な 液 体 で あ る こ と が わ か る 。 こ の よ う に 高 分 子 が 関 与 し, 溶 質 が 希 薄 な 相 と濃 厚 な 相 の 二 相 に 液-液 相 分 離 す る 現 象 は, 一 般 に コ ア セ ル ベ ー シ ョ ン と 呼 ば れ, 上 相 を 希 薄 相, 下 相 を コ ア セ ル ベ ー ト相 と 呼 ん で い る 。 高 分 子 と界 面 活 性 剤 の 関 わ る コ ア セ ル ベ ー トの 基 礎 研 究 か ら, そ の 生 成 条 件 に は, 少 な く と も ① ポ リ マ ー の 骨 格, 電 荷 密 度 (た と え ば カ チ オ ン 化 度)3), 4), 分 子 量5), 濃 度5), 6), ② 界 面 活 性 剤 ミ セ ル の 表 面 電 荷 密 度 (た と え ば 混 合 界 面 活 性 剤 組 成)3)∼6), 濃 度5)∼7), ③ イ オ ン 強 度 (塩 濃 度)3)が 大 き く関 与 す る こ と が 知 ら れ て い る 。 *2004 .3.31受 理 **, ***〒224-8558横 浜 市 都 筑 区 早 渕2-2-1: 2-2-1 ,Hayabuchi, Tsuzuki-ku, Yokohama 224-8558, Ja
pan
これ まで, シ ャ ン プ ーの 処 方 作 成 にお い て は,
多 くの 場 合, 経 験 に基 づ い て使 用 感 の 調 整 が 行 わ
れ てお り, こ の カチ オ ン性 高 分 子 と界 面 活 性 剤 か
らな る コ ア セ ルベ ー トの質 (た とえ ば組 成 や レ オ
ロ ジ ー 的性 質 な ど) と量 (た とえ ば生 成 量 や 毛 髪
へ の 付 着 量 な ど) が, シ ャ ン プー の使 用 感 に どの
よ う に影 響 す るの か につ い て, 詳 細 に検 討 した 例
は ほ と ん ど ない 。 したが って コ アセ ル ベ ー トの 性
質 や 毛 髪 へ の 付 着 状 態 と シ ャ ン プー の使 用 感 の 関
係 を知 る こ と は, 今 後 の シ ャ ン プー の 処 方 開 発 に
と って 非 常 に重 要 で あ る と考 え られ る。 今 回 の 報
告 で は, 特 に カチ オ ン化 度 お よび 主 鎖 骨 格 の 構 造
が 異 な る カチ オ ン性 高 分 子 に注 目 し, そ れ ら を配
合 した モ デ ル シ ャ ン プー の す す ぎ過 程 にお け る コ
アセ ル ベ ー トの 物 性 の 違 い につ い て 述 べ る。
Fig. -1 Coacervation on the dilution of model shampoo.
(Left) The lower phase is coacervate deposited from model shampoo on dilu
tion with water followed by centrifugation (60000rpm, 2h) at 40•Ž.
(Right) The coacervate merely flows due to its high viscosity.
2. 実 験 2.1. 材 料 試 料: カ チ オ ン 化 度 の 異 な る カ チ オ ン 化 セ ル ロ ー ス4種 (東 邦 化 学 工 業) お よ び カ チ オ ン化 ポ テ トス タ ー チ (Ondeo Nalco社) は, 化 粧 品 原 料 を そ の ま ま 使 用 し た 。 そ れ ぞ れ の 高 分 子 の 特 性 値 をTable-1に ま と め て 示 す 。 POE-ラ ウ リ ル エ ー テ ル 硫 酸 ナ ト リ ウ ム (LES) (東 邦 化 学 工 業), ヤ シ 脂 肪 酸 ア ミ ドプ ロ ピ ル ベ タ イ ン (AMPB) (三 洋 化 成 工 業) も 同 様 に 化 粧 品 原 料 を そ の ま ま 使 用 し た 。 そ の 他 試 薬 お よ び 溶 媒 は, 特 に 断 りの な い 限 り, 試 薬 特 級 (和 光 純 薬) を 用 い た 。 処 方: モ デ ル シ ャ ン プ ー の 処 方 をTable-2に 示 す 。 今 回 の 検 討 で は カ チ オ ン 性 高 分 子 の 影 響 を 調 べ る た め, Table-1に 示 す5種 の 高 分 子 を 用 い て モ デ ル シ ャ ン プ ー を 調 製 し た 。 2.2. シ ャ ン プ ー の 使 用 感 評 価 専 門 パ ネ ル10名 が モ デ ル シ ャ ン プ ー を使 用 し, シ ャ ン プ ー の 泡 立 て ∼ す す ぎ に お け る 使 用 感 に つ い て 評 価 し た 。 評 価 の 方 法 は, 1 (非 常 に 悪 い) か ら5 (非 常 に よ い) ま で の5段 階 で, 絶 対 評 価 に よ り行 っ た 。 2.3. す す ぎ 過 程 に お け る コ ア セ ル ベ ー ト生 成 領 域 モ デ ル シ ャ ン プ ー を イ オ ン交 換 水 で 希 釈 し, さ ま ざ ま な 相 対 濃 度 の 溶 液 の420nmに お け る 透 過 率 (%, 光 路 長1cm, 温 度40℃) をUV/VIS分 光 光 度 計Jasco V 550 (日 本 分 光) に よ り測 定 し た 。 結 果 は 簡 易 的 に 濁 度(Turbidity)(%)=100-透 過 率(%) (1) と し て 表 し た 。 相 対 濃 度 (relative concentration) と は, シ ャ ン プ ー 原 液 の 濃 度 を1と し た 場 合 に水 で 希 釈 し た 後 の シ ャ ン プ ー の 濃 度 で あ り, 以 下 の 式 (2) に て 算 出 し た 。 た と え ば シ ャ ン プ ー を2 倍 希 釈 し た 場 合, 相 対 濃 度 を0.5と 表 す 。
相対 濃 度=シ
ヤ ンプ ー原 液(g)/シャ
ン プ-原 液(g)+ 依(g)
(2)
2.4. コ ア セ ル ベ│ト 生 成 量 事 前 の 検 討 に よ り, 頭 髪 洗 髪 時, シ ャ ン プ ー は 平 均 で7倍 に 希 釈 さ れ て い る こ と が わ か っ て い る 。 そ の た め, モ デ ル シ ャ ン プ ー6gを イ オ ン交 換 水 で7倍 に 希 釈 し (全 量42g), 40℃ の 恒 温 槽 に-212晩 放 置 し た 。 遠 心 分 離 (3000rpm×3Omin) 後, 上 澄 み を 除 き, 得 られ た コ ア セ ル ベ ー トの 重 量 を
測 定 し, 全 体 に 占 め る 割 合 (重 量%) と して 算 出 した 。
Table-1 Properties of cationic polymers.
* per unit of glucose
.
** Cationic potato starch has the same content of nitrogen atom (N) as CC 0
.35.
Table-2 Formula of model shampoo.
2.5. コ ア セ ル ベ ー トの 粘 弾 性 測 定 2.4と 同 様 に し て 得 た コ ア セ ル ベ ー トの 動 的 粘 弾 性 測 定 を 行 っ た 。 測 定 は ス ト レ ス 制 御 型 回 転 式 レ オ メ ー タMCR 300 (Paar-Physica) を 用 い て 測 定 した 。 測 定 器 具 は 直 径5cm Flat Plateを 用 い, 測 定 温 度40℃ で 行 っ た 。 2.6. コ ア セ ル ベ ー ト成 分 の 毛 髪 へ の 付 着 量 7倍 希 釈 し た モ デ ル シ ャ ン プ ー 溶 液 に ブ リ ー チ 処 理 し た 毛 髪 ス ト ラ ン ド を30分 間 浸 し た (40℃)。 こ れ を ひ き あ げ 軽 く水 を 切 っ た 後, イ オ ン交 換 水 で 十 分 に す す ぎ, 再 び 軽 く水 を 切 り, 25℃50% RHの 条 件 下 に お い て 乾 燥 さ せ た (3日 間)。 処 理 前 後 の 毛 髪 ス ト ラ ン ドの 重 量 を 測 定 し, 重 量 差 を 毛 髪 へ の 付 着 量 と 定 義 し, 式 (3) に よ り算 出 し た 。
付 着 量(Amount
of adhesion)=
シ ヤ ン プー 処 理前 後 の 毛髪 の重量差(g)
/
毛 髪 の全 体 重量(g)
(3)
2.7. シ ャ ン プ ー 処 理 前 後 の 毛 髪 表 面 状 態 の 変 化 2.6と 同 様 に 処 理 し て 得 た 毛 髪 ス ト ラ ン ドの 表 面 を, 原 子 間 力 顕 微 鏡 (AFM) SPI 3800 N (セ イ コ ー イ ン ス ツ ル メ ン ツ) を 用 い て 観 察 し た 。 ま た, カ チ オ ン化 セ ル ロ ー ス と カ チ オ ン化 ポ テ トス タ ー チ の そ れ ぞ れ をBelder and Granathの 方 法8)に よ りFluorescent isothiocyanate (FITC) ラ ベ ル 化 反 応 し, 蛍 光 ラ ベ ル ポ リ マ ー を 得 た (FITC-CC 0.35お よ びFITC-CPS)。 こ れ ら を 用 い て 同 様 に シ ャ ン プ ー を 調 製 し, 2.6と 同 様 に 処 理 し て 得 た 毛 髪 ス トラ ン ドの 表 面 を 蛍 光 顕 微 鏡 に よ り観 察 し た 。 3. 結 果 3.1. シ ャ ン プ ー の 使 用 感 評 価 5種 の カ チ オ ン性 高 分 子 に よ り調 製 し た シ ャ ンプ ー を用 い て, シ ャ ン プ ー の 使 用 感 評 価 を行 っ た 。 こ の う ち 差 異 が 顕 著 に 見 ら れ た す す ぎ 時 の 感 触4
項 目 に つ い て 結 果 をFig. -2に 示 す 。
Fig. -2 Evaluation of model shampoo.
CC 0.05 (•œ), CC 0.22(•£), CC 0.35 (•›), CC
0.45 (•¡), CPS (•Ÿ). Each grade corresponds to
excellent (5), good (4), standard (3), poor (2),
bad (1), respectively.
シ ャ ン プ ー の す す ぎ 時 の 使 用 感 と し て 「指 通 り (feeling of smoothness)」 「き し み (unfavorable fric tion)」 「ぬ め り (slimy feeling)」 「す す ぎ の 早 さ (quickness of rinsing)」 の4項 目 に つ い て 評 価 し た 。 カ チ オ ン化 度 (α) が 最 も 低 い カ チ オ ン化 セ ル ロ ー ス (CC 0.05) を 配 合 し た シ ャ ン プ ー を 使 用 し た と き は, き しみ や 指 通 りの 悪 さ を 感 じ る 一 方, ぬ め りや 洗 い 流 し (す す ぎ) に く さ を 感 じ に くい こ と が わ か っ た 。 さ ら にCC 0.45, CC 0.35, CC 0.22の 順 で す す ぎ 時 の 指 通 り が 悪 く, き し み を 感 じ る 傾 向 が あ る と い う こ と か ら, こ れ ら の 項 目 に 対 す る 評 価 が カ チ オ ン 化 度 に よ っ て 大 き く変 化 す る こ と が わ か っ た 。 さ ら に カ チ オ ン 化 度 が 同 程 度 と考 え ら れ るCC 0.35とCPSを 比 較 す る と CC 0.35の 方 がCPSに 比 べ て 指 通 りが よ い と 感 じ, ま た, ぬ め り を 感 じ て 洗 い 流 しが 遅 い と 感 じ る 傾 向 が あ る こ とが わ か っ た 。 こ の 結 果 か ら 明 ら か な よ う に, カ チ オ ン 性 高 分 子 の カ チ オ ン 化 度 や 主 鎖 骨 格 が 異 な る こ と で, シ ャ ン プ ー の 使 用 感 が 大 き く変 化 す る 。 高 分 子 の 電 荷 密 度 や 骨 格 が 及 ぼ す コ ア セ ル ベ ー ト の 生 成 領 域 ・生 成 量 ・レ オ ロ ジ ー 特 性 ・毛 髪 へ の 付 着 状 態 へ の 影 響 に つ い て 検 討 し た 結 果 を, 以 下 に 示 す 。 3.2. シ ャ ン プ ー 希 釈 過 程 に お け る コ ア セ ル ベ ー ト生 成 領 域 と使 用 感 の 関 係 一 般 的 な シ ャ ン プ ー に は ラ ス タ ー 剤 (白 濁 化 剤) が 含 ま れ て い る た め, 洗 髪 ∼ す す ぎ に 伴 う シ ャ ン プ ー の 希 釈 過 程 に お い て 外 観 上 の 変 化 を 観 察 す る こ と は 困 難 で あ る 。 し か し, シ ャ ン プ ー か ら ラ ス タ ー 剤 を 取 り 除 く と, 多 く の 一 般 的 シ ャ ン プ ー は 希 釈 過 程 に お い て 透 明 → 白 濁 → 透 明 と外 観 上 の 変 化 を 呈 す る こ とが わ か る 。 白 濁 し た 外 観 を 示 す 特 定 の 希 釈 濃 度 領 域 に お い て, 多 く の 場 合, 液-液 相 分 離 を 示 す た め, わ れ わ れ は 今 回 の 報 告 に お い て 希 釈 過 程 に お け る 白 濁 領 域 を コ ア セ ル ベ ー ト生 成 (コ ア セ ル ベ ー シ ョ ン) 領 域 と呼 ぶ こ と と し た 。 モ デ ル シ ャ ン プ ー の 各 相 対 濃 度 に お け る 濁 度 を測 定 し た 結 果 をFig. -3に 示 す 。 カ チ オ ン化 セ ル ロ ー ス の カ チ オ ン化 度 を変 化 さ せ た と き (Fig. -3- (1)), 最 も カ チ オ ン 化 度 の 低 いCC 0.05を 配 合 し た シ ャ ン プ ー で は, 白 濁 す る 領 域 が な く, コ ア セ ル ベ ー シ ョ ン は 起 こ ら な か っ た 。 一 方, カ チ オ ン 化 度 (α)≧0.22の 範 囲 で は コ ア セ ル ベ ー シ ョ ン が 起 こ る こ と が 確 認 さ れ た 。 カ チ オ ン化 度 が 高 くな る に つ れ て, コ ア セ ル ベ ー シ ョ ン領 域 は 高 い 相 対 濃 度 領 域 側 に シ フ ト し た 。 つ ま り, CC 0.22で は 相 対 濃 度 が0.3に な る と こ ろ ま で 希 釈 す る と 濁 度 の 立 ち 上 が りが 観 察 さ れ, そ こ で コ ア セ ル ベ ー シ ョ ン が 起 こ り始 め る こ と が わ か る 。 同 様 に, CC 0.35で は 相 対 濃 度 が 約0.6, CC 0.45で は 相 対 濃 度 が 約0.8で, コ ア セ ル ベ ー シ ョ ン が 起 こ る こ と も わ か る 。 こ の よ う に カ チ オ ン化 度 を 変 化 さ せ る こ と で, コ ア セ ル ベ ー ト生 成 領 域 が 大 き く影 響 を 受 け る こ と が わ か っ た 。 一 方 , 主 鎖 骨 格 の 構 造 が 異 な る2種 の カ チ オ ン 性 高 分 子 を用 い た シ ャ ン プ ー に お け る 濁 度 変 化 を 比 較 す る と (Fig. -3- (2)), CC 0.35に 比 べ, CPS の 系 で は, コ ア セ ル ベ ー シ ョ ン領 域 が 高 い 相 対 濃 度 側 ヘ シ フ トす る こ と か ら, 主 鎖 骨 格 も ま た, コ ア セ ル ベ ー シ ョ ン 領 域 を コ ン ト ロ ー ル す る 重 要 な パ ラ メ ー タ と な る こ と が 示 唆 さ れ た 。 CC 0.22に 比 べ てCC 0.35, CC 0.45の 系 の 方 が 「す す ぎ が 早 い 」 と感 じ ら れ, CPSの 系 で は, さ ら に こ れ を 上 回 り 「す す ぎ が 早 い 」 と 実 感 さ れ る 214
こ と が, Fig. -2の 使 用 テ ス トの 結 果 に よ り わ か っ て い る 。 シ ャ ン プ ー 溶 液 が 白濁 か ら 透 明 に再 び 変 化 す る (「コ ア セ ル ベ ー トの 消 失 」 と 呼 ぶ) 相 対 濃 度 は, Fig. -3の 結 果 か らCC 0.22<CC 0.35≦ CC 0.45<CPSの 順 と な っ て お り, コ ア セ ル ベ ー ト消 失 時 の 相 対 濃 度 と す す ぎ の 早 さ と い う 実 使 用 項 目 と が よ く対 応 す る 結 果 で あ る と言 え る 。 洗 髪 時 は シ ャ ン プ ー が7倍 に 希 釈 さ れ て お り (相 対 濃 度0.14), コ ア セ ル ベ ー トの 消 失 時 の 相 対 濃 度 が 0.14よ り 高 く, 洗 髪 時 に す で に コ ア セ ル ベ ー トが 消 失 し て い るCPSは 特 に す す ぎ の 早 さ を 感 じ る こ と が わ か っ た 。
Fig. -3 Turbidity measurements of shampoo at various relative concentrations.
The symbols correspond to CC 0.05 (•œ), CC 0.22 (•£), CC 0.35 (•›), and CC 0.45 (•¡) in
Fig.-3- (1), CC 0.35 (•›) and CPS (•Ÿ) in Fig.-3- (2), respectively.
Fig. -4
Weight percentage of coacervate for model shampoo at a relative concentration (0.14).
As shampoo containing CC 0.05 doesn't exhibit coacervation, symbol (*) in figure means a baseline
in this experimental method.
3.3. コ ア セ ルベ ー トの生 成 量 と使 用 感 の 関係
コ アセ ル ベ ー トの 生 成 量 は シ ャ ン プー使 用 時 の
感 触 と密接 に関係 して い る こ とが 予 想 され る こ と
か ら, カチ オ ン性 高 分 子 の カチ オ ン化 度 や 主 鎖 骨
格 が コ ア セ ル ベ ー ト生 成 量 に 及 ぼ す 影 響 を 調 べ た 。 前 述 の よ う に, シ ャ ン プ ー は 平 均 で7倍 に 希 釈 さ れ て い る と い う 結 果 を 得 て い る た め, コ ア セ ル ベ ー ト生 成 量 も7倍 希 釈 (相 対 濃 度0.14) に 統 一 し て 検 討 し た 。 Fig. -4に カ チ オ ン化 度 (a), 主 鎖 骨 格 (b) の コ ア セ ル ベ ー ト生 成 量 へ の 影 響 を 示 す 。 CC 0.05配 合 シ ャ ン プ ー は 希 釈 過 程 に お い て, コ ア セ ル ベ ー シ ョ ン が 起 こ ら な い (Fig. -3) た め, 3種 カ チ オ ン 化 セ ル ロ ー ス に お い て 比 較 し た 。 7 倍 希 釈 の 条 件 下 で は, カ チ オ ン化 度 が 高 く な る に つ れ て コ ア セ ル ベ ー ト生 成 量 は 減 少 す る 傾 向 が 認 め ら れ た 。 さ ら にCC 0.35と 主 鎖 骨 格 の 異 な る CPSを 比 較 す る と, コ ア セ ル ベ ー ト生 成 量 は 大 き く異 な る こ と が わ か っ た 。 こ れ は3.2で 述 べ た よ う にCPSの 系 に お い て は7倍 希 釈 時 に は コ ァ セ ル ベ ー トは 消 失 し て い る た め で あ る 。 こ の こ とはCPSが コ ア セ ル ベ ー シ ョ ン を 起 こ さ な いCC 0.05と 同 程 度 の 値 を 示 し て い る こ と か ら も確 認 で き た 。 こ れ ら の 結 果 か ら, 高 分 子 の カ チ オ ン 化 度 や 主 鎖 骨 格 は, コ ア セ ル ベ ー ト生 成 量 に も大 き な 影 響 を 与 え る こ と が わ か る 。 実 際 の 処 方 開 発 に お い て は, こ れ ら の パ ラ メ ー タ を 調 節 す る こ と に よ っ て コ ア セ ル ベ ー ト生 成 量 を 調 整 し, 使 用 感 の コ ン トロ ー ル が 可 能 と な る と 考 え ら れ る 。 上 記 の7倍 希 釈 時 の コ ア セ ル ベ ー ト生 成 量 の 結 果 とFig. -2の 使 用 テ ス ト結 果 か ら 考 察 す る と, 7 倍 希 釈 時 の コ ア セ ル ベ ー ト生 成 量 は, 特 に 「き し み 」 や 「指 通 り」 に 影 響 を 及 ぼ す こ と が わ か る 。 つ ま り7倍 希 釈 の コ ア セ ル ベ ー トの 生 成 量 が 少 な い ほ ど, す す ぎ 時 の 「指 通 りの 悪 さ」 や 「き し み 」 を 感 じ る 傾 向 が あ る こ と が わ か る 。 こ の よ う に, コ ア セ ル ベ ー トの 生 成 量 が, シ ャ ン プ ー の す す ぎ 時 の 使 用 感 に 強 く影 響 を 及 ぼ す こ と が 明 ら か と な っ た 。 次 に コ ア セ ル ベ ー トの 性 質 の 一 例 と して 粘 弾 性 挙 動 を 検 討 し た 結 果 に つ い て 述 べ る 。 3.4. コ ア セ ル ベ ー トの 粘 弾 性 挙 動 シ ャ ン プ ー 中 の 高 分 子 の カ チ オ ン 化 度 が コ ア セ ル ベ ー トの レ オ ロ ジ ー 特 性 に 及 ぼ す 影 響 を 調 べ た 。 カ チ オ ン 化 度 の 異 な る3種 の カ チ オ ン 性 高 分 子 (CC 0.22, CC 0.35, CC 0.45) を 配 合 し た モ デ ル シ ャ ン プ ー を7倍 に 希 釈 し た と き に 生 成 す る コ ア セ ル ベ ー トの 粘 弾 性 測 定 の 結 果 をFig.-5に 示 す 。
Fig. -5
Plots of storage modulus (G') and loss modulus
(G'') as a function of angular frequency for coac
ervate.
Closed symbols and open symbols denote G' and
G'', respectively. The symbols correspond to CC
0.22 (•£, •¢), CC 0.35 (•œ, •›), CC 0.45 (•¡, • ), respectively. 今 回 の 測 定 条 件 に お い て は, い ず れ の サ ン プ ル に お い て も 測 定 周 波 数 範 囲 に お い てG'がG''を 上 回 り, し か もG'とG''が ほ ぼ 平 行 と な り, ゲ ル 様 の 粘 弾 性 挙 動 を 示 す こ と が わ か る 。 同 時 に カ チ オ ン性 高 分 子 の カ チ オ ン化 度 が 高 く な る に つ れ て, コ ア セ ル ベ ー トのG'お よ びG''の 絶 対 値 は 大 き く
な る こ と も わ か る 。 Ohbu et al.2)やNagarajan and Kalpakci9)の 報 告 に あ る よ う に, ア ニ オ ン/両 性 界 面 活 性 剤 の 混 合 ミ セ ル と カ チ オ ン性 高 分 子 の コ ン プ レ ッ ク ス は 混 合 ミ セ ル 間 を カ チ オ ン性 高 分 子 が 橋 か け す る 形 で 構 造 を形 成 し て い る と考 え ら れ て い る 。 そ の た め 高 分 子 の カ チ オ ン化 度 が 高 く な る こ と は, コ ン プ レ ッ ク ス の 架 橋 点 密 度 が 増 加 す る 方 向 に 働 く と予 想 さ れ, そ の 結 果, 粘 弾 性 測 定 で は よ り高 い カ チ オ ン化 度 の 高 分 子 ほ ど, 高 い 弾 性 率 を示 し た も の と考 え ら れ る 。 こ の よ う な コ ア セ ル ベ ー トの 粘 弾 性 の 結 果 と コ ア セ ル ベ ー トの 構 造 は 相 関 し て い る こ と が 示 唆 さ れ, 三 宅10), 11)の観 察 結 果 と一 致 し て い る 。 3.5. コ ア セ ル ベ ー ト成 分 の 毛 髪 へ の 付 着 経 験 的 に 高 分 子 の カ チ オ ン化 度 (a) は 乾 燥 後 の 毛 髪 の 感 触 に 影 響 を 与 え る フ ァ ク タ ー で あ る こ とが 知 ら れ て い る 。 そ こ で カ チ オ ン化 度 が 異 な る 高 分 子 を 配 合 し た シ ャ ン プ ー の7倍 希 釈 水 溶 液 で 洗 髪 し, コ ア セ ル ベ ー ト成 分 の 付 着 量 を 測 定 し, あ わ せ て 表 面 状 態 の 違 い をAFM観 察 に よ っ て 確 か め た 。 付 着 量 の 結 果 をFig. -6に 示 す 。
Fig.-6
Adhesion amount of coacervate on the surface of
damaged hair (N=3).
Amount of adhesion is calculated from Eq. (3).
Fig. -7 AFM images of the surface of damaged hair after shampoo.
Fig. -8
Fluorescence microphotograph of hair surface using FITC-CC 0.35 (left) and FITC-CPS (right).
Fig. -6の 結 果 か ら, CC 0.22に 比 べ てCC 0.35, CC 0.45と カ チ オ ン化 度 が 高 い 方 が, 毛 髪 へ の 付 着 量 が 多 い こ と が わ か っ た 。 ま た 同 毛 髪 サ ン プ ル をAFM測 定 に よ り表 面 観 察 し た 結 果 (Fig. -7) か ら, カ チ オ ン 化 度 が 高 くな る に つ れ て キ ュ ー テ ィ ク ル エ ッ ジ が 不 明 瞭 に な り, 付 着 物 が 多 くな る 様 子 が 伺 え た 。 比 較 と し てCC 0.35高 分 子 単 純 水 溶 液 で 同 様 に 処 理 し た 毛 髪 表 面 の 観 察 で は, キ ュ ー テ ィ ク ル が 観 察 で き な い ほ ど 毛 髪 へ 高 分 子 が 過 剰 に 付 着 して い る 様 子 が 観 察 さ れ た 。 実 際 に 高 分 子 単 純 水 溶 液 で 洗 髪 を 行 っ た 場 合, 乾 燥 後 の 毛 髪 は 非 常 な き しみ 感 を 生 じ, シ ャ ン プ ー で 洗 髪 し た 後 と は 全 く異 な る 使 用 感 で あ っ た 。 こ れ らの 結 果 か ら, シ ャ ン プ ー 後 に 観 察 さ れ た 付 着 物 の 組 成 は 高 分 子 単 独 で は な く, 界 面 活 性 剤 と の 複 合 体 (コ ア セ ル ベ ー ト) が 毛 髪 へ 付 着 し て い る も の と推 察 さ れ, 洗 髪 後 の 使 用 感 に コ ア セ ル ベ ー トの 生 成 ・ 付 着 が 大 き く影 響 を 及 ぼ し て い る こ とが 示 唆 さ れ た 。 ま た 蛍 光 ラ ベ ル カ チ オ ン 化 セ ル ロ ー ス (FITC-CC 0.35) お よ び 蛍 光 ラ ベ ル カ チ オ ン化 ポ テ ト ス タ ー チ (FITC-CPS) を 配 合 し た シ ャ ン プ ー で 洗
髪 した毛 髪 ス トラ ン ドの 蛍 光 顕 微 鏡 観 察 の 結 果 を
Fig.
-8に 示 す 。
FITC-CC 0.35の 場 合, 不 均 一 に
高 分 子 が 強 く発 光 す る様 子 が 観 察 さ れ る の に対 し
て, FITC-CPSで
は全 体 が 均/に
弱 い発 光 を示 す
こ とか ら, 毛 髪 表 面 にCC 0.35は 部 分 的 に厚 く付
着 し, CPSは
全 体 に薄 く付 着 し て い る こ とが 推
察 され る 。 この よ うな結 果 か ら もCC系
の シ ャ ン
プー は す す ぎ時 にな め らか さ, ぬ め り感 を感 じや
す く, CPS系
で は 泡 切 れ の 早 さ, す す ぎ の よ さ
を感 じる こ とが わ か って お り, この よ う な付 着状
態 の 違 い が 使 用 感 に も影 響 を与 え てい る こ とが 示
唆 さ れ る。
4. 結
論
シ ャ ンプ ー希 釈 時 に形 成 され る カ チ オ ン性 高 分
子 と界 面 活 性 剤 ミセ ル の コ ンプ レ ック ス が洗 髪 行
為 中 の使 用 感 に大 き く影響 を及 ぼ す こ とが 知 られ
て お り, これ まで は 多 くの 場 合, 経 験 に よっ て 処
方 設 計 を行 い シ ャ ン プー使 用 感 の 調 整 を行 って き
た 。 今 回 わ れ わ れ は シ ャ ン プー 希 釈 過 程 にお け る
コ アセ ル ベ ー シ ョン に着 目 し, 処 方 中の カチ オ ン
性 高 分 子 の カチ オ ン化 度 や 主 鎖 骨 格 の構 造 が, シ
ャ ンプ ー の使 用 感 に強 く影 響 を与 え る こ とを明 ら
か に した。 コ ア セ ルベ ー ト消 失 時 の相 対 濃 度 が 高
い ほ ど, す す ぎやす く, ぬ め り を感 じな い傾 向が
あ る 。 また, 7倍 希 釈 時 の コ ア セ ル ベ ー トの生 成
量 が 多 くな る ほ ど, シ ャ ンプ ー す す ぎ時 の ぬ め り
を感 じや す くな る。 さ ら に, 毛 髪 へ の付 着 量 や付
着 状 態 が 乾 燥 後 の 毛 髪 の 感触 に まで 影 響 を与 え る
こ とを示 唆 して い る。 これ らの 結 果 は新 しい シ ャ
ンプ ー処 方 開発 の 可 能 性 を示 唆 す る もので あ る。
す な わ ち, コ ア セ ル ベ ー シ ョ ン と い う現 象 に 着 目 し た シ ャ ン プ ー 処 方 と使 用 性 の 相 関 関 係 を 明 ら か に す る こ と に よ り, シ ス テ マ テ ィ ッ ク な シ ャ ン プ ー 処 方 開 発 が 可 能 に な る と期 待 さ れ る 。 謝 辞 本 研 究 に あ た り, 東 邦 化 学 工 業 (株) よ りカ チ オ ン化 セ ル ロ ー ス を ご提 供 頂 き ま した 。 ご協 力 に 深 く感 謝 い た します 。 引 用 文 献1) E. D. Goddard, R. B. Hannan, J. Am. Oil Chem.
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