• 検索結果がありません。

韓 国勤労 基準法 の特質 とその起源

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "韓 国勤労 基準法 の特質 とその起源"

Copied!
33
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

韓 国勤労 基準法 の特質 とその起源

金 鋳 基

は じめ に

1国 際 比 較 で 見 た 勤 労 基 準 法 の 特 徴 ll立 法 過 程

1.労 働 者 保 護 法 の 前 史 2.立 法 プ ロ セ ス の 概 要 3.各 法 案 の 条 文 比 較 4.立 法 主 体

5.国 会 審 議 と修 正 内 容 皿 韓 国 的 特 質 の 起 源

1.有 給 休 日 ・休 暇 2.解 雇 等 の 制 限 3.退 職 金 条 項 4.月 次 有 給 休 暇 結 び

参 考 文 献

は じめ に

本 稿 で は 韓 国勤 労 基 準 法(1953年 法)の 特 質 を各 国 の 立 法 例 に照 ら して 明 ら か に し,そ の よ うな 特 徴 が 如 何 な る経 緯 に よ っ て作 られ た か を歴 史 事 実 に 即 し て 検 討 して み る。 勤 労 基 準 法 の 意 義 を 雇 用 制 度 形 成 史 の 視 点 か ら再 吟 味 す る こ

とが そ の ね ら い で あ る。

制 定 当 時 の 勤 労 基 準 法 は,先 進 各 国 に 引 け を取 ら な い高 い 労 働 基 準 を 誇 っ て

〔153〕

(2)

ヱ54 商 学 討 究 第52巻 第2・3号

は い た が,当 時 の 疲 弊 した 韓 国経 済 の 現 実 とか け離 れ た 理 想 論 に 過 ぎず,実 際 は ほ と ん ど機 能 しな か っ た と い わ れ て い る 。 そ の よ うに な っ た理 由 は,こ の 法 が,当 時 の雇 用 現 場 の 実 態 を十 分 考 慮 す る こ と な く,ひ た す ら先 進 各 国 法 と り わ け 日本 の労 働 基 準 法(1947年)を 手 本 に して 制 定 され た か らで あ る。 そ して 1961年 の改 定 で 労 働 基 準 が 一 部 引 き下 げ られ た こ と と,1960年 代 か ら経 済 開発 に よ って 経 済 水 準 が 上 昇 した こ とで,法 と現 実 の ギ ャ ップ が 漸 く縮 ま りは じめ た。1953年 勤 労 基 準 法 に対 す る通 説 的 イ メ ー ジ は恐 ら く以 上 の よ うな もの で あ ろ う。1)そ れ で は,有 名 無 実 と さ れ る 同 法 を本 稿 で あ え て と りあ げ る 理 由 は何 か 。 以 下 で は そ れ に関 わ る 論 点 を い くつ か 提 示 し て お く。

第 一 に,同 法 が 日本 法 を参 照 して起 草 さ れ た こ と は,双 方 の 章 立 て を見 比 べ る だ け で 明 らか で あ る。 とは い え,そ れ だ け を強 調 す る と,も う一 つ の 側 面, 即 ち 同法 に は,他 国 の 立 法 例 に広 く当 た っ て も類 似 例 を見 つ け に くい ユ ニ ー ク

な条 項 が い くつ もあ る,と い う事 実 に 正 当 な注 意 を払 わ な くな る。 韓 国 内 の 労 働 プ ロパ ー の 問 で す ら,そ の ユ ニ ー ク さ に気 づ く人 は案 外 少 な い よ う に見 え る。

例 え ば年 次 有 給 休 暇 とい うの は 各 国 に 広 く見 られ るが,月 次 有 給 休 暇 を 設 け た の は韓 国 だ けで あ る 。 週 休 日 を有 給 休 日 に した の も立 法 例 と して は 珍 しい 。1961 年 の 法 改 定 はか な り部 分 的 な もの で,韓 国 的 特 徴 を示 す そ れ らの 条 項 に 大 幅 な 変 更 は な か っ た。 近 頃 もそ う した 条 項 の 一 部 が 新 た な争 点 と して 注 目を 集 め て い る。 解 雇 制 限条 項 をめ ぐっ て は,1996年 末 に そ の 改 定 に 反 対 す る ゼ ネ ス トが 起 き て い る 。 か の ア ジ ア通 貨 危 機 に 襲 わ れ た1997年 末 に は,IMFが 救 済 金 融 の 条 件 と して 解 雇 制 限 条 項 の緩 和 を迫 っ た こ と もあ る。 ま た 近 年 の 労 働 時 間 短 縮 をめ ぐる 労 使 政 問 の や り取 り にお い て は,法 定 有 給 休 日や休 暇 の 日数 が 多 す ぎ る との不 満 が 経 営 側 か ら出 て い る。 こ う したユ ニ ー ク な条 項 は 外 国立 法 例 か らス トレー トに は生 まれ て こ な い 。 な ん らか の 韓 国 内 事 情 に よっ て そ の よ う な 形 に な っ た と考 え る しか な い。 同 法 を構 成 す る無 数 の 輸 入 部 品 と は違 っ て,そ

1)韓 国 の 著 名 な 労 働 法 学 者,金 燗 培(1982),(1999)の プ ロ ロ ー グ部 分 を み よ 。 日

本 法 参 照 説 に つ い て は,労 働 法 の 起 草 に 関 わ っ た キ ー パ ー ソ ン の 一 人,李 恒 寧(韓

国 労 働 法 学 会)を 参 照 。

(3)

韓 国勤 労基 準 法の特 質 とそ の起 源 ヱ55 れ こ そ 国 内 の 実 態 とつ なが る 数 少 な い 糸 口 な の で あ る。 本 稿 で はそ れ を巡 っ て 見 た い。

第 二 に,勤 労 基 準 法 に は本 来,雇 用 ・労 働 条 件 に お け る ナ シ ョナ ル ・ミニ マ ム の 保 障 とい う性 格 が あ る。 法 的 水 準 以 下 の 実 態 が 広 く存 在 す るの に,国 家 が そ れ を放 置 して い る とす れ ば,法 が 機 能 して い る と はい え な い 。 但 しそ う し た 状 況 は何 も1950年 代 に 限 っ た話 で は な い 。 程 度 の差 こそ あ れ,経 済 開発 が す で に軌 道 に の っ た1970年 代 に もそ う した事 例 は珍 し くな か っ た 。2)だ か ら とい っ て,韓 国 の勤 労 基 準 法 は 制 定 か ら20,30年 間 も,無 意 味 な存 在 で あ り続 け た と い え る だ ろ うか 。 本 稿 で はや や 違 う視 点 を取 り入 れ て み た い。 即 ち1953年 法 の 高 い 労 働 基 準 に は,労 働 条 件 の相 対 的 に 良 好 な一 部 大 企 業 に お い て 先 駆 的 に形 成 され た 雇 用 慣 行 が 投 影 され て お り,法 の 成 立 に よ っ て 今 度 は そ の よ う な 雇 用 慣 行 の 確 定 及 び 普 及 が 促 され た とみ る。 も ち ろ ん法 制 定 以 降 も永 ら く,そ こ に 到 達 で き た の は,企 業 の 支 払 い 能 力 や 労 働 運 動 の存 在 な ど,恵 まれ た条 件 にあ る一 部 職 場 に 限 られ て い た 。 しか し重 要 な の は,与 件 さ え整 え ば 目指 す べ き雇 用 制 度 像 は既 に確 定 され て い た とい う こ とで あ る。 同 法 は ナ シ ョナ ル ・ミニ マ ム と して で は な く,目 指 す べ きナ シ ョナ ル ・ス タ ンダ ー ドを示 す 旗 印 と して 機 能 した とい う立 論 で あ る 。

第 三 に,本 稿 で は,勤 労 基 準 法 の 意 義 を,1945年 解 放 を起 点 とす る雇 用 慣 行 の 変 化 に関 連 づ け て 考 え よ う とす る 。 雇 用 現 場 の 実 態 変 化 とい え ば,前 掲 通 説 で わ か る よ う に,1960年 代 以 降 の経 済 成 長 との 関 連 で議 論 され る傾 向 が 強 い。

しか し例 え ば一 日8時 間労 働 制 とか,週 休 制 の よ う な,今 日で は 当 た り前 の慣

行 が い つ 頃 作 られ た か を 問 うて み れ ば,解 放 を 起 点 に して 起 き た変 化 の 重 要 性

に気 づ く はず で あ る。1953年 労 働 法 の 成 立 過 程 を分 析 した 金 三 沫 の研 究 は,こ

う した解 放 局 面 の 遺 産 に 目 を向 け た 数 少 な い 労作 の一 つ で あ るが,分 析 対 象 が

集 団 的労 使 関係 関 連 の3法 に 限 られ,勤 労 基 準 法 が 抜 け て い る。 勤 労 基 準 法 は

2)例 え ば全 泰 費 の焼 身 自殺 事件 を想起 す るだけで 十分 で あ ろう。韓 国労 働運 動 史上

の分水 嶺 として記録 され た この事件 は1970年 に起 きてお り,氏 は勤 労基 準法 以下 の

実 態 を放置 す る 当局 に抗 議 してい た。

(4)

156 商 学 討 究 第52巻 第2・3号

職 場 の雇 用 慣 行 に よ り直 接 に つ な が る法 で あ り,集 団 的 労 使 関 係 法 を の み扱 う と き よ りは,基 層 労 働 者 の 顔 を も う少 し具 体 的 に 浮 か び上 が らせ る こ とが で き る と考 え る 。 但 し,法 制 定 を め ぐ る政 治 力 学 や 背 景 は労 働4法 と も変 わ ら ない の で,そ れ に 対 す る分 析 は金 三 沫 に譲 る こ と に し,こ こ で は,前 記 の 韓 国 的 特 徴 を示 す 条 項 の ル ー ツ探 しに重 点 を置 く。

1国 際比較で見た勤労基準法の特徴

〈 表1>で は,1953年 勤 労 基 準 法 に お い て 韓 国 的 と思 わ れ る 条 項 を選 び 出 し, 立 法 の 時 点 で 参 照 され た はず の 諸 国 の事 例 と比 較 して み た。 以 下 順 番 に考 察 し

て み よ う。

【 解 雇 等 の 制 限 】 韓 国 法 の② 業 務 上 の 負 傷 に よ る休 職 期 問 及 び 女 性 の 産 休 期 間 な どに お け る解 雇 禁 止 は,書 き写 した と もい え る ほ ど 日本 法 に似 て い る。

しか しこ れ は 特 別 な期 間 に 限 定 した 解 雇 制 限 で あ っ て,一 般 的解 雇 制 限 を定 め た① 正 当 な 理 由 の な い解 雇 な ど懲 罰 禁 止 の 部 分 は 日本 法 に は見 られ な い。 米 国 に もそ の よ う な法 的制 限 は な い 。た だ し労 働 協 約 の 多 くは 解 雇 の 要 件 と して 「 正 当 な 理 由(justcause)」 を要 求 して い る(日 本 労 働 協 会p197‑198,中 窪p274>。

【 労 働 時 間 】 日本 の 場 合,基 準 労 働 時 間 を 当 時 のILO基 準 を 遙 か に下 回 る 水 準,言 い 換 え れ ば1919年 水 準(ILO条 約1号)に 設 定 して い る。 日本 経 済 は 他 先 進 国 に比 して 疲 弊 し立 ち 後 れ て い る とい うの が,基 準 を低 く設 定 し た と き の主 な 論 拠 で あ っ た(寺 本p216)。 米 国 の公 正 労 働 基 準 法 は 最 長 労 働 時 間 を 定 め ず,ILO基 準 と同 じ週40時 間 を超 え る時 間 外 労 働 に 対 して 賃 金 割 増 率 50%を 決 め て い る。 割 増 賃 金 さ え払 え ば,法 律 上 は何 時 間働 か せ て も よい とい うわ け で あ る(中 窪p237)。 韓 国 の 場 合,基 準 労 働 時 間 は 日本 と同 じで,時 問 外 労 働 の 賃 金 割 増 率 だ けが 米 国 並 の 高 い水 準 に な っ て い る。 労 働 時 間短 縮 よ り

賃 金 増 額 を優 先 す る 傾 向 が 窺 わ れ る。

【 休 日 ・休 暇 】 まず 先 進 各 国 の 標 準 と い え るILO基 準 を見 る と,無 給 の

週 休 日 と有 給 年 次 休 暇 を二 本 柱 と して い る。 日本 の 労 働 基 準 法 制 定 過 程 で も

(5)

韓 国勤 労基 準法 の特 質 とそ の起源157

1LOi基 準 は 強 く意 識 され て お り,年 次 休 暇 面 で 一 部ILO基 準 に 達 しな い 部 分 を残 しつ つ も,前 記 の 二 本 柱 は そ の ま ま持 ち 込 ま れ て い る(中 山p76,寺 本 p249)。 米 国 の場 合 は この 分 野 で 法 的 規 制 は な く労 働 協 約 が そ の 代 わ りを勤 め

〈 表1>労 働 条件 規制 基準 の 国際比 較 韓 国 勤 労基 準 法

(1953年)

日本 労 働 基 準 法

(1947年) 米 国の法 と労働協約 ILO基 準

【 解 雇 等 の制 限】 ① 正 当 な 【 解 雇 制 限 】 業 務 上 【 解 雇 制 限 】大 半 の 労 ①基準労働時 理 由 の ない解 雇,休 職 … … の負 傷 に よ る休 職期 働 協 約 が 「 正 当 な理 由 聞 は,週40時 その他懲罰の禁止 ②業務 間 な どで は解 雇 禁 止 (justcause)」 の 存 間(1935年, 上 の 負 傷 に よる休 職 期 間 な 【 労働時剛 基準労 在 を解 雇 の要 件 と定 め 条 約47号)

どでは解雇禁止 働 時 間 は 日8時 間, て い る 。 ②無給の週休

【 労働時間】基準労働時間 週48時 間。 時 間 外 労 【 労働時剛 公正労働 制:工 業 部 門 は 日8時 間,週48時 間 。 時 働 の賃 金 割 増 率 は 基 準 法(FLSA,1938 に は1921年 か

間外 労 働 の 賃金 割増 率 は 25% 年)は 週40時 間(1940 ら(条 約14号),

50% 【 休 日 ・休 暇 】① 無 年 以 降)を 超 え る労 働 商業 や事務部

【 休 日 ・休 暇 】 ① 有 給 週 休 給週休 日 ② 祝祭 日 時 間 に 対 して50%の 割 門 に は1957年 日(=定 休 日)② 法 定 休 につ い て は 休 日 と明 増賃金の支給 を義務づ か ら適 用(条 日は 有 給 休 日 ③ 有 給 月 次 示せず ③有給年次 けて い る だ けで あ る。 約106号) 休 暇(毎 月1日)④ 有 給 休 暇(ILO条 約52号 【 休 日 ・休 暇 】 戦 後, ③有給年次休 年 次 休 暇(最 低 日数 は 皆 勤 水 準 に満 た な い 。例 労 働 協 約 の 一般 的相 場 暇(最 低6日, 者 が8日,9割 以 上 精 勤 者 え ば,休 暇 を与 え る と し て,① 日曜 日 や 16歳 未 満 は12 が3日 。 勤 続1年 で1日 の 前 提 条 件 と して,8 土 曜 日労働 に対 す る賃 日,勤 続 年 数 割 合 で 増加 。 最 高 義 務 日数 割 以 上 出 勤 と い う 金 割 増 率 を協 定 す る こ に応 じて 日数 は 年20日 ま で)以 上,年 次 「 精 勤 」 条 件 を付 け とで,事 実 上 は週 休 制, を増 や す よ う 休 暇 は,ILO条 約52号 水 加 え た 。 ま た16歳 未 さ らに 週休 二 日制 の 運 勧 告) 準 に 満 た な い。 ⑤ 女 性 の 有 満 者 の 最 低 日数 が6 用 。 但 し無 給。 ② 祝 給 生 理休 暇(毎 月1日),お 日に止 まる な ど。年 祭 日(10日 前 後 が 相場) 産 前 後60日 の有 給 生 理 休 暇, 次 休 暇 日数 は勤 続1 を有 給 休 日 とす るの が 日2回30分 ず つ の 有 給 授 乳 年 につ き1日 の 割合 一般的 ③有給年次休

休憩時間 で 増 加 。 最 高義 務 日 暇(勤 続1年 で1週,

【 解 雇 者へ の支 給 】① 平均 数 は 年20日 ま で 。) 2年 で2週,5年 で3 賃 金 の30日 分 。 ② 勤 続1年 【 解 雇 予 告 】30日 前 週,最 長 は4〜6週 以 上 は1年 につ き30日 分 ず に予 告 す る 義務 。 予 多 様 で あ る)④ そ の つ 加 算。 勤 続10年 以 上 は10 告 な しの 場 合 は30日 他,私 用 や病 気 な どの 年 を 越 え る勤 続 年 数1年 に 分 の平均賃金を支給 休 暇 は 無給 が 多 い が, つ き60日 分 ず つ 加 算 。 しなけ れ ば な らな い。 有 給 も一 部 あ り。

出 所:各 国 法 や 条約,寺 本広 作,中 窪 裕也,日 本 労働 協 会

(6)

158 商 学 討 究 第52巻 第2・3号

て い る 。 土 曜 日や 日曜 日に つ い て は 時 間外 賃 金 割 増 率 を公 正 労 働 基 準 法 の 基 準 よ り高 く設 定 す る こ と で事 実 上 の 休 日 に して い る 所 が 多 い 。 も ち ろ ん 無 給 休 日 で あ る 。 有 給 年 次 休 暇 も労 働 協 約 で 定 め て お り,事 例 に よ って 多 様 で は あ る が 標 準 的 相 場 か ら し て 日本 よ り高 い レベ ル に あ る(日 本 労 働 協 会p184‑189)。 法 律 に よる 直 接 規 制 を避 け,労 使 の ヴ ォ ラ ン タ リー な交 渉 に任 せ る部 分 をで きる だ け広 くと っ て お くの が 米 国 流 と い え よ う。 もち ろ ん そ れ は,集 団 的 労 使 関 係 法 を通 じて 団 体 交 渉 が 積 極 的 に支 え られ て い る こ と と対 応 して い る が 。

韓 国 の場 合 は次 の よ う な特 徴 が 確 認 で き る。 第 一 に,休 日や 休 暇 の ほ ぼ 全 て を有 給 に して い る 。 法 定 休 日(=国 の 定 め る祝 祭 日)は 他 国 で も労 働 協 約 な ど に よ っ て 有 給 休 日に な っ て い る こ とが 多 い 。 韓 国 の 特 徴 は 国家 が そ れ を 直 接 定 め た こ とで あ り,さ らに 週 休 日 を有 給 に した の は他 に 類 を見 な い 。3)女 性 の 生 理 休 暇 や 出 産 休 暇 な ど につ い て は,生 理 休 暇 とい うの が そ もそ も 日本 生 まれ の 発 想 な の で,日 本 法 の 影 響 を 強 く感 じ させ る。 韓 国 法 の 特 徴 は そ れ を す べ て 有 給 に した こ とで あ る 。 第 二 に,有 給 休 暇 を月 次 休 暇 と年 次 休 暇 の 二 本 立 て に し て い る の が 特 徴 的 で あ る。 両 方 を合 計 した 有 給 休 暇 の 最 高 日数 を年20日 まで に して い る の は 日本 法 の 相 場 に一 致 して い る 。 ま た 年 次 休 暇 付 与 の 要 件 と され る

「1年 問 の 精 勤 」 とい う条 件 も 日本 以 上 に厳 しい 。以上,有 給 休暇 は トー タル 日数 面 で 日本 よ り多 くは な い。 特 徴 と して 目立 つ の は,月 次 休 暇 と い うユ ニ ー ク な発 想 だ け で あ る。

【 解 雇 者 に 対 す る支 給 】 勤 労 基 準 法 第28条 は事 実 上 の 退 職 金,し か も累 進

3)1953年 法 の 条 文 そ の も の は,週 休 日 を有 給 に す る か ど う か が 必 ず し も明 確 で は な い 。 同 法 第45条 は,第1項 で1週 間 に 平 均1日 以 上 の 休 日 を 与 え な け れ ば な らな い と し,第2項 で 定 休 日 や 法 定 休 日 を 「賃 金 算 出 上 の 勤 労 日」,即 ち有 給 休 日 と 認 め る と し て い る 。 第1項 で 規 定 した 週 休 日が 第2項 で い う 定 休 日 に 含 ま れ る か ど うか が こ こ で 問 題 と な る。 しか し同 法 案 の 国 会 審 議 で は 週 休 日 を 含 む 定 休 日 を 有 給 に す る とい う趣 旨 が 明 確 に な っ て お り,立 法 主 体 の 意 図 を疑 う余 地 は な い(国 会 速 記 録, 第15回,51号p5‑7)。 ま た 法 成 立 後 は 保 険 社 会 部 長 官 の 例 規 通 牒 が,週 休 日 は 定 休 日 に 含 ま れ る と,明 確 な 解 釈 指 示 を 出 して い る(労 第320号,1953.10.28,金 文 永p144‑145に 収 録)。 ま た1961年 の 同 法 改 定 で は,週 休 日 を 有 給 休 日 に す る と い

う 意 味 が,条 文 修 正 に よ っ て も っ と 明確 に な っ た 。

(7)

韓 国勤 労基 準法 の特 質 とそ の起源 159 的 に増 加 す る退 職 金 の 支 給 を命 じて い る 。 日本 法 の 場 合,解 雇 予 告 な しの場 合 に 限 っ て 賃 金1ヶ 月 分 の解 雇 手 当 支 給 が 義 務 づ け られ て い る に過 ぎ な い 。 日本 で は戦 前 に 「 退 職 積 立 金 及 び 退 職 手 当 法 」(1936年)が あ っ たが,「 厚 生 年 金 保 険 法 」(1944年)に 吸 収 さ れ る 形 で廃 止 さ れ た。 戦 後 復 活 した 退 職 金 制 度 は 主 に労 働 協 約 に依 存 して い る。

ま とめ て み よ う。1953年 の勤 労 基 準 法 は 通 説 通 り日本 の労 働 基 準 法 の 強 い 影 響 を受 け て い る が,ユ ニ ー ク な 条 項 もい くつ か あ る 。 韓 国法 の 最低 労 働 基 準 が 日本 法 の そ れ よ り高 くな っ た の は,主 と して そ れ らの 条 項 の お 陰 で あ る。 そ の 一 部 は

,他 国 で は立 法 で は な く労 使 間 の 交 渉 に任 され て い る事 柄 で あ る。 また 月 次 有 給 休 暇 の よ うに,発 想 そ の も の が ユ ニ ー ク な 条 項 もあ る 。 そ う した 内 容 は 他 国 立 法 例 の単 純 参 照 に よっ て 生 ま れ た と は考 え に くい 。 韓 国 内 の何 か の 事 情 に よ っ て 出 て きた 可 能 性 が 高 い 。

皿 立 法 過 程

1.労 働 者 保 護 法 の 前 史

労 働 条 件 の 最 低 基 準 を定 め る 労 働 者 保 護 法 の 前 史 は,日 本 の植 民 地 支 配 期 に 公 布 さ れ た 朝 鮮 鉱 夫 労 務 扶 助 規 則(1938.5)や 工 場 就 業 時 間制 限 令(1939.8)

に 遡 る こ とが で きる 。 日本 本 土 と違 っ て 朝 鮮 で は,植 民 地 的工 業 化 の本 格 化 し た1920年 代 以 降 も,工 場 法 の な い 状 態 が つ づ い た。 前 記 の2法 は何 れ も植 民 地 末 期 に公 布 され て お り,朝 鮮 民 衆 を 国家 総 動 員 体 制 に 組 み 入 れ る政 策 手 段 の 一 つ で あ っ た 。 た だ し労 働 行 政 に よ る監 督 体 制 を欠 い た これ らの 法 が 現 に どれ だ け 機 能 した か は疑 わ しい(宣 在 源p211)。 ま た そ こで 定 め る労 働 基 準 は後 の 勤 労 基 準 法 の そ れ よ りか な り低 く,両 者 の 問 に直 接 の 連 続 性 を認 め る こ とは 難 し

い 。 植 民 地 期 の 遺 産 と して 注 目す べ きは む し ろ,大 企 業 基 幹 従 業 員 の 相 対 的 に 高 い 労 働 条 件 の 方 で あ る。

解 放 後,米 軍 政 期 の 労 働 者 保 護 法 と し て は児 童 労 働 法 規(法 令112号,46.9.18)

や 最 高 労 働 時 間(法 令121号,46.11,7)を 挙 げ られ よ う(金 姻 培,1982)。 そ

(8)

ヱ60 商 学 討 究 第52巻 第2・3号

の う ち児 童 労 働 法 規 は韓 国 の実 態 に合 わ な い と の反 発 が 強 か っ た た め,一 部 条 項 の 施 行 が 延 期 さ れ た 後,韓 国 人 で 構 成 され る過 渡 立 法 院 で 制 定 され た未 成 年 者 労 働 保 護 法(1947.5.16)に 取 って 代 え られ た。 同 法 規 は そ もそ も北 朝 鮮 側 の 労 働 改 革 を 意 識 して作 られ た拙 速 法 で あ り,軍 政 当 局 はそ の実 施 に さ ほ ど熱 心 で は な か っ た(Meacham,p12,Earl,p19‑21)。 最 高 労 働 時 間 法 令 も事 情 は似 て い て,現 に ど れ ほ ど機 能 し た か は疑 わ しい 。4)と は い え,労 働 条 件 規 制 の 戦 後 的水 準 が は じめ て 法 制 化 され た こ と は意 味 が あ る。 そ こか ら,後 の 勤 労 基 準 法 に直 接 つ なが る 部 分 も少 な くな い か らで あ る 。

2.立 法 プ ロ セ ス の 概 要

勤 労 基 準 法 を 含 む 労 働 諸 法 の制 定 プ ロ セ ス を 〈 表2>で は3時 期 に分 け て 整 理 して い る。第1期 に は,建 国 早 々,政 府 社 会 部 労 働 局 が イ ニ シ ア テ ィ ブ を とっ て労 働 諸 法 の草 案 を作 成 し,政 府 内 調 整 をへ て 国 会 に提 出 又 は提 出待 ち の段 階 ま で 運 ん だ。 しか し朝 鮮 戦 争 の勃 発 か ら国会 機 能 が 正 常 に 戻 る ソ ウル 再 奪 還 ま で,立 法 の 流 れ は 停 止 して し ま う 。 第2期 の動 き は,大 韓 労 総 出 身 の 国 会 議 員 が 労 働 組 合 法 案 を提 出 した こ と で 始 ま っ た。 政 府 も そ れ に 対 抗 して 法 案 を提 出 し,双 方 の 案 は 国 会 社 会 保 健 委 員 会 の 審 議 に 回付 さ れ た 。 社 保 委 で は 双 方 の 案 を共 に破 棄 す る代 わ り,双 方 を折 衝 した とは い え,相 対 的 に独 自の体 系 を持 つ 社 保 委 代 案 が 作 成 され た。 この 案 が ほ ぼ そ の ま ま本 会 議 を通 過 す る の で,社 保 委 代 案 の 作 成 は 集 団 的 労 使 関 係 関連 法 の 立 法 過 程 に お い て 最 大 の 山場 で あ っ た とい え る。 ま た 最 初 に法 案 を提 出 し立 法 の きっ か け を作 っ た の は大 韓 労 総 系 議 員 で あ っ たが,社 保 委 代 案 作 成 に リー ダ ー シ ッ プ を発 揮 した の は社 保 委 委 員 長 の 金 用 雨 で あ っ た こ と も注 目 さ れ る 。

こ う し た立 法 主 導 権 の変 化 は,第3期 の勤 労 基 準 法 の 立 法 過 程 に よ りは っ き り示 され る。 まず 注 目 され るの は,僅 か 数 日の 差 と は い え,金 用 雨 案 が 大 韓 労

4)韓 国 労 総(p260), 7.28)

『東 亜 日 報 』(47 .5.29,6.28,7.9,47.11.6,11.8,49.

(9)

韓 国勤労 基準 法 の特 質 とその起 源 161

〈 表2>労 働4法 の 立 法 プ ロ セ ス

集団的労使 関係関連の3法 勤労基準法

第1期 49.1末,労 働 組 合 法,利 益 均 露 法 の 草 案 49.1末,労 働 基 準 法 の 草 案 48.8韓 国 政 作 成完 了(社 会部 労 働 局) 作 成完 了?(社 会部 労働 局) 府 樹 立 〜50, 49.5末,労 働 組 合 法,法 制 処 回 付 予 定 49.5.31勤 労 基 準 法 案 の 法 制

6.25朝 鮮 戦 49.5.31労 働 調 停 法 案 の 法 制 処 回 付 処回付

争勃発 50。2.24労 働 調 停 法 案,国 務 会 議 を 通 過 50.2.24労 働 基 準 法 案,国 務 50.2.28労 働 組 合 法 案,国 務 会 議 に 上 程(予 会議 を通過

定)

50.3(18日 以 前),労 働 調 停 法 案,国 会 に 上程 ⇒ 会 期終 了 に よ り廃 案

第2期 51.4,28労 働 組 合 法 案(趙 光 ソ プ ・林 基 奉 51.3.14ソ ウ 議 員案)の 国 会上 程

ル再 奪還 51.6.8政 府 案(労 働 組 合 法 案,労 働 争 議 調整 法 案)の 国 会上 程

51.1国 会 社 会 保 健 委 員 会 にお い て,労 働 3法(労 働 組 合法,労 働 委 員会 法,労 働 争 議調整法)の 社保委代案作成が事実上完了

第3期 52.11.4労 働3法 の 社 保 委 代 案 が 同 委 員 会 52.2.25金 用 雨 議 員 案 の 国 会

を通 過 提 出

労働3法 案の国会本会議審議 開始か ら通過 52.3.3林 基 奉 議 員 案 の 国 会 労 働 組 合 法 案(52.12.22〜53.1.23) 提 出*

労 働 委 員 会 法 案(53.2.27〜2。1) 52.7.29政 府 案 の 国 会 提 出 労 働 争 議 調 整 法 案(53.1.24〜2.1> 52.12.20国 会 社 保 委 二林 基 奉

案,政 府 案 を破 棄 し,金 用 雨 案に若干の修正 を付けて採択 国 会本 会 議 審議:第1次(53.

2.22〜),2ヶ 月 間 審 議 留 保, 再 上 程 か ら 通 過(53.4.1〜

4.15)

*本 文 の注5)を 参 照 。

**社 保 委 代 案 の作 成 時 期 に つ いて は,金 三 沫(p241‑242)を 参 照 。

***法 案 の 名 称 は新 聞 報 道 の ま ま

出所:『 制 憲 国 会経 過 報 告 書』,国 会議 案 の 原本 フ ァ イル,『国会 史』(大韓 民 国 国 会事 務 処,

第1巻),『 国 会議 案 沿 革集 』,『東 亜 日報』

(10)

162商 学 討 究 第52巻 第2・3号

総 系 議 員 の 林 基 奉 案 よ り先 に提 案 され た こ とで あ る 。5)前 記 の社 保 委 代 案 作 成 は,金 用 雨 案 の 提 案 時 点 か ら少 な く と も3週 間 以 上 前 に事 実 上 完 了 し て い た 。6)つ ま り金 用 雨 は 社 保 委 代 案 作 成 を 主 導 した 後,そ の 勢 い で 直 ち に 勤 労 基 準 法 案 の提 案 準 備 に取 りか か っ た とい え る。 一 方,政 府 案 の提 出 は金 用 雨 案, 林 基 奉 案 が 出 て か ら5ヶ 月 も後 に行 わ れ た 。 そ の 問 は,李 承 晩 大 統 領 の クー デ

ター 紛 い の 拘 引 な憲 法 改 正 に よ っ て政 局 が 大 混 乱 し,通 常 の 立 法 活 動 が 妨 げ ら れ て い た と思 わ れ る 。3案 を 審 議 した 国 会 社 保 委 は,林 基 奉 案 は労 働 条 件 が 高 す ぎ,政 府 案 は低 す ぎ る と し,そ の 中 間 を と っ て 金 用 雨 案 に若 干 の 修 正 を付 け て 採 択 した(国 会 史p816)。 そ の 案 が 本 会 議 で の 修 正 を へ て 最 終 的 に確 定 さ れ た 。

3.各 法 案 の 条 文 比 較

立 法 の各 段 階 で 法 案 条 文 が どの よ うに 変 化 した か を,特 に前 記 の 韓 国 的 特 徴 を 示 す 条 項 を 中 心 に整 理 した の が 〈 表3>で あ る 。 そ れ を参 照 しつ つ 法 案 そ れ ぞ れ の 分 析 を 進 め よ う。

【 社 会 部 労 働 局 草 案 】 こ の案 に は韓 国 的 特 徴 の 原 型 が ほ ぼ 出 そ ろ っ て い る。

解 雇 等 の制 限,解 雇 者 へ の 支 給,週 休 日や 法 定 休 日の 有 給 化,女 性 の生 理 休 暇 や 出 産 休 暇 の 有 給 化 な どが そ う で,特 に有 給 休 暇 に 年 次 休 暇 が な く,代 わ りに 月 次 休 暇,月 次 病 暇 が 盛 り込 ま れ て い る の が 目 を 引 く。

【50年政 府 案 と52年 政 府 案 】 草 案 は政 府 国 務 会 議 を通 過 す る 過 程 で修 正 さ れ50年 政 府 案 と な る。 両 案 につ い て 入 手 可 能 な資 料 は 新 聞 報 道 の 抄 録 しか なか っ た 。 特 に50年 政 府 案 は 一 部 条 項 しか 掲 載 され て お らず,草 案 と直 接 比 較 で き る 項 目 は解 雇 等 の 制 限 と休 業 手 当 の 二 つ しか な い。 両 項 目 と も労 働 基 準 は 若 干

5)『 国 会 議i案沿 革 集 』 に は,国 会 提 案 日が 金 用 雨 案 と 同 じ 日付(50.2.25)と な っ て お り,し か も林 基 奉 案 が 先 に 掲 載 さ れ て い る 。 しか し議i案の 原 本 フ ァ イ ル の 提 案 報 告 日 は 金 用 雨 案(2.27),林 基 奉 案(3.3)の 順 番 と な っ て お り,『 国 会 史 』 の 既 述(p816)も こ の 順 番 を 支 持 して い る の で,『 国 会 議 案 沿 革 集 』 の 記 録 を ミス と 判 断 した 。

6)社 保 委 代 案 の 作 成 時 期 に つ い て は,金 三 沫(p241,242)を 参 照 。

(11)

〈 表3>立 法過程 にお ける各 法案 の条文 比較

項 社会部労働局草案 政府案 国会議員(金 用雨)案 国会議員(林 基奉)案 政府案 国会社保委修正案 最終確 定案

(49.5)串 (50.2)寧

(52.2.25)

(52.3.3)零 串

(52.7.29) (52.12.20)

(53.4ユ5)

適 不明 常時 雇 用者 数10 全事業所 左 案 の適 用 除外 か ら,大 統 領 令 金用雨案と同じ 金用雨案と同 じ 左案と同 じ

用 人以上の事業場 適用除外:雇 用者が家族のみの の 指定 す る事 業場 を削 除。 参考:同 施行令の適

範 事業場,大 統領令の指定する事 用 除 外 は,常 時15入

囲 業場 以下事業場

① 正 当な理由 のない解 左案 と同じ 出 産前 後30日 ⇒ 産休 期 間や そ の 金用雨案から例外規定を削除 金用雨案から① 「 正 金用雨案と同 じ 左案と同 じ

解 雇,休 職,… そ の他 但 し出産前後の 後 の30日 に修 正 当 な 理 由 の な

雇 懲罰の禁止 解雇禁止期聞は 左案に例外条項新設:天 災等に い … 」 条 項 を削

等 の ②解雇禁止期間:業 務上 30日 間 に 短縮 よ り事 業i継続 が 困難 な 場合 。 但 除

制 の負傷による休職期間及 し社 会部 の認 定 を受 け る こ と。 解雇者の帰郷旅費支

限 び その 後30日 間,女 性 の 給条項を新設

出 産前 後40日 間

① 賃金 の30日 分 不明 ① 草案 の 修正:「 賃 金 」⇒ 「平 30日前の解雇予告義務を新設 30日 前 の解 雇 予 告義 金用雨案と同 じ 金用雨案の例外条項

②1年 を越 える勤続年数 均 賃 金」 ①解雇手当1解 雇予告ありでは 務を新設 に但 し書 きを追 加 二

1年 に対 して 賃 金の30日 ② 草案 に 累進 制 を追 加:10年 を 平 均 賃金 の2ヶ 月分,解 雇 予 告 解雇予告なしの場合 勤労者の帰責事由に

解 分ずつを加算 越える勤続 年数1年 に対 しては な しでは3ヶ 月 分。 に 限 って,賃 金 の30 よる解 雇 の場 合,労 雇 ③支給の例外:天 災等に 平 均 賃金 の60日 分ず つ を加 算 ② 退職 手 当:1年 を越 え る勤続 日分を支給 働委員会の認定を受

章 よ り事 業継 続 が 困難 で, ③ 草案 の 例外 に追加:2月 以 内 年 数1年 に対 して平 均 賃金 の60 その他の支給条項は けね ば な らない 。

の 行政当局の認定を受けた の期限付 き雇用契約,継 続勤務 日分ずつを加算 削除

支 場合,勤 労者の帰責事由 時 間 が 日給者 は3ヶ 月未満,月 ③ 上 記 ① ② は,(解 雇 者 だ け で 給 による場合 は支給せず 給 者 は6ヶ 月未 満 な ど な く)退 職者 に も適用 す る

④2月 以内の期限付 き雇用契約 な どの場 合 に も,上 記 ①(解 雇 手当)は 支給する

休 使用者の帰責事由による 左案の一部修正 草 案 の修 正:「 賃 金」 の60%⇒ 左案に追加:休 業時の勤労者が 金用雨案の一部修正 金用雨案と同 じ 左案と同じ 業手 休 業 の場合:賃 金 の60% :賃 金 の50%以 「平均 賃 金」 の60% 他職に就労するのを容認しなけ :賃 金 の50%以 上

当 上 れ ば な らな い

週48時 間,当 事 者合 意 で 週60時 問 を越 え 労働時間制限は草案と同 じ 労 働 時 間 延 長 の 要 件 に,「 労 働 金用雨案 と同じ 金用雨案を一部修正 左案と同じ

労働 60時 間 まで,行 政官 庁 の る延長が可能か 賃金割増率は左案を一部修正: 組合の承認」 を追加 :延 長,夜 間,休 日

時 許可でさらに延長可能 どうか は 不明 延長勤 労ではく通常賃 金〉の 労 働 時間 制 限 に1日10時 間限 度 勤労の賃金割増率は

間 延 長 ・夜 間作 業 30%以 上,夜 間 勤労 や 休 日勤 労 を追加 50%

び の賃金割増率は で は50%以 上 賃金割増率は延長 ・夜間勤労で 有給休 日勤 労 の場

20%以 上,休 50%以 上,休 日勤 労 で は150% 合,上 記 の賃 金 に有

勤務 は30%以 上 以上 給休 日分の賃金が加

賃 金 50%? 但 し割増賃金計算の基礎となる 算 され る

賃 金 額 には 一切 の 手当 を 除 く

固 轡 瞭 躇 騰 薙 S 薫 臨 伴 N 艶

(12)

① 週1回 以 上 の休 日 不明 草案 と同じ 49年 草 案の ② に,メ ーデ ー を追 金用雨案 と同じ 金用雨案と同じ 左案 と同じ

休 ② 定 休 日,法 定 公 休 日は 加

日 賃金算出上の勤労 日と認 める

月1日 の有 給休 暇 と月2 不明 ①草案に追加:自 由な積立 また ①草 案 に追 加:月1日 の 有給 休 ① 月次休暇条項なし 金用雨案 と同じ 左案 か ら月2日 の有

日の有給病暇 は分割使用が可能 暇取 得 に は1月 間の 精勤 を,有 ②年次休暇条項はっ 給病暇を削除

休 ②年次有給休暇の新設:1年 間 給病暇取得には医師の診断書 を ぎの 通 り:勤 続1年

皆勤 の 場合 は8日,9割 以 上 出 要件 として追加 以上で9割 以上出勤

勤 の場 合 は3日 。 ③ 有給 休 暇 の ②年次有給休暇の新設:勤 続1 の場 合,6日 。勤 続 年 間総 日数 が20日 を 越 え る分 に 年以上を対象に年6日 年数1年 増 加 に1日

暇 つ いて は,賃 金 を支 給 しそ れ を ③有給休暇 日に勤労 した場合, ずつ 増加 。 年 間総 日

与 えな い の も可 能。 平均 賃 金 の50%を 加給 数 の 義 務 は20日 ま

で 。

①月2日 の有給生理休暇 不明 草案 の 一 一部 修 正:有 給生 理休 暇 左案の一部修正:有 給生理休暇 ① 生 理休 憩(三 無 給 金用雨案の一部修正 左案 と同じ

女 ② 出 産前 後60日 の 有給 生 (月2日 ⇒3日) (月3日 ⇒2日) 休暇)を 与える ② :有 給 生 理休 暇(月

性 理休暇 産前後5週 間は就業 3日 ⇒1日)

③ 日2回,そ れぞ れ30分 さ せ な い(但 し 無

護 以上の有給授乳休憩時間 給)③ 授乳時間は

49年 草 案 と同 じ

不明 女子や少年の有 ① 労 働 の強 制,暴 行 等 は5年 以 ① 労 働 の強 制,暴 行等 は,1年 左案 と同じ 金用雨案に追加: 左案 の 修正:

害作業などは罰 下の懲役または罰金 以上10年 以 下 の懲 役 また は罰 金 勤労監督官が本法違 労働強制や暴行等は

罰 金 ②中間搾取,女 子や少年の有害 ② その 他 は,金 用 雨案 と同 じ 反の事実を故意に見 1年 以 下 の 懲 役 また

その他は不明 作業 などは1年 以下の懲役 また 逃 した場 合,3年 以 は罰金

則 は罰金 下の懲役 または5年 そ の他 違 反 には,体

③その他違反は6月 以下の懲役 以下の資格停止 罰を削除し罰金も緩

ま た は罰金 な ど 和 した 。

注:8新 聞 掲 載の 抄録 に基づ く。条 文 の 全容 は 不明 。"本 文注5)を 参 照。

出所:『 東 亜 日報 』(49,6,3),『 朝 鮮 日報』(50.2,26),『 ソウル 新 聞』(50.2.26),国 会議 案 の原 本 フ ァイ ル, 永(1955)に 基づ い て作 成。

『国 会史』(大 韓民 国 国 会事 務処 ,第1巻),『 国 会 議案 沿 革集 』,金 文

N 爵 欝

N

ω 姫

(13)

韓 国勤労 基準 法 の特 質 とその起 源 165 切 り下 げ られ て い る 。 そ れ に加 え,駐 韓 経 済 協 助 処(ECA)労 働 顧 問 報 告 が 参 考 と な る。 米 国 人 専 門 家 は そ こで,草 案 作 成 者 の洪 永 杓 とい う人 物 を高 く評 価 す る一 方,50年 政 府 案 に 対 して は 失 望 感 を 表 明 し て い る(Earl,p20)。 以 上 の証 拠 か ら,50年 政 府 案 の 労 働 基 準 は草 案 の と き よ り相 当 後 退 して い た と推 測 さ れ る 。

とは い え,50年 政 府 案 が 第3期 の52年 政 府 案 ほ ど草 案 か ら後 退 して い た か は 疑 問 で あ る。52年 政 府 案 は,一 言 で い う と,草 案 の韓 国 的 特 徴 とい わ れ た部 分 を す べ て 削 り落 と し,そ れ を 日本 労 働 基 準 法 の 相 場 に近 づ か せ た案 で あ る。 例 え ば,月 次 休 暇 を削 除 す る代 わ り年 次 休 暇(そ の 内容 は 日本 労 働 基 準 法 第39条

とほ ぼ 同 じで あ る)が 入 り,事 実 上 の 退 職 金 条 項 で あ る解 雇 者 へ の 支 給 を削 除 し,代 わ りに 日本 法 第20条 とほ ぼ 同 じ内容(解 雇 予 告 や 解 雇 手 当)が 挿 入 さ れ て あ る 。 解 雇 等 の 制 限 条 項 も解 雇 の 「 正 当 な 理 由」 部 分 が 削 除 され 日本 法 とほ ぼ お な じ内容 と な っ た 。50年 政 府 案 と52年 政 府 案 を 〈 表3>で 比 較 す れ ば,解 雇 等 の 制 限 で は 後 退,休 業 手 当 で は変 化 な し,時 問外 労 働 の賃 金 割 増 率 で は 前 進 が確 認 さ れ る。 僅 か3項 目の比 較 な の で 前 進 か 後 退 か の 断 定 は 難 しい。 しか し こ こで は解 雇 等 の 制 限 の よ うな 草 案 の 主 要 条 項 が,50年 政 府 案 に は ま だ生 き て い た とい う事 実 に注 意 を促 して お きた い 。

【 金 用 雨 案 】 既 に 述 べ た とお り,金 用 雨 案 は若 干 の 修 正 をへ て そ の ま ま最 終 確 定 案 に つ なが っ た 法 案 で あ る。 金 用 雨 案 と国会 社 保 委 修 正 案,最 終 確 定 案 の 関 係 は 〈 表3>で 明 白で あ ろ う。 従 っ て,勤 労 基 準 法 の 内容 が確 定 さ れ て く る プ ロ セ ス に お い て,こ の 案 の作 成 は重 要 な 節 目 とな る 。そ の 特 徴 は,草 案 の, 韓 国 的 とい わ れ た特 徴 を ほ ぼ すべ て 継 承 しつ つ 労 働 基 準 を さ らに 引 き上 げ た 所 に あ る。〈 表3>で わ か る よ う に,草 案 の特 徴 を継 承 した 部 分 は ほ ぼ 全 項 目に 渡 っ て い る。 労 働 基 準 を 引 き上 げ た 部 分 は,解 雇 者 へ の 支 給 にお い て 勤 続10年 以 上 に 対 す る支 給 比 率 の 引 き上 げ,生 理 休 暇 日数 の 増 加 な どが あ る 。 特 に,月 次 休 暇 を残 した ま ま年 次 休 暇 を追 加 し た こ とは 面 白 い。

【 林 基 奉 案 】 金 用 雨 案 と同 様,こ の 案 も草 案 の特 徴 を ほ ぼ 継 承 しつ つ 労 働

基 準 を引 き上 げ て い る 。 た だ,そ の労 働 基 準 は金 用 雨 案 に比 べ 全 般 的 に高 い 水

(14)

ヱ66 商 学 討 究 第52巻 第2・3号

準 に 設 定 さ れ て い る。 例 え ば,解 雇 者 へ の 支 給 で は支 給 率 が 勤 続10年 未 満 の場 合 も1年 に付 賃 金2ヶ 月分 と な り,時 間 外 労 働 の 賃 金 割 増 率 が,米 軍 政 期 の 「 最 高 労 働 時 間 」 法 令 水 準 に 引 き上 げ られ た。 ま た 金 用 雨 案 に は 「 勤 労 者 は本 法 に 基 づ きそ の 利 益 を主 張 す る 余 り国民 経 済 の秩 序 を危 う く して は な らな い 」 とい う条 項 が 入 っ て い た が,林 基 奉 案 に は そ れ が な い 。 両 者 の 問 に,国 家 エ リ ー ト と労 働 組 合 の 代 弁 者 と い うス タ ンス の 違 い を 感 じ させ る 条 項 で あ る。

次 に注 目す べ きは,林 基 奉 案 に は大 韓 労 総 の 主 要 組 織 基 盤 で あ る大 企 業 の, そ の 大 半 は 公 企 業 で あ る が,労 働 慣 行 を直 接 反 映 す る部 分 が 多 い こ とで あ る。

例 え ば,勤 続 手 当 や 精 勤 手 当 を定 め る 条 項 が あ る。 ま た休 業 時 に 自社 従 業 員 が 他 企 業 に 一 時 就 職 す る こ とを 禁 止 して は な らな い とい う条 項 も気 に な る 。 一 時 帰 休 を命 じ られ た労 働 者 が そ の 間他 企 業 に 出 か け る の は,造 船 産 業 で は よ く見 か け る光 景 で あ っ た 。7)ま た草 案 や 金 用 雨 案 で は 「 解 雇 者 へ の 支 給 」 と な っ て い る の を,退 職 者 に も支 給 され る と付 け 加 え,こ の 条 項 が 退 職 金 条 項 で あ る 旨 を明 確 に して い る。以 上 は 立 案 者 が 大 企 業 職 場 の 実 態 を 強 く意 識 して い た こ と, さ ら に職 場 レベ ル の 労 働 協 約 に ふ さ わ しい 項 目 を まで 法 に盛 り込 も う と し た こ と を物 語 る 。

最 後 に,林 基 奉 案 は そ の 「 起 草 趣 旨」 で,勤 労 基 準 法 の 目的 達 成 は,労 働 組 合 法 に よ っ て 労 働 運 動 が 指 導 ・育 成 さ れ て は じめ て 可 能 とな る だ ろ う と して い る 。 こ の行 は 二 通 り解 釈 で きる 。 一 つ は,大 韓 労 総 出 身 の議 員 ら し く,起 草 者 が 勤 労 基 準 法 以 上 に 当 時 国会 で 審 議 中 で あ っ た労 働 組 合 法 の 成 立 に強 い 関 心 を 持 っ て い た とい う解 釈 で あ る 。そ れ を裏 付 け る の が 同 案 の 第12条,28条 で あ る。

労 働 組 合 の 団 体 交 渉 権 保 護 を うた っ た これ ら の条 項 は,集 団 的 労 使 関 係 法 にふ さわ しい 内 容 で あ り,勤 労 基 準 法 の 条 項 と し て は や や ナ ンセ ンス と言 わ ね ば な ら な い。 起 草 者 の 法 学 的 素 養 に は 疑 問 を 感 じざ る を 得 な いが,一 方 で,労 働 組 合 の 法 的権 利 確 保 に 向 け た 強 い 関 心 を に じ ませ る 部 分 で も あ る 。 二 つ 目は,こ

7)筆 者 の 聞 き取 りに よ る 。1950,60年 代 に 韓 国 最 大 造 船 所 で あ っ た 大 韓 造 船 公 社 の

事 例 。

(15)

韓 国勤労 基準 法 の特 質 とその起 源 167 れ が もっ と大 事 だ と思 わ れ る が,米 軍 政 法 令 が現 実 で は十 分 守 ら れ て こ なか っ た とい う反 省 か ら,勤 労 基 準 法 の実 効 性 確 保 に つ い て そ れ な りに考 え て い た と い う解 釈 で あ る。 同 案 は,中 央 の 労 働 局 が 直 接 管 理 す る勤 労 基 準 監 督 署 を市 や 道 に設 置 す る と して い る 。 国 会 社 保 委 審 議 で は,行 政 機 構 の 新 設 は予 算 的 制 約 か ら現 実 的 で な い と し,市 や 道 に勤 労 基 準 監 督 官 をお く金 用 雨 案 が,若 干 の 修 正 付 で(表3を 見 よ)採 択 さ れ た(国 会 史p816,国 会 速 記 録15回20号p13)。

要 す る に林 基 奉 案 は,勤 労 基 準 法 の実 効 性 は,監 督 行 政 機 構 の 強 化 と労 働 組 合 運 動 の 強 化 に よ っ て 達 成 さ れ る と考 え て い た とい え る。 立 法 過 程 で前 者 が 手 薄 と な れ ば,同 法 の 実 効 性 は もっ ぱ ら後 者 の 出来 次 第 とい う こ と に な らざ る を得 ない 。 法 成 立 後,現 実 は ま さに そ の通 りの 運 び とな っ た。 林 基 奉 案 は,法 的 最 低 基 準 とい う勤 労 基 準 法 の本 来 の 意 義 に 無 頓 着 な傾 向 が あ っ た が,労 働 組 合 重 視 論 とい う意 外 な と こ ろ で,鋭 い 「 現 実 感 覚 」 を 発 揮 した とい え ば言 い 過 ぎ だ ろ うか 。

【 草 案 と3案 の 関 係 】 第3期 の3案,即 ち金 用 雨 案,林 基 奉 案,52年 政 府 案 は いず れ も第1期 の 草 案 又 は そ の 修 正 案 の50年 政 府 案 と,日 本 の労 働 基 準 法 の 二 つ を 主 に参 照 して い る 。 日本 法 参 照 説 を裏 付 け る に は,各 法 案 の 章 立 て を 日本 法 の そ れ と並 べ て み る だ け で 十 分 で あ ろ う。8)も っ と も草 案 そ の もの も 日 本 法 を大 い に 参 照 して い た が 。

本 稿 で重 要 な の は 草 案 と3案 の 関 係 で あ る。 先 行 研 究 に お い て は こ の 部 分 が 明 白で な い か らで あ る。こ れ まで 検 討 した 法 案 内容 か ら して,3案 の 作 成 時 に, 日本 法 だ け で な く草 案 又 は50年 政 府 案 が 参 照 さ れ た こ と は ほ ぼ 裏 付 け られ た と

8)こ こ で 少 々 詳 し い事 例 を挙 げ よ う。 林 基 奉 案 の 第38条 は 最 低 賃 金 を 決 め る 「賃 金

委 員 会 」 を規 定 し て い る が,そ の 条 文 は 日本 法 第29条 の 直 訳 に近 い 。 金 用 雨 案 の 第

29条,「 産 前 産 後 の 女 子 を本 法 の 規 定 に よ る休 業 期 間 と そ の 後 の30日 間 は 解 雇 し て

は な ら な い」 とい う くだ りは,日 本 労 働 基 準 法 第19条 の 一 部 行 の 直 訳 に近 い 。 た だ

し こ こ で 「 休 業 期 間」 とい う 表 現 は 「 休 暇 期 聞 」 に 直 す べ きで あ っ た 。 な ぜ な ら 日

本 法 で は 出 産 前 後 に 休 業 を与 え る よ う に な っ て い る が,金 用 雨 案 で は 有 給 休 暇 を与

え る か ら で あ る 。 こ の 表 記 上 の ミス こ そ 日本 法 書 き写 しの 動 か ぬ 証 拠 で あ る 。52年

政 府 案 の 日 本 法 と の 関 連 は 前 記 の 内 容 紹 介 で 既 に 明 白 で あ ろ う。

(16)

168 商 学 討 究 第52巻 第2・3号

思 うが,こ こで は も う少 し綿 密 な 証 拠 を 追 加 して み よ う。 草 案 の 解 雇 等 の 制 限 条 項 は,「 使 用 者 は勤 労 者 にa対 し正 当 な理 由 な しに解 雇,休 職,停 職,転 職, b減 給,そ の 他c懲 罰 をdし て は な らな い 」 と あ る 。 金 用 雨 案 の 当 該 条 項 は, bが 「 減 俸 」 に,dが 同 じ意 味 の 違 う表 現(例 え ば,し て は い け な い)に 変 わ っ た だ け で 草 案 と まっ た く同 じ文 章 で あ る 。 林 基 奉 案 も,aを,例 え ば 「 対 し て 」 く らい に,cを 「 加 罰 」 に,dを 先 の 金 用 雨 案 と同 じ表 現 に変 え た だ け で, 草 案 と同 じ文 章 で あ る。 こ の 条 文 は外 国 の 立 法 例 に は ない し,こ れ だ け そ っ く

りだ と,草 案 の 書 き写 し と見 る ほ か な い 。 また 草 案 とず れ て い る カ所 が 金 用 雨 案 と林 基 奉 案 そ れ ぞ れ 違 う の で,両 案 の 間 に条 文 の書 き写 しが あ った 可 能性 は 低 く,そ れ ぞ れ 草 案 か50年 政 府 案 か ら直 接 写 した とみ るの が 順 当 で あ ろ う。 立 案 者 の 両 議 員 が 第1期 の 労 働 局 草 案 を入 手 して い た とす れ ば,当 の 労 働 局 が そ

の 後 の 政 府 案 作 成 時 にそ れ を参 照 で きな い は ず は な い 。

4.立 法 主 体

第1期 の 社 会 部 労 働 局 が 立 法 準 備 に 着 手 した の は 特 に 突 出 した 行 為 で は な い 。 労 働 法 制 定 そ の もの は初 代 憲 法 に よっ て 明 示 され た 法 制 的 要 請 で あ っ た 。 また 米 軍 政 期 に は反 共 主 義 が圧 倒 的 威 勢 をふ る っ て い た が,建 国 早 々 国づ く り の 具 体 的在 り方 が 問 わ れ て くる と,民 族 主 義 が 息 を 吹 き返 し反 共 主 義 と対 立 す る 場 面 が 現 れ た 。9)こ う した 雰 囲気 変 化 は 大 韓 労 総 内 部 に も現 れ,反 共 政 治 団 体 か ら労 働 組 合 へ の 変 身 を掲 げ る革 新 派 が 台 頭 した 。 憲 法 制 定 に際 して労 農8

箇 条 の挿 入 要 求,そ の 後 の労 働 法 制 定 要 求 等 の 勢 い は そ う した エ ネ ル ギ ー に よ っ て 支 え ら れ た 。10)と は い え,大 韓 労 総 が み ず か ら労 働 法 案 を提 案 し労 働 局 や 国 会 に 働 きか け た痕 跡 は な い 。11)「労 働 者 の 利 益 を積 極 的 に代 弁 す べ く(労

9)韓 国政府 樹立 か ら朝鮮 戦 争勃発 前 まで の政 治状況 につい て は,徐 仲 錫 を参 照。 当 時,慶 尚南 道労 働課 に勤 め てい た深 醐墜氏 は,米 軍政 の古 い法令 の ままで は新 しい 国家 として顔が 立 たな い とい う雰 囲 気が 当時 はあ り,す べ ての 法令 を新 国家 の名 に お い て作 り直 そ う とした とい う。 そ の よ うな雰囲気 も素 朴 な民族 主 義的 雰囲 気 の反 映 とみて よか ろ う。

10)こ の時期 の大 韓労 総 内革 新派 につ いて は,金 三 沫(第4章)を 参照 。

(17)

韓 国勤労 基準 法 の特 質 とその起 源 ヱ69 働 局 を)労 働 部 に(昇 格 させ よ)」 と い う要 求 を労 働 法 制 定 要 求 と一 緒 に 出 し た の をみ る と,む しろ労 働 行 政 に法 制 定 の イ ニ シ ア テ ィブ を期 待 した節 が あ る

(韓 国 労 総p351,()内 は筆 者)。

か く して 労 働 局 に出 番 が 回 っ て きた の だ が,当 の 労 働 局 は 米 軍 政 期 に比 べ て ス タ ッ フ数 が 半 減 す る な どむ し ろ機構 縮 小 さ れ て い た。 当 時 の 労 働 局 の様 子 に つ い て 前 掲ECA労 働 顧 問 の 報 告 は,労 働 局 長(後 の 韓 夢 淵 とは 違 う人 物)を

は じめ 局 内 は有 力 者 の コ ネ付 きや 右 翼 政 治 団 体 上 が りで 占 め られ,米 軍 政 期 か ら勤 めていた労 政課長の洪永杓 を除けば,労 働行 政 に関す る素養や知識 の備 わ っ た 人物 は 見 当 た ら ない と して い る。 また 労 働 法 草 案 を作 成 した の も労 政 課 で あ る 。11)こ う し た状 況 か ら草 案 は,リ ベ ラ ル な 官 僚 が そ の 専 門 的 能 力 を テ コ にか な りの 自 由度 を以 て作 成 した と考 え られ る。 草 案 は しか し,国 務 会 議 を通 過 し政 府 案(50年 案)に な る 過 程 で労 働 基 準 が 引 き下 げ られ る 。 経 済,治 安 な ど他 部 処 の 反 対 が あ っ た か らで あ ろ う。 しか も政 争 に よ っ て 流 会 が 相 次 ぐ国 会 で 法 案 審 議 は 当面 進 み そ うに な か っ た 。13)

第2期 以降 の立 法 を促 した主動力 は大韓労総系勢 力か ら出て きた。特 に政権 上層部 や国会 内の保 守的意見 を黙 らせ た要因 として は,立 法に積 極的 であ った 大韓労総 非主流 派が,次 期 の続投 に向けて国会 と対 立 していた大統領李承 晩 の 親 衛 隊 と して 動 員 され て い た こ とが 決 定 的 で あ っ た 。 ま た駐 韓 国 連 民 間救 護 司 11)『 労 動 公 論 』(1972年5月 号p168)に お け る 宋 元 道 の 発 言 を み よ。 当 時,氏 は 大 韓 労 総 の 主 要 リー ダ ー の 一 人 で あ っ た 。 第2期 以 降 の,大 韓 労 総 出 身 議 員 を 中 心 と す る 法 制 定 へ の 動 きは,大 韓 労 総 と は 直 接 関 連 が な く,全 く国 会 議員 達 の イ ニ シ ア テ ィ ブ で 始 ま っ た こ とが,氏 の 発 言 か ら 読 み とれ る 。当 時 の 朝 鮮 電 業 労 組 委 員 長 で, 労 働 法 制 定 推 進 勢 力 で あ っ た 院 外 自 由 党 の 労 働 部 長 で あ っ た 崔 龍 沫 も筆 者 の イ ン タ

ビ ュ ー に 答 え,大 韓 労 総 の 組 織 的 関 与 説 を 否 定 し た 。

12)Earl,p20を 参 照 。 当 時 の 局 長 名 はEarl,p16を 参 照 。 当 時,慶 尚 南 道 労 働 課 に 勤 め て い た 深 醐 製 氏 は 筆 者 と の イ ン タ ビ ュ ー で,当 時 の 労 働 局 内 部 事 情 に つ い て,米 軍 政 期 の 人 た ち が 総 入 れ 替 わ り,ま た 多 少 の 行 政 経 験 が あ っ た と し て も,労 働 法 を 読 ん だ こ と も な い 人 が ほ と ん ど で あ っ た な か で,洪 永 杓 は飛 び 抜 け て い た と い う。

13)Earl,p20。Earlは こ の 段 階 の 政 府 案 に 対 し,労 働 者 保 護 水 準 は 現 状 よ り何 も改

善 さ れ な い と失 望 感 を露 わ に し て い る 。 但 し彼 の 不 満 は 主 に 団 体 交 渉 制 度 の 推 進 に

消 極 的 な 集 団 的 労 使 関 係 法 案 に 向 け られ て い た よ う に み え る 。 氏 は ま た 法 案 は 成 立

可 能 性 が な い の で,こ れ 以 上 の 議 論 は 無 駄 だ と締 め 括 っ て い る。

(18)

170 商 学 討 究 第52巻 第2・3号

令 部(UNCACK)の 勧 告 と い っ た 外 圧 も 追 い 風 と し て 働 い た(金 三 沫 p243‑248)。 とは い え,そ う した 追 い 風 に 乗 りつ つ 法 の 具 体 的 内 容 を決 め る 過 程 で主 導 権 を握 っ た の は,国 会 社 保 委 委 員 長 の金 用 雨 で あ っ た 。 ま た金 用 雨 を 後 ろ で 支 え,社 保 委 代 案 を起 草 した の は社 保 委 専 門 委 員 の李 恒 寧 と労 働 局 長 の 韓 夢 淵 で あ っ た(金 三 沫p243‑244)。 特 に労 働 局 が 政 府 全 体 の 立 場 と は 別 に 独 自 に立 法 に関 与 した こ と は注 目 され る。 勤 労 基 準 法 案(金 用 雨 案)の 提 案 時 期 は,社 保 委 代 案 作 成 が 事 実 上 完 了 して1ヶ 月 足 らず の 時 点 で あ る。 前 記3人 は 集 団 的労 使 関 係 法 関 連 の 作 業 を優 先 しつ つ も勤 労 基 準 法 案 の準 備 作 業 を 平 行 さ せ,前 者 が 一 段 落 した 段 階 で 金 用 雨 案 を提 案 した とみ て よ か ろ う。

とこ ろ で3人 は法 案 作 成 時 に 主 と して何 を参 照 した だ ろ うか 。 金 三 沫 は 李 恒 寧 や 韓 夢 淵 か らの 聞 き取 りに基 づ き,日 本 モ デ ル が 強 く意 識 され,日 本 の 立 法 資 料 が 主 に参 照 さ れ た と強 調 して い る 。 ま た そ の 背 景 に,前 掲UNCACKの 勧 告 が 主 にGHQ下 の 民 主 化 され た 日本 を モ デ ル と して い た こ と を指 摘 して い る (金三 沫p243‑248)。 李 恒 寧 は 近 年 の座 談 会 で も 「 労 使 代 表 か ら意 見 も聴 取 せ ず も っ ぱ ら 日本 法 だ け を参 照 して 作 っ た」と して い る(韓 国労 動 法 学 会,p179, 180)。

しか し少 な く と も勤 労 基 準 法 に限 っ て 言 え ば,こ う した整 理 で は も う一 つ の 重 要 な側 面 が 見 落 と され て しま う。 既 述 の よ う に,金 用 雨 案 は 日本 法 だ け で な く草 案 を参 照 して作 成 され た か らで あ る 。 も ち ろ ん 草 案 そ の もの も 日本 法 を大 い に参 照 して い る。 しか し草 案 段 階 で 韓 国 的 特 徴 の 主 要 部 分 が 出 来 上 が りそ れ が 金 用 案 に継 承 さ れ た とい う こ とが こ こ で は 重 要 で あ る。 草 案 との 連 続 性 に 着 目す れ ば,第1期 とそ れ 以 降 を つ な ぐ人 物 と して草 案 を作 成 した 労 政 課 長 の 洪 永 杓 が 浮 か び 上 が る 。 氏 は 第2期 以 降 も労 政 課 長 職 に 止 ま り新 任 局 長 の韓 夢 淵 の 活 躍 を支 えて い た 。 李 恒 寧 の 回 顧 談 を紹 介 し た前 掲 座 談 会 で は,そ れ とニ ュ ア ンス の や や 異 な る 次 の よ う な発 言 が 注 目 され る。

「 私 の 聞 い た と こ ろ で は ち ょっ と違 う。 … 名 前 は忘 れ ま した け ど ,保 社 部

労 政 局 長 を歴 任 した 方 が(朝 鮮)戦 争 前 に す で に草 案 を作 っ て お り,戦 争 中 に

そ れ に基 づ い て 制 定 した と,そ の 方 か ら聞 き ま したが 」(韓国 労 動 法 学 会,p181)

(19)

韓 国勤労 基準 法 の特 質 とその起 源 171 こ こで 「 保 社 部 」 は1955年 以 降 の 部 名 な の で そ れ 以前 な ら 「 社 会 部 」 が 正 し い。 また 「 労 政 局 長 」 とい う職 位 は ない の で 「 労 働 局 長 」 か,そ の 配 下 の 「 労 政 課 長 」 の誤 りで あ ろ う。 諸 般 の事 実 を総 合 す れ ば,前 記 証 言 の 「そ の 方 」 と

は労 政 課 長 の洪 永 杓 以 外 に あ りえ な い 。 氏 に と っ て社 保 委 代 案 や 勤 労 基 準 法 案 (金 用 雨 案)と は 草 案 の 延 長 に他 な ら なか っ た の で あ る 。 そ れ は また,社 保 委 代 案 作 成 に 関 わ っ た 前 記4人 の うち 金 用 雨 と洪 永 杓 の役 割 が 特 に大 きか っ た と

い う李 恒 寧 の 証 言 と も重 な り合 う(金 三 沫p327)。 や や 単 純 化 して い え ば,草 案 との 連 続 性 に は 洪 永 杓,労 働 基 準 引 き上 げ に は金 用 雨 の 役 割 が そ れ ぞ れ 大 き か っ た の で は な か ろ うか 。

草 案 の 影 響 は 金 用 雨 案 に限 らな い 。 既 に確 認 した よ うに,大 韓 労 総 系 議 員 の 林 基 奉 案 もま た 草 案 の特 徴 を ほ ぼ継 承 して い る。 大 韓 労 総 系 議 員 案 は そ の 作 成 経 緯 が 明 らか に され て い な い 。 とは い え,勤 労 基 準 法 に 限 っ て言 え ば,そ の仕 上 が り具 合 か ら して,専 門 家 を交 え た 組 織 だ っ た準 備 チ ー ム の 出 来 映 え と は 言 い 難 い。14)法 的 知 識 の 十 分 で な い 少 人 数 の 起 草 作 業 とな れ ば,日 本 法 よ り労 働 基 準 の 高 い 草 案 は叩 き台 と して都 合 が よか っ た はず で あ る。 そ の よ う に して 作 られ た共 通 性 を背 景 に,林 基 奉 案 は 国会 審 議 に お い て 政 府 案 を牽 制 し,金 用 雨 案 が ほ ぼ無 傷 で 通 過 す る よ う手 助 け した 面 が あ る。

14)同 案 に は 拙 劣 な 文 章 が 散 見 さ れ(特 に 立 法 趣 旨 の 部 分 を 見 よ),勤 労 基 準 法 に ふ

さ わ し く な い 団 体 交 渉 関 連 の 条 項 を 盛 り込 む な ど,法 案 と して の 未 熟 さが 目立 つ か

ら で あ る 。 また 例 え ば,賃 金 の 定 義 に も思 慮 に 欠 け る 部 分 が あ り,時 間 外 労 働 に 対

す る 賃 金 割 増 率 を 折 角 高 く設 定 した 効 果 を 相 殺 し て し ま っ て い る。 つ ま り割 増 賃 金

計 算 の 基 礎 と な る 賃 金 額 に つ い て,一 切 の 手 当 を除 い た 額 と 明 言 して い る(本 文 の

表3を 参 照)。1945年 以 降 の 激 しい イ ン フ レ に 対 応 して,物 価 手 当 な ど様 々 な 名 目

の 手 当 が 賃 金 に 占 め る ウ ェ ー トは 大 き か っ た 。 同 じ カ所 で 金 用 雨 案 は 「通 常 賃 金 」

と い う 新 造 語 を使 っ て い る 。 そ れ は,日 本 労 働 基 準 法 第37条 の 「通 常 の 労 働 時 間 又

は 労 働 日の 賃 金 計 算 額 」 と い う表 現 に 相 当 す る も の で あ り,後 の 施 行 令 に よ っ て 具

体 的 に 定 義 され,手 当 か 基 本 給 か と い う名 称 に 関 係 な く,定 期 的 に 支 給 さ れ る 金 額

は 原 則 と して カ ウ ン トさ れ る もの と な っ た 。 当 時 の 軍 政 法 令 「最 高 労 働 時 間 」 に お

い て は 「 正 規 賃 金(=regularrateofcompensation)」 が 計 算 基 準 額 と な っ て い た が,

そ れ も 諸 手 当 を 含 む概 念 で あ っ た(国 会 速 記 録15回20号p21)。

(20)

172 商 学 討 究 第52巻 第2・3号 5.国 会 審 議 と修 正 内 容

金 用 雨 案 を 叩 き台 に して 勤 労 基 準 法 が 制 定 され た こ とは す で に述 べ た が,こ こ で は国 会 社 保 委 や 本 会 議 の 審 議 過 程 で 修 正 され た カ所 をい くつ か確 認 して お こ う。 ま ず 金 用 雨 案 か ら労 働 基 準 が 引 き上 げ られ た 部 分 を み る と,「 労 働 者 は

… … 国 民 経 済 の秩 序 を危 う く して は な らな い」 と い う条 項 の 削 除 ,時 間 外 賃 金 割 増 率 の 引 き上 げ,解 雇 者 へ の 支 給 を免 除 され る要 件 を行 政 官 庁 の認 定 か ら労 働 委 員 会 の 認 定 に変 え た こ と な どが 挙 げ ら れ よ う(表3参 照)。 前2項 目 は林 基 奉 案 か ら採 択 され た もの で,後 の1項 目は本 会 議 で の修 正 で あ る。

こ こで 時 間外 賃 金 の割 増 率 につ い て は敷 街 して お く必 要 が あ る。 米 軍 政 期 か らの 「 最 高 労 働 時 間 」 法 令 は 米 国並 の50%割 増 率 を定 め て い た 。 但 し現 実 に は そ れ が あ ま り守 られ ず,前 掲UNCACKの 報 告 が,法 的基 準 が 韓 国経 済 の 水 準 か ら して 高 す ぎた と指 摘 す る ほ どで あ っ た(金 三 沫p246)。 そ の よ うな 背 景 を 考 え る と,米 軍 政 期 の 労 働 局 を経 験 して い る草 案 作 成 者 が 割 増 率 を控 えめ に 出 した の も納 得 が い く。 そ れ が社 保 委 審 議 で 再 び50%に 戻 さ れ た 。 社 保 委 議 事 録 は残 っ て い な い が,こ の 問題 は本 会 議 で も再 び 争 点 と な っ た の で 論 争 の 様 子 を 少 々窺 う こ と は で き る。 そ こで は,せ っ か く勤 労 基 準 法 を作 っ て 既 存 の 労 働 基 準 を 「 改 悪 」 す る こ と は容 認 しが た い との 論 調 が 支 配 的 で あ っ た 。 特 に 大 韓 労 総 系 議 員 か ら は,現 在 も時 間外 労 働 の う ち夜 問労 働 につ い て は6,7割 の 割 増 率 が 適 用 され て い る の で,割 増 率 を夜 間 労 働 に つ い て は最 低60%に 上 げ るべ き だ,と い う強 気 の 修 正 案 まで 出 さ れ た(国 会 速 記 録,第15回51号p6‑10)。 こ う した 強 気 の 背 後 に 駆 け引 きの た め の 誇 張 が な か っ た とは い え ない が,そ れ な

りの根 拠 は あ っ た と思 わ れ る 。例 え ば 京 城 電 気 労 働 組 合 の 労 働 協 約(47.8.15)

が 参 考 と な る。 同 労 組 は大 韓 労 総 の 主 要 組 織 の 一 つ で,同 協 約 は包 括 的 労 働 協

約 と し て は 韓 国最 初 とい わ れ て い る 。 そ こ に は,「 最 高 労 働 時 間」 法 令 の 条 文

を そ の ま ま写 した 条 項 が い くつ か あ り,時 間外 労 働 の 割 増 率 の そ の 一 つ で あ っ

た。 同 協 約 は,米 軍 政 の 支 援 を え た右 翼 の 大 韓 労 総 が,左 翼 の 全 評 勢 力 を排 除

しつ つ 職 場 代 表 権 を認 め られ た 直 後 に 締 結 した もの で あ る 。拘 引 な手 法 で 左 翼

をつ ぶ した 後,基 層 労 働 者 を引 きつ け る た め の政 策 と して 出 て き た とい っ て よ

(21)

韓 国勤労 基準 法 の特 質 とその起 源 173 い(電 力 労 組40年 史p170‑172,金 三 沫pll1‑128)。 また そ の 内容 にお い て は, 後 に 詳 述 す る が,軍 政 法 令 は も ち ろ ん 米 国 の 法 や 労 働 慣 行 か ら着 想 を えた 条 項 が か な りあ る。 大 韓 労 総 幹 部 と米 軍 政 当 局 の頻 繁 な接 触 を 考 えれ ば,別 に驚 く

こ と は な い だ ろ う。 重 要 な の は,「 最 高 労 働 時 間 」 法 令 が 多 くの零 細 企 業 で は 絵 に描 い た餅 に 過 ぎ な か っ た と して も,一 部 大 企 業 で は労 働 協 約 に盛 り込 ま れ 既 得 権 化 しつ つ あ っ た とい う こ とで あ る。 そ の よ う な実 態 を経 験 した大 韓 労 総 系 議 員 達 が,金 用 雨 案 の割 増 率 を 「改 悪 」 と受 け 止 め強 く反 発 し た の も理 解 で

き よ う。

次 に 金 用 雨 案 か ら労 働 基 準 が 引 き下 げ られ た 部 分 を見 る と,家 族 手 当 条 項 の 削 除,有 給 生 理 休 暇 日数 の 減 少(月3日 ⇒1日),月2日 の 有 給 病 暇 の 削 除, 未 成 年 者 の 就 業 時 間 規 制 の緩 和,処 罰 の 緩 和 な どが 挙 げ られ る。 本 会 議 議 事 録

を読 む と,金 用 雨 議 員 が 家 族 手 当 を 導 入 し よ う と し た の は 生 活 保 障 の観 点 か ら で あ っ た 。 そ れ に 対 す る反 論 はい ろ い ろ あ っ た が,特 に,就 職 難 が 深 刻 な時 代 で あ り,家 族 持 ち 労 働 者 の 賃 金 が 相 対 的 に高 くな れ ば,企 業 が そ の採 用 を渋 り 返 っ て そ の 労 働 者 に迷 惑 を か け る こ と に な る,と い っ た現 実 論 が 優 勢 で あ っ た (国会 速 記 録15回49号p1‑3)。 有 給 休 暇 日数 につ い て は,病 暇 や 生 理 休 暇 ま で 含 め る と1年 に100日 を こ え る(正 確 に は 約120日)の で 多 す ぎ る とい う反 論 が 資 産 家 出 身 の議 員 か ら出 され た 。 合 計 日数 の多 さ に は多 少 の 驚 き もあ っ た よ

う で,こ れ と い う 議 論 も な く削 除 案 は 承 認 さ れ た(国 会 速 記 録 第15回51号

p10‑11)。 最 後 に注 目す べ き は罰 則 規 定 が 大 幅 に緩 和 さ れ た こ とで あ る。 こ の

修 正 は 法 案 審 議 の ほ ぼ 最 終 段 階 で 資 産 家 出 身 議 員 の 提 案 で 行 わ れ た が,そ の眼

目 は体 罰 刑 を罰 金 刑 に変 え た所 に あ っ た 。 当初,法 の 施 行 を 監 督 す る勤 労 監 督

官 の 職 務 怠 慢 を警 戒 し厳 しい 罰 則 を用 意 した の とは 矛 盾 す る 動 きで あ る 。 韓 国

経 済 の現 実 か ら して,本 法 が 施 行 さ れ れ ば,企 業 家 はみ ん な 本 法 違 反 で逮 捕 さ

れ る だ ろ う と い う主 張 が な され た と き,誰 もそ れ を積 極 的 に否 定 しな か っ た(国

会 速 記 録 第15回54号p1‑2)。 法 と現 実 の ギ ャ ッ プ は 立 法 当事 者 の 問 で も相 当

意 識 され て い た の で あ る。

(22)

174 商 学 討 究 第52巻 第2・3号

皿 韓国的特質の起源

1.有 給 休 日 ・休 暇

有 給 休 日 ・休 暇 は植 民 地 期 の 雇 用 慣 行 に 既 に現 れ て い る。 例 えば,当 時 の 大 企 業 の一 つ で あ る南 朝 鮮 合 同 電 気(株)の 社 則(1937年)を み る と,月 給 制 の ホ ワ イ トカ ラー(=社 員 ・準 社 員)は,日 曜 日,毎 月2日,祝 祭 日,毎 年7日 の 慰 労 休 暇 が す べ て 有 給 の 休 み で あ っ た 。 そ れ に対 し朝 鮮 人 労 働 者 の 圧 倒 的 多 数 を 占 め る ブ ル ー カ ラ ー(=傭 員)に お い て は,日 曜 日が 休 日で は な く,祝 祭 日数 も社 員 ・準 社 員 よ り少 な い 。 但 し 日給 制 で あ りな が ら,休 日 ・休 暇 は 月 給 制 社 員 と同 じ く有 給 で あ っ た 。1931年 の 調 査 に よ れ ば,休 日数 は 毎 月4日 が 19%,2日 が47%で,無 休 の 企 業 も24%に 達 し て い た(宣 在 源p99)。 南 電 の 休 日数 は 月2日 を越 え て お り平 均 的 水 準 を や や 上 回 る 事 例 とい え る。 た だ,有 給 休 日が どれ だ け一 般 的 で あ っ た か は,今 の と こ ろ不 分 明 で あ る 。 日本 本 土 の 実 態 につ い て は,戦 時 中 は 企 業 の24%が 有 給 休 日制 を採 用 して い た とい う調 査 結 果 が あ る(寺 尾p234)。 植 民 地 朝 鮮 の 労 働 条 件 が 日本 本 土 の そ れ よ り低 か っ た とい う一 般 的 傾 向 に基 づ け ば,有 給 休 日の 普 及 度 も朝鮮 にお い て も っ と低 く な る と推 論 で き る。 但 しそ の 一 般 的 傾 向 と有 給 休 日の 普 及 度 が 一 致 し な い可 能 性 もあ る の で 断 定 は難 しい 。15)

1945年 の解 放 直 後 は,従 業 員 自主 管 理 運 動 の 族 生 に 見 られ る よ う に,各 地 の 職 場 で 旧 秩 序 が 崩 壊 し基 層 労 働 者 の 発 言 力 が増 大 した 。 そ れ に よっ て 雇 用 ・労 働 慣 行 に も少 な か らず 変 化 が あ っ た と見 られ る。 当 時 の 労 働 運 動 を リー ドした 全 評(朝 鮮 労 働 組 合 全 国 評 議 会)は,そ の結 成 大 会(45.11.5)で 一 般 行 動 綱

15)日 本 本 土 の 戦 時 中 の 実 態 を 企 業 規 模 別 に み る と,休 日 数 は 雇 用 規 模500人 以 上 の

大 企 業 で 多 い が,有 給 休 日制 の 普 及 率 は 同大 企 業 で11%,10人 未 満 企 業 で32%と む

し ろ 中 小 企 業 ほ ど高 い 。 戦 後 は 同 大 企 業 で97%,10人 未 満 企 業 で35%と 逆 転 が み ら

れ る(寺 尾p234)。 戦 後 活 性 化 さ れ た 労 働 組 合 の 活 動 舞 台 が 主 に500人 以 上 企 業 で

あ っ た こ とが,恐 ら く逆 転 の 原 因 で あ ろ う。以 上 の こ とか ら,戦 前 の 有 給 休 日制 は,

労 働 条 件 の 相 対 的 に 良 好 な 大 企 業 よ りは,古 い 社 会 関 係 を 残 す 中 小 企 業 と 親 和 的 で

あ っ た 可 能 性 が あ る。

参照

関連したドキュメント

て﹁性質に基づく区別﹂と﹁用法に基づく区別﹂を分類し︑そ

この基準は、法43条第2項第1号の規定による敷地等と道路との関係の特例認定に関し適正な法の

10 特定の化学物質の含有率基準値は、JIS C 0950(電気・電子機器の特定の化学物質の含有表

■鉛等の含有率基準値について は、JIS C 0950(電気・電子機器 の特定の化学物質の含有表示方

その 2-1(方法A) 原則の方法 A

この標準設計基準に定めのない場合は,技術基準その他の関係法令等に

非原産材料 加工等 産品 非原産材料に特定の加工工程がほど こされれば、実質的変更があったとす る基準. ⇒我が国の多くの