石油は21世紀に枯渇しない ―埋蔵量・可採年数・
総資源量をめぐる神話と現実―
著者 頼 俊輔
雑誌名 明治学院大学国際学部付属研究所研究所年報 =
Annual report of the Institute for International Studies
巻 18
ページ 61‑62
発行年 2015‑12‑01
その他のタイトル The Myth and Reality of Oil
URL http://hdl.handle.net/10723/2588
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【研究会シリーズ1】
石油は 21 世紀に枯渇しない
―埋蔵量・可採年数・総資源量をめぐる神話と現実―
賴 俊 輔
1.研究会の背景
国際学部付属研究所の研究プロジェクト「アジア・アフリカの資源問題の政治経済学的研究」
の一環として、千葉大学の妹尾裕彦氏を招き、世界の石油事情について議論を行った(参加者は、
賴、勝俣のほか、明治大学から福田氏、千葉商大から吉田氏、千葉大学から佐々木氏)。アフリ カや南米では、豊富な天然資源を産出する国があり、代表的な品目としては石油があげられる。
途上国の資源開発の分析というと、主眼は、資源の採掘地域においてどのように開発が進められ ているか、強制的な住民移転を伴っているか、環境への配慮が不足しているかどうか、といった 点や、資源依存の経済構造が一国経済全体に与える影響、たとえば、資源輸出の拡大による自国 通貨高が自国の輸出製造業に悪影響を及ぼす「オランダ病」が起きているかどうかなどの点に置 かれる。今回の研究会では、資源開発と一国・一地域の経済・社会状況の関係を議論するのでは なく、資源部門そのものの動向を把握することに努めた。なぜなら、産業が高度化する現代の資 本主義社会においては、従来の産業についての知識が時代遅れとなり、前提としていた考えを改 めなければ、現実に起きていることを正しく理解できなくなる可能性があると考えるからである。
途上国の資源開発についても、当該する資源部門の産業内部の状況を深めることで、資源開発と 経済・社会との関係をよりよく理解できると思われる。
2.報告内容
妹尾報告の内容は、タイトルにもあるように、一般に流布している「石油枯渇論」は必ずしも 根拠がなく、石油採掘の技術革新によって、今後も石油の利用は継続するという結論であった。
「石油はあと〇年で枯渇する」とされるとき、それは石油の可採年数のことを指している。1960 年の段階で石油の可採年数は約 40 年であり、これによれば、もうすでに現在においては石油の 生産は停止していることになるが、そうはなっていない。可採年数とは、評価時点での確認埋蔵 量を年間の石油生産量で除して算出される(可採年数=確認埋蔵量/石油生産量)。石油の埋蔵 量には3種類存在しており、それらは、試掘や地震探査などで得られたデータから、地質学的・
油層工学的に推計された内容の確からしさによって、「確認埋蔵量」(推計の確からしさが 90%
以上の場合)、「推定埋蔵量」(推計の確からしさが 50%以上の場合)、「予想埋蔵量」(推計の確 からしさが 10%以上の場合)に分類される。可採年数を示す場合に使われる埋蔵量は「確認埋 蔵量」であるため、「推定埋蔵量」と「予想埋蔵量」は考慮されていない。
「確認埋蔵量」の石油は、常に採掘され消費されており、埋蔵量は減少していく。しかし、他
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方では、試掘によるデータが充実したり、実際に石油生産が進むことで、推定埋蔵量や予想埋蔵 量から、確認埋蔵量にカテゴリー変更されることがあるし、商業性に劣る「条件付資源量」から、
商業性のある「埋蔵量」に変更され、確認埋蔵量に数えられることもある。実際に、1960 年段 階から2005年までの間に、「確認埋蔵量」は3020億バレルから1兆2777億バレルへと4倍に増 加している。
さらに考慮すべき事として、在来型石油と非在来型石油の違いも指摘しておかなければならな い。在来型石油とは、現在の一般的な採掘技術で商業生産される石油のことで、自噴またはポン プで生産可能なものを指し、非在来型石油とは、油層内において半固体状で、流動性に乏しいた め、在来型とは異なる採掘技術が必要な石油のことで、具体的には、重質油・超重質油・オイル シェールなどが該当する。在来型石油の総資源量は8兆6,156億バレルと見積もられており、内 訳は、累計生産量:1兆1,689億バレル、確認埋蔵量:1兆2,018 億バレル、埋蔵量成長:4,095 億バレル、未発見資源量:5,215億バレル、回収不能量:5兆3,139億バレルである。他方で、非 在来型石油の総資源量は13兆6,871億バレルで、内訳は、重質油:3兆3,960億バレル、超重質 油・ビチューメン:5兆5,050億バレル、オイルシェール:4兆7,861億バレルとなっている。在 来型石油と非在来型石油の資源量を合わせると22 兆3,027 億バレルとなるが、現在の年間石油 生産量が293億バレルであることから、地球上には膨大な量の石油が存在していることになる。
こうした事実の積み上げから、化石燃料は枯渇することなく、生産・消費が継続すると見込まれ る。
3.議論
石油の生産と消費が今後も継続する可能性が高いとの結論に対して、採掘技術が順調に開発さ れていくかどうか、政情不安や様々な要因によって、石油生産自体が進まなくなる可能性がある のではないか、化石燃料使用に伴う温室効果ガスの問題をどう考えるかといった議論がなされた。
石油の埋蔵量が今後も増加する見込みであるということと、人類がそれを利用し続けるかどうか は必ずしも同義ではないかもしれない。化石燃料以外のエネルギー源も研究開発が進むであろう し、コストの面で石油よりも優位になり、その他のエネルギーの方が消費が増えるかもしれない。
研究プロジェクトとの関わりで言うと、石油採掘には巨額の投資が必要となり、企業としては、
その費用を安定的な生産・消費で回収していくことになるが、その際、いかにして石油消費を作 り出していくのか、宣伝・広告への依存効果や石油業界への政府の支援の観点から石油部門を考 えることが重要であると感じた。