産樽期 の乳頭損傷 に対 す る ビアバ ーユ の有効性 について
原 恵子1・中尾 優子2・山本 直子3・大石 和代2
要 旨 産後 に生 じた乳頭損傷 に対 し, ビアバーユが有効であるか を検討 した.乳頭損傷 を起 こした裾婦 56名の乳頭の観察 を行い,乳頭損傷内容が一致 した33名の母親の片側 の乳頭 に母乳 を,村側 の乳頭 にバ ーユ を塗布 した.その結果,12名の棒婦が研究期 間内 に両側 ともバーユ を選択 し,両側 に母乳 を選択 した ものは 認め られなかった.また,バーユ塗布 開始群 は母乳塗布 開始群 に比較 し5日目, 6日目に両側 に痔痛の 自覚 状況が有意 に改善 していた. しか し,痔痛の性状 については両群間に有意の差 はなかった. ビアバ ーユ は乳 頭損傷の痔痛の 自覚状況 に対 して有効であることが示唆 された.
保健学研究 19(2):59‑63,2007
KeyWords 乳頭損傷 ,乳頭亀裂,バーユ
ニ二二 ∴
Ⅰ.緒 昌
出産後,早期の頻 回授乳 により,乳頭の損傷 (発赤や 亀裂 な ど) を発 生 して苦痛 を訴 える母親 は多 い. この 乳頭損傷 を予防す るために,妊娠 中か ら乳頭 マ ッサージ な ど各施設で様 々な取 り組みが行 われている14). これに も関わ らず生 じた乳頭損傷 は,痛み により直接晴乳が困 難 になることや乳腺炎の原 因になることが指摘 されてい る56).今 回,カネソン本舗 より産裾期 の乳頭損傷 にビア バ ーユが有用 との情報7)を得 たので,その有効性 を検証 す ることとした.
ビアバーユ は馬の脂100%を原料 とし,α‑ リノレイ ン酸の含有率が高 く,皮膚 を薄い膜で保護すると同時 に, 皮膚へ の浸透力が強いため炎症 を抑 える効果がある とさ れている8).
Ⅱ.研究 目的
産裾期 の乳頭損傷 に対す るビアバーユ (以下,バーユ と略)の有効性 を明 らかにする,
Ⅲ.研究方法
1.研究対象お よび期 間
長崎市内のM医院で分娩 した227名の碍婦 の うち,乳 頭損傷 を認 めた110名 (48.5%) に対 して研究 内容 を説 明 した.その うち研究‑の協力 を得 られた56名の乳環 を 観察 し,両側 の乳頭が同程度の損傷 で, しか も痔痛の 自 覚状況や性状が同程度であった33名 を対象 とした.
2.研究期 間
平成13年9月1日か ら平成14年3月31日.
3.研究方法
協力 を得 られた棒婦 の‑側 の乳頭 に母乳,対側 の乳頭 にバーユ を塗布す る介入研究 を実施 した.なお,バーユ はカネソン本舗のカネソンビアバーユ⑳を用いた.
1)研究 に際 しての母親への説明
(∋乳房の片側 にバーユ,村側 に母乳 をそれぞれ乳頭乳 輪部 まで薄 く塗布す る.
②毎 回の授乳直後 に塗布 し,授乳前 には拭 きとらない (原料の油の馬は無農薬の牧草のみで飼育 され,バー ユ に添加物 は一切 していないため児がロに して も害 はない との安全性がすで に確認 されている).
(勤退院 日まで片側にバーユを村側 に母乳を塗布する.た だし,調査途 中でバーユから母乳へ変更,あるいは母 乳からバーユへ変更,または塗布 を中止 しても構わず, その都度選択できる (以下,塗布行動変化 と表現).
2)研究者間の確認事項
(∋乳頭損傷 は授乳姿勢や乳頭の含 ませ方 にも関係す る ので,適切 な授乳姿勢や乳頭の含 ませ方の指導介助 を適時行 う.
② バーユ,母乳両方の効果 を調査 していることを母親 に説明す る際は, どちらか一方 に効果があるような
】、、J先入観 を与 えない.
3)観察お よび聞 き取 り内容の数値化
乳頭損傷 を認めた 日か ら退院 日 (6日目) まで1日1 回,両側乳房 の乳頭 を観察 し,乳頭損傷 を番号化 して記 録 した (表 1).実際の塗布 内容お よび痔痛の状況や性
1 元松本産婦人科医院
2 長崎大学大学院医歯薬学総合研究科保健学専攻 3 長崎市医師会看護専 門学校
保健学研究
表1.乳頭損傷
1 2 3 4 5 6 7 8
発赤 水癌 血痕 痴庇 廉欄 亀裂 出血 潰蕩
表2.痔痛 の 自覚状況
0
1 2 3 4痛み な し 含 ませ る時のみ痛 含 ませてい る間中 含 ませ てい ない時 含 ませ られない程 み を感 じる 痛み を感 じる も痛み を感 じる に痛 い
表3.痔痛 の性状
0
1 2 3ひ りひ り き りき り ず きんず きん
(軽 い) (中程度) (非常 に痛い)
状 については,午前 中の乳房 ケア時 に,母親か ら聞 き取 りを行 い,点数化 した (表 2,3). また,その時の母親 の言動 を記録 した.
4.分析方法
裾婦 の塗布行動変化 はx2独立性 の検 定 ,痔痛 の 自覚 状況 と性状 はマ ン ・ホイ ッ トニー検定 を行 った.
Ⅳ.結 果 1.対象者 の属性
棒婦33名 の内訳 は初産婦15名 ,経産婦18名で,平均年 齢 は28.6±4.7歳であった.
2.発見時の乳頭損傷所見
乳頭損傷発見時の所見 を図 1に示す.発赤17名 (51.5
%)が最 も多 く,次 いで痴庇10名 (30.3%),亀 裂7名 (21.2%),水癌 ・廉欄 1名 (3%)の順 であった.
8ハ04208642011111
発 赤 水癌 痴疲 廃 欄 亀裂
(所見重複例を含む) 図1.乳頭損傷発見時の所見
3.塗布行動変化
片側 母乳 塗布 , 村側 バ ーユ 塗布 か ら両側 と もにバ ー ユ塗布 に変更 した裾婦が全体 の36%にみ られ,両側 とも に母乳 塗布 に変更 した裾 婦 は認 め られ なか った (p‑ 0.03)(図2).母乳か らバ ーユ塗布 に変 えた裾婦 の内訳 は,3日目3名 (25%),4日目5名 (41.7%),5日冒
3名 (25%),6日目1名 (8.3%)であ った.実際,母 乳塗布 はバ ーユ塗布 に比べ乳頭損傷部の乾燥が強 く敬裂 を きた し, そ こにブ ラジ ャーやパ ジ ャマ な どの衣類 が 接着 して外 部 か らの刺 激 を受 け易 い状 態 で あ った. 袴 婦 は, 「パ リパ リす る」, 「パ ジャマ に触 れただけで も痛 い」 な どと訴 えた.一方 ,バ ーユ塗布 では,「パ ジ ャマ に くっつか ない」,「つ け始めて楽 になった」,「ひ ど くな らなか った」,「治 りがいい」 な どといった コメ ン トが多 か った. また,「薬 と違 い授 乳 の度 に拭 き取 らな くて便 利 である」,「児が吸い易 そ うに している」,「マ ッサ ージ し易 い」,「伸 びが出て来 た」,「退 院後 も使 い続 ける」 と いったバーユ塗布 を積極 的に肯定す るコメ ン トも認 め ら れた.
4.痔痛 の 自覚状況 と性状 の経時的変化
母乳塗布 開始群 (以下 ,母乳群),バ ーユ塗布 開始群 (以下,バ ーユ群) の痔痛 の 自覚状 況 と性状 の経時 的変 化 を図3,4に示 した.痔痛 の 自覚状況 は,母乳群 で は 発見時か ら退 院 日まで高 い点数 を維持 していたが,バ ー ユ群 は3日目をピークに減少 し,5日目と6日目は母乳 群 に比較 し,いずれ も有意 に点数が下が った (P<0.05). 痔痛 の性状 につい て はバ ーユ群 ,母乳群 ともに2日目
をピー クに下降 し,両群 間に差 は認 め られ なか った.
05050505050544332211 名
母乳 パーユ
図 2.裾婦 の塗布行動変化 *p‑0.03
864218642011110000 535251503.2.10.
2日目 3日目 4日目 5日目 6日目
*P<0.05 図 3.痔痛の 自覚状況 の変化
田バーユ群
■母乳群
2日目 3日目 4日目 5日目 6日 目 図 4.痔痛 の性状 の変化
V.考 察
乳頭損傷発見時の所見で最 も多かったのは発赤であ り, 次 いで痴庇,亀裂 ,水癌 ,廉欄 の順 であった.児 の吸畷 開始 とともに,表皮 の一部が剥脱 して赤肌が生 じ, さら にその後 の頻 回授乳 で水癌 や亀裂 を形成 す る9).今 回の 観察で も同様 の所見が経時的 に認め られ,産裾初 日か ら 乳頭 ケアの方策 を練 るこ とは重要 とい える.
痔痛 の 自覚状況 はバーユ群,母乳群 ともに3日目で高 い点数 を示 し,同時期 に母乳か らバ ーユ に変更す る母親 が増加 していた.樽婦 も,母乳塗布 で は下着 に接着す る ことや 「ば りば りす る」といった違和感 を訴 えている.
一方,バ ーユ群でバ ーユ塗布 を肯定す るコメ ン トが大半 を占めていた.す なわち,バ ーユの油性成分が皮膚の表 面や損傷部位 の乾燥 を防 ぎ,保湿す ることで乳頭 を保護 し,衣類 の摩擦 や外部 か らの刺激 を和 らげてい る もの と 考 え られた. さらに,母乳群 では途 中か らバ ーユ塗布 に 行動変化 をきた した裾婦が12名 (36%)み られたが,痔 痛の 自覚状況 に改善 は認 め られなか った.母乳群 に比較 し,バ ーユ群 では5日目と6日目に痔痛 自覚状況 の有意 な改善が認 め られた.両群 間で4日目か ら差が認 め られ ることか ら,乳頭損傷 の発生早期 あるいは発生す る前 の 段 階で予防的 にバ ーユ を塗布す るな ど,バ ーユの塗布 開
始時期 を早める方が よ り有用 と思 われ,今後 さらに検討 する必要性があろう,今 回の検討 では両群 間に痔痛の性 状 については有意の差 を認め得 なかったが,観察2日目 以降母乳 とバーユでは母乳の方が高い値 を示 し,その傾 向は退院 日まで継続 していた.
松原1011)は乳頭皮膚 の トラブルに対 して,医師は抗生 物質やステロイ ド剤入 りの軟膏 を処方することが多いが, 母親 はケ ミカルな薬剤 の児 に及ぼす影響 を憂慮 し,塗布
したが らないことが多いと指摘 している.今回用いたバー ユな どの無害の保護剤 は母親が安心 して選択す る もの と 推測 され, しか も痔痛 の改善 に も有用 な製剤であること が示唆 された.
Ⅵ
. ま と め産樽早期 は乳房 の緊滴や乳汁 うっ滞が顕著 な時期であ り, しか も乳頭損傷の痛みを伴 えば,碍婦 にはかな りの 精神 的,肉体 的苦痛が強い られる.母乳育児 を継続 させ るケアの 1方策 として,バーユ塗布 は有用 と思 われる.
謝 辞
本研究 を行 うに当た り,ご協力いただ きましたM医院 のス タッフの皆様方並 びにお母様方 に厚 く御礼 申 し上 げ ます.
文 献
1)武石みち代 ,熊谷孝子,熊谷淳二 :トラブル をお こ さないための乳房 ケア 産科診療所 における母乳育
保健学研究
児支援体制 について.ペ リネイタルケア,21:8‑13, 2002
2)山西みな子 :トラブル をお こさないための乳房 ケア 妊娠 中か らの母乳育児‑ の準備 とケア.ペ リネイタ
ルケア,21:14‑19,2002
3)小林 緑,岡崎範子,小 井かお り,佐 々木直美 :産 裾期か らの乳頭損傷予防 に対す る妊娠後期 か らの乳 房ケアの有効性 外来での実技指導 を取 り入れて, 広 島県立病院医誌,29:159‑167,1997
4)林 栄子 :妊娠 中の乳房管 理 .周 産期 医学,26:
504‑508,1996
5)市塚清健,岡井 崇 :産裾期 の乳房 マイナー トラブ ル とその対策 産婦人科治療,82:24‑28,2001 6)竹下茂樹 :乳房観察 と必要な検査 .ペ リネイタルケ
ア,24:10‑15,2005
7)須貝哲朗 :カネソン "ビアバ ーゴ 'の皮膚安全性お よび保湿能 に関す る報告書
8)帯津 良一 :自然馬油 .ア トピー を治す大辞典,268‑
269,1992
9)鮎揮幸枝 :乳頭 トラブルの対応 .助産婦雑誌,50:
31‑15,1996
10)松原 まなみ :トラブルをお こさないための乳房 ケア それで も乳房 トラブルがお こって しまった ら.ペ リ ネイタルケア,21:32‑39,2002
ll)松原 まなみ :母乳が飲 ませ に くい とき一母乳育児 を 困難 にす る要 因 とその対応 ‑.母子保健情報,47:
82‑87,2003
Thee f f e c t i v e ne s so fPi aBa r yuo nnl ppl eda magedur i ngpos t pa r t um
KeikoHARAl,YukoNAKAO 2,NaokoYAMAMOTO3,KazuyoOISHI2
1 FormerlyofMatsumotoObstetricsandGynecologyClinic
2 DepartmentofNursing,GraduateSchoolofBiomedicalSciences,NagasakiUniversity 3 NagasakiCityMedicalNursingSchool
Received23January2007 Accepted22March2007
Abstract lnthisreportweexaminedtheeffectivenessofthetopicalointmentPi乱Baryuonnipple damage.Mother'smilkwasappliedtooneof33puerperantwomen'sdamagednipples,whilePi且Baryu wasappliedtotheother.Bothnippleswerecarefullyobservedduringthetrial.Duringthetrial12 womenrequestedapplicationofPiaBaryutobothnipples,though nomotherTschosetoapplymotherrs milktoboth.
PiaBaryushortenedsharpnlpplepalmSlgnificantly,whilemother‑smilknoimpact,Wetherefore suggestedPi乱Baryuasaneffectivewaytoreducepainindamagednipples.
HealthScienceResearch19(2):59‑63,2007
KeyWords nlppledamage,nlpplecrack,Baryu