解析 II ・講義ノート
第9回
(2020年12月 8日(火)配信分)
§9.
陰関数の微分と条件付き極値問題
この講義では、関数の定義域としてまず、実数直線
Rまたは区
間から、平面
R2またはその部分領域に
(さらにより高次元の空間
Rn
に
)扱う範囲を広げ、極値問題まで考えて来ました。
しかし、例えば最初に例として挙げたように、地球の表面にお ける温度の分布などは、定義域は実は平面ではなく球面です。
より一般に、極値問題を考えるには、例えば平面内の曲線上に
限定して、また空間内の曲線や曲面上に限定して、その中での極
値を探す場合も視野に入れておくべきでしょう。このような問題
を、より広い範囲で定義された関数の、ある制約条件の下での極
値問題と捉えて、条件付き極値問題と呼びます。
例えば、
2変数関数
f(x, y)の原点中心の単位円周上での極値を 求める問題は、条件
x2 + y2 = 1の下での極値問題、
3変数関数
f(x, y, z)
の原点中心の単位球面上での極値を求める問題は、条件
x2 + y2 + z2 = 1
の下での極値問題と考えられます。
これらの問題はもちろん、たとえば単位円周をいくつかの部分 に分け、
y = ±√
1 − x2, x = ±√1 − y2
と表して、
1変数関数
f(x, ±√1 − x2), f(±√1 − y2, y)
の極値問題として解き、得られた結果を合わせて判定すると言う
考え方もありますが、与えられた条件によっては、円周のように
部分的にでも
yを
xの、または
xを
yの関数として具体的に表
すのが困難な場合の方が一般的です。
そこで、このような具体的には書けない隠れた関数
(陰関数と言
います
)の微分に留意して、いつでも適用できる他の方法を考え る必要があります。それがラグランジュの未定乗数法と呼ばれる ものです。
まず陰関数の微分から始めましょう。平面
R2上の曲線
Cが、
ある
C1級の
2変数関数
g(x, y)によって
g(x, y) = 0と表されて
いるとしましょう。例えば原点中心の単位円周なら
g(x, y) = x2 + y2 − 1
ととればよいわけです。
さて、この曲線
Cが、全体でなくてよいので、部分的にでも
y = φ(x)
と表されたとすると、
g(x, φ(x)) = 0が
φ(x)の定義域
にある全ての
xについて成り立ちます。このような
φ(x) (陰関
数
)が、どのようなときに存在して、どの程度微分可能かと言うこ
とは、陰関数定理が保障してくれるのですが、とりあえずその話
は後回しにして、微分可能であることは認めましょう。
すると、
g(x, φ(x)) = 0の両辺が、合成関数の微分の公式を用 いて微分できて、
gx(x, φ(x)) + gy(x, φ(x))φ′(x) = 0
(左辺第1項は、gx(x, y) に y = φ(x) を代入したと言う意味で、x は φ(x) に は係りません。)
が成り立つので、陰関数
φ(x)の微分を与える公式として、
φ′(x) = −gx(x, φ(x)) gy(x, φ(x))
を得ます。つまり、陰関数そのものは具体的に表せていなくても、
その微分はわかると言うことです。ここで分母の
gyが
0の点で
はこの公式は使えませんが、逆に、陰関数定理において陰関数の
存在を保証する条件が、実は
gy(x, y) ̸= 0と言うことなのです。
同様に曲線
Cが、
x = ψ(y)と表されるところでは、
g(ψ(y), y) = 0
が
ψ(y) (陰関数
)の定義域にある全ての
yについて
成り立ち、両辺を微分すると、
gx(ψ(y), y)ψ′(y) + gy(ψ(y), y) = 0
(左辺第2項は、gy(x, y) に x = ψ(y) を代入したと言う意味で、y は ψ(y) に は係りません。)
が成り立つので、
ψ′(y) = −gy(ψ(y), y) gx(ψ(y), y)
を得ます。この場合には、
gx(x, y) ̸= 0と言う条件が、陰関数の存
在を保証しています。
その主張を、ここできちんと書いておくと、
Ck級の
2変数関
数
g(x, y)において、
g(x, y) = 0を満たす点
(x, y)に対し、
(1) gy(x, y) ̸= 0
ならば、その点の近くでは
g(x, φ(x)) = 0を満た
す
Ck級関数
y = φ(x)が唯一つ存在する。
(2) gx(x, y) ̸= 0
ならば、その点の近くでは
g(ψ(y), y) = 0を満た
す
Ck級関数
x = ψ(y)が唯一つ存在する。
つまり
Ck級の
1変数関数のグラフとして表すことができると言 うものです。
例えば、最初に挙げた例で言うと、
C∞級の
2変数関数
g(x, y) = x2 + y2 − 1
に対し、
g(x, y) = 0は原点中心の単位円周
ですが、
gy(x, y) = 2y ̸= 0の所では
y = ±√1 − x2, gx(x, y) = 2x ̸= 0
の所では
x = ±√1 − y2
と
C∞級の
1変数関数
のグラフとして表せ、条件を満たす点においては、その点を通る
と言う条件の下に、複号は唯一つに定まると言うわけです。
陰関数定理の証明には、逆写像定理同様、精密な議論が必要な ので、やはり二年次専門科目の解析学
I,IIに委ねます。
ただし、陰関数定理が証明できれば、逆写像定理をそこから導くのは簡単で す。例えば R4 (の領域)から R2 への写像G(x, y) (x, y ∈ R2) については、
G(x, y) = 0 を満たす点 (x, y) ∈ R4 に対し、ヤコビ行列 J G(x, y) の内、
x = (x1, x2) に関する偏微分が作る2 次の小行列式が 0 でなければ、その点の 近くではG(ψ(y), y) = 0 を満たす写像x = ψ(y) が唯一つ存在すると言うの が、陰関数定理の主張(の一つ)です。
ここで R2 (の領域)から R2 への写像y = f(x) のx = x0 におけるヤコビ 行列式detJ f(x0) が 0 でなければ、R4 (の領域)から R2 への写像
F(x, y) = f(x) − y の(x, y) = (x0, f(x0)) におけるヤコビ行列
J F(x0, f(x0)) = (J f(x0), −E2) ( 2 行 4 列の行列) の内、x = (x1, x2) に関す る偏微分が作る2 次の小行列(前の 2 列) はJ f(x0) そのものですから、仮定よ りその行列式は 0 でないので、陰関数定理よりF(ψ(y), y) = 0 を満たす写像 x = ψ(y) が(x, y) = (x0, f(x0)) の近くで存在します。これはすなわち
f(ψ(y)) − y = 0 を満たすわけですから、正にy = f(x) の逆写像になってい ます。
ここで、条件
g(x, y) = 0の下で
(つまり曲線
C上で
) 2変数関
数
f(x, y)の極値問題を考えて見ましょう。
C上の各点で
grad g(x, y) ̸= 0 (
つまり
gx(x, y)と
gy(x, y)の少なくとも一方は
0でないこと
)は仮定しておきます。
(直観的に言うと、C の近くで等高線が綺麗に並ぶようなg(x, y) を選ぶと言う ことです。)
今
gy(x, y) ̸= 0で、
Cが
y = φ(x)と表される範囲で
f(x, y)が
極値をとるならば
d
dxf(x, φ(x)) = 0
が成り立つはずです。ここで与式左辺は
d
dxf(x, φ(x)) = fx(x, φ(x)) + fy(x, φ(x))φ′(x)
= fx(x, φ(x)) − fy(x, φ(x))gx(x, φ(x)) gy(x, φ(x))
= fx(x, φ(x)) − gx(x, φ(x))fy(x, φ(x)) gy(x, φ(x))
より、
gx(x, φ(x)) ̸= 0ならば
fx(x, φ(x))gx(x, φ(x)) = fy(x, φ(x)) gy(x, φ(x))
を得ます。
(一方
gx(x, φ(x)) = 0ならば
fx(x, φ(x)) = 0です。
)また
gx(x, y) ̸= 0で、
Cが
x = ψ(y)と表される範囲で
f(x, y)が極値をとるならば
d
dyf(ψ(y), y) = 0
が成り立つはずです。ここで与式左辺は
d
dyf(ψ(y), y) = fx(ψ(y), y)ψ′(y) + fy(ψ(y), y)
= fy(ψ(y), y) − fx(ψ(y), y)gy(ψ(y), y) gx(ψ(y), y)
= fy(ψ(y), y) − gy(ψ(y), y)fx(ψ(y), y) gx(ψ(y), y)
より、
gy(x, φ(x)) ̸= 0ならば
fy(ψ(y), y)gy(ψ(y), y) = fx(ψ(y), y) gx(ψ(y), y)
を得ます。
(一方
gy(x, φ(x)) = 0ならば
fy(x, φ(x)) = 0です。
)いずれにせよ、極値をとる点では
fx(x, y)
gx(x, y) = fy(x, y) gy(x, y)
(
または
gx(x, y) = fx(x, y) = 0または
gy(x, y) = fy(x, y) = 0 )が
成り立つ、すなわち
grad fと
grad gが平行であると言うこと です。
これは
fと
gの等高線が接すると言っても同じです。これが意 味することは、
gの高さ
0の等高線に沿って進むとき、
fの値が
極大
(小
)になるところでは、
fのある等高線に接して、その等高
線を超えることなく、低
(高
)い方へ戻るような動きになると言う
ことです。
滑らかな斜面を滑らかな動きで上り下りするとき、斜面の途中 まで上って下るには、途中で一瞬だけ斜面の向きに直交して
(つま
り右が上、左が下、またはその逆
)ちょうど等高線に沿う水平な 道
(山肌を縫う高低差の無い道路を思い浮かべて下さい
)と同じ方
向を向くところがあると言うことで、それを数式で表したのが上
の等式です。
0
x- 6
y ·
·
[f(x, y) = x+y の等高線]
f → +∞ f = 0
f → −∞ f = 0
●
◦
○:道, ●:最高点, ◦:最低点
0 -
x y 6
·
[f(x, y) = −x2 −y2 の等高線]
f → −∞
f → −∞
f → −∞ f → −∞
f = 0(山頂)
●
\:道, ●:最高点
ここで上の比を
λで置き換えてやると、極値をとる点では
fx(x, y) − λgx(x, y) = 0 fy(x, y) − λgy(x, y) = 0
−g(x, y) = 0
が成り立つことになります。これは、
3変数関数
F(x, y, λ) = f(x, y) − λg(x, y)の
3個の偏微分が同時に
0になることと同値な条件になっていま す。そこで、条件
g(x, y) = 0の下での
f(x, y)の極値問題は、
F(x, y, λ)
の極値問題に置き換えて考えてもよいことになります。
この方法を、ラグランジュの未定乗数法
(未定係数法とも言いま
す
)と呼びます。新たに付け加えた
λが未定乗数です。
もちろん、この方法で解くときにも、本当に極値をとるのかど
うかは、判定が必要です。曲線上の問題の場合は、隣同士の極値
候補の値を比較することで、増減表を書くときのように、隣同士
の増減が決定されるので、判定は容易です。曲面上の問題の場合
には、さらに陰関数の
2回微分
( g(x, y)が
C2級ならば陰関数も
C2級になります
)を調べるなどする必要があるでしょう。
簡単な例題として、
f(x, y) = ax2 + cy2 (ただし
a < cとする
)の条件
x2 + y2 = 1の下での極値問題を考えてみましょう。
F(x, y, λ) = ax2 + cy2 − λ(x2 + y2 − 1)
とおくと、
Fx = 2ax − 2λx = 0 Fy = 2cy − 2λy = 0 Fλ = −x2 − y2 + 1 = 0
より
2(a − λ)x = 0 2(c − λ)y = 0 x2 + y2 = 1
ですから、
(1) λ = a
かつ
λ = c (2) λ = aかつ
y = 0 (3) x = 0かつ
λ = c (4) x = 0かつ
y = 0のいずれかでなければなりませんが、仮定より
a < cなので
(1)は無く、
(x, y) = (0, 0)は
x2 + y2 = 1をみたさないので
(4)もあ
りません。従って、極値をとるならば
(2)か
(3)のどちらかで、
(2) (x, y) = (1, 0), (−1, 0) (3) (x, y) = (0, 1), (0, −1)
のどこかと言うことになります。
ここで、単位円周
x2 + y2 = 1上を左回りの順に値を眺めると、
f(1, 0) = a, f(0, 1) = c, f(−1, 0) = a, f(0, −1) = c
となり、隣同士を結ぶ円弧の上では、極値をとらないので、この 関数の値は単調増加か単調減少のいずれかしかありえません。こ こで
a < cですから、
(x, y) = (1, 0)から始めて、増加、減少、増 加、減少、で一周するので、
極大値
f(0, 1) = c, f(0, −1) = c極小値
f(1, 0) = a, f(−1, 0) = aとわかります。
0
x- 6
y
·
[f(x, y) = ax2+cy2 の等高線]
f(x, y) = a f(x, y) = c
●
●
◦
◦ 1
1
−1
−1
I
R
○:円周 C, ●:極大点, ◦:極小点
ここで単位円周は閉曲線であり、かつこれら以外に極値をとる
点が無いことから、
aが最小値、
cが最大値であることもわかり
ます。
もっとも、単位円周には
(x, y) = (cos t, sin t)と言う、とてもわ
かりやすいパラメーター表示がありますから、未定乗数法を用い なくても、
f(cos t, sint) = a cos2 t + c sin2 t
の増減を調べた方が早いと言う人も多いでしょう。ここで挙げた のは、あくまでもより複雑な場合を扱うためのモデルケースと 思って、他の方法はとりあえず封印して、眺めてもらえればと思 います。
[
練習課題
]f(x, y) = 2bxy (
ただし
b > 0とする
)の条件
x2 + y2 = 1の下での極値を、未定乗数法を用いて求めてみま
しょう。
もう一つ例を見てみましょう。
f(x, y) = x2y − yの条件
x2 + y2 = 1の下での極値問題です。
F(x, y, λ) = x2y − y − λ(x2 + y2 − 1)
とおくと、
Fx = 2xy − 2λx = 0 Fy = x2 − 1 − 2λy = 0 Fλ = −x2 − y2 + 1 = 0
より
2(y − λ)x = 0 x2 − 2λy = 1 x2 + y2 = 1
(y + 2λ)y = 0 (
第3式ー第2式
)ですから
(1) y = λ
かつ
y = −2λ (2) y = λかつ
y = 0 (3) x = 0かつ
y = −2λ (4) x = 0かつ
y = 0のいずれかでなければなりませんが、
(x, y) = (0, 0)は
x2 + y2 = 1をみたさないので
(4)はありません。
(1)
は
λ = 0より、第4式から
y2 = 0を導くので、
(2)と同じ
条件になりますから、結局、極値をとるならば
(2)か
(3)のどち
らかで、
(2) (x, y) = (1, 0), (−1, 0) (3) (x, y) = (0, 1), (0, −1)
のどこかと言うことになります。ここで、単位円周
x2 + y2 = 1上
を左回りの順に値を眺めると、
f(1, 0) = 0, f(0, 1) = −1, f(−1, 0) = 0, f(0, −1) = 1
となり、隣同士を結ぶ円弧の上では、極値をとらないので、この 関数の値は単調増加か単調減少のいずれかしかありえません。
(x, y) = (1, 0)
から始めて、減少、増加、増加、減少、で一周する
ので、
(x, y) = (1, 0), (−1, 0)では実は極値はとらず、極大値
(最大
値
) f(0, −1) = 1,極小値
(最小値
) f(0, 1) = −1とわかります。
ただ、これだけでは陰関数であると言うだけで、本質的には
1変数関数の増減を調べているだけですから、陰関数が
2変数にな
る場合も、見ておきましょう。
3変数関数
f(x, y, z)の条件
g(x, y, z) = 0の下での極値問題です。
以下ラグランジュの未定乗数法の導き方について、ほぼ同様の
手順を繰り返しますが、面倒な人は、とりあえず結論までの途中
は飛ばして、例題を眺めてもらっても構いません。
まず陰関数の微分から始めましょう。
3次元空間
R3内の曲面
Fが、ある
C2級の
3変数関数
g(x, y, z)によって
g(x, y, z) = 0と表されているとしましょう。例えば原点中心の単位球面なら
g(x, y, z) = x2 + y2 + z3 − 1
ととればよいわけです。
さて、この曲面
Fが、全体でなくてよいので、部分的にでも
z = φ(x, y)
と表されたとすると、
g(x, y, φ(x, y)) = 0が
φ(x, y)の定義域にある全ての
(x, y)について成り立ちます。このような
φ(x, y)
の、存在や微分可能性については、とりあえず認めましょ
う。すると、
g(x, y, φ(x, y)) = 0の両辺が、合成関数の微分の公
式を用いて偏微分できて、
gx(x, y, φ(x, y)) + gz(x, y, φ(x, y))φx(x, y) = 0 gy(x, y, φ(x, y)) + gz(x, y, φ(x, y))φy(x, y) = 0
が成り立つので、陰関数
φ(x, y)の偏微分を与える公式として、
φx(x, y) = −gx(x, y, φ(x, y)) gz(x, y, φ(x, y)) φy(x, y) = −gy(x, y, φ(x, y)) gz(x, y, φ(x, y))
を得ます。ここで、陰関数定理において陰関数の存在を保証する
条件は、
gz(x, y, z) ̸= 0です。
ここで、条件
g(x, y, z) = 0の下で
(つまり曲面
F上で
) 3変数
関数
f(x, y, z)の極値問題を考えて見ましょう。
F上の各点で
grad g(x, y, z) ̸= 0 (
つまり
gx(x, y, z), gy(x, y, z), gz(x, y, z)の内、
少なくとも一つは
0でないこと
)は仮定しておきます。
今
gz(x, y, z) ̸= 0で、
Fが
z = φ(x, y)と表される範囲で
f(x, y, z)が極値をとるならば
∂
∂xf(x, y, φ(x, y)) = ∂
∂yf(x, y, φ(x, y)) = 0
が成り立つはずです。ここで与式左辺は
∂
∂xf(x, y, φ(x, y)) = fx(x, y, φ(x, y)) + fz(x, y, φ(x, y))φx(x)
= fx(x, y, φ(x, y)) − fz(x, y, φ(x, y))gx(x, y, φ(x, y)) gz(x, y, φ(x, y))
= fx(x, y, φ(x, y)) − gx(x, y, φ(x, y))fz(x, y, φ(x, y)) gz(x, y, φ(x, y))
中辺は
∂
∂yf(x, y, φ(x, y)) = fy(x, y, φ(x, y)) + fz(x, y, φ(x, y))φy(x)
= fy(x, y, φ(x, y)) − fz(x, y, φ(x, y))gy(x, y, φ(x, y)) gz(x, y, φ(x, y))
= fy(x, y, φ(x, y)) − gy(x, y, φ(x, y))fz(x, y, φ(x, y)) gz(x, y, φ(x, y))
より、
gx(x, y, φ(x, y)) ̸= 0かつ
gy(x, y, φ(x, y)) ̸= 0ならば
fx(x, y, φ(x, y))gx(x, y, φ(x, y)) = fy(x, y, φ(x, y))
gy(x, y, φ(x, y)) = fz(x, y, φ(x, y)) gz(x, y, φ(x, y))
を得ます。
(一方
gx(x, y, φ(x, y)) = 0ならば
fx(x, y, φ(x, y)) = 0, gy(x, y, φ(x, y)) = 0ならば
fy(x, y, φ(x, y)) = 0です。
)これは
yが
(x, z)の関数で、
xが
(y, z)の関数で、表されるところでも全
く同様で、いずれにせよ、極値をとる点では
fx(x, y, z)
gx(x, y, z) = fy(x, y, z)
gy(x, y, z) = fz(x, y, z) gz(x, y, z)
(
または
gx = fx = 0, gy = fy = 0, gz = fz = 0の内の一つか二つ
)が成り立つ、すなわち
grad f = (fx, fy, fz)と
grad g = (gx, gy, gz)が平行であると言うことです。これは
fと
gの等高面が接すると
言っても同じです。
ここで上の比を
λで置き換えてやると、極値をとる点では
fx(x, y, z) − λgx(x, y, z) = 0 fy(x, y, z) − λgy(x, y, z) = 0 fz(x, y, z) − λgz(x, y, z) = 0
−g(x, y, z) = 0
が成り立つことになります。
これは、
4変数関数
F(x, y, z, λ) = f(x, y, z) − λg(x, y, z)
の
4個の偏微分が同時に
0になることと同値な条件になっていま す。そこで、条件
g(x, y, z) = 0の下での
f(x, y, z)の極値問題
は、
F(x, y, z, λ)の極値問題に置き換えて考えてもよいことにな
ります。
芸がありませんが、簡単な例題として、
f(x, y, z) = ax2 + by2 + cz2 (
ただし
a < b < cとする
)の条件
x2 + y2 + z2 = 1の下での極値問題を考えてみましょう。
F(x, y, z, λ) = ax2 + by2 + cz2 − λ(x2 + y2 + z2 − 1)
とおくと、
Fx = 2ax − 2λx = 0 Fy = 2by − 2λy = 0 Fz = 2cz − 2λz = 0
Fλ = −x2 − y2 − z2 + 1 = 0
より
2(a − λ)x = 0 2(b − λ)y = 0 2(c − λ)z = 0 x2 + y2 + z2 = 1
ですが、以前の教訓を生かして考えると、
λは二つ以上選べない、
原点は条件を満たさないと言うことから
(1) λ = a
かつ
y = z = 0 (2) λ = bかつ
x = z = 0 (3) λ = cかつ
x = y = 0のいずれかでなければならず、
(1) (x, y, z) = (1, 0, 0), (−1, 0, 0) (2) (x, y, z) = (0, 1, 0), (0, −1, 0) (3) (x, y, z) = (0, 0, 1), (0, 0, −1)
のどこかと言うことになります。そこでの値はそれぞれ、
f(1, 0, 0) = f(−1, 0, 0) = a, f(0, 1, 0) = f(0, −1, 0) = b, f(0, 0, 1) = f(0, 0, −1) = c
となります。
ここで
a < b < cで、これら以外に極値をとる点が無いことか
ら、
aが最小値、
cが最大値であることはわかります。ただし、こ れは球面が閉じた曲面だから言えることで、境界
(閉区間の端点の
ようなもの
)がある曲面では、この論理は通用しません。
さて、それでは
bは極値なのでしょうか?
陰関数の
2回偏微分を頑張って求めるのも一つの手ですが、面 倒なので、ここでは楽な方法で判定しておきましょう。
2
点
(0, 1, 0), (0, −1, 0)と結ぶ単位球面上の曲線として、最小 値もそこで実現する
xy平面
z = 0による断面を考えると単位円 周
x2 + y2(+02) = 1が得られ、そこでの
fの値は
f(x, y, 0) = ax2 + by2 (a < b)
ですから、この円周上では
bは最大
値です。
一方、最大値もそこで実現する
yz平面
x = 0による断面を考
えると単位円周
(02+)y2 + z2 = 1が得られ、そこでの
fの値は
f(0, y, z) = by2 + cz2 (b < c)ですから、この円周上では
bは最小
値です。
つまり、
fの値は、点
(0, 1, 0), (0, −1, 0)から、
xy平面による
断面に沿って進むと減少し、
yz平面による断面に沿って進むと増
加するので、ここでは極値をとりません。
0 - x y z 6
−1 1
1
−1 1
−1
●:最大点, ◦:最小点
- s
k
? 6
^
]
●
●
◦
◦
×
×
一般にはこのような断面は簡単には見当がつくとは限りませ ん。最大値や最小値をとる点と断面で結ぶのがよいとは限らない からです。適当にとれば上手く行くこともありますが、それでも、
極値にならない場合にしか、判定できません。二つの方向に増え ても極小
(減っても極大
)とは言えないからです。それを確実に示 そうとすれば、
2回或いはさらに高次の偏微分を計算するのが、
近道ではないにせよ、有力な方法と言えるでしょう。
第8回練習課題の解答
関数
f(x, y) = x2y − y + 13y3
がどこかで極値をとるならば、そ こでは
fx(x, y) = 2xy = 0
fy(x, y) = x2 + y2 − 1 = 0
が成り立たなければなりません。第1式より
x = 0または
y = 0で、これを第2式に代入して
y = ±1または
x = ±1を得ます。
従って、極値を取る点の候補は
(x, y) = (0, ±1), (±1, 0)です。こ
こで
fxx = 2y, fxy = 2x, fyy = 2y
より、
(x, y) = (0, ±1)
では
fxx(0, ±1) = ±2, fxy(0, ±1) = 0, fyy(0, ±1) = ±2
ですから、
fxx(0, ±1)fyy(0, ±1) − fxy(0, ±1)2 = 4 > 0
より、極値をとり、特に
fxx(0, 1) = 2 > 0より
(x, y) = (0, 1)では
極小値
f(0, 1) = −23
に、また
fxx(0, −1) = −2 > 0より
(x, y) = (0, −1)では極大値
f(0, −1) = 23
になります。
一方
(x, y) = (±1, 0)では
fxx(±1, 0) = 0, fxy(±1, 0) = ±2, fyy(±1, 0) = 0
ですから、
fxx(±1, 0)fyy(±1, 0) − fxy(±1, 0)2 = −4 < 0