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ドゥル族の季節観と農作業暦

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(1)

ドゥル族の季節観と農作業暦

著者 端 信行

雑誌名 国立民族学博物館研究報告

巻 1

号 3

ページ 537‑564

発行年 1976‑10‑30

URL http://doi.org/10.15021/00004636

(2)

ド ゥ ル 族 の 季 節 観 と 農 作 業 暦

端    行*

The Native Concept of Seasonal Cycle (months) and Agricultural Calendar of the Dourou

Society in North Cameroon

Nobuyuki HATA

This is a partial report of a ethnological survey of the Dourou society living in North Cameroon. This survey was undertaken from November 1969 to February 1970, and in December 1971.

I have already reported the spatial structure of the agri- cultural complex, under the title of "The Swidden Crops and the Planting Pattern of Dourou Agriculture in Nord Cameroun"

in the Volume VIII of Kyoto University African Studies. The Dourou are swidden farmers in the Savanna woodland, planting sorghum, maize, pearl millet, rice, groundnut, cowpea, Bam- barra-nut, sesame, okra in the bush field, and several kinds of yam and macabo in the yam field.

In this report I describe the Dourou agricultural calendar in terms of their concept of seasonal cycle (months), focusing on an aspect of the calendrial cycle in their agricultural complex.

In Dourou society, the native concept of seasonal cycle (months) is as follows:

calendar Dn

A ,,,41

Teaves

Dourou's monthGregorianMeaning incalendarDourou language April

Dug-dugLeaves coming out

MayName of an insect living

Uwartunder the ground

June

Waabab A but in the swiddenfi

elJulyd

Bangowa Rainy days

August Handmill (for sorghum)

Nag-bunniisnot white

September

Naa Weeding

OctoberfieldRainy

icTint

VVPealT I Irtnl-sx.r

*国 立民族学博物館第3研 究部

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(3)

国立民族学博物館研究報告    1巻3号

calendar

1 0

ra Inc IN (WPM her

Dourou's monthGregorian Meaning in calendar Dourou language

To bring the fireplace

Ziedon into the house when it

rains November

ZumpuiSorghum has ripened

December

Hom-waaLesser cold days

JanuaryH

om-na'aColdest days

February

Zum-waaLesser hot days

March

Zum-na'aHottest days

IPrPMher

IeCC anuarv

;ntri rerininrv

•I .eqRf 'VIarr.n

H At t

* Rainy season from Dug-dug to Naa , dry season from

Ziedon to Zum-na'a, at Mbe District.

It seems that this concept of seasonal cycle (months) has mainly functioned as a farming calendar among the Dourou.

1.は じ め に

2.  ドゥル 族 の 居 住地 域 と その農 業 形 態 3.  ドゥル 族 の 季 節観 あ るい は そ の暦

4.ブ ッシ ュ焼 畑 に お け る農 作 業暦 5.ヤ ム焼畑 に お け る農 作 業暦 6'.お わ り に

  1.は

  こ の 小 論 は,カ メ ル ー ン北 部 の ア ダ マ ワ(Adamaoua)地 方 に 居 住 す る ド ゥ ル(Dou‑

rou)族 に 関 す る,実 態 調 査 の 結 果 の 一 部 を 報 告 す るも の で あ る 。 この 調 査 は,東 京 外 国 語 大 学 ア ジ ア ・ア フ リ カ 言 語 文 化 研 究 所 に よ る,ア フ リ カ 大 サ バ ン ナ 学 術 調 査 隊 と

し て 行 わ れ た もの で1),報 告 者 の ド ゥ ル 族 に 関 す る 調 査 は,1969年11.月 よ り1970年2 月 に か け て の 約3カ 月 間 と1971年12月の 約1カ 月 間 の,計4カ 月 に わ た って 行 わ れ た 。   調 査 の 対 象 と な っ た ド ゥ ル 族 は,ス ー ダ ン型 の サ バ ン ナ に 近 い 自然 的 環 境 の も とで 焼 畑 を 経 営 す る 焼 畑 農 耕 民 で あ る 。 報 告 者 は,す で に そ の 焼 畑 農 業 の 特 質 に 関 して は,  「ド ゥ ル 族 の 焼 畑 作 物 と そ の 作 付 様 式 」  (以 下 第 一 論 文 と呼 ぶ)と 題 す る 報 告 を 行 っ た[端,1971]。 こ の 第 一 論 文 で は,報 告 者 は ド ゥル 農 民 の 経 営 す る 焼 畑 の 種 類 そ こ で 栽 培 さ れ て い る 作 物 類 と そ の 構 成,輪 作 シ ス テ ム,作 付 の 空 間 的 配 置 を 明 らか に した 。 そ れ は,い わ ば,ド ゥ ル 農 耕 文 化 の 空 間 的 構 成 を 取 り扱 っ た も の で あ る 。

1)こ の 調査 隊 は,昭 和44年 度 な らび に 昭和46年 度 の文 部 省 科学 研究 費 補助 金(海 外 学 術 調 査)の   交 付 を うけて い る。 隊 長 は,東 京 外 国語 大 学 ア ジ ア ・ア フ リカ言 語 文 化研 究 所 の 富 川 盛 道教 授   で あ った 。

538

(4)

  しか し,ひ とつ の農 耕 文 化 の記 述 と して は,そ れ だ け で は 十 分 で は な い。

  い ま,ひ とつ の農 耕 文 化 とい う もの を構 造 を も った複 合 体 的概 念 で 把 握 す る とす れ ば,第 一 論 文 で 明 らか に しえ た の は,そ の横 軸,つ ま り平 面 的構 造 で あ る と言 え る。

それ は,ド ゥル 農 民 が 地 表 に働 きか け た 行動 体 系 の 空間 的構 成 で あ る と言 い か え て も よ い 。

  で は ドゥル 農 耕 文 化 の 縦 軸,す な わ ち,そ の時 系 列 の体 系 は ど の よ うな 構 造 を も一 て い るの で あ ろ うか 。 そ れ を 明 らか に す る の が本 稿 の主 題 で あ る。

  と こ ろで,従 来 か ら行 わ れ て い る農 耕文 化 の分 析 に あ って は,そ の時 系 列 の 体 系 は,い わ ゆ る農 作 業 な い し農 業労 働 の年 間構 成 に よ って 示 され る と考 え られ る 。 本 稿 にお いて も,報 告 者 は ドゥル農 民 の 農業 労 働 の年 間 構 成 を 記 述 す る こ と によ って,そ の農 耕 文 化 の時 間 的 側 面 を 明 らか に した い と考 えて い る。

  しか しな が ら,農 業 労 働 の年 間構 成 を記 述 す る に あ た って,問 題 とな るの は,そ の 場 合 の 一 年 間 とい う時 間 的概 念 が どの よ う に構 成 され て い るか とい う こ とで あ る。

  しば しば 見 うけ られ る 農業 労 働 の年 間 構 成,い わ ゆ る農 業 暦 の 民 族 誌 的 記 述 に お い て は,必 ず しもそ の 民 族 の 時 間 的概 念 に留 意 され て い る とは 言 え な い よ うで あ る。 そ れ らの 多 くは,西 欧 暦(グ レゴ リー暦)と して の 一 年 間 と対 応 させ る記 述 が試 み られ て い る。

  しか しな が ら,ひ とつ の農 耕 文 化 を構 成 す る農 業 暦 は,そ れ ぞ れ の 民 族 に固 有 の 時 間 概 念(こ こで は一 年 間 の構 成)を 背 景 に して い る と考 え られ る。 こ こで い う西 欧 暦 はい わ ば こち ら側 の概 念 で あ るか ら,あ る民 族 の 農 業 暦 に と って,そ れ が十 分 な 分 析 的 機 能 を もつ とは言 い が た い と思 わ れ る。 そ の 民 族 の 農 業 暦 が そ の 民族 に 固有 の 時 間 的 概 念 を 背 景 に して い る とす れ ば,そ の農 業 暦 と西 欧 暦 との対 応 に お い て,必 ず時 系 列 の うえ で ズ レが起 こ らざ るを えな い と考 え られ るの で あ る 。 した が って,一 般 に あ る民 族 の 農 業 暦 を記 述 し,分 析 す る に あ た って は,そ の民 族 に お け る一 年 間 の時 間 的 概 念 が 把 握 され て い る こ とが 望 ま し く,そ の 時 間 的 概 念 を西 欧暦 と対 応 させ れ ば,農 業 暦 の 民 族 誌 的記 述 は,よ り一 層 その 民 族 文 化 の 文 脈 で語 る こ とが で き る ので は な い か と考 え られ る 。

  しか しな が ら,ど の民 族 も西 欧 暦 に匹 敵 す るよ うな暦 を もって い る と は,と て も望 み え な い 。 そ こに この 問題 の 困難 さが あ る と言 え るの だ が,報 告 者 は,ド ゥル 族 調 査 か ら,暦 とは 言 え な い ま で も,彼 らの季 節 観 とで も言 い う る一 年 間 を構 成 す る時 間 的 概 念 の 一 部 を採 集 す る こ とが で きた 。 そ こで 本 稿 で は,ド ゥル農 耕 文 化 の農 業 暦 を 記 述 す る にあ た って,従 来 か らと られ て い る西 欧 暦 との対 比 を一 歩 す す めて,ド ゥル農 民 の 季 節 観 を 背景 と した分 析 を 試 み たい と思 うの で あ る 。

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国立民族学博物館研 究報告    1巻3号

2.  ド ゥ ル 族 の 居 住 地 域 と そ の 農 業 形 態

  ド ゥ ル 族 は,中 部 ア フ リ カ の カ メ ル ー ン 国 の ほ ぼ 中 央 を 東 西 に 走 る ア ダ マ ワ 山 地 の 北 縁 に 居 住 す る 部 族 で あ る 。 ド ゥ ル 族 は 種 族 的 に は ニ グ リ テ ィ ッ ク 種 族 に 属 す る が, そ の 言 語 は,グ リ ン バ ー グ(J・H・Greenberg)の 分 類 に よ れ ば,大 き くは ニ ジ ェ ー ル ・コ ン ゴNiger‑Congo系 に 分 類 さ れ,そ の サ ブ タ イ プ と して の 東 部 ア ダ マ ワ と い う グ ル ー プ に 属 し て い る[GREENBERG,1963]。 そ の 人 口 は,約1万5千 人 か ら2万 程 度 と 推 定 さ れ て い る[LAMBEZAT,1962]。

図1  カ メル ー ン中部 の概 念 図

  こ の ド ゥル 族 は,行 政 的 に は,ア ダ マ ワ 県 ム ベ(Mb6)地 区 を 中 心 に,そ の 北 部 に つ な が る ベ ヌ ェ(B6noue)県 の ポ リ(Poli)郡 や チ ョ リ レ(Tchollir6)郡 あ る い は 南 の ン ガ ウ ンデ レ(Ngaound6r6)郡 な ど に も 分 散 居 住 し て い る 。 しか し,ム ベ 地 区 の 中 心 町 で あ るMb6に は,地 区 役 所 が お か れ て い る の と と も に,ド ゥ ル 族 の 伝 統 的 首 長

540

(6)

も居 住 して お り,こ のMb6は ド ゥ ル 族 の 首 邑 で あ る と い え る 。 ま た,こ の ム ベ 地 区 の 住 民 は ほ と ん ど が ド ゥ ル 農 民 か ら構 成 され て い る 。 報 告 者 が 住 み 込 み 調 査 を 行 っ た の は,こ の ム ベ 地 区 の 首 邑Mb6よ り東 方13kmに 位 置 す る ン ゲ セ ッ ク ・ガ イ(Ngesek Gay)と い う,戸 数38戸 の,ま ず ム ベ 地 区 で は 平 均 的 な 規 模 の 村 落 で あ っ た 。   カ メ ル ー ン 国 を 北 部 と 南 部 と に 両 断 して い る ア ダ マ ワ 山 地 は,平 均 高 度1,000mを

越 す 山 塊 群 か ら な っ て お り,そ の 基 盤 岩 は 主 に 花 商 岩 と 片 麻 岩 か ら 構 成 さ れ て い る [BILLARD,1963]。 ム ベ 地 区 は こ の ア ダ マ ワ 山 地 と北 部 の べ ヌ エ 川 流 域 低 地 の 間 の 漸 移 帯 に あ り,海 抜 高 度 は 南 に 高 く,北 に 低 く な っ て い る 。 ち な み にMbeの 海 抜 高 度 が ち ょ う ど700mで あ り,ム ベ 地 区 の 平 均 高 度 は,500〜700m程 度 と考 え られ る 。 ム ベ 地 区 の 地 貌 起 伏 は さ ほ ど 大 き い も の で は な く,全 体 に ゆ る や か な 準 平 原 が つ づ い て い る 。

  ムベ 地 区 の 気 候 につ いて は,デ ー タが皆 無 に 等 しい ので,詳 しい こ とは わ か らない とい うの が実 情 で あ る。 た だMb6に お け る年 間 降 雨 量 の デ ー タが1969年 につ い て の み得 られ た。 表1 が そ れ で あ る。 これ に よ る と この年 の雨 量 は, 予想 以上 に多 い ので あ る。 これ の み で は とて も 平 均 的 な特 徴 の判 断 は 出来 な い の だ が,年 間 降 雨 量 が1,500mmを 越 す 年 が あ る とい う こ とは,

この 地 域 の 植生 を考 え る う えで 考 慮 に入 れて お いて も よい と 思 われ る。 な お,気 温 に つ い て は,デ ータ は皆 無 で あ った が,調 査 期 間 中 にお い て報 告 者 が 毎 日の 最 高 な らび に最 低 気 温 を 測

表1  Mb6に お け る 降 雨 量(1969年,           Post  Agricole,  Mb6)

1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月

      Omm       O

91.6 69.6 161.7 316.3 355。7 359.6 327.0 91.2 22.0       0

年間

1794.7

定 し た 。 こ の 点 に つ い て は,ド ゥ ル 族 の 季 節 観 と 関 連 して 次 の 章 で ふ れ る こ と に した い(表2)。

  ま た こ の 地 域 の 降 雨 は,比 較 的 安 定 して い る よ う で,ほ ぼ4月 か ら9月 ま で の 半 年 間 が 雨 期,10月 か ら3月 ま で が 乾 期 に あ た る と 考 え て 間 違 い な い 。 表1で もわ か る よ う に12月 か ら2月 ま で は ま っ た く降 雨 を み ず,ま た,年 間 降 雨 の 過 半 は6月 か ら9月 ま で の4カ 月 に 集 中 して い る の で あ る 。

  ム ベ 地 区 の 卓 越 的 な 植 生 は,い わ ゆ るopen  woodland  savannaで あ る と い え る 。 しか し,集 落 の 周 辺 な ど 開 墾 の 進 ん だ 部 分 で は 草 地(tropical  grassland)な い し 灌 木 林(bush  forest)が 拡 が っ て い る 。 ま た,小 さ な 谷 を な して い る 小 流 に 沿 っ て 密 な 河

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国立民族学博物館研究報告    1巻3号 表2  調 査 村 に お け る最 低,最 高,平 均 気 温

      (1969年11月30日 よ り1970年2月14日)

}1969年1・ 月11969年12月1197・ 年1月}197・ 年2月

最低 最高 平 均 最低 最高 平均 最低 最 高 平均 最低 最高 平均

1日 13.0 37.2 25.1 13.1 35.2 24.1 12.0 33.2 22.6

2 14.0 36.2 25.1 12.7 34.7 23.7 14.0 33.7 23.8

3 13.3 36.0 24.6 11.8 34.7 23.2 14.4 35.3 24.8

4 11.9 35.6 23.7 12.3 34.6 23.4 15.0 33.0 24.0

5 12.2 35.5 23.8 12.0 34.0

23.0

13.0 32.7 22.8

6 12.3 35.2 23.7 11.9 34.5 23.2 13.5 33.5 23.5

7

11.8 33.8 22'.8 14.8 35.1 24.9

8

11.6 34.4 23.0 15.2 36.5 25.8

9 12.9 36.5 24.7 11.4 32.7 22.0 15.2 36.7 25.9

10 14.2 34.3 24.2

13.1 36.2 24.6

11 14.5 34.6 24.5 12.4 31.2 21.8 13.3 36.7 25.0

12 13.5 35.2 24.3 14.2 30.8 22.5 14.4

37.2

25.8

13

13.8 34.9 24.3 13.3 32.5 22.9 14.5 37.2 25.8

14 12.8 34.7 23.7 13.7 32.0 22.8 13.3 38.1 25.7

15 14.1 33.7 23.9 13.5 32.5 23.0

16 12.4 33.7 23.0 13.6 32.5 23.0

17 11.8 33.0 22.4 13.2 32.9 23.0

18 11.4 32.7 22.0 14.7 33.3 24.0

19 11.2 33.6 22.4 13.3 32.3 22.8

20 11.8 33.3 22.5 12.0 32.4 22.2

21 12.0

33.0

22.5 13.0 32.0 22.5

22

11.5 33.3 22.4 12.5 33.3 22.9

23 10.8 32.0 21.4 13.9 33.5 23.7

24 10.4 32.2 21.3

14.止0

33.3 23.6

25 11.2 31.8 21.5 13.3 32.1 22.7

26 10.9 32.2 21.5 14.0 33.3

23・.6

27 10.9 32.2 21.5 12.8 31.8 22.3

28 12.3 33.8 23.0 12.8 33.0 22.9

29 12.3 34.7 23.5 13.0 32.8 22.9

30 13.0 36.3 24.6 13.3 34.1 23.7 12.9 32.5 22.7

31 12.1 35.0 23.5 13.5 32.7 23.1

辺 林 が 発 達 して お り,・こ れ らの 植 生 に お お わ れ た 土 地 が,ド ゥ ル 農 民 に と っ て 焼 畑 の 対 象 と な る の で あ る 。 ム ベ 地 区 か ら 北 部 へ む か う ほ ど サ バ ン ナ 叢 林 が 減 退 す る傾 向 に あ り,ム ベ 地 区 の 植 生 は,乾 燥 サ バ ン ナ と湿 潤 サ バ ン ナ と の 中 間 の タ イ プ と言 い う る の で あ る[LETOUZEy,1963]。

  ド ゥ ル 農 民 は,こ の サ バ ン ナ 叢 林 を 伐 り ひ ら い て,焼 畑 を 経 営 して い る の で あ る 。   す で に 報 告 し た よ う に,ド ゥ ル 農 民 は,一 般 に,次 の よ う な3種 類 の 農 地 を 経 営 し

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図2  Mb6地 区 中心 部 て い た[端,1971]。

    ブ ツ シ ュ焼 畑     ヤ ム 煉 畑'     タ バ コ畑

  こ の3種 類 の 農 地 は,現 在 の ド ゥ ル 農 民 に と っ て そ れ ぞ れ 重 要 な 意 味 を もつ も の で あ って,ド ゥ ル 農 業 は こ の3種 類 の 農 地 経 営 を そ の 骨 絡 と し て い る と い え る 。   第1の ブ ッ シ ュ 焼 畑 と は,叢 林(ブ ッ シ ュ)を 伐 りひ ら い て 造 成 し,ド ゥ ル 農 民 が 主 食 作 物 と して い る モ ロ コ シ を 中 心 に,他 の 雑 穀 や マ メ 類,ウ リ類 な ど を 作 付 して い る も の で あ る 。 こ の 農 地 で 栽 培 さ れ て い る 作 物 は,モ ロ コ ジSorghum  vulgareを は じ め,ト ウ モ ロ コ シZea  ma/s,ト ウ ジ ン ビ ェPennisetum  t2Phoideum,イ ネOrフza  glaber・

rimaな ど の 雑 穀 類,ラ ッ カ セ イArachis  h2Pogaea,サ サ ゲVigna  sinensis,ボ ア シ ズ ー マ メVoandzeia  subterraneaの マ メ 類 の ほ か,ウ リ類4種 ,ゴ マSesamm  indicus,オ ラHibiscus  esculentus,サ ツ マ イ モIPemoea  batatαsな ど,主 要 な もの の み で も14種 を か ぞ え た 。 こ れ らの 作 物 が す で に 報 告 し た よ う に,一 定 の 様 式 の も と に ブ ッシ ュ 焼 畑 に 作 付 さ れ る の で あ る 位 こ の ブ ッ シ ュ 焼 畑 で 展 開 さ れ る 農 業 は,ド ゥル 農 耕 文 化 の 中 で は 自給 的,伝 統 的 色 彩 の 強 い タ イ プ と 考 え られ,い わ ゆ る 西 ア フ リ カ の サ バ ン ナ 地

543

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国立民族学 博物館研究報告    1巻3号 帯 で 広 く見 られ る ス ー ダ ン 型 農 業 の 範 躊 に は い る も の で あ る 。

  こ の ブ ッ シ ュ 焼 畑 は,通 例,4年 な い し5年 の 連 続 し た 作 付 が 行 わ れ る 。 そ の 後,こ の 農 地 は 放 棄 さ れ る の で あ る が,再 耕 作 さ れ る ま で の 休 閑 期 間 は,短 くて も6,7年, 長 くて20年 位 で あ る と 考 え られ る 。

  第2の ヤ ム 焼 畑 で あ る が,こ の 農 地 で は ヤ ム(あ る い は ヤ ム イ モDioscorea  spp・) が お も な 作 付 作 物 と な っ て い る 。 ヤ ム 焼 畑 は,ブ ッ シ ュ 焼 畑 と は 異 な り,集 落 の 近 く で 造 成 さ れ る の が 普 通 で あ る 。 そ れ は,村 び と の 表 現 に よ る と,収 穫 物 で あ る ヤ ム イ モ の 保 存,運 搬 の 便 と い う こ と が お も な 原 因 と考 え られ て い る 。 こ の ヤ ム 焼 畑 の 造 成 に は,も は や 叢 林 の 伐 採 は 行 わ れ ず,草 地 の 耕 転 と い う作 業 形 態 が と られ て い る 。   こ の 焼 畑 で の ヤ ム の 栽 培 は1年 し か 行 わ れ ず,2年 目 に は マ ニ オ クManihot  utilis‑

simaが 植 え 付 け られ,ま れ に トウ モ ロ コ シ や ラ ッ カ セ イ な ど が 混 植 さ れ る こ と が あ る 。 つ ま り,こ の 焼 畑 で は ヤ ム が 初 年 目 作 物 で あ り,2年 目以 降 に ヤ ム が 栽 培 さ れ る こ と は な い の で,し た が って,こ の ヤ ム 焼 畑 の 経 営 は,毎 年 新 しい 農 地 造 成 を 伴 う の で あ る 。 さ ら に,こ の 焼 畑 に お い て は,ヤ ム は 高 く土 盛 り され た ウ ネ に 植 え つ け られ る の で,ヤ ム 焼 畑 の 造 成 に は,ウ ネ 造 成 の 作 業 が 欠 か せ な い の で あ る 。 こ の 作 業 は, ブ ッ シ ュ焼 畑 の 造 成 に お け る 叢 林 の 伐 採 に 匹 敵 す る 大 き な 労 働 と な って い る 。   な お,こ の 焼 畑 は,2年 目 に マ ニ オ ク な ど が 栽 培 さ れ,そ の 収 穫 が す む と 放 棄 さ れ

る 。 ヤ ム 焼 畑 の 休 閑 期 間 に つ い て は,そ れ を 判 断 す る デ ー タ を 入 手 し え な か っ た が, す で に述 べ た よ う に,ヤ ム 焼 畑 は 集 落 の 周 辺 に 造 成 さ れ て お り,休 閑 形 態 もい わ ゆ る 草 地 休 閑(grass  fallow)で あ る こ と か ら考 え る と,そ の 期 間 は 極 め て 短 く,数 年 以 内 の も の で あ ろ う と考 え られ る 。

  さ て,第3の タ バ コ 畑 で あ る が,こ れ は 焼 畑 と 呼 ぶ こ と は 出 来 な い 。 ド ゥ ル 農 民 は, 図2に み られ る よ う に,調 査 村 ン ゲ セ ッ ク ・ガ イ よ り ほ ぼ 南 方15kmの 地 点 に タ バ コ 畑 を 経 営 し て い る 。 こ の 地 点 は,ベ ヌ エ 川 の 一 支 流 で あ る バ ン ナ(Vanna)川 が 地 形 性 氾 濫 原 を 形 成 して い る と こ ろ で あ り,そ の 広 い 氾 濫 原 を 利 用 し て,ド ゥ ル 農 民 は 乾 期 の 間 だ け タ バ コ畑 を 経 営 して い る の で あ る 。 そ れ は 乾 期 の み 作 付 さ れ る ひ とつ の 常 畑 で あ る と い え る 。 こ の タ バ コ 畑 の 経 営 と そ の 問 題 点 に つ い て は,す で に 報 告 を 試 み て い る の で,こ こ で は こ れ 以 上 ふ れ な い こ と に し た い[端,1972]。

  こ の よ う に ド ゥ ル 族 は,サ バ ン ナ 叢 林 に お お わ れ た 環 境 の 中 で,そ の 生 活 の 基 礎 を 広 く焼 畑 経 営 に 依 存 し て い る点 で,典 型 的 な ア フ リカ 焼 畑 農 民 の 一 例 を 示 して い る と い え よ う 。

(10)

3.  ド ゥ ル 族 の 季 節 観 あ る い は そ の 暦

  ドゥル族 は,一 年 を12カ 月 に 区分 す る暦 を も って い た 。 そ れ は,以 下 に述 べ る よ う な 内容 か らす れ ば,暦 と呼 ぶ こ とは正 し くな い か も知 れ な い 。 しか し,こ こで は それ を正 し く表 現 す る言 葉 が見 つ か らな い の で,と りあ え ず暦 と呼 ん で お くこ と に し た い 。

  ド ゥ ル 族 は,月 をsiinと 呼 ん で い る が,そ れ は 同 時 に ひ と 月 と い う こ と を も 意 味 し て い る 。 そ して ド ゥ ル 農 民 は,一 年 は12のsiinか ら な る と考 え て い る の で あ る 。   し か し な が ら,こ のsii nに は 日 付 の 概 念 が 付 与 さ れ て は い な い の で あ る 。 す な わ ち,ど の 月 の 何 日 と い う 表 現 も 概 念 も な い の で あ る 。 た だ 何 々 の 月 と い う 考 え 方 が 共 通 に 認 識 さ れ て い る の で あ る 。

  した が っ て,一 年 を 構 成 して い る12のsii  nの 期 間(あ る い は 日 数)が 定 ま っ て い な い の で あ る 。12のsiinの 期 間 が そ れ ぞ れ ほ ぼ 等 しい と か,あ る い は ど の 月 が き わ め て 短 い の だ と か い う よ う な,各 月 の 長 さ に 関 す る 概 念 は 認 め ら れ な か っ た 。

  む し ろ,報 告 者 が 調 査 の 過 程 で 得 た 断 片 的 な 観 察 か ら す れ ば,ド ゥ ル 農 民 はsiinの 期 間 と い う も の を,そ の 年 そ の 年 の 実 情 に あ わ せ て 判 断 して い る と考 え られ た 。   こ の ドゥ ル 農 民 のsiinの 期 間 の 長 さ に対 す る判 断 を 理 解 す る 助 け と して,わ た し た ち の 身 近 な 例 を も ち 出 す こ と を 許 され れ ば,そ れ は わ た し た ち の 梅 雨(つ ゆ)な ど と い っ た 概 念 の そ れ に 近 い と 考 え ら れ る 。 わ た した ち の 社 会 に お い て,梅 雨 は 季 節 観 を 構 成 す る 概 念 の ひ と つ で,た し か に 暦 の う え で 梅 雨 入 り と か 梅 雨 明 け と か は 定 め ら れ て は い る も の の,季 節 観 と して の 梅 雨 の 期 間 に つ い て は,そ の 年 そ の 年 で,こ と し は 梅 雨 が 長 か っ た とか,梅 雨 明 け が 早 い と か 表 現 して い る の で あ る 。 ド ゥ ル 農 民 の5伽 の 概 念 は,そ う し た も の に き わ め て よ く似 た 概 念 で あ る と 考 え られ る 。

  ド ゥ ル 族 に お い て は,こ の よ う に 期 間 の 定 ま ら な い 月 の 概 念 が12あ っ て,そ れ が 一 年 間 と い う も の を 構 成 して い る の で あ る 。 そ こ で は,相 互 の 連 続 の 関 係 は,は っ き り と 固 定 して い る 。 そ して ド ゥ ル 農 民 は,こ の 月 が 終 れ ば,そ れ は す で に 次 の 月 の は じ ま り で あ る こ と か ら,今 は 何 の 月 だ と か,も う 次 の 月 に 入 っ て い る と か の 判 断 も き わ め て 明 確 に 行 っ て い る の で あ る 。

  こ の よ う に み れ ば,こ の ド ゥ ル 族 に お け る 一 年 を 構 成 す る12の 月 の 概 念 は,と て も 暦 と 呼 ぶ に ふ さ わ し い も の で は な い こ と が わ か る 。 そ れ は や は り 季 節 観 とで も呼 ぶ ほ か な い も の か も 知 れ な い 。 し か し,ド ゥ ル 農 民 の 日 々 の 生 活 に ふ れ て み る と,は た し て 彼 らの 生 活 の サ イ ク ル に と っ て,月 の 概 念 の 中 に 日 付 が 必 要 な の か ど う か,各 月 が         545

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国立民族学博物館研究報告    1巻3号 正 確 に 何 日 か らな る と い う こ と が 必 要 な の か ど う か,き わ め て 疑 問 に 思 え て く る こ と

も否 定 で き な い 。 こ れ は,日 付 や 定 ま っ た 期 間 を 伴 っ て は い な い け れ ど も,や は り ド ゥ ル 農 民 の 暦 な の だ と 考 え ざ る を 得 な い 点 も な く は な い の で あ る 。

  こ こで,ド ゥル 族 の 一 年 を 構 成 して い る12の 月 の 概 念 に ふ れ る こ と に し た い 。 た だ し,こ こ で ふ れ る 西 欧 暦 の 何 月 ご ろ で あ る か は,上 に 述 べ た 理 由 で き わ め て 便 宜 的 な も の で あ る こ と は 言 う ま で も な い 。

  1)ug‑dugド ゥ ル 農 民 の 語 る と こ ろ で は,0年 は こ のDug‑dugの 月 か らは じ ま る と い う。 こ れ は 西 欧 暦 の4月 中 旬 か ら5月 初 旬 に か け て の 時 期 に あ た る 。 こ の 語 は, 草 の 葉,木 の 葉 と い っ た 内 容 を 意 味 し,少 し 説 明 的 に 言 え ば,草 の 葉 や 木 の 葉 が 一 斉

に萌 え で て く る 様 子 を 示 し て い る 。 一 般 的 に,こ の ド ゥ ル 農 民 の 居 住 地 域 で は,4月 頃 か ら 雨 期 に入 る と考 え られ る の で,こ のDug‑dugの 月 は,ま さ し く雨 期 の は じ ま

りの 月,そ し て 後 述 す る よ う に,ブ ッ シ ュ 焼 畑 に お け る 植 え 付 け,播 種 作 業 の 開 始 さ れ る 月 に あ た っ て い る の で あ る 。

  落 葉 樹 の 多 い こ の 地 域 の サ バ ン ナ で は,乾 期 の 間 に ほ と ん ど の 木 の 葉 が 落 ち,草 枯 れ て し ま う が,何 回 か の 降 雨 の の ち,0斉 に す べ て の 葉 が 萌 芽 す る 様 子 を,ド ゥ ル 農 民 はDug‑dugと 表 現 し て い る の で あ る 。

  ひωαπ  こ の 語 は,土 の 中 に 棲 む 虫 の 名 前 で あ る とい う 。 報 告 者 は つ い に こ の 虫 を 確 認 す る こ と が で き な か っ た が,ド ゥ ル 農 民 の 語 る と こ ろ に よ れ ば,こ の 虫 の 名 前 が 月 の 名 と し て 呼 ば れ て い る の は,こ の 時 期 に は 土 の 中 に 棲 ん で い る こ の 虫 が 地 面 の 上 を は い ま わ る か ら で あ る と説 明 して い る 。 こ の 月 は,西 欧 暦 の ほ ぼ5月 中 旬 か ら6月 初 旬 に か け て の 時 期 に あ た る 。

  W  aabab  ドゥ ル 農 民 は,そ の 焼 畑(ブ ッ シ ュ 焼 畑)を 集 落 か ら か な り 離 れ た サ バ ン ナ の 中 に 造 成 す る こ と が 多 い 。 い ろ い ろ な 場 合 が あ る の で 一 概 に は 言 え な い が,集 か ら歩 い て2時 間 ぐ ら い の と こ ろ に 焼 畑 を つ く る の は 普 通 の こ と で あ る 。 そ の た め,

ド ゥ ル 農 民 は 自 分 の 経 営 す る 焼 畑 に は,必 ず 出 作 り小 屋 を つ く り,農 繁 期 に は そ こ に 泊 ま り こ ん で し ま う の で あ る 。 こ の 出 作 り小 屋 の こ と をW  aababと 呼 ん で い る 。   こ の 月 は,西 欧 暦 の ほ ぼ6月 中 旬 か ら7月 初 旬 に か け て の 時 期 に あ た り,こ の 月 が

出 作 り小 屋 の 名 で 呼 ば れ る の は,ま さ し く こ の 時 期 に 出 作 り小 屋 を 造 っ た り,手 入 れ

を した りす る か ら で あ る と,ド ゥル 農 民 は 説 明 し て い る 。

  ド ゥル 農 民 の 焼 畑 に お け る 出 作 り小 屋 は,そ の 建 物 の 構 造 か らみ て 集 落 で の 住 居 と ほ とん ど 変 わ る と こ ろ が な い 。 円 型 の 家 屋 の 周 囲 の 壁 は 赤 土 を 盛 り あ げ て つ く り,そ の 上 に 草 で ふ い た 円 錐 形 の 屋 根 を か ぶ せ る も の で あ る 。 柱 は 中 央 の 支 柱 が1本 の み で

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あ る 。 こ う し た 構 造 で あ る か ら,雨 期 に 入 っ た こ の 時 期 に は,出 作 り 小 屋 を 造 る と い っ て も,壁 土 の 盛 り上 げ な ど は 乾 期 の 仕 事 で あ る か ら,実 際 に は 屋 根 を 中 心 と す る 手 入 れ 作 業 が 行 わ れ る とい う こ と で あ る 。

  Bangowaこ の 語 の 意 味 は,雨 が た く さ ん 降 る と い う こ と で あ る 。 こ の 月 は,西 暦 の ほ ぼ7月 中 旬 か ら8月 初 旬 に か け て の 時 期 に あ た り,ド ゥ ル 農 民 は こ の 時 期 に は 毎 日 必 ず 降 雨 が あ る の だ と 語 っ て い る 。 こ の こ と は 表1の デ ー タ と も対 応 して い る こ

と が わ か る 。

  Nag‑bunni  ドゥ ル 語 で は,主 食 作 物 で あ る モ ロ コ シ を 製 粉 す る ス リ ウ ス の こ と を nagと 呼 ん で い る 。 こ のNag‑bunniのbunniと は 白 い の 否 定 形 で,白 く な い と い う 意 味 で あ る 。 し た が っ てNag‑bunniと い え ば,ス リ ウ ス が 白 くな い と い う こ と を 意 味

して い る 。 こ れ は ど の よ う な 事 情 を 背 景 に して い る こ と な の で あ ろ う か 。

  ド ゥ ル 農 民 が 説 明 す る と こ ろ で は,ス リウ ス が 白 くな い と い う こ と は,ふ た つ の 事 柄 を 意 味 し て い る と い う。 そ れ は,食 用 と し て 穀 物 倉 に 貯 蔵 され て い た モ ロ コ シ が も は や 古 くな っ て き て お り,そ う し た モ ロ コ シ で は ス リウ ス が 白 くな らな い と い う こ と と,ま た 食 用 の モ ロ コ シ が な くな っ て き て ス リ ウ ス が 使 わ れ な く な っ て き て い る と い う こ と で あ る 。 こ の ド ゥ ル 農 民 の 説 明 を そ の ま ま 解 釈 す る と,こ の 時 期 は ま さ し く主 食 作 物 と し て の モ ロ コ シ の 端 境 期 に あ た っ て い る と い う こ と に な る 。 こ の こ と は,ド ゥ ル 農 民 の 食 生 活 の サ イ ク ル を 考 え る う え で,き わ あ て 重 要 な 問 題 と な る と考 え られ る 。

  こ の 月 は,西 欧 暦 の ほ ぼ8月 中 旬 か ら9月 初 旬 に か け て の 時 期 に あ た って い る 。   Naaこ れ は,ド ゥ ル 語 で は,除 草 す る と い う意 味 を 示 す 。 そ して 文 字 ど お り,こ

月 に は,ブ ッ シ ュ 焼 畑 に お い て,か な り な 労 働 量 を と も な う 除 草 作 業 が 行 わ れ る 。 こ の 月 は,西 欧 暦 の ほ ぼ9月 中 旬 か ら10月 初 旬 に か け て の 時 期 に あ た っ て い る。

  ド ゥ ル 農 民 が 焼 畑 で 行 う除 草 作 業 に は,そ の 時 に 使 用 す る 農 具 に よ っ て,ふ た つ ρ タ イ プ が 認 め られ る 。 ド ゥル 族 の 農 具 に つ い て は 別 に 報 告 を 行 っ た が[端,1973],

ドゥ ル 族 に き わ め て 特 色 的 な 農 具 と 思 わ れ る 纏gを 使 用 す る タ イ プ の 作 業 と,ド ル 族 がkabokと 呼 ん で い る 手 鍬 を 使 用 す る タ イ プ の そ れ とで あ る 。

  前 者 の 作 業 は,原 則 と して,雨 期 の 最 中 に 行 わ れ る 伐 採 ・開 墾 に と も な う も の で, tongを 用 い て サ バ ン ナ 叢 林 の 下 草 を 根 か ら掘 りお こ す,い わ ゆ る 根 こ ぎ の 除 草 が 行

わ れ る 。 こ の 場 合 は,通 常,ゴ マ の 播 種 を 行 う こ と が,そ の 前 提 と な っ て い る 。   い ま ひ と つ の タ イ プ の 除 草 は,手 鍬 を 用 い て 焼 畑 の 雑 草 を 掻 き と る 作 業 で あ る 。   こ の い ず れ の 作 業 も,除 草 す る と い う意 味 で,ド ゥ ル 農 民 はnaaと 呼 ん で い る の

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国立民族学博物館研究報告    1巻3号 で あ る。

  熱帯 地 域 に お け る焼 畑 農 業 にあ って は,こ の焼 畑 にお け る除 草作 業 は,か な りな労 働 量 を 必 要 とす る もの で あ り,そ れ は ドゥル 農 民 にあ って も例 外 で は ない 。 こ の時 期 に お け る除 草 を 行 うに あ た って は,ド ゥル農 民 は ほ とん どが 出作 り小 屋 に寝 起 き し, 村 に は人 が 少 くな るの だ と語 って い る。Naaと は そ う した 背 景 を もつ 月 な ので あ る 。

  Ziedon  こ の 語 の 意 味 は,ド ゥ ル 農 民 の 生 活 の サ イ ク ル を 考 え る う え で,き わ め て 興 味 深 い 内 容 を も っ て い る 。 こ の 月 は,西 欧 暦 の ほ ぼ10月 ali旬 か ら11月 初 旬 に か け て の 時 期 に あ た っ て い る が,す で に 述 べ て き た よ う に,こ の 時 期 は 雨 期 の 終 り に あ た っ て い る 。

  ドゥ ル 族 の 女 た ち は,雨 期 の 間 に は,図3に 示 され た よ う に,屋 敷 内 の 自 分 の 住 居(女 の 家 と呼 ば れ て い る)の 内 部 の イ ロ リで 食 事 の 用 意 を す る 。 し か し こ の イ ロ リの あ る 女 の

図3  屋 敷 地 内 の女 の家 の構 造 と イ ロ リの 位 置

家 の 前 室 は 狭 い の で,乾 期 に な る と,女 た ち は 前 庭 に 出 て イ ロ リを 準 備 し,そ こで 食 事 の 用 意 を す る こ と を 好 む 。 乾 期 に は,食 事 も し ば し ば こ の 前 庭 の イ ロ リ の そ ば で と

ら れ,イ ロ リを 囲 ん で 人 と話 し こ ん だ りす る こ と が 多 くみ ら れ る 。

  と こ ろ で,こ の 時 期 は 雨 期 の 終 り 頃 と い う こ と で,も う 雨 が 降 ら な い か と思 っ て 女 ヒ ち が 前 庭 で イ ロ リを 準 備 す る と,2,3日 して や は り 雨 が 降 って く る 。 そ ん な 時 に は,イ ロ リの 火 を 屋 内 に 移 さ な け れ ば な らな くな る 。 ド ゥ ル 農 民 は,こ う し た イ ロ リ の 火 を 屋 内 に 入 れ る こ と をziedonと 呼 ん で い る の で あ る 。

  こ のziedonと い う こ と が,そ の 月 の 名 と して 用 い られ て い る こ と は,ド ゥ ル 農 民 の 生 活 感 覚 を 考 察 す る う え で,実 に 興 味 深 い こ と の よ う に 思 わ れ る 。

  翫 ゆ 面  こ の 語 は,ド ゥ ル 語 で は,新 し い モ ロ コ シ が 実 る こ と を 意 味 し て い る 。 ド ゥ ル 農 民 は,こ のZu  mP uiの 月 と は モ ロ コ シ が 実 る の で,そ ろ そ ろ そ の 収 穫 も始 ま る の だ と話 して い る 。 こ の 月 は,西 欧 暦 の ほ ぼ11月 中 旬 か ら12月 初 旬 に か け て の 時 期 に あ た っ て い る 。

  Hom一 ωaa  ド ゥ ル 語 で は,  homと は 寒 い こ と,寒 さ の こ とで,ωaaと は 小 さ い と

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い う意 味 で あ る 。 し た が っ て,こ の 月 の 名 前 で あ るH・m‑  tvaaと は,寒 さ が 小 さ い, つ ま り小 寒 と い う 意 味 で あ る 。

  大 陸 の 内 陸 で は,0般 に気 温 の 日較 差,年 較 差 が と も に大 き い と い わ れ る が,こ ド ゥ ル 族 居 住 地 域 で も そ れ は 例 外 で は な く,と りわ け 乾 期 に お け る 夜 間 の 冷 え 込 み は き び し く,表2で もわ か る よ う に,乾 期 の 毎 日 の 最 低 気 温 は15。Cを こ え る こ と は な い ほ ど で あ る 。 ま た こ の 時 期 の 気 温 の 日 較 差 は,20。C以 上 に も達 す る の で あ る 。   い ず れ に せ よ,ド ゥ ル 農 民 は,こ の 西 欧 暦 の ほ ぼ12月 中 旬 か ら1月 初 旬 に か け て の 時 期 を,寒 さ の 季 節 と して と らえ て い る の で あ り,そ れ は 夜 間 の 冷 え 込 み に 基 づ い て い る も の と 考 え ら れ る 。

  Ho陥 η磁 西 欧 暦 の ほ ぼ1月 中 旬 か ら2月 初 旬 に か け て の 時 期 に あ た る と 考 え られ る の が,こ のHam‑na'aの 月 で,こ れ は 大 寒 を 意 味 す る 。 乾 期 が 深 ま る に つ れ,日 差 は ま す ま す 大 き くな る と考 え られ る が,表2か らみ れ ば,Hom‑waaの 月 と の 明 確 な ち が い を 認 め る こ と は 出 来 な い 。 し か し,ド ゥ ル 農 民 は,小 寒 の 月 の 次 に は 大 寒 の 月 が 来 る の だ と 語 っ て い る 。

  Zun卜zv aa  ドゥ ル 語 で は,  zumはhomの 反 対 で,暑 さ を 意 味 し て い る 。 こ の 月 は 直 訳 す れ ば,小 暑 の 月 と い う こ と に な る が,そ の 時 期 は 西 欧 暦 で の ほ ぼ2月 中 旬 か ら 3月 初 旬 に か け て と考 え られ,そ れ は 表2の 気 温 測 定 の 結 果 とか な り対 応 して い る こ と が 考 え ら れ る 。

  Zum‑na'0  こ の 月 は,西 欧 暦 の ほ ぼ3月 中 旬 か ら4月 初 旬 に か け て の 時 期 に あ た っ て い る 。 こ の 時 期 を,ド ゥ ル 農 民 が 暑 さ が 大 き い,す な わ ち 大 暑 の 月 と して い る の は,明 らか に こ の 地 方 の 気 候 学 的 特 徴 に 基 づ い て い る 。 そ れ は,よ く知 られ て い る よ う に,冬 季 に は サ ハ ラ 砂 漠 か らの 熱 風 ハ ー マ ッ タ ン が 広 くサ ハ ラ 南 部 の 地 方 を お そ う の で あ る が,ド ゥ ル 族 の 居 住 地 域 で は,ま さ し く こ の 時 期 が そ の 影 響 を う け る と き な の で あ る 。

  報 告 者 がMb驍ノ 居 住 す る 教 会 関 係 者 に 聞 い た と こ ろ で は,3月 か ら4月 に か け て の 降 雨 が 断 続 的 に み ら れ は じ め た こ ろ に,気 温 は 急 に 上 昇 し,と くに 暑 い 日が 続 く と の こ と で あ っ た 。

  以 上 が ドゥ ル 族 の 一 年 を 構 成 す る12の 月 で あ る 。

こ う し た ド ゥ ル 族 の12カ 月 の 概 念 を み る と,い くつ か の 特 色 を 読 み と る こ と が で き る か と思 わ れ る 。

  ド ゥ ル 族 の 一 年 を 構 成 す る12カ 月 の,そ れ ぞ れ の 月 の 概 念 を 内 容 か ら整 理 し て み る と,

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国立民族学博物館研究報告    1巻3号     自然 現 象 の概 念      7例

    農 業 な い し生 活 の サ イ クル ……5例 とな って い る こ とは 明 らかで あ ろ う。

  しか しな が ら,た とえ ばDug‑dugの 月 の よ う に,直 訳 的 に解 釈 す れ ば 自然 現 象 の 概 念 だ が,そ の 背景 に あ る もの を 考 え る と,単 純 に は そ う と言 え な い もの もあ る。

  し た が って,こ れ らの12カ 月 の 概 念 の な か に に,ド ウ ル 農 民 に と っ て の 社 会 的 機 能 と して の 農 家 暦 の 側 面 と と も に,ま た い っ ぽ う で は ドゥ ル 農 民 が 一 年 と い う生 活 の サ イ ク ル の 中 で,自 然 と い う も の を ど の よ う に と らえ て い る か と い う ド ゥ ル 族 の 側 か ら の 気 候 学 的 概 念 と い う た 側 面 も 認 め られ る の で あ る 。

  い ず れ に せ よ,こ の ド ゥ ル 族 の12カ 月 の 概 念 は,基 本 的 に は,ド ゥ ル 農 民 に と っ て の 生 活 の 年 間 サ イ ク ル と結 び つ い た,文 化 複 合 の 集 約 と み な す こ とが で き る と 考 え ら れ る 。 そ し て,そ の 生 活 の 年 間 サ イ ク ル の 主 要 な 構 成 が 農 業 労 働 サ イ ク ル と して 表 出 し て い る と考 え られ る の で は な い だ ろ う か 。

  報 告 者 は,農 業 労 働 に 関 す る 聞 き と り 調 査 の 中 で,は じ め は 西 欧 暦 の 月 と 対 比 して 調 査 を す す め て い た が,ほ と ん ど の 農 作 業 の 時 間 的 説 明 は,何 月 か ら何 月 に か け て と い う風 に,ふ た つ の 月 に ま た が っ た も の で あ っ た 。 と こ ろ が ,の ち に ドゥル族 の12カ 月 を 知 る こ と に な っ て,そ れ を 用 い て 再 び 農 業 労 働 の 年 間 サ イ ク ル の 調 査 を 行 っ た と

こ ろ,そ の 作 業 は こ の 月 に 行 う と い っ た 具 合 に,月 に ま た が る も の が き わ め て 少 な く な っ た の で あ っ た 。 こ う し た 結 果,ド ゥ ル 農 民 は,農 業 労 働 を ド ゥ ル 族 の12カ 月 の 概 念 と を,は っ き り結 び つ け て い る こ と が 明 らか に な っ た の で あ っ た 。 これ は ,と り も な お さ ず,ド ゥ ル 族 の12カ 月 の 概 念 が そ の 生 活 の 年 間 サ イ クル と 深 く結 び つ い て い る

こ と の 証 左 と も言 え る で あ ろ う 。

  な お,報 告 者 は,こ の ドゥ ル 族 の12カ 月 の そ れ ぞ れ の 月 の 期 間 に つ い て は,こ こ で は ま った く便 宜 的 に同 じ長 さを与 えて お い たが,そ れ は す で に述 べ た よ うに,そ の年 そ の 年 で実 情 に あわ せ て 判 断 されて い る もの と考 え られ る。

  ま た 西 欧 暦 の 月 と ド ゥ ル 族 の12カ 月 とを 対 応 さ せ る に あ た っ て は,1週 間 か ら10日 間 ほ ど の ズ レを 与 え て い るが,こ れ は 調 査 の 中で の 聞 き と り と,表2に お け る気 温 の 測 定 結 果 か ら判 断 した もの で あ る。

4・ ブ ッ シ ュ 焼 畑 に お け る 農 作 業 暦

  ブ ッ シ ュ焼 畑 に お け る 作 付 の 特 色 に つ い て は,す で に 第 一 論 文 に お い て 報 告 し た と こ ろ で あ る[端,1971]。 そ れ に よ れ ば,同 じ ブ ッ シ ュ 焼 畑 で 栽 培 さ れ る 作 物 の な か

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で も,雨 期 の 伐 採 の 直 後 に栽 培 さ れ る ゴ マ,ブ ッ シ ュ 焼 畑 に 混 植 さ れ る

トウ モ ロ コ シ,モ ロ コ シ を は じ め, ラ ッカ セ イ,サ ゲ,オ ク ラ,ウ 類 な ど,ブ ッ シ ュ 焼 畑 に 連 続 す る プ ロ ッ トに そ れ ぞ れ 単 作 され る イ ネ,

サ ツ マ イ モ,ボ 図4  ブ ッシ ュ焼 畑 の作付 模 式 図

ン ズ ー マ メ,ト ー ジ ン ビ エ な ど に よ っ て,そ れ ぞ れ の 農 作 業 の 形 態 と そ の サ イ ク ル が 異 っ て い る 。

  ま ず,ゴ マ の 栽 培 に つ い て み る と,こ れ は そ の 播 種 時 期 か ら み て,.あ た か も ブ ッ シ ュ焼 畑 の 初 年 目作 物 の よ う な 位 置 に あ り,そ の 栽 培 に は 必 ず 新 畑 の 伐 採 を 伴 う の で あ る 。

  ド ゥ ル 農 民 は,新 畑 の 伐 採 を 大 き く分 け て,年 に2度 行 う。 そ して そ の 意 味 と 形 態 は そ れ ぞ れ 異 っ て い る 。 雨 期 の 最 中 の 主 と してBangowaの 月 に は,原 則 と し て,樹 木 の 切 り た お しを 伴 わ な い 伐 採 を 行 う 。 そ れ は 下 草 を 根 か ら掘 り お こ す,根 こ ぎ の 方 法 に よ る 除 草 作 業 が 中 心 と な る 。 樹 木 の 枝 を 払 う こ と は あ る が,そ の 切 り た お し は 行 わ な い 。 そ の 時 使 用 され る 農 具 がtongで あ る[端,1973]。

  一 定 の プ ロ ッ トの 下 草 が 除 か れ る と,ゴ マ が 播 種 さ れ る 。 こ の ゴ マ の 播 種 方 法 は 散 播 に よ る 。 こ の ゴ マ の 収 穫 はHom一 ωaaの 月 に 行 わ れ る の が 普 通 で あ る 。 ゴ マ の 栽 培 は こ う して 雨 期 の 最 中 の 伐 採 に よ っ て 開 か れ た プ ロ ッ トで 行 わ れ る の で あ り,そ れ 以 外 の'場面 で 決 して 行 わ れ な い 。

  ブ ッ シ ュ 焼 畑 の 本 格 的 伐 採 は,乾 期 に 入 っ て か ら のZu  mP ui, Hom‑waa,  H・m‑na'a の 月 に 行 わ れ る 。 こ の 時 期 は,の ち に 述 べ る よ うな 主 食 物 で あ る モ ロ コ シ な ど の 収 穫,そ し て 脱 穀 の 作 業 と 重 な る の で,伐 採 は そ の 間 を ぬ っ て 断 続 的 に 行 わ れ て い る の で あ る 。 そ の た め,こ の 作 業 は,連 続 的 で は な く,か な りの 日 時 を か け て 造 成 さ れ る の で あ る 。

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国立民族学博物館研究報告    1巻3号   伐 採 の 作 業 は,ド ゥル語 でbokと 呼 ん で い る斧 の みで 行 わ れ る。斧 は ほ ぼ腰 の 高 さ

で 水 平 に入 れ て,木 を 切 りた おす 。 直 径 が10cmぐ らい の木 よ り太 い もの が 対 象 とな って い るが 直 径30cmを 越 す 樹 木 にな る と,斧 を 入 れ る位 置 も,通 常 よ りは20cmぐ らい 高 くな る。 この よ うな 場 合 に は,2人 で 両 側 か ら交 互 に 斧 を 入 れ るが,直 32cmの 樹 を 切 りた お す の に,2人 で 約6分 か か って い る こ とが 観 察 され た 。 樹 が た おれ た ら,す ぐに 枝 を払 う作 業 に入 り,こ の 時 は 斧 を 頭 上 か ら垂 直 に お ろ して,大 枝 か ら順 に 枝 を 払 って い くので あ る。

  樹 木 の切 りた お しの場 合,そ の た お す 方 向 は,そ の都 度,判 断 され て い る よ うで あ る。 とい うの は,伐 採 の 完 了 した焼 畑 を み る と,プ ロ ッ トの 中 にい くつ か の 切 りた お され た樹 木 の 山 が 作 られ て い るか らで あ る。 つ ま り,樹 木 の切 りた お しに は,あ る程 度 の樹 木 の 山 が 出来 る よ う に,い くつ か の 中 心 へ む か って,樹 を た お して い くわ けで あ る 。 これ は 明 らか に,の ち に行 わ れ る焼 畑 の火 入 れ を考 え た作 業 で あ る と考 え られ る。

  な お,こ の 時 期 には ゴマ の 収穫 が行 わ れ る ので,ゴ マが 播 種 され た焼 畑 の 場 合,樹 木 の伐 採 が ゴ マの 収 穫 の の ち に行 わ れ る の は言 うまで もな い 。

  伐 採 され た 新 畑 に積 み あ げ られ た樹 木 は,乾 期 の あ い だ 放 置 され,Zum‑na'0の に火 入 れ され る。 火入 れ に あ た って,特 定 の儀 礼 が 行 わ れ る とか,防 火 線 を つ くる と か の作 業 な どは見 られ な か った。 もっ と も後 者 につ い て は,す で に 述 べ た よ うに,切

りた お され た樹 木 は,焼 畑 のプ ロ ッ トの 中で,い くつ か の 山 を な して 積 み あ げ られ て い るの で,急 な傾 斜 地 で もな い こ の地 方 で は,防 火 線 の必 要 は認 め られ な か っ た 。   焼 畑 の 火入 れ は,入 念 に何 度 も行 わ れ る。0回 で 燃 え き らな か った樹 木 を 寄 せ集 め

て,ふ た た び 火入 れを 行 い,ほ とん どす べ て を 燃 して しま うの で あ った 。

  こ う して 焼 畑 の 造 成 が 行 わ れ る が,す で に ふ れ た よ うに,焼 畑 の 火 入 れ を行 う Z襯 一ηα'0の 月 には,時 々降 雨 を み る こ とが あ り,雑 草 が の び は じめ る こ とが あ る。

そ の よ うな時 は,播 種 の前 に除 草 が 行 わ れ る 。 この 点 は 必 ず し も 明確 で は な い の だ が,農 民 に よ って は,こ の播 種 前 の 除 草 を 重 視 す る もの もい れ ば,さ ほ ど重 視 しな い もの もい た ので あ る。 した が って,本 稿 で は,こ れ は 必 ず し も ドゥル農 民 のす べ て に と って 共 通 の概 念 で はな い し,ま た 降雨 の 状 態 とい った 自然 の条 件.によ って も左 右 さ.

れ る こ とな ので,規 則 的 な 農 作 業 の 概 念 には 含 め な い こ とに した。

  さて ドゥル 農 民 に と って,Dug‑dugは 播 種 の月 で あ る。 ブ ッシ ュ焼 畑 で 栽 培 され る作 物 の ほ とん どが,こ の 月 の うち に播 種 され る の で あ る。

  まず ブ ッシ ュ焼 畑 に お い て,そ の作 付 面 積 の大 部 分 を 占 めて 混 植 され る作 物 群 の 播 種 につ い て 報 告 す る。

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  す で に 火 入 れ を して 準 備 さ れ た ブ ッ シ ュ 焼 畑 に,最 初 に 播 種 さ れ る の は,通 常 トウ モ ロ コ シ で あ る 。 ひ と り が ド ゥ ル 語 でtongと 呼 ば れ て い る 除 草 具 か あ る い は 伽g‑

kiiと 呼 ば れ る 掘 棒 で 種 穴 を 掘 っ て ゆ き,他 の ひ と り が 容 器 に 入 れ た トウ モ ロ コ シ の 種 子 を2,3粒 ず つ 種 穴 に 播 き,上 か ら土 を か ぶ せ て お く 。 次 に 播 種 さ れ る の は ラ ッ

カ セ ィ で あ る 。 トウ モ ロ コ シ の 播 種 後,数 日 た っ て トウ モ ロ コ シ の 芽 が 出 は じ め た ら,や は り 同様 の 方 法 で,ト ウ モ ロ コ シ を 植 え た の と は 別 の 種 穴 に ラ ッ カ セ イ を 播 く。 ラ ッ カ セ イ は 必 ず2粒 ず つ 播 く と の こ と で あ る 。

  さ ら に,ラ ッ カ セ イ も 発 芽 す る と,や は り 同 じ方 法 で,ひ と り が トウ モ ロ コ シ,ラ ッ カ セ イ と は 異 な る 位 置 に 種 穴 を 掘 り,他 の ひ と り が4,5粒 の モ ロ コ シ と サ サ ゲ, ウ リ類,オ ク ラ の 種 子 を そ れ ぞ れ1粒 ず つ,同 じ種 穴 に 播 き,上 か ら土 を か ぶ せ て 播 種 が 完 了 す る 。

  以 上 の 播 種 方 法 で わ か る よ う に,ド ゥ ル 農 民 の ブ ッ シ ュ焼 畑 で は 穴 播 方 法 が 行 わ れ て お り,播 種 作 業 に あ た っ て は,種 穴 掘 り の 作 業(dibbling)と 播 種(seecling)と は っ き り し て い る の で あ る 。 通 常,前 者 が 男 子 の 仕 事 で あ り,後 者 は 女 子 な い し 子 供 の 仕 事 で あ る と言 わ れ て お り,播 種 作 業 に お け る性 的 分 業 も行 わ れ て い る よ う で あ る が,そ れ に 付 随 し た タ ブ ー は 存 在 し な い よ う で あ っ た 。

  と こ ろ で,ブ ッ シ ュ 焼 畑 で は,こ の よ う に トウ モ ロ コ シ,次 い で ラ ッ カ セ イ,さ に モ ロ コ シ な ど の 混 植 作 物 群 と,前 後3回 に わ け て 播 種 が 行 わ れ る の で あ る が,ド ル 農 民 は そ の 播 種 作 業 全 体 を ほ ぼ8日 間 か ら10日 間 ぐ ら い で 終 了 す る と い う。 しか し トウ モ ロ コ シ の 発 芽 を 確 認 し,さ らに ラ ッ カ セ イ が 発 芽 し た の ち,モ ロ コ シ を 播 種 す る の で あ る か ら,も っ と 日 数 が か か る 場 合 が 多 い の で は な い か と考 え られ る 。 こ の 点 に つ い て は 明 確 な デ ー タ を 得 る こ と が で き な か っ た が,た だ 広 い 焼 畑 を 経 営 して い る 場 合,播 種 は 村 び と の 労 働 力 援 助 に よ っ て 行 わ れ る こ と が 多 い の で,3回 に わ た る 播 種 の う ち の1回 は,1日 な い し2日 で 終 っ て し ま う と い う こ とで あ っ た 。 こ の よ う に 村 び と の 労 働 力 援 助 に よ る 共 同 労 働 の 場 合 は,種 穴 を 掘 る 作 業 が 数 列 に な らん で 行 わ れ,そ の あ と か ら や は り 列 を な して 播 種 作 業 が 行 わ れ る の だ と い う 。 こ の 場 合 で も, 前 者 の 作 業 は,通 常 男 子 の 仕 事 で,後 者 は 女 子 の 仕 事 で あ る と の こ と で あ っ た 。   な お,植 付 間 隔 や 発 芽 株 数 な ど,作 付 密 度 に 関 す る デ ー タ は,す で に 第 一 論 文 に 報 告 した の で こ こ で は 省 略 す る 。

  ま た,こ の 時 期 に は,ブ ッ シ ュ 焼 畑 の 縁 辺 の 小 さ な プ ロ ッ トで,イ ネ あ る い は ト ウ ジ ン ビ ェ の 播 種 が 行 わ れ る 。 こ の 両 作 物 と も,そ れ ぞ れ の プPッ トに 単 作 され る の で,そ れ らの 作 付 面 積 は そ れ ほ ど大 き い もの で は な く,そ の 播種 作 業 も,た いて い は

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