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I I I 通達の効力と行政訴訟

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Academic year: 2021

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(1)OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ. 通達の法的性質と行政訴訟 一一林野庁の破棄処分通達を中心として一一. 緒方真澄 I はしがき I I 林野庁の破棄処分通達の経過. I I I 通達の効力と行政訴訟. IV むすび はしがき. 愛媛県北宇和郡津島町の国有林に埋められた猛毒のダイオキシンを含む 2・. (1) ダイオキシンとは, (1)のようにこつのベンゼン核を酸素で橋渡しした骨格をもっ化 合物のことで,これに類似したものには)シベンゾフランがあります。 1, 2, 3, 4, 6, 7, 8, 9の位置に塩素が入った物質が,塩化ダイオキシンと呼ばれ,塩素の数と位 霞により七五の異性体があります。同じようにジベンゾフランには一三五の異性体があ ります。これらダイオキシン類を総称してポリ塩化ダイオキシン (PCDD),ジベンゾフ ラン類を総称してポリ塩化ジベンゾフラン (PCDF) といいます。 , 3, 7, 8 ‑四塩化ダイオキシン ( 2, 3, 普通よくダイオキシンという場合,最も毒性の強い 2 7, 8‑TCDD)つまり (2)を意味することもありますので,まぎらわしい点もあると思い ます。この座談会では, 2, 3, 7, 8‑TCDDをさす場合,原則として、ダイオキシン、と、 をつげて示したいと思います。水 、をつけない場合は,ダイオキシン類の総称と考えて 下さい。 ところで,このダイオキシンは,何も人聞が,この物質を利用してやろうとして合成し たものではありません。たいていの場合,クロロフェノール (5)の合成の際に副生して, 4, 5 ‑卜リクロロフェノールをアルカリ条件 不純物として混入してくるのです。例えば, 2, 下で加熱しますと, (6)式のように,脱塩酸反応が起こり, (2)が生成します。クロロ 4, ふT などの農薬の製造工程には,アル フェノール類の製造工程や,これを原料とする 2, カリ加熱条件がともないますから,必然的にダイオキシンが生成するのです。その上原料 に用いるクロロフェノール類は, 100%の純度ということはありません。様々な塩素数の 4,シトリクロロフェノールという工 クロロフェノール異性体が含まれていますから, 2, , 業製品の中には, (2)以外のほかのダイオキシン類も含まれてきます。除草剤 CNPは.

(2) OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ 2 9 3. ‑47‑. 通達の法的性質と行政訴訟. 4・5 T系除草剤(以下除草剤と略す)が,土中に流出した事件を発端に全国 の2 9 営林署が,法令(通達を含む)に反し,ずさんな方法で廃棄した問題は, 行政法学上,通達の法的性質を検討する恰好の事例を与えてくれた。小稿で は,林野庁の破棄処分通達を中心として,行政事件訴訟の本質を解明する一つ の手掛として,通達の法的性質と行政訴訟について若干の試論を展開するもの である。. I I 林野庁の破棄処分通達の経過. 6年 4月 6日,林野庁長官通 除草剤は催奇形性,発がん性の疑いがあって, 4. 2,4,6 ‑トリクロロフェノールを原料として用いますが, 1 , 3,6,8‑TCDD( 3 ), 1 , 3 ,7 , 9 ‑ TCDDのほか,五及び六塩化ダイオキシン(塩素の数が五個及び六個ついたダイオキシ ン)も含まれてきますし,ぺンタクロロフェノールを用いる PCP中には,八場化ダイオ キシンだけでなく六及び七塩化ダイオキシンも含有されています。 2, 3, 7, 8‑TCDDの毒 性が群を抜いて強いので,注目され,研究も盛んに行なわれていますが,ほかのダイオキ シンやジベンゾフランがいろいろな化合物に含まれていることを忘れてはなりません。 (河村). 必 ぬl ;. : : な : 印 :. ‑ 1 は)ダイオキシン. 鳥肉. 勺外. ( … TCDD C. C I C I 、 ι / C I 〆. I1. C¥'γ'CI OH. ( 5 )クロロブエ /‑1 レ. 1( 3 ) L 368. . T C D D. : : 域 政;VILLi‑J レ. : : 収 工 : x + +. 綿貫礼子・河村宏編『ダイオキシン汚染のすべて J 8 ページ ~9 ページ 慢性毒性など未解明 3・7・8四塩化ダ ダイオキシンは農薬などの製造過程で必然的に生まれてくる不純物。 2・ イオキシン ( T C D D ) は強い毒性と催奇形性を持ち r人類が作った最強の毒物」と言わ れている。 2・ 4・ 5Tに含まれている TCDDは,現在は製造過程である程度除去されるよう 4・ 5Tには約3 0 p p mの濃度で含まれていたとみら になっているが,埋設廃棄処分された 2・ れている。長期にわたり体内に吸収された場合の慢性毒性についてはまとまった研究が ほとんどないという。厚生省「ダイオキシン等専門家会議 J (座長,鈴木武夫国立公衆衛 生院長)が五月二十三日に発表した暫定的な 1日の摂取許容量は体重 1キログラム当た り 1 ナノグラム(1ナノグラムは 1 0 億分の 1グラム) (朝日新聞昭和 5 9 年 6月 1 2日). o.

(3) OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ ‑48‑. 第5 7巻. 第 2号. 2 9 4. 達で全国の地方支部局である営林局長宛に除草剤の使用中止を命令した。同年. 4月四日,林野庁長官通達で,前記と同様に営林局長宛に,厳重保管を命令し た。その内容は. ・4・5 T系除草剤の在庫の処分方法について,. r中止以降 2. 追って通達するまで鍵のかかる倉庫等に厳重に保管されたい」 というものであ った。約 7ヶ月後の同年 1 1月 5日,林野庁長官通達で,はじめて破棄処分を命 じた。破棄方法は,毒物及び劇物取締法 1 5 条の 2 r 毒物若しくは劇物,又は第. 1 1条第 2項に規定する政令で定める物は,廃棄の方法について政令で定める技. 0 条「法 術上の基準に従わなければ,廃棄してはならない」に基き,同法施行令4 第四条の 2の規定により,毒物若しくは劇物又は,法第 1 1 条第 2項に規定する 政令で定める物の廃棄の方法に関する技術上の基準を次のように定める。. L 中和,加水分解,酸化,還元,稀釈,その他の方法により,毒物及び劇物. 1条第 2項に規定する政令で定める物のいずれにも該当しない物と 並びに法第 1 する。. 2, ガス体文は揮発性の毒物又は劇物は,保健衛生上危害を生ずるおそれがな い場所で,少量ずつ放出し,又は揮発させること。. 3 . 可燃性の毒物文は劇物は,保健衛生上危害を生ずるおそれがない場所で, 少量ずつ燃焼させること。 4,前号により難い場合には,地下 1メートル以上で,かつ,地下水を汚染す るおそれがない地中に確実に埋め,海面上に号│き上げられ,若しくは浮き上が るおそれがない方法で海水中に沈め,又は,保健衛生上危害を生ずるおそれが ないその他の方法で処理すること」 としての技術基準を示し,これ等法令の執 行の細則基準を示しているのが,本件通達である。 そもそも,通達は,上級行政庁がもっ指揮監督権に基き所管の下級行政庁に あてた命令で訓令とも呼び,文書の形式によるものをいう。国家行政組織法1 4 条 2項は「各大臣,各委員会及び各庁の長官は,その機関の所掌事務について, 命令又は示達するため,所管の諸機関及び職員に対し,訓令又は通達を発する. ( 2) 田中二郎『新版行政法(下 )J 28ページ.

(4) OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ 2 9 5. 通達の法的性質と行政訴訟. ‑49‑. ことができる。」として,割│令,通達の根拠を定めているが,これを発すること は,上級行政庁の当然の権能に属し,とくに法律の根拠を必要としないのであ って,上級行政庁の有する通達権についての確認的規定である。 また,通達は,下級行政庁に対する命令であって職員に対する職務命令とは, 概念上区別されるが,通達は,当該行政庁を構成する公務員をも拘束するから, 通達は,同時に職務命令としての性質をもつものといってもよいであろう。通 達は,行政組織内部の単なる執務手続を定めるものと,法令の解釈,すなわち, 法令の規定の解釈を示すもので,法令の制定改廃に際してその解釈基準を示す ために,下級行政庁からの質疑に対する回答としてなされる。執行(取扱)基 準すなわち法令の規定を執行するに当たり,取扱いの基準を示すもので,一般 施行細則的意味をもつのである。後者は,行政庁が国民に対して作用する根拠 である法令の解釈,取扱基準を指示するものであるから,国民の権利義務に直 接関係することとなるし,実質的には法令の補充的機能を有するのである。 さて,上級行政庁が通達で下級行政庁に命令したとき,下級行政庁は,法的 に拘束され,これに従って行政を執行し,これを遵守しなければならない。む ろん,上級行政庁は予防的,事前的監督権の行使を,また,矯正的,事後的監 督権の行使をしなければならない。ところが,本件の林野庁長官通達に対して 下級行政庁である営林局長は,本件通達の通りの指示を営林署長にしない監督 上の責任を,営林署長は通達を遵守せず,第一に,法令で処分箇所は,地下水 を汚染するおそれがない地中と定め,通達で,飲料水の水源,民家,歩道,沢 筋などから可能なかぎり離れた峰筋近くを選定し,粘土質の場所を選び地下水 の湧出する場所や風水害で崩壊・発掘するおそれがある場所は,避けると定め ていたが,高知営林局管内 l署は,埋没から 5キロの所に集落があり,さらに. 2キロ下流に飲料水用のダムがある。愛媛大学農学部が分析の結果,高濃度の ダイオキシンが土壌中から検出され汚染は広い範囲に広がり,不安が現実化し (3) 中西文三「通達の法的性質 J ( r 行政法の争点 J 5 2 ページ) (4) 広岡隆『行政法総論J 5 2 ページ (5) 町田顕「通達J (山田幸男,市原昌三郎他『演習行政法(下 )J 2 3 4 ページ).

(5) OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ ‑50‑. 第5 7巻 第 2号. 2 9 6. ている。他の署は,飲料水を地下水に頼る市でその川の上流沿いの県道から 1 キロ入った地点に埋めた。ここでも汚染が市民生活に影響を及ぼしている。第 二に,処分方法は,法令は地下 1米以上地中に確実に埋めること,通達で 1ケ 所 の 量3 0 0キログラム以内とし,処理は 1 0 t 音量程度の土壌と混和し,セメント・ 水 ・ 土 壌 4~~. 5の重量配合で練り合わせ,コンクリート塊にして,ビニ‑)レ底. の上に埋めると定めた。高知営林局管内 1 0署は,処分方法を指示する通達が出 た4 6年 1 1月以前に厳重保管の通達に反し 1 1ケ所にわたって埋めた。残りの 1署. 1ケ所も 4 7 年 1月,本件廃棄通達に反して埋めた。同局以外では,帯広・東京・ 名古屋・熊本の各営林局管内の 7署 で 1 0 倍量程度の土壌に混和してコンクリー ト塊にして埋めるという通達を遵守せず袋のまま埋めた。また,青森・名古屋・ 大阪・熊本の各営林局管内 1 1署で,危険分散のために通達で指示された r1ケ 所3 0 0キ ロ 以 内 」 と い う 制 限 量 を 超 え , な か に は 1ケ 所 1 ト ン 以 上 大 量 廃 棄 した。 これ等のことは,下級行政庁である営林局長は本通達の通り営林署長に指示 しない監督上の責任がある。また,破棄処分を行なった営林署長は,通達に反 し,破棄処分をしたことになるのである。 同時に上級行政庁である林野庁長官は下級行政庁が廃棄した処分が通達どお. ( 6) 今回の分析の対象となったのは,除草剤が埋められていた穴(深さ約L5メートル)の 底部とその約 5 0センチ下までの計六カ所,および底部から水平に約5 0センチ離れたとこ ・ 3 ・ 7・ 8ダイオキシンは穴の底部の土から最高 1 0 4 P P b( 1 0 億分の ろの土;。、分析の結果. 2 1).最も深い土からも 1 5 P P bの濃度で検出された。水平に約5 0センチ離れたところでも 22PPbの濃度だった。穴の底部から 5 0センチ下は岩盤で,今回,土壌の採取は手掘りで 行なったため岩盤の土は採取していないが,ダイオキシンと農薬は岩盤内に浸透してい ると考えられ,立川教授(愛媛大学農学部)は「調査は愛媛県北宇和郡津島町)八面山だ けでなく各地点でやるべきだ」とし,さらに代表的な数地点で下流を含めた詳しい環境調 ・ 4 ・ 5Tには約30PPm(百万 査が必要としている。今回の分析で缶に残っていた除草剤の 2 分の1)のダイオキシンが含まれていたことが分かつた。この濃度と埋められた除草剤の 総量,土中の残留濃度から .90%以上のダイオキシンはすでに流出してしまっていると考 えられるという。除去する必要のある汚染土壌の範囲について,米国の CDC (防疫セン ター)は「居住地は 1PPb J との基準を決めており,立川教授はこれを参考に今後処理方 9 年 6月1 2臼) 法などを決めるよう勧めている。(朝日新聞昭和5 (7) 朝日新開昭和5 9 年 5月2 6日.

(6) OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ 通達の法的性質と行政訴訟. 2 9 7. ‑51‑. りなされたかの確認を怠り,矯正的,事後的監督権の不行使としての責を負わ ねばならないのである。. I I I 通達の効力と行政訴訟 通達の効力は,従来,受命機関の営林局長,営林署長にのみ及び,直接被害 を受ける住民の権利,義務には及ばず,行政組織内部のみに及ぶ、ものと解され てきた。最高裁判所昭和4 3 年1 2月2 4日判決は. I元来,通達は,原則として,法. 規の性質をもつものではなく,上級行政機関が関係下級行政機関および職員に 対してその職務権限の行使を指揮し,職務に関して命令するために発するもの であり,このような通達は右機関および職員に対する行政組織内部における命 令にすぎないから,これらのものがその通達に拘束されることはあっても,一 般の国民に直接これに拘束されるものではなしこのことは,通達の内容が法 令の解釈や取扱いに関するもので,国民の権利義務に重大なかかわりをもつよ うなものである場合においても別段異なるところはない」としていた。 すなわち,通達に違反しても,当該機関が通達違反の責任を組織法上問われ ることはあっても,処分そのものの違法,不適正を争うものではない。したが って,通達の内容が国民の権利義務に重大な関連を有する場合でも,通達その ものを対象として取消訴訟を提起することはできず,またその必要もないと言 うのである。 しかし,本件のごとく,通達が営林局長,営林署長に遵守されず,林野庁長 官も,それが行使を確認せず,破棄処分をされたところの住民が憲法で定めら れた住民の環境権,生命権(憲法第 1 3 条,同法第2 5 条)の侵害を受け,猛毒の 夕、イオキシンを含む 2 ・4• 5T系除草剤が土壌中及び水の中から致死量が検 出され,死亡又は発病する蓋然性を有する場合には,住民は,法律上の利益を 有する者として,通達に基く廃棄処分の違法を争うことができる。すなわち, ここにいう廃棄処分とは,行政事件訴訟法(以下行訴法と略す)第 3条 2項に (8) r 最高裁判所判例集2 2 巻1 3 号J 3 1 4 7 ページ。. (9) 川上宏二郎「伊方原発訴訟判決における原告適格について J ( r 判例時報89b7ページ)。.

(7) OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ ‑52‑. 第5 7巻 第 2号. 2 9 8. いう「その他公権力の行使に当たる行為」を指し,これを公権力的事実行為に 該当するものと解すべきである。したがって,実体法的には,法令,通達に違 反した廃棄事実行為の結果たる侵筈事実の撤去を求める請求が,訴訟法上は取 消訴訟の形式によらしめているということになるであろう。 また,通達そのものを訴訟の対象とすることが許されるとする判例が,東京 地方裁判所,昭和4 6年 1 1月8日判決は. r 元来,通達は一般的には司法審査の対. 象とすることはできない」しかし r 通達であってもその内容が国民の具体的な 権利,義務ないしは法律上の利益に重大なかかわりをもち,かつ,その影響が 単に行政組織の内部関係にとどまらず外部にも及び,国民の具体的な権利,義 務ないしは法律上の利益に変動をきたし,通達そのものを争わせなければその 権利救済を全からしめることができないような特殊例外的な場合には……通達 によって具体的な不利益を受ける国民から通達そのものを訴訟の対象としてそ の取消を求めることも許されると解するのが相当である」と判示した上,当該 事案の例外要件該当性につき判断を加えたのである。本件に適用された昭和4 6 年1 1月 5日,林野庁長官通達(以下,本件通達と略す)で除草剤の廃棄処分を. するよう定めたのであるが。毒物及び劇物取締法 1 5 条の 2,同法施行令4 0 条で 技術基準を示し,処分箇所の選定では,地下水の汚染するおそれがない地中と, 処分方法は,地下 1米以上地中に確実に埋めることを定めているにすぎず,本 件通達で具体的に執行(取扱)基準を示し,一般施行細則的な意味をもつので ある。本件通達は処分箇所の選定では,飲料水の水源,民家,歩道,沢筋など 可能なかぎり離れた峰筋近くを選定し等の要件を定め,処分方法では 1ケ所3 0 0 キログラム以内と制限し,処理はセメント,水,土壌で練り合せ,コンクリー ト塊にして,ビニール底の上に埋めることを定めている。このように,具体的 な通達の要件を遵守して,破棄の事実行為が行使されればよいのであるが,そ れが,遵守されず,違法な破棄の事実行為がなされ,そのまま放置された結果, ( 1 0 ) UJeは,取消訴訟ではなくて,結果の排除を求める給付訴訟でもって主張されるべきだ .H.,Vevwaltungsgerichtsordnung2AufLS . .1 6 6Vg , . . lS . .1 3 8 と説明する。 UJe,c ( 1 1 ) r 行政事件裁判例集2 2 巻1 1・ 1 2 号J 1 7 8 5ページ。.

(8) OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ 2 9 9. 通達の法的性質と行政訴訟. ‑53‑. その地域の住民が死亡,文は発病する蓋然性がある場合には,本件通達は,地 域住民の環境権,健康権,生命権等に重大なかかわりをもち,その影響が林野 庁長官,営林局長及び営林署長の内部にとどまらず,現実に,直接地域住民の 環境権,生命権等の権利に変動をあたえ,廃棄した事実行為を撤去しなければ, 地域住民の上記権利を守ることができず,これら取扱基準細則を定めた通達を 遵守しなかった違法を争わねば,これら住民の権利を全うすることができない ような場合に該当するものと認めることができょう。 奥平康弘教授は,前記した東京地方裁判所,昭和46年 11月 8日判決は rいう ところの『特殊例外的なばあい』の絞りのかけ方がきびしすぎはしないか,と 問う余地があるかも知れないが,これは一つには,本件判決が先例を尊重しな がら,これと抵触しないような例外的なばあいを慎重に提立しようとはかった からであろう」と指摘される。たしかに,一方で原則論としての先述の最高裁 判所,昭和4 3年 1 2月2 4日判決を踏襲しながら,特殊例的な場合に,取消訴訟の 対象として認めるべきだとしたのであるが,むしろ,通達の今日的な重要性に 鑑み,これらの点に着目して原田尚彦教授は「通達の行政内部的性質のみを強 調して,国民との関係においては,通達は法律上 r 無』に等しいとみる従来の 形式論理的な法理をそのまま絶対視することは反省されなければならなくな る。行政法上の国民の地位を論ずるにあたっては,情況により通達になんらか の法的意味を認めることがむしろ必要とされることになろう」といわれるので ある。むしろ,通達が r 行政の末端にまで強い指導力を発揮し,行政の具体的 内容を大きく規定しているのが実情であろう。」したがって,本件通達のごと し法令の執行のための取扱基準を示すものである場合,あるいは,行政庁が 国民に対して作用する根拠を法令の解釈,取扱基準を示す規則のある場合に限 って,行政訴訟の提起が可能なように要件を大胆に緩和すべきであろう。その ことが通達の現代的役割,現実の行政実態に適合するのである。すなわち中西 又三教授が「現代行政の展開とともに,行政対象が複雑多岐となり,行政機関. ( 1 2 ) 奥平康弘「通達に処分性を認める要件J (r判例時報6 6 4号J 1 1 7 ページ)。 ( 1 3 ) 原田尚彦『行政法要論 J 38 ページ。.

(9) OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ ‑54ー. 第5 7巻 第 2号. 3 0 0. の専門技術的判断の余地も多くなり,また時間的経緯にともない行政需要が不 断に変化するようになり『法律による行政の原理』の要求にかかわらず,法律 の規定そのものの一般抽象化が生じ,行政段階での適正な法の解釈・運用,裁 量権行使の重要性が一層増大するにいたった。このような状況の中で,行政運 営の統一性,具体的公正妥当性を確保するために通達が果たすべき役割も一段 と重要となっている。 具体的に行政処分を行なう行政機関は,その根拠を法律に有しているとはい え,現実には1"法律の意味を具体化している』通達に従って処分を行なうこと が通常であり,また法律に不備等がある場合に現実の行政需要に応じて通達を 定め,これによって職務運営が行なわれることもありIr法律による行l政』より 『通達による行政』といわれる現象が生ずるに至っている。」したがって,高接, 国民の権利義務や法律上の利益に影響を及ぼし,通達に反する行政処分,事実 行為に対して,取消訴訟を提起しなければならなくなるのである。勿論,本件 の場合には,住民は,林野庁,営林署等に対して,国家賠償法に基く損害賠償 を求める訴を提起することができるであろうが,汚染の拡大を防止するために, 廃棄処分の結果たる侵害事実の撤去を求める取消訴訟を求めることにも重大な 意味があるといわねばならない。. IV むすび 行政訴訟の目的は,行政法関係における国民の権利を保障する点にある。通 達の現代的役割,現実の行政実態からみて,本件のごとき通達は,憲法に定め る,住民の環境権・生命権を侵害する関係で対外的効力が及ぶのであって,行 政組織内部のみに及ぶものではない。これらによる廃棄処分の事実行為も取消 訴訟の対象として含まれると解すべきである。. ( 1 4 ) 中西又三「通達の法的性質 J (成田頼明・『行政法の争点 J 5 2 ‑ 5 3ページ。) ( 1 5 ) 緒方真澄『行政訴訟制度の歴史的研究 J 1ページ。 ( 16 ) 広木重喜「事実行為に対する行政訴訟J(鈴木忠一・三ヶ月章 r実務民事訴訟講座 8・行 7 ページ。) 政訴訟 1J 2.

(10) OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ 3 0 1. 通達の法的性質と行政訴訟. ‑55‑. 最後に,汚染の拡大を防ぐため再廃棄処分の問題があるが,汚染の範囲やそ の方法の詳細,明確な基準が現行法令では対応が十分でなく,立法化が現在の、 急務であろう。 附記. 本稿を書くにあたり,朝日新聞社松山支局長平中義博,同支局員鈴木雅人及 び,同社宇和島通信局長武内文彬の三氏から数多くの御意見と通達等の資料の 提供をいただいたことに深甚の謝意を表します。.

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